東方拳闘士 第二話
「ジャンケン?あの紙と鋏と石の奴?」
フランが聞き返す。
「そうだよ…パーとチョキとグーだね。やり方知ってる?グーはパーに負けてパーは――」
「それぐらい知ってるわ」
フランは目の前の少年に興味を持った。妖怪の山の麓の森に居る人間、それだけで珍しい部類だろう。さらに幻想郷ではあまり見ない服装。
額にヘッドバンドを巻いており、足は、足首まで止められるガッチリしたサンダルを履いている。 身体つきは少々筋肉質か
「ジャンケン?あの紙と鋏と石の奴?」
フランが聞き返す。
「そうだよ…パーとチョキとグーだね。やり方知ってる?グーはパーに負けてパーは――」
「それぐらい知ってるわ」
フランは目の前の少年に興味を持った。妖怪の山の麓の森に居る人間、それだけで珍しい部類だろう。さらに幻想郷ではあまり見ない服装。
額にヘッドバンドを巻いており、足は、足首まで止められるガッチリしたサンダルを履いている。 身体つきは少々筋肉質か

メリハリのある体つきに自信があるのかシャツを着ずに肌に直接エナメルでできたぴっちりとした黒いオーバーオールを着ているが、胸から腹部と脚の側面に掛けて安全ピンが並んで付いており、肩掛けも何故か左側に二本。
世間をあまり知らないフランでも、この露出の多い服装はさすがにこれはオカシイと思える格好だ。挙句に、お互い名乗りあう前に、ジャンケンをしようとは…。
だが、フランが一番ひきつけられたのは、左頬にある黒いホクロ…?アザ…?いや、良く見ると穴。
世間をあまり知らないフランでも、この露出の多い服装はさすがにこれはオカシイと思える格好だ。挙句に、お互い名乗りあう前に、ジャンケンをしようとは…。
だが、フランが一番ひきつけられたのは、左頬にある黒いホクロ…?アザ…?いや、良く見ると穴。
何故、頬の穴に興味を持ったのか、その時はまだわからなかった。
「いいわよ。ジャンケン。最近弾幕ごっこも飽きてきたし…勝負してあげる」
「グッド!」
「グッド?…所であなた名前は?私はフランドール・スカーレット。この先の湖の方に住んでるの」
「名前?…名前なんてどうでもいいだろ~?まあいいか。大柳賢。11歳の小学生。これでいいでしょ?でも住んでる所こそどうでもいい。勝負は『五回勝負』!先に三回勝った方が勝ちだよ。
あいこは決着が付くまで勝負を続けるんだ。後出しは負け。……じゃあ…行くよ!いいかい?」
「いいわよ」
「ジャーンケン――」
「「ホイ!!」」
フランはグー、賢はパーだった。
「いいわよ。ジャンケン。最近弾幕ごっこも飽きてきたし…勝負してあげる」
「グッド!」
「グッド?…所であなた名前は?私はフランドール・スカーレット。この先の湖の方に住んでるの」
「名前?…名前なんてどうでもいいだろ~?まあいいか。大柳賢。11歳の小学生。これでいいでしょ?でも住んでる所こそどうでもいい。勝負は『五回勝負』!先に三回勝った方が勝ちだよ。
あいこは決着が付くまで勝負を続けるんだ。後出しは負け。……じゃあ…行くよ!いいかい?」
「いいわよ」
「ジャーンケン――」
「「ホイ!!」」
フランはグー、賢はパーだった。
「僕の勝ち・・・」
ドンッ
「な、何よこれ!!何かが!!私の中の何かが!!」
突然、妙な衝撃がフランの体に走り、身体の中から何かが抜けていく感じがする。
「あの穴に…!吸い込まれていく!気持ち悪い!嫌ぁ!!ああ!」
目には見えないが、感覚で分かった。自分の力が奪われていく事が。
対する賢はシタリ顔で落ち着いた。
「んん~中々のエネルギーが流れ込んでくるけど、やっぱり露伴先生ほど綺麗ですばらしいエネルギーじゃあ無いな。スタンドじゃあ無いからか…能力自体が違うからか?
…どっちにしろ山の中を二時間さまよった疲れが消えていくぞ!!飢えや渇きも薄れていく!!」
「こ、こいつ…!」
吸血鬼は人から奪う側、奪われる事には慣れていない。しかも長い軟禁生活を続けていたフランにとって、それは激しい怒りとなった。
「あなた…ジャムにしてやるわ!!」
フランは右手に力を集中する。そして…
「死になさい!!」
ドグシャァ!
前に突き出した拳を、骨が軋むほどの力で握った。
「な、何よこれ!!何かが!!私の中の何かが!!」
突然、妙な衝撃がフランの体に走り、身体の中から何かが抜けていく感じがする。
「あの穴に…!吸い込まれていく!気持ち悪い!嫌ぁ!!ああ!」
目には見えないが、感覚で分かった。自分の力が奪われていく事が。
対する賢はシタリ顔で落ち着いた。
「んん~中々のエネルギーが流れ込んでくるけど、やっぱり露伴先生ほど綺麗ですばらしいエネルギーじゃあ無いな。スタンドじゃあ無いからか…能力自体が違うからか?
…どっちにしろ山の中を二時間さまよった疲れが消えていくぞ!!飢えや渇きも薄れていく!!」
「こ、こいつ…!」
吸血鬼は人から奪う側、奪われる事には慣れていない。しかも長い軟禁生活を続けていたフランにとって、それは激しい怒りとなった。
「あなた…ジャムにしてやるわ!!」
フランは右手に力を集中する。そして…
「死になさい!!」
ドグシャァ!
前に突き出した拳を、骨が軋むほどの力で握った。
………
「フフッ…」
「な、何で?!」
目の前の賢に全く変化が無い。
どこかが破けたり壊れたりひしゃげたり、そんな様子は全く無い。
「フフッ…」
「な、何で?!」
目の前の賢に全く変化が無い。
どこかが破けたり壊れたりひしゃげたり、そんな様子は全く無い。

「何故生きているのよ!?」
得意げにフランを見つめる賢。
「ぼくの身体から何か…抜き出しましたよね~?『急所』かな?…」
「……『急所』?…は、『破壊の目』」
「『破壊の目』ね……。一つ教えてあげますよ…。ぼくはジャンケンに一勝してあんたの力の三分の一を……頂いた!」
「だ、だから…?」
「フラン…だっけ?あんたがぼくの『目』握りつぶす瞬間に『目』返しても貰った。もう、つまりあんたの能力はぼくにとって無意味ってわけだ!」
「そんな…!」
生まれて初めての戦慄。この世のありとあらゆる物を破壊できると思っていたその自信が、砕け散った。
そして生まれて初めて感じた恐怖。
「返して!私の『能力』を返して!!」
「さっきも言いましたよね。…勝負は五回、先に三勝した方が勝ち……」
「………つまり?」
「もう、めんどくさいなぁ。返して欲しければ勝負を続けるしかないって事ですよ」
「…判ったわ。勝負を続けましょう…そして絶対あなたを握りつぶしてやる!!!」
「フフッそれは脅しかい?」
「脅しじゃないわ…本気よ。さあ続けましょう!」
「ちょっと待ってくださいよ…さっき君はグーを出したよな」
「…だから何?」
頬に片手を当て、『今考えてるんですよ』というポーズの賢。 少年は深く思考する。
「君の能力は破壊的なイメージだよな~。って事は、次はグー以外で破壊をイメージできるチョキ出すかなと思って」
「……」
黙って相手を睨むフラン。
ニヤリと笑って見つめ返す賢。
「じゃあ…行くよ」
「ジャーンケン!!」
「「ホイッ!!」」
フランはパー、賢はチョキだった。
「そ、そんな!」
「フン、あんた単純過ぎるよ。露伴先生と比較するのが問題かも知れないけど……じゃあ、残りの能力をさらに三分の一…」
得意げにフランを見つめる賢。
「ぼくの身体から何か…抜き出しましたよね~?『急所』かな?…」
「……『急所』?…は、『破壊の目』」
「『破壊の目』ね……。一つ教えてあげますよ…。ぼくはジャンケンに一勝してあんたの力の三分の一を……頂いた!」
「だ、だから…?」
「フラン…だっけ?あんたがぼくの『目』握りつぶす瞬間に『目』返しても貰った。もう、つまりあんたの能力はぼくにとって無意味ってわけだ!」
「そんな…!」
生まれて初めての戦慄。この世のありとあらゆる物を破壊できると思っていたその自信が、砕け散った。
そして生まれて初めて感じた恐怖。
「返して!私の『能力』を返して!!」
「さっきも言いましたよね。…勝負は五回、先に三勝した方が勝ち……」
「………つまり?」
「もう、めんどくさいなぁ。返して欲しければ勝負を続けるしかないって事ですよ」
「…判ったわ。勝負を続けましょう…そして絶対あなたを握りつぶしてやる!!!」
「フフッそれは脅しかい?」
「脅しじゃないわ…本気よ。さあ続けましょう!」
「ちょっと待ってくださいよ…さっき君はグーを出したよな」
「…だから何?」
頬に片手を当て、『今考えてるんですよ』というポーズの賢。 少年は深く思考する。
「君の能力は破壊的なイメージだよな~。って事は、次はグー以外で破壊をイメージできるチョキ出すかなと思って」
「……」
黙って相手を睨むフラン。
ニヤリと笑って見つめ返す賢。
「じゃあ…行くよ」
「ジャーンケン!!」
「「ホイッ!!」」
フランはパー、賢はチョキだった。
「そ、そんな!」
「フン、あんた単純過ぎるよ。露伴先生と比較するのが問題かも知れないけど……じゃあ、残りの能力をさらに三分の一…」

不敵な笑みを浮かべ、ズイッと右手の親指を立てる賢。少年の身体からオーラのようなエネルギーが溢れだしていた。

「フフフッ」
「や、やめて!」
うろたえ叫ぶフラン。
「いただくよ!」
親指が地面を指し、フランの中から能力が抜き取られていく。
「うわああああああああああああああ!!」
三分の二のエネルギーが奪われ、ショックで膝を突くフラン。 生気を吸い取られ体全体が窶れていく。
「さて…あと一勝負かな……」
「………」
下を向いて何かをつぶやいているフラン。
「ん?…何か言いました?お疲れなら少し休憩します?」
「…吸血鬼が…吸血鬼が……!吸血鬼が人間にパワーを奪われるなんて!!もう止めよ!ジャンケンで始めた勝負だからジャンケンで決着をつけようと思ったわ!
だけどもそれは私の甘さ!」
「……そのポーズでその言動。ぼくに襲い掛かろうって考えてるんじゃあないよな?」
「実力行使よ!!お前の血を吸って直接能力を取り返すッ!!」
叫ぶと同時にフランは飛び掛った。羽を広げ、賢の首筋に狙いを定め突撃してくる。
対する賢は、そんな事出きるのか?とフランを無視するように疑問顔で立っている。
ボゴォ!
賢に手が届くと思った瞬間、顔を殴られた様な衝撃を受け、フランは頭から地面にぶち当たった。
「…ゴホ…!何が…!?あなた今何をしたの?!」
肘を付いて上体を起こし、見上げながら問う。
「さっきぼくを殺そうとしただろ?…それの仕返しだよッマヌケッ!」
答えになっていない。何を言っているのか判らないが、だけど近くにいるのは危険!
本能的にそう判断した。フランは羽ばたいて立ち上がり、賢から距離を取る。
「もういいわ!奪われた能力は勉強代よ!今度こそ死になさい!!!フォーオブアカインド!!!」
「や、やめて!」
うろたえ叫ぶフラン。
「いただくよ!」
親指が地面を指し、フランの中から能力が抜き取られていく。
「うわああああああああああああああ!!」
三分の二のエネルギーが奪われ、ショックで膝を突くフラン。 生気を吸い取られ体全体が窶れていく。
「さて…あと一勝負かな……」
「………」
下を向いて何かをつぶやいているフラン。
「ん?…何か言いました?お疲れなら少し休憩します?」
「…吸血鬼が…吸血鬼が……!吸血鬼が人間にパワーを奪われるなんて!!もう止めよ!ジャンケンで始めた勝負だからジャンケンで決着をつけようと思ったわ!
だけどもそれは私の甘さ!」
「……そのポーズでその言動。ぼくに襲い掛かろうって考えてるんじゃあないよな?」
「実力行使よ!!お前の血を吸って直接能力を取り返すッ!!」
叫ぶと同時にフランは飛び掛った。羽を広げ、賢の首筋に狙いを定め突撃してくる。
対する賢は、そんな事出きるのか?とフランを無視するように疑問顔で立っている。
ボゴォ!
賢に手が届くと思った瞬間、顔を殴られた様な衝撃を受け、フランは頭から地面にぶち当たった。
「…ゴホ…!何が…!?あなた今何をしたの?!」
肘を付いて上体を起こし、見上げながら問う。
「さっきぼくを殺そうとしただろ?…それの仕返しだよッマヌケッ!」
答えになっていない。何を言っているのか判らないが、だけど近くにいるのは危険!
本能的にそう判断した。フランは羽ばたいて立ち上がり、賢から距離を取る。
「もういいわ!奪われた能力は勉強代よ!今度こそ死になさい!!!フォーオブアカインド!!!」
「何ッ!?四体に増えただとッ?!」
突然現れた他の三人。
四人のフランそれぞれを中心に弾幕が張られた。人間には到底避ける事の出来ない数、スピード。そして威力。
「何だ?この弾丸もだが……。奪った能力には無かったぞ…。そういえばジョースターさんはスタンドとは別に『波紋』とかいう『技術』を極めたと、露伴先生が言ってたっけ…それと同じで様なものか?」
『何をブツブツと!』
四人のフランが同時に話す。若干エコーが掛かって聞こえる。
『人生最後の言葉は、もっと短くしないと覚えてもらえないわよ!』
「これで勝ったつもりなのかな?フン…遅すぎるよ!この攻撃ッ!!これなら露伴先生が振り下ろした手の方が早いぞ!ボーイⅡマンッ!!」
フランの放った弾幕が、あたりの木々を破壊していく。地面はえぐれ、土煙が舞い、木が倒れた所からは日光が差し込んでくる。
だが、フランはこの日最大の戦慄を覚えていた。
『そんな!弾かれるなんてッ!!』
賢の周りの弾幕が何かに弾かれる様に反れて行く。
「フフッ無駄だよ?さっき君から奪った能力で僕は成長してるんだから。そんな攻撃通じないよ・・・」
突然現れた他の三人。
四人のフランそれぞれを中心に弾幕が張られた。人間には到底避ける事の出来ない数、スピード。そして威力。
「何だ?この弾丸もだが……。奪った能力には無かったぞ…。そういえばジョースターさんはスタンドとは別に『波紋』とかいう『技術』を極めたと、露伴先生が言ってたっけ…それと同じで様なものか?」
『何をブツブツと!』
四人のフランが同時に話す。若干エコーが掛かって聞こえる。
『人生最後の言葉は、もっと短くしないと覚えてもらえないわよ!』
「これで勝ったつもりなのかな?フン…遅すぎるよ!この攻撃ッ!!これなら露伴先生が振り下ろした手の方が早いぞ!ボーイⅡマンッ!!」
フランの放った弾幕が、あたりの木々を破壊していく。地面はえぐれ、土煙が舞い、木が倒れた所からは日光が差し込んでくる。
だが、フランはこの日最大の戦慄を覚えていた。
『そんな!弾かれるなんてッ!!』
賢の周りの弾幕が何かに弾かれる様に反れて行く。
「フフッ無駄だよ?さっき君から奪った能力で僕は成長してるんだから。そんな攻撃通じないよ・・・」

「そ…そんな馬鹿な………」
呆然とし弾幕を止めるフラン。
一瞬コウモリの様な形に変化して、四人が一人に戻る。
「なるほど…マジに吸血鬼だった訳ですか…。そして肉体的な『技術』…『体質』か?…の部分は残って、スタンドの様な『能力』だけ奪えたわけか…。フッフッフ、さてこれが最後の勝負だ!!ジャーンケン…!」
「…!もう駄目よ!私では勝てない!!」
フランは逃げ出した。敵に背を向け、か弱い小鳥の様に。屈辱とか悔しさなど微塵も感じない。逃げることそれが今出来る最善の策。いや、最初から取るべき策だった。
逃げ出すフランに聞こえる様に賢が声を張り上げた。
「…後出しは負け…出さなくても負けだ!!」
「ハッ!」
そう、ジャンケンのルールにおける説明するまでもない基本的な部分・・・・意外な盲点に気づけなかった・・・確かに賢はルールでは説明しなかったが「出さなくても負け」それはフランも思わず敗北を認めざる終えなかった。自身が敗北を認めてしまえばイカサマをされても敗北と扱われる・・・それが賢とのジャンケンボーイ・Ⅱ・マンのルールであった・・・
「ホイッ!!」
森にこだまする賢の声。その透き通るような無垢な少年の声は森に響き渡っていった・・・
その声を聴いた瞬間、フランの中から最後の『能力』が抜けていった。
呆然とし弾幕を止めるフラン。
一瞬コウモリの様な形に変化して、四人が一人に戻る。
「なるほど…マジに吸血鬼だった訳ですか…。そして肉体的な『技術』…『体質』か?…の部分は残って、スタンドの様な『能力』だけ奪えたわけか…。フッフッフ、さてこれが最後の勝負だ!!ジャーンケン…!」
「…!もう駄目よ!私では勝てない!!」
フランは逃げ出した。敵に背を向け、か弱い小鳥の様に。屈辱とか悔しさなど微塵も感じない。逃げることそれが今出来る最善の策。いや、最初から取るべき策だった。
逃げ出すフランに聞こえる様に賢が声を張り上げた。
「…後出しは負け…出さなくても負けだ!!」
「ハッ!」
そう、ジャンケンのルールにおける説明するまでもない基本的な部分・・・・意外な盲点に気づけなかった・・・確かに賢はルールでは説明しなかったが「出さなくても負け」それはフランも思わず敗北を認めざる終えなかった。自身が敗北を認めてしまえばイカサマをされても敗北と扱われる・・・それが賢とのジャンケンボーイ・Ⅱ・マンのルールであった・・・
「ホイッ!!」
森にこだまする賢の声。その透き通るような無垢な少年の声は森に響き渡っていった・・・
その声を聴いた瞬間、フランの中から最後の『能力』が抜けていった。
「何とか森の端まで飛んで逃げて…後は魔理沙が通りかかるまで…………」
話を終えたフランはそのまま押し黙ってしまった。
「幻想郷の中じゃあもう驚くような事は起きないと思ってたけどな…。この話は奇妙すぎるぜ」
フランの話を肴に、咲夜が持ってきたクッキーを齧っていた魔理沙が呟く。
「『ジャンケン勝負』『能力を奪う』『弾幕の無効化』。今のフランを目の当たりにしても信じがたい事ね…」
レミリアが手に持っていたティーカップをソーサーに置いた。
「『ジャンケンで勝つと相手の能力を三分の一ずつ奪う程度の能力』とでも名づけますか?」
と咲夜がレミリアのカップに紅茶を注ぐ。
「あー。考えるべきはそこじゃあないと思うぜ」
「そう、今考えるべきなのは…」
と、ドアの方から声が聞こえた。
重たそうな本を脇に抱えたパチュリーが立っている。
「これ以上能力を奪えるのか?と、奪われた能力は取り返せるのか?ね…」
喋りながらテーブルの所までやってきて、椅子を引き寄せドッコイショと座る。
「えー?別に取り返さなくてもいいんじゃないか?」
と椅子にふんぞり返りながら言う魔理沙。
「…!ひどい!魔理沙!!友達だと思ってたのに…!!」
フランがソファーから飛び上がって怒鳴る。
「…べっつにぃ~。友達じゃあないぜ」
「む~!!怒ったわ!」
飛び掛るフラン。だが魔理沙は全く動じない。
椅子にふんぞり返ったままの魔理沙の顔面に、フランが思い切り拳を叩きつける。
ペチッ。
「はっはっは、ノーダメージ!」
「この~…!」
両手で繰り返し顔を引っかく。だが傷が出来ない。さらに魔理沙の腕に噛み付いてみる。しかしなんともない。
「ほら見ろよ」と自分の腕を噛んでいるフランを指差す。
「この必死こいてる姿…前より今のほうが可愛げがあるじゃないか。なあ?」
「うう~…」
涙目になり、魔理沙の腕を放すフラン。だが、両手を前に構え。
「くっそ~!!スターボウブレイク!!」
至近距離のため全弾食らう魔理沙。
「はっはっは!、効かない、効かない……あ」
が、その衝撃で勢い良く飛ばされる。
そして、
ゴチンッ!
硬い石の壁に、したたかに後頭部を打ち付けた。
「………!!!」
痛みのあまり悶絶する魔理沙。後頭部を押えたまましゃがみ込んでいる。
咲夜がいち早く、レミリアとパチュリーをテーブルごと安全圏まで移動させていたので、他に被害はないようだ。
「ざッッッッッッッッッッまあ~~~みろ!!!」
魔理沙に背を向け、ソファーまで行ってからボフッと座った。
「それで」
と何事もなかった様な顔で話し出すレミリア。
「本題に戻すわよ…。くだんのジャンケン小僧から、能力を取り返せるのかしら?」
聞かれたパチュリーが、テーブルの上に本を開く。
「『能力を奪う能力』についての記述はどの本にも載ってなかったわ……でも似たような物として『魂を奪う能力』というのを見つけたのよ」
本を広げたが、別に読みながら喋っている訳ではない様だ。
「能力と魂では大分違うんじゃありませんか?」
「能力と魂の違いについてはまた後で議論するとして……今回妹様は『ジャンケンで能力を賭けて奪われた』でしょう?魂も同じ、『賭けでやりとりする』様よ。
賭けで負けて魂を奪われた場合、他の者が奪われた魂と自分の魂を賭けて取り戻すのが通例らいしわ…」
「という事は……」レミリアがパチュリーを見つめる。
「誰かが能力を賭けて…ジャンケンで勝てば、戻ってくると推測できるわね」
「だがちょっと待って欲しい」
と後頭部を片手で押えながら歩いてくる魔理沙。未だに痛いらしい。
「魂を賭けて負けた者は『魂を無くすだけ』だが…今のフランは『能力を無くしただけじゃあない』ぜ。これはどういう事なんだ?」
「どういう事なのパチェ」
少し考え込む仕草をしてから、パチュリーが口を開いた。
「これも推測なんだけど……妹様の能力は…言い方を代えれば『破壊の目に対する引力』よね?普通は引力と斥力は均等の筈よ…我々もね。所が器用にもその『引力』だけを奪われた…」
「ああ、なるほどな…。『破壊の目を遠ざける力』だけが残った訳か…」
「そういう事」
いつの間にか姉の側に来ていたフランが耳打ちする。
「お姉さま…話判った?」
「咲夜…判って?」
「つまり『能力が逆暴走』した訳ですね」
「つまり『能力が逆暴走』したのよ」
「ああ!『能力が逆暴走』したのね!!」
「と、まあその話はその話で置いておいて…」
と、両手で物を横にどける様な仕草をする魔理沙。
「さっきはカラかう様に言ったが、真面目に能力取り戻さなくても困らないだろ?物が壊せないだけなんだからむしろ安全になる……え、物が壊せないだけ…?!ハッ!!まさか!!」
何かに気付いた魔理沙。テーブルの上のクッキー一枚取るとフランの方へ素早く近づく。何となく身構えるフラン。
「ほら、フラン」とクッキーを差し出す。
「あーん、しな。口あけて」
「……あーん」
親鳥から餌をもらう小鳥の様にクッキーを口に入れてもらうフラン。
ガリッ!
「……え?なんで!?……あ!ま、まさかそんな…このままじゃあ…もう二度とお菓子食べられないの……?」
涙目になるフラン。
「判ったぜ!事の重大さが!!」
「あなたねえ…」
と呆れ顔のパチュリー。
「495年引き篭もってた根暗っ子が、お菓子を食べられなくなるなんて悲劇だぜ!!」
「もっと他にもあるでしょう…。幻想郷の秩序を乱す…もとい、乱せる能力が奪われたら?とか…」
「その点はほらあれだ…ヤバクなったらスキマ妖怪あたりが幻想郷の外に放り出すだろうからさ。で、どうするんだ?」
レミリア、咲夜もパチュリーの方を見つめる。
「ジャンケン小僧の能力がまだ良く分からないわ。『能力追加型』なら別に魔理沙程度が行っても良いと思うけど…」
ムッとする魔理沙。
「もし『能力取替え型』だとすれば、『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』と『取り替えても良いと思う程度の能力』じゃ無いと危険よ…」
「奪われたのがフランの能力じゃあ無ければ、全員で行って力押しで何とかなりそうなんだがなー」
「そうね…」
とレミリアが頬杖を付く。。
「…こういう時は誰が行くべきかしら…ね?」
メイドに聞く主人。
「それは勿論」
主人に答えるメイド。
「『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』と『取り替えても良いと思う程度の能力』を持ち……『絶対ジャンケンに負けない者』が、で御座います…」
そしてニヤリと笑みを浮かべた。
話を終えたフランはそのまま押し黙ってしまった。
「幻想郷の中じゃあもう驚くような事は起きないと思ってたけどな…。この話は奇妙すぎるぜ」
フランの話を肴に、咲夜が持ってきたクッキーを齧っていた魔理沙が呟く。
「『ジャンケン勝負』『能力を奪う』『弾幕の無効化』。今のフランを目の当たりにしても信じがたい事ね…」
レミリアが手に持っていたティーカップをソーサーに置いた。
「『ジャンケンで勝つと相手の能力を三分の一ずつ奪う程度の能力』とでも名づけますか?」
と咲夜がレミリアのカップに紅茶を注ぐ。
「あー。考えるべきはそこじゃあないと思うぜ」
「そう、今考えるべきなのは…」
と、ドアの方から声が聞こえた。
重たそうな本を脇に抱えたパチュリーが立っている。
「これ以上能力を奪えるのか?と、奪われた能力は取り返せるのか?ね…」
喋りながらテーブルの所までやってきて、椅子を引き寄せドッコイショと座る。
「えー?別に取り返さなくてもいいんじゃないか?」
と椅子にふんぞり返りながら言う魔理沙。
「…!ひどい!魔理沙!!友達だと思ってたのに…!!」
フランがソファーから飛び上がって怒鳴る。
「…べっつにぃ~。友達じゃあないぜ」
「む~!!怒ったわ!」
飛び掛るフラン。だが魔理沙は全く動じない。
椅子にふんぞり返ったままの魔理沙の顔面に、フランが思い切り拳を叩きつける。
ペチッ。
「はっはっは、ノーダメージ!」
「この~…!」
両手で繰り返し顔を引っかく。だが傷が出来ない。さらに魔理沙の腕に噛み付いてみる。しかしなんともない。
「ほら見ろよ」と自分の腕を噛んでいるフランを指差す。
「この必死こいてる姿…前より今のほうが可愛げがあるじゃないか。なあ?」
「うう~…」
涙目になり、魔理沙の腕を放すフラン。だが、両手を前に構え。
「くっそ~!!スターボウブレイク!!」
至近距離のため全弾食らう魔理沙。
「はっはっは!、効かない、効かない……あ」
が、その衝撃で勢い良く飛ばされる。
そして、
ゴチンッ!
硬い石の壁に、したたかに後頭部を打ち付けた。
「………!!!」
痛みのあまり悶絶する魔理沙。後頭部を押えたまましゃがみ込んでいる。
咲夜がいち早く、レミリアとパチュリーをテーブルごと安全圏まで移動させていたので、他に被害はないようだ。
「ざッッッッッッッッッッまあ~~~みろ!!!」
魔理沙に背を向け、ソファーまで行ってからボフッと座った。
「それで」
と何事もなかった様な顔で話し出すレミリア。
「本題に戻すわよ…。くだんのジャンケン小僧から、能力を取り返せるのかしら?」
聞かれたパチュリーが、テーブルの上に本を開く。
「『能力を奪う能力』についての記述はどの本にも載ってなかったわ……でも似たような物として『魂を奪う能力』というのを見つけたのよ」
本を広げたが、別に読みながら喋っている訳ではない様だ。
「能力と魂では大分違うんじゃありませんか?」
「能力と魂の違いについてはまた後で議論するとして……今回妹様は『ジャンケンで能力を賭けて奪われた』でしょう?魂も同じ、『賭けでやりとりする』様よ。
賭けで負けて魂を奪われた場合、他の者が奪われた魂と自分の魂を賭けて取り戻すのが通例らいしわ…」
「という事は……」レミリアがパチュリーを見つめる。
「誰かが能力を賭けて…ジャンケンで勝てば、戻ってくると推測できるわね」
「だがちょっと待って欲しい」
と後頭部を片手で押えながら歩いてくる魔理沙。未だに痛いらしい。
「魂を賭けて負けた者は『魂を無くすだけ』だが…今のフランは『能力を無くしただけじゃあない』ぜ。これはどういう事なんだ?」
「どういう事なのパチェ」
少し考え込む仕草をしてから、パチュリーが口を開いた。
「これも推測なんだけど……妹様の能力は…言い方を代えれば『破壊の目に対する引力』よね?普通は引力と斥力は均等の筈よ…我々もね。所が器用にもその『引力』だけを奪われた…」
「ああ、なるほどな…。『破壊の目を遠ざける力』だけが残った訳か…」
「そういう事」
いつの間にか姉の側に来ていたフランが耳打ちする。
「お姉さま…話判った?」
「咲夜…判って?」
「つまり『能力が逆暴走』した訳ですね」
「つまり『能力が逆暴走』したのよ」
「ああ!『能力が逆暴走』したのね!!」
「と、まあその話はその話で置いておいて…」
と、両手で物を横にどける様な仕草をする魔理沙。
「さっきはカラかう様に言ったが、真面目に能力取り戻さなくても困らないだろ?物が壊せないだけなんだからむしろ安全になる……え、物が壊せないだけ…?!ハッ!!まさか!!」
何かに気付いた魔理沙。テーブルの上のクッキー一枚取るとフランの方へ素早く近づく。何となく身構えるフラン。
「ほら、フラン」とクッキーを差し出す。
「あーん、しな。口あけて」
「……あーん」
親鳥から餌をもらう小鳥の様にクッキーを口に入れてもらうフラン。
ガリッ!
「……え?なんで!?……あ!ま、まさかそんな…このままじゃあ…もう二度とお菓子食べられないの……?」
涙目になるフラン。
「判ったぜ!事の重大さが!!」
「あなたねえ…」
と呆れ顔のパチュリー。
「495年引き篭もってた根暗っ子が、お菓子を食べられなくなるなんて悲劇だぜ!!」
「もっと他にもあるでしょう…。幻想郷の秩序を乱す…もとい、乱せる能力が奪われたら?とか…」
「その点はほらあれだ…ヤバクなったらスキマ妖怪あたりが幻想郷の外に放り出すだろうからさ。で、どうするんだ?」
レミリア、咲夜もパチュリーの方を見つめる。
「ジャンケン小僧の能力がまだ良く分からないわ。『能力追加型』なら別に魔理沙程度が行っても良いと思うけど…」
ムッとする魔理沙。
「もし『能力取替え型』だとすれば、『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』と『取り替えても良いと思う程度の能力』じゃ無いと危険よ…」
「奪われたのがフランの能力じゃあ無ければ、全員で行って力押しで何とかなりそうなんだがなー」
「そうね…」
とレミリアが頬杖を付く。。
「…こういう時は誰が行くべきかしら…ね?」
メイドに聞く主人。
「それは勿論」
主人に答えるメイド。
「『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』と『取り替えても良いと思う程度の能力』を持ち……『絶対ジャンケンに負けない者』が、で御座います…」
そしてニヤリと笑みを浮かべた。
TO BE CONTINUED……