生気をすべて吸い取られ地面に座り込んで立つ事が出来ない。精神的なショックもあるが、肌も窶れ手足の感覚が薄れていくのを感じる。
自分の時間が無くなっていく。能力が逆暴走を始めたのだ。
そして…この小僧は私をどうするかしら…?逃してくれるとは思え無い。
…妹様は湖の方に住んでいると話してしまわれた…という事は…こいつは私に紅魔館への道を案内させるつもりだろう。
そしてそのまま何もせず人里に抜けるとも思えない……お嬢様を襲う危険がある!
自分の時間が無くなっていく。能力が逆暴走を始めたのだ。
そして…この小僧は私をどうするかしら…?逃してくれるとは思え無い。
…妹様は湖の方に住んでいると話してしまわれた…という事は…こいつは私に紅魔館への道を案内させるつもりだろう。
そしてそのまま何もせず人里に抜けるとも思えない……お嬢様を襲う危険がある!
「すごい!すごいぞッ!!『時間を支配する能力』!!何て綺麗で素晴らしいエネルギーなんだ!!アハハハハハハハハハハハッ!」
目の前の賢は、新しいオモチャを買ってもらったばかりの子供の様に(子供だが)ハシャギまくっている…。少年はまた大きく成長をし強大な力を小さな身体に秘めているのを感じた。。が、今は咲夜に対して全く警戒していない。隙だらけだ…。今なら…この隙だらけの横顔にナイフを一撃食らわせて…殺れるかしら…?
…駄目だ…。こいつの事だ、『ナイフを投げられてから気付いても平気な顔で対応する』だろう。
そして私がナイフを隠し持っていると知った途端、時を止めて衣服を剥がされ…全てのナイフを奪われるかもしれない…。
それは駄目だ…。それでは……自決出来なくなる…。
ならば…一か八かの賭けをするなら…攻撃するより、逃げる方に賭けた方がいいんじゃあないかしら…。
それに…どうせ『私の時間』は『残り少ない』のだから。逃げるのに失敗したら…その時は…お嬢様……。
意を決し、咲夜は素早く樹上の方へ飛び上がった。
…駄目だ…。こいつの事だ、『ナイフを投げられてから気付いても平気な顔で対応する』だろう。
そして私がナイフを隠し持っていると知った途端、時を止めて衣服を剥がされ…全てのナイフを奪われるかもしれない…。
それは駄目だ…。それでは……自決出来なくなる…。
ならば…一か八かの賭けをするなら…攻撃するより、逃げる方に賭けた方がいいんじゃあないかしら…。
それに…どうせ『私の時間』は『残り少ない』のだから。逃げるのに失敗したら…その時は…お嬢様……。
意を決し、咲夜は素早く樹上の方へ飛び上がった。
「何!?こいつ飛べたのか!」
驚き、飛んでいく咲夜を見上げる。
羽が無いんでテッキリ飛べないと思っていた…いや、飛ぶかどうかなんて全く考えていなかったが……。
咲夜も吸血鬼だったのか?あるいはそれ以外の理由で飛べるのか…ま、この疑問の答えは本人に聞いてみれば良い…。
「逃げられると思うなよ!ボーイⅡマン・ ザ・ ワ ー ル ド ッ!!」
屈強なブリキ男。と形容するのがピッタリのスタンドが、賢の横に発現し両手を広げる。
驚き、飛んでいく咲夜を見上げる。
羽が無いんでテッキリ飛べないと思っていた…いや、飛ぶかどうかなんて全く考えていなかったが……。
咲夜も吸血鬼だったのか?あるいはそれ以外の理由で飛べるのか…ま、この疑問の答えは本人に聞いてみれば良い…。
「逃げられると思うなよ!ボーイⅡマン・ ザ・ ワ ー ル ド ッ!!」
屈強なブリキ男。と形容するのがピッタリのスタンドが、賢の横に発現し両手を広げる。
ド――z__ン
…時は止まった……。
「…ザ・ワールドって意味は判らないけど、露伴先生が一目置いている承太郎さんが使ってるらしいから、真似しよっと」
さて…。
止まった世界で樹冠に届きそうな高さの咲夜を見上げる。
距離にして約7mほど。
「時を止める能力だけでは手出しが出来なかっただろうが…ぼくのスタンド射程も能力を奪ったお陰で成長したんだ!引き摺り下ろせボーイⅡマンッ!!」
ボーイⅡマンが賢から離れ上空の咲夜に迫る。その足に手を伸ばし、そして…。
「あ!…うおおおおおおおッ!!まさか!こ、これは…!」
突然、賢が驚きの声を上げた。
「こんな『物』があったのか…ラッキー!!…じゃない!!
あああああああ!!ち、違うんだあああああああ!!
そうじゃあないんだよぉぉぉぉ~~~!断じてそんなつもりは無いんだよぉ~~~~!!」
頭を抱えても悶えはじめる賢。
「うあああああ!
で、でもこれじゃあ…これじゃあまるでッ!!
まるでぼくが!!このぼくがッ!!
この大柳賢が『スカートの中を覗くために時を止めた』みたいじゃないかぁぁ~~!!」
賢の目には、ボーイⅡマンを通して咲夜さんの大人のパンティーが映っていた。
「違うううううううううう!!違うんだよおぉおおおおおお!!事故なんだああああああ!!
覗くつもりは無かったんだよぉぉぉおおおぉ!!で、でもこれじゃあああああ…だ、駄目だ~!これ以上時を止めていられないイイイイイッ!!」
飛び去っていく咲夜。恥ずかしくて顔を向ける事が出来ない賢。
「く、くっそ~!!せめて…せめて白いのを履けぇぇぇぇぇぇッ!!」
一人残された賢。空しく自分の叫びだけが辺りにコダマしていた。
さて…。
止まった世界で樹冠に届きそうな高さの咲夜を見上げる。
距離にして約7mほど。
「時を止める能力だけでは手出しが出来なかっただろうが…ぼくのスタンド射程も能力を奪ったお陰で成長したんだ!引き摺り下ろせボーイⅡマンッ!!」
ボーイⅡマンが賢から離れ上空の咲夜に迫る。その足に手を伸ばし、そして…。
「あ!…うおおおおおおおッ!!まさか!こ、これは…!」
突然、賢が驚きの声を上げた。
「こんな『物』があったのか…ラッキー!!…じゃない!!
あああああああ!!ち、違うんだあああああああ!!
そうじゃあないんだよぉぉぉぉ~~~!断じてそんなつもりは無いんだよぉ~~~~!!」
頭を抱えても悶えはじめる賢。
「うあああああ!
で、でもこれじゃあ…これじゃあまるでッ!!
まるでぼくが!!このぼくがッ!!
この大柳賢が『スカートの中を覗くために時を止めた』みたいじゃないかぁぁ~~!!」
賢の目には、ボーイⅡマンを通して咲夜さんの大人のパンティーが映っていた。
「違うううううううううう!!違うんだよおぉおおおおおお!!事故なんだああああああ!!
覗くつもりは無かったんだよぉぉぉおおおぉ!!で、でもこれじゃあああああ…だ、駄目だ~!これ以上時を止めていられないイイイイイッ!!」
飛び去っていく咲夜。恥ずかしくて顔を向ける事が出来ない賢。
「く、くっそ~!!せめて…せめて白いのを履けぇぇぇぇぇぇッ!!」
一人残された賢。空しく自分の叫びだけが辺りにコダマしていた。
どうやらこの賭けには勝ったみたいね、と咲夜は思った。
後ろから白がどうのと聞こえたが、考えるのは止めよう…今は飛ぶ事に集中しなければ。
やっとの事で森を抜けて湖の上まで来た。
しかし…そろそろ限界が近い。手足の血流が止まりつつある。感覚は既に無い。
紅魔館が見えているのに……。普段なら数分で行ける距離なのに…。
速度がグングン落ちていく。もう歩いているのと大差ない。
もう駄目だ…。体の感覚も無くなっていく。
ジャンケン小僧についてわかった事…せめてそれだけでも伝えたかったのに。
もう駄目…。ついに心臓が停止した。
「お嬢様……申し訳…ございま…せん……」
遠くに見える館の主人に、届かぬ謝罪を口にした。
そして落ちていく。
最後に残った意識の中、咲夜の目には広がって行く湖面が写っていた。
後ろから白がどうのと聞こえたが、考えるのは止めよう…今は飛ぶ事に集中しなければ。
やっとの事で森を抜けて湖の上まで来た。
しかし…そろそろ限界が近い。手足の血流が止まりつつある。感覚は既に無い。
紅魔館が見えているのに……。普段なら数分で行ける距離なのに…。
速度がグングン落ちていく。もう歩いているのと大差ない。
もう駄目だ…。体の感覚も無くなっていく。
ジャンケン小僧についてわかった事…せめてそれだけでも伝えたかったのに。
もう駄目…。ついに心臓が停止した。
「お嬢様……申し訳…ございま…せん……」
遠くに見える館の主人に、届かぬ謝罪を口にした。
そして落ちていく。
最後に残った意識の中、咲夜の目には広がって行く湖面が写っていた。
「…はッ!ここはどこだ?!私は何をしていたんだ?!」
目覚める魔理沙。薄暗い部屋でふかふかの高級そうなソファーに座っている。
立ち上がろうとしたら膝に何か乗っているようだ。
「……フラン?」
一房だけの長髪を、自分と同じような三つ編みにしているフランが、自分の膝を枕に眠っている。
「お目覚めのようね」
魔理沙の真向かいのソファーで本を読んでいるレミリア。
「あー…?」首をひねる魔理沙。
「…ふぅ」しようがない、というため息を付く。
「ここは紅魔館で、あなたは弱体化したフランを捕まえて髪を弄くりまわしてたのよ。フランが抵抗できない事を良い事にね。
で、最終的に髪型を自分とお揃いにした後、『服もおそろいにしてやるぜ!でも換えの服は無いからオレのエプロンをだけ貸すぜ…裸にエプロンだ!ヒャッハー!』って言って襲い掛かったのよ」
「私、『オレ』なんて言わないぜ」
「言ってたわよ…。タブン。でもあなたに追い詰められてフランも成長できたのね…『破壊できなくとも妨害は出来るわ!』と」
「あ~、それで後ろに回られて首を完全にロックされて〆落とされたのか…」と思い出して首を擦る。
「こいつめ」
手を振り上げる魔理沙。そして膝の上のフランの頭を……撫でた。
「やるじゃあないか……」
そのまま三つ編みをなぞって行く。フランの髪なら自分よりキツ目に結ったほうが良かったな、等と考えて。
「所でパチュリーは?」
「あなたがフランばっかり構ってるから、図書室に戻ったわ。フランの服を脱がせようとしている最中にね…。ご機嫌取りに行こうというのなら、ワインの一本でも持っていく?」
「お構いなく…咲夜もまだみたいだからな」時計を見ながら言う魔理沙。
それを聞いて、持っていた本を閉じ、窓辺へ歩いていくレミリア。カーテンの間から外をのぞくと、太陽光に照らされる庭園が見える。
今は、吸血鬼にとって死の時間帯だ。
「…大丈夫よ」レミリアが呟く。
「もう帰ってくるわよ。咲夜は…きっと」
「………ぉぉぉぉおおおおおおお嬢様あああああああああッ!!!」
ドッガーン!
突然レミリアの背後でドアが左右に吹き飛んだ。
両開きのドアの一枚がソファーの魔理沙に迫る!
「うおおおお!ま、まずいぜ!」
ソファーに伏せるか!?それとも飛んで避けるか?!だめだ!どうしても飛んでくるドアにあたってしまう!
ならばこれしかないぜ!
「当たる面積を最小限にしてフランで防御!」
膝で寝ているフランの襟首を持ち上げる!
「ふえ?!」
ドバンッ!
正面からフランに直撃したドアは、フランを引っ掛けてソファーの背もたれを越え、回転しながら後ろの床に落ちた。
「フー、助かったぜ…」
「ひ、酷い…」体に乗っているドアを押しのけ、鼻血を流しながら立ち上がるフラン。
「なんだ、お前自身は怪我するんだな。テッキリ自分も破壊されないかと思ったぜ」
「そんな都合のいい話はないわ…それで」
と部屋の出入り口の方へ向き直るレミリア。
「どういうつもりよ美鈴…。事と次第によっては………ちょっとまって…あなた…『一体何を抱えている』の…?」
ドアを破って飛び込んできた美鈴は、何かを抱えしゃがんでいた。
それは人の形をしていた。
「まさか…」レミリアが呟く。
「嘘だろ…」魔理沙が続いた。
立ち上がる美鈴。
その腕に、咲夜を抱えていた。
グッタリとした体。力なくぶら下がっている腕…そして眠るように静かな顔。
「お嬢様~~!!咲夜さんが…!咲夜さんが…!!咲夜さんがあああ~~ッ!!!」
涙を流しながら訴える美鈴。
「……」無言のレミリア。
「…?」状況が飲み込めないフラン。
「おい…落ち着くんだ…。こ…これは重要な質問だぜ…ふざけてるわけじゃあないぞ…怒るなよ…。『咲夜は生きてるのか?』…」
「判らない…」
涙を流しながら美鈴が答えた。
「どういう事だ…?」
「判らないんです!…人間が…!人間が『この状態で生きている』のか判らない!!私には判らない!!魔理沙ッ!咲夜さんは…!人間は息をしなくても『生きている』の?!」
「え……」少し躊躇する魔理沙。
「と…とりあえず床に寝かせてくれ…」
真紅のカーペットの上に寝かされる咲夜。黙ってそれを見つめるスカーレット姉妹。
フランは不安そうに姉に寄り添っている。
魔理沙が咲夜の側に膝を付く。胸の上下は無い。手を鼻にかざすが、やはり呼吸は止まっている。
首筋に触れてみた。
「…冷たい」
冷たすぎる…。到底生きている人間の体温とは思えない。
「冷たい…?」
涙目の美鈴が聞き返す
それを無視し、念のため咲夜の胸に耳を当てる。
…………。
………………。
音が無い。
沈痛な面持ちで魔理沙は立ち上がる。
「ねえ、咲夜どうしたの?お姉さま?咲夜はどうなったの?」
フランが姉に聞く。レミリアは何も答えない。
美鈴は唇を噛んでただ押し黙っている。
「……死んだんだ」魔理沙が答えた。
「死んだ?!嘘…。だって体は無事じゃない!」
「体が無傷でも…心臓が止まると死ぬんだよ…人間は。2分位までなら蘇生術で何とか成るかもしれないが…。
今、咲夜を触ってハッキリと判った…体温が無くなるほど時間が経過している…もう手遅れなんだ…」
「だって!…そんな……だって…。死ぬなんておかしいわ!」
「フラン…」
どう説明すればいいのかわからない。
「だって…おかしいわよ…」
「それにしても」
黙っていたレミリアが不意に口を開いた。
「やっぱり、人間って使えないわね…」
テーブルの上に置かれたソーサーを左手で持ち、反対の手で紅茶のカップを摘んで口を付ける。
「この…!」
自分が行かせた癖に!と怒りそうに成ったが、魔理沙は堪えた。
背を向けているが、レミリアのカップを持つ手が震えているのが見えたのだ。
パリッと音を立て、カップの取っ手が砕ける。
怒りか悲しみか、感情が高ぶって人外の力を出した為だろう、摘み潰されたのだ。
カップはそのままテーブルに落ち、転がりながら紅茶を撒き散らした。
少しの間、テーブルに広がる紅茶を見つめていたレミリア。
その姉の後ろ姿をまた、不安そうな顔のフランが見上げている。
ふぅ…、と息を吐き出すレミリア。
「…咲夜は…」独り言の様に呟く。
「咲夜は勝つ…そう確信していたわ…。私の能力は…咲夜の勝利を予感させていたのに…何故…かしらね…。
咲夜の力量なら、ジャンケン小僧には絶対に負けないと…そういう運命だったのに」
「…それは…ジャンケン小僧が人間だからだ」
魔理沙の言葉にレミリアが振り返る。
「人間ってのはちっぽけで弱い生き物だ…心臓が止まれば死ぬ。息が出来なくても死ぬ。出血多量でも死ぬし…ただ無駄に日々を過ごしててもその内死ぬ。弱点の数なんて数え上げれば吸血鬼の比じゃないぜ。
だがな…。だからこそだぜ…。人間は『自分の弱さ』を乗り越えようと……運命を乗り越えようとするんだぜ…!」
「『運命を…乗り越える』?」
「…自分を知る事は弱さを知る事…そして己の弱さを認めた時、人は自分の運命をも乗り越えられる……。レミリア、これを」
レミリアに白いハンカチを手渡す魔理沙。
「これは…?」
「咲夜のエプロンのポケットに入っていた…。咲夜の遺したメッセージだ。ジャンケン小僧の特徴が事細かに書いてある…」
本を捲るようにハンカチを捲るレミリア。
服装、身長、体型、推定年齢、髪・瞳・肌の色、能力を奪うと元気になり傷が治る事、そして何故自分が負けたのかが書いてあった。
「…なるほどね…圧倒的な咲夜に対し、小細工しか出来ない小僧が…小細工を諦めなかったから勝てた…そういう事…。凄いわね…全く。私が同じ状況なら絶望していそうよ…」
「お姉さま…?」
グググと胸の前で拳を握りるレミリア。
「トンでもない奴だと思うわ…本当に…。でも…『私の家族にこんな事されて』黙ってられるものですか…フランの能力を取り返し!咲夜の仇を討つ!」
その拳をビシッと振り下ろす。
「そうだぜレミリア!私も弱い人間の一人だが…手を貸すぜ!咲夜の弔い合戦だ…!」
レミリアと魔理沙の視線が交差し、お互いの決意を確かめ――
「何でドア無いのよ?」
――る前にパチュリーによって邪魔された。
「…リフォームでも始めたの?……って咲夜じゃない…どうしたの?」
「実は…」
「死んだのよ」
口ごもった魔理沙をレミリアが引きついだ。
「死んだ……フーン?」
そのままスタスタと咲夜の方へ歩いていく。途中、突っ立っていた美鈴に魔道書をポンと手渡した。
咲夜の横に立ち、腰をかがめて右手をかざす。
「生きてるじゃないの」
「…え?」
「本当ですか?!」
「だ、だって心臓が止まってるんだぜ?!」
ヤレヤレとかぶりを降るパチュリー。
「あなたたちマヌケばかりなの?レミィ、あなたの妹は能力奪われてどうなったのよ?」
数秒の沈黙。
『あ゚』と妙な声を出す魔理沙とレミリア。
「そういう事。『能力が逆暴走』して自分の時間が止まってるだけよ。生命エネルギーを感じるわ。魔理沙…あなた魔法使いなのにそんな事もわからないの?」
グサッ!魔理沙の胸に見えない何かが刺さった!
冷ややかな目を向けながら、続けるパチュリー。
「したがって、厳密には『心臓は止まっていない』のよ。つまり能力を取り戻せれば、復活するはずよ」
「だから私、変だっていったでしょ!」
そら見たことか!。という態度のフラン。
「ううう~…咲夜さーん!!良かったよおおおおおッ!」と歓喜の涙を流し咲夜に飛びつく美鈴。
「待てーゐ!」
魔理沙が叫ぶ。
「生きてる事は素直に喜ぶべきだが…だったらなんであんなに冷たかったんだ?!
…『熱の動きも止まって絶対零度』なら判るが、さっきの『ヒンヤリ感』はなんだったんだぁあ!?冷たく無きゃ手遅れだとは思わなかったぜ!!」
「あ、それはですね」
といつの間にか美鈴が横に現れる。
「実は咲夜さんを届けてくれたのはチルノなんですよ」
「チルノぉぉ~?」
「湖の上を徘徊してる氷精ね」とレミリア。
「はい。なんか、飛んでる咲夜さんを見つけてチョッカイを出そうとしたら、湖に落ちて行ったんで拾ったとか。
で、『落し物は届けないといけない』と思ったそうですが、咲夜さんは重くて持てなくて、でも『冷気を操る程度の能力』なんで氷塊の中に入れれば周りの冷気を使って持てるとかで…」
「だ、だから氷付けにして持ってきたと?!」
「はい」
「な、何でそれを最初に言わないんだッ!!」
「だって、体温が重要だとは知らなかったんですよ」
「なんだと…!」
そ、そうだ…紅魔館の人間率は0.1%以下じゃあないか…。知らなくても当然!!むしろ人間の平熱を知ってるほうが異常なんじゃあないか?!
だが…咲夜が生きていた事はうれしいが…何だかさっきのしみったれた雰囲気は…まるっきり馬鹿みたいじゃないか!この怒り!どこにぶつければいいんだ!!
とその時、ドアの無くなった部屋の出入り口から、小悪魔が駆け込んできた。
「お嬢様!緊急報告です!屋敷内に霧雨・魔理沙が侵入!厨房を襲撃し、冷凍室のヴァニラアイスを全て強奪!湖の西側に逃走しましたッ!」
え?という室内一同。パチュリーは察している様だ。
異様な雰囲気の中、魔理沙を見つける小悪魔。
「あ、あれ?魔理沙がこんな所に…おかしいな…。すると厨房を襲ったのは??」
「このアマ!!信じられない!!よりによって私とチルノを間違えるとは!!容赦せんッ!!」
キレた…魔理沙の中で何かがキレた…!
雄たけびを上げ、小悪魔に飛び掛っていく。
「え?!ちょ!ちょっと!!」
「喰らえッ!!恋色マスター………スープレックスッ!」
ドグシャッ!
「アギッ!」
正面から小悪魔を抱え、思いっきり後ろに体を仰け反らせた。
魔理沙の見事なバックドロップが決まる!
白黒の美しいブリッジの先で、首を在らぬ方向に曲げ白目を剥く小悪魔。
「どうだ!…冗談のつもりで特訓していた技がこんな所で役に立つとは思わなかったぜ…!」
そして腰をかがめ落ちた帽子を拾おうとして…
ゴスッ!
「イテッ!」
その後頭部をパチュリーが本の角でドツく。
「うちの使用人に何するのよ…」
「おおおお…。今お前が殴ったのはさっきブツけて瘤になってる場所だぞ…」
後頭部を押さえ、涙目になりながら抗議する。
「それにですね!」
突然、魔理沙の背後から美鈴が抱きついてきた。
「今のはスープレックスじゃあ…ないッ!」
グショアッ!
美鈴の見事なバックドロップが決まった。
「後ろからやらないと、ね?パチュリー様」
何となく得意気な美鈴。
「どーでもいいのよそんな事…。それよりいつまで咲夜を床に寝かせてる気?ソファーに運んで頂戴」
「判りました!」
咲夜を抱き上げてソファーに持っていく美鈴とパチュリー。
「ちょっとあなた」小悪魔を呼ぶレミリア。
「テーブルに紅茶をこぼしてしまったわ」
「ハッ?!ハイッ!ただ今掃除いたします!」
飛び起きて部屋の外へ駆けていく。
みんなそれぞれ動き出す中、動かない者が二人。
バックドロップを受けたまま、頭と足が逆転してスカートが完全に捲れ上がった魔理沙と、その傍らにしゃがみこんで膝を抱えているフラン。
フランが先に口を開いた。
「………パンツ見えてるわ」
「パンツじゃあねぇぜ……」
「…かぼちゃパンツッ!」
「……ちげぇぜ…」
今日は厄日か?もう家に帰って寝るか?
そんな事を考えつつ、しばらくその体勢のまま身動きの取れない魔理沙だった。
目覚める魔理沙。薄暗い部屋でふかふかの高級そうなソファーに座っている。
立ち上がろうとしたら膝に何か乗っているようだ。
「……フラン?」
一房だけの長髪を、自分と同じような三つ編みにしているフランが、自分の膝を枕に眠っている。
「お目覚めのようね」
魔理沙の真向かいのソファーで本を読んでいるレミリア。
「あー…?」首をひねる魔理沙。
「…ふぅ」しようがない、というため息を付く。
「ここは紅魔館で、あなたは弱体化したフランを捕まえて髪を弄くりまわしてたのよ。フランが抵抗できない事を良い事にね。
で、最終的に髪型を自分とお揃いにした後、『服もおそろいにしてやるぜ!でも換えの服は無いからオレのエプロンをだけ貸すぜ…裸にエプロンだ!ヒャッハー!』って言って襲い掛かったのよ」
「私、『オレ』なんて言わないぜ」
「言ってたわよ…。タブン。でもあなたに追い詰められてフランも成長できたのね…『破壊できなくとも妨害は出来るわ!』と」
「あ~、それで後ろに回られて首を完全にロックされて〆落とされたのか…」と思い出して首を擦る。
「こいつめ」
手を振り上げる魔理沙。そして膝の上のフランの頭を……撫でた。
「やるじゃあないか……」
そのまま三つ編みをなぞって行く。フランの髪なら自分よりキツ目に結ったほうが良かったな、等と考えて。
「所でパチュリーは?」
「あなたがフランばっかり構ってるから、図書室に戻ったわ。フランの服を脱がせようとしている最中にね…。ご機嫌取りに行こうというのなら、ワインの一本でも持っていく?」
「お構いなく…咲夜もまだみたいだからな」時計を見ながら言う魔理沙。
それを聞いて、持っていた本を閉じ、窓辺へ歩いていくレミリア。カーテンの間から外をのぞくと、太陽光に照らされる庭園が見える。
今は、吸血鬼にとって死の時間帯だ。
「…大丈夫よ」レミリアが呟く。
「もう帰ってくるわよ。咲夜は…きっと」
「………ぉぉぉぉおおおおおおお嬢様あああああああああッ!!!」
ドッガーン!
突然レミリアの背後でドアが左右に吹き飛んだ。
両開きのドアの一枚がソファーの魔理沙に迫る!
「うおおおお!ま、まずいぜ!」
ソファーに伏せるか!?それとも飛んで避けるか?!だめだ!どうしても飛んでくるドアにあたってしまう!
ならばこれしかないぜ!
「当たる面積を最小限にしてフランで防御!」
膝で寝ているフランの襟首を持ち上げる!
「ふえ?!」
ドバンッ!
正面からフランに直撃したドアは、フランを引っ掛けてソファーの背もたれを越え、回転しながら後ろの床に落ちた。
「フー、助かったぜ…」
「ひ、酷い…」体に乗っているドアを押しのけ、鼻血を流しながら立ち上がるフラン。
「なんだ、お前自身は怪我するんだな。テッキリ自分も破壊されないかと思ったぜ」
「そんな都合のいい話はないわ…それで」
と部屋の出入り口の方へ向き直るレミリア。
「どういうつもりよ美鈴…。事と次第によっては………ちょっとまって…あなた…『一体何を抱えている』の…?」
ドアを破って飛び込んできた美鈴は、何かを抱えしゃがんでいた。
それは人の形をしていた。
「まさか…」レミリアが呟く。
「嘘だろ…」魔理沙が続いた。
立ち上がる美鈴。
その腕に、咲夜を抱えていた。
グッタリとした体。力なくぶら下がっている腕…そして眠るように静かな顔。
「お嬢様~~!!咲夜さんが…!咲夜さんが…!!咲夜さんがあああ~~ッ!!!」
涙を流しながら訴える美鈴。
「……」無言のレミリア。
「…?」状況が飲み込めないフラン。
「おい…落ち着くんだ…。こ…これは重要な質問だぜ…ふざけてるわけじゃあないぞ…怒るなよ…。『咲夜は生きてるのか?』…」
「判らない…」
涙を流しながら美鈴が答えた。
「どういう事だ…?」
「判らないんです!…人間が…!人間が『この状態で生きている』のか判らない!!私には判らない!!魔理沙ッ!咲夜さんは…!人間は息をしなくても『生きている』の?!」
「え……」少し躊躇する魔理沙。
「と…とりあえず床に寝かせてくれ…」
真紅のカーペットの上に寝かされる咲夜。黙ってそれを見つめるスカーレット姉妹。
フランは不安そうに姉に寄り添っている。
魔理沙が咲夜の側に膝を付く。胸の上下は無い。手を鼻にかざすが、やはり呼吸は止まっている。
首筋に触れてみた。
「…冷たい」
冷たすぎる…。到底生きている人間の体温とは思えない。
「冷たい…?」
涙目の美鈴が聞き返す
それを無視し、念のため咲夜の胸に耳を当てる。
…………。
………………。
音が無い。
沈痛な面持ちで魔理沙は立ち上がる。
「ねえ、咲夜どうしたの?お姉さま?咲夜はどうなったの?」
フランが姉に聞く。レミリアは何も答えない。
美鈴は唇を噛んでただ押し黙っている。
「……死んだんだ」魔理沙が答えた。
「死んだ?!嘘…。だって体は無事じゃない!」
「体が無傷でも…心臓が止まると死ぬんだよ…人間は。2分位までなら蘇生術で何とか成るかもしれないが…。
今、咲夜を触ってハッキリと判った…体温が無くなるほど時間が経過している…もう手遅れなんだ…」
「だって!…そんな……だって…。死ぬなんておかしいわ!」
「フラン…」
どう説明すればいいのかわからない。
「だって…おかしいわよ…」
「それにしても」
黙っていたレミリアが不意に口を開いた。
「やっぱり、人間って使えないわね…」
テーブルの上に置かれたソーサーを左手で持ち、反対の手で紅茶のカップを摘んで口を付ける。
「この…!」
自分が行かせた癖に!と怒りそうに成ったが、魔理沙は堪えた。
背を向けているが、レミリアのカップを持つ手が震えているのが見えたのだ。
パリッと音を立て、カップの取っ手が砕ける。
怒りか悲しみか、感情が高ぶって人外の力を出した為だろう、摘み潰されたのだ。
カップはそのままテーブルに落ち、転がりながら紅茶を撒き散らした。
少しの間、テーブルに広がる紅茶を見つめていたレミリア。
その姉の後ろ姿をまた、不安そうな顔のフランが見上げている。
ふぅ…、と息を吐き出すレミリア。
「…咲夜は…」独り言の様に呟く。
「咲夜は勝つ…そう確信していたわ…。私の能力は…咲夜の勝利を予感させていたのに…何故…かしらね…。
咲夜の力量なら、ジャンケン小僧には絶対に負けないと…そういう運命だったのに」
「…それは…ジャンケン小僧が人間だからだ」
魔理沙の言葉にレミリアが振り返る。
「人間ってのはちっぽけで弱い生き物だ…心臓が止まれば死ぬ。息が出来なくても死ぬ。出血多量でも死ぬし…ただ無駄に日々を過ごしててもその内死ぬ。弱点の数なんて数え上げれば吸血鬼の比じゃないぜ。
だがな…。だからこそだぜ…。人間は『自分の弱さ』を乗り越えようと……運命を乗り越えようとするんだぜ…!」
「『運命を…乗り越える』?」
「…自分を知る事は弱さを知る事…そして己の弱さを認めた時、人は自分の運命をも乗り越えられる……。レミリア、これを」
レミリアに白いハンカチを手渡す魔理沙。
「これは…?」
「咲夜のエプロンのポケットに入っていた…。咲夜の遺したメッセージだ。ジャンケン小僧の特徴が事細かに書いてある…」
本を捲るようにハンカチを捲るレミリア。
服装、身長、体型、推定年齢、髪・瞳・肌の色、能力を奪うと元気になり傷が治る事、そして何故自分が負けたのかが書いてあった。
「…なるほどね…圧倒的な咲夜に対し、小細工しか出来ない小僧が…小細工を諦めなかったから勝てた…そういう事…。凄いわね…全く。私が同じ状況なら絶望していそうよ…」
「お姉さま…?」
グググと胸の前で拳を握りるレミリア。
「トンでもない奴だと思うわ…本当に…。でも…『私の家族にこんな事されて』黙ってられるものですか…フランの能力を取り返し!咲夜の仇を討つ!」
その拳をビシッと振り下ろす。
「そうだぜレミリア!私も弱い人間の一人だが…手を貸すぜ!咲夜の弔い合戦だ…!」
レミリアと魔理沙の視線が交差し、お互いの決意を確かめ――
「何でドア無いのよ?」
――る前にパチュリーによって邪魔された。
「…リフォームでも始めたの?……って咲夜じゃない…どうしたの?」
「実は…」
「死んだのよ」
口ごもった魔理沙をレミリアが引きついだ。
「死んだ……フーン?」
そのままスタスタと咲夜の方へ歩いていく。途中、突っ立っていた美鈴に魔道書をポンと手渡した。
咲夜の横に立ち、腰をかがめて右手をかざす。
「生きてるじゃないの」
「…え?」
「本当ですか?!」
「だ、だって心臓が止まってるんだぜ?!」
ヤレヤレとかぶりを降るパチュリー。
「あなたたちマヌケばかりなの?レミィ、あなたの妹は能力奪われてどうなったのよ?」
数秒の沈黙。
『あ゚』と妙な声を出す魔理沙とレミリア。
「そういう事。『能力が逆暴走』して自分の時間が止まってるだけよ。生命エネルギーを感じるわ。魔理沙…あなた魔法使いなのにそんな事もわからないの?」
グサッ!魔理沙の胸に見えない何かが刺さった!
冷ややかな目を向けながら、続けるパチュリー。
「したがって、厳密には『心臓は止まっていない』のよ。つまり能力を取り戻せれば、復活するはずよ」
「だから私、変だっていったでしょ!」
そら見たことか!。という態度のフラン。
「ううう~…咲夜さーん!!良かったよおおおおおッ!」と歓喜の涙を流し咲夜に飛びつく美鈴。
「待てーゐ!」
魔理沙が叫ぶ。
「生きてる事は素直に喜ぶべきだが…だったらなんであんなに冷たかったんだ?!
…『熱の動きも止まって絶対零度』なら判るが、さっきの『ヒンヤリ感』はなんだったんだぁあ!?冷たく無きゃ手遅れだとは思わなかったぜ!!」
「あ、それはですね」
といつの間にか美鈴が横に現れる。
「実は咲夜さんを届けてくれたのはチルノなんですよ」
「チルノぉぉ~?」
「湖の上を徘徊してる氷精ね」とレミリア。
「はい。なんか、飛んでる咲夜さんを見つけてチョッカイを出そうとしたら、湖に落ちて行ったんで拾ったとか。
で、『落し物は届けないといけない』と思ったそうですが、咲夜さんは重くて持てなくて、でも『冷気を操る程度の能力』なんで氷塊の中に入れれば周りの冷気を使って持てるとかで…」
「だ、だから氷付けにして持ってきたと?!」
「はい」
「な、何でそれを最初に言わないんだッ!!」
「だって、体温が重要だとは知らなかったんですよ」
「なんだと…!」
そ、そうだ…紅魔館の人間率は0.1%以下じゃあないか…。知らなくても当然!!むしろ人間の平熱を知ってるほうが異常なんじゃあないか?!
だが…咲夜が生きていた事はうれしいが…何だかさっきのしみったれた雰囲気は…まるっきり馬鹿みたいじゃないか!この怒り!どこにぶつければいいんだ!!
とその時、ドアの無くなった部屋の出入り口から、小悪魔が駆け込んできた。
「お嬢様!緊急報告です!屋敷内に霧雨・魔理沙が侵入!厨房を襲撃し、冷凍室のヴァニラアイスを全て強奪!湖の西側に逃走しましたッ!」
え?という室内一同。パチュリーは察している様だ。
異様な雰囲気の中、魔理沙を見つける小悪魔。
「あ、あれ?魔理沙がこんな所に…おかしいな…。すると厨房を襲ったのは??」
「このアマ!!信じられない!!よりによって私とチルノを間違えるとは!!容赦せんッ!!」
キレた…魔理沙の中で何かがキレた…!
雄たけびを上げ、小悪魔に飛び掛っていく。
「え?!ちょ!ちょっと!!」
「喰らえッ!!恋色マスター………スープレックスッ!」
ドグシャッ!
「アギッ!」
正面から小悪魔を抱え、思いっきり後ろに体を仰け反らせた。
魔理沙の見事なバックドロップが決まる!
白黒の美しいブリッジの先で、首を在らぬ方向に曲げ白目を剥く小悪魔。
「どうだ!…冗談のつもりで特訓していた技がこんな所で役に立つとは思わなかったぜ…!」
そして腰をかがめ落ちた帽子を拾おうとして…
ゴスッ!
「イテッ!」
その後頭部をパチュリーが本の角でドツく。
「うちの使用人に何するのよ…」
「おおおお…。今お前が殴ったのはさっきブツけて瘤になってる場所だぞ…」
後頭部を押さえ、涙目になりながら抗議する。
「それにですね!」
突然、魔理沙の背後から美鈴が抱きついてきた。
「今のはスープレックスじゃあ…ないッ!」
グショアッ!
美鈴の見事なバックドロップが決まった。
「後ろからやらないと、ね?パチュリー様」
何となく得意気な美鈴。
「どーでもいいのよそんな事…。それよりいつまで咲夜を床に寝かせてる気?ソファーに運んで頂戴」
「判りました!」
咲夜を抱き上げてソファーに持っていく美鈴とパチュリー。
「ちょっとあなた」小悪魔を呼ぶレミリア。
「テーブルに紅茶をこぼしてしまったわ」
「ハッ?!ハイッ!ただ今掃除いたします!」
飛び起きて部屋の外へ駆けていく。
みんなそれぞれ動き出す中、動かない者が二人。
バックドロップを受けたまま、頭と足が逆転してスカートが完全に捲れ上がった魔理沙と、その傍らにしゃがみこんで膝を抱えているフラン。
フランが先に口を開いた。
「………パンツ見えてるわ」
「パンツじゃあねぇぜ……」
「…かぼちゃパンツッ!」
「……ちげぇぜ…」
今日は厄日か?もう家に帰って寝るか?
そんな事を考えつつ、しばらくその体勢のまま身動きの取れない魔理沙だった。
「咲夜……大丈夫?」
ソファーに寝かされている咲夜の傍らで、膝を付いたフランが不安そうに羽を揺らしながら聞く。
時間の止まってしまった咲夜は答えない。
「大丈夫だと思うわ」
後ろに立っているパチュリーが答えた。フランの質問も最初からパチュリーに向けたものだったのだろう。
「しばらくの間は…。能力が戻らなければどうなるかは……検討もつかない……」
部屋の空気が重い。咲夜の元から立ち上がるフラン。
「…お姉様…勝てる?…咲夜のためにも」
黙って紅茶を飲むレミリア。
少し口をつけた所で、新しいカップをソーサーに戻す。ソーサーもカップに合わせて取り替えられている。
「…判らないわ…。『運命を乗り超える』…そんな奴相手にした事ないもの」
「随分と弱気だな」
テーブルにつっぷしたまま、濡れタオルで後頭部を押えている魔理沙。
イテテと呟きながらレミリアの方へ頭を向ける。
「普段ならもっと不適に構えてるのにな」
「正直に言うわ。さっきはあんな事を言ったけど…このレミリア・スカーレットは不安なのよ。フランの『破壊』に咲夜の『時止め』…。
この二つを持つ相手の前に立たなければ成らないと考えると…例え相手が子供でも…恐怖を感じるわ」
「……なあ、咲夜の遺した情報のお陰で相手が『能力追加型』だと判ったんだ…。私が行っても良いんだぜ?……スカーレット家に恩を売るチャンスだしな!」
「…あなたに頼むと、能力を取り返しても、取られても何を要求されるかわからないわね…」
「土地の権利書だけでいいぜ」
「それにやはり…これはスカーレット家の問題よ。そして今一番『勝てそうな能力』を持っているのも私…。私が行くのがベストだわ」
「あら、私は勝てないと思いますわ」
突然、部屋の中に声が響く。
「何者だ…!」
美鈴が警戒し、レミリアの側でいつでも戦えるよう構える。
フランは不安そうに、しかし庇う様に咲夜に抱きついた。
パチュリーは黙って様子を見ている。
「この声は…」
魔理沙は気づいた様だ。
「…何か言いたい事があるようね」
とレミリア。
「人に何か言う時は、相手の顔を見て言うのが礼儀じゃなくて?八雲・紫」
レミリアが見つめる先、何も無い空中にスッと切れ目が入る…。
ソファーに寝かされている咲夜の傍らで、膝を付いたフランが不安そうに羽を揺らしながら聞く。
時間の止まってしまった咲夜は答えない。
「大丈夫だと思うわ」
後ろに立っているパチュリーが答えた。フランの質問も最初からパチュリーに向けたものだったのだろう。
「しばらくの間は…。能力が戻らなければどうなるかは……検討もつかない……」
部屋の空気が重い。咲夜の元から立ち上がるフラン。
「…お姉様…勝てる?…咲夜のためにも」
黙って紅茶を飲むレミリア。
少し口をつけた所で、新しいカップをソーサーに戻す。ソーサーもカップに合わせて取り替えられている。
「…判らないわ…。『運命を乗り超える』…そんな奴相手にした事ないもの」
「随分と弱気だな」
テーブルにつっぷしたまま、濡れタオルで後頭部を押えている魔理沙。
イテテと呟きながらレミリアの方へ頭を向ける。
「普段ならもっと不適に構えてるのにな」
「正直に言うわ。さっきはあんな事を言ったけど…このレミリア・スカーレットは不安なのよ。フランの『破壊』に咲夜の『時止め』…。
この二つを持つ相手の前に立たなければ成らないと考えると…例え相手が子供でも…恐怖を感じるわ」
「……なあ、咲夜の遺した情報のお陰で相手が『能力追加型』だと判ったんだ…。私が行っても良いんだぜ?……スカーレット家に恩を売るチャンスだしな!」
「…あなたに頼むと、能力を取り返しても、取られても何を要求されるかわからないわね…」
「土地の権利書だけでいいぜ」
「それにやはり…これはスカーレット家の問題よ。そして今一番『勝てそうな能力』を持っているのも私…。私が行くのがベストだわ」
「あら、私は勝てないと思いますわ」
突然、部屋の中に声が響く。
「何者だ…!」
美鈴が警戒し、レミリアの側でいつでも戦えるよう構える。
フランは不安そうに、しかし庇う様に咲夜に抱きついた。
パチュリーは黙って様子を見ている。
「この声は…」
魔理沙は気づいた様だ。
「…何か言いたい事があるようね」
とレミリア。
「人に何か言う時は、相手の顔を見て言うのが礼儀じゃなくて?八雲・紫」
レミリアが見つめる先、何も無い空中にスッと切れ目が入る…。
そして同時刻。
「やっと森を抜けたぞ…。あそこに見えるのがフランドール…だっけか?…の家だな。思ったより大きいな…。
あそこまで行けば電話があると思うんだけど…。しかし……どうやって湖越えよう…?」
あそこまで行けば電話があると思うんだけど…。しかし……どうやって湖越えよう…?」
TO BE CONTINUED……