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第九間幕 - (2007/06/11 (月) 06:46:35) のソース
第九幕。冷たい色のライトが僅かずつ差し込み、やがて朝を思わせる淡い光に変わる。 そのライトの下、照らし出される銀装飾に囲まれたクレイドル。 その上に立つヴィネットとボタン。双方共に先ほどとは髪型もスーツカラーも違う。 二人、一礼。 ボタン「久しい、諸兄。2036の風・・・第九幕になるか。ご覧頂き恐悦至極。ボタンだ」 ヴィネット「Guten Morgen、ヴィネットです。これにて第三編を終了いたします。残すは最終第四編のみとなりました」 クッションに腰を下ろすボタン。ヴィネットは枕部に新しく誂えられた椅子のような場所へ。 ボタン「ver.2だったか?(http://2st.jp/kiral/bs-zf012c.htm) 角姉のスーツカラーが変わっているな。・・・今の色であるが」 ヴィネット「えぇ、随分と落ち着いたカラーになって嬉しいわね。以前のはまるで肩を出しているみたいだったし」 ボタン「まぁ、より一層えっちくなったと評判であるが・・・」 ヴィネット「・・・(盛大な溜息)」 ボタン「(苦笑)」 ライト、明るさをゆっくりと増していく。 ボタン「・・・あれは、アタシが角姉の所に行って・・・初めて四人が揃った時であったな。白姉とルクスが連れ立って」 ヴィネット「えぇ。12月も中旬、随分と寒くなってきた時だったわ」 ボタン「うむ。いずれにしてもきっと。母上が導いてくださったのだ」 フェスタ「・・・」 そう、強く頷いて言うボタン。微笑むヴィネット。 ライト、少し暗く。ボタン、自分の手に目をやる。 ボタン「我ら一代限りの物。このボディ以外一切何も持たずに生まれてくる物。しかしながら・・・多くの物をこの手に、そして心に受け取る事が出来る」 ヴィネット「・・・それは決して今だけの物じゃない。例えこの体がマスターと共にある事が出来なくなっても。・・・母が示したそれのように」 ボタン「うむ」 ヴィネット「それにね・・・」 ヴィネット、すみれ色の髪を揺らして、こちらを流し見る。 ヴィネット「私達は・・・与えられているだけ、ではないはずです」 ボタン「うむ。アタシ達もまた、主らにタカラモノを与える事が、出来ている。受け取ってくれている・・・そう信じている!」 ライト、更に暗く。 ボタン、大きく溜息を吐いて腕を組んだ。 ボタン「タカラモノか・・・ただ、自身には何も出来ぬと諦めて、ただ、その主の想いを受け取り続けるだけで・・・満足なのか?」 ヴィネット「・・・目を覚まし、全てを受け入れる事は辛いかもしれない」 ボタン「それでも直視せよ。我らは神姫だろう?」 ヴィネット「全てを識って。全てを受け入れて・・・受け入れてしまったら自分は何も出来ないと思っているの? 貴女は・・・」 ヴィネット。目を伏せて首を振る。 ヴィネット「それを・・・持っているのに」 ボタン「・・・。それでは諸兄。いつかまたお目にかかる」 ヴィネット「これよりは最終編。どうか、最後までお付き合いください。」 ライト消灯。 ・・・。ガタン、という何かが落ちる音。 固定していた台が壊れたか、ゆらゆらと揺れるスポットライトが差し込む。影もまたつられて揺れる。 何も無い舞台。何も無い場所。ただ、無機質な廊下が延々と続く。 その廊下の隅に、転がっている小さな種。ライトはそれを照らし出す。 種の表面には埃が積り、乾き切り、どこかで当たったのか・・・それとも踏まれたのか。小さなヒビが入っていた。 ・・・。 消灯。 第九幕。了。 [[2036の風]]