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第弐拾壱話:巨人と戦乙女 - (2010/11/21 (日) 09:22:50) のソース
第二十一話:巨人と戦乙女 ---- 背丈の違う二体の神姫が今、ぶつかり合っている。 背中にメカメカしいサブアームを装備した、双方似たようなシルエットの武装を身に纏っているが、背の高い方は青と白、低い方は赤と黒を基調としており、印象はまるで異なる。 黒い方がサブアームに持った自身の色と同じ大剣を振り下ろし、白い方に斬りかかるが、白い方は素体の右手に持った長剣で軽くいなして防いでしまう。 「くっ、この!」 「甘いわ!!」 黒い方が左手のバックラーで殴りかかる。白い方はそれをスカートアーマーで受け止め、鉄山甲で反撃する。 《ようし、そこまで。ルイス、アレイン、上がって良いぞ》 ここは都内某所にある試験場。 そこではもうすぐ発売される最新鋭の神姫―戦乙女型のアルトレーネとアルトアイネスの最終テストが執り行われていた。 「うー。遂に一回もルイ姉に勝てなかったよ・・・」 「でも、最初と比べるととっても強くなってたわ。今回も、結構危なかったし」 メンテナンスルームにて、アルトレーネのルイスとアルトアイネスのアレインが雑談に興じている。 「これで、ミカン姉も一緒に発売されればね・・・」 「それは無理よアレイン。姉さんのデータがあるから、私たちは生まれたの。それに、姉さんはその・・・色んな意味で高すぎるから・・・・・・」 「・・・・・・わかった・・・」 ここで話題に出てきた「ミカン」と言う神姫。レーネとアイネスの原型となった試作神姫―アルトリーゼの事を指す。 フル装備時の全高は25センチに達し、まさに独語で『巨人』の名を冠するに相応しいモデルだった。 しかし、あまりにも大きすぎるのとそれ故の整備性の悪さにより、代わりにそれをダウンサイジングしたアルトレーネとアルトアイネスが開発されたのである。 「そう言えばさ、あたし達はどうなるんだろ?発売されたら。リセット・・・されたくないな・・・・・・」 「それも、私たちにはわからないわ・・・」 ルイスは、あえて事実を伏せた。 発売されれば、自分たちは用済みと言うことを・・・・・・。 ―――――― 「ねぇマスター。こんな所に一体何があるのよ?」 同じ試験場の外で、ソフィアは疑問を口にしていた。 「お前はアルトレーネを知っているか?」 「へ?」 ミスター・ウォーは続ける。 「D.コーポレーションとアームズ・イン・ポケットが共同開発している新型の神姫だ。その試作機がここに保管されている。それを奪取してこいと言うのが、依頼主のお望みだそうだ」 「ふーん・・・その後は?」 「特に言われていない」 「じゃあ、好きにやっても良~い?」 ソフィアは口元を吊り上げて笑みを浮かべ、ミスター・ウォーに確認を求める。 「あまり派手にやるなよ」 「判ってるって♪」 ソフィアはシュベールトのスラスターを噴かすと監視の目をすり抜けて中へ侵入していく。 「フフフ・・・そのアルトレーネっての、どう壊してあげようかしら・・・?」 ――――― しばらく後、ソフィアは『P01』と書かれた扉の前にいた。中に入ると灰と紫の武装がハンガーに掛けられた状態で安置されている。 「これがアルトリーゼ・・・。フフフ・・・面白そうね」 プロトタイプだからか、1st素体であるソフィアでも問題なく装備できた。フル装備状態となった彼女はそのまま控え室に移動する。彼女の目は、神姫とは思えないほどにギラついていた。 ――――― 「リアパーツ接続状況問題なし・・・。今日も頑張るのです!」 そのころ、メンテナンスルームではルイスが次のテストの準備をしていた。 「じゃあ、私が相手をしてあげようかしら?」 「誰!?」 扉を開けて入ってきたのは紫と灰の甲冑―アルトリーゼの武装をまとったソフィアだった。 「それは・・・・・・ミカン姉さんの・・・!どういう事です?」 「お仕事なのよ。だから、恨まないでね♪」 紫紺刃の大剣が振り上げられる。ルイスは紺碧の小剣を構える。逃げていれば彼女の命も少しは延びたはずだが、もう遅かった・・・・・・。 ――――― 「何と言うことだ・・・・・・・・」 休憩を終えてメンテナンスルームに入った技術者の目の前には、信じられない光景が広がっていた。あちこちに付けられた黒こげや弾痕、亀裂の入った壁が激しい戦闘を物語っている。 その中央に倒れているのは白い戦乙女。ルイスだ。いや、『だった』と言うべきか。一言で言うなら『無慈悲そのもの』だった。 右腕は拳が砕け、左腕と右足は根本から無残にも引きちぎられ、半眼気味に開かれた瞳には魂が宿っていなかった。壁の隅には黒い戦乙女―アレインがいた。表情は引きつっている。 その後、保安部から『アルトリーゼが強奪された』との報告が入り、彼は泡を吹いて失神してしまった。 [[とっぷへもどる>http://www19.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2005.html]]