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「猫と仔猫とぷち猫と……。/パート3と1/33」(2009/05/12 (火) 00:42:49) の最新版変更点
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*猫と仔猫とぷち猫と……。
**パート3と1/33
見下ろせば、母なる大地は遥かに眼下。
(……私はカモメ)
などと現実逃避しつつも、竜巻に巻き上げられ、遥か上空まで吹き飛ばされた事実は揺らがない。
「……はろー、すかぁい。って昔のヒーコーキ乗りは言ったもんだ」
『誰ッスか?』
「ジャック・バートレット大尉だな」
『思いっきり架空の人物ッス!! オマケに乗機がF4とF14なんで思いっきり現代人ッス!!』
「馬鹿野郎!!」
『ひうっ!?』
唐突に怒鳴られ、怯む仔猫。
「今は2036年。……30年以上前の奴なら昔でOK!!」
『そ、そんなもんッスか?』
「そんなもんさ、なぁ奈緒よう?」
「知らないわよ……」
取りあえず手足を広げてエアブレーキ代わりに、不規則にロール(回転)していた身体を立て直す。
絶妙のタイミングでスラスターを合わせてくれたのは、制御するのがヴォルフならでは。
「……それより、後はあそこに飛び込むだけよね?」
視線の先には大きく口を広げた竜巻の目に当たる部分。
竜巻を発生させている間、敵は動けない。
ならば後はこのまま降りるだけだ。
「いや。……その前に歓迎の祝砲があるみたいだぜ」
「?」
疑問を感じ、周囲を見渡した直後。
「―――!!」
言いようも無い殺気を感じて咄嗟に身を翻す。
「くっ!!」
閃光と、数瞬遅れて轟く轟音。
「落雷を無差別にばら撒き始めたぜ。……向こうも焦っている証拠だ」
「って、これ……っ!!」
冷静に解析するヴォルフとは真逆に、奈緒は必死で落雷を避け続ける。
ヴォルフのブースターによる絶妙な機動補佐が無ければとっくに被弾して黒焦げだろう。
『奈緒ちゃん、避けてばかりじゃ駄目ッス!! 早く竜巻の中心部に飛び込むッスよ!!』
「……む、無理、無理だからぁ!!」
回避に手一杯でとてもではないが移動など満足に出来そうも無い。
「当たったら、やばいわよね。これ……」
「だが、やるしかあるめぇ。……なぁに、俺が付いてるんだ、何とでもできるだろう?」
「……よね」
背中に繋がれたヴォルフの声に、奈緒は決意を固める。
「……制御、しっかりするのよ!?」
「任せな!!」
落雷は旋風刃の空気操作によりある程度誘導されている。
逆に言えば、落雷の軌道は落ちる一瞬前にある程度の予測がつく。
しかし、その余裕は殆ど無く、安全に回避を行おうと思えば移動すら儘ならない。
だから。
あえて奈緒とヴォルフは危険な賭けに出た。
「行けぇ!!」
槍の石突にあるワイヤーアンカー。
本来は敵を捕縛する為の追加装備だが、それを竜巻に向けて打ち出し、巻き込ませる。
そして。
そのワイヤーを巻き戻す事で、一気に竜巻との距離を詰める作戦だ。
(移動速度は格段に早くなるとは言え、直撃を受けたらアウト。張っているワイヤーに落ちてもワイヤーを伝って電撃が来る……)
本来ならば自ら被弾の確率を上げる悪手。
だが、落雷の弾幕を抜けて竜巻に辿り着くには他の手が無い。
「……勝負!!」
竜巻に飲み込まれたワイヤーを巻き戻し、一気に加速。
見る見るうちに竜巻が視界の中で大きくなってゆく。
そして、脇をかすめる様に落ちる雷は一つや二つではない。
「―――っく!!」
直撃を察知し、大きく身を翻す。
風に煽られ、一瞬で詰めた距離の半分以上が遠のくが、奈緒もヴォルフも諦めなかった。
『行くッス、奈緒ちゃん!!』
「言われるまでも―――」
「―――無ぇぜ!!」
奈緒のショルダーブースターと、ヴォルフのリアブースターが最大出力で唸りを上げる。
そして、巻き取られていくワイヤーがその距離を詰め。
「―――っ!!」
数発目の落雷を回避したその直後。
ガチッと音がして、ワイヤーの長さがゼロになった。
「……え?」
一瞬。
暴風が止んだ。
吹き荒れ、肌を叩いていた風は嘘のように静まり、静かな浮遊感が奈緒を包む。
「……来たぜ、奈緒」
「…………」
「ここが竜巻の中心部。……台風の目だ」
「…!!」
ここまで来れば落雷は無い。
そして、最早奈緒と白幻を隔てるのは、ただ距離だけだった。
「……行くぜ、正真正銘これが最後の決戦だぁ!!」
「ええ、行くわよ。ヴォルフ!!」
奈緒は、ヴォルフのブースターに押し出され、弾丸のように地面へ向けて加速し始めた。
◆
天雷旋風刃は敵の攻撃を許さず、こちらだけが一方的に攻撃できる白幻の最大の奥儀だ。
だがしかし、その守りをつかさどる竜巻は、唯一真上だけが開いている。
落雷の弾幕を潜り抜け、その唯一の弱点に奈緒が飛び込んだのを察知して尚、白幻は動けなかった。
「……くっ」
絶対的な効力を持つ天雷旋風刃だが、周囲の竜巻から自身を守る為に常に旋風刃を操作せねばならない欠点がある。
故に、敵が竜巻の中に飛び込んだと分っても、咄嗟に旋風刃を解除する事が出来ないのだ。
周囲の竜巻はその生成を中止してもすぐには消えない。
そして、その竜巻が消える前に旋風刃の操作をやめたり、その場を動こうとすれば、白幻自身が自ら生み出した竜巻に飲み込まれかねないからだ。
「……おのれ」
こうなれば、最早接近戦は避けられない。
天空刃の力を殆ど振るえない現状で、素早い奈緒を懐に入れたくは無かったが、最早止むを得ない。
竜巻が消えるまで、天空刃抜きで凌ぐしかないだろう。
「……やりおるわ」
背負ったサブアームを広げ、先端の長爪を構える白幻。
「……天空刃を使わぬ殴り合いなど何時ぶりか……。……この感覚、久しく忘れておったわ……」
追い詰められては居るが。
「……ふむ」
その感覚は白幻にとって懐かしいモノだった。
「……悪くない」
呟き、白幻は跳んだ。
それは、数瞬前まで考えていた待ちの戦法とは真逆。
自ら仕掛ける攻めの戦法。
即ち。
白幻本来の戦法だった。
◆
「へん。向こうから来たぜ」
「自分で竜巻に跳ばされたと言うの!?」
竜巻の回廊を、上と下から進んで迫る奈緒と白幻。
『やるッス、奈緒ちゃん、ヴォルさん!!』
『……お二人とも、決着を……」
仔猫と、八雲の声に奈緒が頷く。
「……行くぜ、奈緒。ファイナルフォームだ!!」
「……!」
瞬時に送られてくるデータ。
それを奈緒が理解するのと同時に、背中から分離したヴォルフが変形し、奈緒のスピアに合体する。
「これが、俺たちの。最強の一撃だぜぇ!!」
組みあがったその姿は、長柄の大剣。
刀身の下にプチますぃ~んず、ヴォルフを組み込んだインテリジェンスソード。
触れた物の固有振動数を感知して共振、分解するその機能は、複合装甲が主となる防具を切り裂くのには不向きだが、単一素材の固形物を砕くには何より有効な一撃となる。
「ファイナルアタックだぁ、行けぇ。奈緒ぉぉぉっ!!」
そして、それを組み上げた八雲は、それにこう名づけた。
「ソード・ブレイカーぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
そして、奈緒と白幻は正面からぶつかり……。
◆
刃は。
砕け散った。
◆
「……ふむ。……儂の負けじゃな」
試合が終わった後。白幻はそう呟いて目を閉じた。
「……くくく。敗北も久方ぶりじゃの。……忘れかけておったわ……」
傍らには、フィールドから回収してきた天空刃。
白幻は、ソードブレイカーで砕かれ、破壊されたその残骸を感慨深く見つめる。
「……便利ではあったが、この感覚も捨てがたいものじゃな……」
くくく。と笑い、白幻は呟く。
「……決して負けない戦には、“価値”は無いのかも知れんな……」
そうして思いを馳せた白幻の心境を。
「いや。負けないなら、“勝ち”しか無いと思うッス」
何言ってるんだ、この神姫。と言わんばかりの口調で、仔猫が一言の元に打ち砕いた。
「……仔猫、アンタ少し自重なさい」
「だぜ。……白虎の姉ちゃん、orz ←ってなっちまってるぜ?」
そして。文字通り、orz 状態の白幻の背後で、八雲が彼女のマスターに相対していた。
「天空刃、確かに破壊させてもらいました」
「ひ、酷いわぁ……。くすん……」
白幻のオーナーは、年のころ40程の女性だった。
身なりは上品で、貴婦人という言葉が合致する。
「……折角白ちゃんにピッタリの武器だったのにぃ……」
「……所で、この天空刃。……ある時私の工房から盗まれた物なのですが……」
「……ぎく」
「……どうやって手に入れたのか、お聞かせ願えますか。“お母様”?」
「「「お母様!?」」」
事情を知らない仔猫、奈緒、ヴォルフが声をそろえた。
「……む? 知らんのか。我が主の名は草薙直子。……八雲殿の母上であるぞ」
「……つまり、母娘(おやこ)?」
「そうじゃな」
うむうむと頷く白虎。
「で、お母様。如何なのですか? この剣、どうやって入手なされました?」
「……え、えっとね。……八雲ちゃんのお部屋に行ったら……」
たどたどしく説明し始める、いい歳こいた母親。
「……素敵な剣が落ちてたので拾ったの」
「何処に落ちていたのです?」
「ケースの中?」
「それは安置しておいたのです!! そこから持ち出す事を普通は窃盗と言います、犯罪です!!」
「ち、違うわよ。お母さん犯罪者じゃないわよ?」
慌てて腕をぶんぶん振り回す中年女。
「大体、教職にある者が、それも校長が、娘の部屋から窃盗を働くとは何事ですか!?」
「ち、違うの。天使さんと悪魔さんが葛藤の末……。
天使「ナイスな剣ですわ、貰いてしまいましょう?」
悪魔「そうだな、そうしようぜ」
天使「おほほほほほほほほ」
悪魔「わはははははははは」
って感じに満場一致で……!!」
「お黙りなさい、お母様。そして、そこに正座」
「はい」
戯言を一刀両断され、神姫センターの床に正座で反省する校長。
「……ん? 校長?」
「如何したの、仔猫?」
「……そう言えば、このおばさんに見覚えあると思ってたッス」
「……校長って、まさか……」
「うちの校長ッス」
「……世も末ね」
教師の長たる校長からしてこうなのだ。
仔猫の学校に底知れぬ不安を感じた奈緒は正しい。
「……大丈夫なのかしら、二本の未来……」
多分ダメだと思う。
「……まぁ、ともあれ。これで一本目。だな」
ヴォルフがそう言って八雲を見上げた。
「……あ、そうか。……残り6本の剣を壊せば、八雲さんの剣がGETできるッス!!」
とりあえず。
仔猫の野望(?)が一歩近づいた事だけは確かなようだった。
◆
猫と仔猫とぷち猫と……。
―――了
◆
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*猫と仔猫とぷち猫と……。
**パート3と1/33
見下ろせば、母なる大地は遥かに眼下。
(……私はカモメ)
などと現実逃避しつつも、竜巻に巻き上げられ、遥か上空まで吹き飛ばされた事実は揺らがない。
「……はろー、すかぁい。って昔のヒーコーキ乗りは言ったもんだ」
『誰ッスか?』
「ジャック・バートレット大尉だな」
『思いっきり架空の人物ッス!! オマケに乗機がF4とF14なんで思いっきり現代人ッス!!』
「馬鹿野郎!!」
『ひうっ!?』
唐突に怒鳴られ、怯む仔猫。
「今は2036年。……30年以上前の奴なら昔でOK!!」
『そ、そんなもんッスか?』
「そんなもんさ、なぁ奈緒よう?」
「知らないわよ……」
取りあえず手足を広げてエアブレーキ代わりに、不規則にロール(回転)していた身体を立て直す。
絶妙のタイミングでスラスターを合わせてくれたのは、制御するのがヴォルフならでは。
「……それより、後はあそこに飛び込むだけよね?」
視線の先には大きく口を広げた竜巻の目に当たる部分。
竜巻を発生させている間、敵は動けない。
ならば後はこのまま降りるだけだ。
「いや。……その前に歓迎の祝砲があるみたいだぜ」
「?」
疑問を感じ、周囲を見渡した直後。
「―――!!」
言いようも無い殺気を感じて咄嗟に身を翻す。
「くっ!!」
閃光と、数瞬遅れて轟く轟音。
「落雷を無差別にばら撒き始めたぜ。……向こうも焦っている証拠だ」
「って、これ……っ!!」
冷静に解析するヴォルフとは真逆に、奈緒は必死で落雷を避け続ける。
ヴォルフのブースターによる絶妙な機動補佐が無ければとっくに被弾して黒焦げだろう。
『奈緒ちゃん、避けてばかりじゃ駄目ッス!! 早く竜巻の中心部に飛び込むッスよ!!』
「……む、無理、無理だからぁ!!」
回避に手一杯でとてもではないが移動など満足に出来そうも無い。
「当たったら、やばいわよね。これ……」
「だが、やるしかあるめぇ。……なぁに、俺が付いてるんだ、何とでもできるだろう?」
「……よね」
背中に繋がれたヴォルフの声に、奈緒は決意を固める。
「……制御、しっかりするのよ!?」
「任せな!!」
落雷は旋風刃の空気操作によりある程度誘導されている。
逆に言えば、落雷の軌道は落ちる一瞬前にある程度の予測がつく。
しかし、その余裕は殆ど無く、安全に回避を行おうと思えば移動すら儘ならない。
だから。
あえて奈緒とヴォルフは危険な賭けに出た。
「行けぇ!!」
槍の石突にあるワイヤーアンカー。
本来は敵を捕縛する為の追加装備だが、それを竜巻に向けて打ち出し、巻き込ませる。
そして。
そのワイヤーを巻き戻す事で、一気に竜巻との距離を詰める作戦だ。
(移動速度は格段に早くなるとは言え、直撃を受けたらアウト。張っているワイヤーに落ちてもワイヤーを伝って電撃が来る……)
本来ならば自ら被弾の確率を上げる悪手。
だが、落雷の弾幕を抜けて竜巻に辿り着くには他の手が無い。
「……勝負!!」
竜巻に飲み込まれたワイヤーを巻き戻し、一気に加速。
見る見るうちに竜巻が視界の中で大きくなってゆく。
そして、脇をかすめる様に落ちる雷は一つや二つではない。
「―――っく!!」
直撃を察知し、大きく身を翻す。
風に煽られ、一瞬で詰めた距離の半分以上が遠のくが、奈緒もヴォルフも諦めなかった。
『行くッス、奈緒ちゃん!!』
「言われるまでも―――」
「―――無ぇぜ!!」
奈緒のショルダーブースターと、ヴォルフのリアブースターが最大出力で唸りを上げる。
そして、巻き取られていくワイヤーがその距離を詰め。
「―――っ!!」
数発目の落雷を回避したその直後。
ガチッと音がして、ワイヤーの長さがゼロになった。
「……え?」
一瞬。
暴風が止んだ。
吹き荒れ、肌を叩いていた風は嘘のように静まり、静かな浮遊感が奈緒を包む。
「……来たぜ、奈緒」
「…………」
「ここが竜巻の中心部。……台風の目だ」
「…!!」
ここまで来れば落雷は無い。
そして、最早奈緒と白幻を隔てるのは、ただ距離だけだった。
「……行くぜ、正真正銘これが最後の決戦だぁ!!」
「ええ、行くわよ。ヴォルフ!!」
奈緒は、ヴォルフのブースターに押し出され、弾丸のように地面へ向けて加速し始めた。
◆
天雷旋風刃は敵の攻撃を許さず、こちらだけが一方的に攻撃できる白幻の最大の奥儀だ。
だがしかし、その守りをつかさどる竜巻は、唯一真上だけが開いている。
落雷の弾幕を潜り抜け、その唯一の弱点に奈緒が飛び込んだのを察知して尚、白幻は動けなかった。
「……くっ」
絶対的な効力を持つ天雷旋風刃だが、周囲の竜巻から自身を守る為に常に旋風刃を操作せねばならない欠点がある。
故に、敵が竜巻の中に飛び込んだと分っても、咄嗟に旋風刃を解除する事が出来ないのだ。
周囲の竜巻はその生成を中止してもすぐには消えない。
そして、その竜巻が消える前に旋風刃の操作をやめたり、その場を動こうとすれば、白幻自身が自ら生み出した竜巻に飲み込まれかねないからだ。
「……おのれ」
こうなれば、最早接近戦は避けられない。
天空刃の力を殆ど振るえない現状で、素早い奈緒を懐に入れたくは無かったが、最早止むを得ない。
竜巻が消えるまで、天空刃抜きで凌ぐしかないだろう。
「……やりおるわ」
背負ったサブアームを広げ、先端の長爪を構える白幻。
「……天空刃を使わぬ殴り合いなど何時ぶりか……。……この感覚、久しく忘れておったわ……」
追い詰められては居るが。
「……ふむ」
その感覚は白幻にとって懐かしいモノだった。
「……悪くない」
呟き、白幻は跳んだ。
それは、数瞬前まで考えていた待ちの戦法とは真逆。
自ら仕掛ける攻めの戦法。
即ち。
白幻本来の戦法だった。
◆
「へん。向こうから来たぜ」
「自分で竜巻に跳ばされたと言うの!?」
竜巻の回廊を、上と下から進んで迫る奈緒と白幻。
『やるッス、奈緒ちゃん、ヴォルさん!!』
『……お二人とも、決着を……』
仔猫と、八雲の声に奈緒が頷く。
「……行くぜ、奈緒。ファイナルフォームだ!!」
「……!」
瞬時に送られてくるデータ。
それを奈緒が理解するのと同時に、背中から分離したヴォルフが変形し、奈緒のスピアに合体する。
「これが、俺たちの。最強の一撃だぜぇ!!」
組みあがったその姿は、長柄の大剣。
刀身の下にプチますぃ~んず、ヴォルフを組み込んだインテリジェンスソード。
触れた物の固有振動数を感知して共振、分解するその機能は、複合装甲が主となる防具を切り裂くのには不向きだが、単一素材の固形物を砕くには何より有効な一撃となる。
「ファイナルアタックだぁ、行けぇ。奈緒ぉぉぉっ!!」
そして、それを組み上げた八雲は、それにこう名づけた。
「ソード・ブレイカーぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
そして、奈緒と白幻は正面からぶつかり……。
◆
刃は。
砕け散った。
◆
「……ふむ。……儂の負けじゃな」
試合が終わった後。白幻はそう呟いて目を閉じた。
「……くくく。敗北も久方ぶりじゃの。……忘れかけておったわ……」
傍らには、フィールドから回収してきた天空刃。
白幻は、ソードブレイカーで砕かれ、破壊されたその残骸を感慨深く見つめる。
「……便利ではあったが、この感覚も捨てがたいものじゃな……」
くくく。と笑い、白幻は呟く。
「……決して負けない戦には、“価値”は無いのかも知れんな……」
そうして思いを馳せた白幻の心境を。
「いや。負けないなら、“勝ち”しか無いと思うッス」
何言ってるんだ、この神姫。と言わんばかりの口調で、仔猫が一言の元に打ち砕いた。
「……仔猫、アンタ少し自重なさい」
「だぜ。……白虎の姉ちゃん、orz ←ってなっちまってるぜ?」
そして。文字通り、orz 状態の白幻の背後で、八雲が彼女のマスターに相対していた。
「天空刃、確かに破壊させてもらいました」
「ひ、酷いわぁ……。くすん……」
白幻のオーナーは、年のころ40程の女性だった。
身なりは上品で、貴婦人という言葉が合致する。
「……折角白ちゃんにピッタリの武器だったのにぃ……」
「……所で、この天空刃。……ある時私の工房から盗まれた物なのですが……」
「……ぎく」
「……どうやって手に入れたのか、お聞かせ願えますか。“お母様”?」
「「「お母様!?」」」
事情を知らない仔猫、奈緒、ヴォルフが声をそろえた。
「……む? 知らんのか。我が主の名は草薙直子。……八雲殿の母上であるぞ」
「……つまり、母娘(おやこ)?」
「そうじゃな」
うむうむと頷く白虎。
「で、お母様。如何なのですか? この剣、どうやって入手なされました?」
「……え、えっとね。……八雲ちゃんのお部屋に行ったら……」
たどたどしく説明し始める、いい歳こいた母親。
「……素敵な剣が落ちてたので拾ったの」
「何処に落ちていたのです?」
「ケースの中?」
「それは安置しておいたのです!! そこから持ち出す事を普通は窃盗と言います、犯罪です!!」
「ち、違うわよ。お母さん犯罪者じゃないわよ?」
慌てて腕をぶんぶん振り回す中年女。
「大体、教職にある者が、それも校長が、娘の部屋から窃盗を働くとは何事ですか!?」
「ち、違うの。天使さんと悪魔さんが葛藤の末……。
天使「ナイスな剣ですわ、貰いてしまいましょう?」
悪魔「そうだな、そうしようぜ」
天使「おほほほほほほほほ」
悪魔「わはははははははは」
って感じに満場一致で……!!」
「お黙りなさい、お母様。そして、そこに正座」
「はい」
戯言を一刀両断され、神姫センターの床に正座で反省する校長。
「……ん? 校長?」
「如何したの、仔猫?」
「……そう言えば、このおばさんに見覚えあると思ってたッス」
「……校長って、まさか……」
「うちの校長ッス」
「……世も末ね」
教師の長たる校長からしてこうなのだ。
仔猫の学校に底知れぬ不安を感じた奈緒は正しい。
「……大丈夫なのかしら、日本の未来……」
多分ダメだと思う。
「……まぁ、ともあれ。これで一本目。だな」
ヴォルフがそう言って八雲を見上げた。
「……あ、そうか。……残り6本の剣を壊せば、八雲さんの剣がGETできるッス!!」
とりあえず。
仔猫の野望(?)が一歩近づいた事だけは確かなようだった。
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猫と仔猫とぷち猫と……。
―――了
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