禍つ刃を抜き、競う白日(後半)
それは一瞬の出来事だ……クララを中心にして解放された巨大な紫電は、
柱の影にいたアルマとクララを呑み込もうと蠢きだした。そこにアルマが
“ヨルムンガルド”を数本投げ込んで、避雷針代わりとして電気の流れを
阻害した。白熱化させる関係から、“ヨルムンガルド”のセラミック刃は
電気を通す構造なのだ。そして出来た大きな風穴に、ロッテが撃ち込む!
奇襲を受けて不発に終わった紫電が、虚空に散るのは数秒も掛からない。
柱の影にいたアルマとクララを呑み込もうと蠢きだした。そこにアルマが
“ヨルムンガルド”を数本投げ込んで、避雷針代わりとして電気の流れを
阻害した。白熱化させる関係から、“ヨルムンガルド”のセラミック刃は
電気を通す構造なのだ。そして出来た大きな風穴に、ロッテが撃ち込む!
奇襲を受けて不発に終わった紫電が、虚空に散るのは数秒も掛からない。
「ぅ……既知現象の再現をベースにする“情報魔導学”の弱点かな……」
「ですけど紫電の壁に遮られて、雷撃も十分な打撃になってませんの」
「かといってあたしの突撃では反撃のリスクもありますし……さてと」
「……そろそろ〆に行くんだよ。アルマお姉ちゃん、ロッテお姉ちゃん」
「望む所ですの♪現時点で最大の一撃を、お見舞いしますの……!」
「ですけど紫電の壁に遮られて、雷撃も十分な打撃になってませんの」
「かといってあたしの突撃では反撃のリスクもありますし……さてと」
「……そろそろ〆に行くんだよ。アルマお姉ちゃん、ロッテお姉ちゃん」
「望む所ですの♪現時点で最大の一撃を、お見舞いしますの……!」
三人のライフゲージは、既に限界ギリギリまで達していた。残り時間も
後1~2分と言った所である。どの道これが、最期の一撃になるのだ!
ロッテは一度“閃牙”を鞘に収め、左の腰から“右の腰”に付け替え、
そして“左手”で抜き払った!それと同時に、弓を想起させる放電が、
“ライナスト”全体を覆う。これがロッテの必殺技、のプロトタイプ!
後1~2分と言った所である。どの道これが、最期の一撃になるのだ!
ロッテは一度“閃牙”を鞘に収め、左の腰から“右の腰”に付け替え、
そして“左手”で抜き払った!それと同時に、弓を想起させる放電が、
“ライナスト”全体を覆う。これがロッテの必殺技、のプロトタイプ!
「さぁ、ライナスト!“疾く”“疾く”“疾く”……ッ!!」
「あたしだって、負けていませんよ!龍神剣エルジェネリスッ!!」
「……充電カートリッジ、フルリロード!“コライセル”、出番だよ」
「あたしだって、負けていませんよ!龍神剣エルジェネリスッ!!」
「……充電カートリッジ、フルリロード!“コライセル”、出番だよ」
アルマは、前の戦いで見せた様に“十三の刃”を巨大な剣に合体させる。
クララの方はというと、伸長した“コライセル”の先端に輝く火球を複数
展開して、ハンマーシードの様に幾つも繋げたボールを振り回している。
私には分かる。アルマの“陽炎”とクララの“魔術”も、プロトタイプ!
これは恐らく、彼女らが“アルファル”抜きで出せる最大威力であろう。
クララの方はというと、伸長した“コライセル”の先端に輝く火球を複数
展開して、ハンマーシードの様に幾つも繋げたボールを振り回している。
私には分かる。アルマの“陽炎”とクララの“魔術”も、プロトタイプ!
これは恐らく、彼女らが“アルファル”抜きで出せる最大威力であろう。
「名付けて──────“陽炎”!!でやぁぁぁーッ!!!」
「射抜け、ライナスト!“ライジング・ボルト”ッ!!!」
「砕いて、“ヴァニッシュ・ケイン”ッ!!はぁ……っ!!」
「射抜け、ライナスト!“ライジング・ボルト”ッ!!!」
「砕いて、“ヴァニッシュ・ケイン”ッ!!はぁ……っ!!」
全力全開の、雷の矢が……炎の剣が……光の鎚が、神殿を打ち砕く!!
バトルフィールドの中央でスパークした熱エネルギーが、領域の全てを
破壊する……が、その前にジャッジシステムのセーフティが起動した。
三人の神姫素体を収納しているポッドが開いたのも、ほぼ同時だった。
バトルフィールドの中央でスパークした熱エネルギーが、領域の全てを
破壊する……が、その前にジャッジシステムのセーフティが起動した。
三人の神姫素体を収納しているポッドが開いたのも、ほぼ同時だった。
『全員ライフ0、この試合はドローとします。お疲れ様でした』
「ふ、はぁ……ロッテちゃん、やりすぎですよ。躯が痺れてません?」
「……アルマお姉ちゃんだって、あの熱量は制御が大変そうなんだよ」
「そう言うクララちゃんも、まだまだ出力全開じゃないですの~……」
「ふ、はぁ……ロッテちゃん、やりすぎですよ。躯が痺れてません?」
「……アルマお姉ちゃんだって、あの熱量は制御が大変そうなんだよ」
「そう言うクララちゃんも、まだまだ出力全開じゃないですの~……」
まさにエインヘリヤル。互いと戦い合っても、それが過ぎれば仲良しだ。
戦った上での長所や弱点を、和気藹々と分析している。着替えながらな。
……“妹”達の着替え、見るなよ?ともかく、私もドライバーを置いた。
戦った上での長所や弱点を、和気藹々と分析している。着替えながらな。
……“妹”達の着替え、見るなよ?ともかく、私もドライバーを置いた。
「ふぅぅ……お前達、ダメージは残っていないのか?あれ程激しいしな」
「大丈夫ですの~♪それよりマイスターも、根を詰めてませんですの?」
「有無。大丈夫だ、最終調整も次の昇格試合には間に合うぞ。それより」
「それより?……そう言えばマイスター、全然喋ってなかったんだよ?」
「真剣勝負中のお前達だ、邪魔するのは悪いと思ってな。ともかくだ!」
「えと、これは……メモリーチップですか?題名は……“ウインク”?」
「大丈夫ですの~♪それよりマイスターも、根を詰めてませんですの?」
「有無。大丈夫だ、最終調整も次の昇格試合には間に合うぞ。それより」
「それより?……そう言えばマイスター、全然喋ってなかったんだよ?」
「真剣勝負中のお前達だ、邪魔するのは悪いと思ってな。ともかくだ!」
「えと、これは……メモリーチップですか?題名は……“ウインク”?」
私は、三姉妹それぞれに市販品のメモリーチップを手渡す。表面の字は、
厳密には“W.I.N.K.”だ。これまで私の作品専用に作った幾多のデータ。
それを土台に、日暮の元でこの半年学び続けてきた情報処理のノウハウ、
そして独学で学んだ物をベースに作り上げた、専用統括制御プログラム!
“Weapon Integrated to Nerves frameworK(中枢構造への武装統合)”、
その為に……“アルファル”と我が“妹”達の為に作った、渾身の作だ!
厳密には“W.I.N.K.”だ。これまで私の作品専用に作った幾多のデータ。
それを土台に、日暮の元でこの半年学び続けてきた情報処理のノウハウ、
そして独学で学んだ物をベースに作り上げた、専用統括制御プログラム!
“Weapon Integrated to Nerves frameworK(中枢構造への武装統合)”、
その為に……“アルファル”と我が“妹”達の為に作った、渾身の作だ!
「有無。補助システムだが、直接お前達の“心”を書き換えはしない」
「例えるならば、何処ぞのエクササイズ用DVD……な気がするもん」
「それを言うなクララや。確かにお前達の躯には、多少負担が掛かる」
「だからこそあたし達が学んで、読み込む必要がある……ですよね?」
「その為に躯を動かす辺りとか、エクササイズとよく似てますの~♪」
「例えるならば、何処ぞのエクササイズ用DVD……な気がするもん」
「それを言うなクララや。確かにお前達の躯には、多少負担が掛かる」
「だからこそあたし達が学んで、読み込む必要がある……ですよね?」
「その為に躯を動かす辺りとか、エクササイズとよく似てますの~♪」
そう。彼女らが“使う”と決意しなければ、決して効果は現さない構造。
起動すればそれで済む訳でもなく、学習を要するという非合理的な設定。
日暮の協力を十全に得て造ったプログラムは、敢えてそうしてあるのだ。
とは言え三姉妹達もそれで納得しているらしい。安堵の心が湧き上がる。
起動すればそれで済む訳でもなく、学習を要するという非合理的な設定。
日暮の協力を十全に得て造ったプログラムは、敢えてそうしてあるのだ。
とは言え三姉妹達もそれで納得しているらしい。安堵の心が湧き上がる。
「所でどうだ?“レーラズ”の着心地は。動きやすさはあると思うが」
「うーん……防御力は、他の多機能性が邪魔して向上してないですの」
「でも動きやすいし、“シルフィード”との相性もバッチリだもんね」
「耐えるのでなく避ける……今回のコンセプトは、それでしたっけ?」
「そうだ!神姫ならではの身体能力を活かす、それがコンセプトだ!」
「うーん……防御力は、他の多機能性が邪魔して向上してないですの」
「でも動きやすいし、“シルフィード”との相性もバッチリだもんね」
「耐えるのでなく避ける……今回のコンセプトは、それでしたっけ?」
「そうだ!神姫ならではの身体能力を活かす、それがコンセプトだ!」
そうして私は、皆をクレイドルに寝かせた。まずは“W.I.N.K.”の実装。
そして定着が済んだら、いよいよ“アルファル”とのご対面だ。そう……
“お披露目”でなく“ご対面”だ!この意味は、間もなく分かるだろう!
そして定着が済んだら、いよいよ“アルファル”とのご対面だ。そう……
“お披露目”でなく“ご対面”だ!この意味は、間もなく分かるだろう!
「あの、所でマイスター……“アルファル”ってどんな装備なんです?」
「そう言えばボクら、設計図の断片や簡易試作品位しか見てないんだよ」
「充電が終わったら見せてやろう。今は模擬戦闘の疲れを癒しておくれ」
「わたしもドキドキですの~♪だってあの設計図、158枚一組ですし」
「そう言えばボクら、設計図の断片や簡易試作品位しか見てないんだよ」
「充電が終わったら見せてやろう。今は模擬戦闘の疲れを癒しておくれ」
「わたしもドキドキですの~♪だってあの設計図、158枚一組ですし」
──────“妖精”の降臨は、もうすぐなんだよ……?