敵の居場所の当ても無く、また単純に走るのが好きだからと言う理由で、ハウは疾走していた。
頬に当たる風が、ヴァーチャルとはいえ気持ちいい。そう思ったときだった。
「―――――――っ!?」
バイクのマフラーに、軽い衝撃が走った。
遅れて響く高い発砲音。
スナイパーライフルなどで撃たれた場合、弾丸は音速を超えるため着弾した後に発砲音が聞こえる。つまり・・・・・・・・・
「とんでもなく遠い・・・・えと、とりあえずあっちかな?」
ハウは感度の良い耳で、発砲音がした方を探る。
風の音に阻まれてはいるが、何かが動くような・・・そうでないような音を捉えた。
「今日の相手ってマスターの妹さんなんだよね・・・手加減したほうがいいのかな」
そういっている間に、バイクは裏道へと入り込む。
狙撃された場合、狙撃手との間に何かバリケードを作ればあっさりと無効化される。
こちらは自由に逃げられるが向こうは一つの場所で、ひたすら獲物がくるのを待たなければいけないのだ。
その辺りは狩りに近い。
「でも狩るのは僕だ。狼じゃないけれど、僕が狩るんだ」
頬に当たる風が、ヴァーチャルとはいえ気持ちいい。そう思ったときだった。
「―――――――っ!?」
バイクのマフラーに、軽い衝撃が走った。
遅れて響く高い発砲音。
スナイパーライフルなどで撃たれた場合、弾丸は音速を超えるため着弾した後に発砲音が聞こえる。つまり・・・・・・・・・
「とんでもなく遠い・・・・えと、とりあえずあっちかな?」
ハウは感度の良い耳で、発砲音がした方を探る。
風の音に阻まれてはいるが、何かが動くような・・・そうでないような音を捉えた。
「今日の相手ってマスターの妹さんなんだよね・・・手加減したほうがいいのかな」
そういっている間に、バイクは裏道へと入り込む。
狙撃された場合、狙撃手との間に何かバリケードを作ればあっさりと無効化される。
こちらは自由に逃げられるが向こうは一つの場所で、ひたすら獲物がくるのを待たなければいけないのだ。
その辺りは狩りに近い。
「でも狩るのは僕だ。狼じゃないけれど、僕が狩るんだ」
クラブハンド・フォートブラッグ
第十話
『Crab hand Fort Bragg』
「初弾ミス・・・・一発で決めたいんですけどね」
バトルステージで三番目に高いビルの屋上に、サラは陣取っていた。
バックパックに取り付けられた補助脚を展開し、安定性を確保しライフルを構えている。
『無理も無いわね。あのハウリン、ガトリングを平気で避けるらしいわよ』
「素体にブーツの装備だけでですか!? ・・・まるで化物ですね」
『何でも噂によると“切り裂き”を倒したとか倒してないとか・・・・』
「“切り裂き”って・・・・ちょっと前にあった神姫専門の通り魔じゃないですか。・・・・それを早く言ってくださいよ・・・・」
『あら、いつに無く弱気じゃない。でも負けるのは許さないわよ』
「許されるつもりも無いんですけどね・・・・・おぉっと?」
話しながらスコープを覗いていると、大通りにバイクに乗ったハウが現れた。そして一度だけ、こちらを見たかと思うとバイクをいきなり発進させた。
「・・・・・・・・・・・・・・上等です!」
サラはライフルを構えなおすと照準を合わせ、ハウに向かって発砲する。
その放たれた弾丸を、ハウはバイクを蛇行させることにより回避した。
放たれる弾丸の事如くをハウは蛇行することにより回避する。初めの一発以外かすりもしない。
『狙いが読まれてる!? サラ、近寄られる前に仕留めなさい!!』
「判ってます!! でも、動きが速い・・・・・!」
サラは狙いをつけ連射する。本来ならその全てが当たるはずなのに、一発たりとも当たることなく消えていく。
恐ろしい程のスピードで翔けるストライクイーグル。何人たりとも、己が進撃を止める事はないという余裕すら感じられた。
そしてライフルの残弾は早くもあと一発となった。
「このままじゃ・・・・!」
『サラ! ハウじゃなくてバイクを狙いなさい! 前輪の部分よ!!』
春奈の言葉と共に、サラはバイクの前輪に狙いを定める。
そうはさせじと狙われたハウはバイクを蛇行させるが、その動きを予測していたサラの弾丸はフロートバイクの前輪部分を貫いた。
その瞬間、バランスの取れなくなったバイクは前輪部分から地面に激突し、華麗に逆ウィリーを決めた後空中を三回転ほどして廃墟に激突、爆発した。
「・・・・うわー・・・すっごい事故現場な気分ですね」
『・・・・・まぁ、あれだけ速度出してればそうなるわよね』
「っていうか何で今の狙撃は当たったんですか。わたしには判りません」
『あー・・・・要するにハウは自分を狙った弾だけ避けてたのよ。バイクを狙われるとは思ってなかったんでしょ』
サラは溜息をつくとスコープから目を放す。
弾の切れたライフルはその場に放置し、とりあえずビルから降りた。
道路の向こう側ではバイクがまだ燃えていた。ヴァーチャルバトルじゃなかったらとんでもない事になっていただろう。
「これはこれは・・・・保険に入ってたんでしょうかね」
『入ってないんじゃないの? お姉ちゃんだし』
「確かに。しかしハルナのお姉さんは彼女に指示を出していないようでしたが」
『神姫二人もいればどっちか片方しか見てられないんでしょ。―――――サラ! 伏せて!!』
春奈が叫んだ瞬間サラはその場に伏せた。そして響く発砲音。
サラは発砲音のした方をみずに右腕に装備されたライフル『クラブハンド』で応戦しつつ物陰に移動する。
『大丈夫!?』
「モーマンタイです。・・・・忘れてましたよ。ハリウッドアクションが使えるんでしたよね!?」
サラの叫びに、いまだに燃えるバイクの向こうから答えが返ってきた。
「ハリウッドアクションね。いい名前かも!」
頭を低くして様子を窺う。
そこには無傷のハウが立っていた。どうやら衝突直前に脱出したらしい。
『降参したらどうかね。マイリトルシスター』
『冗談! お姉ちゃんには負けないわよ!!』
「それにしても驚きましたよ! まさかわたしの狙撃が避けられるなんて!!」
「生憎と、死角から狙われたりするのは慣れてるんだ! この間結構危ない状況があったばかりでね!!」
「それは大変でしたね!! ・・・・ハルナ、何かいい作戦ありませんか?」
ハウと大声で会話しながら、サラはこっそりと春奈に相談する。
『この距離であんたが勝てる方法・・・・接近戦しかないけど、バックパックが邪魔ね・・・ハウリンタイプにその装備じゃ勝てないわ・・・』
「それはつまり・・・・軽量化すれば勝てる、と?」
『あんたには右手のクラブハンドを使った格闘技を教えてるからね。でも・・・・脱ぐ気はないんでしょ?』
「・・・・しょうがないですね。一度だけですよ?」
『え?』
サラはそう言うと両手を上げ、降参のジェスチャーをしながら物陰から出た。
そこにはハンドガンを構えたハウが立っている。
『ちょ、サラ!?』
「・・・・・・え? 降参するの?」
「はい、あなたには敵いませんから」
『ちょっと! どういうつもりよ! サラ!!』
サラの行動に春奈に動揺が走る。
何で? どうして降参するの?・・・・・もしかして、私が頼りないから?
「降参するなら・・・・別にそれでいいけど。そっちのマスターさんはそれでいいの?」
『良いわけないでしょ!! サラ!!』
「ハルナ、なぜ勝ちたいのですか? お小遣いのためですか? それとも姉に負けたくないからですか?」
『あんたが負けるところをもう見たくないからよ!! それにまだ戦えるのに・・・降参なんて!!』
春奈は叫ぶ。
なぜ戦いをやめるのかと。
「そうですか。でも、わたしは戦って痛い目にあいたくありません。これは現状で最善の策なのですよ」
『最善の・・・策ですって・・・・!?』
春奈はそれっきり沈黙した。
それは・・・この策が、最善であることを認めた証でもあった。
「あの・・・・それでどうするの?」
少し困った顔をしたハウの質問に、サラは微笑みながら答えた。
「降参します。マスターも認めたことですしね」
そういってサラはバックパックを外した。
それにつられて、ハウも構えていた銃を下ろす。
その瞬間、まだ右腕についていたクラブハンドが火を吹いた。
「なッ!?」
当たるぎりぎりの所でハウはその弾丸を回避する。しかし追い討ちをかけるように接近してきたサラにより、思いっきり蹴飛ばされた。
「ひ、卑怯だぞ!!」
蹴飛ばされながらも体勢を立て直したハウが叫ぶ。
「卑怯だって? よく言われますよ」
サラはその言葉に満面の笑みで答えた。
・・・・悪役にしか見えないのはなぜだろうか。
『最善の策が騙し討ちとはね・・・・私も騙されるところだったわよ』
筐体の外で苦笑しているのだろう。春奈が笑った。
・・・・これで、互いの距離は縮まって、サラはバックパックを外した。
サラにも、勝機が生まれたのだ。
「さて、ここからは騙し討ちのない肉弾戦になりますよ? 久しぶりに『クラブハンド』が使えますね」
そういうと、サラの右腕に装備された『クラブハンド』が音を立ててバイヨネット(銃剣)を展開する。
「・・・・接近戦は僕のステージだよ。・・・倒すけど、いいよね? 答えは聞かない!!」
ハウはそれに対抗するように、唯一残った武装であるハンドガンをホルスターから抜く。
互いににらみ合い。相手の出方を窺う。
初めに仕掛けたのはサラだった。
クラブハンドのブレードを振りかざし、ハウを狙い水平に薙ぐ。
しかしハウはその攻撃をしゃがむ事で回避し逆にサラの懐に潜り込んだ。サラと同じく右手に持ったハンドガンを至近距離で発砲しようと突きつける。その瞬間ハウはさらに蹴飛ばされていた。
「―――――――――――っ!!」
ハウはその勢いを殺さずに、そのまま後ろへと跳ぶ。そして着地と同時にサラに向かって発砲した。
サラはそれをクラブハンドで防ぎながら前進する。弾丸はサラ本人にダメージを与えることなく弾かれてどこかへ消えた。
前進したサラはそのままタックルを仕掛けハウの体勢を崩した。そして勢いそのままに右足で回し蹴りを加える。しかしその蹴りはハウの左手により防がれていた。今度はハウがサラに蹴りを加える。不安定な体勢で受けたサラは転倒してしまった。
その隙を逃さずハウはハンドガンを構える。しかし発砲せずに横に跳んだ。さっきまでハウがいたところをサラの弾丸が通過する。
ハウは跳びながらもサラに向かって撃ち続ける。サラは数発かすったが気にせずに立ち上がり、ハウに向かって射撃を繰り返す。その間にもサラは前進し、ハウの懐に潜り込んだ。左腕でアッパーカットを食らわしまた蹴っ飛ばす。
「――――――――このっ!!」
ハウは飛ばされたが距離をとらず、一気にサラに向かって走る。
サラはクラブハンドを構え掃射するがハウには当たらない。
そのまま至近距離までハウは接近し蹴りを入れようと跳ぶが
『サラ!! 今!!』
『ハウ!!避けろ!!』
その瞬間、ハウは地面に思いっきり叩きつけられていた。
「・・・・・・・・え?」
「チェックメイト。・・・・・・これであなたは動けません」
ハウが自分の腹を見ると、クラブハンドの・・・・その名のとおり、カニの手のようなライフル、そのバイヨネットに鋏まれていた。ご丁寧に地面に突き刺して動けないようにまでしている。
そう、ハウが跳んだ瞬間、サラは右腕のクラブハンドを使い彼女を捕獲、そしてそのまま力任せに地面に叩きつけたのだ。
その衝撃でブレードは地面に深く突き刺さり、ちょうど腹部の部分にライフルの銃口が押し付けられる形となっている。
もうこれ以上無いほどの詰みだった。
「・・・・降参しますか。わたしとしては、それをお勧めします。今日は・・・もう疲れました・・・・」
左手でヘルメットのバイザーを上げながらサラは言った。
その表情はとても楽しそうで、満足そうだった。変な意味じゃなく。
「・・・・・判りました。降参します」
ハウがそういうと、サラはとても嬉しそうに笑った。
バトルステージで三番目に高いビルの屋上に、サラは陣取っていた。
バックパックに取り付けられた補助脚を展開し、安定性を確保しライフルを構えている。
『無理も無いわね。あのハウリン、ガトリングを平気で避けるらしいわよ』
「素体にブーツの装備だけでですか!? ・・・まるで化物ですね」
『何でも噂によると“切り裂き”を倒したとか倒してないとか・・・・』
「“切り裂き”って・・・・ちょっと前にあった神姫専門の通り魔じゃないですか。・・・・それを早く言ってくださいよ・・・・」
『あら、いつに無く弱気じゃない。でも負けるのは許さないわよ』
「許されるつもりも無いんですけどね・・・・・おぉっと?」
話しながらスコープを覗いていると、大通りにバイクに乗ったハウが現れた。そして一度だけ、こちらを見たかと思うとバイクをいきなり発進させた。
「・・・・・・・・・・・・・・上等です!」
サラはライフルを構えなおすと照準を合わせ、ハウに向かって発砲する。
その放たれた弾丸を、ハウはバイクを蛇行させることにより回避した。
放たれる弾丸の事如くをハウは蛇行することにより回避する。初めの一発以外かすりもしない。
『狙いが読まれてる!? サラ、近寄られる前に仕留めなさい!!』
「判ってます!! でも、動きが速い・・・・・!」
サラは狙いをつけ連射する。本来ならその全てが当たるはずなのに、一発たりとも当たることなく消えていく。
恐ろしい程のスピードで翔けるストライクイーグル。何人たりとも、己が進撃を止める事はないという余裕すら感じられた。
そしてライフルの残弾は早くもあと一発となった。
「このままじゃ・・・・!」
『サラ! ハウじゃなくてバイクを狙いなさい! 前輪の部分よ!!』
春奈の言葉と共に、サラはバイクの前輪に狙いを定める。
そうはさせじと狙われたハウはバイクを蛇行させるが、その動きを予測していたサラの弾丸はフロートバイクの前輪部分を貫いた。
その瞬間、バランスの取れなくなったバイクは前輪部分から地面に激突し、華麗に逆ウィリーを決めた後空中を三回転ほどして廃墟に激突、爆発した。
「・・・・うわー・・・すっごい事故現場な気分ですね」
『・・・・・まぁ、あれだけ速度出してればそうなるわよね』
「っていうか何で今の狙撃は当たったんですか。わたしには判りません」
『あー・・・・要するにハウは自分を狙った弾だけ避けてたのよ。バイクを狙われるとは思ってなかったんでしょ』
サラは溜息をつくとスコープから目を放す。
弾の切れたライフルはその場に放置し、とりあえずビルから降りた。
道路の向こう側ではバイクがまだ燃えていた。ヴァーチャルバトルじゃなかったらとんでもない事になっていただろう。
「これはこれは・・・・保険に入ってたんでしょうかね」
『入ってないんじゃないの? お姉ちゃんだし』
「確かに。しかしハルナのお姉さんは彼女に指示を出していないようでしたが」
『神姫二人もいればどっちか片方しか見てられないんでしょ。―――――サラ! 伏せて!!』
春奈が叫んだ瞬間サラはその場に伏せた。そして響く発砲音。
サラは発砲音のした方をみずに右腕に装備されたライフル『クラブハンド』で応戦しつつ物陰に移動する。
『大丈夫!?』
「モーマンタイです。・・・・忘れてましたよ。ハリウッドアクションが使えるんでしたよね!?」
サラの叫びに、いまだに燃えるバイクの向こうから答えが返ってきた。
「ハリウッドアクションね。いい名前かも!」
頭を低くして様子を窺う。
そこには無傷のハウが立っていた。どうやら衝突直前に脱出したらしい。
『降参したらどうかね。マイリトルシスター』
『冗談! お姉ちゃんには負けないわよ!!』
「それにしても驚きましたよ! まさかわたしの狙撃が避けられるなんて!!」
「生憎と、死角から狙われたりするのは慣れてるんだ! この間結構危ない状況があったばかりでね!!」
「それは大変でしたね!! ・・・・ハルナ、何かいい作戦ありませんか?」
ハウと大声で会話しながら、サラはこっそりと春奈に相談する。
『この距離であんたが勝てる方法・・・・接近戦しかないけど、バックパックが邪魔ね・・・ハウリンタイプにその装備じゃ勝てないわ・・・』
「それはつまり・・・・軽量化すれば勝てる、と?」
『あんたには右手のクラブハンドを使った格闘技を教えてるからね。でも・・・・脱ぐ気はないんでしょ?』
「・・・・しょうがないですね。一度だけですよ?」
『え?』
サラはそう言うと両手を上げ、降参のジェスチャーをしながら物陰から出た。
そこにはハンドガンを構えたハウが立っている。
『ちょ、サラ!?』
「・・・・・・え? 降参するの?」
「はい、あなたには敵いませんから」
『ちょっと! どういうつもりよ! サラ!!』
サラの行動に春奈に動揺が走る。
何で? どうして降参するの?・・・・・もしかして、私が頼りないから?
「降参するなら・・・・別にそれでいいけど。そっちのマスターさんはそれでいいの?」
『良いわけないでしょ!! サラ!!』
「ハルナ、なぜ勝ちたいのですか? お小遣いのためですか? それとも姉に負けたくないからですか?」
『あんたが負けるところをもう見たくないからよ!! それにまだ戦えるのに・・・降参なんて!!』
春奈は叫ぶ。
なぜ戦いをやめるのかと。
「そうですか。でも、わたしは戦って痛い目にあいたくありません。これは現状で最善の策なのですよ」
『最善の・・・策ですって・・・・!?』
春奈はそれっきり沈黙した。
それは・・・この策が、最善であることを認めた証でもあった。
「あの・・・・それでどうするの?」
少し困った顔をしたハウの質問に、サラは微笑みながら答えた。
「降参します。マスターも認めたことですしね」
そういってサラはバックパックを外した。
それにつられて、ハウも構えていた銃を下ろす。
その瞬間、まだ右腕についていたクラブハンドが火を吹いた。
「なッ!?」
当たるぎりぎりの所でハウはその弾丸を回避する。しかし追い討ちをかけるように接近してきたサラにより、思いっきり蹴飛ばされた。
「ひ、卑怯だぞ!!」
蹴飛ばされながらも体勢を立て直したハウが叫ぶ。
「卑怯だって? よく言われますよ」
サラはその言葉に満面の笑みで答えた。
・・・・悪役にしか見えないのはなぜだろうか。
『最善の策が騙し討ちとはね・・・・私も騙されるところだったわよ』
筐体の外で苦笑しているのだろう。春奈が笑った。
・・・・これで、互いの距離は縮まって、サラはバックパックを外した。
サラにも、勝機が生まれたのだ。
「さて、ここからは騙し討ちのない肉弾戦になりますよ? 久しぶりに『クラブハンド』が使えますね」
そういうと、サラの右腕に装備された『クラブハンド』が音を立ててバイヨネット(銃剣)を展開する。
「・・・・接近戦は僕のステージだよ。・・・倒すけど、いいよね? 答えは聞かない!!」
ハウはそれに対抗するように、唯一残った武装であるハンドガンをホルスターから抜く。
互いににらみ合い。相手の出方を窺う。
初めに仕掛けたのはサラだった。
クラブハンドのブレードを振りかざし、ハウを狙い水平に薙ぐ。
しかしハウはその攻撃をしゃがむ事で回避し逆にサラの懐に潜り込んだ。サラと同じく右手に持ったハンドガンを至近距離で発砲しようと突きつける。その瞬間ハウはさらに蹴飛ばされていた。
「―――――――――――っ!!」
ハウはその勢いを殺さずに、そのまま後ろへと跳ぶ。そして着地と同時にサラに向かって発砲した。
サラはそれをクラブハンドで防ぎながら前進する。弾丸はサラ本人にダメージを与えることなく弾かれてどこかへ消えた。
前進したサラはそのままタックルを仕掛けハウの体勢を崩した。そして勢いそのままに右足で回し蹴りを加える。しかしその蹴りはハウの左手により防がれていた。今度はハウがサラに蹴りを加える。不安定な体勢で受けたサラは転倒してしまった。
その隙を逃さずハウはハンドガンを構える。しかし発砲せずに横に跳んだ。さっきまでハウがいたところをサラの弾丸が通過する。
ハウは跳びながらもサラに向かって撃ち続ける。サラは数発かすったが気にせずに立ち上がり、ハウに向かって射撃を繰り返す。その間にもサラは前進し、ハウの懐に潜り込んだ。左腕でアッパーカットを食らわしまた蹴っ飛ばす。
「――――――――このっ!!」
ハウは飛ばされたが距離をとらず、一気にサラに向かって走る。
サラはクラブハンドを構え掃射するがハウには当たらない。
そのまま至近距離までハウは接近し蹴りを入れようと跳ぶが
『サラ!! 今!!』
『ハウ!!避けろ!!』
その瞬間、ハウは地面に思いっきり叩きつけられていた。
「・・・・・・・・え?」
「チェックメイト。・・・・・・これであなたは動けません」
ハウが自分の腹を見ると、クラブハンドの・・・・その名のとおり、カニの手のようなライフル、そのバイヨネットに鋏まれていた。ご丁寧に地面に突き刺して動けないようにまでしている。
そう、ハウが跳んだ瞬間、サラは右腕のクラブハンドを使い彼女を捕獲、そしてそのまま力任せに地面に叩きつけたのだ。
その衝撃でブレードは地面に深く突き刺さり、ちょうど腹部の部分にライフルの銃口が押し付けられる形となっている。
もうこれ以上無いほどの詰みだった。
「・・・・降参しますか。わたしとしては、それをお勧めします。今日は・・・もう疲れました・・・・」
左手でヘルメットのバイザーを上げながらサラは言った。
その表情はとても楽しそうで、満足そうだった。変な意味じゃなく。
「・・・・・判りました。降参します」
ハウがそういうと、サラはとても嬉しそうに笑った。