G・L《Gender Less》、それは失う事、狂う事。では、アイデンティティを失い、それでも尚“生きる”事を選択した神姫には、まだ何か失っていない部分、狂っていない部分があるというのだろうか? 否。それは人間になど推し量れる筈は無い。何故ならば、“アイデンティティを設定された人間など居ない”のだから。
G・L ~Gender Less~
第1章 狂犬
闇、闇。飛、飛、飛、黒。
冬の夜の住宅街に飛び込む、3つの闇。それは3人の武装神姫。2人のアーンヴァルは装甲を黒く彩り、先頭を行くストラーフも【悪魔の翼】で軽快に飛ぶ。
飛来、飛来飛来、着地。開線。
「・・マスター、目標地点に到達」
一軒家の塀に降り立つ闇。ストラーフが無線を繋ぎながら、暗視スコープで周囲を警戒する。
『よし、周囲に誰もいないな? クロト、ラケ、アトロ、予定通りに1階南側の換気扇から進入しろ。今なら2階にガキが居るだけの筈だ』
「了解。以降無線封鎖します」
『期待しているぞ、お前達』
断線。飛、飛、飛。
「「「マスターの、為に!!」」」
冬の夜の住宅街に飛び込む、3つの闇。それは3人の武装神姫。2人のアーンヴァルは装甲を黒く彩り、先頭を行くストラーフも【悪魔の翼】で軽快に飛ぶ。
飛来、飛来飛来、着地。開線。
「・・マスター、目標地点に到達」
一軒家の塀に降り立つ闇。ストラーフが無線を繋ぎながら、暗視スコープで周囲を警戒する。
『よし、周囲に誰もいないな? クロト、ラケ、アトロ、予定通りに1階南側の換気扇から進入しろ。今なら2階にガキが居るだけの筈だ』
「了解。以降無線封鎖します」
『期待しているぞ、お前達』
断線。飛、飛、飛。
「「「マスターの、為に!!」」」
MMSの暗部、その一つが犯罪への転用。未だ表面化していないとは言え、それは確かに増加していた。神姫も例外ではない。その為に法による登録の厳正化、機体リミッター、論理プロテクト等が存在するのだが、禁を破るのが人の世の常、そして完全なるプログラムなど存在しないのもまた、世界の常識。
今、不法侵入を試みる彼女達もその産物。違法改造コードによるプログラム改変、そして、“歪んだ愛”に彩られた武装神姫。主の為にと、彼女達は望んで、その手を罪に染める。
今、不法侵入を試みる彼女達もその産物。違法改造コードによるプログラム改変、そして、“歪んだ愛”に彩られた武装神姫。主の為にと、彼女達は望んで、その手を罪に染める。
分解、解体。
慣れた手つきで換気扇を分解していくのはストラーフタイプの長女アトロ。残る妹達は周辺警戒をしている・・が、末のクロトは暇そうにあくびまで立てる。
「後少しでファンが外せる。警戒怠るな・・特にクロト」
「だあ~ってヒマなんですもん。マスターも言ったように誰も来る訳無いしぃ、ついでに寒いしぃ。ラケ姉さまもそう思うよね?」
「・・・」
クロトの問いにも、ラケは眉一つ動かさず、只黙々と警戒を続ける。同じアーンヴァルタイプと言えど、CSCによって刻まれた“心”はそれ程にも違う。
「あ~もうラケ姉さまもつまんないぃ~! 早く帰ってマスターと遊びたいぃ~!!」
「クロト! お前のその喧しい声が誰かに聞こえでもすれば忙しくもなろうが、そうすればマスターにお叱りを受ける事、判っているのか?」
「は、はいぃ」
アトロの怒号で、クロトはその小さい体を項垂れる。
慣れた手つきで換気扇を分解していくのはストラーフタイプの長女アトロ。残る妹達は周辺警戒をしている・・が、末のクロトは暇そうにあくびまで立てる。
「後少しでファンが外せる。警戒怠るな・・特にクロト」
「だあ~ってヒマなんですもん。マスターも言ったように誰も来る訳無いしぃ、ついでに寒いしぃ。ラケ姉さまもそう思うよね?」
「・・・」
クロトの問いにも、ラケは眉一つ動かさず、只黙々と警戒を続ける。同じアーンヴァルタイプと言えど、CSCによって刻まれた“心”はそれ程にも違う。
「あ~もうラケ姉さまもつまんないぃ~! 早く帰ってマスターと遊びたいぃ~!!」
「クロト! お前のその喧しい声が誰かに聞こえでもすれば忙しくもなろうが、そうすればマスターにお叱りを受ける事、判っているのか?」
「は、はいぃ」
アトロの怒号で、クロトはその小さい体を項垂れる。
分解、解体。
「あ~、少し曇ってるな~。お星様、なんにも見えないや。お月様は今新月だっけ?」
分解、解体。
「そう言えば、コレ上手くいったら、マスター新しいパーツ買ってくれるかな? アタシあのうさみみ付けてみたいぃ~♪」
分解、解体。
「ねえねえラケ姉さま、しりとりしない? じゃあアタシからね。え~っとぉ~、わ・・・」
分解、解体・・・止。
「アトロ、いい加減に!・・・」
「あ~、少し曇ってるな~。お星様、なんにも見えないや。お月様は今新月だっけ?」
分解、解体。
「そう言えば、コレ上手くいったら、マスター新しいパーツ買ってくれるかな? アタシあのうさみみ付けてみたいぃ~♪」
分解、解体。
「ねえねえラケ姉さま、しりとりしない? じゃあアタシからね。え~っとぉ~、わ・・・」
分解、解体・・・止。
「アトロ、いい加減に!・・・」
轟粉砕。
「わぱひゃ!?」
「わぱひゃ!?」
「・・・わぱ・・?」
「・・・・!!?」
緩、落下、崩。
始め、それはクロトのいたずらと思い、また作業も終わりに差しかかっていたのでアトロは無視しようとしていた。
「・・・!!!」
急降下、抱、受止。
だが、無言のまま血相を変えて降下したラケの姿に、彼女は異変と感じ、彼女達の方を覗き見た。
「・・・! クロ・・ト!?」
「・・・・!!?」
緩、落下、崩。
始め、それはクロトのいたずらと思い、また作業も終わりに差しかかっていたのでアトロは無視しようとしていた。
「・・・!!!」
急降下、抱、受止。
だが、無言のまま血相を変えて降下したラケの姿に、彼女は異変と感じ、彼女達の方を覗き見た。
「・・・! クロ・・ト!?」
「ら、ぁ、あらけ、kkkelaaa・・・」
そこにあったのは次女に抱かれた、グロテスクに破壊された三女の姿。頭部は左半分が潰され抉られもぎ取られ、左の乳房ごと腕はどこかに吹き飛んでいた。当然ウイングも跡形もなく、そして、壊れた言葉も途切れ、彼女は・・・
崩、壊、停止。
「・・・・っ!」
「クロト!!!」
彼女は死んだ。
そこにあったのは次女に抱かれた、グロテスクに破壊された三女の姿。頭部は左半分が潰され抉られもぎ取られ、左の乳房ごと腕はどこかに吹き飛んでいた。当然ウイングも跡形もなく、そして、壊れた言葉も途切れ、彼女は・・・
崩、壊、停止。
「・・・・っ!」
「クロト!!!」
彼女は死んだ。
「GuaaaaaaaaaaaaaooNn!!!」
轟、咆吼。
「・・何!?」
低く響く獣のような声。何処か歪な音。悲しみも止まぬままに、その咆吼の先を見るアトロ。其処には影。小さい影。塀の上に立つ、自分達と同程度の影。
「!!?」
クロトの亡骸を下ろしたラケも、その物体を望む。
微、明。月光。
雲間からの光が、その物体の姿を明確にする。それは確かにMMS、神姫だ。識別は・・・どうやらハウリンタイプだった。しかし。
「Guuu・・・」
しかしその四肢は見た事もない増加パーツで肥大化し、尾はグロテスクに長く太く、塀の向こう側に垂れ下がっている。そして、顔には、表情も見えぬほどの、分厚い鉄仮面。
「な・・に・・あれ・・・?」
アトロは、か細く、声を漏らす。気丈な彼女が、初めて、少女のように。
轟、咆吼。
「・・何!?」
低く響く獣のような声。何処か歪な音。悲しみも止まぬままに、その咆吼の先を見るアトロ。其処には影。小さい影。塀の上に立つ、自分達と同程度の影。
「!!?」
クロトの亡骸を下ろしたラケも、その物体を望む。
微、明。月光。
雲間からの光が、その物体の姿を明確にする。それは確かにMMS、神姫だ。識別は・・・どうやらハウリンタイプだった。しかし。
「Guuu・・・」
しかしその四肢は見た事もない増加パーツで肥大化し、尾はグロテスクに長く太く、塀の向こう側に垂れ下がっている。そして、顔には、表情も見えぬほどの、分厚い鉄仮面。
「な・・に・・あれ・・・?」
アトロは、か細く、声を漏らす。気丈な彼女が、初めて、少女のように。