翌日 ―――記四季たち三人は神姫センターにいた。
キャンペーンバトルに参加するためである。
「俺らの出番は何番目だったか?」
「二番目で御座います。一番手は・・・あ、春奈お嬢様とそのお友達のようですね」
記四季は電光掲示板に表示された名前を見る。
一つは孫娘の名前、そうしてもう一つは・・・
「八谷良平・・・あいつ、いつの間に男作ったんだ?」
記四季の言葉にアメティスタが苦笑する。
言い方が娘を心配する父親のそれに似ていたからだ。
「順番までまだ時間があるけど、どうする? ボクは控え室に行ったほうがいいと思うけど」
「主、どうなさいますか?」
アメティスタが提案し、彩女が選択を迫る。
「・・・・とりあえず都んとこ行くぞ」
キャンペーンバトルに参加するためである。
「俺らの出番は何番目だったか?」
「二番目で御座います。一番手は・・・あ、春奈お嬢様とそのお友達のようですね」
記四季は電光掲示板に表示された名前を見る。
一つは孫娘の名前、そうしてもう一つは・・・
「八谷良平・・・あいつ、いつの間に男作ったんだ?」
記四季の言葉にアメティスタが苦笑する。
言い方が娘を心配する父親のそれに似ていたからだ。
「順番までまだ時間があるけど、どうする? ボクは控え室に行ったほうがいいと思うけど」
「主、どうなさいますか?」
アメティスタが提案し、彩女が選択を迫る。
「・・・・とりあえず都んとこ行くぞ」
ホワイトファング・ハウリングソウル
第十二話
*
『爺、魂の咆哮』
『爺、魂の咆哮』
「・・・・・暇だ」
結果として、出番が来るまで待機させられることになった。
「まぁ良いではないですか。参加する以上、主催者側の意見に従うのはもっともなことです」
彩女はそういいながら机の上で得物の整備をしている。
波紋一つの変化すら見逃さないような眼だ。
「ボクは暇じゃないけどね。色々前段階で仕込んでおくことがあるから」
アメティスタはというとバックパックから伸びたコンソールになにやら打ち込んでいた。
コンソールの画面は物凄い速度で文字が流れ、人間の目にはただの模様にしか見えない。
「・・・・ムラサキ。何してるんだお前」
「イ・ケ・ナ・イ・コ・ト♪」
「・・・・随分楽しそうじゃねぇか」
記四季がそういう間にもアメティスタの指は動き、コンソールのキーに何かを打ち込んでいく。
「・・・主、鎧の様子を見てはくれませんか。少し留め金の様子がおかしいのです」
彩女が記四季に言う。
その頬は少し膨れていた。どうやらアメティスタに嫉妬しているようだ。
「お、応・・・なんだ。この程度なら簡単だぞ」
記四季はそういうと懐から出したペンチで留め金を潰す。
そして少し調整をすると彩女に手渡した。
「・・・ふむ。流石は主。干渉しませんね」
「たりめぇだ。こう見えて手先の器用さには自信があるんだ」
記四季はそういうと懐から煙管を出そうとして・・・止める。
彩女はその様子を不思議そうに見ていた。
「主、煙草は吸わないのですか?」
「ん・・・あぁ・・・今日に限って忘れてきちまったみてぇだ。俺としたことがよ」
しかし彩女は出かける前に記四季が煙管を持っていくのをしっかりと見ていた。にも拘らず記四季は忘れたと言う。彩女はその真意を確かめようと口を開き
「ねぇ記四季さん。キャンペーンの賞品はなんなの?」
まるでそうなることを知っていたかのように、アメティスタに阻まれた。
「ん・・・確か神姫一体につき武装一個のはずだ。ただこのセンターで扱ってる商品に限るみたいだがな」
「ふぅん? それはつまりこのセンターで扱ってる一番高い商品でもいいわけ?」
「いやそこまでは知らねぇよ。・・・・彩女、どうした?」
「・・・・いえ、何でも御座いません」
不服そうに頬を膨らませそっぽを向く彩女。アメティスタはそれをなんとも言えない表情で見ていた。
と、そのアメティスタの表情が変わる。
なんともいえない表情から一瞬で険しい表情へと変わり何か考え始めた。
「・・・・アメティスタ? 何かあったのですか?」
「・・・・記四季さんのお孫さんとそのお友達、負けたよ。しかも相手の神姫を視認しないまま」
「「なっ!?」」
記四季と彩女の声が重なる。
二人は春奈とサラのコンビと直接戦い、二人の力量も把握していた。
「負けるってのはまだ判るが・・・相手の姿見れなかったってのか?」
そう、二人が驚いた理由がそれである。
仮にもサラはスナイパーである。索敵能力は充分に備わっているはずだ。にも拘らず相手の神姫を視認しないままやられるということは・・・
「サラさんの射程距離を超える超長距離射撃・・・ですかね?」
「違う。近距離戦だ。急に視界が白くなって・・・そのまま斬られた。お友達の方の神姫は・・・撃たれたね。こっちは真っ黒い悪魔型の映像が残ってたよ」
そういってアメティスタはコンソールを操作する。
どうやら千里眼ではなくハッキングであるようだ。
「お前さんが言ってた『いけないこと』の正体はこれかい・・・」
「いやそっちはべつだけどね。・・・にしても凄いな。サラさん・・・だっけ? 砂漠じゃ負けが無いよこの人。最近他のステージでも調子がいいみたいだし・・・・でもどうやってスナイパーを斬ったんだろう。そこが不思議だな」
「なんにしろ、すぐに判りますよ。・・・・足音が近づいてきますから」
彩女がそういうのと同時にドアがノックされる。
そして開かれた先には都がいた。
「さて、お待たせしましたおじい様御一行。いよいよ出番ですよ」
そういってにやりと笑う。
・・・別に笑う必要も無いのだが、彼女はこういう場面で不適に笑うのが好きなようだ。
「・・・・じゃ、行くか」
記四季は両手を机に差し出し右手に彩女を、左手にアメティスタを乗せる。
「じゃぁこちらです・・・開けますよっと」
筐体へと続く扉を都が開け放す。
するとそこには普段の倍近い人が見物に来ていた。
「・・・・・・・・帰りてぇ・・・」
「・・・・あの、おじい様? ここまで来て帰るのは無しですよ?」
記四季の呟きに都が返す。その顔は割りと切実だ。
記四季は都に先導されるまま筐体へと向かい椅子に座る。見るとテレビカメラまで回っていた。記四季はますます帰りたくなる。さらに
『さあ! 次の挑戦者はなんとさっきの子のおじいちゃんよぉ!! 未だ去らぬ老兵は果たして孫娘の無念を晴らせるのかしら!?』
普段は何も無い場所にステージが作られ、スキンヘッドのオカマッチョが実況していた。
いよいよもって記四季はもう今から帰ってしまおうかと本気で考え始める。
このセンターはいつからオカマバーになったのだろう。
「勝負は時間無制限一本勝負。わかりやすくていいでしょう? それじゃ、頑張ってくださいね」
都はそういうとさっさと筐体から遠ざかってしまった。見ると負けてしまった春奈たちと合流し見物するつもりのようだ。
「さ、主。私達を筐体へ」
「久しぶりにやっちゃうよ~!」
神姫は神姫で記四季の気持ちなんか知ったことではないようだ。
「・・・・ったく。しょうがねぇな」
記四季はそういうと二人を筐体の入り口に二人を入れてやる。
すぐに扉が閉まり、いつでもバトルが可能な状態になった。
「せめて春奈に話し聞けりゃ良かったんだがな。・・・そうも言ってらんねぇか」
記四季は自慢の白髪を撫でつけ、腕を組んで言った。
「――――――――――とっとと倒して帰るぞ!!」
それは挑発でも何でもなく、今の彼の切実な願いであった。
結果として、出番が来るまで待機させられることになった。
「まぁ良いではないですか。参加する以上、主催者側の意見に従うのはもっともなことです」
彩女はそういいながら机の上で得物の整備をしている。
波紋一つの変化すら見逃さないような眼だ。
「ボクは暇じゃないけどね。色々前段階で仕込んでおくことがあるから」
アメティスタはというとバックパックから伸びたコンソールになにやら打ち込んでいた。
コンソールの画面は物凄い速度で文字が流れ、人間の目にはただの模様にしか見えない。
「・・・・ムラサキ。何してるんだお前」
「イ・ケ・ナ・イ・コ・ト♪」
「・・・・随分楽しそうじゃねぇか」
記四季がそういう間にもアメティスタの指は動き、コンソールのキーに何かを打ち込んでいく。
「・・・主、鎧の様子を見てはくれませんか。少し留め金の様子がおかしいのです」
彩女が記四季に言う。
その頬は少し膨れていた。どうやらアメティスタに嫉妬しているようだ。
「お、応・・・なんだ。この程度なら簡単だぞ」
記四季はそういうと懐から出したペンチで留め金を潰す。
そして少し調整をすると彩女に手渡した。
「・・・ふむ。流石は主。干渉しませんね」
「たりめぇだ。こう見えて手先の器用さには自信があるんだ」
記四季はそういうと懐から煙管を出そうとして・・・止める。
彩女はその様子を不思議そうに見ていた。
「主、煙草は吸わないのですか?」
「ん・・・あぁ・・・今日に限って忘れてきちまったみてぇだ。俺としたことがよ」
しかし彩女は出かける前に記四季が煙管を持っていくのをしっかりと見ていた。にも拘らず記四季は忘れたと言う。彩女はその真意を確かめようと口を開き
「ねぇ記四季さん。キャンペーンの賞品はなんなの?」
まるでそうなることを知っていたかのように、アメティスタに阻まれた。
「ん・・・確か神姫一体につき武装一個のはずだ。ただこのセンターで扱ってる商品に限るみたいだがな」
「ふぅん? それはつまりこのセンターで扱ってる一番高い商品でもいいわけ?」
「いやそこまでは知らねぇよ。・・・・彩女、どうした?」
「・・・・いえ、何でも御座いません」
不服そうに頬を膨らませそっぽを向く彩女。アメティスタはそれをなんとも言えない表情で見ていた。
と、そのアメティスタの表情が変わる。
なんともいえない表情から一瞬で険しい表情へと変わり何か考え始めた。
「・・・・アメティスタ? 何かあったのですか?」
「・・・・記四季さんのお孫さんとそのお友達、負けたよ。しかも相手の神姫を視認しないまま」
「「なっ!?」」
記四季と彩女の声が重なる。
二人は春奈とサラのコンビと直接戦い、二人の力量も把握していた。
「負けるってのはまだ判るが・・・相手の姿見れなかったってのか?」
そう、二人が驚いた理由がそれである。
仮にもサラはスナイパーである。索敵能力は充分に備わっているはずだ。にも拘らず相手の神姫を視認しないままやられるということは・・・
「サラさんの射程距離を超える超長距離射撃・・・ですかね?」
「違う。近距離戦だ。急に視界が白くなって・・・そのまま斬られた。お友達の方の神姫は・・・撃たれたね。こっちは真っ黒い悪魔型の映像が残ってたよ」
そういってアメティスタはコンソールを操作する。
どうやら千里眼ではなくハッキングであるようだ。
「お前さんが言ってた『いけないこと』の正体はこれかい・・・」
「いやそっちはべつだけどね。・・・にしても凄いな。サラさん・・・だっけ? 砂漠じゃ負けが無いよこの人。最近他のステージでも調子がいいみたいだし・・・・でもどうやってスナイパーを斬ったんだろう。そこが不思議だな」
「なんにしろ、すぐに判りますよ。・・・・足音が近づいてきますから」
彩女がそういうのと同時にドアがノックされる。
そして開かれた先には都がいた。
「さて、お待たせしましたおじい様御一行。いよいよ出番ですよ」
そういってにやりと笑う。
・・・別に笑う必要も無いのだが、彼女はこういう場面で不適に笑うのが好きなようだ。
「・・・・じゃ、行くか」
記四季は両手を机に差し出し右手に彩女を、左手にアメティスタを乗せる。
「じゃぁこちらです・・・開けますよっと」
筐体へと続く扉を都が開け放す。
するとそこには普段の倍近い人が見物に来ていた。
「・・・・・・・・帰りてぇ・・・」
「・・・・あの、おじい様? ここまで来て帰るのは無しですよ?」
記四季の呟きに都が返す。その顔は割りと切実だ。
記四季は都に先導されるまま筐体へと向かい椅子に座る。見るとテレビカメラまで回っていた。記四季はますます帰りたくなる。さらに
『さあ! 次の挑戦者はなんとさっきの子のおじいちゃんよぉ!! 未だ去らぬ老兵は果たして孫娘の無念を晴らせるのかしら!?』
普段は何も無い場所にステージが作られ、スキンヘッドのオカマッチョが実況していた。
いよいよもって記四季はもう今から帰ってしまおうかと本気で考え始める。
このセンターはいつからオカマバーになったのだろう。
「勝負は時間無制限一本勝負。わかりやすくていいでしょう? それじゃ、頑張ってくださいね」
都はそういうとさっさと筐体から遠ざかってしまった。見ると負けてしまった春奈たちと合流し見物するつもりのようだ。
「さ、主。私達を筐体へ」
「久しぶりにやっちゃうよ~!」
神姫は神姫で記四季の気持ちなんか知ったことではないようだ。
「・・・・ったく。しょうがねぇな」
記四季はそういうと二人を筐体の入り口に二人を入れてやる。
すぐに扉が閉まり、いつでもバトルが可能な状態になった。
「せめて春奈に話し聞けりゃ良かったんだがな。・・・そうも言ってらんねぇか」
記四季は自慢の白髪を撫でつけ、腕を組んで言った。
「――――――――――とっとと倒して帰るぞ!!」
それは挑発でも何でもなく、今の彼の切実な願いであった。