「・・・・・・・・・・・・」
彩女は竹薮の中、一人思案していた。
昨日釣具を探しに行かされた都たちは雨になっても帰ってこず、彩女はいよいよ捜索隊を出そうと記四季に進言したものの却下された。記四季の性格から考えて・・・出さないはずは無いのだが。
だが結果的に都たちは無事に帰ってきた。アメティスタと一緒に。
「・・・・何故彼女はそこにいたのか。そこで何があったのかは・・・今はいいでしょう」
問題は帰ってきた直後・・・アメティスタが記四季に何か進言し、記四季が一直線にトイレにこもりしばらく出てこなかったことだ。
ただ腹を痛めただけならばそれでいい。いいのだが・・・
「洗面台に付着した血・・・主、貴方はご病気なのですか・・・・?」
彩女は竹薮の中、一人思案していた。
昨日釣具を探しに行かされた都たちは雨になっても帰ってこず、彩女はいよいよ捜索隊を出そうと記四季に進言したものの却下された。記四季の性格から考えて・・・出さないはずは無いのだが。
だが結果的に都たちは無事に帰ってきた。アメティスタと一緒に。
「・・・・何故彼女はそこにいたのか。そこで何があったのかは・・・今はいいでしょう」
問題は帰ってきた直後・・・アメティスタが記四季に何か進言し、記四季が一直線にトイレにこもりしばらく出てこなかったことだ。
ただ腹を痛めただけならばそれでいい。いいのだが・・・
「洗面台に付着した血・・・主、貴方はご病気なのですか・・・・?」
ホワイトファング・ハウリングソウル
第二十話
『おじいちゃんち』
「・・・・ほぅ。悪くねぇじゃねぇか春奈」
「ふふ・・・私だって料理くらいできるんだよ?」
記四季の屋敷の台所ではなぜか記四季と春奈が料理をしていた。
普段どおり、朝五時に起きた記四季は朝食を作ろうとしていたところ雑魚寝に慣れず、起きてきた春奈に見つかってしまい手伝ってもらっていたのだ。
「おぉ~い。朝飯はまだかねー?」
居間では遅く起きてきた都がゴロゴロしていた。
余談だが彼女は全く料理が出来ない。
「・・・・・・・・表?」
「残念。裏だよ。次、ハウ」
「裏ですね」
「正解。やっぱり犬猫ってシックスセンスが鋭いのかな。サラよりも正解率が高いね。・・・じゃ次ノワール。どっちだ?」
「・・・・・・うら」
「残念、表だ」
彩女を除いた四人の神姫たちはなぜかコイントスをして遊んでいる。
アメティスタが投げ、残る三人が表か裏かを当てるのだが・・・どうもハウ以外正答率が低いようだ。
「あれ? そういえば彩女ちゃんはどこ行ったの?」
と、春奈が彩女の不在に気がついた。
「あいつなら朝の散歩と確認だ。今日は朝飯食ったらすぐに狩りに行く日だからな」
春奈の言葉に記四季は手馴れた手つきで何だかわからない肉を切りながら答える。
「・・・・・・狩り?」
「週三回くらい狩るんだよ。朝の日と昼の日があってな。ついでに言うと今俺とお前が切ってるのは鹿の肉だ。冷蔵庫には熊の肉もあるぞ」
事も無げにいい、肉を切り終え野菜に取り掛かる記四季。
春奈はその言葉に呆然としていた。
自分の祖父がまさか熊を倒してその肉を食ってるとは思っていなかったらしい。
「いや、竹山だけじゃなくて奥の樹海と山も俺の土地だからな。別に違法じゃないぞ?」
春奈の驚いた視線に記四季は見当違いないい訳をする。
その様子をサラが苦笑しながら見ていた。
「始めてみた時は本当に血がつながってるのかと思いましたが、やはり血縁ですかね。いい訳をするときの仕草や表情がよく似ている」
「・・・記四季さんは微妙にバイオレンスだけどね。熊も鹿も全部自分で解体しちゃうし」
サラの言葉にアメティスタが続いた。
その表情はやはり苦笑している。
「うちのマスターもよく似てますよ。笑ったときとか・・・黙ってるときとか」
「聞こえてるぞハウ。私はそんなに老けていない」
「・・・・・マイスター・・・・もうすぐ・・・・三十路・・・・」
「いやまだ二十五だから。まだ五年あるから」
「まぁ春奈よりは老けてますよね」
「当たり前だ」
「うむ。都さんの未来は・・・・言わない方がいいみたいだね」
「おいコラそこの占い師。微妙に気になる言い方をするな」
都と神姫たちが漫才をやっていると台所から記四季がやってきた。
手には皿に乗った納豆を持っている。
「老けるのがいやなら納豆食っとけ。体にいいぞ」
「・・・あのおじい様。私発酵食品は・・・ちょっと・・・」
「なんだお前。納豆嫌いまだ治ってなかったのか。いい機会だから治して帰れ」
記四季はそういうと都の前に皿に乗った納豆を置いた。
物凄く嫌そうな顔をする都。
「・・・そ、そうだ! おじい様、春奈も納豆嫌いです!!」
「ん? そうなのか?」
死なば諸共。都は妹の春奈を道連れにしようとしていた。
微妙に酷い姉である。
「え? 昔は駄目だったけど今はそうでも無いよ?」
都の目論見は、春奈のそんな言葉によって打ち砕かれた。
「何だと!? お前私が本屋を始める前は食べたら吐くほど駄目だったじゃないか!!」
「何でって言われても・・・ほら、平気だよ?」
そういうと台所で平然と納豆を食べる春奈。
都はというとその光景に呆然としていた。
「ば・・・馬鹿な・・・何故・・・何故だ・・・!?」
そのまま打ちひしがれる都。
背中がすすけている。
「ミヤコミヤコ」
「・・・何だ」
「ハルナはですね。本当につい最近まで食べられなかったのですよ」
この状況を机の上で見ていたサラが続ける。
「ですがね。ハチヤが納豆好きだったので・・・我慢していたら食べられるようになってしまったそうです」
「・・・・・春奈・・・貴様男のために納豆嫌いを克服したと言うのか! 貴様は納豆に魂を売ったのか! 貴様はどう考えても賞味期限なんて意味が無いように見えるその腐敗食品を食べるというのか!!」
机の上の納豆を振りかざし春奈に叫ぶ都。
行儀が悪いことこの上ない。
記四季はというと味噌汁の仕上げに移っていた。もうどうでもいいらしい。
「いやそんな事いわれても・・・ほら、体にいいよ?」
微妙にはにかみながら言う春奈。
それはもう幸せ最高潮の新妻のような表情だったという。
「く・・・これが噂の新妻ビームか・・・判ったよ私の負けだ。・・・納豆はお前が食べるんだ。八谷のために・・・」
「え、うん。別にいいけど・・・」
いつの間にか春奈が食べることになっているが彼女は気づかない。
その様子を面白そうな顔でサラは見ている。
「・・・爺ちゃんは騙されねぇぞ。黙って納豆くえや」
デカイお盆に朝食を満載した記四季が居間に来ると都は力尽きたように項垂れた。
「ふふ・・・私だって料理くらいできるんだよ?」
記四季の屋敷の台所ではなぜか記四季と春奈が料理をしていた。
普段どおり、朝五時に起きた記四季は朝食を作ろうとしていたところ雑魚寝に慣れず、起きてきた春奈に見つかってしまい手伝ってもらっていたのだ。
「おぉ~い。朝飯はまだかねー?」
居間では遅く起きてきた都がゴロゴロしていた。
余談だが彼女は全く料理が出来ない。
「・・・・・・・・表?」
「残念。裏だよ。次、ハウ」
「裏ですね」
「正解。やっぱり犬猫ってシックスセンスが鋭いのかな。サラよりも正解率が高いね。・・・じゃ次ノワール。どっちだ?」
「・・・・・・うら」
「残念、表だ」
彩女を除いた四人の神姫たちはなぜかコイントスをして遊んでいる。
アメティスタが投げ、残る三人が表か裏かを当てるのだが・・・どうもハウ以外正答率が低いようだ。
「あれ? そういえば彩女ちゃんはどこ行ったの?」
と、春奈が彩女の不在に気がついた。
「あいつなら朝の散歩と確認だ。今日は朝飯食ったらすぐに狩りに行く日だからな」
春奈の言葉に記四季は手馴れた手つきで何だかわからない肉を切りながら答える。
「・・・・・・狩り?」
「週三回くらい狩るんだよ。朝の日と昼の日があってな。ついでに言うと今俺とお前が切ってるのは鹿の肉だ。冷蔵庫には熊の肉もあるぞ」
事も無げにいい、肉を切り終え野菜に取り掛かる記四季。
春奈はその言葉に呆然としていた。
自分の祖父がまさか熊を倒してその肉を食ってるとは思っていなかったらしい。
「いや、竹山だけじゃなくて奥の樹海と山も俺の土地だからな。別に違法じゃないぞ?」
春奈の驚いた視線に記四季は見当違いないい訳をする。
その様子をサラが苦笑しながら見ていた。
「始めてみた時は本当に血がつながってるのかと思いましたが、やはり血縁ですかね。いい訳をするときの仕草や表情がよく似ている」
「・・・記四季さんは微妙にバイオレンスだけどね。熊も鹿も全部自分で解体しちゃうし」
サラの言葉にアメティスタが続いた。
その表情はやはり苦笑している。
「うちのマスターもよく似てますよ。笑ったときとか・・・黙ってるときとか」
「聞こえてるぞハウ。私はそんなに老けていない」
「・・・・・マイスター・・・・もうすぐ・・・・三十路・・・・」
「いやまだ二十五だから。まだ五年あるから」
「まぁ春奈よりは老けてますよね」
「当たり前だ」
「うむ。都さんの未来は・・・・言わない方がいいみたいだね」
「おいコラそこの占い師。微妙に気になる言い方をするな」
都と神姫たちが漫才をやっていると台所から記四季がやってきた。
手には皿に乗った納豆を持っている。
「老けるのがいやなら納豆食っとけ。体にいいぞ」
「・・・あのおじい様。私発酵食品は・・・ちょっと・・・」
「なんだお前。納豆嫌いまだ治ってなかったのか。いい機会だから治して帰れ」
記四季はそういうと都の前に皿に乗った納豆を置いた。
物凄く嫌そうな顔をする都。
「・・・そ、そうだ! おじい様、春奈も納豆嫌いです!!」
「ん? そうなのか?」
死なば諸共。都は妹の春奈を道連れにしようとしていた。
微妙に酷い姉である。
「え? 昔は駄目だったけど今はそうでも無いよ?」
都の目論見は、春奈のそんな言葉によって打ち砕かれた。
「何だと!? お前私が本屋を始める前は食べたら吐くほど駄目だったじゃないか!!」
「何でって言われても・・・ほら、平気だよ?」
そういうと台所で平然と納豆を食べる春奈。
都はというとその光景に呆然としていた。
「ば・・・馬鹿な・・・何故・・・何故だ・・・!?」
そのまま打ちひしがれる都。
背中がすすけている。
「ミヤコミヤコ」
「・・・何だ」
「ハルナはですね。本当につい最近まで食べられなかったのですよ」
この状況を机の上で見ていたサラが続ける。
「ですがね。ハチヤが納豆好きだったので・・・我慢していたら食べられるようになってしまったそうです」
「・・・・・春奈・・・貴様男のために納豆嫌いを克服したと言うのか! 貴様は納豆に魂を売ったのか! 貴様はどう考えても賞味期限なんて意味が無いように見えるその腐敗食品を食べるというのか!!」
机の上の納豆を振りかざし春奈に叫ぶ都。
行儀が悪いことこの上ない。
記四季はというと味噌汁の仕上げに移っていた。もうどうでもいいらしい。
「いやそんな事いわれても・・・ほら、体にいいよ?」
微妙にはにかみながら言う春奈。
それはもう幸せ最高潮の新妻のような表情だったという。
「く・・・これが噂の新妻ビームか・・・判ったよ私の負けだ。・・・納豆はお前が食べるんだ。八谷のために・・・」
「え、うん。別にいいけど・・・」
いつの間にか春奈が食べることになっているが彼女は気づかない。
その様子を面白そうな顔でサラは見ている。
「・・・爺ちゃんは騙されねぇぞ。黙って納豆くえや」
デカイお盆に朝食を満載した記四季が居間に来ると都は力尽きたように項垂れた。