「・・・最近山下りてばっかりだな俺」
神姫センターの中を見ながら記四季はそう呟いた。
そこは休日ということもあって結構な賑わいを見せている。
「これも健康のためですよ主。自然に囲まれて暮らすのも良いですが、たまには俗世に身を置くのも悪くは無いでしょう」
「・・・山が無くて大きな木が無くて熊も猪もいない。野草を食えばマズイし鳥なんて鴉と鳩しかいねぇのにか?」
「そうです。普通の方はリフレッシュのために自然を求めますが、主の場合は健康のために人工を求めるのですよ」
彩女は記四季の方で微笑みながらそういった。
「所で主、一つ聞きたいことがあるのですが・・・・・」
「ん、何だ?」
記四季の横顔を見ながら、彩女は少し緊張して言った。
彼女は・・・記四季の妻について聞こうとしていた。
「あ、あの」
「あ、おじいちゃん!」
神姫センターの中を見ながら記四季はそう呟いた。
そこは休日ということもあって結構な賑わいを見せている。
「これも健康のためですよ主。自然に囲まれて暮らすのも良いですが、たまには俗世に身を置くのも悪くは無いでしょう」
「・・・山が無くて大きな木が無くて熊も猪もいない。野草を食えばマズイし鳥なんて鴉と鳩しかいねぇのにか?」
「そうです。普通の方はリフレッシュのために自然を求めますが、主の場合は健康のために人工を求めるのですよ」
彩女は記四季の方で微笑みながらそういった。
「所で主、一つ聞きたいことがあるのですが・・・・・」
「ん、何だ?」
記四季の横顔を見ながら、彩女は少し緊張して言った。
彼女は・・・記四季の妻について聞こうとしていた。
「あ、あの」
「あ、おじいちゃん!」
ホワイトファング・ハウリングソウル
第二十四話
『伝説の言葉』
彩女の問いを遮るように、春奈が記四季を見つけ駆け寄ってきた。
その様子を少し恨めしげな目で彩女は見る。
「おはよ、おじいちゃん。早いね」
「まぁな。・・・春奈、そいつは?」
と、記四季が春奈の後ろにいる少年を顎で示す。
そこにいたのは・・・
「あ、ど、どうも。八谷良平です・・・春・・・七瀬の友達です」
「おっす! おらマイ!」
春奈の恋人、八谷良平と彼の神姫のマイだった。
記四季の始めて見る春奈の恋人(彼はそれを聞いたわけではないが何となく知っている)の感想は“頼り無さそう”だった。
面構えは女そのものだしお世辞にも強そうには見えない。果たして大事な孫娘を任せて大丈夫なのだろうか。
「・・・・・・・・今、うちの春奈を呼び捨てにしようとしてなかったかい?」
そんなわけで記四季は少し八谷を苛めて見る事にした。
それを見て彩女が苦笑する。
「え、いえそんなことは・・・」
「そうか。ところでうちの春奈とはどんな関係だ?」
「・・・えと、その、お付き合いをさせて頂いております・・・」
記四季は少し驚く。正直それを認めるとは思っていなかったからだ。
案外骨のある奴なのかもしれない。
「主、もうその位にしては」
「・・・応。悪いな、つい苛めたくなった」
「つい!?」
記四季の言葉に八谷が軽くへこむ。
そのセリフは幼き時に都に言われまくった言葉だからだ。
「・・・七瀬、僕は苛めてオーラでも出してるのかな・・・?」
「・・・それを言うなら私も出てるかもね。主にサラ相手に」
春奈はそういいながら胸ポケットのサラを見る。
サラはしっかりと楽しそうに笑っていた。
「まぁそいつぁおいといてだ。都はどうしたよ」
辺りを見渡しながら記四季は言う。
今回は記四季と都がタッグを組むことになっているので彼女がいないと記四季はどうしようもない。
「さぁ・・・私ちょっと探してくるから、二人はここで待ってて」
「「え」」
春奈はそういうと男二人を残してさっさとどこかへ行ってしまった。
後に残される方は堪ったものではない。
ちなみにサラはどうやってか、さりげなく記四季の左肩に移動していたりする。どう考えてもこの状況を楽しむ気満々だ。
「・・・・いい忘れてたが、春奈のじいちゃんの記四季だ。・・・よろしく」
「・・・・はい。八谷良平です。・・・よろしくお願いします」
「・・・」
「・・・・・・」
気まずい。
そもそも恋人を身内と一緒においていくのはどうなのだろう。そこのところ記四季はよく判らないがこの状況は普通なのだろうかと考える。
・・・結論を出すまでも無く普通ではないだろう。
「・・・あの、記四季さん」
と、所在無さげに立っていた八谷が記四季に話しかける。
自分の事を“おじいさん”と呼ばれなかったことに記四季は少し落胆する。伝説のセリフ、『キミにお父さんと呼ばれる筋合いは無い!』の祖父版を言ってみたかったらしい。
「・・・なんでぇ」
「・・・す、座りましょう。席空いてますし」
八谷はそういいながらセンターにあるベンチを指差し、記四季に席を勧める。
ここは『そこまで老いぼれとらん!』というべきか否か記四季は少し迷うが結局は座ることにした。
記四季が座った後に八谷が隣に座る。老人を先に座らせる、好感度+1とあたまのなかで記四季は考える。
ちなみに神姫たちは備え付けの簡易テーブルの上で談笑している。オーナー達の微妙な雰囲気には見てみぬふりだ。
「・・・悪ぃな」
「・・・いえ」
それきり沈黙が場を支配する。
神姫センターそのものは賑わっているのに、この一角だけが静寂に包まれていた。
気まずい。
もう一度言おう。気まずい。
この気まずさを打破するためには何か会話が必要だ。軽く混乱し始めた頭で記四季は考える。
何か、何か話題は無いか・・・いやまてそもそも年長者の自分が何でこんなに困ってるんだ。本来なら困るのはこの若造の役割ではないのか。記四季はそう考え横目で八谷の方を見る。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
記四季以上に困った顔をしていた。
これはもはやどうしようもない。自分から話題を振るしかないだろう。
「・・・お前さん。春奈と付き合ってるんだったな」
「え、あ、はい」
結局、春奈の話題を振ることにした。
「あいつのどこに惚れたんでぃ?」
記四季のその言葉に八谷は少し恥ずかしそうに頭をかく。
「いえ・・・どことかじゃなくて・・・全部・・・です」
「・・・そうか」
悩むことなく言った八谷のその言葉に肯く記四季。
彩女はやっぱりそんな様子を優しそうな顔で見ていた。
「・・・ま、アレだ。・・・がんばんな」
「え・・・・はい・・・!」
記四季のその言葉に頬がほころぶ八谷。
・・・この後ようやくやってきた都にその顔を見られ、彼は苛められたという。
その様子を少し恨めしげな目で彩女は見る。
「おはよ、おじいちゃん。早いね」
「まぁな。・・・春奈、そいつは?」
と、記四季が春奈の後ろにいる少年を顎で示す。
そこにいたのは・・・
「あ、ど、どうも。八谷良平です・・・春・・・七瀬の友達です」
「おっす! おらマイ!」
春奈の恋人、八谷良平と彼の神姫のマイだった。
記四季の始めて見る春奈の恋人(彼はそれを聞いたわけではないが何となく知っている)の感想は“頼り無さそう”だった。
面構えは女そのものだしお世辞にも強そうには見えない。果たして大事な孫娘を任せて大丈夫なのだろうか。
「・・・・・・・・今、うちの春奈を呼び捨てにしようとしてなかったかい?」
そんなわけで記四季は少し八谷を苛めて見る事にした。
それを見て彩女が苦笑する。
「え、いえそんなことは・・・」
「そうか。ところでうちの春奈とはどんな関係だ?」
「・・・えと、その、お付き合いをさせて頂いております・・・」
記四季は少し驚く。正直それを認めるとは思っていなかったからだ。
案外骨のある奴なのかもしれない。
「主、もうその位にしては」
「・・・応。悪いな、つい苛めたくなった」
「つい!?」
記四季の言葉に八谷が軽くへこむ。
そのセリフは幼き時に都に言われまくった言葉だからだ。
「・・・七瀬、僕は苛めてオーラでも出してるのかな・・・?」
「・・・それを言うなら私も出てるかもね。主にサラ相手に」
春奈はそういいながら胸ポケットのサラを見る。
サラはしっかりと楽しそうに笑っていた。
「まぁそいつぁおいといてだ。都はどうしたよ」
辺りを見渡しながら記四季は言う。
今回は記四季と都がタッグを組むことになっているので彼女がいないと記四季はどうしようもない。
「さぁ・・・私ちょっと探してくるから、二人はここで待ってて」
「「え」」
春奈はそういうと男二人を残してさっさとどこかへ行ってしまった。
後に残される方は堪ったものではない。
ちなみにサラはどうやってか、さりげなく記四季の左肩に移動していたりする。どう考えてもこの状況を楽しむ気満々だ。
「・・・・いい忘れてたが、春奈のじいちゃんの記四季だ。・・・よろしく」
「・・・・はい。八谷良平です。・・・よろしくお願いします」
「・・・」
「・・・・・・」
気まずい。
そもそも恋人を身内と一緒においていくのはどうなのだろう。そこのところ記四季はよく判らないがこの状況は普通なのだろうかと考える。
・・・結論を出すまでも無く普通ではないだろう。
「・・・あの、記四季さん」
と、所在無さげに立っていた八谷が記四季に話しかける。
自分の事を“おじいさん”と呼ばれなかったことに記四季は少し落胆する。伝説のセリフ、『キミにお父さんと呼ばれる筋合いは無い!』の祖父版を言ってみたかったらしい。
「・・・なんでぇ」
「・・・す、座りましょう。席空いてますし」
八谷はそういいながらセンターにあるベンチを指差し、記四季に席を勧める。
ここは『そこまで老いぼれとらん!』というべきか否か記四季は少し迷うが結局は座ることにした。
記四季が座った後に八谷が隣に座る。老人を先に座らせる、好感度+1とあたまのなかで記四季は考える。
ちなみに神姫たちは備え付けの簡易テーブルの上で談笑している。オーナー達の微妙な雰囲気には見てみぬふりだ。
「・・・悪ぃな」
「・・・いえ」
それきり沈黙が場を支配する。
神姫センターそのものは賑わっているのに、この一角だけが静寂に包まれていた。
気まずい。
もう一度言おう。気まずい。
この気まずさを打破するためには何か会話が必要だ。軽く混乱し始めた頭で記四季は考える。
何か、何か話題は無いか・・・いやまてそもそも年長者の自分が何でこんなに困ってるんだ。本来なら困るのはこの若造の役割ではないのか。記四季はそう考え横目で八谷の方を見る。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
記四季以上に困った顔をしていた。
これはもはやどうしようもない。自分から話題を振るしかないだろう。
「・・・お前さん。春奈と付き合ってるんだったな」
「え、あ、はい」
結局、春奈の話題を振ることにした。
「あいつのどこに惚れたんでぃ?」
記四季のその言葉に八谷は少し恥ずかしそうに頭をかく。
「いえ・・・どことかじゃなくて・・・全部・・・です」
「・・・そうか」
悩むことなく言った八谷のその言葉に肯く記四季。
彩女はやっぱりそんな様子を優しそうな顔で見ていた。
「・・・ま、アレだ。・・・がんばんな」
「え・・・・はい・・・!」
記四季のその言葉に頬がほころぶ八谷。
・・・この後ようやくやってきた都にその顔を見られ、彼は苛められたという。