闇夜に咲く白い影が一対。
飛鳥とストラーフ。
その小さな背に北斗の巨体を庇うように、片腕の無い飛鳥がそこに居た。
飛鳥とストラーフ。
その小さな背に北斗の巨体を庇うように、片腕の無い飛鳥がそこに居た。
アスカ・シンカロン13
~唇乎~
「お前……」
今日の戦いの後、クレイドルで眠りについていた筈だ。
起こさなかったのだし、神姫ならば充電も終わらぬうちに勝手に起きる筈も無い。
だが、彼女はここにいる。
起こさなかったのだし、神姫ならば充電も終わらぬうちに勝手に起きる筈も無い。
だが、彼女はここにいる。
「私は多分。このときの為にここに居るんだと思うから……」
「……」
「……」
ソレがどちらなのか。
まだ北斗の中で結論は出ない。
でも。
まだ北斗の中で結論は出ない。
でも。
(どっちがどっちなのか。当てなきゃダメなのか?)
ソレが最後の鍵なんだろうか?
どちらなのか、という問いかけは既に無意味。
神姫は明日香を名乗り。
少女は夜宵を名乗った。
真偽は定かでなく。
知っていた筈の彼女たちの事が分らなくなる。
どちらなのか、という問いかけは既に無意味。
神姫は明日香を名乗り。
少女は夜宵を名乗った。
真偽は定かでなく。
知っていた筈の彼女たちの事が分らなくなる。
「……邪魔をスル。ヤツの差し金カ」
悪魔の正体なのか、耳障りな金属音すら混じり始めた声で白いストラーフが怨嗟を上げる。
「……最初かラ。お前が素直に死んでいれバ。……こんな面倒ナ事をしないでも済んだのニ」
「私は。北斗が選んでくれたらそれでいいんだよ。……北斗ちゃんの選択が一番大事だって事だから!!」
「私は。北斗が選んでくれたらそれでいいんだよ。……北斗ちゃんの選択が一番大事だって事だから!!」
目の前の神姫は、明日香とも夜宵ともつかない。
「……私は、どっち?」
腕の中の少女は、明日香とも夜宵ともつかない。
考えろ。
思い出せ。
ヒントは何処かにある筈だ。
俺が気付けるヒントは、もう出ている筈なんだ。
思い出せ。
ヒントは何処かにある筈だ。
俺が気付けるヒントは、もう出ている筈なんだ。
「同じだヨ。お前を壊せバ同じ事ダ!!」
「私は死なないし、北斗ちゃんも殺させない!! 北斗は私の一番大事な人なんだよ!!」
「私は死なないし、北斗ちゃんも殺させない!! 北斗は私の一番大事な人なんだよ!!」
剣と爪が交錯する。
「敵うと思っているのカ、人間如きガ。この私ニ!!」
「……北斗が居てくれるなら、私に不可能は無いんだよ!!」
「……北斗が居てくれるなら、私に不可能は無いんだよ!!」
ストラーフの顔面を、飛鳥が着陸脚で蹴り飛ばす。
バイザーとレッグの双方が砕け、部品を撒き散らして四散する。
バイザーとレッグの双方が砕け、部品を撒き散らして四散する。
「……ねぇ、北斗ちゃん。……私は、どっち……」
思い出せ。
何を。
悪魔は信じてはいけない。
神には頼ってはいけない。
幼馴染は優しい嘘をつく。
神には頼ってはいけない。
幼馴染は優しい嘘をつく。
だけど。
今必要なのは。
痛くても辛くても良い。
真実だ。
今必要なのは。
痛くても辛くても良い。
真実だ。
(……本当はさ。弥涼姉が死んだ時点で、妹も死ぬと思ってたんだよね、僕は……)
つまり、片方死ぬと。
両方死ぬ。
両方死ぬ。
(少なくとも、妹(カタホウ)だけ無事に残る可能性は、ゼロだと思ってた)
少なくとも。
無事には残らない。
無事には残らない。
(でも、現に姉だけ死んで妹が生きてる。……そのバランスを取る為に神姫を受け皿にした……)
バランス?
何の?
何の?
(明日香は夜宵で、夜宵は明日香だよ)
もう認めるしかない。
明日香は夜宵で。
夜宵は明日香だ。
夜宵は明日香だ。
明日香=夜宵。
明日香→夜宵でも、夜宵→明日香でもない。
明日香→夜宵でも、夜宵→明日香でもない。
そう、近似ではないのだ。
似ている訳ではなく……。
この双子は、お互いを完璧に演じきれる。
だが、100%完璧な演技は最早演技ではない。
演技とは、完全でないから演技なのだ。
素でそうではないから演じるのだ。
似ている訳ではなく……。
この双子は、お互いを完璧に演じきれる。
だが、100%完璧な演技は最早演技ではない。
演技とは、完全でないから演技なのだ。
素でそうではないから演じるのだ。
だったら。
ソレが結論だ。
◆
この双子は完全に100%互いを演じれる。
完全に演じられるということは。
演じるまでも無く『そう』だと言う事。
それが可能で有ると仮定せねば最早説明がつかない。
それが、できるのだ。
完全に演じられるということは。
演じるまでも無く『そう』だと言う事。
それが可能で有ると仮定せねば最早説明がつかない。
それが、できるのだ。
できる事を、しなかった筈が、無い。
「わかったよ。お前ら本当は “区別が無い” んだな」
「……ぁ」
「……ぁ」
腕の中で、微かに少女が反応した。
「明日香は夜宵で、夜宵は明日香だ。……何の事は無い、こんな事件が起きるよりずっと前に、あいつは俺にヒントをくれてたんじゃねぇか」
弥涼、もしくは双子と呼び、決して『名前』で区別しなかった友人。
「お互いがお互いを演じ切れるなら、互いを使い分けられるんだ。お前らは好きな時に明日香になり、夜宵になれる」
片方が死ぬ前は記憶だって共有していた筈だ。
でなければ人格は同じにならない。
片方が死ぬ前は記憶だって共有していた筈だ。
でなければ人格は同じにならない。
思い出せ。
(「ん~、あ~。北斗?」)
最初に飛鳥が目覚めた時、『北斗』と呼んでいた事を。
思い出せ。
(「おまえ、まさか。明日香、なのか?」)
こちらが『明日香』だと限定したから。飛鳥は明日香になったんだ。
「……俺が決めてたんだな……。今までもずっと。お前らがどちらなのか。俺の反応に合わせて、使い分けてたんだな……」
「……」
「……」
たとえば。
常に互いの変化を察知できる双子が居た場合。
片方が見聞きしたことが、もう片方にも伝わる場合。
量子で結ばれた双子は。
最早双子ではない。
二つの身体を持つ一人の人間だ。
だから。
常に互いの変化を察知できる双子が居た場合。
片方が見聞きしたことが、もう片方にも伝わる場合。
量子で結ばれた双子は。
最早双子ではない。
二つの身体を持つ一人の人間だ。
だから。
彼女たちは自分の中に無い『個』を外側に求めた。
それが。
結論。
明日香/夜宵は、二つの身体に一つの人格と記憶を持った個人だった。
一応この双子の事はオカルトではなく、SF的に説明できます。
長くなるので興味のある人は『双子の量子論』とかググって見るのも良いかも。
長くなるので興味のある人は『双子の量子論』とかググって見るのも良いかも。
分りやすく説明するなら。
オンラインゲームを遊んでいるプレイヤーを想像すると良いかもです。
オンラインゲームを遊んでいるプレイヤーを想像すると良いかもです。
ゲームの中が、現実。
使うキャラクターが、人間。
プレイヤーが、精神とか意思とか。
使うキャラクターが、人間。
プレイヤーが、精神とか意思とか。
弥涼姉妹の場合。一人のプレイヤーが二台のパソコンから同時にログインして、
二人のキャラクターを同時に操作しているとお考え下さい。
この二人のキャラクターは外見からパラメータまで完全同性能です。
二人のキャラクターを同時に操作しているとお考え下さい。
この二人のキャラクターは外見からパラメータまで完全同性能です。
他のキャラから見ればこの二人は単なる同性能キャラですが……。
さて、もしこのゲームに相手の名前を表示する機能が無かったら?
キャラの識別を視覚や聴覚だけで行わなければいけない場合……。
はたして貴方ならこの二人のキャラの区別が付くでしょうか?
つける必要を感じるでしょうか?
キャラの識別を視覚や聴覚だけで行わなければいけない場合……。
はたして貴方ならこの二人のキャラの区別が付くでしょうか?
つける必要を感じるでしょうか?
…という少し哲学なお話でした。
多分ドン引きされていると思うけどもう止まらない。
あと三話でエンディングです。
あと三話でエンディングです。
これが終わったら中断してる神姫SSを書く作業に戻ります。
書き始めてからニ、三話名乗るの忘れてて今さら言い出しづらいALCでした。
書き始めてからニ、三話名乗るの忘れてて今さら言い出しづらいALCでした。
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