熱き心魂──あるいは二日目その一
さて、“鳳凰カップ”という祭りもいよいよ折り返しを過ぎ二日目。
今日も昨日同様……いや、それ以上に私・槇野晶と“妹”のアルマは
出典ブースの準備に余念がない。何せクララ……もとい梓とロッテの
“大番狂わせ”は、良かれ悪しかれ多少の注目を集めてしまう物だ。
MMSショップ“ALChemist”のホームページにも、問い合わせが幾つか
寄せられていた。恐らくブースへの来客数も微増するだろう、有無。
今日も昨日同様……いや、それ以上に私・槇野晶と“妹”のアルマは
出典ブースの準備に余念がない。何せクララ……もとい梓とロッテの
“大番狂わせ”は、良かれ悪しかれ多少の注目を集めてしまう物だ。
MMSショップ“ALChemist”のホームページにも、問い合わせが幾つか
寄せられていた。恐らくブースへの来客数も微増するだろう、有無。
「というわけでだアルマや、今日は朝からかっ飛ばして良いぞ?」
「え、ええっ!いいんですか!?……レパートリー無くなりそう」
「一向に構わん。全力全開、魂の限りを込めて唱い上げるのだ!」
「……はいっ、精一杯……唱える限り、あたし……唱いますね?」
「え、ええっ!いいんですか!?……レパートリー無くなりそう」
「一向に構わん。全力全開、魂の限りを込めて唱い上げるのだ!」
「……はいっ、精一杯……唱える限り、あたし……唱いますね?」
本当は誰かに手伝ってもらいたかったが、梓とロッテは決勝ブロックの
説明を受けねばならぬ故、武装一式を持って入場時に別れたっきりだ。
こういう時に手を貸してくれる係累はいないし、“オーナー”とて原則
店の経営自体には不干渉だ。今後も決して、表に出る事は無いだろう。
アルマは客引き……を兼ね“己”を表現する為、ブース内のステージで
唱うのが仕事だ。なので、今日も私一人で此処を切り盛りする訳だな。
説明を受けねばならぬ故、武装一式を持って入場時に別れたっきりだ。
こういう時に手を貸してくれる係累はいないし、“オーナー”とて原則
店の経営自体には不干渉だ。今後も決して、表に出る事は無いだろう。
アルマは客引き……を兼ね“己”を表現する為、ブース内のステージで
唱うのが仕事だ。なので、今日も私一人で此処を切り盛りする訳だな。
『只今よりゲート開門いたします!皆様、二日目も頑張ってね~っ!』
「……にしても昨日もそうだが、妙にノリノリだなこのウグイス嬢め」
「なんというか、マイスターみたいな印象受けますよね……あ、いえ」
「ちょっと待てアルマ、私はあんな可愛げ満載の雰囲気ではないッ!」
「そんな事はないんじゃないかな、小さなレディ達?十分、可憐だよ」
「……にしても昨日もそうだが、妙にノリノリだなこのウグイス嬢め」
「なんというか、マイスターみたいな印象受けますよね……あ、いえ」
「ちょっと待てアルマ、私はあんな可愛げ満載の雰囲気ではないッ!」
「そんな事はないんじゃないかな、小さなレディ達?十分、可憐だよ」
思わず噴きそうになりつつも、慌ててアルマから手を離し正面を見る。
そこにいたのは既に幾人か並んでいる客達だった。その先頭にいたのは
以前クララの初戦を務めた“アラクネー”のオーナー、前田氏だった。
……この様な歯の浮く台詞が言えるのは、彼だけだ。間違えはしない。
無論、アラクネー嬢も一緒だ。とは言っても、彼女はスーツ姿だがな?
そこにいたのは既に幾人か並んでいる客達だった。その先頭にいたのは
以前クララの初戦を務めた“アラクネー”のオーナー、前田氏だった。
……この様な歯の浮く台詞が言えるのは、彼だけだ。間違えはしない。
無論、アラクネー嬢も一緒だ。とは言っても、彼女はスーツ姿だがな?
「げふげふ……貴様ら、アラクネーにウチの服など入り用なのか?」
「服その物は某の趣味ではないが、ネクタイだけなら良さそうでな」
「えっと……そう言えば、そうですね。ネクタイなら、合うかも?」
「アルマ君、だっけ……君は、ライブの準備をしなくていいのかい」
「あっ!?す、すみません今すぐにしますからっ!あうう……ッ!」
「服その物は某の趣味ではないが、ネクタイだけなら良さそうでな」
「えっと……そう言えば、そうですね。ネクタイなら、合うかも?」
「アルマ君、だっけ……君は、ライブの準備をしなくていいのかい」
「あっ!?す、すみません今すぐにしますからっ!あうう……ッ!」
前田氏に急かされて、アルマが楽屋の用途を為すコンテナに飛び込んだ。
その合間に私は、アラクネー嬢のスーツに合うネクタイを見繕ってやる。
そして彼らを捌ききり、次の者を応対する頃……それは唐突に始まった。
ハンディ・シーケンサーによるパーカッションの音色に続き、弾ける弦。
それは地中海の潮風を思わせる軽快なリズム、それでいて勇壮な音色だ。
その合間に私は、アラクネー嬢のスーツに合うネクタイを見繕ってやる。
そして彼らを捌ききり、次の者を応対する頃……それは唐突に始まった。
ハンディ・シーケンサーによるパーカッションの音色に続き、弾ける弦。
それは地中海の潮風を思わせる軽快なリズム、それでいて勇壮な音色だ。
『♪ビルの林-おか-に小さな躯晒して、水面に映した想い出-かげ-
汐の様に遠ざかる日々……それでもあたし、振り返らず進むの
暮らした昔大事にしたい!でもねもっと、今を輝かせたいッ!
星無き遙かな黒天-よぞら-に、茜-あさひ-の色を宿したいの!
現在-今-が果てに過ぎてもあたしの想い、決して消させないよ
そうよ──────忘れないの、この傷-むね-の痛みはッ!!』
汐の様に遠ざかる日々……それでもあたし、振り返らず進むの
暮らした昔大事にしたい!でもねもっと、今を輝かせたいッ!
星無き遙かな黒天-よぞら-に、茜-あさひ-の色を宿したいの!
現在-今-が果てに過ぎてもあたしの想い、決して消させないよ
そうよ──────忘れないの、この傷-むね-の痛みはッ!!』
題名は“朱金-あかね-の夜明け”。ラブソングなのか戦いの挽歌なのか
良く分からぬのだが、作詞作曲等全ての作業をアルマが行ったらしい。
アルマに言わせると『あの人の声には、届かなくてもいいんですよ』。
つまりは自らの言葉で、声で……そして想いで、曲を作りたいらしい。
こういった行為は、まさに神姫の“創造性”の極北とも言えるだろう。
テンポの速い曲故か、あっという間に……4分足らずで独唱は終わる。
良く分からぬのだが、作詞作曲等全ての作業をアルマが行ったらしい。
アルマに言わせると『あの人の声には、届かなくてもいいんですよ』。
つまりは自らの言葉で、声で……そして想いで、曲を作りたいらしい。
こういった行為は、まさに神姫の“創造性”の極北とも言えるだろう。
テンポの速い曲故か、あっという間に……4分足らずで独唱は終わる。
「う……うおおぉぉー!?唱ってる、神姫が唱ってるぞぉーッ!?」
「戯けッ!怪物でも見る様な声を出して、それ程驚く事か貴様ッ!」
「いやだって……この娘“アルマ”だっけ、ストラーフでしょ?!」
「有無。だが戦いだけが神姫の姿ではないのだぞ、この服の様にな」
「戯けッ!怪物でも見る様な声を出して、それ程驚く事か貴様ッ!」
「いやだって……この娘“アルマ”だっけ、ストラーフでしょ?!」
「有無。だが戦いだけが神姫の姿ではないのだぞ、この服の様にな」
喚く男性客……恐らくは高校生か?……を一喝しつつ、私は思い出す。
現在の様にMMSが神姫として……更には“武装神姫”として、規格の
統一が為される前の試作期に何タイプか存在した、“神姫”達の名を。
故あって、私は神姫の黎明期……試作段階の逸話を色々と知っている。
その頃は音感能力特化型等、実に様々な能力を持つ神姫が試作された。
中でもとあるタイプに属する一人の神姫は、“訃報”が報じられた程に
一過性ながらも人々の話題となった、言語処理系特化型の神姫である。
そうか、もう大分経つか……“武装神姫”以外を知らぬ者も多い筈だ。
現在の様にMMSが神姫として……更には“武装神姫”として、規格の
統一が為される前の試作期に何タイプか存在した、“神姫”達の名を。
故あって、私は神姫の黎明期……試作段階の逸話を色々と知っている。
その頃は音感能力特化型等、実に様々な能力を持つ神姫が試作された。
中でもとあるタイプに属する一人の神姫は、“訃報”が報じられた程に
一過性ながらも人々の話題となった、言語処理系特化型の神姫である。
そうか、もう大分経つか……“武装神姫”以外を知らぬ者も多い筈だ。
『えっと……皆さんッ、今日も“鳳凰カップ”に来てくださって……』
『Woooooooooooooooooooooooooooo!!!!』
『……あ、ありがとうございますっ!このお祭りに花を添えたくて!』
『Woooooooooooooooooooooooooooo!!!!』
『……あ、ありがとうございますっ!このお祭りに花を添えたくて!』
そんな感慨も、アルマの声に惹かれて訪れた客達への応対と、それ以上に
アルマの前に群がってきた“観衆”の熱い叫びに、早々と掻き消される。
……にしても、何十人いるのだ?今日は“鳳凰カップ”の決勝戦である。
そちら目当ての方が必ず多い筈で、しかもこのブースは“祭典”で用いる
簡易型テーブル3~4台分の幅しかない。それなのに、この盛況振りだ。
アルマの前に群がってきた“観衆”の熱い叫びに、早々と掻き消される。
……にしても、何十人いるのだ?今日は“鳳凰カップ”の決勝戦である。
そちら目当ての方が必ず多い筈で、しかもこのブースは“祭典”で用いる
簡易型テーブル3~4台分の幅しかない。それなのに、この盛況振りだ。
『恥ずかしかったけど……今日は一日唱い続ける事にしましたッ!!』
「凄い人手ですね、決して大きくないブースなのに買い物客も聴衆も」
「む?貴様ら……戸田静香とココか。暇潰しに来た……いや、違うか」
「まさか。私も個人ブランドをやっているんです、気は抜けませんよ」
「凄い人手ですね、決して大きくないブースなのに買い物客も聴衆も」
「む?貴様ら……戸田静香とココか。暇潰しに来た……いや、違うか」
「まさか。私も個人ブランドをやっているんです、気は抜けませんよ」
客の列に紛れてやってきた戸田静香と、会話をする。そう言えば彼女も
“TODA-Design”という銘で、エルゴ等に神姫用衣装を提供していた。
不敵に笑う彼女らしい動機とも思えた……のだが、真実は違う様だな。
そして私達を後目に、アルマの挨拶で“観衆”は一気に燃え上がった!
……この場合“萌え上がった”でも間違っていない気がするな、有無。
“TODA-Design”という銘で、エルゴ等に神姫用衣装を提供していた。
不敵に笑う彼女らしい動機とも思えた……のだが、真実は違う様だな。
そして私達を後目に、アルマの挨拶で“観衆”は一気に燃え上がった!
……この場合“萌え上がった”でも間違っていない気がするな、有無。
「静香が“ライバル”の偵察をしたい、って建前で……もごもご!?」
「あくまでこれは偵察なの。そうでしょココ?ごめんなさい、晶さん」
「まあどちらでも私達は構わぬ。存分に見て、聴いてゆくが良いぞ!」
『拙いあたしの唄ですけど、少し疲れたら聴いていって下さいねッ!』
『アルマちゃーんッ!!いーじゃん、いーじゃんすげーじゃんッ!?』
『次は“妹”を題材にした……“天空-あおいそら-の鳥”ですッ!!』
『Woooooooooooooooooooooooooooo!!!!』
「あくまでこれは偵察なの。そうでしょココ?ごめんなさい、晶さん」
「まあどちらでも私達は構わぬ。存分に見て、聴いてゆくが良いぞ!」
『拙いあたしの唄ですけど、少し疲れたら聴いていって下さいねッ!』
『アルマちゃーんッ!!いーじゃん、いーじゃんすげーじゃんッ!?』
『次は“妹”を題材にした……“天空-あおいそら-の鳥”ですッ!!』
『Woooooooooooooooooooooooooooo!!!!』
──────不死鳥の様な心は、皆も生き返らせるんだよね。