第七間幕。
ライト点灯。何も無い、がらんとした廊下のような場所。
ライト点灯。何も無い、がらんとした廊下のような場所。
右側から大きな白いシーツに身をくるんだマーチ登場。身体も、頭にも被っている為に、顔しか見えない。ずりずりとシーツをひきずりながら中央に。
マーチ「!?」
マーチ、シーツのすそを踏んでひっくりかえる。
痛そうに打った頭をなでながらノソノソと立ち上がり、こちらを振り向くマーチ。
痛そうに打った頭をなでながらノソノソと立ち上がり、こちらを振り向くマーチ。
マーチ「あ・・・えっと。はじめまして」
困ったような顔のまま。ぺこりと一度礼。
マーチ「2036の風、第7幕。お読みくださった方々、本当にありがとうございます。私はマーチ・・・MMSタイプ『種型』ジュビジーです」
引きずっているシーツを、面倒そうな顔で。くいくいと自分に引き寄せる。
マーチ「この幕から、えっと。後半突入です。今回のお話は・・・12月です。寒い時ですね・・・風邪を引きやすい時です。私が、マスターの神姫になった時です。他のお姉ちゃん達とは。ちょっと神姫になるって言えるか解らないくらい、違いますけど・・・」
吹雪くような音。
ぶるっと震えてマーチは顔をシーツに埋める。
・・・くしゅん。
一度くしゃみをして、マーチ、少し寂しげな顔を再び上げる。
ぶるっと震えてマーチは顔をシーツに埋める。
・・・くしゅん。
一度くしゃみをして、マーチ、少し寂しげな顔を再び上げる。
マーチ「あの・・・神姫って。いつ、生まれるんですか?」
照明そのまま。マーチの頭上で赤い、四角のライトがぼんやりと光る。
ライトには『・・・中』と白い字で書かれているが、詳しくは解らない。その光をじっと悲しげな顔で見詰めながら、マーチ、続ける。
ライトには『・・・中』と白い字で書かれているが、詳しくは解らない。その光をじっと悲しげな顔で見詰めながら、マーチ、続ける。
マーチ「・・・ファクトリーで作られた時ですか?
コア、ボディ、CSCがセットされた時ですか?
それとも、目を開けた時ですか?
マスター登録を終えた時ですか?
んーと・・・名前を貰った時ですか?」
コア、ボディ、CSCがセットされた時ですか?
それとも、目を開けた時ですか?
マスター登録を終えた時ですか?
んーと・・・名前を貰った時ですか?」
カタカタと何かが鳴る音。遠く喧騒のような声。白衣を着た人物が数人、マーチの後ろを走っていく。マーチ、それを意に介さず。やがて赤いライトから視線を逸らし、一度伏せ・・・こちらを向く。
マーチ「・・・それとも。心が動き始めた時、ですか?」
シン・・・と、全ての音が消える。耳が痛くなるほどの沈黙。
ただ煌々と光る赤い四角いライト。
マーチ、その沈黙の中、何かに聞き入るように目を閉じていたが。
やがて、シーツから手を出す。その手には一つの、いつしか、小幡の手から風が連れ去った小さな種。
ただ煌々と光る赤い四角いライト。
マーチ、その沈黙の中、何かに聞き入るように目を閉じていたが。
やがて、シーツから手を出す。その手には一つの、いつしか、小幡の手から風が連れ去った小さな種。
マーチ「種って・・・不思議ですよね。だって、生まれていないのに。命って言われます。生きていないのに。生きているって言われます・・・」
マーチ。種をもぞもぞと直す。
マーチ「けど。芽を出さない種は・・・生きている、のかな・・・?」
ふっと。
マーチの顔から完全に表情が消える。その顔のまま、マーチ一礼。
マーチの顔から完全に表情が消える。その顔のまま、マーチ一礼。
マーチ「それでは。しばしお別れです。また、お会いしましょう・・・マーチでした」
ガタン!!
何かが落ちるような、大きな音と共に。
突如として照明消灯。
突如として照明消灯。
第七幕・・・了。