むが~すむがす・・・でねぇで2036年の事だべ。あるカラオケ屋にたげ変な武装神姫が働いてたんずや。どんげにえばだかっつうとこったら感じだったんず。
〔割と久しぶりだわ、カラオケなんて。そう言えば新曲で歌いたいのがあったのよね。とりあえず副部長、お酒頼んで〕
{部長部長!! 一応サークルの新人歓迎会だって忘れないで下さいよ! あ、キミたち、食べたいものがあったら好きなの頼んでいいですから}
「・・・私、人前で歌うのはあんまり・・・」
[新入りちゃん、大丈夫だって。聞いてるだけでも、今宴会用のパーティーグッズだか何だかも頼んだからちゃんと楽しめるって!]
〈ちょっとセンパイ・・・そういうパーティーグッズって大抵イタいコスチュームとかしょうもない玩具とか、最初は勢いで楽しんでも2度と使えなくて、しかもこういう所で頼むとぼったくりな料金取られますよ!?〉
[そっちの新入りはツッコミきついな~。いいじゃねえかよ、意外と面白いのが出てくるかもしれないだろ?]
『んだっ!! 面白くねんかは見てから決めてけろっ!!!』
{いきなりマイク最大で喋るのは誰ですか! あ、人形?}
〔武装神姫じゃないそれ? 着物着てるけど、確かツガルタイプね〕
〈武装神姫って・・たしかマニアックな玩具でしたっけそれ? 良く種類まで知ってますね〉
『オモチャなんとは違うだ!! わーはさすらいの神姫演歌歌手、サユリちゃんだべ!! まんず1曲聴いてけろっ!! “津軽海峡冬景色”! ~♪ ~゛♪゛♪~』
[なっ!? 演歌ぁ!? いまどき演歌なんてジジイでも歌わねえのに、そんなんで盛り上げようなんておこがましいぜ!! 俺の“B’zの新曲”でも聴いて考えを改めな!! ~゛♪゛♪~!!]
『ほー、言うずらあってたげ気合入れた声しちゅーな。だばって歴史の浅か歌だば重さ足りんべや!! 真の歌っちゅうんは今さ聞いともたげ涙出るだべや~。それども古い歌なん今の若い者は知らんべや? がへーね! “淡墨桜”!! ~~♪♪!』
[B‘zの歌が軽いだと!? 古い歌知らねえだと!? そんな減らず口、この歌で塞いでやる!! “ギリギリchop”!! ~゛♪゛!!♪♪♪!!!~]
「・・・“Top of the World”歌います。~~♪~♪~♪~」
〈ああもう・・・、歌えばいいんでしょうが!! “Imagine”!! ~~~♪~♪♪~〉
〔へえ、意外といい歌知ってるじゃない2人とも。これは演歌ちゃんだけじゃなく、新入りちゃん達にも負けていられないわね! “みかんのうた”行くわよ! ゛♪゛♪゛♪~ ゛!゛!゛!~〕
{ああもう部長まで挑発に乗って、これでは収集が・・・}
『さしね!! オケ屋なん暴れて歌うトコだべや!! こすばすねで歌え! “鳳仙花”! ~゛!! ♪♪~゛♪~』
{歌わないとは言っていません!! “脳内モルヒネ”、歌います・・。 ♪~! ♪♪~♪~}
〈次は“ピンクスパイダー” !!!♪♪~♪!!〉
「・・・“fly me to the moon” ♪~♪♪~♪ ♪♪~」
〔皆、古い歌しばりでもレパートリーあるのね。“石川大阪友好条約” ~♪ ~!! ~♪♪〕
[“DA・KA・RA・SO・NO・TE・O・HA・NA・SHI・TE”だ!! ♪~♪♪ !!!~♪]
{“月に叢雲花に風”、歌います。 ~!!!~♪~!!!~♪♪}
『“夕焼けとんび”だべ!! ~~~~♪♪~~!!♪~』
[次は“LADY NAVIGATION”を・・・]
〈センパイ、俺の“lithium”が先です!! 大体、70過ぎても現役ロッカーな物好きの歌ばっかり歌わないで下さいよ!!〉
[B’zをバカにするな! 大体お前だって自殺とか殺されたりした奴の歌ばっかり歌ってんな! 辛気臭い!!]
〈なっ!? 別に歌は辛気臭くないんだからいいじゃないですか!!〉
『なんしたば~、歌の趣味なん好き好きだてや~』
〔ねーねー、折角だから皆で“青のり”歌わない?〕
[{〈『それは却下!!!!』〉}]
こったら風に、そげなそげな迷惑な位、古くさい歌に情熱ば注ぐ変わり者な奴だったてんがや。
「ありがどんごす~♪」
「有難うございました~♪ ・・・あ~ふわぁ~、眠ぃ、朝になってやっと閉店、これだからオケ屋のバイトってのは・・・」
サユリと歌ってた最後の客ば見送ってから、マツケンはでったらあぐびばする。それさ聞きつけて、奥からみりーも顔さ出す。2人ともサユリば同僚のアルバイトなんずや。
「マツケン君、最後のお客、随分盛り上がってたみたいだね」
「あ、みりー。それはこいつが居たからだよ」
「ああ、サユリちゃんか~。どうりで古い曲ばっかり聞こえてくると思ったら」
「めんずらすに、たげ威勢のよか客だったべや!」
「珍しく、怒らない客だった、だろ? いつも言ってるけど、まともに接客しろよ!! お前が古い歌で引っ掻き回した客の応対誰がしてると思ってるんだよ!!」
「でも結構サユリちゃんの売り上げ多いよ?」
「・・・珍しがってるだけなんだよ」
マツケンさにらんだばってん、サユリはなんともねて鼻で笑ったとや。
「有難うございました~♪ ・・・あ~ふわぁ~、眠ぃ、朝になってやっと閉店、これだからオケ屋のバイトってのは・・・」
サユリと歌ってた最後の客ば見送ってから、マツケンはでったらあぐびばする。それさ聞きつけて、奥からみりーも顔さ出す。2人ともサユリば同僚のアルバイトなんずや。
「マツケン君、最後のお客、随分盛り上がってたみたいだね」
「あ、みりー。それはこいつが居たからだよ」
「ああ、サユリちゃんか~。どうりで古い曲ばっかり聞こえてくると思ったら」
「めんずらすに、たげ威勢のよか客だったべや!」
「珍しく、怒らない客だった、だろ? いつも言ってるけど、まともに接客しろよ!! お前が古い歌で引っ掻き回した客の応対誰がしてると思ってるんだよ!!」
「でも結構サユリちゃんの売り上げ多いよ?」
「・・・珍しがってるだけなんだよ」
マツケンさにらんだばってん、サユリはなんともねて鼻で笑ったとや。
「さて、たげバイト代さ溜まったべな、わーはまた旅さ出るベな」
「へ? 旅って、もう出て行くのか?」
後片づけさ始めたマツケンたちば尻目に、サユリはいきなり宣言しよった。いづのこめにその体にしちゃあでったらい風呂敷ば背負って旅支度さしとったしの。
「え? サユリちゃんてこの店の神姫じゃなかったの?」
「ああ、こいつは俺たちと同じバイト」
「マスターも無しに?」
「なんでか知らねえけど、そうらしい」
みりーは先週さ入ったばっかだったべに、サユリさ来た1月時のことさ知らねかったんだべや。
「ふらりとやってきて、いきなり1人で『住み込みで働かせてけ~』って押しかけて来たんだよこいつ。最近じゃ路上ライブも取り締まり厳しいからとか何とかで。で、物好きな店長が宴会要員として採用しちゃったんだよ」
「物好きさ言うでねえ!! わーの心意気に惚れ込んだてに店長は雇ってくれたんだべや!!」
「いや心意気はともかく野良神姫の飛び入りバイトなんて雇ったら十分物好きだろ。大体お前演歌しか歌わねえし・・・まぁ、上手いとは思わなくもな・・」
「ねえ、ところで旅って何処へ行くの? 何が目的?」
「わーの師匠の親戚ば渡り歩いてんだべ」
マツケンの声さ遮ってみりーが聞くと、サユリはそう答えたべや。師匠ってばサユリのマスターの事だや。
「なんだ、野良じゃなくてはぐれた神姫だったのか。その師匠・・マスターを探して歩いてるのか? 何ではぐれたか知らないけど」
「だったらマツケンのお兄さんに探してもらったら? 確か元刑事だとか探偵だとか何とかじゃなかったかな」
みりーの言う通り、マツケンさ兄は私立探偵さしてただ。まーそん欠けたハサミみてーな探偵の神姫に引っ掻き回され人生っぷりは別の話で見てけっさ。けどもみりーの提案にも、サユリは首横さ振ったべや。
「つがるね。わーは別に師匠とはぐれた訳でねでぃや。自分で旅ば出て、修行してるんだベや」
「修行!? 演歌の!?」
「へ? 旅って、もう出て行くのか?」
後片づけさ始めたマツケンたちば尻目に、サユリはいきなり宣言しよった。いづのこめにその体にしちゃあでったらい風呂敷ば背負って旅支度さしとったしの。
「え? サユリちゃんてこの店の神姫じゃなかったの?」
「ああ、こいつは俺たちと同じバイト」
「マスターも無しに?」
「なんでか知らねえけど、そうらしい」
みりーは先週さ入ったばっかだったべに、サユリさ来た1月時のことさ知らねかったんだべや。
「ふらりとやってきて、いきなり1人で『住み込みで働かせてけ~』って押しかけて来たんだよこいつ。最近じゃ路上ライブも取り締まり厳しいからとか何とかで。で、物好きな店長が宴会要員として採用しちゃったんだよ」
「物好きさ言うでねえ!! わーの心意気に惚れ込んだてに店長は雇ってくれたんだべや!!」
「いや心意気はともかく野良神姫の飛び入りバイトなんて雇ったら十分物好きだろ。大体お前演歌しか歌わねえし・・・まぁ、上手いとは思わなくもな・・」
「ねえ、ところで旅って何処へ行くの? 何が目的?」
「わーの師匠の親戚ば渡り歩いてんだべ」
マツケンの声さ遮ってみりーが聞くと、サユリはそう答えたべや。師匠ってばサユリのマスターの事だや。
「なんだ、野良じゃなくてはぐれた神姫だったのか。その師匠・・マスターを探して歩いてるのか? 何ではぐれたか知らないけど」
「だったらマツケンのお兄さんに探してもらったら? 確か元刑事だとか探偵だとか何とかじゃなかったかな」
みりーの言う通り、マツケンさ兄は私立探偵さしてただ。まーそん欠けたハサミみてーな探偵の神姫に引っ掻き回され人生っぷりは別の話で見てけっさ。けどもみりーの提案にも、サユリは首横さ振ったべや。
「つがるね。わーは別に師匠とはぐれた訳でねでぃや。自分で旅ば出て、修行してるんだベや」
「修行!? 演歌の!?」
「わーは昔、たげ「時期ネタ」だて虐められたべや。サンタなん「残りの364日はプー」なん色々言われてなぁ」
「あ~、俺も言ってたな。ツガルタイプはデザイン優先で使えないとかクリスマス以外の日にサンタが居てもありがたみが無いとか一人だけ元ネタありでデザイナーからゴリ押しで入れられた邪道だの色々。本人に言われると罪悪感沸くなあ」
「だば罪さ償いに死んでけ」
「さらっと言うな酷いコト!!」
「ま、そげは冗談だばってん、そんでわーはたげ落ち込んだべや。そったらわーの師匠は言ったベや。『一日だけでも、毎年喜ばれるならいい』てや。わーの師匠はたった1日ば出番さ日に、悪者さなって豆弾さ投げつけられるんだてや。それだけでねーばん、師匠さ親戚は葉っぱで目潰しさされたり、初嫁やもっけに挨拶しに行っただけだばって脅迫さ誘拐さ勘違いされたり、たんだ笑ったばっかに「何をあざ笑ってるんだ!!」って非難ばされるって言ってたべや」
「でも実際悪さしてたんだろ? それだけ憎まれてるんなら」
「そげなはごくごく一部べや。殆どは昔良か思ってば始めた事だに皆が昔の事忘れちゅーて全部悪い方に勘違いされてるべや。それならまだ良かが、その風習自体もたげ忘れられちゅー、よう覚えられてんなってんさ」
「そんな・・・師匠さんの一族って可哀そう」
「ああ・・・ うん・・?」
みりーもマツケンも不幸なサユリさ師匠を哀れんださ。だばってマツケンはその師匠さ何か引っかかるとも思ってたべや。
「だばっても師匠はこうも言ってたべや。『だけど、俺達一族のやっている事は、関係ない、意味無いと言われても最後には人の幸せに繋がる事だから誇りを持っている』ってな。わーはその言葉にたげ心打たれたん」
「あ、なるほど。“風が吹けば桶屋が儲かる”の理屈か」
「え? 天気悪いと客足引くじゃない?」
「いやオケじゃなくて桶。風呂桶の桶だって。嫌な事が関係ないように見えて良い事に繋がってるってことわざ」
「そうべ、だはんで、わーはそげな風に迷惑さ言われても自分のやる事誇れる者になりたて、諸国巡りしちゅー訳べや」
「そうか、だからわざわざ今では廃れて無意味で陳列棚の邪魔者って言われる演歌で身の上を立てたりしてるのか。神姫の癖に見上げた根性だよ、ホントに」
「やー演歌は趣味だはんで」
「話の腰折るなよ」
「あ~、俺も言ってたな。ツガルタイプはデザイン優先で使えないとかクリスマス以外の日にサンタが居てもありがたみが無いとか一人だけ元ネタありでデザイナーからゴリ押しで入れられた邪道だの色々。本人に言われると罪悪感沸くなあ」
「だば罪さ償いに死んでけ」
「さらっと言うな酷いコト!!」
「ま、そげは冗談だばってん、そんでわーはたげ落ち込んだべや。そったらわーの師匠は言ったベや。『一日だけでも、毎年喜ばれるならいい』てや。わーの師匠はたった1日ば出番さ日に、悪者さなって豆弾さ投げつけられるんだてや。それだけでねーばん、師匠さ親戚は葉っぱで目潰しさされたり、初嫁やもっけに挨拶しに行っただけだばって脅迫さ誘拐さ勘違いされたり、たんだ笑ったばっかに「何をあざ笑ってるんだ!!」って非難ばされるって言ってたべや」
「でも実際悪さしてたんだろ? それだけ憎まれてるんなら」
「そげなはごくごく一部べや。殆どは昔良か思ってば始めた事だに皆が昔の事忘れちゅーて全部悪い方に勘違いされてるべや。それならまだ良かが、その風習自体もたげ忘れられちゅー、よう覚えられてんなってんさ」
「そんな・・・師匠さんの一族って可哀そう」
「ああ・・・ うん・・?」
みりーもマツケンも不幸なサユリさ師匠を哀れんださ。だばってマツケンはその師匠さ何か引っかかるとも思ってたべや。
「だばっても師匠はこうも言ってたべや。『だけど、俺達一族のやっている事は、関係ない、意味無いと言われても最後には人の幸せに繋がる事だから誇りを持っている』ってな。わーはその言葉にたげ心打たれたん」
「あ、なるほど。“風が吹けば桶屋が儲かる”の理屈か」
「え? 天気悪いと客足引くじゃない?」
「いやオケじゃなくて桶。風呂桶の桶だって。嫌な事が関係ないように見えて良い事に繋がってるってことわざ」
「そうべ、だはんで、わーはそげな風に迷惑さ言われても自分のやる事誇れる者になりたて、諸国巡りしちゅー訳べや」
「そうか、だからわざわざ今では廃れて無意味で陳列棚の邪魔者って言われる演歌で身の上を立てたりしてるのか。神姫の癖に見上げた根性だよ、ホントに」
「やー演歌は趣味だはんで」
「話の腰折るなよ」
「んだ、へばわー行ぐはんで」
そう言ってサユリは風呂敷さしょって立ち上がったべや。
「ホントに、言っちゃうんだね。それじゃあ、次は何処に行くの?」
「次は師匠の故郷に寄るばってさ。京都の大江山だべ」
「え? 大江山?」
「そうべ。師匠は居らねーばん、集落さ仲間たげ居るっちゅー話だて」
「そっか、早く師匠さんに自慢できるようなオケ屋になれるといいね」
「ああ、がんばんベ。じゃ、短けえ間だばったがありがとや。ひゃーなー」
「うん、元気でね~!!」
朝日がちっけな後姿を消したんは、ほんに一瞬の事だったと。
そう言ってサユリは風呂敷さしょって立ち上がったべや。
「ホントに、言っちゃうんだね。それじゃあ、次は何処に行くの?」
「次は師匠の故郷に寄るばってさ。京都の大江山だべ」
「え? 大江山?」
「そうべ。師匠は居らねーばん、集落さ仲間たげ居るっちゅー話だて」
「そっか、早く師匠さんに自慢できるようなオケ屋になれるといいね」
「ああ、がんばんベ。じゃ、短けえ間だばったがありがとや。ひゃーなー」
「うん、元気でね~!!」
朝日がちっけな後姿を消したんは、ほんに一瞬の事だったと。
「・・・ねえ、マツケン君、何か考え込んでるみたいだけど、どうしたの? サユリちゃんが心配?」
「いやさ、豆投げるのって、節分だよな? 最近あんまりやらないけど」
「・・・え?」
「節分の魔よけのヒイラギは目潰し用だって言うし、子供を追い回すって言うとなまはげ。来年の事を言うとアレが笑うってことわざもある。極めつけは京都の大江山って酒呑童子伝説の場所なんだよ」
「え、それって、もしかして、時期ネタで苦しめられて昨今忘れ去られてるってまさか・・・」
「いやでも・・・実在するなんて・・・ちょっとなあ、にわかに信じがたいってか・・・」
「・・・今度サユリちゃんに会ったら聞いてみるしかないよね」
「・・・また会ったら、な」
「いやさ、豆投げるのって、節分だよな? 最近あんまりやらないけど」
「・・・え?」
「節分の魔よけのヒイラギは目潰し用だって言うし、子供を追い回すって言うとなまはげ。来年の事を言うとアレが笑うってことわざもある。極めつけは京都の大江山って酒呑童子伝説の場所なんだよ」
「え、それって、もしかして、時期ネタで苦しめられて昨今忘れ去られてるってまさか・・・」
「いやでも・・・実在するなんて・・・ちょっとなあ、にわかに信じがたいってか・・・」
「・・・今度サユリちゃんに会ったら聞いてみるしかないよね」
「・・・また会ったら、な」
そん後も、マツケンとみりーは神姫演歌歌手の噂ば何度か聞いたと。だばって、サユリとば会うことは2度と無かったと。とっつぱれ(?)。