ムラサメvsムラサメ
「へえ、結構大きいんだな」
いずるとホーリーベルは恒一に連れられてバトルアリーナの会場に来ていた。ここでは神姫を初めとしたバトルフィギュアがお互いに競い合う場所で、この地区のオーナーたちが交流する場所でもある。そのため、休日になるとバトルを見るために来ている一般客でいっぱいになっていた。
「それにしても小百合さん、一体どこで待ち合わせしてるんだろう。こんな人ごみじゃ見つけるのに苦労するぞ」
周りをきょろきょろしながら恒一は小百合を探していた。
「まだ到着してないんじゃないか?ここ付近は渋滞してるそうだから」
いずるがそういった直後、後ろから聞き覚えがある声が聞こえてきた。
「ごめん、遅くなって。駐車場に付くまで時間がかかっちゃって。あなた達は大丈夫だった?」
「はい、私達はバスで来ましたから。ところで時間の方は大丈夫ですか?」
いずるが携帯の時計を見ながら言った。
「ああ、もうそんな時間?じゃあ、早く会場に入らなきゃ」
小百合はいずるの腕をひいて会場の裏に案内した。
「あれ、どうしてあそこから入らないの?」
バッグに隠れていたホーリーが顔を出してきた。
「出場者や関係者は裏門から入るんだよ。そうしないといつまでたっても会場に入れないぞ」
「そうなんだ。でもいずるは出場しないんだよね?」
ホーリーの質問に小百合が優しく答えた。
「大丈夫、いずる君もホーリーも私名義で入れるようにしてあるから。それに今日は選手登録するんでしょう?」
小百合の言葉に、いずるは少しドキリとした。
「は、はい。とりあえず登録しようと思いまして」
本当は恒一に勧められて半分仕方なしに登録する事にしたのだ。しかしそれはホーリーを危険な目にあわせるという事でもある。未だにいずるは複雑な心境だった。
「まあ、とにかくもう試合までの時間がないから急ぎましょ。チェックインまであと5分しかないわ」
小百合達は裏門目がけて駆け出した。
いずるとホーリーベルは恒一に連れられてバトルアリーナの会場に来ていた。ここでは神姫を初めとしたバトルフィギュアがお互いに競い合う場所で、この地区のオーナーたちが交流する場所でもある。そのため、休日になるとバトルを見るために来ている一般客でいっぱいになっていた。
「それにしても小百合さん、一体どこで待ち合わせしてるんだろう。こんな人ごみじゃ見つけるのに苦労するぞ」
周りをきょろきょろしながら恒一は小百合を探していた。
「まだ到着してないんじゃないか?ここ付近は渋滞してるそうだから」
いずるがそういった直後、後ろから聞き覚えがある声が聞こえてきた。
「ごめん、遅くなって。駐車場に付くまで時間がかかっちゃって。あなた達は大丈夫だった?」
「はい、私達はバスで来ましたから。ところで時間の方は大丈夫ですか?」
いずるが携帯の時計を見ながら言った。
「ああ、もうそんな時間?じゃあ、早く会場に入らなきゃ」
小百合はいずるの腕をひいて会場の裏に案内した。
「あれ、どうしてあそこから入らないの?」
バッグに隠れていたホーリーが顔を出してきた。
「出場者や関係者は裏門から入るんだよ。そうしないといつまでたっても会場に入れないぞ」
「そうなんだ。でもいずるは出場しないんだよね?」
ホーリーの質問に小百合が優しく答えた。
「大丈夫、いずる君もホーリーも私名義で入れるようにしてあるから。それに今日は選手登録するんでしょう?」
小百合の言葉に、いずるは少しドキリとした。
「は、はい。とりあえず登録しようと思いまして」
本当は恒一に勧められて半分仕方なしに登録する事にしたのだ。しかしそれはホーリーを危険な目にあわせるという事でもある。未だにいずるは複雑な心境だった。
「まあ、とにかくもう試合までの時間がないから急ぎましょ。チェックインまであと5分しかないわ」
小百合達は裏門目がけて駆け出した。
「ぎりぎりセーフね。それじゃ、さっさと手続きを済ませましょう」
小百合達は入り口に入ってすぐ脇にある手続き所でサインを書いた。
「神姫研究所の和智小百合と出場者の木野恒一・シュートレイ、それとこれから選手登録する都村いずる・ホーリーベル、以上手続きを完了いたしました」
手続きを完了した小百合達は用意してくれた控え室で一休みした。
「さてと、少し休んでから試合を見に行きましょう。シュートレイの試合までまだ時間があるし」
「そうですね、観客が入るまでまだ間があるみたいだし。…あれ、どうしたんだよ恒一?」
いずるが恒一の方を振り向くと、そこにはいつもの恒一の姿はなかった。そう、もう恒一は試合のスイッチが入ってしまっていたのだ。
「今回の相手は強敵だからな、気合入れていくぞ、シュートレイ!」
「はい、がんばります!」
やれやれとため息をつくいずる。こうなってはいくら友人のいずるでも彼らをとめることは出来ない。しょうがないので、いずるは小百合に試合について聞いてみることにした。
「ところで小百合さん、今回の試合は地方から集ってくるオーナーもいるらしいと聞きましたが」
「そうね、こんな大きな会場でやる大会だし、スポンサーもついてるしね。それにこの大会で勝てばポイントも多くもらえるし、何より最優秀選手にすてきな賞品が用意されてるのよ」
賞品?!恒一の耳がピクリと動いた。
「何だよ、賞品って?聞いてないぞ?」
「あれ、言ってなかった?この大会のスポンサーの『東杜田技研』さんからクレイドルなどの神姫用アイテムを一式、賞品としてもらえるのよ。ほかにも豪華な賞品が色々あるし、健闘賞も用意してるって噂もあるわ。今回の大会は基本的に賞金不可だから、代わりに豪華賞品がもらえるのよ」
ああ、なるほどね…。こういうのって賞品が付き物なんだよね。いずるは感心した。
「よーし、俄然やる気が出てきたぞー!!シュートレイ、がんばって最優秀選手になろうな」
「はい!」
分かりやすい奴…。改めて恒一の欲の深さを知ったいずるだった…。
小百合達は入り口に入ってすぐ脇にある手続き所でサインを書いた。
「神姫研究所の和智小百合と出場者の木野恒一・シュートレイ、それとこれから選手登録する都村いずる・ホーリーベル、以上手続きを完了いたしました」
手続きを完了した小百合達は用意してくれた控え室で一休みした。
「さてと、少し休んでから試合を見に行きましょう。シュートレイの試合までまだ時間があるし」
「そうですね、観客が入るまでまだ間があるみたいだし。…あれ、どうしたんだよ恒一?」
いずるが恒一の方を振り向くと、そこにはいつもの恒一の姿はなかった。そう、もう恒一は試合のスイッチが入ってしまっていたのだ。
「今回の相手は強敵だからな、気合入れていくぞ、シュートレイ!」
「はい、がんばります!」
やれやれとため息をつくいずる。こうなってはいくら友人のいずるでも彼らをとめることは出来ない。しょうがないので、いずるは小百合に試合について聞いてみることにした。
「ところで小百合さん、今回の試合は地方から集ってくるオーナーもいるらしいと聞きましたが」
「そうね、こんな大きな会場でやる大会だし、スポンサーもついてるしね。それにこの大会で勝てばポイントも多くもらえるし、何より最優秀選手にすてきな賞品が用意されてるのよ」
賞品?!恒一の耳がピクリと動いた。
「何だよ、賞品って?聞いてないぞ?」
「あれ、言ってなかった?この大会のスポンサーの『東杜田技研』さんからクレイドルなどの神姫用アイテムを一式、賞品としてもらえるのよ。ほかにも豪華な賞品が色々あるし、健闘賞も用意してるって噂もあるわ。今回の大会は基本的に賞金不可だから、代わりに豪華賞品がもらえるのよ」
ああ、なるほどね…。こういうのって賞品が付き物なんだよね。いずるは感心した。
「よーし、俄然やる気が出てきたぞー!!シュートレイ、がんばって最優秀選手になろうな」
「はい!」
分かりやすい奴…。改めて恒一の欲の深さを知ったいずるだった…。
「それでは第4試合をはじめたいと思います」
いよいよ恒一&シュートレイに出番が来た。恒一はシュートレイをバーチャルカプセルに入れて試合の準備をしていた。
「ついに始まるわね。今回の相手はかなりの手馴れだから、恒一君は苦戦するかも知れないわね」
恒一&シュートレイ側の特等席に座った小百合といずる&ホーリーは、その様子を見ていた。
「そんなに強いんですか、相手は?」
「もちろんよ。何せ神姫ランクでは上位に君臨してるくらいだから。シュートレイは苦戦すると思うわ」
いずるは相手側のセコンドを見てみた。対戦相手のオーナーは小さな女の子で、いずるや恒一よりも幼く見えた。
「中学生…?それにしてはそんなに大きく見えないけど…」
「相手は12歳の天才オーナーよ。そして彼女のパートナー神姫はストラーフタイプ、接近戦を重視した装備をしているわ」
そんな子供が上位なんて…。いずるは女の子をみて驚きを隠せないでいた。
「バトルに参加できる年齢は限られていないから出場しても不思議はないわ。ただし、こんな年齢で上位に君臨できるのは神姫界のみならず、バトルロボット界でもそうはいない。あの子はそれだけ特別な存在なのかもしれないわね」
「その子の神姫もかなり強いということになるんでしょうか?」
「当たり前じゃない。相手の装備は普通のものとは違うもの。まあ、実際に見た方が早いわね」
それぞれのオーナーの準備が終わって、試合を告げるアナウンスが響いた。いよいよ試合が始まるのだ。
空中に浮かぶ全方位ビジョンにシュートレイと対戦相手、それぞれの神姫の姿がバトルフィールドに出現した。観客が見守る中、バトルスタート開始のカウントが始まった。
(緊張するなあ。自分が闘うわけじゃないのにこんなにドキドキする…)
いずるの側で試合開始を見守るホーリーは、始めて見る本格的なバトルに緊張のしっぱなしだった。
「それでは第4試合、スタート!!」
ついに試合が始まった。しかしフィールド上の二人は試合が始まっても動く気配はなかった。
「どうして動かないんだ…?」
「早く闘えよ」
どこからか痺れを切らした観客達のやじが飛んできた。
「…どうやら両神姫とも攻撃する様子をうかがってるみたいね。どちらかが動けば負けるかもしれないからね」
試合の様子を見て、小百合は冷静に状況を判断した。
「…それだけ相手の神姫が強いというわけですか?だから攻撃のタイミングをうかがっていると?」
「そういうこと。どちらもそれだけの戦闘能力があると悟ったのね。だからうかつに動く事が出来ない、もし動いたら相手の思うつぼだから」
沈黙の時が数分過ぎた後、二人の戦士がついに動いた。
「う、動いた!」
驚くホーリー。それでも小百合は冷静だった。
「決着をつけるつもりね。でもこの勝負、長引くかも知れないわ…」
シュートレイはバックパックのスラスターを全開にして相手に向かっていった。
「甘い!」
しかしその直後、相手側の六枚の翼が開き、突進するシュートレイをひらりと避けた。
「何て機動力なんだ…」
「それだけじゃないわ。あれにはもっとすごい能力が隠されているの」
小百合の言葉を聞いたいずるは、驚きながら質問した。
「ええっ、どういうことなんですか?」
「まあ、見てれば分かるから」
まるで追いかけっこのようにフィールドを駆け回る二人。だが、突然相手側の姿がまるで霧のように消えてしまった。
「消えた…。あれってシュートレイと同じシステム?」
「あれはミラージュコロイドといって、試作品のステルスシステムよ。ジャミングを使ってるわけじゃないから、相手には物理的に消えてるように見えるの」
「それじゃ、シュートレイのほうが不利ということに…ああっ!!」
突然シュートレイが前のめりになって倒れかけた。ミラージュ効果で消えている相手の攻撃に、シュートレイは防げないでいるのだ。
「このままだとシュートレイが…!」
しかし小百合は不敵な笑みをうかべていた。
「さすがねシュートレイ、相手を引き付けることで距離を近づけるなんて…」
その意味はすぐに分かる事となった。消えている相手の攻撃パターンを理解したシュートレイは、すぐさまマイクロミサイルを乱射した。
「おおっと、どうした事でしょう?シュートレイ選手、消えているはずのミチル選手の位置を捉えて攻撃を仕掛けました!」
アナウンスの言葉がすべてを物語っていた。攻撃した場所に姿を消したはずの相手側の選手=ミチルが姿を現したのだ。
「なかなかやるね、でも絶対負けるわけにはいかないのだ」
「ここからが本当の勝負です!」
二人はそれぞれの武器を手に立ち向かった。シュートレイの手には斬機刀・ムラサメディバイダーが、そしてミチルの手には…。
「ふた振りの刀…」
「そうよ、あの刀の名はムラサメ。ある職人が遺したと言われている幻の刀よ」
いずるはその名前を聞いて愕然とした。なぜなら相手の武器の名前もムラサメなのだから。
「でもシュートレイのムラサメも引けをとらないほどの切れ味を持っている。勝負はどっちに転ぶか分からないわね」
それぞれの武器を構え、間合いを取る二人。しかしこれはシュートレイのほうが不利だった。なぜなら、ムラサメディバイダーの刃渡りは長いのに対し、ミチルのムラサメはやや小ぶりで取り回しが良い。モーションを大きくとるのはシュートレイのムラサメの方である。
いよいよ恒一&シュートレイに出番が来た。恒一はシュートレイをバーチャルカプセルに入れて試合の準備をしていた。
「ついに始まるわね。今回の相手はかなりの手馴れだから、恒一君は苦戦するかも知れないわね」
恒一&シュートレイ側の特等席に座った小百合といずる&ホーリーは、その様子を見ていた。
「そんなに強いんですか、相手は?」
「もちろんよ。何せ神姫ランクでは上位に君臨してるくらいだから。シュートレイは苦戦すると思うわ」
いずるは相手側のセコンドを見てみた。対戦相手のオーナーは小さな女の子で、いずるや恒一よりも幼く見えた。
「中学生…?それにしてはそんなに大きく見えないけど…」
「相手は12歳の天才オーナーよ。そして彼女のパートナー神姫はストラーフタイプ、接近戦を重視した装備をしているわ」
そんな子供が上位なんて…。いずるは女の子をみて驚きを隠せないでいた。
「バトルに参加できる年齢は限られていないから出場しても不思議はないわ。ただし、こんな年齢で上位に君臨できるのは神姫界のみならず、バトルロボット界でもそうはいない。あの子はそれだけ特別な存在なのかもしれないわね」
「その子の神姫もかなり強いということになるんでしょうか?」
「当たり前じゃない。相手の装備は普通のものとは違うもの。まあ、実際に見た方が早いわね」
それぞれのオーナーの準備が終わって、試合を告げるアナウンスが響いた。いよいよ試合が始まるのだ。
空中に浮かぶ全方位ビジョンにシュートレイと対戦相手、それぞれの神姫の姿がバトルフィールドに出現した。観客が見守る中、バトルスタート開始のカウントが始まった。
(緊張するなあ。自分が闘うわけじゃないのにこんなにドキドキする…)
いずるの側で試合開始を見守るホーリーは、始めて見る本格的なバトルに緊張のしっぱなしだった。
「それでは第4試合、スタート!!」
ついに試合が始まった。しかしフィールド上の二人は試合が始まっても動く気配はなかった。
「どうして動かないんだ…?」
「早く闘えよ」
どこからか痺れを切らした観客達のやじが飛んできた。
「…どうやら両神姫とも攻撃する様子をうかがってるみたいね。どちらかが動けば負けるかもしれないからね」
試合の様子を見て、小百合は冷静に状況を判断した。
「…それだけ相手の神姫が強いというわけですか?だから攻撃のタイミングをうかがっていると?」
「そういうこと。どちらもそれだけの戦闘能力があると悟ったのね。だからうかつに動く事が出来ない、もし動いたら相手の思うつぼだから」
沈黙の時が数分過ぎた後、二人の戦士がついに動いた。
「う、動いた!」
驚くホーリー。それでも小百合は冷静だった。
「決着をつけるつもりね。でもこの勝負、長引くかも知れないわ…」
シュートレイはバックパックのスラスターを全開にして相手に向かっていった。
「甘い!」
しかしその直後、相手側の六枚の翼が開き、突進するシュートレイをひらりと避けた。
「何て機動力なんだ…」
「それだけじゃないわ。あれにはもっとすごい能力が隠されているの」
小百合の言葉を聞いたいずるは、驚きながら質問した。
「ええっ、どういうことなんですか?」
「まあ、見てれば分かるから」
まるで追いかけっこのようにフィールドを駆け回る二人。だが、突然相手側の姿がまるで霧のように消えてしまった。
「消えた…。あれってシュートレイと同じシステム?」
「あれはミラージュコロイドといって、試作品のステルスシステムよ。ジャミングを使ってるわけじゃないから、相手には物理的に消えてるように見えるの」
「それじゃ、シュートレイのほうが不利ということに…ああっ!!」
突然シュートレイが前のめりになって倒れかけた。ミラージュ効果で消えている相手の攻撃に、シュートレイは防げないでいるのだ。
「このままだとシュートレイが…!」
しかし小百合は不敵な笑みをうかべていた。
「さすがねシュートレイ、相手を引き付けることで距離を近づけるなんて…」
その意味はすぐに分かる事となった。消えている相手の攻撃パターンを理解したシュートレイは、すぐさまマイクロミサイルを乱射した。
「おおっと、どうした事でしょう?シュートレイ選手、消えているはずのミチル選手の位置を捉えて攻撃を仕掛けました!」
アナウンスの言葉がすべてを物語っていた。攻撃した場所に姿を消したはずの相手側の選手=ミチルが姿を現したのだ。
「なかなかやるね、でも絶対負けるわけにはいかないのだ」
「ここからが本当の勝負です!」
二人はそれぞれの武器を手に立ち向かった。シュートレイの手には斬機刀・ムラサメディバイダーが、そしてミチルの手には…。
「ふた振りの刀…」
「そうよ、あの刀の名はムラサメ。ある職人が遺したと言われている幻の刀よ」
いずるはその名前を聞いて愕然とした。なぜなら相手の武器の名前もムラサメなのだから。
「でもシュートレイのムラサメも引けをとらないほどの切れ味を持っている。勝負はどっちに転ぶか分からないわね」
それぞれの武器を構え、間合いを取る二人。しかしこれはシュートレイのほうが不利だった。なぜなら、ムラサメディバイダーの刃渡りは長いのに対し、ミチルのムラサメはやや小ぶりで取り回しが良い。モーションを大きくとるのはシュートレイのムラサメの方である。
じりじりと近づく両者。そしてその瞬間、ジャンプして斬りかかった。お互いの剣が交わり、火花を散らした。
「いずる、シュートレイやられたりしないよね?!」
「ああ、大丈夫さ」
しかしその期待は裏切られる事になる。ミチルのムラサメの一振りがシュートレイの肩をかすったのだ。
「くっ!」
大型であるムラサメディバイダーではミチルの軽快な動きについていけないのだ。シュートレイはそのまま地面へと落下していった。
「へへへ~、この装備じゃついてこれないだろ~!?」
余裕を見せるミチルは、ゆっくりと倒れているシュートレイに近づいていった。
「どうしよう、このままじゃやられちゃうよ」
おろおろするホーリー。だがシュートレイは立ち上がった。
「お、よく立ち上がったね。でもそんな腕でその武器を振るうことが出来るのかな?」
「わたしは…まだ負けるわけには行かないんです。それが、隊長との約束だから…」
落としたムラサメを拾い上げ、再び構えるシュートレイ。それを見ていたミチルは小悪魔のような笑みを浮かべ、こんなことを言った。
「もういい加減負けを認めたらどうなのだ?」
しかしそれでも構えるのを止めないシュートレイ。その姿を見せ付けられたのか、ミチルは彼女の闘志に答えた。
「分かったのだ、あんたの根性に付き合ってあげるのだ」
ミチルもふた振りのムラサメを構え、間合いに入る体勢をとった。だがシュートレイはそのまま膝を突いてしまった。
「…やっぱりね、ピンポイント攻撃を受け続けたシュートレイの体はもう限界に近いわ。このまま試合を続行するのは危険だわ…!」
絶体絶命のシュートレイの状態を冷静に判断する小百合。しかしいずるはそれでもシュートレイを応援した。
「諦めるなシュートレイ、まだチャンスはあるはずだ!」
再び立ち上がるシュートレイ。それを見ていたミチルは彼女ににっこり笑ってこう答えた。
「あんたが言い出したことだからね、こっちも手加減しないのだ」
ミチルはムラサメを構え、宙に舞った。そして…。
「いずる、シュートレイやられたりしないよね?!」
「ああ、大丈夫さ」
しかしその期待は裏切られる事になる。ミチルのムラサメの一振りがシュートレイの肩をかすったのだ。
「くっ!」
大型であるムラサメディバイダーではミチルの軽快な動きについていけないのだ。シュートレイはそのまま地面へと落下していった。
「へへへ~、この装備じゃついてこれないだろ~!?」
余裕を見せるミチルは、ゆっくりと倒れているシュートレイに近づいていった。
「どうしよう、このままじゃやられちゃうよ」
おろおろするホーリー。だがシュートレイは立ち上がった。
「お、よく立ち上がったね。でもそんな腕でその武器を振るうことが出来るのかな?」
「わたしは…まだ負けるわけには行かないんです。それが、隊長との約束だから…」
落としたムラサメを拾い上げ、再び構えるシュートレイ。それを見ていたミチルは小悪魔のような笑みを浮かべ、こんなことを言った。
「もういい加減負けを認めたらどうなのだ?」
しかしそれでも構えるのを止めないシュートレイ。その姿を見せ付けられたのか、ミチルは彼女の闘志に答えた。
「分かったのだ、あんたの根性に付き合ってあげるのだ」
ミチルもふた振りのムラサメを構え、間合いに入る体勢をとった。だがシュートレイはそのまま膝を突いてしまった。
「…やっぱりね、ピンポイント攻撃を受け続けたシュートレイの体はもう限界に近いわ。このまま試合を続行するのは危険だわ…!」
絶体絶命のシュートレイの状態を冷静に判断する小百合。しかしいずるはそれでもシュートレイを応援した。
「諦めるなシュートレイ、まだチャンスはあるはずだ!」
再び立ち上がるシュートレイ。それを見ていたミチルは彼女ににっこり笑ってこう答えた。
「あんたが言い出したことだからね、こっちも手加減しないのだ」
ミチルはムラサメを構え、宙に舞った。そして…。
試合後、いずる達は神姫用のメンテナンスルームへと急いだ。
「恒一、シュートレイは大丈夫か?」
いずるはルームの控え室に腰を下ろしていた恒一に話しかけた。しかし恒一は何も話そうとしなかった。
「無理もないわ、いくらバーチャルとはいえ、あれだけパートナーを痛めつけられたものね…」
「それだけの傷を負ってたのか、シュートレイは…」
「ミチルのピンポイント攻撃を受けたのよ、無事で澄むわけないじゃない」
淡々と放す小百合。しかしその瞳には涙が流れていた…。
(小百合さん…、心の中じゃ悔しがってるんだな。今までの冷静さは、悔しさを隠すための仮面だったのか)
愕然とするいずる。そのとき、外からドアを叩く音が聞こえた。
「ここに木野恒一はおらんか?」
いずるは静かにドアを開いた。そこには小さな女の子が立っていた。
「君は…」
「ミチルのオーナーの國崎観奈と申す。恒一、ミチルに負けて落ち込んでると聞いたのでな」
その子の肩にはシュートレイを倒した神姫、ミチルが座っていた。
「そうか、恒一ならこの部屋の奥にいるから、入って」
いずるは観奈の手を引いて控え室に入れた。観奈は座っている恒一の前に来て声をかけた。
「恒一…、おぬしはよくがんばった。せめて戦友としてシュートレイのお見舞いに来たのだが…」
会釈をする観奈。それを見た恒一は顔を上げ、彼女に対し優しい言葉をかけてあげた。
「…心配すんなよ。俺達は全力で闘ったんだ。お前がここに来てくれるだけで俺は嬉しいよ」
「…わらわ達は数々のライバルと戦ってきた。相手の神姫をバラバラにしたこともあった。しかし、これほど後味の悪い闘いはなかった…」
責任を感じているのか、観奈は声を震わせながら恒一に言い放った。しかし恒一はそんなことを気にしていないような素振りで彼女の頭を撫でた。
「あれは俺たちの力が足りなかったからだよ。だからあいつもあんな目に遭ってしまったんだ。別に気にしてないさ…」
観奈はうつむいた顔をゆっくりと上げ、恒一の目をじっと見た。
「そうか…、これが一生懸命やった結果だというのか…。すまん、おぬしの言うとおりじゃった」
「いや、いいんだよ。これからもお互い良いライバルでいようぜ」
再び観奈の頭を撫でる恒一。
「わ、わかった。分かったからもうわらわの頭を撫でるのはやめい」
観奈は迷惑そうに頭に手を当てた。どうやら心配もどこかに吹き飛んだようだ。
「…ところで、おぬしの相方は大丈夫かの?」
観奈がそう言ったそのとき、メンテナンスルームの扉が開いた。
「沼田くん、シュートレイのケガは大丈夫なの?」
小百合はメンテナンス担当の沼田弘毅に容態を聞いた。
「中枢は無傷だったからパーツを変えるだけで済んだよ。ただ、しばらくの間は安静にしないといけないけどね」
ホッとしたため息が室内を穏やかな空気に変えた。シュートレイは致命傷を負わずに済んだのだ。
「よかったのー、恒一。これでまた試合ができるな」
「ああ、今度は負けないからな」
意気投合する恒一と観奈。どうやらいつもの二人に戻ったようだ。
「あ、そうじゃ。あの人にお礼を言わんといかんな」
「あの人って?」
観奈の言葉に、いずるは疑問を持った。
「シュートレイのことを教えてくれた人のことじゃよ。確か、通路で行き会ったはずなんじゃが…」
いずると観奈はルームの外に出て周りを見回した。そこには当然誰もいなかった。
「おかしいのぉ、確かにそこにいたはずなんじゃがな…」
二人はあの人がさっきまでいたところまで駆け寄ってみた。すると、何者かが二人の前を通り過ぎた。
「ややっ、何奴?!」
その正体は、種タイプの神姫だった。それを見たホーリーはあっと驚いた。
「あっ、あの子は…」
「知ってるのか、ホーリー?」
ホーリーは頷いた。
「うん、あの子は前に会った來華ちゃんだよ」
「もしかして観奈ちゃんが言ってたのはこの神姫のオーナーの事じゃないか?」
「おそらくそうじゃ。早く追わんと見失ってしまうぞ」
いずるたちは來華が飛んでいく方向を追った。來華を追っていくうちに、いずる達は会場の外へ出てしまっていた。
「恒一、シュートレイは大丈夫か?」
いずるはルームの控え室に腰を下ろしていた恒一に話しかけた。しかし恒一は何も話そうとしなかった。
「無理もないわ、いくらバーチャルとはいえ、あれだけパートナーを痛めつけられたものね…」
「それだけの傷を負ってたのか、シュートレイは…」
「ミチルのピンポイント攻撃を受けたのよ、無事で澄むわけないじゃない」
淡々と放す小百合。しかしその瞳には涙が流れていた…。
(小百合さん…、心の中じゃ悔しがってるんだな。今までの冷静さは、悔しさを隠すための仮面だったのか)
愕然とするいずる。そのとき、外からドアを叩く音が聞こえた。
「ここに木野恒一はおらんか?」
いずるは静かにドアを開いた。そこには小さな女の子が立っていた。
「君は…」
「ミチルのオーナーの國崎観奈と申す。恒一、ミチルに負けて落ち込んでると聞いたのでな」
その子の肩にはシュートレイを倒した神姫、ミチルが座っていた。
「そうか、恒一ならこの部屋の奥にいるから、入って」
いずるは観奈の手を引いて控え室に入れた。観奈は座っている恒一の前に来て声をかけた。
「恒一…、おぬしはよくがんばった。せめて戦友としてシュートレイのお見舞いに来たのだが…」
会釈をする観奈。それを見た恒一は顔を上げ、彼女に対し優しい言葉をかけてあげた。
「…心配すんなよ。俺達は全力で闘ったんだ。お前がここに来てくれるだけで俺は嬉しいよ」
「…わらわ達は数々のライバルと戦ってきた。相手の神姫をバラバラにしたこともあった。しかし、これほど後味の悪い闘いはなかった…」
責任を感じているのか、観奈は声を震わせながら恒一に言い放った。しかし恒一はそんなことを気にしていないような素振りで彼女の頭を撫でた。
「あれは俺たちの力が足りなかったからだよ。だからあいつもあんな目に遭ってしまったんだ。別に気にしてないさ…」
観奈はうつむいた顔をゆっくりと上げ、恒一の目をじっと見た。
「そうか…、これが一生懸命やった結果だというのか…。すまん、おぬしの言うとおりじゃった」
「いや、いいんだよ。これからもお互い良いライバルでいようぜ」
再び観奈の頭を撫でる恒一。
「わ、わかった。分かったからもうわらわの頭を撫でるのはやめい」
観奈は迷惑そうに頭に手を当てた。どうやら心配もどこかに吹き飛んだようだ。
「…ところで、おぬしの相方は大丈夫かの?」
観奈がそう言ったそのとき、メンテナンスルームの扉が開いた。
「沼田くん、シュートレイのケガは大丈夫なの?」
小百合はメンテナンス担当の沼田弘毅に容態を聞いた。
「中枢は無傷だったからパーツを変えるだけで済んだよ。ただ、しばらくの間は安静にしないといけないけどね」
ホッとしたため息が室内を穏やかな空気に変えた。シュートレイは致命傷を負わずに済んだのだ。
「よかったのー、恒一。これでまた試合ができるな」
「ああ、今度は負けないからな」
意気投合する恒一と観奈。どうやらいつもの二人に戻ったようだ。
「あ、そうじゃ。あの人にお礼を言わんといかんな」
「あの人って?」
観奈の言葉に、いずるは疑問を持った。
「シュートレイのことを教えてくれた人のことじゃよ。確か、通路で行き会ったはずなんじゃが…」
いずると観奈はルームの外に出て周りを見回した。そこには当然誰もいなかった。
「おかしいのぉ、確かにそこにいたはずなんじゃがな…」
二人はあの人がさっきまでいたところまで駆け寄ってみた。すると、何者かが二人の前を通り過ぎた。
「ややっ、何奴?!」
その正体は、種タイプの神姫だった。それを見たホーリーはあっと驚いた。
「あっ、あの子は…」
「知ってるのか、ホーリー?」
ホーリーは頷いた。
「うん、あの子は前に会った來華ちゃんだよ」
「もしかして観奈ちゃんが言ってたのはこの神姫のオーナーの事じゃないか?」
「おそらくそうじゃ。早く追わんと見失ってしまうぞ」
いずるたちは來華が飛んでいく方向を追った。來華を追っていくうちに、いずる達は会場の外へ出てしまっていた。
「どうやら外に出てしまったようじゃな…」
「いったいどこに居るんだろう?」
あたりを見回すいずる達。すると、そこへ一人の青年が來華を肩にのせ、こちらへやってきた。
「きみが都村いずるくんだね?きみも神姫のオーナーだって聞いたからね。うちの來華と凛花がよく言ってたよ」
「あなたは一体誰なんですか?その神姫はホーリーと関係があるんですか?」
相手はフッと笑みを浮かべた。
「まだ自己紹介がまだだったね。僕の名は竜崎賢市。來華と凛花のオーナーさ」
「竜崎…賢市!?」
竜崎の名前を聞いたいずるは、驚きの顔を隠せなかった。
「どうしたんじゃいずる、そやつのことを知っておるのか?」
「竜崎賢市さんは世界で有名なアートデザイナーなんだ。建物のデザインや造形物で有名な人だよ」
いずるの説明を聞いてもそちらの方に関心がない観奈にとってはさっぱり分からなかった。
「むむむ…、ピンとこんが、とにかく有名なことだけは分かった。その竜崎賢市とやらはなぜ神姫を持っておるのだ?」
その答えに竜崎はほくそえんで答えた。
「決まってるじゃないか、僕もワールドバトルロンドに出場するのさ」
「ワールドバトルロンド…?って何?」
その名前が出ても、神姫歴が浅いいずるには全然分からなかった。そんないずるのために、観奈は親切に説明してあげた。
「バカモノ、そんなことも知らんのか。ワールドバトルロンドとは、全世界の神姫の頂点に立つリアルバトルのことじゃよ。あやつがそれに出場するという事は、神姫の頂点を目指すということなんじゃ!」
それを聞いて、いずるは神姫界の奥深さを知った。神姫とは、それだけ厳しい世界だったのだ。
「今日のところは様子見にこの会場に来たんだ。それに、僕は無駄な戦いは好まない。今日はこのまま帰ることにするよ」
竜崎はこの場を去ろうとした。
「そうそう、もしかしたらうちの來華や凛花が近いうちに大きな大会に出るかもしれないから、君達も覚悟しておいた方がいいと思うよ。それじゃ、僕はこれで失礼するよ」
去っていく竜崎を、いずる達はただ黙って見ているしかなかった。
「…いずる、どうするつもりなのだ?このまま行けばいずれおぬしの神姫と闘う破目になるかもしれんのだぞ?それでも闘うつもりなのか?」
観奈はいずれ竜崎と闘わなければいけないことをいずるに説いた。しかしいずるは、こう答えるしかなかった。
「どうするかはまだ決めてないよ。でも、それが宿命だとしたら、闘わないといけないかもしれない」
いずるは覚悟を決めているのかもしれない。しかしそれは、彼にとっても、ホーリーにとっても辛い道を歩むことになるのだ…。
「いったいどこに居るんだろう?」
あたりを見回すいずる達。すると、そこへ一人の青年が來華を肩にのせ、こちらへやってきた。
「きみが都村いずるくんだね?きみも神姫のオーナーだって聞いたからね。うちの來華と凛花がよく言ってたよ」
「あなたは一体誰なんですか?その神姫はホーリーと関係があるんですか?」
相手はフッと笑みを浮かべた。
「まだ自己紹介がまだだったね。僕の名は竜崎賢市。來華と凛花のオーナーさ」
「竜崎…賢市!?」
竜崎の名前を聞いたいずるは、驚きの顔を隠せなかった。
「どうしたんじゃいずる、そやつのことを知っておるのか?」
「竜崎賢市さんは世界で有名なアートデザイナーなんだ。建物のデザインや造形物で有名な人だよ」
いずるの説明を聞いてもそちらの方に関心がない観奈にとってはさっぱり分からなかった。
「むむむ…、ピンとこんが、とにかく有名なことだけは分かった。その竜崎賢市とやらはなぜ神姫を持っておるのだ?」
その答えに竜崎はほくそえんで答えた。
「決まってるじゃないか、僕もワールドバトルロンドに出場するのさ」
「ワールドバトルロンド…?って何?」
その名前が出ても、神姫歴が浅いいずるには全然分からなかった。そんないずるのために、観奈は親切に説明してあげた。
「バカモノ、そんなことも知らんのか。ワールドバトルロンドとは、全世界の神姫の頂点に立つリアルバトルのことじゃよ。あやつがそれに出場するという事は、神姫の頂点を目指すということなんじゃ!」
それを聞いて、いずるは神姫界の奥深さを知った。神姫とは、それだけ厳しい世界だったのだ。
「今日のところは様子見にこの会場に来たんだ。それに、僕は無駄な戦いは好まない。今日はこのまま帰ることにするよ」
竜崎はこの場を去ろうとした。
「そうそう、もしかしたらうちの來華や凛花が近いうちに大きな大会に出るかもしれないから、君達も覚悟しておいた方がいいと思うよ。それじゃ、僕はこれで失礼するよ」
去っていく竜崎を、いずる達はただ黙って見ているしかなかった。
「…いずる、どうするつもりなのだ?このまま行けばいずれおぬしの神姫と闘う破目になるかもしれんのだぞ?それでも闘うつもりなのか?」
観奈はいずれ竜崎と闘わなければいけないことをいずるに説いた。しかしいずるは、こう答えるしかなかった。
「どうするかはまだ決めてないよ。でも、それが宿命だとしたら、闘わないといけないかもしれない」
いずるは覚悟を決めているのかもしれない。しかしそれは、彼にとっても、ホーリーにとっても辛い道を歩むことになるのだ…。