剣の目覚めは、未だ遠く(後半)
奇襲とも言える一撃を胸に喰らい、アルマのSSSは機能を発揮する間も
与えられずに脱落した。一応戦績を重ね、サードリーグとは言えど上位に
上がり始めてきたアルマなのだが、ここまで手酷い先制攻撃を受けたのは
初めてだ……よもやアルマよ、魔剣に気を取られているのではないか!?
与えられずに脱落した。一応戦績を重ね、サードリーグとは言えど上位に
上がり始めてきたアルマなのだが、ここまで手酷い先制攻撃を受けたのは
初めてだ……よもやアルマよ、魔剣に気を取られているのではないか!?
「どうした、剣を抜かぬのか」
「うぅ……エルテリア、まだダメなんですか!?」
「両脇のはさておき、腰のは飾りか……下らぬッ!!」
「あっ……速いっ!?“アイゼンナーゲル”……きゃああっ!」
「うぅ……エルテリア、まだダメなんですか!?」
「両脇のはさておき、腰のは飾りか……下らぬッ!!」
「あっ……速いっ!?“アイゼンナーゲル”……きゃああっ!」
奴の、兎型神姫の拳を受けるな!……そう叫ぶ間もなく、胸に装着した
“アイゼンナーゲル”が打ち砕かれる。黒き翼……“フリューゲル”の
防御機能が死んだ瞬間だった。咄嗟にアルマは、背部の“チーグル”を
展開し、鋼の翼をもぎ取って炎の剣……“ヒッツェメッサー”と為す。
“アイゼンナーゲル”が打ち砕かれる。黒き翼……“フリューゲル”の
防御機能が死んだ瞬間だった。咄嗟にアルマは、背部の“チーグル”を
展開し、鋼の翼をもぎ取って炎の剣……“ヒッツェメッサー”と為す。
「いけないですの、アルマちゃん!その相手にチーグルは!?」
「己の浅はかさに気付いた所で……遅いわぁッ!!」
「うく……うああああっ!?痛……そんな、チーグルの隙間に」
「……純正ストラーフタイプの弱点が、そのまんま出てるんだよ」
「己の浅はかさに気付いた所で……遅いわぁッ!!」
「うく……うああああっ!?痛……そんな、チーグルの隙間に」
「……純正ストラーフタイプの弱点が、そのまんま出てるんだよ」
“チーグル”の長大なリーチは、胴がガラ空きになる弱点でもある故に
近接格闘型とは相性の悪い装備なのだが、今のアルマは動転している。
普段ならば使いこなせる筈の超複合武装なのに……正確に使えない!!
最早間違いない。頻繁に動く視線も、魔剣・エルテリアに向いている。
近接格闘型とは相性の悪い装備なのだが、今のアルマは動転している。
普段ならば使いこなせる筈の超複合武装なのに……正確に使えない!!
最早間違いない。頻繁に動く視線も、魔剣・エルテリアに向いている。
「アルマめ……魔剣が未だ反応しない事に、動揺してしまったのか」
「く……負ける、わけには……ッ」
「その闘志だけは認めるが、雑念が多すぎるな……ふっ!!」
「ぅぁ──────ッ!?」
「く……負ける、わけには……ッ」
「その闘志だけは認めるが、雑念が多すぎるな……ふっ!!」
「ぅぁ──────ッ!?」
頭上に輝く天使の環“フライアーシュヴェルト”も展開し刃と為す……
が、そうして産まれたショーテルも、ティールの“隻腕”に砕かれる。
そう。この兎型神姫、左腕にブースターと電磁破砕ナックルを搭載した
格闘特化型なのだ。そのセンスは凄まじい……だが、アルマがここまで
完膚無きまでにやられるのは、やはり魔剣への注意が原因と言えるな。
が、そうして産まれたショーテルも、ティールの“隻腕”に砕かれる。
そう。この兎型神姫、左腕にブースターと電磁破砕ナックルを搭載した
格闘特化型なのだ。そのセンスは凄まじい……だが、アルマがここまで
完膚無きまでにやられるのは、やはり魔剣への注意が原因と言えるな。
「……あたしは、退く訳には……ッ……せぁぁぁーっ!!」
「もういい、止めるのだアルマッ!!?」
「その雑念を振り払え……そうでなければ、勝てぬぞッ!!」
「──────!?」
「もういい、止めるのだアルマッ!!?」
「その雑念を振り払え……そうでなければ、勝てぬぞッ!!」
「──────!?」
私がギブアップ信号を発したのと、ティールの腕に胸を貫かれたアルマが
バトル機能を停止するのは、ほぼ同時だった……完全にKO負けである。
最後の武器として構えたニードルライフルが、虚しく空に落ちていった。
そして殺戮の虚構は解除され、アルマがゲートを力無く登って出てくる。
バトル機能を停止するのは、ほぼ同時だった……完全にKO負けである。
最後の武器として構えたニードルライフルが、虚しく空に落ちていった。
そして殺戮の虚構は解除され、アルマがゲートを力無く登って出てくる。
「アルマ……お前、どうしてもエルテリアに認めてもらいたかったのか」
「はい。ごめんなさい、マイスター……でもこれで、色々分かりました」
「……その魔剣が欲する何かを、掴んだのかな?アルマお姉ちゃん……」
「うん、ハッキリと分かったんですクララちゃん。これで次は、大丈夫」
「はい。ごめんなさい、マイスター……でもこれで、色々分かりました」
「……その魔剣が欲する何かを、掴んだのかな?アルマお姉ちゃん……」
「うん、ハッキリと分かったんですクララちゃん。これで次は、大丈夫」
流石に苦痛と敗戦のショックは大きく、彼女に笑顔はない。だが死地に
得る“何か”があるならば、この痛みとて決して無駄ではないだろう。
とは言え、今すぐ“次”をさせる訳には行かない。負担が大きいしな。
得る“何か”があるならば、この痛みとて決して無駄ではないだろう。
とは言え、今すぐ“次”をさせる訳には行かない。負担が大きいしな。
「じゃあ残念会って事で、皆でおやつでも食べにいきますの~♪ね?」
「ろ、ロッテちゃん?じゃない、葵ちゃん?……有り難うございます」
「ろ、ロッテちゃん?じゃない、葵ちゃん?……有り難うございます」
暗い雰囲気を撃ち破ったのは、葵だった。満面の笑顔でアルマを抱いて、
“残念会”を提唱したのだ。流石ロッテ、分かっているな……有り難い。
“残念会”を提唱したのだ。流石ロッテ、分かっているな……有り難い。
「礼など構わぬ。成長出来る時なのだ、これも楽しもうではないか!」
「何処に往くか、帰り支度しながら決めるんだもん。さ、お姉ちゃん」
「……ぐす、本当に皆……有り難うございます。あたし、あたしっ!」
「何処に往くか、帰り支度しながら決めるんだもん。さ、お姉ちゃん」
「……ぐす、本当に皆……有り難うございます。あたし、あたしっ!」
感極まったアルマが、葵の胸元で泣き出してしまう。私の胸中にも、少々
来る物がある故、葵とサンドイッチにする様にしてアルマを抱きしめる。
そして私の肩から降りたクララが、アルマを抱き撫で続ける……傍目には
私と葵が抱き合って泣いている様に見えるかもしれない。だが、構わぬ!
来る物がある故、葵とサンドイッチにする様にしてアルマを抱きしめる。
そして私の肩から降りたクララが、アルマを抱き撫で続ける……傍目には
私と葵が抱き合って泣いている様に見えるかもしれない。だが、構わぬ!
「……ふん。雑念は解けたか、戦乙女の一人よ……アルマと言ったか?」
「む?貴様は先程のヴァッフェバニー、ティールか……妹に、何用だ!」
「む?貴様は先程のヴァッフェバニー、ティールか……妹に、何用だ!」
そうしていると、帰り支度を終えた“ティール”が私達に話しかける。
オーナーの方は凡庸な男だ……取り立てて注目するまでもないだろう。
だが、彼女は違う。冷徹な瞳とアンバランスな隻腕が印象的な神姫は、
アルマの様子をつぶさに観察している。侮蔑とは違う戦神の目で、だ。
オーナーの方は凡庸な男だ……取り立てて注目するまでもないだろう。
だが、彼女は違う。冷徹な瞳とアンバランスな隻腕が印象的な神姫は、
アルマの様子をつぶさに観察している。侮蔑とは違う戦神の目で、だ。
「……はい、貴方の一撃で目が覚めました。このお礼は、勝つ事でッ」
「いい返事だ。私を倒さねば、セカンドへ上がる事は無理だと思え?」
「は、はいっ……近い内必ず、ティールさんを倒してみせますよっ!」
「いい返事だ。私を倒さねば、セカンドへ上がる事は無理だと思え?」
「は、はいっ……近い内必ず、ティールさんを倒してみせますよっ!」
その言葉に満足したのか、何も言わずにティールとそのオーナーは去る。
奥手なアルマが、ここまでハッキリと宣言するという事は……恐らくは、
本当に自分がどうあるべきか、見えたと言う事なのだろう。良い事だな。
奥手なアルマが、ここまでハッキリと宣言するという事は……恐らくは、
本当に自分がどうあるべきか、見えたと言う事なのだろう。良い事だな。
「さ。わたし達も帰り支度を整えて、早く遊びに行きますの~っ♪」
「葵お姉ちゃんは、何時でも前向きで明るいんだよ。美徳なのかな」
「きっとそうなのだろう、私とても……アルマにもクララにもな!」
「ふふ……助かります、本当に。武装脱ぐから待ってて下さいね?」
「葵お姉ちゃんは、何時でも前向きで明るいんだよ。美徳なのかな」
「きっとそうなのだろう、私とても……アルマにもクララにもな!」
「ふふ……助かります、本当に。武装脱ぐから待ってて下さいね?」
──────見出した物は、なんだろうね……?