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独りきりで乗る船の

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独りきりで乗る船の ◆23F1kX/vqc



「私はひとを探してるの」
女が囁くように言った。言いながらカツ、カツ、と階段をのぼる。
「私はルフィを殺した女を捜しているの。私はサンジを殺した男を捜しているの。
私はルフィを殺した子供を、サンジを殺した大人を、年寄りを、赤ん坊を、若者を、大人を、子供を、海賊を、役人を、市民を、善人を、悪人を、捜しているのよ」
 こうべをふうっとめぐらせて、スズメバチを捉えた。
「ねえ、あなたがルフィを殺したの?
 首がかしげるようにねじれて流を向く。
「ねえねえねえねえ、あなたがサンジを殺したの?」
 女のまばたきをしない目が流をのぞき込んだ。
「悪ぃな、オレじゃあないぜ」
 流は社殿に腰をかけて、軽く手をふった。クソ野郎は歓迎だがイカレ女は願い下げだ。
「他をあたってくれや」
 女がじいっと見つめる。黒曜石のようになめらかでまったいらな目でじいっと見つめた。
その中にはなにもなかった。なんにもない、空っぽだ。
ルフィやらサンジやらいう連中が死んだときに、この女の何割が死んだのだろうか。
全部が死んで残ったのは殻だけか。
流は海を連想した。闇に閉ざされた夜の海。
前もない、後ろもない、茫漠たる水の砂漠にたった一艘浮かぶ舟。
 うしおもこういう目をするだろうか。流は思った。
うしおのこういう目が流は見たいのだ。
いつも太陽の光を受けてぴかぴか輝くあの目が、この世にいるありきたりな人間のように淀み濁るさまを、流は見たいはずなのだ。
しかしなぜか、女の空虚な目をうしおにあてはめても、流にはどうしてもしっくりこなかった。
 女の瞳が初めてまたたいた。
「ここは宗教施設ね」
 ごとっと音をたてて女の肩から死体が落ちる。
黒いスーツに金の髪。ルフィだかサンジだかの死体だろう。
壮絶な死に様にすさまじい戦闘の形跡が見て取れる。どこかで強者とかち合って、そして敗れ去ったのだ。
そんなやつとまともにやりあったのだ、この男もきっとそれなりの手練れだったに違いない。
その傷口から覗く白っぽい肉もとがった骨も、血が染み込んでずぶずぶになった服も、
 ――きたねぇな。
 流は思った。仏教は弔うが神道は穢れを忌む。
ここは清潔な境内だ、さっさとソレを持って去れ。
坊主のはしくれに経を読む気はさらさらない。
 女が死骸を支えた。すらりとした右の手が男の腰を優しく掴む。
いや、女の右手は自身の銃創を押さえている。
女の右手は男の肩にまわっている。女の右手は男の髪をすいている。
女の左肩から、にゅううと新たな右手が伸びだして男を丁寧に寝かせた。
「なんだあ、おまえ新手の妖怪か?」
 あまりにも人にはありえない有りように、馴染みの語彙が口をついてでた。
法力僧になってから常にかたわらにあった単語で、彼らにとって額面以上も以下の意味もない。
あれは犬かこれは猫かと問うのとなんらかわりはしない。
人格的にはどうであれ、能力的にはきわめて優秀な僧である流にも妖気は感じられなかったし、
ただ思いついただけの言葉だった。
 しかし、女の肩はあからさまにびくりとする。
「妖怪……? 今妖怪って言った……?
ねえ、今、私のことを妖怪って言ったの……?」
 正位置の右手がするすると動いて、額を覆った。彫像じみた美貌にべたりと赤い血がつく。
ふ、ふふ、と女が切れ切れに嗤った。震える唇で言葉を紡ぐ。
「そうね。そうよね。そうだったわ。愚かね、ニコ・ロビン
夢が楽しくてそんなことも忘れていたの?
あなたはいつだって妖怪だったじゃない。これからも悪魔の子じゃない」
 肩を抱きしめるように女はぶつぶつとつぶやく。
うつろに見つめる手の間をひよひよと風が吹き、開かれた境内に渦を作る。
それが死体の乾きかけた髪を巻き上げた。
「兄様……兄様……紳士な兄様……。兄様、死んじゃったの?」
 幼い少女がお菓子をねだるような、甘い声。
 結界にがんじがらめになったまま、スズメバチがサンジに手を伸ばす。
当然届かないが、大事なぬいぐるみをひきよせるように白く細い指が宙をかいた。
「もっとたくさん遊んであげたのに。もっともっといいことたくさんしてあげたのに……」
 ふっ、とロビンはスズメバチを見る。わずかに目を細め、息をはくように言った。
「そう、あなたがサンジを殺したの……」
 こいつ、人の話を聞いていないのか? 
スズメバチがこれまでどこでなにをしていたんだが知ったこっちゃないが、
言い回しからしてどう見ても下手人ではない。――それとも、そんなこともどうでもいいのか。
「なら、あなたも死なないと」
 8本の手にダーツが握られたのを見て、流はあえてスズメバチの結界を解いた。
虫かごから放たれて、蜂がふわりと飛翔する。
「姉様……変わった体の姉様……。お手々がいっぱいなら、楽しみもいっぱいね」
 跳躍の軌道を読んで、するどいダーツが一斉に放たれた。
その射撃は精密で、羽でもなければ空中でよける術はないだろう。
鮮やかな蜂の舞は虫ピンによって静止させられるはずだった――まあ、普通なら。
「うふふ、そんなんじゃあぜんぜんたらないの。
蜂を貫くのはもっと太くて、もっと長くて、もっと強い針でないと……」
 すりっぷ。
ばかみたいな音をたててダーツが社殿の方に飛んできた。
 頬杖をついたまま、流は錫杖の柄ではたき落とす。
なんてことのない、ありきたりなただのダーツだ。
目を戻すと、スズメバチはロビンに肉薄していた。
靴にしこまれた針が確実に目を狙い、何本目かの手がそれを弾いた。女の頬から血が伝う。
 見るからに女は押されている。手の数がいくら多くても何になるか。
 妙ちきな超能力のおかげでスズメバチの体は文字どおり掴みどころがない。
加えて身のこなしは素早く、流のように術を使えないなら苦戦するのも無理はない。
女は見てくれこそおかしいが、じり貧なのは目に見えている。
 ――もうしまいかよ
 流はがっかりして成り行きを傍観した。
「姉様のお手々、桜貝のようなお爪を集めたらおはじきができる?」
 女が無意味に支給品袋を投げた。
ダーツと同じ音を立てて袋はあさっての方に飛んで消えた。
あとで回収しよう、流は思った。
「ふふ、一つずつ剥いであげるわ。決して折れたりしないように、丁寧に丁寧にゆっくりと剥いであげる」
 女が身を翻し、長身を生かして間合いをあける。
 これも無意味だ。
機動力に勝るスズメバチは軽い体で飛び立つ。
「きれいな姉様、お顔はちゃんと見せてね?」
 スズメバチの鋭い跳びに女がニコリと微笑みかえした。
「妖怪『手だらけ』はこんなこともできるのよ?」
 その直前、いやな気配を背後に感じて流は跳ね起きた。が、為せない。
地から這い出た無数の腕につかまれて流はのけぞって倒れこんだ。
女のなめらかな手が、ざわざわ、ざわざわ、と肌をなでる。
錫杖の先にも、柄にも、流の手首にも、肩にも胸にも腹にも顔にも額にもびたりと生温かい掌が張り付いている。
女の力とはいえ体勢的に逆らうのは苦しく、流は抵抗をやめた。
 向こうではスズメバチの柔らかい体が大地にたたき付けられている。
肌に傷はつかなくとも衝撃は避けられない。肺の奥からしゃがれた声でうめく。
「痛かった? ごめんなさいね」
 ただ一人立って、むしろ愛しげな口調でロビンが語りかけた。
「でも、きっとサンジの方が痛かったと思うの。
ルフィの方が痛かったと思うの。だって死ぬほどまでに」
 スズメバチは、標本のように地面に縫いとめられていた。
少女の足から生えた手が、大地の手としっかり組んでいる。
少女の腕から生えた腕が、大地の腕としっかり組んでいる。
この人体のパーツからなる鎖によって、己の跳躍を攻撃手段とされたらしい。
「あなたの肌は本当にすべすべね。ふふ、うらやましいわ」
 さらさらとロビンの手がスズメバチの服をといていく。
「きっとサンジは苦労したのでしょうね。大変だったのでしょうねえ。
それをあなたは嬲ったのね。サンジを嬲ったのね。
サンジは苦しかったでしょうね。辛かったでしょうねええ。
だって、彼は優しいもの。女の子を蹴るなんてできないもの」
 四方八方に隙間なく、熱帯の植物のように絡み合い女の腕はたなびく。
わらわら、わらわらと数多の手が引き戻された支給品袋をあさる。
別の手は手に手にタオルと木切れを持つ。
ある右手がランタンを取り出したとき、流は意図に気付いた.
「履いてないのね、あなた」
 ドレスをはがされ、しっとりときめ細かい少女の裸身があらわになる。
そこに燃えさかる木ぎれが押しつけられた。
スズメバチが犬のように悲鳴をあげて、未発達の身をよじる。
強い力に引っ張られ、つややかな髪が根本から音を立てて抜けた。
抜けるように白い体がくっきりとただれて赤い肉との強烈なコントラストを現す。
女の手は淡々と蜂の防壁を崩す。
スズメバチの肉体は白と赤とのまだらになって、赤の面積が増えるたびにうぞうぞと身もだえた。
しかし、苦痛にのたうっていたはずのその声は、やがて変化を迎える。
それは次第に異なる色をおび、ついには明らかな嬌声へと移り変わった。
「きゃは、キャはは、アハ、あハハはハハハハ」
 間違えようのない享楽の声に乗せて、スズメバチがロビンに話しかけた。
「ねえ。見て。姉様」
「ええ、見ているわ」
「ねえ、蜂の肌がめくれるの」
「ええ、そうね」
「ねえ、蜂の血が沸いてるの」
「ええ、そうね」
「ねえ、蜂の肉がこげていくの」
「ええ、そうね」
「ねえ、姉様、見てる? 聞いてる?」
 くすん、とあえぐようにスズメバチが鼻を鳴らした。
「ねえ、姉様、見て、聞いて、嗅いで感じて触れてえぐって剥いでもいでちぎって破いて砕いて崩して。
蜂の体が骨が皮が関節が血管が筋が神経が壊れていくのよぉおぉおおう」
 嬌笑が神社の境内に跳ね返りがんがんと鳴り響く。
耳障りに聞きながら、目に被さる指に流は小さなささくれを見つけた。おや、と思う。
よくよく見てみると、すんなりと細く長い指のまったく同じ場所にどの手も小さなささくれがある。
そういえば、短く整えられた爪の角度もおのおの同一だ。
 その指の第二関節に赤い染みが現れた。水ぶくれだ。
スズメバチの方では相変わらずお手々たちが焚きつけにいそしんでいる。火の粉も舞うだろう。
目に入る限りの全部の手にちっぽけな水ぶくれはできていた。
 ――なるほどな。
 流は小さく印を結び、額に意識を集中させた。
消耗しているとはいえ、からくりがわかった今この程度の枷など破るのはたやすい。
口の中で経文を唱えようとして――それが掴まれた。
「あなたも女の子になってみる?」
 社に、柱に、壁に、屋根に、階段に、床下に、欄干に、石に、土に、幹に、葉に生えた手が、
手、手、手、手のひとさし指が、いっせいに流を指す。
 ――ちょっと待て!!
 ひゅうっと背中が冷え、練りかけの法力は虚しく散る。
腕の一本くらいなら、失ってもいい。
目を一つなくしても、なんとかなる。
生命を落とすのすら、あきらめもしよう。
でもそれはだめだ。それだけはだめだだめだ。
そんなものなくても死ぬわけじゃないでしょ――日輪ならそう言うかもしれない。
いや、死ぬ。絶対に死ぬ。本気で死ぬ。男なら知っている。
心の中の大きなかけら、男が立っていくためにとても重要な、なんだかよくわからない何かがぺしゃんと死ぬことを。
「ま、待て待て待て待て! 話せばわかる!」
 チンケな小悪党みたいな言葉がついて出て流はうんざりした。
けれど、こんなのがもっとも自分にふさわしいか。
仲間を裏切り、弱者をいためつけ、そしてこうして命ごいすらする。
心からものを思うことも、信念をもってなにかを完遂することもなく流れるようにただ生きて、家のない犬のように道端で死んでいく。
白面の生きようすら、流には眩しいかった。
だからこそ流は求めたのだ。己を出しきりそれでも勝てないなにかを。
 女が首をぐるりと回した。背を向けたまま顔だけを流を向ける。
「だって、おかしいと思わない? だっておかしいでしょおお?
ルフィが死んだのよ。サンジが死んだのよ。
なのにどうしてあなたは生きてるの。ねえ、どうして生きているの。
どうしてあなたたちは生き続けるっていうの」
 ――だからおれは関係ねぇってんだろうがよッ!
 流は思ったが、口には出さない。代わりに考える、考える。
流は結構必死に考えた、男であるがまま窮地を打破する舌先三寸を。
男にこだわらなければいかようとも簡単だが、そこにはやっぱりちょっとこだわりたい。
 ロビンの温かい手がそれを握り直した。そのわずかな動きに流はうっと喉が鳴る。
快感などでは決してない。流はしんしんと指先が冷えるのを感じた。
「ふふっ操縦桿みたいね」
 ロビンが笑う。だがここまでされても流に熱い殺意は芽生えずただ冷静な思いだけが働く。
いつもそうだ。今もこうしてすべてを見下ろす自分がいて、芯が燃えることなどない。
流を揺り動かすのは、結局あいつらだけなのだ。早くとらと戦いたい、流は思った。早く早く早く早く。
「元の世界にゃいるんだろ?」
「ねえ、ほら」
「あんたを育てた親父や、」
「私の爪、きれいでしょう?」
「おふくろや、」
「だから、きっと大変よ?」
「いや、兄弟が」
「この爪でえぐられるのは」
「それとも仲間か」
 おびただしい数の手がゆらゆら、ゆらゆらとなびいている。
それは紛れもなく人間の手であるだけに、流にすら吐き気を催させた。
「仲間……?」
 その手の動きがふと止まった。ロビンが体を流に向ける。
 ――アタリか?
 流は苦しいながらうなずいてみせた。
「サンジはただの人間にやられたんじゃねぇ。でけぇ獣に食い千切られてるな。
サンジは強い戦士だ、そんなバケモノと競り合う戦いをした。
ルフィだってきっと勇敢に敵と戦ったぜ」
 ルフィは男か女か、強いのか弱いのか、そもそも戦闘員なのか情報が少なすぎる。
ままよ。流は押し通した。
「ともに海賊と戦った、ロビンあんたの仲間だろ」
 ロビンの目が焦点を取り戻す。
しょっぱなの女の言葉を流は覚えていた。羅列の中でも異質な『海賊』、ヤマはあたりだ。
流がやるとこんなにも物事はうまくいく。
「あんたの仲間はルフィとサンジだけじゃねぇだろ?」
 辛抱強く話しかける。
ロビンがわずかに目を閉じた。絞り出すように、親しげに、いくつかの名前を呟く。
「ナミ……ゾロ……みんな……」
「よくよく思い出してみろよ、」
 流は力強く続ける。
「ナミや……」
「……そうね」
「ゾロや……」
「そうね」
「ともに過ごしたあいつらの――」
「そうね。そうね。そうね」
「あいつらの、笑顔をよ」
「彼らも殺してあげないと」
「おまえ、仲間も殺すのかあ?」
 つい素に戻って流は言った。
「海賊は船長の許可なく一味をおりてはいけないの」
 意外にもはっきりした声音でロビンが言葉を継ぐ。
「麦わら海賊団はいつも一緒なの。いつもいつも一緒じゃないといけないの。
ルフィの許可なしには、誰一人欠けてはいけないのよ」
 明確な理性を宿してロビンが流に笑顔を向けた。
「ありがとう、あなた。名前も知らないけれど。
私は元の世界に帰らないと。みんなを殺して、世界を平らにしないと。
彼らがいないのに世界だけが在り続けるなんて、それは奇妙だし、」
 言葉を一度句切って、思い出したように含み笑いをする。
「そう、『未来は白紙に』しないとね」
 船長死亡 ―> 仲間皆殺し ―> 世界滅亡。
 ――どんな三段論法だよ。
 ロンリダ小僧が聞いたらぶっとぶだろう理論をロビンは平然と展開する。
それは結構、流にとって小気味のいいものだった。
論理的に正しいとか正しくないとか、そんなことはとうにわかっている。
ようくようくわかっている。でも、それでも、いやだからこそ流はこの道を選んだのだ。
流が流であるために。また、きっとロビンがロビンであるために。
他人がこねくりまわした理屈などまっぴらだ。
 ひとはいつでも望む人になれるのなら、流は誰よりも薄汚い裏切り者を望む。
どこにでも行けるのなら、悪臭ただようどぶ水を望む。
そう、そう望んでいるはずだ。だって流の本性はねじくりまがった悪人なのだから。
「まあ、待てよ。あんたは頭が働くし、その力も便利だ。
だがそれだけじゃあやっていくのは難しいぜ」
 意思を持った眼差しでロビンが流を見た。似たような言葉をきいた、と呟く。
女は値踏みをしている。アタマのネジは吹っ飛びまくっているが、計算機能は残っているようだ。
 与えられていた圧迫感がふっと失せた。当然、それも解放されている。
ガラにもなく安堵の息をついて流はあぐらになった。錫杖で肩をとんとんと叩く。
耳障り嬌笑はすでに消えていた。
ごぼごぼというタールを混ぜたような不快な音は続いたが、それもやがて聞こえなくなるだろう。
「おまえよォ、世界を滅ぼすったって簡単じゃあないぜ」 
 ロビンはにっこりと鮮やか笑みを浮かべる。
「私には、いつかそれを為すための知識(ちから)がある。
子供はいつか大人になるもの。みにくいあひるの子はきれいな白鳥になるでしょう?
悪魔の子は今にあかあい角を生やすのよ」
 ロビンは楽しそうに語った。楽しそうに古代の兵器にまつわる物語を語った。
古代だとかなんだとか、そんな眉唾物の話はどうでもいい。
でも、その空想の物語は流を楽しませた。
その兵器はすさまじい熱をもってロビンの世界を焼きつくすだろうか。
端っこから端っこまでを轟々と燃やすだろうか。
「そいつはさぞかしうるせぇことだろうなア」
 まばゆい光が地球を覆いつくし、海も山も飲み込まれる。
その爆風は、草も動物も人間も白面も流の耳も鼓膜もシナプスも、まるで価値のない塵のように吹き飛ばすだろう。
きっとなにもかもがいっさいがっさいなくなってしまう。この世のすべてが溶けて消えてしまう。
流はその姿を思い描いて恍惚とした。
「俺にも見してくれよ、世界が滅びるさまってやつをよ」
「ええ、あなたにも見せてあげるわ。あの人たちを失ったあとの世界を見せてあげる。
世界が燃えつきるさまを見せてあげる」
 歌うような口調でロビンがうっとりと言った。
彼女がその目論見通り兵器を作動させても、もちろん二人でその様子を見ることはない。
ロビンの目的は参加者を踏み潰して自分だけがその上に立つことだ。
立って元の世界に帰りなにもかもを破滅させることだから。
 流とロビンたった二人が最後に生き残ったとしたならば、この殺し合いの果てに流がロビンを殺すのだろうか。
それともロビンが流を殺すのだろうか。
 そうなったらそのときに考えればいい。流のやりたいことはこの島の中にこそある。
すべてが上首尾でただひとり流が生き残る。そんな未来は退屈すぎて流にはありありと想像できる。
ロビンはそんな流の、最後の暇潰しになってくれるかもしれない。



 「みんなのしたら場」に一つの記事が投稿された。


2:気のいい兄ちゃんに協力求めたら肺をブチ抜かれたんだけど

6 名前:スノーフリークな名無しさん 投稿日:1日目・昼 ID:NaiToYshR
私はこれから死ぬけれど、沖田総悟ミリオンズ・ナイブズと名乗る人たちに気をつけて。
人当たりのいい若い男と、小柄な十代の少年に。
彼らの名を騙っている人がいるといっていたけど、今となってはそれが本当かもわからない。
力を合わせて主催を倒そう、元の世界に帰ろうなんて耳あたりのいいことを言って近づいてくるけど決して信じちゃだめ。
信じた私たちは、私の友達は、見たこともない箱のような武器と不思議な力で一瞬のうちに殺されてしまった。
私たちは、ただ生きたかっただけなのに。
ああ、声が聞こえる。彼らはもう近くにいる。
私ももうすぐ死ぬんだ。きっと死ぬんだ。ごめんね、待っててねみんな。


ねえ、私、死にたくない。死にたくないよ。
たすけて
だれか








「――っと。こんなもんか」
 流はエンターキーを押した。ロビンが感心したように言う。
「器用ね、あなた」
「サクブンは昔っから得意でよ」
 研究所への道を見付けたのは流だが、鍵を開けたのはロビンで、いい考えがあると言ったのもロビンだった。
敵役の名前は鉛筆を転がして決めた。あえて蒼月潮を避けたのは、恣意性を排除するためだ。
書いたのが流と露呈するのはてんで構わない。しかしそれでは参加者を潰しあわせるという目的にはかなわない。
あくまで信憑性が大切だ。
 名前こそ異なるが流はうしおをモデルに子供を書いた。
ロビンはヴァッシュを思い浮かべて大人を決めた。
或&リヴィオ、うしお&蝉、エド&聞仲(+高町亮子)、植木&ヴァッシュというように、彼らが把握しているだけでも若い男と少年の組み合わせはこれだけある。
きっとまだまだ他にもいるだろう。具体性を持たせた敵役にはぴったりだ。
そして数が多ければ多いだけ衝突の要因となる。
たったこれだけの情報でつぶし合いに発展はすまいが、疑心暗鬼の種くらいにはなるはずだ。
 キーボードからにゅっと右手が飛び出した。
「よろしくね、『殺し合いに乗った最低のクソ野郎』さん」
 流はもう驚かない。しっかりと握りこむ。
「こっちこそどーぞ。妖怪『手だらけ』さんよ」
 そして椅子をのけぞらせて振り返り、うずくまるそれに声をかけた。
「おまえもきっちり働けよ、『虫けら』。貴重な医薬品を使ってやったんだからよォ」




【F-05地下/研究棟/1日目/昼】

【ニコ・ロビン@ONE PIECE】
[状態]:左腕に銃創×2(握力喪失)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(名簿紛失)、んまい棒(サラミ×1、コーンポタージュ×1)@銀魂
    双眼鏡、食料、着替え、毛布
[思考]
基本:勝ち抜き狙い。帰ったらプルトンを復活させて世界を滅ぼす。
1:秋葉流と協力して、効率的に参加者を排除する。
2:可能なら、能力の制限を解除したい。
3:ヴァッシュに対して――?
4:ルフィたちのいない世界なんていらない。
[備考]
※自分の能力制限について理解しました。体を咲かせる事のできる範囲は半径50m程度です。
※参戦時期はエニエスロビー編終了後です。
※ヴァッシュたちの居た世界が、自分達と違うことに気がつきました。



【秋葉流@うしおととら】
[状態]:疲労(小)、法力消費(小)
[装備]:半裸。錫杖×2、破魔矢×15
[道具]:支給品一式、仙桃エキス(10/12)@封神演義、注連縄、禁鞭@封神演義、詳細不明神具×1~3
[思考]
基本:満足する戦いのできる相手と殺し合う。潮に自分の汚い姿を見せ付ける。
0:ロビンと協力して参加者を撃破。
1:他人を裏切りながら厄介そうな相手の排除。手間取ったならすぐに逃走。
2:厄介そうでないお人好しには、うしおとその仲間の悪評を流して戦わない。
3:高坂王子、リヴィオを警戒。
4:聞仲に強い共感。
5:万全の状態でとらと戦いたい。
6:ロビンの『世界を滅ぼす力』に強い興味
[備考]
※参戦時期は原作29巻、とらと再戦する直前です。
※或の関係者、リヴィオの関係者についての情報をある程度知りました。
※ロビンが咲かせるのは右手だけだと思っています。




【スズメバチ@魔王 JUVENILE REMIX】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大)、全身に重度のやけど
[服装]:包帯の上にゴスロリドレス
[装備]:縫い針を仕込んだ靴(毒なし)
[道具]:支給品一式(コンパス以外)
[思考]
基本:????
0:????
[備考]
※ スカートはギリギリで見えません。履いてなかったです。
※ 針は現地調達です。毒は浴槽に入ったことで洗い落とされてしまいました。

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