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人生は選択肢の連続

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匿名ユーザー

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人生は選択肢の連続 ◆L62I.UGyuw



銃声が聞こえた瞬間、鈴子は自分の置かれた状況のマズさを悟った。
展望室の出口は中央の太い支柱に巻き付いた螺旋階段のみ。逃げ場は無い。
もし銃を持った誰かが展望室まで上ってきたら、素手の自分は圧倒的に不利。
かと言って下手に動けば銃声の主に感付かれる危険がある。
最悪、下に降りた瞬間に侵入してきた殺人鬼と鉢合わせ、となるかもしれない。
一か八かスパスパの実を食べて戦力向上を狙うという手もあったが、いきなり博打を打てるほど彼女は大胆ではなかった。

どうするか逡巡していると、窓の外に何か動くものがあった。
それは灯台から西へと続く道を歩いていく一人の人物。
先程の銃声はあの人のものだろうか?
そう考えたとき、

がちゃり

微かな、しかしはっきりとした音が届いた。跳ね上がる心臓。
階下に侵入者がいる。だがまだ気付かれてはいないはず。
忍び足で階段に近付き、聞き耳を立てる。

「――――どい――。――――――」

よく聞こえないが、何やら独り言を言っているようだ。
声の質からすると若い女性だろう。撃たれて怪我をしている、という感じではない。
ならば彼女が銃声の主だろうか?

「――うなんて、ドグサレ外道です!」

急に声のトーンが上がる。つられて鈴子の肩がビクっと跳ねた。
明らかに興奮している。内容も不穏だ。少なくとも関わりたいとは思わない。
声はすぐにトーンダウンして、また独り言の内容は聞き取れなくなる。彼女が一階から動く気配はない。

今二階に来られるのは困る。出来ることなら自分には気付かずどこかへ行ってほしい。
その願いが通じたのか、しばらくすると彼女は展望室には上らず外へと出て行った。
鈴子はホッと溜息を吐く。ひとまず目先の危機は去ったらしい。
灯台を出て行った女性が西の道の向こうに消えるのを展望室の窓から確認する。


侵入者が出ていってから暗い展望室で息を潜めること三十分。

「……もう、大丈夫かしら……?」

円い空間に微かに響く声。
返答は無い。
どうやらもう灯台に入ってくる者はいないようだ。
外で待ち伏せている可能性もあるが、そもそも自分の存在が第三者に気付かれている可能性は低い。
いるかどうかも分からない相手のために三十分も待ち伏せを続ける人間はいないだろう。
それでも慎重に、明かりは点けずに一歩ずつ螺旋階段を下りる。

「それにしてもさっきのは…………どういうことですの……?」

鈴子が過剰なまでに慎重な理由の一端は、息を潜めている間の不可解な状況にあった。
最初は気付かなかったが、よく考えると先程見た二人の行動はかなり奇妙なのだ。


銃声は一発。
その直後、展望室からは死角となる位置から一人が現れ、西へ続く道へと歩いていった。
息を殺して見ていると、直後に灯台に若い女性が侵入。そして数分後に彼女も後を追うように西へ。


暗すぎて人相などは分からなかったが、二人とも焦っているようには見えなかった。
銃声の鳴った直後に悠々と歩いてその場を去る、という行動はどう考えてもまともではない。
もちろんそれが銃声の主の行動ならば不自然ではないが、最低でもどちらか一方は発砲していないはず。
出発の時間差を考えると二人が仲間であるとも考えにくい。
考えられるとすれば、脅威が既に存在しない場合――例えば銃声の主があの二人のどちらかに殺された場合――だが、
それでも灯台に侵入した女性の行動は普通ではない、と思う。
少なくとも自分なら、目の前で銃撃戦を見た直後に誰がいるかも分からない建物に軽々しく入ったりは出来ない。
単に銃撃如きではやられないという自信がある能力者なのかもしれないが……。
考えていてもこれ以上は分かりそうもない。それなら行動あるのみ。とにかく外の状況が分からないのは気持ちが悪い。
そう考えて鈴子は灯台の外を調べることにする。

螺旋階段を下りたところの正面に外へのドアがあった。
灯台の一階も調べたいところだが、ひとまず後回しにしてまっすぐ進む。
そして音を立てないようにゆっくりとノブを回し、そこで躊躇った。
もし……、もしこの向こうに銃を構えた殺人鬼がいたら?
簡単だ。鈴子は抵抗する暇もなく地面に脳漿をブチ撒けることとなるだろう。
その光景を想像して背筋に寒気が走る。

(……大丈夫、誰もいるはずがありませんわ)

最悪の想像を振り切り、意を決して金属製のドアを押し開けた。
肌を切る冷たい風。夜の海の匂い。
人の気配どころか虫の声さえも無い。不自然なまでの生命感の欠如。
世界に一人だけ取り残されたような錯覚に、思わず身震いする。

ともあれ、最悪の事態は起こらなかった。
少し外をうろついてみる。死体も転がっていないし、血痕が続いていたりもしない。
ただ草原の西と南に道が延びているだけだ。他に変わったことはない。
身構えていただけに少し拍子抜けする。
やはり奇妙だと思ったのは考えすぎで、先程の状況は単なる彼らの気まぐれの結果だったのかもしれない。
もしかしたら銃声だって彼らのどちらかが誤射しただけだったのではないだろうか。
そう思うと少し緊張が和らいだ。

外に異常が無いなら次は一階を調べよう。何か役に立つものがあるかもしれない。
そう考え、もう一度灯台を探索するために鈴子は踵を返す。
そのときふと、灯台の入り口の植込み付近に何かが落ちていることに気付いた。

「……? 何ですの? これ……」

近付いてしゃがみこみ、その物体をそっと拾い上げる。そして――

「キャァァアアアア!?!?」

思わず地面に叩きつける。
物体の正体は髪の毛の束。手にヒトの脂特有の気持ちの悪い感触が残り、無意識に手のひらを服にこすり付けた。
完全に予想外の物体の出現に、鈴子の思考は混乱を極める。何とか合理的な説明をしようと試みるが、仮説の一つも出てこない。
ここで一体何が起こったのか。不気味にも程がある。
ホラー映画さながらの状況に鈴子は無意識に後ずさる。
その拍子に灯台の入り口の段差に足を引っ掛けた。

「キャッ」

後ろに倒れ、コンクリートの上で尻餅をつく。それを恥ずかしいと思う余裕もない。
鈴子は再び襲い掛かってきた恐怖を何とか抑え込んで考える。
死体が転がっているならまだ解る。しかし何故髪の毛だけ?
先程の二人の行動といい、この髪といい、やはり何か理解を超えた事態が進行しているのかもしれない。
いや、違う。ここに連れてこられてからの事態は全て理解を超えている。
実は悪夢を見ているだけなのかもしれないという思いが過ぎったが、手に残る髪の束の生々しい感触と打った腰の痛みがそれを否定する。

例えばこれが昼間だったら、一人でなかったら、殺し合いではなく能力バトルだったら、
鈴子はロベルト十団の参謀として冷静に状況を分析出来たかもしれない。
実際、客観的に眺めれば差し迫った脅威は見当たらないのだ。
普段の鈴子なら不可解なことは一旦無視して、名簿で名前が確認できるようになるまで灯台に篭るという選択肢を選んだだろう。
しかし恐怖と疑心は鈴子から冷静な判断力を奪う。

――――ざわざわ――ざわざわ――
――ざわざわざわ――――

暗闇にざわめく、鈴子を嘲笑う木々。
無言の圧力を発する、黒くそびえ立つ灯台の影。
腹を空かせた見えない怪物が物陰で舌なめずりをしている。そんな嫌な感覚。
きっと怪物の哀れな犠牲者は丸かじりにされ、彼がこの世に存在した証は噛みちぎられた髪の毛だけになるのだ。
怪物の腹は数十キログラムの肉ではとても満たされない。次の獲物は自分――――。


そして――――鈴子は思わず走り出していた。
目指すは南。
西に行かなかったのは、あの二人が行った方に行くのはイヤだ、という単純かつ切実な理由。
肥大した恐怖を振り払うように道なりに必死で走る。
しかし鈴子は肉体的には普通の中学生に過ぎない。しばらく走ったところで息が切れて足が止まる。

「ハァ……ハァ……ハァ…………ふぅ」

乱れた呼吸を整える。その行動によって鈴子は少し冷静になれた。
恐怖に駆られて思わず飛び出してきてしまったものの、鈴子はこれからどうするか決めかねていた。
このまま進むことも出来るが、今から灯台に戻ることも出来る。
だが戻ったとしても、武器もないのにずっと籠城を決め込むわけにもいかない。
あのとき誰かに悲鳴を聞かれた可能性も無いわけじゃない。
遅かれ早かれ動く必要はあったのだから結果的には問題なかったはずだ、と無理矢理自分を納得させて、鈴子はそのまま南へ歩きだした。
本音は、あんな不気味な場所からは一刻も早く離れたかったというだけなのだが。

風が冷たい。微かな潮の香りも満点の星空も、今は孤独をより深める原因にしかならない。
ロベルト十団。
私利私欲のために集まった者が大半とはいえ、それでも仲間がいるということは心強かった。
今は周りに誰もいない。
ここでは鈴子はロベルト十団の参謀ではなく単なる一人の中学生に過ぎない。
今更ながら自分の無力さを痛感する。
誰でもいい。ロベルト十団の団員と合流したい。
そう願い、孤独に耐えながら鈴子はひたすら南へと歩き続ける。

「あれは……」

屋根の上の尖塔に十字架が飾られた建物が右手に見えてきた。
おそらくは地図にあった教会だろう。

もしかしたら教会になら装飾用のビーズがあるかもしれない。
確実ではないが、賭けてみる価値はある。
それにビーズは無くても多少は役に立つもの、例えば食料くらいは置いてあるだろう。
そう考え、鈴子が教会に近付こうとしたとき、異変は起こった。

唐突に森の奥から僅かな光が射す。一秒ほど遅れて辺りに爆音が轟いた。

「な……!?」

慌てて近くの草むらに飛び込む。
今のは爆弾。それもそれほど離れてはいない。
能力の関係上爆発には慣れているため、爆弾の威力は見えなくても見当がつく。
さっきの爆発は爆心地にいれば人間ならまず助からない程度の威力があったはずだ。
誰の仕業かは知らないが、今関わってはいけないことは確かだろう。
教会に駆け込むか、この場から全力で逃げるか、それともこの場で隠れ続けるか。
鈴子が迷っていると、教会の入り口から軋むような音が聞こえた。
背の高い草の隙間からそちらに目を遣ると、教会から二人の男が出てくるところだった。
二人ともそれぞれ異なるものの、学校の制服らしき服装をしている。
顔までは見えないが、おそらく二人とも自分よりも年上。高校生くらいに見える。

鈴子は迷う。
普通の高校生がいきなり殺し合いに乗る、ということはないだろう。
万が一乗っていたとしても、二人で行動しているということは、出会った相手を問答無用で殺すつもりではないはず。
それならばここは一時的にせよ彼らと手を組むべきではないだろうか。そう考える。
しかし、鈴子の『仲間』に対する不信は大きい。
ここで彼らに声をかけて受け入れられたとしても、きっと後で裏切られる。
そのリスクを考慮すると、どうしても出て行く気にはなれない。

だが、鈴子が本当に他人を信用できないのなら、裏切られる前に自分から裏切ればいい。
他人など駒として使い捨ててやればいい。
ここでは笑顔で彼らに取り入って、後で背後から刺せばいいのだ。
そしてそう割り切れないからこそ、心の奥底では本心からの仲間を欲しているからこそ、鈴子は安易に出て行けない。
仲間への憧憬と諦観。それが鈴子を無意識のうちに縛る二律背反。
仲間とは名ばかりの、お互いに利用するだけの関係に慣れた鈴子はその矛盾に気付かない。

結局、鈴子が迷っている間に二人は爆発音を警戒したのか足早に去って行ってしまった。
この場から離れるタイミングを逃した鈴子は、仕方なく草むらに伏せたまま襲撃者に備える。
夜ならばそう簡単に見つかりはしないだろうという判断だ。


そのまましばらく様子を窺っていたが、誰かが来る気配はない。
辺りを警戒しながらゆっくりと立ち上がり、ぐるりと夜の草原を見渡す。風に揺れる草木の他に動くものは見当たらない。
一歩踏み出し、

「え……キャッ!」

鈴子はバランスを崩して思いきり目の前の草むらに倒れ込んだ。
足元にあった石を踏みつけたのだ。辺りを警戒するあまり足元への注意が疎かになっていた。

「痛ッ……」

再び立ち上がろうとすると、左足に鈍い痛みが走った。
不運なことに、倒れた拍子に足首を捻ったらしい。
ぶつけるアテのない怒りがこみ上げ、鈴子は夜空を見上げて嘆息する。

「最悪ですわ……」

歩く分にはそれほど問題は無いが、激しい運動には確実に影響が出るだろう。
それは場合によっては命取りになりかねない。
一応、怪我に効くという道具『妖精の鱗粉』は持っているが、

「出来ればこれはロベルトのためにとっておきたいですわね」

少なくともこの程度の怪我に使うべきではない。
かといって手当てもせずに放っておくのも好ましくない。
とりあえず、足首を冷やしたい。出来れば足首を固定する道具も欲しい。

やむを得ない。ここは一旦、目の前の教会で休むしかないだろう。
そう考え、鈴子はお世辞にも立派とはいえない木の扉に手をかける。
軋んだ音をたてて扉は抵抗なく開いた。
長椅子が並ぶ簡素な礼拝堂に、かつり、かつりと足音が響く。
薄暗い礼拝堂の奥。
非日常的な光景が不安感を一時的に麻痺させる。
ステンドグラスを通した冷たい光を受ける聖母の像が、鈴子を静かに見下ろしていた。

【D-9/教会/1日目 黎明】

【鈴子・ジェラード@うえきの法則】
[状態]:疲労(小)、左足首捻挫
[服装]:
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、スパスパの実@ONE PIECE、妖精の鱗粉@ベルセルク
[思考]
基本:このゲームが自分達の戦いの延長ならロベルトを優勝させる、そうでないならロベルト及び十団の団員と合流して脱出(最悪ロベルトは脱出させる)
1:教会で足の手当てをする。あればビーズその他の道具も手に入れる。
2:このゲームが自分達の戦いの延長にあるかを確かめる。
3:ビーズを手に入れたい。その為に市街地の店に向かいたいがどちらの方向に向かうかはまだ未定。
4:情報を集め今後どうするかを考える。特に他の参加者への接触は慎重に行う。
5:(この場にいるなら)ロベルト及び佐野等の十団の団員と合流。
6:(この場にいるなら)植木、ヒデヨシ他の能力者を倒す。特に植木は確実にこの場で倒しておきたい。
7:ロベルトがこの場にいない場合、倒せない能力者がいるなら誰も死ななかった時の全員死亡を狙う。
[備考]
※第50話ロベルトへの報告後、植木の所に向かう途中からの参戦です。その為、森とは面識がありません。
※このゲームが自分達の戦いとは関係ない可能性を考えています。名簿にロベルトや十団の団員及び自分の知る未だ失格になっていない能力者の名前が1つでも無ければ関係ないと判断するつもりです。
※能力者以外を能力で傷付けても才が減らない可能性を考えています。実際に才が減るかどうかは次の書き手に任せます。
※気絶させても能力を失わない可能性を考えています。気絶したらどうなるかは次の書き手に任せます。



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