◆
不利を強いられた戦いだと、最初から分かり切っていた。
九堂りんね、柊真昼、神将ジーニアスビルド等々。
並以上の力を持った強敵達との、交戦経験を経た美嘉なれど。
それらは全て、肩を並べ共に戦う者がいたからこそ勝利を掴んだに過ぎない。
シノンやキズナブラックは命を落とし、鉄華兵団のメンバーは他の相手で手一杯。
正真正銘、1vs1の構図で戦闘に臨まねばならなかった。
並以上の力を持った強敵達との、交戦経験を経た美嘉なれど。
それらは全て、肩を並べ共に戦う者がいたからこそ勝利を掴んだに過ぎない。
シノンやキズナブラックは命を落とし、鉄華兵団のメンバーは他の相手で手一杯。
正真正銘、1vs1の構図で戦闘に臨まねばならなかった。
「ほらほらもっと必死こいて足掻けっての!でなきゃサンドバッグ確定よ!」
「……っぅ!」
「……っぅ!」
両の拳が唸り、時には脚部が鞭のように振るわれる。
屈強な肉体の見た目に違わず、恐竜グリードの殴打は一発一発が重い。
正史おいて、真木清人が変身した際と異なりコアメダルが2枚足りない故か。
幾分の弱体化こそあれど、美嘉からすればとてもじゃないが容易く勝てる相手とは思えない。
屈強な肉体の見た目に違わず、恐竜グリードの殴打は一発一発が重い。
正史おいて、真木清人が変身した際と異なりコアメダルが2枚足りない故か。
幾分の弱体化こそあれど、美嘉からすればとてもじゃないが容易く勝てる相手とは思えない。
キズナブラックの女性版とも言うべき装甲は、突けば弾ける生身の体を護る役目を果たしているも。
真昼との戦闘時を思えば、耐久性能への過信は禁物。
あくまで即死を免れるだけで、痛みが微塵も発生しない訳じゃない。
つまり防御に徹するのみならず、隙を掻い潜って仕掛る必要がある。
真昼との戦闘時を思えば、耐久性能への過信は禁物。
あくまで即死を免れるだけで、痛みが微塵も発生しない訳じゃない。
つまり防御に徹するのみならず、隙を掻い潜って仕掛る必要がある。
戦う術なら、既に知っている。
二枚のケミーカードを左腕に取り込ませ、限定的なマルガム化を発動。
恐竜グリードの剛腕を受け流し、手刀を喉元へ突き刺す。
指先が触れる寸前で躱され、反対に蹴りがこちらの腹部目掛け飛んだ。
これを美嘉、引き戻した左腕で弾く。
僅かに痛みを感じた恐竜グリードが敵を見やれば、腕部よりブレードが生えているではないか。
今しがたのカードで武装の召喚でも行ったかと、そう考えるのも束の間。
獲物を見付けた蛇の如く迫るブレードに対し、頑強な腕部で打ち合う。
二枚のケミーカードを左腕に取り込ませ、限定的なマルガム化を発動。
恐竜グリードの剛腕を受け流し、手刀を喉元へ突き刺す。
指先が触れる寸前で躱され、反対に蹴りがこちらの腹部目掛け飛んだ。
これを美嘉、引き戻した左腕で弾く。
僅かに痛みを感じた恐竜グリードが敵を見やれば、腕部よりブレードが生えているではないか。
今しがたのカードで武装の召喚でも行ったかと、そう考えるのも束の間。
獲物を見付けた蛇の如く迫るブレードに対し、頑強な腕部で打ち合う。
戦闘経験こそ積んで来たが、元は単なる女学生に過ぎない美嘉だが。
恐竜グリードの猛攻を捌き、時に斬り付ける大胆な動きに出れる理由は一つ。
取り込んだケミー、オドリッパの力を借りているが故だ。
ダンスのように華麗でしなやかな動きは、単純なパワー勝負で劣る分を補うのに好都合。
そこへミクタスの要領で加わるは、カマンティスのケミーカード。
元々オドリッパとも相性が良く、此度の一戦でもそれは十分に発揮。
俊敏性と切れ味抜群の得物、両方を武器に陰我のデスマスクへと抗う。
恐竜グリードの猛攻を捌き、時に斬り付ける大胆な動きに出れる理由は一つ。
取り込んだケミー、オドリッパの力を借りているが故だ。
ダンスのように華麗でしなやかな動きは、単純なパワー勝負で劣る分を補うのに好都合。
そこへミクタスの要領で加わるは、カマンティスのケミーカード。
元々オドリッパとも相性が良く、此度の一戦でもそれは十分に発揮。
俊敏性と切れ味抜群の得物、両方を武器に陰我のデスマスクへと抗う。
「甘いのよ!」
尤も、瞬時の決着が叶う程度の敵に非ず。
小癪な悪足掻きを鉄拳一発で捻じ伏せ、がら空きの胴へ回し蹴りが炸裂。
地面を転がる美嘉は歯を食い縛って立ち上がり、ブレードを一閃。
不可視の斬撃波を飛ばすが、対処に出れないと誰が言った。
小癪な悪足掻きを鉄拳一発で捻じ伏せ、がら空きの胴へ回し蹴りが炸裂。
地面を転がる美嘉は歯を食い縛って立ち上がり、ブレードを一閃。
不可視の斬撃波を飛ばすが、対処に出れないと誰が言った。
「セルシウススパイク!」
恐竜グリードではなく、生前のイドラ本人の魔法を行使。
デスマスク化に際し付与されたジンガのエネルギー、及びコアメダルの力を精霊の餌に用いる。
棘玉状の氷を発射、斬撃波を掻き消して放った本体へ殺到。
無抵抗な的になるのは御免だ、咄嗟の判断でドッキリマジーンのカードを読み込む。
氷が命中するや紙吹雪と化し弾け、手品さながらに別の場所へと転移し難を逃れる。
デスマスク化に際し付与されたジンガのエネルギー、及びコアメダルの力を精霊の餌に用いる。
棘玉状の氷を発射、斬撃波を掻き消して放った本体へ殺到。
無抵抗な的になるのは御免だ、咄嗟の判断でドッキリマジーンのカードを読み込む。
氷が命中するや紙吹雪と化し弾け、手品さながらに別の場所へと転移し難を逃れる。
「その見た目にブレスレット……そういうこと」
改めて美嘉の外見をじっくりと眺め、納得を得たとばかりに頷く。
初対面にも関わらず、何故自分の名を知っているのか疑問を抱いたが。
そう難しい答えではない。
初対面にも関わらず、何故自分の名を知っているのか疑問を抱いたが。
そう難しい答えではない。
「あんた、レッドの奴にでも会ったんでしょ?」
「……はい」
「……はい」
重々しい数秒の沈黙を挟んでの肯定に、だろうなと小さく鼻を鳴らす。
興味を引かれた様子も無ければ、動揺なんて微塵もない。
単なる仲間以上の絆を紡いだとは到底思えない、淡白な態度。
理由に見当は付いているも、問わずにはいられなかった。
興味を引かれた様子も無ければ、動揺なんて微塵もない。
単なる仲間以上の絆を紡いだとは到底思えない、淡白な態度。
理由に見当は付いているも、問わずにはいられなかった。
「何も、思うことはないんですか?灯悟さんに何があっただとか、どうしてここにいないんだとか。何か一つでも、聞こうとはしないんですか?」
「…………そうね。レッド、あんたはこんな場所でも絆を信じて戦って来たのよね?あんたって本当に、本当、に……」
「…………そうね。レッド、あんたはこんな場所でも絆を信じて戦って来たのよね?あんたって本当に、本当、に……」
姿を見せない男へ向け、乾いた声色で言葉を紡ぐ。
俯いた顔は異形に姿を変えてるのもあって、どんな表情か窺えず。
されど肩を震わせる様子に、込み上げる想いが彼女にも――
俯いた顔は異形に姿を変えてるのもあって、どんな表情か窺えず。
されど肩を震わせる様子に、込み上げる想いが彼女にも――
「本っっっっっ当に付ける薬のない馬鹿よねぇ~~~~~!!!」
ある筈がなかった。
「な~にが絆よ、はーっキモいキモいキモい!!そんなに絆が好きなら、一生それで一人寂しくシコってろっての!やだやだ!あんなゴミに熱上げてたとか、『前の私』って馬鹿過ぎでしょ!」
ありったけの嫌悪と嘲笑を籠め、自身を愛した男をこき下ろす。
罪悪感なぞは起こり得ない、彼女の心は神の牙以外に決して傾かないのだから。
罪悪感なぞは起こり得ない、彼女の心は神の牙以外に決して傾かないのだから。
「とっくに死んだ負け犬の分際で、私とジンガ様の間に入り込まないでよね!私がジンガ様に愛してもらう所を、あの世で指でも咥えて――」
嘲りを途中で打ち切らせたのは、眼前へ迫りつつある刺突刃。
ブッサソーリーのカードを読み込み、蠍の尾を思わせる部位で顔面を串刺しにする気だろうがそうはいくか。
地を蹴り付け、軽やかに後方へと着地。
仮面で素顔は見えなくとも、怒りを纏った冥黒の魔女をせせら笑う。
ブッサソーリーのカードを読み込み、蠍の尾を思わせる部位で顔面を串刺しにする気だろうがそうはいくか。
地を蹴り付け、軽やかに後方へと着地。
仮面で素顔は見えなくとも、怒りを纏った冥黒の魔女をせせら笑う。
「なに?あいつに惚れでもしてたわけ?」
「もう黙って。イドラさんの体で、あの人のことをこれ以上何も言わないで……!」
「もう黙って。イドラさんの体で、あの人のことをこれ以上何も言わないで……!」
こうなると、予想は付いていた。
ノノミやうてな、話に聞いたシノン等々。
グリオンに忠誠を誓ったデスマスク達は誰もが、造物主以外を徹底的に見下す傾向にあった。
たとえ、生前親しい間柄にあった者であろうと変わらない。
生みの親がグリオンからジンガになっただけで、悪意で彩られた死体人形である以上。
イドラもまた、本来の彼女が持つ善性は欠片程も存在しない。
ノノミやうてな、話に聞いたシノン等々。
グリオンに忠誠を誓ったデスマスク達は誰もが、造物主以外を徹底的に見下す傾向にあった。
たとえ、生前親しい間柄にあった者であろうと変わらない。
生みの親がグリオンからジンガになっただけで、悪意で彩られた死体人形である以上。
イドラもまた、本来の彼女が持つ善性は欠片程も存在しない。
そんな風に理解して尚、美嘉は怒りを覚えずにはいられなかった。
自分と斬撃の勇者を生かす為に、命を燃やし尽くした彼が。
どれ程、イドラ・アーヴォルンを愛していたか。
喪失を嘆き、守れなかった己自身に黒き憤怒を燃やしたかを知った一人として。
彼との間に絆を結んだ、仲間として。
自分と斬撃の勇者を生かす為に、命を燃やし尽くした彼が。
どれ程、イドラ・アーヴォルンを愛していたか。
喪失を嘆き、守れなかった己自身に黒き憤怒を燃やしたかを知った一人として。
彼との間に絆を結んだ、仲間として。
「灯悟さんが紡いだ絆を、否定させない!」
「イキってんじゃないわよ、小便垂れのカス女ァッ!!」
「イキってんじゃないわよ、小便垂れのカス女ァッ!!」
絆の強さを知った者と、本来の絆を奪われた者。
相容れぬ両者が咆え、戦場の熱は加速の一途を辿る。
相容れぬ両者が咆え、戦場の熱は加速の一途を辿る。
○
MSを操縦するのと、起動鍵を用いて装甲を纏うのでは。
当たり前だが感覚は全く違う。
コックピット内でレバーを握るんじゃあない、直接武器を手に持って振るうのだ。
殺し合い開始当初こそ、多少の戸惑いがあったとはいえ。
18時間以上が経過し、戦闘の機会にも幾らか恵まれたのに加えて。
自身の愛機たるブリッツガンダムの起動鍵とくれば、並大抵の相手には後れを取らない。
当たり前だが感覚は全く違う。
コックピット内でレバーを握るんじゃあない、直接武器を手に持って振るうのだ。
殺し合い開始当初こそ、多少の戸惑いがあったとはいえ。
18時間以上が経過し、戦闘の機会にも幾らか恵まれたのに加えて。
自身の愛機たるブリッツガンダムの起動鍵とくれば、並大抵の相手には後れを取らない。
残念ながら現在対峙中の敵は、並の枠へ括られなかった。
右腕の攻盾システム、トリケロスの照準を合わせトリガーを引く。
内部機能のアシストと、ニコル自身が軍人生活で磨いた技能。
両方を活かし正確無比な射撃を行うも、未だ命中の気配は皆無。
斬撃の間合いへ踏み込まれる前に距離を取り、熱線を撃ち続ける。
戦闘が始まり、何度この動作を繰り返しただろうか。
内部機能のアシストと、ニコル自身が軍人生活で磨いた技能。
両方を活かし正確無比な射撃を行うも、未だ命中の気配は皆無。
斬撃の間合いへ踏み込まれる前に距離を取り、熱線を撃ち続ける。
戦闘が始まり、何度この動作を繰り返しただろうか。
殺到する光線の群れに自ら飛び込み、標的の元へと一直線。
度胸があるか、はたまた命知らずの馬鹿か。
少なくとも後者でないことは、視覚センサーが捉える光景からも明確だ。
数ミリ工程を間違えるだけで直撃は免れないにも関わらず、何の躊躇もなく宙を疾走。
秒と掛けずに眼前へ到達し刀身を走らせれば、またもや避けるという焼き直し。
度胸があるか、はたまた命知らずの馬鹿か。
少なくとも後者でないことは、視覚センサーが捉える光景からも明確だ。
数ミリ工程を間違えるだけで直撃は免れないにも関わらず、何の躊躇もなく宙を疾走。
秒と掛けずに眼前へ到達し刀身を走らせれば、またもや避けるという焼き直し。
「さ、さっきからずっと避けられてます……うぅ、私みたいな女じゃ、そ、そういう反応されても仕方ないですけど……」
自信の二文字が恐ろしい程に存在しない、ネガティブが服を着ているような言動と裏腹に。
攻撃への躊躇は一切生じず、首を断たんと右手の大剣で執拗に付け狙う。
見た目に全振りのガラクタと、楽観的に考えようものなら。
嘲笑を貼り付けたまま、己の死を理解出来ず冥府へ突き落とされること間違いなし。
攻撃への躊躇は一切生じず、首を断たんと右手の大剣で執拗に付け狙う。
見た目に全振りのガラクタと、楽観的に考えようものなら。
嘲笑を貼り付けたまま、己の死を理解出来ず冥府へ突き落とされること間違いなし。
一見、亜里紗が振るう剣は全て躱され。
ニコルが翻弄していると思われるやもしれぬが、その実余裕がないのはニコルの方だ。
使い慣れたブリッツガンダムの起動鍵と、MS乗りとしての経験でダメージこそ免れてるも。
逆に言うと、ニコルが有利を取れる面はそれだけしかない。
ニコルが翻弄していると思われるやもしれぬが、その実余裕がないのはニコルの方だ。
使い慣れたブリッツガンダムの起動鍵と、MS乗りとしての経験でダメージこそ免れてるも。
逆に言うと、ニコルが有利を取れる面はそれだけしかない。
(MSの性能は間違いなく向こうが上だ……それにあの動きを見るに、戦いの素人って訳じゃない……)
ソウルジェムが砕かれ、魔法少女への変身こそ不可能となったが。
培った戦闘経験は生前の記憶と共に健在、起動鍵の性能に振り回される失態は犯さない。
何より、亜里紗が纏うMSはダブルオーライザー。
イノベイター勢力の機動兵器と互角以上に渡り合い、リボンズ・アルマークとも死闘を繰り広げたハイスペックなガンダムだ。
基本性能部分で、ブリッツガンダムに大きく差を付けている。
培った戦闘経験は生前の記憶と共に健在、起動鍵の性能に振り回される失態は犯さない。
何より、亜里紗が纏うMSはダブルオーライザー。
イノベイター勢力の機動兵器と互角以上に渡り合い、リボンズ・アルマークとも死闘を繰り広げたハイスペックなガンダムだ。
基本性能部分で、ブリッツガンダムに大きく差を付けている。
時間を掛ければ掛けただけ、不利を強いられるのは自分達だ。
そう理解しても現状打破の一手は打てず、焦りばかりが蓄積されていった。
そう理解しても現状打破の一手は打てず、焦りばかりが蓄積されていった。
○
マズい相手にぶつかったと、純然たる事実を内心で受け止める。
槍を巧みに操る様は、アストルフォが名うての騎士たる証拠だ。
馬上試合を幾つもこなし、並の騎士では束になっても敵わない。
優れた敏捷性を駆使して敵を翻弄、隙を見せれば即座に致命的な一撃を食らわす。
対象の脚部を一時的に消失させる宝具は、英雄殺しの狂戦士を決定的な敗北へと誘った。
馬上試合を幾つもこなし、並の騎士では束になっても敵わない。
優れた敏捷性を駆使して敵を翻弄、隙を見せれば即座に致命的な一撃を食らわす。
対象の脚部を一時的に消失させる宝具は、英雄殺しの狂戦士を決定的な敗北へと誘った。
なれど、忘れるなかれ。
今宵の闘争において、英霊(サーヴァント)は絶対無敵の存在に非ず。
対峙するは、嘗て神の牙と謳われし魔獣ホラーなのだから。
今宵の闘争において、英霊(サーヴァント)は絶対無敵の存在に非ず。
対峙するは、嘗て神の牙と謳われし魔獣ホラーなのだから。
「ダンスにしちゃ随分不格好だな、主(マスター)の前で緊張でもしたか?」
振り回し、突き出し、常に穂先が向かう方向を変えて攻めに出るも。
掠めさせてすらもらえず、馬上槍は虚しく宙を切り裂くのみ。
触れれば転倒、だが触れなければ何の脅威にもならない。
極めて最小限の動作で身を捩り、かと思えば華麗な足捌きでヒョイヒョイと躱す。
真横を走った槍を横目で見やりながら、モデルのように長い脚部が蹴りを叩き込む。
顔面狙いの一撃を避け、反対に得物を突き刺すも標的の姿は見当たらない。
掠めさせてすらもらえず、馬上槍は虚しく宙を切り裂くのみ。
触れれば転倒、だが触れなければ何の脅威にもならない。
極めて最小限の動作で身を捩り、かと思えば華麗な足捌きでヒョイヒョイと躱す。
真横を走った槍を横目で見やりながら、モデルのように長い脚部が蹴りを叩き込む。
顔面狙いの一撃を避け、反対に得物を突き刺すも標的の姿は見当たらない。
「っ!」
戦場を駆け抜けて磨いた直感が、相手の位置を知らせる。
反撃(カウンター)へ出るには僅かに遅い、全身をしならせ距離を取った。
視界の端へ飛び散る赤は、完全に躱し切れなかった代償。
左腕に生じる痛みも噛み殺し、瞬く間に眼前へ到達した魔剣士へと集中。
反撃(カウンター)へ出るには僅かに遅い、全身をしならせ距離を取った。
視界の端へ飛び散る赤は、完全に躱し切れなかった代償。
左腕に生じる痛みも噛み殺し、瞬く間に眼前へ到達した魔剣士へと集中。
弱り切った獲物へ牙を突き立てる狼の如く、魔戒剣を振り下ろす。
馬上槍を翳し防御に回すが、想像以上の重さに腕が痺れた。
魔術師ではないマスター故、ステータスが低下した事実を加味しても。
マトモな人間の括りに入れるのは、大間違いのパワーである。
馬上槍を翳し防御に回すが、想像以上の重さに腕が痺れた。
魔術師ではないマスター故、ステータスが低下した事実を加味しても。
マトモな人間の括りに入れるのは、大間違いのパワーである。
「もっと気張れよ、これじゃ準備運動にもなりゃしない」
「その元気の良さを、出来れば別のとこに向けてくれないかなぁ!」
「その元気の良さを、出来れば別のとこに向けてくれないかなぁ!」
無理やり押し返すよりも先に、ジンガの蹴りが腹部を叩く。
呻きつつ後退すれば、急所へ一直線に切っ先が突き進む。
馬上槍で弾き、間髪入れずに引き戻した魔戒剣で斬り掛かる。
打ち合いは避け回避に徹し、脚部目掛け槍を振るうも敵の剣が妨害。
腹立たしいくらいにまるで当たらず、愚痴が零れる暇も無しに魔戒剣が迫った。
呻きつつ後退すれば、急所へ一直線に切っ先が突き進む。
馬上槍で弾き、間髪入れずに引き戻した魔戒剣で斬り掛かる。
打ち合いは避け回避に徹し、脚部目掛け槍を振るうも敵の剣が妨害。
腹立たしいくらいにまるで当たらず、愚痴が零れる暇も無しに魔戒剣が迫った。
すばしっこさに槍捌きを加えた戦法は、弱いとは言わない。
だが速いだけの敵なんぞ、ホラーや魔戒騎士に幾らでも存在した。
純粋な戦闘技術の面で見ても、己を凌駕するには至らない。
柊真昼、冥黒王ギギスト、タギツヒメ、小鳥遊ホシノ、ユフィリア・マゼンタ。
そして最大の宿敵たる道外流牙といった連中に比べれば、やはり下回る。
だが速いだけの敵なんぞ、ホラーや魔戒騎士に幾らでも存在した。
純粋な戦闘技術の面で見ても、己を凌駕するには至らない。
柊真昼、冥黒王ギギスト、タギツヒメ、小鳥遊ホシノ、ユフィリア・マゼンタ。
そして最大の宿敵たる道外流牙といった連中に比べれば、やはり下回る。
踏み込むと同時に、叩き付けるように魔戒剣を一閃。
槍を翳した体勢のまま、後方へと吹き飛ぶもこの程度で終わりにはしない。
空いた左手に炎を収束、冥黒王が操りし黒炎を放射。
回避を間に合わせずにアストルフォを包み込み、英霊の丸焼きが完成――
槍を翳した体勢のまま、後方へと吹き飛ぶもこの程度で終わりにはしない。
空いた左手に炎を収束、冥黒王が操りし黒炎を放射。
回避を間に合わせずにアストルフォを包み込み、英霊の丸焼きが完成――
「この、程度……っ!」
思い描いた光景は現実にならず、単なる想像で終わる。
さる魔女から譲り受けた書物の効果で、Aランク相当の魔力への耐性がここで活きた。
鬱陶しい熱を振り払い、流石に驚くジンガへ届かせるにはこのタイミングしかない。
これ以上マスターに負担を強いる訳にもいかず、必ずや決める時だ。
さる魔女から譲り受けた書物の効果で、Aランク相当の魔力への耐性がここで活きた。
鬱陶しい熱を振り払い、流石に驚くジンガへ届かせるにはこのタイミングしかない。
これ以上マスターに負担を強いる訳にもいかず、必ずや決める時だ。
「触れれば(トラップ・オブ)――っ!?」
真名解放と共に槍を当てる、それさえ果たせれば戦闘不能へ追い込める。
故にこの結果は、実に単純明快(シンプル)。
故にこの結果は、実に単純明快(シンプル)。
「悪いな、わざわざ食らってやる義理なんぞ無いんだよ」
ジンガの強さがアストルフォを上回った、それに尽きる。
槍が完全に振るわれるまでを待たず、己が得た力を発動。
黒崎一護の霊力を喰らい、破面の能力も行使可能となったのは言うに及ばず。
キャルの特大魔法を打ち消した王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)のような、攻撃技だけではない。
響転(ソニード)を用いて、瞬間的に走力を上昇。
瞬きの間すらも追い越し、すれ違いざまに魔戒剣を奔らせた。
黒崎一護の霊力を喰らい、破面の能力も行使可能となったのは言うに及ばず。
キャルの特大魔法を打ち消した王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)のような、攻撃技だけではない。
響転(ソニード)を用いて、瞬間的に走力を上昇。
瞬きの間すらも追い越し、すれ違いざまに魔戒剣を奔らせた。
「がっ……はぁ……っ」
クルクルと宙を舞うのは、馬上槍を握ったままの右腕。
片腕を奪っただけでなく、腰から肩までを切り裂いた。
骨まで断たれ、普段の軽口を叩ける余裕は完全に消失。
小さな呻き声と血の塊を吐き出し、自身より流れ出た赤い海に倒れ込む。
片腕を奪っただけでなく、腰から肩までを切り裂いた。
骨まで断たれ、普段の軽口を叩ける余裕は完全に消失。
小さな呻き声と血の塊を吐き出し、自身より流れ出た赤い海に倒れ込む。
「ライダー……!?」
相棒(サーヴァント)の惨たらしい姿へ、消耗に息を切らしながら悲鳴を上げるもお構いなしだ。
愛剣の餌食と化した英霊には見向きもせず、慄くちひろへと急接近。
ラブギターロッドを叩き付ける等の、抵抗に出る余裕も与えられないまま胸倉を掴まれた。
愛剣の餌食と化した英霊には見向きもせず、慄くちひろへと急接近。
ラブギターロッドを叩き付ける等の、抵抗に出る余裕も与えられないまま胸倉を掴まれた。
「ひっ……」
「一度折れたらもうそこまで。無理やりにでも繋ぎ直す気概は、期待するだけ無駄か」
「一度折れたらもうそこまで。無理やりにでも繋ぎ直す気概は、期待するだけ無駄か」
己へ真っ向から否定をぶつけた際の気迫は、哀れな程に感じられない。
絶望的な状況に陥っても啖呵を切ってみせた、朝比奈まふゆの方が余程上等だった。
途端に興味も消え失せ、腕を大きく薙ぎ払い投げ飛ばす。
キャッチボールさながらに宙を泳いだ後、背中を床に強打し悶える。
絶望的な状況に陥っても啖呵を切ってみせた、朝比奈まふゆの方が余程上等だった。
途端に興味も消え失せ、腕を大きく薙ぎ払い投げ飛ばす。
キャッチボールさながらに宙を泳いだ後、背中を床に強打し悶える。
「で。後はそこの寝坊助と妹ちゃんだな」
サイヤの戦士を横目で見やりながら、シノアの元へ近付く。
片手を伸ばすも、襲われた際には抵抗に出るようプログラムされているらしい。
大鎌状の鬼呪装備、四鎌童子を出現し振り回す。
吸血鬼相手を想定した装備は、そこいらの剣が鈍ら同然の切れ味を誇るも。
対峙中の相手は魔獣ホラーの中でも、上位に位置する男。
ジンガにしてみれば欠伸が漏れる程に遅く、右手首をあっさりと斬り飛ばす。
当然のように痛覚はあるようで短く悲鳴が出るも、揺さぶられる罪悪感などとっくに捨て去った身。
首を掴まれ、小さな体を持ち上げられた。
片手を伸ばすも、襲われた際には抵抗に出るようプログラムされているらしい。
大鎌状の鬼呪装備、四鎌童子を出現し振り回す。
吸血鬼相手を想定した装備は、そこいらの剣が鈍ら同然の切れ味を誇るも。
対峙中の相手は魔獣ホラーの中でも、上位に位置する男。
ジンガにしてみれば欠伸が漏れる程に遅く、右手首をあっさりと斬り飛ばす。
当然のように痛覚はあるようで短く悲鳴が出るも、揺さぶられる罪悪感などとっくに捨て去った身。
首を掴まれ、小さな体を持ち上げられた。
「っ、レディーの扱いを知らないんですか?あなたの奥さんも、見る目がありませんね」
苦し気に顔を歪め、皮肉を投げ掛ける童女を鼻で笑うでもなく。
言葉無くじっと射抜き、
言葉無くじっと射抜き、
「つまらねぇな。所詮は台本通りに動く木偶人形に過ぎない、ってとこか」
酷く冷め切った顔を貼り付け、ため息交じりに吐き捨てた。
「……いきなりなんです?口説き文句の一つも――」
「何も喋らなくて良い。お前のやることにも話すことにも、意味なんざ一つもありゃしねぇ」
「何も喋らなくて良い。お前のやることにも話すことにも、意味なんざ一つもありゃしねぇ」
定時放送の前、トランクス達を襲った時。
真昼の関係者だと察し、本人がドゴルドの支配を脱した後に再会を果たせば。
愉快な光景になるやもしれぬと、放置を決め込んだが。
改めてシノアをこの目で見て、我ながら選択をミスったと思わざるを得ない。
真昼の関係者だと察し、本人がドゴルドの支配を脱した後に再会を果たせば。
愉快な光景になるやもしれぬと、放置を決め込んだが。
改めてシノアをこの目で見て、我ながら選択をミスったと思わざるを得ない。
出自こそルルーシュの贋作であるも、駆け抜けた人生は紛れもなく本物だったロロ・ヴィ・ブリタニアと違い。
シノアの場合は運営の指示に従って行動し、ちひろの覚醒を促す為に裏で働き掛け。
結果NPC達に襲われ死者こそ出ずとも被害を生み、挙句サチがメラに攫われ一連の大乱戦の原因を作るに至った。
かと思えばドゴルドが真昼を乗っ取った件で、トランクスやホシノに猜疑の目を向けるなど。
都合都合で『柊シノア』を演じるといった、中途半端な真似に出続けた。
シノアの場合は運営の指示に従って行動し、ちひろの覚醒を促す為に裏で働き掛け。
結果NPC達に襲われ死者こそ出ずとも被害を生み、挙句サチがメラに攫われ一連の大乱戦の原因を作るに至った。
かと思えばドゴルドが真昼を乗っ取った件で、トランクスやホシノに猜疑の目を向けるなど。
都合都合で『柊シノア』を演じるといった、中途半端な真似に出続けた。
エケラレンキスやザラサリキエルのように、運営側の駒という立場を徹底するでもなく。
イチローや桐藤ナギサのように、参加者の味方であり続けた訳でもない。
どっちつかずなスタンスを繰り返し、おまけにトランクス達への負の感情も本心というよりは。
「柊シノアならこうするだろう」と、植え付けられた記憶を元にトレースしたに過ぎない。
イチローや桐藤ナギサのように、参加者の味方であり続けた訳でもない。
どっちつかずなスタンスを繰り返し、おまけにトランクス達への負の感情も本心というよりは。
「柊シノアならこうするだろう」と、植え付けられた記憶を元にトレースしたに過ぎない。
このような有様では、ジンガ好みの陰我が育つ筈がなく。
真昼にぶつけたところで、贋作に動揺を引き摺り出される女でもないだろうに。
悪意で完全に彩った死体人形(デスマスク)の方が、まだ面白味がある
真昼にぶつけたところで、贋作に動揺を引き摺り出される女でもないだろうに。
悪意で完全に彩った死体人形(デスマスク)の方が、まだ面白味がある
上記の理由が揃っていて尚も、あえて生かしてやる思いやりなんぞジンガにはない。
「お前はもう、必要ないんだよ」
怒りも愉悦もそこにない、ゴミをゴミ箱に放る程度の何でもない声色で。
告げた一言が、贋作人形(シノア)にとって終わりの合図。
首を掴んだままの左手を起点に、冥黒の炎が放出。
幼い体躯は瞬時に包み込まれ、肉の焦げる臭いが辺りに漂う。
告げた一言が、贋作人形(シノア)にとって終わりの合図。
首を掴んだままの左手を起点に、冥黒の炎が放出。
幼い体躯は瞬時に包み込まれ、肉の焦げる臭いが辺りに漂う。
「ぁあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!???!!」
どこか達観し、纏流子を度々小馬鹿にしてきた態度が一変。
火達磨となっては流石に平静を保てず、喉が枯れんばかりの絶叫が飛び出る。
火達磨となっては流石に平静を保てず、喉が枯れんばかりの絶叫が飛び出る。
「あぁああああっ!!いや……!あ゛っ……!ああああああっ!!!」
服はとっくに炭と化し、次いで餌食となるのは剥き出しとなった肌。
凹凸の無いに等しい肢体も、紫がかった髪も全て焼き潰すまで終わらない。
ましてジンガが放つのは、ギギストを始め限られた者だけが操る冥黒の力。
呪術への耐性も本物に大きく劣るシノアにとって、想像を絶する苦痛なのは間違いない。
凹凸の無いに等しい肢体も、紫がかった髪も全て焼き潰すまで終わらない。
ましてジンガが放つのは、ギギストを始め限られた者だけが操る冥黒の力。
呪術への耐性も本物に大きく劣るシノアにとって、想像を絶する苦痛なのは間違いない。
(私、は……)
終わる。
会場へ放たれた有象無象の、“やられ役”のNPCと同じく。
正規参加者を引き立て、それで出番は完全に終了。
いずれ訪れる末路だった、最後まで生き延びられると自惚れた覚えはない。
役目を終える時が来たと、言ってしまえばそれだけでしかない。
会場へ放たれた有象無象の、“やられ役”のNPCと同じく。
正規参加者を引き立て、それで出番は完全に終了。
いずれ訪れる末路だった、最後まで生き延びられると自惚れた覚えはない。
役目を終える時が来たと、言ってしまえばそれだけでしかない。
(ああ……もしも……)
生命力が急激に薄れ、声を発する気力も失う中。
最後に思ったのは、鳩田ちひろの神話を見届けられない未練じゃあなく。
最後に思ったのは、鳩田ちひろの神話を見届けられない未練じゃあなく。
――『それと話を聞く限り、貴方のお姉ちゃんは貴方のことを想っているわ。きっと』
――『安心しなさい。”柊”は黒十字が必ず治す』
――『ほんと……可愛くないなお前』
運営の指示に耳を貸さず、彼らの善意をほんの少しでも信じていたら。
この身が柊シノアの贋作であっても、何かが変わった可能性は――
この身が柊シノアの贋作であっても、何かが変わった可能性は――
「人間“ごっこ”の続きは一人でやってろ」
馳せた想いすらも切り捨てられ、悪意に満ちた声が魂を軋ませるのを最後に。
何者にもなれなかった少女は、真贋交わる舞台を降りた。
何者にもなれなかった少女は、真贋交わる舞台を降りた。
○
NPCとはいえ童女が生きたまま、火炎地獄で丸焼きにされ。
完全に意識が途絶える寸前、黒焦げの肉体は気体と化しジンガの口に吸い込まれた。
魔獣ホラーによる捕食の瞬間を目の当たりにし、平然としてられるのは。
ジンガに従う二体の死体人形のみ、他の者達は惨たらしいシノアの末路へ多少の差は有れど動揺が走った。
となれば、生じた絶好の隙を逃さぬ手はない。
完全に意識が途絶える寸前、黒焦げの肉体は気体と化しジンガの口に吸い込まれた。
魔獣ホラーによる捕食の瞬間を目の当たりにし、平然としてられるのは。
ジンガに従う二体の死体人形のみ、他の者達は惨たらしいシノアの末路へ多少の差は有れど動揺が走った。
となれば、生じた絶好の隙を逃さぬ手はない。
「イフリート・ブロウ!!」
「しまっ――きゃああああああっ!?」
「しまっ――きゃああああああっ!?」
拳型に炎の奔流を発生させ、力任せに殴り付ける。
シンプルながら抜群の破壊力に加え、近接戦闘の心得があるイドラが放つのだ。
美嘉の反応を追い越す速度で叩き込むなど、赤子の手を捻るも同然。
装甲がダメージ軽減に働きかけ、焼死や殴殺を退ける。
されど無傷で凌ぐのは流石に困難であり、軋むような痛みと共に吹っ飛ばされた。
シンプルながら抜群の破壊力に加え、近接戦闘の心得があるイドラが放つのだ。
美嘉の反応を追い越す速度で叩き込むなど、赤子の手を捻るも同然。
装甲がダメージ軽減に働きかけ、焼死や殴殺を退ける。
されど無傷で凌ぐのは流石に困難であり、軋むような痛みと共に吹っ飛ばされた。
「ぐっ……!」
我に返ったニコルもまた、反応の遅れで遂に被弾を許してしまう。
3連式のビームライフルの連射を受け、装甲越しに衝撃が襲った。
回避に動くが、今の数発でフェイズシフトのエネルギーが大きく削られている。
装備一つの威力を取っても、ブリッツガンダムを上回ると再認識せざるを得ない。
3連式のビームライフルの連射を受け、装甲越しに衝撃が襲った。
回避に動くが、今の数発でフェイズシフトのエネルギーが大きく削られている。
装備一つの威力を取っても、ブリッツガンダムを上回ると再認識せざるを得ない。
「シ、シノア、ちゃ……ぐむっ!?」
禪院家の探索時に出会い、何だかんだずっと行動を共にした女の子が。
こましゃくれた態度を完全に失って、苦悶の絶叫を上げた末に喰い殺された。
サチと流子が目の前で陵辱された時とはまた、別ベクトルの地獄絵図に。
青い顔で震えるちひろだが、魔の手は彼女をも捕える。
恐竜グリードの膂力を逃れる術は持っておらず、必死に藻掻くも無意味。
こましゃくれた態度を完全に失って、苦悶の絶叫を上げた末に喰い殺された。
サチと流子が目の前で陵辱された時とはまた、別ベクトルの地獄絵図に。
青い顔で震えるちひろだが、魔の手は彼女をも捕える。
恐竜グリードの膂力を逃れる術は持っておらず、必死に藻掻くも無意味。
「偉大なるジンガ様♡それからジンガ様に楯突くゲロカスども!あー、あとついでにアリサちゃん。今からとびっきりの光景を見せてあげる!」
マジックショーの主役になった気分で、自身へ注目を集めさせる。
片手には顔面を掴んだちひろ、もう片方の手には用途不明の紙束が。
浄水場内で手に入れた『玩具』を、使うタイミングは今を置いて他にあるまい。
片手には顔面を掴んだちひろ、もう片方の手には用途不明の紙束が。
浄水場内で手に入れた『玩具』を、使うタイミングは今を置いて他にあるまい。
「自分が神(しゅじんこう)だと思い上がったこのボケガキを、相応しい姿に変えてあげるわよ♡」
魔力を収束し水流を発生。
ウンディーネスクリームと呼ばれるこの魔法は、本来であれば水の竜巻で標的を貫くが。
今回は威力と規模を調整した上で、紙束を溶け込ませる。
何が起こるかに期待を膨らませながら、ちひろの顔面へ水を浴びせてやった。
ウンディーネスクリームと呼ばれるこの魔法は、本来であれば水の竜巻で標的を貫くが。
今回は威力と規模を調整した上で、紙束を溶け込ませる。
何が起こるかに期待を膨らませながら、ちひろの顔面へ水を浴びせてやった。
「むごほっ!?がぼっ!?」
顎を掴まれ、無理やりに口を開かせた状態なのもあり。
望まなくとも大量の水を飲んでしまい、むせた所で解放された。
急激な水分摂取が影響してか、ジェットコースターを降りた直後のように足元が覚束ない。
目に映る光景は、まるで渦巻きみたいに歪んで見えて――
望まなくとも大量の水を飲んでしまい、むせた所で解放された。
急激な水分摂取が影響してか、ジェットコースターを降りた直後のように足元が覚束ない。
目に映る光景は、まるで渦巻きみたいに歪んで見えて――
気付けばちひろは、視聴覚室に立っていた。
「――えっ!?」
見覚えがあるかないかで言ったら、勿論前者。
軽音部の活動場所であり、エアコンが無いので夏場は灼熱地獄と化す部屋で。
目の前には、数十人の生徒達がずらりと集まっている。
軽音部の活動場所であり、エアコンが無いので夏場は灼熱地獄と化す部屋で。
目の前には、数十人の生徒達がずらりと集まっている。
まさかと思い周囲に視線をやれば案の定、知ってる顔が三人。
手には楽器を持ち、自分の所にはマイクスタンド。
間違いない、これは苦い経験を味わった文化祭でのライブ。
演奏スタートまで一刻の猶予もない中、自分の頭は緊張とプレッシャーで真っ白なまま。
桃や厘に絶賛された歌声をロクに発せられず、後悔を抱えて一日を終える。
手には楽器を持ち、自分の所にはマイクスタンド。
間違いない、これは苦い経験を味わった文化祭でのライブ。
演奏スタートまで一刻の猶予もない中、自分の頭は緊張とプレッシャーで真っ白なまま。
桃や厘に絶賛された歌声をロクに発せられず、後悔を抱えて一日を終える。
「ううん、はとっちなら出来るよ」
聞こえる筈のない声に、ハッと顔を上げれば。
泣きぼくろに素朴な顔立ちの少女が、生徒達に混じって自分を見ていた。
泣きぼくろに素朴な顔立ちの少女が、生徒達に混じって自分を見ていた。
「サ、サッちゃん!?ど、どうしてここに……」
「来てるのは私だけじゃないよ」
「来てるのは私だけじゃないよ」
どういう意味かと聞き返すまでもなく、次々知ってる顔が現れた。
不良少女(レディース)のような者。
正義のヒロインを思わせる恰好の者。
怪物染みた、しかし優し気な瞳の者。
正義のヒロインを思わせる恰好の者。
怪物染みた、しかし優し気な瞳の者。
誰もがこの場にいることが不自然なれど、違和感は欠片も浮かばず。
自分を応援しに駆け付けてくれた彼女達への、込み上げる想いに目頭が熱くなる。
あれだけ息苦しく、逃げ出したくてしょうがなかったのに。
今は思う存分、自身の歌声を届かせたくてたまらない。
自分を応援しに駆け付けてくれた彼女達への、込み上げる想いに目頭が熱くなる。
あれだけ息苦しく、逃げ出したくてしょうがなかったのに。
今は思う存分、自身の歌声を届かせたくてたまらない。
「頑張って、はとっち。私に勇気をくれたはとっちなら、絶対に上手くいくって信じてる」
「――っ、うん……!」
「――っ、うん……!」
大切な友達にここまで言わせたなら、後ろ向きな態度はもう終わりだ。
軽音部のメンバーと頷き合い、いざライブ本番スタート。
中学時代のトラウマをも振り払って、心に従い歌声を響かせる。
驚きの表情が一転、集まった者達は大興奮で声援を送った。
軽音部のメンバーと頷き合い、いざライブ本番スタート。
中学時代のトラウマをも振り払って、心に従い歌声を響かせる。
驚きの表情が一転、集まった者達は大興奮で声援を送った。
(ああどうしよう、私今――)
仲間達に見守られ、魂の叫びを思う存分届かせて。
それが大勢に受け入れられてもらえるなんて、こんなの――
それが大勢に受け入れられてもらえるなんて、こんなの――
「ひゃばばばばばぁ~~~~~っ!!!し゛あ゛わ゛せ゛た゛よ゛ぉ゛お゛お゛ん゛!!!!」
余りにも異様な光景に、美嘉もニコルも喉を引き攣らせるしか出来なかった。
ふらつく様子が一変、顔を上げたと思いきや急にラブギターロッドで演奏を開始。
と言ってもマトモな曲なんかじゃない、ただメチャクチャに弦を掻き鳴らし。
騒音を発生させながら、奇声を発し続けている。
ふらつく様子が一変、顔を上げたと思いきや急にラブギターロッドで演奏を開始。
と言ってもマトモな曲なんかじゃない、ただメチャクチャに弦を掻き鳴らし。
騒音を発生させながら、奇声を発し続けている。
焦燥を貼り付けた顔は、涙と涎に鼻水まで垂らしており。
喜色満面を通り越し、おぞましい程の狂気に満ちた笑みで喚き散らす。
喜色満面を通り越し、おぞましい程の狂気に満ちた笑みで喚き散らす。
天国への回数券(ヘブンズ・クーポン)。
極道の収入源たる麻薬(ヤク)であり、少量でも廃人化は免れない多幸感と中毒性を持つ。
嘗ては怪獣医(ドクター・モンスター)率いる救済(すく)いなき医師団が、東京全土の麻薬汚染(バイオテロ)に用いたが。
殺し合いにおいては浄水場に、施設限定アイテムで設置。
チェイス達が発見した際には手を付けなかった麻薬を、使える玩具と見なしイドラが入手してあったのだ。
魔力で水を生成するや溶かし込み、ちひろへ摂取させた結果は見ての通り。
極道の収入源たる麻薬(ヤク)であり、少量でも廃人化は免れない多幸感と中毒性を持つ。
嘗ては怪獣医(ドクター・モンスター)率いる救済(すく)いなき医師団が、東京全土の麻薬汚染(バイオテロ)に用いたが。
殺し合いにおいては浄水場に、施設限定アイテムで設置。
チェイス達が発見した際には手を付けなかった麻薬を、使える玩具と見なしイドラが入手してあったのだ。
魔力で水を生成するや溶かし込み、ちひろへ摂取させた結果は見ての通り。
「なんてことを……!」
詳細な原因までもは分からずとも、ちひろが壊されたのは誰の目にも明らか。
人を人とは思えぬ悪行に、ニコルも憤りを隠せない。
敵と味方の区別どころか、現状の理解すら不可能。
様子を見るに幻覚症状へ陥ってると思われるちひろを、当然放っては置けない。
急ぎ駆け付けんとするが、ダブルオーライザーがすかさず妨害に出た。
人を人とは思えぬ悪行に、ニコルも憤りを隠せない。
敵と味方の区別どころか、現状の理解すら不可能。
様子を見るに幻覚症状へ陥ってると思われるちひろを、当然放っては置けない。
急ぎ駆け付けんとするが、ダブルオーライザーがすかさず妨害に出た。
「邪魔だ……!」
この期に及んでいらぬ真似に出る敵への怒りと、ちひろの危機を前に焦りが生じ。
令呪の使用を決断、一画消失と引き換えに力が漲る。
大剣を先程よりも軽やかに躱し、ビームライフルで照準を付けた。
動体視力も強化の恩恵に与ったらしく、一層の正確無比な射撃で狙い撃つ。
相も変わらずの機動性で向こうは回避へ移るが、今のニコルなら目で追うのも不可能じゃない。
令呪の使用を決断、一画消失と引き換えに力が漲る。
大剣を先程よりも軽やかに躱し、ビームライフルで照準を付けた。
動体視力も強化の恩恵に与ったらしく、一層の正確無比な射撃で狙い撃つ。
相も変わらずの機動性で向こうは回避へ移るが、今のニコルなら目で追うのも不可能じゃない。
「そこだ……!」
どの位置へ躱すか、動きから予測を立て読み当てる。
そう来るのが分かっていたとばかりに、ランサーダートを発射。
貫通力に秀でたロケット推進弾が、ダブルオーライザーへ迫り、
そう来るのが分かっていたとばかりに、ランサーダートを発射。
貫通力に秀でたロケット推進弾が、ダブルオーライザーへ迫り、
「あは……♪」
心底楽し気な笑い声を、ブリッツガンダムのセンサーが拾う。
瞬間、猛烈な悪寒がニコルの背を駆け巡った。
もしや、もしや自分は敵を追い詰めていたのではなく。
掌で踊らされてたに過ぎないのかと、思った所でもう手遅れ。
瞬間、猛烈な悪寒がニコルの背を駆け巡った。
もしや、もしや自分は敵を追い詰めていたのではなく。
掌で踊らされてたに過ぎないのかと、思った所でもう手遅れ。
杭状の弾に貫かれる寸前で、ダブルオーライザーが消失。
何処へ消えたのかを探す余裕は、視覚センサーへ映り込む光景を前に存在しない。
瞬間的なGN粒子の大量解放に伴う、機体そのものの粒子化と当然ニコルに分かる筈もなし。
標的を失ったランサーダートが止まる気配はなく、そのまま突き進んでいき、
何処へ消えたのかを探す余裕は、視覚センサーへ映り込む光景を前に存在しない。
瞬間的なGN粒子の大量解放に伴う、機体そのものの粒子化と当然ニコルに分かる筈もなし。
標的を失ったランサーダートが止まる気配はなく、そのまま突き進んでいき、
「だ――駄目だぁあああああああああああああっ!!!」
ニコルの絶叫虚しく、杭はちひろの右腕に命中。
握り締めたラブギターロッド諸共、引き千切られた部位が宙を舞う。
故意にやったのでなくとも、よりにもよって味方の肉体欠損を引き起こし。
呆然と立ち尽くすニコルへ、恨みをぶつける様子は見られない。
握り締めたラブギターロッド諸共、引き千切られた部位が宙を舞う。
故意にやったのでなくとも、よりにもよって味方の肉体欠損を引き起こし。
呆然と立ち尽くすニコルへ、恨みをぶつける様子は見られない。
「あびゃはははは!!!い゛た゛い゛!痛いけど幸せらんらよぉおおおおおっ!!!」
天国への回数券(ヘブンズ・クーポン)が齎す効果は、肉体的な激痛でも正気に戻せない。
地面をのたうち回る度、欠損箇所からあっちこっちに血が飛び散る。
赤いインクをばら撒くように、床を汚す間もずっと。
ちひろは顔中を自身の体液で濡らし、泣き笑いを続けていた。
地面をのたうち回る度、欠損箇所からあっちこっちに血が飛び散る。
赤いインクをばら撒くように、床を汚す間もずっと。
ちひろは顔中を自身の体液で濡らし、泣き笑いを続けていた。
「とまあこんな感じで、見事道化に生まれ変わりました~♡さっ、それじゃあショーもそろそろお開きってことで」
己が作り出した地獄絵図を、さも愉快気に眺め。
おもむろにちひろを持ち上げるや、顔面を挟み込むように手を置き。
おもむろにちひろを持ち上げるや、顔面を挟み込むように手を置き。
「これ以上、きったねぇ声をジンガ様に聞かせるんじゃないわよ」
真っ二つに引き裂いた。
「ぎゃばっ」
頭頂部から股まで、二つに断たれる。
右腕を失った際の比でない出血が、あっという間に赤い水溜りを生み出し。
ビチャビチャと汚らしい音を立てながら、臓物が床へ零れ落ちる。
空き缶を放り投げる気安さで、物言わぬ肉袋を手放す。
神とは到底呼べぬ、かといって普通と言うには陰惨極まる末路だった。
右腕を失った際の比でない出血が、あっという間に赤い水溜りを生み出し。
ビチャビチャと汚らしい音を立てながら、臓物が床へ零れ落ちる。
空き缶を放り投げる気安さで、物言わぬ肉袋を手放す。
神とは到底呼べぬ、かといって普通と言うには陰惨極まる末路だった。
「チ、ヒロ……僕、は……」
この地で一番初めに出会った仲間の、凄惨と言う他ない死に様に。
彼女を助けるどころか余計に苦しませた、己の過ちに。
さしもの軍人のニコルといえども、動揺を抑えろというのは酷であり。
わなわなと震え、今が交戦中である事実すら思考から剥がれ掛け、
彼女を助けるどころか余計に苦しませた、己の過ちに。
さしもの軍人のニコルといえども、動揺を抑えろというのは酷であり。
わなわなと震え、今が交戦中である事実すら思考から剥がれ掛け、
「あっ、い、良いんですよね?じ、じっとしてる、そっちが悪いんですし、こ、攻撃しちゃって、良いですよね?」
「っ!?」
「っ!?」
我に返った時には遅過ぎた。
回避、防御、迎撃。
複数の選択肢を選び取る暇すら、与えられず。
高出力のビームで刀身全体をコーティングした、GNソードⅢを一閃。
フェイズシフト装甲を紙切れ同然に焼き斬り、数秒後には激痛が襲い来る。
回避、防御、迎撃。
複数の選択肢を選び取る暇すら、与えられず。
高出力のビームで刀身全体をコーティングした、GNソードⅢを一閃。
フェイズシフト装甲を紙切れ同然に焼き斬り、数秒後には激痛が襲い来る。
「がっぁあああああああああああああっ!!!」
まともに立っていられず崩れ落ちた理由は、膝から下を断たれが故。
ビームサーベルで斬られた為に傷口は焼かれ、出血は防いでいるも喜べよう筈がなく。
この世に産声を上げた時から存在し、ニコルと常に共にあった両足はどこにもない。
精神的なショックに打ちのめされる、といった展開を律儀に待たず。
ダブルオーライザーが胸部を踏みつけ、ビームライフルの銃口を至近距離で押し付けた。
ビームサーベルで斬られた為に傷口は焼かれ、出血は防いでいるも喜べよう筈がなく。
この世に産声を上げた時から存在し、ニコルと常に共にあった両足はどこにもない。
精神的なショックに打ちのめされる、といった展開を律儀に待たず。
ダブルオーライザーが胸部を踏みつけ、ビームライフルの銃口を至近距離で押し付けた。
「わ、私みたいな女に負けて、悔しい、ですかぁ?ふひっ、ふへへへぁ……こ、これですよこれ!こういうシチュが、私、大好きなんですよねぇ……!」
トリガーを幾度も引き、躱す術もないニコルへ全弾命中。
装甲が削られる度に痛みへ呻き、反対に亜里紗は恍惚の表情へ。
フルフェイスの頭部の下では、口の端から涎を垂らし。
昏い喜びを露わに、ニコルを痛め付ける。
やがて反応が鈍くなった所を蹴り飛ばせば、起動鍵の装着も解除。
微かに身動ぎするだけの姿は、虫の息と呼ぶに相応しい。
装甲が削られる度に痛みへ呻き、反対に亜里紗は恍惚の表情へ。
フルフェイスの頭部の下では、口の端から涎を垂らし。
昏い喜びを露わに、ニコルを痛め付ける。
やがて反応が鈍くなった所を蹴り飛ばせば、起動鍵の装着も解除。
微かに身動ぎするだけの姿は、虫の息と呼ぶに相応しい。
「そんな……こんな、のって……!」
強烈な殴打を受けた箇所を押さえ、どうにか立ち上がるも。
美嘉の眼前に広がるのは、絶望的以外に何も言葉が見付からない。
善が勝って悪は負ける、使い古された物語の鉄則は通用しないことくらい。
とっくに分かってはいても、受け入れられるかは別だ。
美嘉の眼前に広がるのは、絶望的以外に何も言葉が見付からない。
善が勝って悪は負ける、使い古された物語の鉄則は通用しないことくらい。
とっくに分かってはいても、受け入れられるかは別だ。
「ジンガ様ぁ♡私なりに演出してみたけど、楽しんで頂けましたか?もしそうなら、イドラにご褒美が欲しいなぁなんて♡♡♡」
「はうっ……わ、私は、お、恐れ多過ぎて……ジンガ様にお仕えできるだけで、こ、光栄なのに……」
「はうっ……わ、私は、お、恐れ多過ぎて……ジンガ様にお仕えできるだけで、こ、光栄なのに……」
歯噛みする美嘉を余所に、デスマスク達は造物主へここぞとばかりに擦り寄る。
絆の戦士へ恋心を抱いた魔導士と、同一人物とは思えぬ淫靡さで媚び諂うイドラ。
気弱な態度でぼそぼそ呟き、なれど主への絶対的な忠誠を向ける亜里紗。
配下達の働きを受けて当のジンガは、
絆の戦士へ恋心を抱いた魔導士と、同一人物とは思えぬ淫靡さで媚び諂うイドラ。
気弱な態度でぼそぼそ呟き、なれど主への絶対的な忠誠を向ける亜里紗。
配下達の働きを受けて当のジンガは、
「…………ようやくお目覚めか」
死屍累々の戦場にも、死体人形達にも視線を寄越さず。
刃の如き瞳が、一点を捉え離さない。
今しがたの惨状すら前座に過ぎず、本番はここからとばかりに笑みを深める。
思っていたのと異なる主の反応へ、配下達も困惑し口を開く。
刃の如き瞳が、一点を捉え離さない。
今しがたの惨状すら前座に過ぎず、本番はここからとばかりに笑みを深める。
思っていたのと異なる主の反応へ、配下達も困惑し口を開く。
疑問を言葉に出す正にその時だ、イドラの顔面に拳が突き刺さったのは。
「ごびゅあっ!!!!??!」
恐竜グリードの重量もなんのその、紙風船も同然に宙を泳ぐ。
女の声とは思えぬ悲鳴を上げ、殴り飛ばされるイドラへ。
呆気に取られた亜里紗だが、視覚センサーへ映り込む敵に慌てて戦闘態勢を取る。
女の声とは思えぬ悲鳴を上げ、殴り飛ばされるイドラへ。
呆気に取られた亜里紗だが、視覚センサーへ映り込む敵に慌てて戦闘態勢を取る。
「ひっ、ひぃ~~~~っ!?は、速過ぎなんですけどぉっ!?」
ダブルオーライザーの搭載機能が全力でアシストに働き、抜群の射撃能力を発揮出来るにも関わらず。
何度熱線を放っても、掠めることすらしない。
それ以前にダブルオーライザーでさえ、明確に敵の姿を認識出来ない。
辛うじて捉えた『青い影』が、気付けば眼前にまで迫りつつあった。
何度熱線を放っても、掠めることすらしない。
それ以前にダブルオーライザーでさえ、明確に敵の姿を認識出来ない。
辛うじて捉えた『青い影』が、気付けば眼前にまで迫りつつあった。
懐に潜り込まれるとは即ち、自身の剣の間合いに敵自ら飛び込んだ事に他ならないが。
GNソードⅢを変形させるのを追い抜き、向こうが得物を引き抜く。
腕が掻き消えたとしか思えない速さで、絶えず剣が振り下ろされる。
GNソードⅢを変形させるのを追い抜き、向こうが得物を引き抜く。
腕が掻き消えたとしか思えない速さで、絶えず剣が振り下ろされる。
「ぎょひぃいいいいいいいっ!!??!」
単なる物理攻撃じゃない、刀身を覆うエネルギーの正体が『気』と呼ばれる事実も知る由もなく。
滅多切りの末に斬り飛ばされ、イドラと同じくとんだ無様を晒す。
滅多切りの末に斬り飛ばされ、イドラと同じくとんだ無様を晒す。
「よう、随分遅い目覚めだな?目覚ましアラーム代わりに、もっと悲鳴を聞かせてやれば良かったか?」
配下達を叩きのめされた怒りは、そこになく。
新品の玩具を目にしたのにも似た、弾む口調で挑発をぶつける。
最初に会った時や、映像越しに姿を見た時以上の傷を負い。
だが弱者とは決して呼ばぬ存在感で以て、戦場に現れた最後の挑戦者。
新品の玩具を目にしたのにも似た、弾む口調で挑発をぶつける。
最初に会った時や、映像越しに姿を見た時以上の傷を負い。
だが弱者とは決して呼ばぬ存在感で以て、戦場に現れた最後の挑戦者。
「…………っ!」
神経を逆撫でする軽口へ、トランクスは返す言葉を持たない。
己が瞳に飛び込む光景が、揺るがぬ事実を突き付ける。
またしても遅過ぎた、自分が間に合わなかったせいで命を取り零したのだと。
この期に及んでも、肝心な時に戦場へ立っていない自身が恨めしくて仕方ない。
どこまで遅れれば気が済むのかと、延々責め続けたい衝動へ駆られる。
己が瞳に飛び込む光景が、揺るがぬ事実を突き付ける。
またしても遅過ぎた、自分が間に合わなかったせいで命を取り零したのだと。
この期に及んでも、肝心な時に戦場へ立っていない自身が恨めしくて仕方ない。
どこまで遅れれば気が済むのかと、延々責め続けたい衝動へ駆られる。
なれど、自責の念に沈み込んで助けられる命は一つも無し。
無力感と後悔に苛まれ、本当に取り返しが付かなくなりどうするのか。
我が身を蝕む陰我は既に、悪逆皇帝との戦闘時に全て打ち消した。
今更迷いで己を縛ると思ったら、大間違いだ。
無力感と後悔に苛まれ、本当に取り返しが付かなくなりどうするのか。
我が身を蝕む陰我は既に、悪逆皇帝との戦闘時に全て打ち消した。
今更迷いで己を縛ると思ったら、大間違いだ。
「……君は急いで逃げるんだ」
背後を見ぬまま、唯一二本足で立つ少女に告げ。
睨み付ける先には、己を破滅へ誘った魔獣ホラー。
何故だとか、どうしてだとか。
理由を深く聞く必要はない、今や唯一残った得物を構えるだけで良い。
睨み付ける先には、己を破滅へ誘った魔獣ホラー。
何故だとか、どうしてだとか。
理由を深く聞く必要はない、今や唯一残った得物を構えるだけで良い。
「おしゃべりに興じる気もないってか?そんなんじゃあ女は付いて来ないだろ」
軽口を叩く軽薄さと裏腹に、ジンガが纏う戦意も増大。
己を射抜くその目が、両手で握った勇者の剣が、言葉以上に明確に伝えて来る。
お前を必ずや斬る、と。
そんな風に剥き出しの、決して曲がらぬ名刀の如し意思を宿されたならば。
己を射抜くその目が、両手で握った勇者の剣が、言葉以上に明確に伝えて来る。
お前を必ずや斬る、と。
そんな風に剥き出しの、決して曲がらぬ名刀の如し意思を宿されたならば。
「相手をしない、なんて訳にはいかねぇよなぁ!」
顔の皮を剥ぐかの動きで、翳した手を大きく薙ぐ。
異性を惹き付け堕とす、妖艶な男の姿は消え失せ。
人の魂を弄ぶ紅い鬼、魔獣ホラーが現れる。
異性を惹き付け堕とす、妖艶な男の姿は消え失せ。
人の魂を弄ぶ紅い鬼、魔獣ホラーが現れる。
「これ以上、誰も殺させはしない!!」
「なら精々守ってみろ!その為の英雄様なんだからな!」
「なら精々守ってみろ!その為の英雄様なんだからな!」
床が砕けんばかりに踏みしめ斬り、ロトの剣と魔戒剣が激突。
疾走の勢いを味方に付け、ジンガを後方へと押し出せば壁を突き破り外へ。
美嘉から少しでも引き離せれば上出来だ、後は彼女が急ぎ戦場を離れるのみ。
疾走の勢いを味方に付け、ジンガを後方へと押し出せば壁を突き破り外へ。
美嘉から少しでも引き離せれば上出来だ、後は彼女が急ぎ戦場を離れるのみ。
残された美嘉本人にも、トランクスの狙いは理解出来た。
ぼんやり突っ立っていないで、言われた通り逃げれば良い。
状況が状況だ、誰に攻められるものでもあるまい。
ぼんやり突っ立っていないで、言われた通り逃げれば良い。
状況が状況だ、誰に攻められるものでもあるまい。
「私、は……」
しかし動かない、逃げる為の足を動かせない。
頭の中で絶えず問いかけるは、他でもない美嘉自身の声。
それで良いのか、それが本当に納得出来る選択なのか。
己がやるべきことだと、自信を持って言えるのか。
頭の中で絶えず問いかけるは、他でもない美嘉自身の声。
それで良いのか、それが本当に納得出来る選択なのか。
己がやるべきことだと、自信を持って言えるのか。
「人間、時には悩んで答えを出すのも大事だけどさ。時間はボクらに味方してくれる程、優しくないみたいだよ?」
声のした方へ振り返り、美嘉が息を呑んだのも無理はない。
失った片腕と胴体部分から、夥しい量の血を流す姿を見れば。
何故まだ生きていられるのだろうかと、誰しも共通の疑問を浮かべるに違いない。
失った片腕と胴体部分から、夥しい量の血を流す姿を見れば。
何故まだ生きていられるのだろうかと、誰しも共通の疑問を浮かべるに違いない。
「ライダーくん……」
「大体の事情は聞こえてたよ。トランクスの言う通り、逃げるなら急いだほうが良い。足止めなら引き受けるからさ」
「大体の事情は聞こえてたよ。トランクスの言う通り、逃げるなら急いだほうが良い。足止めなら引き受けるからさ」
単独行動のスキルを持つアストルフォは、マスターが死んでも即座の消滅を回避出来る。
とはいえジンガの刃は霊核を切り裂き、致命的な傷を与えた。
長く持たないとアストルフォ自身が、誰よりも理解している。
現界が可能な時間は僅かなれど、美嘉が全力で逃げ延びるアシストくらいは不可能に非ず。
とはいえジンガの刃は霊核を切り裂き、致命的な傷を与えた。
長く持たないとアストルフォ自身が、誰よりも理解している。
現界が可能な時間は僅かなれど、美嘉が全力で逃げ延びるアシストくらいは不可能に非ず。
その上で、眼前の迷える少女をしかと見据える。
彼女が後悔を抱えたまま、早まった選択に押し潰されない為に。
彼女が後悔を抱えたまま、早まった選択に押し潰されない為に。
「だから聞かせて欲しいんだ。キミ自身はどうしたいんだい?」
――『君が強くなる理由は何だい?』
問い質すのでも、答えを急かすのでもない。
“6人目”の戦士たる彼女と同じ、ありのままの本心を口に出して良いのだと。
優しい問いかけを受け、燻っていた迷いは驚く程綺麗に溶けて消える。
憎悪に身を委ね、貪欲に力を求めるんじゃあない。
亀井美嘉が何故力を欲したかの、原点(オリジン)に再び火が灯った。
“6人目”の戦士たる彼女と同じ、ありのままの本心を口に出して良いのだと。
優しい問いかけを受け、燻っていた迷いは驚く程綺麗に溶けて消える。
憎悪に身を委ね、貪欲に力を求めるんじゃあない。
亀井美嘉が何故力を欲したかの、原点(オリジン)に再び火が灯った。
「私は……逃げたくない。大事な人達に、もう死んで欲しくないから……!」
守ってもらってばかりで、助けられなかった。
今度こそはと思っても、その度に嘲笑れるように喪い続けて来た。
己の無力さが、恨めしくて仕方ない。
今度こそはと思っても、その度に嘲笑れるように喪い続けて来た。
己の無力さが、恨めしくて仕方ない。
それでも、抱いた決意は嘘なんかじゃない。
否定をぶつけられ悪意に翻弄されようと、屈したくはない。
居場所をくれた友達を、一緒に戦ってくれた仲間達を。
守れる自分になりたいと、そう誓った美嘉自身を裏切りたくないから。
否定をぶつけられ悪意に翻弄されようと、屈したくはない。
居場所をくれた友達を、一緒に戦ってくれた仲間達を。
守れる自分になりたいと、そう誓った美嘉自身を裏切りたくないから。
「……そっか。なら、ボクがやるべきことも決まったね」
声を震わせながらも、強要されたんじゃあなく己の言葉で伝えた美嘉を。
どこまでも穏やかな瞳で見つめ、騎士もこの地で為すべき最後の使命を果たす。
マスターを守れず、ちひろの人生をこんな形で終わらせてしまい悔いはある。
だが今、目の前で絶望的な現実へ藻掻く少女に。
やれることが残っているなら――
どこまでも穏やかな瞳で見つめ、騎士もこの地で為すべき最後の使命を果たす。
マスターを守れず、ちひろの人生をこんな形で終わらせてしまい悔いはある。
だが今、目の前で絶望的な現実へ藻掻く少女に。
やれることが残っているなら――
「キミの願い、確かに聞き届けたよ」
| 222:鉄華Ⅰ:醜い世界の欠片一つ | 投下順 | 222:鉄華Ⅲ:HERO ~希望の歌~ |
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| ジンガ |