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  • 真贋バトルロワイヤル
  • 厄災ばかりの攻略未来 ―穢れし月が空を満たし―

真贋バトルロワイヤル

厄災ばかりの攻略未来 ―穢れし月が空を満たし―

最終更新:2025年07月16日 09:04

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だれでも歓迎! 編集
◇◆◇

 「何か見てるわね。機械型のNPCってことは、ルルーシュの下僕かしら?」

 埃の舞う租界の街並みを空から見下ろすノワルの視界に、その合間を動く存在が映り込む。
 ランチャーストライカー装備の105ダガー。ルルーシュがノワルの偵察のためによこしたNPCは、廃墟の物陰に隠れながらごてごてしい砲身を通し闇檻の魔女を『観測』している。
 壊すことなど造作もない。装備ごと『闇檻』で包み込むこんでも、秋山小兵衛にやったように闇檻で削り殺すしてもいいし。他の魔法を使ったっていいのだ。
 ましてやノワルは、マイ=ラッセルハートの奸計もありルルーシュを侮るような真似をしていない。
 それでも105ダガーに攻撃しない理由は、ごく単純。
 そんな余裕が今の彼女には存在しないのだ。

「よそ見をしている余裕があるのか?」 
 浮遊しているはずのノワルに、背後から声が投げかけられる。
 急いで距離を取るノワルに対し、深々と被ったローブで顔を隠した女は、指示を読み上げるかのように無感情に呟いた。

「『劣化複製(デッドコピー):迷宮女王(クイーンラビリンス)』そして『劣化複製(デッドコピー):嚮導老君(グレートガイダンス)』」
 光環(ヘイロー)を浮かべた女が指を鳴らすと、眼下の廃ビルがバターを切るようにカッティングされ、2mほどの無数の立方体となって宙に浮かび上がる。
 キャルやシェフィの世界でレジェンド・オブ・アストルムを生み出した七人の天才が一人、秘密結社の長が有する権能『オブジェクト変更』。
 女――死告邪眼のザラサリキエルは、権能によって浮かび上がった立方体の上を駆け抜けスコーピオンEVO3の引き金を引いた。
 同じく七人の天才が1人、エルフの長老の権能を持って”進化”させた銃撃は先ほどノワルの使い魔を粉々に撃ち滅ぼした。その威力はノワルを持っても警戒に値するレベルだ。
 空中に散らばる立方体の合間を縫うように飛び交い、ノワルは銃撃を続ける女に視線を落とす。
 張り付いたような笑みからは、余裕や慢心は消えていた。

「またその攻撃ね。芸の無い銃撃で本気で私を倒すつもり?」
「当然だ。私はお前を殺すための五道化だからな。
 言っておくが、得意の『闇檻』は使えんぞ。」
 ローブの奥でザラサリキエルの目が青く光っる。
 淡い光はザラサリキエルを中心に球状の結界を作り出し、光を浴びザラサリキエルの光環(ヘイロー)が掻き消える。異能殺しの領域。
 105ダガー越しに青い光を見たルルーシュやロロならば、それがギアスキャンセラーによるものだと気づいただろう。

「貴様を封じるために与えられたこの眼がある限り、下らない嗜虐趣味は楽しめないな。」
 ギアスキャンセラーを媒体にしたザラサリキエルの権能は、ギアスの性質上他者に干渉・変質させる異能を悉く消しさるものであるが。
 その仮想敵ともいえるものが、ノワルの代名詞ともいえる拘束魔法『闇檻』だ。
 この会場でも猛威を振るい、幾人もの淑女に牙をむいた力がこの光の中では無力と化す。

「封じる?何を言っているのかしら。
『闇檻』を使えなくした程度で私の天敵を気取るなんて、ナメすぎじゃない?」
 その光の只中に居て、闇檻の魔女の余裕は崩れない。
 キヴォトス人の銃撃スキルを十全に継承しているザラサリキエルの弾幕に、弾切れの隙も技量不足による誤射もない。
 常人ならば何度死んだか分からない弾幕をよそに、弾丸より早く宙を舞いながら、ノワルの手には光弾が生成される。
 魔力を溜め、撃ちだす。純粋な火力と手数がものをいう極めて基礎的な攻防の熟練度。
 そんなシンプルな攻撃を必要とする戦闘を、ノワルは既に経験している。

「本気で私を殺すというのなら、結界の効果は『闇檻の封印』じゃなくて『魔力の使用禁止』にすべきだったわね。」
 言葉のする方にザラサリキエルが向き直り、引き金を引く。
 1秒にも満たない早業だが、ノワルが魔法を撃ちだすのはそれよりずっと速いのだ。

「シャインレイン」
 ノワルを中心に横殴りに降り注ぐ、スコールがごとき細い光がザラサリキエルに直撃する。
 アルジュナ・オルタとの戦い同様遊びを抜きにした一撃だが、戦いの傷もあり全開とは言えない。
 アルジュナ・オルタに降り注いだ集中豪雨と比しても、賢者の石の強化を含め威力はせいぜいが7,8割。
 大半の参加者なら瞬時に蒸発させかねないが、対ノワル用の五道化であるザラサリキエルなら全力で防御すれば防げるレベルの攻撃である。――普段ならば。

「まあ、この結界を展開している今のアナタじゃあ、耐えきるなんて無理でしょうけど。」
「貴様……気づいていたのか!」
 光の豪雨の中わずかに聞こえたノワルの言葉に、ザラサリキエルは忌々し気に舌打ちで返す。
 ザラサリキエルのギアスキャンセラーの有効範囲には、ザラサリキエル自身も含まれる。
 その対象は七冠(セブンクラウンズ)のスキルだけでない、キヴォトス人の肉体に宿る神秘の効果も低減しザラサリキエルの防御力までも大幅に低下する弱点がある。
 ヘイローが消えてしまったことは必然とはいえ、ノワルにその事実を感づかせる結果となった。

「『劣化複製(デッドコピー):迷宮女王(クイーンラビリンス)』!」
 とっさにギアスキャンセラーを解除し、浮遊するコンクリートブロックを重ね合わせ防御に集中。
 だが、その媒体は租界にある建造物だ。その程度で防げるほど。災害の名は甘くはない。
 鉄球のような密度を誇る純白の光がコンクリートの立方体を貫通しザラサリキエルのローブを焼き切っていく。
 立ち上る煙を次の光弾か消し飛ばす光の災害。
 ノワルが魔法を解く頃には、コンクリートもローブもその全てが砂粒と成り果てていた。
 人影の見えない煙にあの程度で死んだなら拍子抜けだが、そんなノワルの考えは足元から広がる青い光が打ち消した。

「ワープの固有魔法も持っているなんて、中々多彩じゃない。」
「『劣化複製(デッドコピー):跳躍王(キングリープ)』。
 流石に一筋縄ではいかないか。闇檻の魔女。」
 ノワルの足元、荒廃した交差点の中央からザラサリキエルはノワルを見上げた。
 その姿は紫紺の鎧に包まれている。素顔は見えない中、鎧の奥で青い光が輝いていることをノワルは見逃していない。

「かわいい顔は見せてくれないのね。
 その鎧も何かのアイテム……かと思ったけど、何の力も感じないわね。」
「残念ながら、エケラレンキスの帝具の1つを迷宮女王の力で模しただけの張りぼてだ。
 だが、貴様のような変態に面を晒す醜態を避けるにはちょうどいい。」
 ザラサリキエルの紫紺の鎧。『修羅化身グランシャリオ』と呼ばれる帝具を模した装甲は、本物のようなブースターもなければ自己修復も出来ない。
 鎧としての力も本物には数段劣る。ノワル相手では紙切れと変わらない。
 そんなものを身に着けてまで顔を隠すザラサリキエルの態度は、ノワルにとってむしろいじらしく思えた。

「醜態ねぇ。
 そういうことなら今の状態がみみっちくないかしら。
 私の天敵みたいな雰囲気だしていたけど、あの黒い男の方がよっぽど強かったわよ。」  
「……成程。黒き最後の神との交戦を済ませていたのか。どうりで油断も隙も無いわけだ。」
 納得したように頷く。
 ザラサリキエルの知識ではノワルと言う女は誰彼構わず本気を出すような女ではないはずだった。
 闇檻をギアスキャンセラーで封じ、動きが乱れた彼女なら制することは容易だったろう。

 しかしノワルがこの会場で戦った相手は幸か不幸か一筋縄ではいかない猛者が多い。
 マジアベーゼやアルカイザーを初めとする戦士たちの戦いで手傷を追った。
 己と同等以上の怪物であるアルジュナ・オルタとの交戦で大幅な消耗も経てここに居る。
 闇檻封じはノワルと戦う上で必須になる要素ではあるが、それだけで攻略できるほど13の災害は生易しくない。

「認識を改めよう。貴様は強い。私の想定より遥かにな。」
 その事実を前にザラサリキエルが抱いたのは、憤慨でも恐怖でもない。
 あえて言葉にするなら、敬意だった。
 想定外の言葉に思わずノワルも目を丸くする。

「鴨が葱を背負って来ただの言っていた割には、随分素直になったじゃない。」
「客観的な判断だ。
 闇檻を抜きにしても貴様の出力は百地希留耶やトレスマジアどもを優に超える。
 どれだけ枷を付けようと、この会場で貴様以上の魔導士は存在せず。ただ対策しただけで御せるトラブルではない。
 忌み名通りの災害に他ならない。」

 お世辞でも何でもない。純粋かつ公正な評価としてノワルは強い。
 数多の制約どころかトレードマークの闇檻を封じられながらも、なお一線級の強さを誇る。
 その怪物を前にして、ザラサリキエルの対応はあまりにお粗末だった。
 ザラサリキエルは茅場謹製の高性能なNPCだ。当然反省も出来た。

「今だから言うが、私はここで貴様を殺すつもりは無かった。」
 脈絡のない言葉に、ノワルの頭にはクエスチョンマークが浮かぶ。

「言い訳かしら?そういうのはミルクサーバーになってからいくらでも聞いてあげるわ。」
「そうではない。
 運営として、貴様のような優秀な殺戮者(マーダー)をこんな序盤で失っては損が大きい。
 減ったとはいえ有象無象の参加者(コマ)は100を超えている、その中にはクルーゼ様がねじ込んだバケモノもウヨウヨいる。
 貴様のような怪物には、まだまだ参加者を減らしてもらわねばならん。
 故にここでは令呪の一画でも使わせて、『庭園』から遠ざけられればいいと思っていた。」
 それは参加者として『生存』や『殺戮』を考える者たちと異なる、運営側からの言葉。
 都合のいいレベルで消耗させ、都合のいいように動いてもらう。そんな考えが透けて見えた。
 不快感を入り混ぜてノワルは返す。

「何が言いたいの?」 
「貴様を相手にするならば、殺すつもりでちょうどいい。
 故にここからは、殺すつもりで相手をしよう。」
「そういうセリフは『青い目』を止めてからにしなさいよね。」
 会話の最中もギアスキャンセラーは起動していた。
 ノワルは闇檻を使えない。正確には使うと同時に解除され、誰も縛ることができない。
 檻に対するマスターキーだが、その間は他の異能をザラサリキエルは使えない。ノワルが気づいていることはザラサリキエルも知っている。
 だというのに、ザラサリキエルの言葉にはどこか余裕がある。
 勝って当然と言った傲慢な態度は鳴りを潜めても、己が負ける可能性を全く考えていない。そんな態度だ。

「他人の固有魔法――七冠(セブンクラウンズ)と言ったかしら?
 その能力を使わずに私を殺せると?」
「そこまで己惚れてはいない。ただ、こちらにできることはまだあるということだ。」
 故にノワルはザラサリキエルを注視した。普段ならへし折り甲斐のある気概だが、こと運営側の調整者が相手ならば何か仕掛けがあるはずだと。
 特別な支給品があるのか。ギアスキャンセラーと併用が出来るスキルを有しているのか。
 ザラサリキエルの忠告にも正面から耳を傾け、故にこそノワルは異変に気付くのに遅れた。

 ノワルの周囲に浮いていた黒い宝珠――気に入った女性を閉じ込め魔力を搾り取っていたポケット闇檻が、解けていたことに。

「欲張りな魔女に1つ教えてやろう。
 ここはピクニックじゃない。おやつは没収だ。つまみ食い大好きなノワルちゃん。」

 言葉の意味を理解するのと、ポケット闇檻が砕け散るのは全く同時だった。
 女たちを魔力サーバーにするのも、闇檻に閉じ込めることも、全て闇檻による拘束だ。ギアスキャンセラーの対象内。
 中に閉ざされていたアスナが落下し、彼女を縛り付けていた機械も霧のように溶けていく。
 生まれたままの姿で落下していくアスナにノワルは手を伸ばしたが、彼女から排出できた魔力の塊たる珠をいくつかかろうじて手にするのが精いっぱいだった。

「はじめっからこれが狙い……!」
 むざむざ成果を奪われたノワルの顔から初めて笑みが消えた。ザラサリキエルは変わらず続けた。

 「闇檻の中に余剰魔力をNPCごと収納。
 魔力に余裕がある貴様だからこそできるアイデアだが、貴様に魔力を回復する隙など、与える余裕は無いからな。
 これで準備は整った。『劣化複製(デッドコピー):迷宮女王(クイーンラビリンス)――始原(アルファ)』」

 青い光を閉ざし再びヘイローを浮かべ、ザラサリキエルは権能を起動する。
 言葉に応じてノワルの眼下にある廃ビルや道路がもぞもぞと動いたと思うと、壁面や道路を埋め尽くすようにびっしりと穴が空いた。
 空に浮かぶノワルには毛穴やニキビのように見える小さな穴だが、まじまじと見つめ正体に気づく。
 全て、銃口だ。
 マシンガン。ライフル。バズーカ。ロケットランチャー。果てはモビルスーツに装着するようなレーザー兵器まで。
 迷宮女王の始原の冠装(アルファアバター)。『武装生成(アームズクリエイション)』が生み出した無数の兵器を前に、感じていた生理的な嫌悪は刺すような殺意に上書きされていく。

 「武器生成の固有魔法……。」
 「結城明日奈まで囚われていたのは誤算だったが、今なら巻き込む心配もない。――撃て。」

 掛け声とともに無数の銃火器が一斉に火を噴いた。
 一発一発はノワルにとっては虫が刺すような攻撃だ。嚮導老君(グレートガイダンス)の権能による進化もされてはいない。
 問題はその数が多すぎること。密集した無数の弾丸は黒い津波のようにノワルに押し寄せてきていた。

「シャインレイン。」
 銃弾の群れを前にノワルが選んだのは光線による相殺。
 闇檻の防御は横山千佳との戦いのようにギアスキャンセラーで無効化される。
 しかし防御障壁で防ごうにも、ロケットやレーザーなどの明らかに殺傷力の高い攻撃が権能で『進化』させられ、万が一にも貫通してはシャレにならない。
 故にノワルはそれらの危険性の高い攻撃に光線を集約させ、対空ミサイルのようにその攻撃を相殺する。

「まったく、あの爺さんは別としてもここでの戦いは頭を使うから大変ね!」
 言葉をぶつけながらも、ノワルの指先で動く光が期待通り殺傷力の高い攻撃を撃ち落とし、緋色のレーザーを正面から打ち消す。
 微細な魔力コントロールと必要十分な威力が求められ、さらに浮遊のための魔力をコントロールすることも求められるが。
 その程度の修羅場はアルジュナ・オルタとの戦いで経験済み。
 先の戦いとの違いは、手数の多さ。
 『個』の極致たる黒き神とは違い、『群』の極致たる攻撃では取りこぼしが発生するのは必然といえた。
 現にノワルの光線の合間を、数個の弾丸が抜きノワルの体に届きそうになっている。

「その程度!」
 だからどうした。
 ノワルがリスク管理に失敗し、致命傷を受けるような攻撃をみすみす逃がす無様を晒すような女であれば、アルジュナ・オルタとの戦いでとっくに死んでいる。
 取りこぼした銃弾の軌道はわずかにノワルの体を掠めるのみだし。掠めたところで誤差のようなダメージだ。
 全くの無問題。そう認識したノワルのローブに取りこぼした銃弾が掠め。

「『劣化複製(デッドコピー):誓約女君(レジーナゲッシュ)』」
 ――掠めた銃弾 計5発。 その全てが、ノワルの両腕に食い込んだ。

「なっ――」
「お前の想像通り、全ての武器をお前に有効なレベルに強化することは不可能だし。よしんば強化したとて黒き最後の神に並ぶ出力は出ない。
 だが、”お前に当たる攻撃”が1つでもあれば、誓約女君(レジーナゲッシュ)の権能はその全てを必殺(クリティカル)に変える。」
 誓約女君(レジーナゲッシュ)の権能 乱数聖域(ナンバーズアヴァロン)と呼ばれるそれは、自他の攻撃の乱数を調整する絶対攻撃絶対回避を思いのままにする力だ。
 わずかにでも当たるのならばその攻撃はクリティカルヒット。ザラサリキエルはノワルにわずかでもあたる可能性がある銃弾にその権能を付与した。
 風。熱。魔力の歪み。他の銃弾との跳弾。
 権能を受けた銃弾は肌やローブを掠めるだけの未来を改変され、ノワルの肌を赤く濡らすまでに至った。

 銃声と爆発に阻まれ、ザラサリキエルの言葉はノワルの耳には届かない。
 だがこの攻撃がザラサリキエルの仕込んだものだということは分かる。
 腕から脳に伝わる痛みに悶えながら指で次の魔法を動かす。ノワルの目前に再装填されたレーザーが迫りつつあった。

「障壁を張るなら好きにすればいい。嚮導老君(グレートガイダンス)の権能と対MS兵装があればその上から貴様を叩ける。
 銃撃による必中必殺の飽和攻撃か、進化させた必殺兵器か。好きな方で死んでくれ。」

 今度の声はノワルにもはっきり聞こえた。
 その声に反応するより早く、撃ちだされたレーザーがノワルの体を捉え周囲の弾丸を巻き込み空中で爆ぜた。

 「直撃か。」
 ノワルを中心とした黒煙を前に、ザラサリキエルは弾丸の連射を止めた。
 周囲一帯の武器錬成はザラサリキエルにとっても負荷が大きい。使えば使うほど権能再現のインターバルは長くなり、次に同じ規模の武器を生み出せるのは数時間後になる。
 何せ手にしたスコーピオンと違い銃弾の1つに至るまでザラサリキエルが権能で生みだしている。死体に弾丸を撃つ余裕はザラサリキエルには残っていない。

「あわよくばこの攻撃で致命傷を負ってくれれば嬉しいが。」
 願望を漏らす。
 回復に令呪が必要なほどのダメージを受けてくれることがザラサリキエルの理想だ。病院から距離を取ってくれればなおいい。
 アルジュナ・オルタと真正面戦い生存するような女だ、ここで死ぬような淡い期待をザラサリキエルは抱いていない。

「まあ最悪死んだら死んだでいいが」
「誰が死んだって?」
 ヒュンと空を切った腕が黒煙を払い、中に潜む女の金色の髪が風に揺れた。
 ノワルが生きていたことに驚きはない。そんなザラサリキエルでさえ、目の前の光景にグランシャリオの仮面の中で目を丸くする。

「貴様……ノワルか?」
 今更な言葉をザラサリキエルは口走るのも仕方がない。
 爆心地であるノワルがいた場所に姿を見せたのは、ノワルの胸ほどの高さしかない少女の姿だったからだ。
 帽子をかぶり、金色の髪を二つに束ねた学生にも見える少女。
 その背には巨大なジェットパックが2つぎゅんぎゅんと音を立て、魔力とは別の理由で女に飛行能力を与えていた。

「貴女だって顔を隠してるんですもの。私がしても文句は無いでしょう?」
 悪辣な笑みに蕩けるような悍ましい声。
 間違いなくノワルだ。ではあの右目に眼帯をつけた少女の姿は?
 思考を巡らすザラサリキエルをよそに、少女の腕と肩が音を立てて変形し、無数のガトリングガンが飛び出してくる。

「MODE=戦女神(ヴァルキリー)」
 両腕に背中と肩。左右4丁ずつのガトリングガンから一斉に火を噴き、上空から降り注ぐ銃弾がザラサリキエルの周囲に展開した無数の銃火器を破壊していく。
 その姿を見てザラサリキエルは思い出す。
                 ・・・・
 ノワルの姿の正体。彼女が使用した起動キーの名前を。

「マイ=ラッセルハートの関連資料にあった、巻戻士のアンドロイドか!
 モビルスーツでもナイトメアフレームでもユニバースロボでもない。機械型エージェントの起動キーだと!」
 レモンと言う名の巻戻士はアンドロイドである。
 2075年の日本政府が総力をかけて生みだされ、その戦闘力は最強と呼ばれる巻戻士に張る。
 無論その耐久力も、過酷な巻戻士の任務に耐えられるほど頑強だ。

 ノワルが爆発を耐え抜いた理由など至極単純。うち放たれたレーザーをシャインレインで相殺する時に、あえてぎりぎりまで引き付けた。
 相殺したレーザーは言わずもがな、同時に展開した魔力障壁で上がった防御力にレモンの装甲を合わされば、爆発も銃弾もダメージなど与えない。
 ダメージが無ければ、どれだけ乱数を弄ろうとクリティカルヒットなど起こりえない。
 顔についたわずかな煤を払い、破壊され尽くした銃火器群を見下ろしてノワルはぐにゃりと笑みを浮かべた。

「ウフフ。レモンちゃんっていうのよね。可愛い顔ね。
 ここを出たらアンドロイドからどんな魔力が絞れるのか気にはなるけど、まあそれはそれ。」
 想定外の支給品に瞠目するザラサリキエルを、レモンの顔が睨む。
 起動キーとなった今の彼女に、オリジナルの性格など欠片も存在しない。

「私の体に傷をつけたこと、後悔させてあげるわ。」

 巻戻士の皮を被った魔女は仮面をつけたような笑みのまま、底冷えするような怒気とともに道化に銃口を向けた。

◇◆◇

「……カッシーンの小隊からの連絡が途絶えたか。
 流石にここまで生き残っただけはある。戦える程度の支給品か、手下の1人はいるようだな。」

 助手席に座りながらふてぶてしく足を組んだルルーシュは、通信機を投げ捨てると気分が悪いと言いたげに頭を抱えた。
 怨敵 シャルル・ジ・ブリタニアと同じ異能を持つイレギュラーなどルルーシュにとっては最優先の抹殺対象だが、ノワルとの戦いを目前としている今、排除当てられるのは最低限の戦力だ。
 温存している女性陣を導入して記憶操作の能力者を追うことも考えたが、万が一ノワルの戦闘領域(かりば)に彼女たちが入ってしまっては本末転倒だ。
 記憶操作の能力者――マイ=ラッセルハートを今すぐ始末することは断念せざるを得ない。逃す気はないとはいえ断腸の思いである。

「日本の言葉に『二兎追う者は一兎も得ず』というものがあるが。このままではその通りの展開を迎えるだろうな。
 狩るべき兎は一匹に絞るべきだ。ましてやこの会場でも指折りの大物ともなれば、よそ見などしてはいられんだろう。」
「よくもまああんなバケモンを兎だなんて可愛らしい例えで言えるなお前。」

 後ろの席で、陽介はげんなりした声を投げかけた。
 視線の先、ルルーシュの持つタブレットには偵察に出したNPCからの、ノワルとザラサリキエルの殺し合いと言う言葉さえ生ぬるい戦闘映像が流され続けている。
 空中を目にもとまらぬ速さで駆け抜ける魔女に、無数の銃火器から銃撃を浴びせる光景。
 一個大隊並みの銃火器を用いた飽和攻撃前に、ノワルが受けた傷は両腕に数発。それさえザラサリキエルの権能が無ければ成し得なかっただろう。
 それはつまり、ルルーシュの指揮する機械型NPCの攻撃ではノワルにダメージを与えることは極めて困難という意味でもあった。
 これが無関係の場所で起きる戦いならば単なる娯楽映画だが、陽介たちは今からこの戦いの渦中に入り込む必要があるのだ。

「どうした陽介、怖気づいたか?」
「怖気づくわこんなもん。
 流石にわかるぜ、あの青い光――ギアスキャンセラーだっけ?あれがある限りノワルの拘束能力は使えない。
 だからあのNPCとの戦いじゃ、その力は殆ど使ってないんだろ?」 
「みたいだね。
 ギアス以外にも作用するってことは、ギアスキャンセラーを元に運営側で用意した無効能力って感じだと思うけど。」
 ということは、厄介だと聞いていた拘束能力を無効化したところで都市を滅茶苦茶に出来る火力が襲ってくるだけだということではないか?
 その事実に陽介は冷汗を垂らしたが、反面ルルーシュはこともなげに続けた。

「だがいいニュースもある。
 ノワルはこちらが思っていたより好戦的だ。
 松坂さとうやドラえもんの情報になった色情魔なだけであれば、不利な状況になれば逃亡する可能性があったが。この戦いを見る限りその可能性は低いだろう。」
「それのどこがいいニュースなんだよ。」 
「記憶操作の能力者や黒き神のことを考慮すると、俺たちにノワルと二度戦う余裕は無い。
 そうでなくとも、他の参加者の支給品を回収しているだろうノワルのほうが質・量ともに上回ってる。あの少女姿の起動キーが奴の切り札だとは考えられんしな。
 万が一奴に逃げられ、消耗戦持ち込まれた時点で俺たちの負けだ。」
 戦力の『量』では圧倒的に勝っているはずなのになと付け加え、ルルーシュは何度目か分からないため息をついた。
 ノワルとの『再戦』があるとして、その時にルルーシュが切れるカードは疲弊した軍勢に温存している女性陣だ。
 タギツヒメやキャルに相応の戦闘力があることはルルーシュも考慮しているが、ノワルに拘束され魔力を搾り取られるリスクを考えると彼女たちをノワルとの戦いに出す未来は避ける必要がある。

「つまりここで何とかして勝たなきゃいけないということですね。」
「そういうことだ。
 そのためにも、今の俺たちがすべきはギリギリまでノワルとあのNPCの戦いを伸ばし、消耗させることだ。」 
 ルルーシュとて真正面から万全のノワルと戦って勝てるなどとは思っていない。
 ノワルの魔力を少しでも削り、戦うからを削ぎ落す。理想を言えば令呪2画を使わせたうえで挑みたいというのが本音だ。
 なにせ令呪により本調子を取り戻す前の時点で、キャルの言うドームを生み出す能力や都市部を灰燼にした戦闘をこなしている。
 この全てが松坂さとうやドラえもんの勘違いだったという一縷の望みも、映像越しのザラサリキエルとの戦いが否定した。
 故に待つ。
 兎を狩るために、兎が狩れる程度に手負いになる瞬間を、ルルーシュは待っている。
 圧倒的に格上の魔女を倒すにあたり、ルルーシュが選んだ戦略(プラン)はまさに最善と言っていい。

 だが、忘れては無いだろうか。
 ルルーシュが綾小路清隆に話した計画では、ノワルはアッシュフォード学園に誘導して殺す手はずだった。
 そのためにNPCや参加者を囮とし、ノワルを殺すための万全の対策を勝手知ったる学園に仕込む。
 この計画が瓦解した理由は、マイ=ラッセルハートがノワルとの戦いにルルーシュを強引に巻き込んだためだ。
 どれだけ卓越した頭脳で、一部の隙も無い策を練ろうと、想定外の一撃で瓦解する。
 そしてこの会場において、ルルーシュの策を崩す想定外は、枢木スザクのみにとどまらない。

『ルルーシュ様!急いでお逃げください!』
 ルルーシュの手元で、配下との連絡用端末がけたたましい振動と共に声を届ける。
 通信がルルーシュの耳に届くのと、軍勢の端で起きた爆発に気づいたのは、全く同時だった。
 想定外(イレギュラー)にルルーシュは目を見開き、焦りとともに通信機に叫んだ。

「何が起こった!応答しろ!」
『しゅ……襲撃者です!
 青い髪の男と、仮面ライダー!
 次々と味方がやられております!現在7……いえ、9機が戦闘不能に!』
「この一瞬でか……。」
 NPCモンスターの戦闘不能は、文字通りに破壊され再起不能であることを意味している。
 たったの二人か、そう結論づけることを今のルルーシュはしない。
 この会場には強者が多すぎる。エターナルやゼインレベルの猛者が2人となれば、今控えている全戦力をぶつける必要があるかもしれない。
 そうなればノワルに残す戦力など欠片もない。
 しばし悩んだ末、ルルーシュは通信機に向けて指示を伝えた。

「……アルファからデルタまでの部隊は先遣隊と合流しノワルとの交戦に備えろ。
 俺、ロロ、陽介の警護はイプシロン部隊だ。それ以外の者たちは襲撃者との交戦は避けろ。」
『いいのですか?』
「魔女狩りを始める前に戦力を喪うわけにはいかない。
 襲撃者隊も参加者だというのなら、ノワルの存在を伝えれば交渉の余地はあるはずだ。
 最低でもノワルを倒すまでの不戦。もし強力な男ならば共闘も見込める。いささかリスクが高いが、記憶操作の能力者が攻めてきたわけではないのであれば安心だ。」
『仮面ライダーが記憶操作の能力者だという可能性は?』
「もしそうなら、お前たちを襲撃などせず手駒に変えていたはずだ。ないとは言わないが低いはずだ。
 一先ずお前たちは散会し、待機しろ。交戦に関しては各自の判断で構わない。」
『イエス、ユアマジェスティ!』

 その言葉と共に、ルルーシュの周囲に残る数体の機械型NPCを除き、全ての部隊が規律正しくノワルのいる方向に進軍していく。
 機械の軍勢がいなくなった租界の道を、白い仮面ライダーが歩く足音が響いた。その後ろには青い髪の男が心配とも憤慨とも取れる、苦々し気な表情浮かべ追従していた。
 車から降りたルルーシュは、周囲のNPC達に武装させると、青年とライダーに向き直り。松坂さとうを相手にした時のように努めて穏やかにしかし威圧感を崩さずに告げた。

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ。
 よくも私の配下を……といいたいところだが、今は非常事態だ。追及はしない。
 君も我々を信用できないだろう。変身している君は仮面ライダーのままで構わない、一先ず名を聞かせてくれないか。」
「……。」
「……トランクスです。」
 青い髪の男だけが答える。
 敵意を持って睨むような、こちら見定めているような。お世辞にも好感を抱かれているとはいえない視線だった。

(だが、その視線は想定内だ。むしろ望ましくすらある。)
 トランクスの態度はルルーシュの『巨悪』としての振る舞いが影響を与えている証左でもある。
 しかしとルルーシュは考える。仮にトランクスがエターナルやゼイン並みに強い参加者だとしたら、ここで敵対するのは自殺行為だ。
 こうして会話に興じてくれている以上、少なくともトランクスに関しては対話の余地がある。
 ならばノワルとの戦いの間の不戦、あるいは共闘の手はずを整えることは、ルルーシュの弁舌をもってすれば不可能ではない。
 そう考え、未だ名乗らない仮面ライダーへと視線を落とした。

「それで、君は?
 変身しないでもいいとは言ったが、男か女かさえ分からない状態で話をすることは難しい。」
「そっか……。」
 まだ幼い、少女の声。あどけなさが残るその声に、ルルーシュは不穏な空気を感じ取っていた。
 少女が仮面ライダーであること自体は、小宮果穂の例もあって想定していないわけではない。

「私はね、神戸しお。」 
「………………………………は?」
 だが、告げられた名前は、ルルーシュにとって最悪の相手だった。

「じゃあね。」
『FINISH TIME』
 もはや会話さえする気が無いと言わんばかりに、しおはベルトに装填されたウォッチを起動する。
 ルルーシュを囲むように『キック』と書かれた謎の文字が浮かび上がり、トランクスもルルーシュも対応する間もなくしおは駆けた。
 飛び上がり、ジクウドライバーを一回転。
 魔王の必殺技の発動シークエンスは、この行動を持って完了する。

『TIME BREAK!』
 ルルーシュを囲む文字がしおの右足に吸い込まれ、その足先はルルーシュに向かう。
 基本形態とはいえ、後の時の魔王が扱う一撃に今のルルーシュが耐えることは不可能だ。

「ペルソナッ!」
 だがそれも、彼一人ならばの話。
 陽介のペルソナ、ジライヤの両腕がしおの一撃が当たる直前にルルーシュの体を掴み一気に飛び上がる。
 標的を逃がしたしおの一撃は無人の車に向けて直撃し、中に残るタブレット事木っ端みじんに砕け散った。
 爆ぜる車をよそに、着地したルルーシュは駆けよる陽介にニヤリとした笑みを向けた。

「助かったぞ陽介。」
「間一髪だったな……。
 なんだあの仮面ライダー。お前を殺す気満々じゃねえか。」
「だろうな。
 奴が神戸しおというのなら、俺に対し恨みを抱いてしかるべきだ。」
 ルルーシュ・ランペルージは、松坂さとうを殺している。
 それが神戸しおにとって何を意味するのか、気づかないルルーシュではない。

 松坂さとうにとって神戸しおが代えの効かない甘く美しい愛の世界であるならば。神戸しおにとって松坂さとうもまた同じ。
 松坂さとうを殺し、あまつさえその死を喧伝したルルーシュを、神戸しおが許すことはあり得ないだろう。
 ルルーシュにもナナリーという代えがたい妹がいる。仮に他の誰かがナナリーを殺したことを高笑いと共に誇るならば、何をしてでもそいつを殺す。
 自分が復讐の対象になることを想像できないルルーシュではないと。陽介の前では予想していたことのようにポーカーフェイスを気取る。

(なぜ!よりにもよってなぜ今神戸しおが来るんだ!!!)
 その内心であまりにもタイミングの悪い事態に困惑と理不尽が渦巻いていた。
 神戸しおがルルーシュを殺したいほど憎んでいることも、出会ってしまっては戦うしかないことも想定内だが。
 まさかノワルとの戦いを控えているこの瞬間に責めてくるとは想像も出来ず。
 神戸しおを無視してノワルとの戦いに進んだとして、常に背後に迫る神戸しおの陰を気にする必要があるのだ。そんな状態で勝てる相手では断じてない。

「ルルーシュ!!!」
 少女が叫ぶ。恩讐と憎悪に塗れた苦々しい声で。
 仮面ライダージオウの『ライダー』とかかれたコミカルともいえる仮面が、おどろおどろしい威圧感を放っていると錯覚してしまうほど、神戸しおの激情は強かった。
 少女が変身しているとは思えない足取りで進む仮面ライダージオウ。

「兄さんは先に行ってください。」
 その両足が、宙に浮いたまま止まった。
 ロロ・ランペルージの右目が輝き。赤い光が周囲一帯を包み込む。
 ジオウだけではない。トランクスも同様だ。
 蝋で固めたかのように、少女と青年の動きだけが空間内で停止していた。

 ロロ・ランペルージの『絶対停止のギアス』。その効果だと気づいたルルーシュは、爆発する車の傍で苦悶の表情を浮かべる弟に目を見開いた。

「ロロ!」
「ノワルはここで倒さなきゃいけない。
 そのためには兄さんの力が必要なんだ!
 僕と陽介でこの2人を足止めする!その間に兄さんはノワルを!」
「……分かった!」
 ロロ・ランペルージが停止させられる時間は短い。
 故に余計な言葉も指示もなく、ルルーシュはロロ・ランペルージに背を向けた。

「イプシロン部隊!半分は俺についてこい!
 ロロの周囲にいる半分はロロ・陽介と共に襲撃者たちの足止めに回れ。」
「抹殺しても?」
「構わん!」
 ルルーシュの許可に合わせ、ロロは周囲に居たモビルスーツのNPCが武器を構えるように指示を出す。
 しめて6機。その全てが神戸しおへと照準を合わせていた。
 ロロ・ランペルージのギアスは機械には効果を及ぼさず、飛び交う銃弾は止まらない。
 機械型NPCならば、絶対停止のギアス下でも抹殺を行うことなど容易かった。

 神戸しおが無力な少女であれば、ルルーシュとてここまで強引な手段を取らなかっただろう。
 だが、今の神戸しおは仮面ライダージオウ。魔王の幼体にして仮面ライダーの中で有数のスペックを誇る戦士だ。
 殺さず無力化するには、ルルーシュの手札には余裕がない。

「ちょ……そんないきなり……」
 いきなりの抹殺指令に困惑する陽介をよそに、引き金が引かれた。
 塵の舞う租界の空気に乾いた破裂音が響き。飛び交う銃弾が魔王の体を貫通――

  ――しなかった。

「や……め……ろ……」
 掠れた男の声と共に、黄金色の光弾が6発。しおを狙ったモビルスーツを粉々に打ち砕いた。
 爆発と爆炎から身をかわしながら、ロロは光弾が来た方向を確認し、思わず声が震えた。
          ・・・
 絶対停止のギアスの影響下にあるトランクスの腕が、こちらに掌を向けていた。

「嘘だろ!」
 動揺する余裕もなく、爆発と爆炎で酸素を消耗したロロのギアスがここで切れる。
 停止していたトランクスとしおの時間が再び流れ出し、何事も無いように駆け出す神戸しおをよそに、トランクスは茫然と周囲を見渡す。

「今のは……」
 明らかに何か異変があったことを自覚している。
 絶対停止のギアスは他者の知覚さえ止める。”なにかあった”と理解できる時点でロロ・ランペルージにとっては異常事態に他ならないのだ。

 「彼は……動けないはずなのに!ギアスの影響は受けていたはずなのに!」
 動揺の中、ロロは己のギアスに課せられた制約を発揮と知覚する。規格外の相手には効果が薄いという酷くわかりやすい制約を。
 (タギツヒメの話なら、黒崎一護は彼女より強いらしい。
 彼を殺した時の違和感は、黒崎一護、あるいはタギツヒメにも僕のギアスが十全には効いていなかったからか!)
 そう納得したのもつかの間、気づいてしまった事実にロロの顔は一気に青ざめた。

 「冗談じゃないぞ……。
 絶対停止のギアスの影響下で動けるばかりか、なんの道具も無しにモビルスーツを破壊できる光弾を扱える男だと!?」
 動揺を見せたのはロロだけではない、ルルーシュもだ。
 理解できないものを見るように忌々し気に目を見開く彼は、ロロと同じ結論に至っている。
 トランクスが強いという事実。それもエターナルやリボンズに輪をかける、ノワルと同格の最強格の人物であると。
 そんな男が神戸しおと組んでいる。ルルーシュにとって悪夢にも等しい状況。
 そんな不運を嘆く暇もなく、神戸しおの刃はルルーシュの射程に入り込む。

 「やっと追いついた。」
 「ヤべえ!」
 ジカンギレ―ドを振り下ろすしおの攻撃を、陽介のジライヤが間一髪で殴り飛ばす。
 横からの攻撃に対応できず地面を転がるしおだったが、ジオウの体には大したダメージを与えているようには見えない。
 だが、陽介が殴り飛ばしたのはロロのいる方向だ。
 立ち上がるしおを陽介とロロが挟み込む。
 ルルーシュとの距離が離れてしまったことを仮面の奥で歯嚙みしつつ、神戸しおは立ち上がる。

 「その二人は任せるぞ!ロロ!陽介!」
 立ち上がるしおと陽介・ロロを一瞥し、ルルーシュはNPCを引き連れノワルのいる戦場へと向かう。
 この戦いはルルーシュにとって闖入者(イレギュラー)。本番(メイン)は未だ来ていないのだ。

「結局、こうなるしかないのか……」
 トランクスはその様子を、1人悔しそうに見つめ。拳を深く握りしめる。

 神戸しおが戦わない未来は、もはやどこにも存在しない。
 マイ=ラッセルハートの言った通り、他ならぬ神戸しおが、その未来を望んでいないのだから。

◇◆◇

 目を見開いたアスナに飛び込んできたのは、魔女の悪意で塗り固められた漆黒の壁ではなく、ひび割れたコンクリートの天井だった。
 四肢を封じる拘束具もなく、尊厳を貪り喰らう魔女の設備もない。
 目をこすって起き上がると自分の上に雪のような色合いの着物が体を隠すようにかけられていることに気づいた。八つの葉のような紋が背中に刻まれた、アスナより一回り大きなサイズの着物だ。

「目が覚めたか。」
 アスナが声をする方をみると、カフェのカウンターに座る若い男。
 鋭い目つきに腰まで伸ばした白い髪が窓からの光を受け煌めいている。アバターであるアスナ以上に何らかのゲームのキャラクターのような個性と美貌を称えていた。
 しばし顔と髪を見ていたアスナだが、その肩に居る何かに気づく。
 黒い何かがもぞもぞと動いたかと思えば、アスナめがけて飛び掛かる。
 掌に収まりそうなサイズの何かに、アスナは見覚えがあった。

「あ、アスナ殿~~!」
「わわっ。烏天狗ちゃん!無事だったのね!」
「アスナ殿こそよくぞ御無事で!」
 ウンベールから秋山の手に渡った幻妖にして支給品。
 アスナにとってはこの世界における数少ない顔見知りである。

「烏天狗ちゃん、この人は?」
「参加者の1人覇世川左虎殿でございます。
 ノワルから逃げた後、この方ともう一人マイ先生殿という参加者と合流できたのですが。」
「色々あって、今は左虎のみで動いている。」
 そう言って左虎は立ち上がると、アスナに近づいて顔をまじまじと見つめる。
 裸を着物で隠している状態のアスナは気恥ずかしさがあったが。

 「ふむ、顔色は良好(よい)とは言えんが、悲観するほどではない。
 ……NPC達に比べれば、遥かに良好(よい)。」
 その言葉に、己がさっきまでどういう状態だったのかをアスナは思い出すことになる。
 ノワルに囚われ優に2時間以上体液語と魔力を吸い出されていたのだ。回復魔法で外傷や破壊は治癒していても、永遠に搾り取れるようなものではない。

「そういえば、何があったんですか?
 私はノワルの闇檻に囚われて……落ちていったような覚えがあるんですが。」
「ノワルとザラサリキエルの戦闘(ドンパチ)の最中。ザラサリキエルの異能(チート)でノワルの闇檻が砕けた。
 丁度左虎はノワルを強襲(カチコ)まんと向かっていたところ、落ちてきていたお前たちを拾い上げたというわけだ。」
「この体にかかっているのは――」
「体を隠しているのは左虎の外装(ふく)。淑女(レディー)の裸を晒すわけにもいかぬが、意識のない者に強引に着せるような性加害(セクハラ)などしでかしては、愚弟に顔向けできん故。
 起きたのなら悪いが奥の部屋から適当に見繕って着てくれると嬉しい。」

 気恥ずかしさを誤魔化すよう左虎は頭を搔く。
その隣では烏天狗が警察らしい半袖の白いシャツと水色のスカートを持ってきて、期待の眼差しでこちらを見ていた。

「それは…?」
「NPCより回収したお召し物でございます!
いささかサイズは小さいやもしれませぬが!アスナ殿なら着こなせましょうぞ!」
「…まあ、何も着ないよりは確かにね。」
 そう手を取ったヴァルキューレ警察学校の制服にアスナは見覚えがあった、ノワルに囚われたNPCの所有物だ。
 暗いポケット闇檻の記憶の中で、ぼんやりとアスナはそのことを思い出す。
 恐らくポケット闇檻に残っていたものが、アスナと一緒に落下したのだろう。
 そう思いだしたアスナだが、ここで気づく。

「あの…この服を着ていたNPCは…?」
 ポケット闇檻に捕らわれていたのは自分だけではないのだ。
 その言葉に左虎の顔が明らかに曇らせ、怒気を込めて言葉を返した。

「…全員回収しているが。半分は既に死にもう半分は衰弱で立つこともままならん。」
 落下する少女を一人も見逃す左虎ではない。
 NPCも含め全員回収し、今いる建物の別室に寝かせているが。
 アスナを除いた被害者は、名医(ゴッドハンド)の左虎もってしても手遅れとしか言えない悲惨なありさまだった。

「ノワルの調教(ディーブイ)を受け神経が焼ききれたか、あるいは魔力ごと体液を搾り取られての重度の脱水。いずれも生きているのが奇跡といったところだ。」
「回復魔法で強引に生き長らえさせられただけですよ。」
ノワルとはそういう女だと、アスナはよく知っている。
生身の人間なら死ぬほどの魔力を絞り出し、絶頂を与え弄ぶ、
生き長らえさせていた魔法と栄養チューブが無くなっては、こうなることは必然だ。
ノワルの玩具としての生か、苦痛の中の死か。闇檻の魔女はそのどちらかしか齎さない。

「だから、あの女だけは許せないんです。」
「同感だ。」

 未だ顕在のその魔女を倒さねば、死体がNPCでとどまらないことは、言葉にするまでもなく2人とも分かっている。
 険しい顔をする2人に、烏天狗がつんつんと肩を叩く。

「そのNPCたちなのですが。彼女たちが握っていたものがございます。」

そう言って烏天狗が、両腕に抱えて持ってきたもの。
それは紫黒に怪しく光る、飴玉のような珠だった。

 ◇

「ルルーシュ様。ガンマ部隊からプレイヤーの発見方向がございます。」

 神戸しおから離れたルルーシュがノワルに近づく過程、そんな連絡を受けたのは5分ほど前の話だ。
 ルルーシュとしては可能な限りノワルとの戦いにイレギュラーを持ち込みたくない。強者にしろ弱者にしろ、ルルーシュの計算を狂わすノイズには違いない。
 そのためルルーシュは迷わず報告があった場所に向かう。
 戦闘に長けた男であるならばノワルとの戦いの助力を。
 女性や非戦闘要員であれば撤退を指示する。
 ルルーシュのとる選択はおおむねその二つのはずだったが、ルルーシュの目に飛び込んできたのは想定外の光景だった。

「・・・何をしている?」
 隠しきれない困惑がその言葉には含まれていた。
 ルルーシュの配下のモビルスーツ。ストライクダガーの小隊は、未知のど真ん中で密集しおしくらまんじゅうでもするように寄り集まっていたのだ。
 その内の一機が振り向くと、モビルスーツとは思えない感情的な声を上げた。

「る、ルルーシュ様!
あの男をご覧ください!」
「男?」
頸をかしげ、ストライクダガーをかき分ける。
その先に居たのは白い和装に身を包んだ青年と、NPCと同じ警察のような制服を着た少女。
足元には2機のストライクダガーが真っ二つに切断され倒れ込み、少女の手にはストライクダガーから強奪しただろうビームサーベルが握られている。
 だが何よりルルーシュの目を引いたのは、その男が記憶操作の女ことマイ=ラッセルハートと共にいた男であったことだ。

「貴様…記憶操作の女と共にいた!」
「ふむ、流石に露見(バレ)てはいるか。覇世川左虎という。
強襲(ケンカ)を吹っ掛けたのは貴様の部下だ。ブッ壊したことに謝罪はせぬ。」
 顔を歪ませるルルーシュに反し、和装の男は涼し気に答えた。
 隣の少女もある程度の事情は聴いているのか、『記憶操作』という言葉に戸惑いもせずルルーシュに警戒を向けている。
 対するルルーシュも、和装の男――覇世川左虎を忌々し気に睨みつける。
 記憶操作の女の仲間だったという時点で、ルルーシュが心を許せるはずもないのだ。
 背後に振り返り、攻めるようにストライクダガーたちを睨む。

「…記憶操作の女は抹殺対象だ。
その仲間であったこの男も、敵として伝えていたはずだが。なぜお前たちは撃たん。」
「そ…それがですね…」
 縮こまりながらストライクダガーたちは装備しているビームライフルをルルーシュに見せる。
 その砲身には奥までびっしりと、氷がつまりこんでいた。
 これでは光線は拡散してロクな威力にならないだろうし、下手に放射しては機関部分に水が入りショートするだろう。
 覇世川左虎の暗刃により機能を封じされたたのはそれだけでなく、よくよくルルーシュが見てみればストライクダガーたちの足も氷でガッチガチに固定されていた。

「この男が髪を振るう度に、武器が氷で封印されるのです!」
「成程。この男もまた『特記戦力』相当か。」
 あっさりと無力化されたストライクダガーたちを無様とは思わない。
 それだけ規格外の強さを持つ参加者なのだと頭が痛くなる思いを必死に隠し、ルルーシュは左虎へと向き直った。

「あの女はどこだ?」
 聞きたいことは山のようにあれど、ルルーシュは気にするのはその一点。
 記憶操作の女はルルーシュにとって不俱戴天の仇といえる。

「ここには居らん。既に左虎と彼奴とは袂を分かった故」
「ほう!殺したか?」
「まさか。
一度は同胞(ツル)んだ相手をそう簡単に殺すものか。」
「…本気で言っているのか?既に貴様は記憶操作の影響下にはないだろう。
無傷でストライクダガーの小隊を制圧できるほどの戦力を、そう簡単には手放さないはずだ。」
 その返答にルルーシュは小馬鹿にするような顔を左虎に向け、責めるような口ぶりで言葉を投げかける。

「慈悲深いことだ。
俺が貴様なら、記憶操作の能力者など呪いが解けると同時に確実に殺しているぞ。」
「左虎は貴様の部下ではない。
貴様の価値観に合わせる必要などないはずだが。」
「だとしてもだ!
都合のいい記憶を植え付け、他者の人生を偽りで塗り固める!
そのような力を行使した時点で許しがたいはずだ!その先にある願いなど愚にもつかないもののはずだ!」
 経験から自然と怒気は強くなる。
 この男は年相応に若造(あお)いなと、左虎は意外なことのように青年を見る。
 その隣でアスナは馬鹿な同級生を見るような、白けた顔を浮かべた。

「他人を操る能力を持ってるあなたがそれを言うの?」
「開幕(スタート)前に羂索に『死ね』と命令(ほざ)いたこと、左虎は憶えているぞ。
制約が無ければ人を殺すのも思いのままの貴様の能力を否定(ディス)るきはないが、あまりに五十歩百歩(ブーメラン)ではないか?」
「それはそれ。これはこれだ!」
 アスナと左虎の冷たい視線を前にして、ルルーシュは悪びれもせずに言い放つ。
 その豪胆さもまた、この男の武器なのだろう。

「…確かに、記憶操作という異能の危険性は身をもって左虎も知っている。」
 ふうと一息ついて、左虎は答えた。
 出会ったばかりの女を、親にも等しい恩師だと錯覚した。
血を分けた弟のことも、己を殺した宿敵のことも、つい先ほどまで覇世川左虎は忘却していた。
 思い出を奪い。仲間を奪い。敬意を奪い。家族を奪い。人生を奪う。
 そのような力が善か悪かと問われれば、間違いなく悪だろう。
 そのことは覇世川左虎どころか、マイ自身だって否定しない。

「ならばなぜ!」
「記憶操作の女はこの会場にて一人も人を殺しておらん。
むしろ瀕死の少女を救うために、管理下にあったはずの令呪を使うことを選んだ。」
「それがただの気まぐれでないとなぜ言い切れる!」
「気まぐれであろうと気の迷いだろうと彼女の救いは本気(マジ)だった。
人の可能性を信じられず、誤った救済(すく)いを押し通そうとした憤怒(キレ)るしかない者たちとは違う。」
 思い出すのは、己を殺した闇医者一派。
 医師として真っ直ぐに人と向き合い、懸命に命を救ったからこそ、幸福になれなかった者たちを見てきた優しき怪獣(モンスター)。

 ついさっきまで思い出すことすらできなかった者たちと、ついさっき決別した女を覇世川左虎は比較する。
マイ=ラッセルハートは彼らとは違う。
 いい意味でも、悪い意味でも。まったく別の価値観で生きている。

「正しき善も正しき救済(すく)いも知ったうえで。彼女は1つの道だけを進んでいる。
お前に言わせれば愚にもつかない道だとも。」
「そうだろうとも。記憶を操作してまで作り上げたい世界など所詮…」
「復讐だ。」

 その言葉に、ルルーシュの顔が引きつった。
 ルルーシュ・ランペルージが抱えていた願いと、全く同じものを。否定していた記憶操作能力者が抱えていた。
 復讐を果たしたルルーシュに、その願いを否定する権利はあるのだろうか。
 嘲笑し、否定し、貶めようと考えていた言葉が喉の奥から消し飛んだルルーシュを前に、左虎は続ける。

「その是非を語る言葉を左虎は持たん。
左虎はたまたまその一歩を踏み出さずに済んだだけの幸福者にすぎん。
左虎と彼女の違いなど、万分の一にも満たぬ可能性を拾うことができただけ。」
「万分の一の幸福か。」
 いいことを言うなと、掛け値なしでルルーシュはその言葉を受け入れた。
 万分の一の幸福者。まさしくそうなのだろう。
 スザクがいなければ。ナナリーがいなければ。C.C.と出会わなければ。ルルーシュの人生はどんな形をしていたか。
 少なくとも、復讐を果たし、悪の皇帝となる未来は無かっただろう。

「情(あま)かった数刻前の左虎は、それ故に彼女を殺さなんだ。
そして次にまみえたとき彼女が過ちを冒しているのであれば。躊躇いなくブッ殺す。」
 覇世川左虎の言葉は、ルルーシュの想像を覆し重い。
 こちらを見透かしているような鋭い視線からは、撃つ覚悟も撃たれる覚悟も読み取れた。
卜部やロロのおかげで大なり小なりルルーシュの印象が緩和していた今までの参加者とは違い、甘く温い平穏を享受せず自分で考え実行する胆力と自負がある。
はっきり言って厄介だ。
そしてもっと厄介なことにこれまでの確率から言えば、 覇世川左虎レベルの特記戦力はルルーシュの想像よりはるかに多いのだ。

「そうか。」
 ――その続きに何を言おうとしたのかは、もはやルルーシュ自身も覚えていない。
 確かなことは、覇世川左虎を厄介な相手と認め。
ロロや卜部のような緩衝材のいない中、ただルルーシュの態度や言葉だけで従わせられるような甘い相手は多くないのだと自覚したうえで。
 ・・・・・・・・・・・・・・・
 その全てを踏み越えねばならないという、己の野望の困難さをルルーシュは自覚し――

「全員伏せてください!!!」
 ――アスナの叫びが、一瞬にしてその思考を塗り替える。
 とっさのことに判断が遅れた左虎とルルーシュだが、アスナが指さす先にいる自分たちに飛びこんでくる紺色の何かを前に、危機が迫っていることを嫌でも理解させられた。

 伏せた三人の隣で、飛来する何かがストライクダガーをボーリングのピンのように吹き飛ばす。
オマケのようにルルーシュの部下を再起不能に追い込むと、ビルの壁面に大穴をあけながら動きを停止する。
 それは紺色の鎧だった。
 両足をだらけさせるその装甲には、鎖で縛られたかのような煤けた後が色濃く残る。

「万里の鎖…特級呪物まであの魔女の手に落ちているとはな。
強者を強化してどうするんだ。まったくこれでは何のための支給品なんだか。」
 嫌味をこぼす紫紺の鎧だったが、すぐに三人に気づくと仮面の奥に青い光を称えて視線を移した。

「皇帝サマに呪血の忍者、おまけに閃光か。」
「その声・・・ザラサリキエルか。」
「死告邪眼と呼べ。
中々豪華な面子。普段なら相手してやりたいところだが、そんな下らない話をしている余裕は無い。」

 息を切らせて立ち上がるザラサリキエル。その視線は上空の陰に向いている。
 少女の姿をしたその怪物に初めはみな首をかしげる中、ぐにゃりと笑みを浮かべ機械の少女の口角が上がる。

「あらアスナちゃん!無事だったのね。安心したわぁ。」
「ノワル・・・!!」
 ぞわりと音を立て鳥肌が立つ様を、三人の参加者は感じ取っていた。
 起動キーでその身を隠そうと、『災害』と称されるその凶悪さ危険性を彼らの本能が訴えていた。

「聞いてた姿(ビジュ)とは違えど、危機(ヤバ)さはむしろ聞きしに勝る!」
「松坂さとうやドラえもんの話も、もはや笑えんな。」
「そっちはルルーシュに、男に機械ばっかりか。
つまんないわねぇ。放送に居た可愛い女の子でも連れてきなさいよ。」
 身を震わせる男たちをよそに、欲しいケーキが売り切れていたとでも言いたげにノワルは頬を膨らませる。
 レモンの愛らしいデザインも相まって愛嬌のある挙動のはずなのに、3人の参加者とNPC達にはその顔はこれから喰らうカエルを品定めする蛇のように見えてならない。

「でもそうねぇ。下手に範囲火力をぶつけてアスナちゃんを殺したら大損だしねぇ。」
 蛙を見る蛇のような粘っこい。あるいは豚を見るような無関心な目。
 上空からその全てを一瞥すると、ノワルは良いことを思いついたと微笑み、右目の眼帯を外す。

「使っちゃうか。奥の手。
せっかくの大盤振る舞いだし。奥の方にいる連中もまとめて、消し飛ばしましょう!」
 眼帯の奥にあった右目が外気を浴び、バチリと稲妻を光らせる。
その眼はリトライアイと呼ばれるタイムマシン。
タイムマシンの機能が失われていることを『ERROR』と書かれた瞳の文字が示していても、バチバチと音を立てるリトライアイはこの場にいる全員に不吉な未来を予感させる。

「潮時か。『劣化複製(デッドコピー):跳躍王(キングリープ)』」
ただ一人、ノワルの行動の意味を知るザラサリキエルは早々に撤退を選択。
他の全員がノワルにあっけにとられている間に、その姿は煙のように消えていた。

「やっぱり運営にはバレてるのね。厄介ね。
まあいいわ、アスナちゃんと遠くにいる仮面ライダー以外は男ばっかり見たいだし。
これだけ間引ければ充分って事にしましょう。」
 その悪辣な笑みに、この場の全員が理解する。
 ノワルの最も恐るべきところは、『闇檻』による概念拘束でもなければ都市1つ容易く滅ぼせるほどの莫大な魔力量でもないということに。

 ノワルは欲しいものを諦めない。手に入れるためなら文字通りどんな手段もとってみせる。
可愛い子はみんなほしい。手元に集めて可愛いミルクサーバーにして虐めたい。
野郎は全員死んでほしい。男なんて視界に入れるだけで不快な虫は潰して捨てたい。
子供じみた願いを叶えるためならば、何でもするし何でもできるのがこの魔女だ。
 自由を奪い、心を砕き、未来を閉ざす。相手の弱点になるなら瀕死の弟子に攻撃をすることもノワルにとって当たり前の手だ。
 宇蟲王ギラのような王の矜持とはまるで異なる。バルバトス・ゲーティアやメラにも通じる加害者としての躊躇いのなさ。

「開眼(バージョンアップ)停止(ストップ)。」

 故にノワルは実行する。この場の全員にとって最悪の一手を、躊躇いなく踏み越える。
 ノワルの右目が光る意味を知る者は、もはやここには一人もいなかった。


 ☒☒☒☒☒


 巻戻士レモンの開眼(バージョンアップ)。
 その停止(ストップ)の名に反さず、20秒時間を止める能力である。
 一瞬一瞬の攻防の中で生きている達人級の参加者たちにとって、それは文字通り規格外(チート)な力。
 それ故に制約は大きく、オリジナルの巻戻士が一度の任務で一度しかこの力を使えないように一回の起動に令呪を要求する。文字通りの切り札だが。

「人の話はちゃんと聞いておくべきね。
 イドラちゃんやマジアマゼンタの頑張りが、こうして役に立ってくれたし。」

 令呪は、魔力の代用となる。
 では逆に莫大な魔力を利用し、令呪でしか扱えない機能を動かせるのではないか。
 ノワルはそう推測し、その判断は正しかった。
 現在のノワルが出せる魔力のほぼ半分。それだけのエネルギーを消費し開眼は果たされた。

 「アスナちゃんも無傷で回収できそうだし、一安心ね。」
 ふうと呟くその言葉は、誰の耳にも届かない。
 そのままノワル全身の兵装を周囲の参加者(アスナ除く)に向けて、引き金を引く。
 遠くに戦うロロや陽介、トランクスも射程圏内。
時間の許す限り撃ち込んだ弾丸と魔力弾は、解除と共に殺人級のスコールとして彼らを襲う。

 あっけないと思う者もいるだろうか。しかし考えてみてほしい。
 ノワルはアルジュナ・オルタとコンマ数秒単位の攻防を繰り広げられる実力者。
 その彼女に、20秒も時間を与えることは――

「じゃあ、おしまい。」

 ――死を意味する。それだけのことだ。





時が戻った。




全ては終わった。



【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュR2 死亡】
【覇世川左虎@忍者と極道 死亡】

【ロロ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ 死亡】
【花村陽介@ペルソナ4 死亡】
【トランクス(未来)@ドラゴンボール超 死亡】

【アスナ@SAO プログレッシブ 星なき夜のアリア (映画) 意識不明・人権剥奪】

【神戸しお@ハッピーシュガーライフ ――












































































































































































































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