事態は正に火急を要する。
“魔獣装甲”より齎されし誘いは、デスゲームの戦力差(パワーバランス)へ一石投じる類なれど。
冥黒王ギギストにとっては聞くに値せず、愉快犯の戯言も同然。
拒否を返した理由に、理解の遥か遠くへ位置する娘が。
手を焼かされ振り回され、それでも在り方に惹き付けられるアビドスの生徒会長が関係してるかは。
あえて言葉に出す気はなく、意識を割くべきはそこじゃあない。
“魔獣装甲”より齎されし誘いは、デスゲームの戦力差(パワーバランス)へ一石投じる類なれど。
冥黒王ギギストにとっては聞くに値せず、愉快犯の戯言も同然。
拒否を返した理由に、理解の遥か遠くへ位置する娘が。
手を焼かされ振り回され、それでも在り方に惹き付けられるアビドスの生徒会長が関係してるかは。
あえて言葉に出す気はなく、意識を割くべきはそこじゃあない。
「五道化の女の子が言ってたことって、本当なのかな……?」
「全てを鵜呑みにする気はないが、嘘を並べ立てたところで死滅遊戯の進行には何の意味もないだろう」
「ウロボロスってのが実現しちまったら、ロクでもない事が始まるのは間違いないか」
「全てを鵜呑みにする気はないが、嘘を並べ立てたところで死滅遊戯の進行には何の意味もないだろう」
「ウロボロスってのが実現しちまったら、ロクでもない事が始まるのは間違いないか」
エケラレンキスが去り、残った三人は深刻さを露わに額を突き付け合う。
結論から言うと、暗黒の扉を開くことは準備が揃えば不可能じゃない。
嘗て黄金郷(エルドラド)に魅せられたグリオンが、レベルナンバー10のケミー達とオリジナルのガッチャードライバーを使い。
暗黒の扉の解放を目論んだのは、ギギストも知っている。
一ノ瀬宝太郎と関係者達が参加させられ、ケミーカードがばら撒かれたこの地において。
かの闇の錬金術師の計画を成功に導いたとて、十分起こり得る話だ。
結論から言うと、暗黒の扉を開くことは準備が揃えば不可能じゃない。
嘗て黄金郷(エルドラド)に魅せられたグリオンが、レベルナンバー10のケミー達とオリジナルのガッチャードライバーを使い。
暗黒の扉の解放を目論んだのは、ギギストも知っている。
一ノ瀬宝太郎と関係者達が参加させられ、ケミーカードがばら撒かれたこの地において。
かの闇の錬金術師の計画を成功に導いたとて、十分起こり得る話だ。
「だがウロボロスそのものを我が身へ降ろしたとて、使いこなせるかは別。善も悪も無い、最早参加者とすら呼べぬモノへ……破壊を振り撒くだけの存在に成り果ててもおかしくないだろう」
『一強』との言葉は、確かに当て嵌まるのやもしれぬ。
しかしそこには譲れぬ矜持も曲げられない信念も無く、生きた天災が産み落とされるだけ。
或いはウロボロスを制御下に置いたとしてもだ、そうなったらなったで厄介な敵が一人増えてしまう。
殺し合いに抗う道を往く以上、必ずや阻止せねばなるまい。
しかしそこには譲れぬ矜持も曲げられない信念も無く、生きた天災が産み落とされるだけ。
或いはウロボロスを制御下に置いたとしてもだ、そうなったらなったで厄介な敵が一人増えてしまう。
殺し合いに抗う道を往く以上、必ずや阻止せねばなるまい。
「あの女狐の目論見を果たせるのは、錬金術の心得がある者に限定される。少なくとも、一ノ瀬宝太郎は真っ先に外して構わん」
「まあどう考えたって、ふざけた提案に乗る奴じゃないからな」
「ギギストくんも今断ったばっかりだし、じゃあやっぱりグリオンのところに……?」
「まあどう考えたって、ふざけた提案に乗る奴じゃないからな」
「ギギストくんも今断ったばっかりだし、じゃあやっぱりグリオンのところに……?」
「パラド、お前が言う覇王を名乗る男もケミーの力を操っていたのは間違いないな?」
「あ、ああ。……いやちょっと待て、まさかあいつのとこに行ったってのか?」
「あ、ああ。……いやちょっと待て、まさかあいつのとこに行ったってのか?」
ヒースクリフとの戦闘で、覇王が度々有する力を行使し。
勝利を収めるのに多大な貢献をしたのは、記憶に新しい。
錬金術師としてのハイレベルな腕前は確かに、エケラレンキスの求める人材にピッタリだ。
なれど覇王は参加者皆殺しや優勝狙いのプレイヤーに非ず、己が覇道で以て運営側に勝利を収める男。
打倒羂索の目的自体はパラドと同じであり、“対主催者”側に位置する一人だが。
勝利を収めるのに多大な貢献をしたのは、記憶に新しい。
錬金術師としてのハイレベルな腕前は確かに、エケラレンキスの求める人材にピッタリだ。
なれど覇王は参加者皆殺しや優勝狙いのプレイヤーに非ず、己が覇道で以て運営側に勝利を収める男。
打倒羂索の目的自体はパラドと同じであり、“対主催者”側に位置する一人だが。
「……あり得ない話、じゃないかもな」
キリトを介錯し、納得いかない様子のまふゆと交わした言葉は覚えてる。
貪欲で、されど邪さや澱みは宿さない。
純粋なまでに力を欲し、善とは違えど信じる道を突き進む。
邪悪の王とはまた異なる、支配者たらんとする姿を思えば。
新たな力を手に入れる機会を、あえて突っ撥ねる理由も薄い。
貪欲で、されど邪さや澱みは宿さない。
純粋なまでに力を欲し、善とは違えど信じる道を突き進む。
邪悪の王とはまた異なる、支配者たらんとする姿を思えば。
新たな力を手に入れる機会を、あえて突っ撥ねる理由も薄い。
(口で言って引き下がる相手、じゃないよな……)
錬金術のエキスパートたるギギストが危険性を説いたところで、あっさり頷く男じゃあない。
むしろリスクすら承知の上で暗黒の扉を開き、力を得る方が想像出来る。
ユフィリアやまふゆと違い、仲間と呼べる関係ではないが。
ヒースクリフ相手に協力プレイで挑み、勝利を手に入れたのもまた事実。
戦わずに済むならそれに越したことはないが、場合によっては矛を交える他ないのだろう。
むしろリスクすら承知の上で暗黒の扉を開き、力を得る方が想像出来る。
ユフィリアやまふゆと違い、仲間と呼べる関係ではないが。
ヒースクリフ相手に協力プレイで挑み、勝利を手に入れたのもまた事実。
戦わずに済むならそれに越したことはないが、場合によっては矛を交える他ないのだろう。
「けど仮に実力行使に出るっつっても、イージーモードで止められる奴じゃねぇぞ?シロコだって、多分覇王の側に付く筈だ」
「シロコちゃん……」
「シロコちゃん……」
滅びたアビドスを知る少女と、未だ会えないのみならず。
事態はユメの予想を超えて、悪化の一途を辿るばかり。
会いたい気持ちと裏腹に、シロコ達が何処へ行ったかの手掛かりもなく。
仮に見付けられても、戦闘はほぼ避けられない。
事態はユメの予想を超えて、悪化の一途を辿るばかり。
会いたい気持ちと裏腹に、シロコ達が何処へ行ったかの手掛かりもなく。
仮に見付けられても、戦闘はほぼ避けられない。
「いずれにせよ、我らのみで対処に当たるには些か戦力に不安が残る。ここで得た情報も含め、マクギリスらの元へ一度持ち帰るのが無難か」
冥黒王である自身でさえ、最上位のプレイヤーには届かない魔境だ。
焦って覇王探しに乗り出した結果、返り討ちで全滅しましたじゃ笑い話にもならない
油断と慢心はとうに噛み砕き、現実的に視野を広げる。
アッシュフォード学園や博物館にいるメンバーらも、メラへの対策で人員配置の見直しを迫られてる筈。
一旦拠点に戻り情報を纏め、改めてそれぞれ対処に動くのが吉。
先の配信を見る限り、イザーク・ジュールやキラ・ヤマト准将らは鉄華兵団との協力に今更諍いを持ち込まないだろう。
焦って覇王探しに乗り出した結果、返り討ちで全滅しましたじゃ笑い話にもならない
油断と慢心はとうに噛み砕き、現実的に視野を広げる。
アッシュフォード学園や博物館にいるメンバーらも、メラへの対策で人員配置の見直しを迫られてる筈。
一旦拠点に戻り情報を纏め、改めてそれぞれ対処に動くのが吉。
先の配信を見る限り、イザーク・ジュールやキラ・ヤマト准将らは鉄華兵団との協力に今更諍いを持ち込まないだろう。
「なら一緒に行って良いか?情けねぇ話だけど、俺だけじゃまふゆ達を探すのにも限界があるからな……」
行方知れずのユフィリア達を探そうにも、手掛かりは一つもなく。
パラド単独で駆けずり回り、運良く発見に漕ぎ付けられるとも思えない。
そこで当てにするのが鉄華兵団の拠点、ひみつ道具博物館だ。
捜索に適した道具を借りられれば、早期の発見が叶うかもしれない。
パラド単独で駆けずり回り、運良く発見に漕ぎ付けられるとも思えない。
そこで当てにするのが鉄華兵団の拠点、ひみつ道具博物館だ。
捜索に適した道具を借りられれば、早期の発見が叶うかもしれない。
断る理由も無い為、パラドの頼みを承諾しいざ出発だ。
幸い移動手段なら手元にあり、徒歩で行くよりも余程早く着く。
リュックサックを開けるついでに、失効状態のケミーカードをギギストに返却しておいた。
錬金術師ならざる己よりは、持ち主の方が使い道を見出せるだろう。
幸い移動手段なら手元にあり、徒歩で行くよりも余程早く着く。
リュックサックを開けるついでに、失効状態のケミーカードをギギストに返却しておいた。
錬金術師ならざる己よりは、持ち主の方が使い道を見出せるだろう。
キャメロ・ダートとカブトローに跨り、アクセルを踏み込む。
道中、NPCの妨害に遭ったが五道化レベルでないなら無問題。
ユメが運転するマシンの後部座席で、ギギストが重力操作を発動し瞬殺。
圧死した屍を無視し、ドロップアイテムをすれ違い様に回収。
数エリア進んだ先で高速化のエナジーアイテムを入手出来たのも、運が良い。
移動時間の短縮に繋げ、気付けば遠くない位置にアッシュフォード学園が見えて来た。
道中、NPCの妨害に遭ったが五道化レベルでないなら無問題。
ユメが運転するマシンの後部座席で、ギギストが重力操作を発動し瞬殺。
圧死した屍を無視し、ドロップアイテムをすれ違い様に回収。
数エリア進んだ先で高速化のエナジーアイテムを入手出来たのも、運が良い。
移動時間の短縮に繋げ、気付けば遠くない位置にアッシュフォード学園が見えて来た。
「え?あそこにいるのって……」
ユメの呟きに、男二人も前方へ目を凝らせば。
何やら非常事態が起きたのを察するまでに、時間は掛からなかった。
何やら非常事態が起きたのを察するまでに、時間は掛からなかった。
◆◆◆
通夜を思わせる沈黙が続いていた。
安易に言葉を発する事の憚れる、重苦しさ。
ただそこへいるだけで息が詰まる錯覚を覚え、居心地の悪さだけが充満していく。
何かを口に出さねばとは分かっているも、その役目を担う為に勇気が必要。
安易に言葉を発する事の憚れる、重苦しさ。
ただそこへいるだけで息が詰まる錯覚を覚え、居心地の悪さだけが充満していく。
何かを口に出さねばとは分かっているも、その役目を担う為に勇気が必要。
学校で居場所を失い、ババハウスで過ごす時間だけが唯一傷付かずに済んだ頃の。
昔の自分だったら、他の誰かが口火を切るまでずっと俯き。
チラチラ横目で様子を窺ってたんだろうなと、密かに美嘉は思う。
昔の自分だったら、他の誰かが口火を切るまでずっと俯き。
チラチラ横目で様子を窺ってたんだろうなと、密かに美嘉は思う。
今だって、劇的に良い方向に変わったなんて自信を持っていない。
殺し合いという、芸能界デビューが霞むくらいの非日常に招かれて。
多くの人に助けられ、その度に失って来た。
代葉が死んだ、シノンが死んだ、灯悟が死んだ。
最期は見ておらずとも、薫もきっと長くは持たない。
戦う力を、理不尽に抗う力を得て尚も指の間からすり抜ける事の方が圧倒的に多い。
何故こうも、上手くいかないんだろう。
膝を抱え顔を埋めて、延々無力感に沈みたい衝動が欠片もないとは言い切れない。
殺し合いという、芸能界デビューが霞むくらいの非日常に招かれて。
多くの人に助けられ、その度に失って来た。
代葉が死んだ、シノンが死んだ、灯悟が死んだ。
最期は見ておらずとも、薫もきっと長くは持たない。
戦う力を、理不尽に抗う力を得て尚も指の間からすり抜ける事の方が圧倒的に多い。
何故こうも、上手くいかないんだろう。
膝を抱え顔を埋めて、延々無力感に沈みたい衝動が欠片もないとは言い切れない。
「……ニコルくん、今はトランクスさん達を安静にさせよう」
だけど、守れないままの自分を変えたいと思ったのは嘘じゃない。
強くなりたい、斬撃の勇者と共に絆の戦士へ誓った己は否定させない。
時には足を止め、呼吸を整える時間は必要でも。
諦め故に膝を付くんじゃなく、再び走り出す為に立ち止まるのだ。
強くなりたい、斬撃の勇者と共に絆の戦士へ誓った己は否定させない。
時には足を止め、呼吸を整える時間は必要でも。
諦め故に膝を付くんじゃなく、再び走り出す為に立ち止まるのだ。
「ミカ……」
「残して来た皆が……ゆうちゃん達が凄く心配だけど。でも、出来る事から、一つ一つ始めないと」
「残して来た皆が……ゆうちゃん達が凄く心配だけど。でも、出来る事から、一つ一つ始めないと」
本音を言えば、今すぐにでもゆう達の元へ戻り無事を確かめたい。
向こうでの戦いはどうなったのか、メラやザラサリキエルによる被害がもっと広まってやしないか。
不安は一向に尽きず、脇目も振らずに博物館へ行きたくてしょうがない。
しかし、離れた友人たちが心配だとしても。
目の前で傷付いた仲間を、蔑ろにする理由は一つもない。
会ったばかりで自己紹介の余裕すら無かったにも関わらず、代葉に助けられた美嘉だからこそ。
自分達を守るべくデストルドスへ立ち向かった戦士の、命を繋がない訳にはいかない。
向こうでの戦いはどうなったのか、メラやザラサリキエルによる被害がもっと広まってやしないか。
不安は一向に尽きず、脇目も振らずに博物館へ行きたくてしょうがない。
しかし、離れた友人たちが心配だとしても。
目の前で傷付いた仲間を、蔑ろにする理由は一つもない。
会ったばかりで自己紹介の余裕すら無かったにも関わらず、代葉に助けられた美嘉だからこそ。
自分達を守るべくデストルドスへ立ち向かった戦士の、命を繋がない訳にはいかない。
「そう……ですね。先ずは彼らの手当てが先だ」
薫の異変に気付けず、流子とピルツも最悪の二文字ですら控え目に思える末路を辿った。
短時間で次々奪われる仲間の命へ、軍人のニコルと言えども仕方ないで割り切れる筈がなく。
二転三転する事態に翻弄され、気付けばメラを討つどころか逃げるだけでも精一杯の始末。
余りの不甲斐なさへ、自分自身を殴り付けたくなるが。
美嘉が言う通り、自責の念に駆られるよりもすべき事はある。
短時間で次々奪われる仲間の命へ、軍人のニコルと言えども仕方ないで割り切れる筈がなく。
二転三転する事態に翻弄され、気付けばメラを討つどころか逃げるだけでも精一杯の始末。
余りの不甲斐なさへ、自分自身を殴り付けたくなるが。
美嘉が言う通り、自責の念に駆られるよりもすべき事はある。
「彼らを寝かせられる場所まで運びましょう。ここが何処かはまだ分かりませんが……」
「浄水場、らしいですよ。博物館とは地味に距離がありますね」
「浄水場、らしいですよ。博物館とは地味に距離がありますね」
シノアが見上げる方へ釣られて向けば、施設内のマップが壁に貼られてあった。
浄水場案内図と書かれており、地図上ではG-6エリアに件の施設は設置。
会場最東端まで一気に転移、となるよりはまだマシと言えるが。
トレーラーを全速力で飛ばしても、すぐに戻れる距離とも言えまい。
ワープ可能なアイテムを落とすNPCに、再エンカウントの幸運へ期待する程楽観的にはなれない。
浄水場案内図と書かれており、地図上ではG-6エリアに件の施設は設置。
会場最東端まで一気に転移、となるよりはまだマシと言えるが。
トレーラーを全速力で飛ばしても、すぐに戻れる距離とも言えまい。
ワープ可能なアイテムを落とすNPCに、再エンカウントの幸運へ期待する程楽観的にはなれない。
今頃、博物館付近の戦場はどうなっているのだろう。
尽きぬ不安はやがて、最悪の結末を嫌でもニコルに想像させる。
何でこんなことになってしまったんだと、叫び出し掛ける己を制し。
気を失った仲間達へ、無理やりにでも意識を集中。
尽きぬ不安はやがて、最悪の結末を嫌でもニコルに想像させる。
何でこんなことになってしまったんだと、叫び出し掛ける己を制し。
気を失った仲間達へ、無理やりにでも意識を集中。
案内図を頼りに、作業員用の休養室へ足を進める。
24時間体制の施設故か、突発的な体調不良者が出るのを想定していたらしい。
簡易ベッドにトランクスとちひろを横たわらせ、傷に処置を施す。
医療設備が整った場所ではなく、救急箱の中身を拝借した気休めに過ぎないが。
何もしないよりはずっと良い筈。
24時間体制の施設故か、突発的な体調不良者が出るのを想定していたらしい。
簡易ベッドにトランクスとちひろを横たわらせ、傷に処置を施す。
医療設備が整った場所ではなく、救急箱の中身を拝借した気休めに過ぎないが。
何もしないよりはずっと良い筈。
軍人として、咄嗟の処置の知識を学んだニコルはもとより。
美嘉もボランティアで子供達と野外活動に赴く機会があり、傷の手当ては手際が良い方だ。
トランクスとちひろにそれぞれ包帯を巻き終え、互いに一息つく。
死に至る程でなくとも、相応に消耗は抱えているのだ。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、水分を補給しておく。
コクリコクリと、小さく喉を鳴らす音だけが鼓膜へ微かに届いた。
美嘉もボランティアで子供達と野外活動に赴く機会があり、傷の手当ては手際が良い方だ。
トランクスとちひろにそれぞれ包帯を巻き終え、互いに一息つく。
死に至る程でなくとも、相応に消耗は抱えているのだ。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、水分を補給しておく。
コクリコクリと、小さく喉を鳴らす音だけが鼓膜へ微かに届いた。
「……っ、ここは……」
ペットボトルから口を離した丁度そのタイミングで、先に瞼を開けたのはちひろだ。
照明に照らされ寝起きの瞳には優しくなく、眩し気に顔を逸らす。
視界が徐々にハッキリしていき、見覚えが無い景色への疑問も一瞬。
今に至る寸前の記憶で、脳は現実を正しく認識し出す。
照明に照らされ寝起きの瞳には優しくなく、眩し気に顔を逸らす。
視界が徐々にハッキリしていき、見覚えが無い景色への疑問も一瞬。
今に至る寸前の記憶で、脳は現実を正しく認識し出す。
「確か、瓦礫が振って来て……っ!?そ、そうだ、博物館が……!」
「落ち着いてくださいチヒロ、ここは博物館ではありません」
「落ち着いてくださいチヒロ、ここは博物館ではありません」
血相を変えて跳ね起きるちひろを宥め、現在までの経緯を伝える。
可能な限り冷静さを保ち説明したが、状況の悪さをニコル自身も再認識し。
気付かぬ内に顔色を曇らせながら話し終えれば、案の定と言うべきだろう。
愕然とし二の句が継げず、ちひろは金魚のように口を開閉するしか出来ない。
可能な限り冷静さを保ち説明したが、状況の悪さをニコル自身も再認識し。
気付かぬ内に顔色を曇らせながら話し終えれば、案の定と言うべきだろう。
愕然とし二の句が継げず、ちひろは金魚のように口を開閉するしか出来ない。
「浄水場……?え、じゃあ待ってよ。他の皆やサッちゃん達はどうなったの?」
「分かりません。確かめようにも、今からではどれだけ急いでも……」
「分かりません。確かめようにも、今からではどれだけ急いでも……」
浄水場から博物館までの距離は、とてもじゃないが数分程度で着く長さじゃあない。
どれだけ全速力で戻っても、現実的に考えると。
神将鎧武の襲撃を皮切りに起きた大乱戦は、到着した頃にはとっくに終結している。
王様戦隊か、鉄華兵団か、神殺しか、全く別の誰かか。
勝利を手にするのが何者であっても、覆せない事実は一つ。
ちひろ達はサチ救出という大勝負の舞台へ、乗り込む事すら許されなかった。
どれだけ全速力で戻っても、現実的に考えると。
神将鎧武の襲撃を皮切りに起きた大乱戦は、到着した頃にはとっくに終結している。
王様戦隊か、鉄華兵団か、神殺しか、全く別の誰かか。
勝利を手にするのが何者であっても、覆せない事実は一つ。
ちひろ達はサチ救出という大勝負の舞台へ、乗り込む事すら許されなかった。
「そん、な……なら、サッちゃんはどうなるの……!?」
「……向こうに残っている方々を、信じるしか――」
「ここ一番の大勝負を王様戦隊に託す、そういうことですか?」
「……っ」
「……向こうに残っている方々を、信じるしか――」
「ここ一番の大勝負を王様戦隊に託す、そういうことですか?」
「……っ」
苦いものを絞り出すように答えるニコルに、温度を削ぎ落とした声が尋ねる。
冷め切った瞳のシノアへ、上手い返しも思い付かず。
唇を噛み視線を逸らす態度が、肯定の証だった。
冷め切った瞳のシノアへ、上手い返しも思い付かず。
唇を噛み視線を逸らす態度が、肯定の証だった。
最強格たるトランクスは重傷で自分達の傍らに横たわり、参謀格のマクギリスは暴走とも取れる奇行に出た。
英寿も“死告邪眼”の相手を引き受けねばならず、ドゴルドは流牙共々怪獣の対処へ掛かり切り。
鉄華兵団の主力メンバーがこの有様な以上、神殺しとの直接対決に臨める人選は大いに限られて来る。
即ち、王様戦隊しかいない。
英寿も“死告邪眼”の相手を引き受けねばならず、ドゴルドは流牙共々怪獣の対処へ掛かり切り。
鉄華兵団の主力メンバーがこの有様な以上、神殺しとの直接対決に臨める人選は大いに限られて来る。
即ち、王様戦隊しかいない。
「王様戦隊なら、サッちゃんを絶対に助けてくれるの……?」
「それは……」
「ルルーシュはあの通りだし、イザークさんだってサッちゃんに、仲間を、こ、殺されてるんだよ……!?」
「それは……」
「ルルーシュはあの通りだし、イザークさんだってサッちゃんに、仲間を、こ、殺されてるんだよ……!?」
サチ自身の望みではなく、メラの恐怖に屈したが故の一概に責められぬ動機とはいえ。
花村陽介を手に掛けたのは、紛れもない事実。
此度の闘争でもサチと矛を交える状況へ陥れば、イザークとてむざむざ死んではやらない。
返り討ちにし、場合によっては命を奪う事も止む無しだと。
イザークを知る者として、何より同じ軍人としてニコル自身もそれは否定できない
まして敵が最凶の神殺しとあらば、サチの安全に気を遣ってられる余裕は皆無と言っても過言に非ず。
メラを屠る為の些細な犠牲、そう見なされない保障がどこにあるのか。
花村陽介を手に掛けたのは、紛れもない事実。
此度の闘争でもサチと矛を交える状況へ陥れば、イザークとてむざむざ死んではやらない。
返り討ちにし、場合によっては命を奪う事も止む無しだと。
イザークを知る者として、何より同じ軍人としてニコル自身もそれは否定できない
まして敵が最凶の神殺しとあらば、サチの安全に気を遣ってられる余裕は皆無と言っても過言に非ず。
メラを屠る為の些細な犠牲、そう見なされない保障がどこにあるのか。
「今からでも戻ろうよ!また一瞬で博物館に行けるような、道具を探して……!」
「チヒロ!冷静になってください!幾ら何でも、そんな都合良くは……」
「だけど……!」
「チヒロ!冷静になってください!幾ら何でも、そんな都合良くは……」
「だけど……!」
分かっている、無茶を言ってる自覚はちひろにもある。
けれどニコルの言葉に頷き、大人しく待機を選ぶ程に聞き分けが良くもなれない。
メラに攫われ、人殺しをさせられた友達の元へ駆け付けられず。
何の助けにもなれないまま、彼女と言葉を交わす機会すら永遠に失われるやもしれぬとなり。
諦めを受け入れるのは、真っ平御免だ。
けれどニコルの言葉に頷き、大人しく待機を選ぶ程に聞き分けが良くもなれない。
メラに攫われ、人殺しをさせられた友達の元へ駆け付けられず。
何の助けにもなれないまま、彼女と言葉を交わす機会すら永遠に失われるやもしれぬとなり。
諦めを受け入れるのは、真っ平御免だ。
「あ、か、亀井さん!亀井さんが持ってる、ケミーとかってカード!それを使って、博物館に戻れたり出来ないかな……!?」
「鳩田さん……」
「鳩田さん……」
必死の形相で縋り付かれ、美嘉も気まずげに言葉へ詰まる。
正直に言って、ちひろの焦燥が理解出来ない訳じゃない。
自分だってゆうと離れざるを得なかったのだ、今すぐ戻って無事を確かめたい。
それにもし、東西南北の三人がサチと同じ立場に置かれたら。
冷静でいられる自信は全くない。
正直に言って、ちひろの焦燥が理解出来ない訳じゃない。
自分だってゆうと離れざるを得なかったのだ、今すぐ戻って無事を確かめたい。
それにもし、東西南北の三人がサチと同じ立場に置かれたら。
冷静でいられる自信は全くない。
だが現実問題どうにもならないのは、意識が戻らないトランクスを除き全員の理解するところ。
急いで戻れば間に合うだとか、根拠の無い励ましを口にしたとて。
余計に、ちひろの精神へ負担を掛けるだけだ。
ここは嫌われ役を買ってでも、彼女を落ち着かせるべきか。
サチと交流を持つ一人として、ニコルが内心で決意を固め――
急いで戻れば間に合うだとか、根拠の無い励ましを口にしたとて。
余計に、ちひろの精神へ負担を掛けるだけだ。
ここは嫌われ役を買ってでも、彼女を落ち着かせるべきか。
サチと交流を持つ一人として、ニコルが内心で決意を固め――
「――――――っ!!!この、気配は……!?」
憂いを籠めた表情が一転、警戒を露わに強張る美嘉へ。
状況に付いて行けないちひろを置き去りに、ニコルもただ事でないと瞬時に察する。
悪霊の力と冥黒の力、光の正反対に座するそれらを取り込み。
同じ側の気配へ敏感になった美嘉だからこそ、真っ先に気付けた。
負の念を煮詰めに煮詰めた、この世の者ならざる禍々しさ。
一時は首を垂れた冥黒王にも匹敵する、邪悪そのものが意思を持ったかの存在。
疑いようもなく危険と断言出来る何者かが、近付いて来る。
状況に付いて行けないちひろを置き去りに、ニコルもただ事でないと瞬時に察する。
悪霊の力と冥黒の力、光の正反対に座するそれらを取り込み。
同じ側の気配へ敏感になった美嘉だからこそ、真っ先に気付けた。
負の念を煮詰めに煮詰めた、この世の者ならざる禍々しさ。
一時は首を垂れた冥黒王にも匹敵する、邪悪そのものが意思を持ったかの存在。
疑いようもなく危険と断言出来る何者かが、近付いて来る。
「皆、急いでここを離れ――」
脅威からの退避を促す声は、轟音と振動に掻き消される。
休養室の扉が壁諸共吹き飛び、破片が散弾銃さながらに飛来。
剥き出しの肌に食い込み、顔面に血のメイクが施されるまで数秒もない中。
ザフトの軍人として、戦場の空気を嫌と言う程に味わって来たニコル。
デスゲームで幾度も闘争に放り込まれ、本能と呼ぶべき部分が研ぎ澄まされて来た美嘉。
両名共に弾かれるかの動作で、所持する装備を急ぎ使用。
等身大サイズに落とし込んだMSと、絆の戦士に似た外部装甲をそれぞれ装着。
休養室の扉が壁諸共吹き飛び、破片が散弾銃さながらに飛来。
剥き出しの肌に食い込み、顔面に血のメイクが施されるまで数秒もない中。
ザフトの軍人として、戦場の空気を嫌と言う程に味わって来たニコル。
デスゲームで幾度も闘争に放り込まれ、本能と呼ぶべき部分が研ぎ澄まされて来た美嘉。
両名共に弾かれるかの動作で、所持する装備を急ぎ使用。
等身大サイズに落とし込んだMSと、絆の戦士に似た外部装甲をそれぞれ装着。
「っとと、訪問の挨拶にしちゃ乱暴過ぎだって!」
更に、マスターの危機とあっては指を咥えて見てる訳にいかず。
未だ浅くない負傷を抱えたまま、アストルフォが霊体化を解く。
ちひろの負担が大きい為、実体化は望ましいと言えないが。
現状を見るに、そうも言ってられないだろう。
未だ浅くない負傷を抱えたまま、アストルフォが霊体化を解く。
ちひろの負担が大きい為、実体化は望ましいと言えないが。
現状を見るに、そうも言ってられないだろう。
「ノック無しで入って来たのは大目に見ろよ?夜中に馬鹿騒ぎするようなガキ相手に、礼儀正しくしてやる理由もないだろ?」
原形を留めず、床に散らばるドアだった物を踏み付けながら。
入室早々、挨拶代わりの嘲りをぶつける声に。
聞き覚えのあるちひろは、途端に背が凍り付く。
入室早々、挨拶代わりの嘲りをぶつける声に。
聞き覚えのあるちひろは、途端に背が凍り付く。
「あ、な、なんでここに……!?」
「俺がこの場所に来ちゃいけません、なんて決まりでもあるのか?」
「俺がこの場所に来ちゃいけません、なんて決まりでもあるのか?」
ゾッとする程に眩い銀髪を揺らし、端正な顔立ちでこれ見よがしに嘲笑を浮かべる男。
黒一色のコーデに身を包み、鍔の無い剣を携えた特徴は。
初対面となるニコルと美嘉も、別行動中の仲間から既に聞き及んでいる。
黒一色のコーデに身を包み、鍔の無い剣を携えた特徴は。
初対面となるニコルと美嘉も、別行動中の仲間から既に聞き及んでいる。
「まさか、この男がジンガ……!?」
「大・正・解!自己紹介の手間は省けたな」
「大・正・解!自己紹介の手間は省けたな」
ユメとギギストの二人掛かりでも倒せず、グリオン配下の死体人形を喰らった魔剣士。
ホラー喰いのホラー、ジンガは大仰な動作で肯定を返す。
外見だけ見れば妖艶な男なれど、纏う空気は人とは思えぬ程におぞましい。
意思無き神将マッハチェイサーとは余りにも違う、世界を足蹴にするかの尊大さと。
命を玩具と見なす、悪意の塊の如き視線を受け冷や汗を掻くニコルはもとより。
グリオンにも引けを取らない邪悪さへ、美嘉も強く警戒せざるを得なかった。
ホラー喰いのホラー、ジンガは大仰な動作で肯定を返す。
外見だけ見れば妖艶な男なれど、纏う空気は人とは思えぬ程におぞましい。
意思無き神将マッハチェイサーとは余りにも違う、世界を足蹴にするかの尊大さと。
命を玩具と見なす、悪意の塊の如き視線を受け冷や汗を掻くニコルはもとより。
グリオンにも引けを取らない邪悪さへ、美嘉も強く警戒せざるを得なかった。
「一足先に探検と洒落込んでたら、覚えのある気配が見付かったからな。わざわざ顔を出しに来てみれば、随分な有様だなぁおい」
視線は横たわったままの青年を射抜くも、向こうが起きる気配は無し。
ジンガの言葉に嘘はなく、ニコル達が訪れるより前に浄水場へやって来た。
収穫らしい収穫は、『一つ』を除き得られず。
切り上げて他を当たるかと考えた矢先、自分以外の気配に気付いた。
施設が相応に広い故か、気付かぬ内にいつの間にやら現れたようだがともかく。
予定変更で接触に赴き、魔戒剣の一閃で大胆な訪問を行ったのである。
ジンガの言葉に嘘はなく、ニコル達が訪れるより前に浄水場へやって来た。
収穫らしい収穫は、『一つ』を除き得られず。
切り上げて他を当たるかと考えた矢先、自分以外の気配に気付いた。
施設が相応に広い故か、気付かぬ内にいつの間にやら現れたようだがともかく。
予定変更で接触に赴き、魔戒剣の一閃で大胆な訪問を行ったのである。
再起を果たした青い戦士は誰にやられたのか、傷だらけで気絶中。
一度は異次元空間を抜け出したというのに、以前と違い余裕が剥がれ落ちた小娘。
ついでにそいつの相棒(かいいぬ)も、浅くない負傷を確認
会うのが初となる二人組の内の片方は、明らかに『こちら側』の力を有している。
向こうも向こうで、楽しいお祭り騒ぎを味わって来たらしい。
一度は異次元空間を抜け出したというのに、以前と違い余裕が剥がれ落ちた小娘。
ついでにそいつの相棒(かいいぬ)も、浅くない負傷を確認
会うのが初となる二人組の内の片方は、明らかに『こちら側』の力を有している。
向こうも向こうで、楽しいお祭り騒ぎを味わって来たらしい。
「一体どんなパーティーを楽しんだのか、是非とも聞かせて欲しいもんだ」
「話すだけなら良いけどね、聞いたら大人しく回れ右してくれるのかな?」
「っ、い、今はあんたに構ってる場合じゃない!」
「話すだけなら良いけどね、聞いたら大人しく回れ右してくれるのかな?」
「っ、い、今はあんたに構ってる場合じゃない!」
笑みは崩さず、されど友好的とは異なる口調のアストルフォに並び。
ちひろも敵意を隠さないで、睨み付けた。
ただでさえサチの安否が気掛かりだというのに、何故こんなタイミングで現れるのか。
以前の遭遇時と違いイノセンスは無いけれど、ジンガの在り方を認める気は微塵もない。
ちひろも敵意を隠さないで、睨み付けた。
ただでさえサチの安否が気掛かりだというのに、何故こんなタイミングで現れるのか。
以前の遭遇時と違いイノセンスは無いけれど、ジンガの在り方を認める気は微塵もない。
「その通りです。生憎僕達は取り込み中なので……」
なけなしの勇気を振り絞るちひろを見てか、ニコル達も構え直し毅然と対峙する。
メラに及ばないとはいえ、容易く対処可能な相手でないことは確か。
加えてトランクスも目を覚まさない以上、どうにか離脱する隙を探り――
メラに及ばないとはいえ、容易く対処可能な相手でないことは確か。
加えてトランクスも目を覚まさない以上、どうにか離脱する隙を探り――
「ジ・ン・ガ・様ぁ~♡このクソ生意気なゲロカスどもって、私がぶっ殺しちゃって良いですよね?」
「み、皆して喧嘩腰で、こ、恐いです……わ、私、の、苦手な、タイプですよぉ……」
「み、皆して喧嘩腰で、こ、恐いです……わ、私、の、苦手な、タイプですよぉ……」
緊迫した空気へ割って入った声に、自然と意識は集まった。
ジンガの背後から姿を見せるは、タイプの異なる二人の少女。
ギギスト達の話では、協力者らしき者はいなかったと聞くが。
よもや新たに仲間を見付け、手を組むに至ったのか。
ジンガの背後から姿を見せるは、タイプの異なる二人の少女。
ギギスト達の話では、協力者らしき者はいなかったと聞くが。
よもや新たに仲間を見付け、手を組むに至ったのか。
「えっ……?」
事態の悪化にニコルが歯噛みする一方で、美嘉は思わず我が目を疑った。
二人組の片方、露出度の高い衣装を纏った魔法使いらしき彼女に。
直接会ってはいないが、誰かは知っている。
亡き仲間の過去の記憶、絆創膏を何枚重ねても塞げない傷(トラウマ)。
絆を破壊する存在へ憎悪を燃やすに至った原因、二度と取り戻せぬ最愛の女を。
二人組の片方、露出度の高い衣装を纏った魔法使いらしき彼女に。
直接会ってはいないが、誰かは知っている。
亡き仲間の過去の記憶、絆創膏を何枚重ねても塞げない傷(トラウマ)。
絆を破壊する存在へ憎悪を燃やすに至った原因、二度と取り戻せぬ最愛の女を。
「イドラ、さん……?」
「なんだ、お前のお友達だったのか?」
「こーんな陰気くさいメスブタ、お友達リストに登録してないですよぉ。っていうか私にはジンガ様さえいてくれれば超ハッピー、みたいな♡どっちかっていうと、アリサちゃんと気が合いそうじゃな~い?」
「え、えぇ……?わ、私に振られても……私だって、そ、その、ジンガ様さえいてくだされば……す、すみません!私如きが恐れ多いことを……!」
「こーんな陰気くさいメスブタ、お友達リストに登録してないですよぉ。っていうか私にはジンガ様さえいてくれれば超ハッピー、みたいな♡どっちかっていうと、アリサちゃんと気が合いそうじゃな~い?」
「え、えぇ……?わ、私に振られても……私だって、そ、その、ジンガ様さえいてくだされば……す、すみません!私如きが恐れ多いことを……!」
害虫を見付けた時の目を美嘉に寄越し、かと思えば主相手に媚び諂う。
わざとらしく胸を押し付け、ハートを飛ばすイドラに。
美嘉の困惑は益々深まるも、一つの可能性に思い当たる。
“コレ”とよく似た存在を自分は既に、この目で見ているじゃあないか。
ジンガは冥黒王に非ず、されどユメ達の話を思い出せ。
グリオンに命を奪われた挙句、死体人形に造り変えられた狙撃手は。
神の牙の贄と化す末路を辿った、ということはつまり。
わざとらしく胸を押し付け、ハートを飛ばすイドラに。
美嘉の困惑は益々深まるも、一つの可能性に思い当たる。
“コレ”とよく似た存在を自分は既に、この目で見ているじゃあないか。
ジンガは冥黒王に非ず、されどユメ達の話を思い出せ。
グリオンに命を奪われた挙句、死体人形に造り変えられた狙撃手は。
神の牙の贄と化す末路を辿った、ということはつまり。
「あなたもしかして、グリオンと同じ錬金術を……」
「ほう?よく分かったな。シノンってガキと似た力を感じる辺り、お前も愛しのグリオン様の愛玩人形ってとこか?」
「っ、私はもう違う……!」
「ほう?よく分かったな。シノンってガキと似た力を感じる辺り、お前も愛しのグリオン様の愛玩人形ってとこか?」
「っ、私はもう違う……!」
鋭い声色で否定を口に出すも、ジンガはどこ吹く風で軽薄に笑う。
小娘一人の敵意なんぞ、野良猫が尾を逆立ててる程度に見なしているのか。
尤も、信望を向ける配下は別。
身の程も理解出来ず、主に唾を吐きかける輩を見なかった事にはしてやらない。
小娘一人の敵意なんぞ、野良猫が尾を逆立ててる程度に見なしているのか。
尤も、信望を向ける配下は別。
身の程も理解出来ず、主に唾を吐きかける輩を見なかった事にはしてやらない。
「ダッセぇ男の粗末なモノをしゃぶるしか能の無いカス女が、なーにジンガ様に舐めた口利いてんの?」
グリオンの配下たちがそうだったように、ジンガが造った陰我のデスマスクもまた。
主以外を徹底的に見下しており、歯向かう者を断じて許さない。
この時点で最早、美嘉はただ単に殺すだけじゃ済まない相手となった。
主以外を徹底的に見下しており、歯向かう者を断じて許さない。
この時点で最早、美嘉はただ単に殺すだけじゃ済まない相手となった。
「ジ、ジンガ様に逆らうなんて、命知らず過ぎて、わ、私には全然、理解できませんよ……でも、そうですね……な、生意気ですよ、ね。あっ、私も、この人達を、殺したくなってきちゃいました……」
殺意を滾らせるイドラを横目に、もう一体のデスマスクは挙動不審に目を泳がせる。
卑屈な性根を全く隠せておらず、言葉を紡ぐ度に他者のストレスを煽るが。
本質はイドラ同様、ジンガへの絶大な忠誠心で動く骸人形。
造物主の足元にも及ばない分際で逆らおうなど、存在自体が許し難い。
ひ、ひ、と陰気たっぷりに笑い、起動鍵を取り出す。
卑屈な性根を全く隠せておらず、言葉を紡ぐ度に他者のストレスを煽るが。
本質はイドラ同様、ジンガへの絶大な忠誠心で動く骸人形。
造物主の足元にも及ばない分際で逆らおうなど、存在自体が許し難い。
ひ、ひ、と陰気たっぷりに笑い、起動鍵を取り出す。
配下がどちらも戦意十分なら、結構なことだ。
遠からず試運転に駆り出すつもりだったが、タイミング良くその機会に巡り合った。
であれば、“お預け”を命じる必要も無し。
遠からず試運転に駆り出すつもりだったが、タイミング良くその機会に巡り合った。
であれば、“お預け”を命じる必要も無し。
「なら好きに遊べ。お前らがどこまで使い物になるか、俺に見せてみろ」
「キャハ♡ジンガ様に私のデビュー戦をお見せ出来るなんて、サイッコーに滾っちゃう♡」
「あわわ……し、失敗したらどうしましょう……!き、緊張で、震えが止まりませんよぉ……!」
「キャハ♡ジンガ様に私のデビュー戦をお見せ出来るなんて、サイッコーに滾っちゃう♡」
「あわわ……し、失敗したらどうしましょう……!き、緊張で、震えが止まりませんよぉ……!」
主の許可を得た以上、何をするかは決まったも同然。
非常にわざとらしい可愛い子ぶった仕草のイドラと、おっかなびっくりな亜里紗。
正反対のタイプであるも、目的は同じ。
ジンガに歯向かう愚者どもを、纏めて始末する。
非常にわざとらしい可愛い子ぶった仕草のイドラと、おっかなびっくりな亜里紗。
正反対のタイプであるも、目的は同じ。
ジンガに歯向かう愚者どもを、纏めて始末する。
体内に宿す核、紫のコアメダルの力を解放。
三体の古代獣のパーツを組み合わせた、欲望の怪物。
美しき終焉を求めた男とも、どこまでも届く手を欲した青年とも異なる。
陰我によって絆を腐らせしデスマスクによる、恐竜グリードへ姿を変えた。
三体の古代獣のパーツを組み合わせた、欲望の怪物。
美しき終焉を求めた男とも、どこまでも届く手を欲した青年とも異なる。
陰我によって絆を腐らせしデスマスクによる、恐竜グリードへ姿を変えた。
亜里紗もまた、起動鍵を用いてダブルオーライザーを装着。
純白のボディに、青き星の如きカラーリングを施した機体は。
正史において、パイロットを純粋種のイノベイターへの革新に導いた。
されど此度は対話も相互理解もない、悪意で以て行使される殺戮だけがそこにある。
純白のボディに、青き星の如きカラーリングを施した機体は。
正史において、パイロットを純粋種のイノベイターへの革新に導いた。
されど此度は対話も相互理解もない、悪意で以て行使される殺戮だけがそこにある。
「それじゃあ張り切って、絆なんていうキッメぇもんを壊しちゃおっかなぁ~♡」
「ふひひ……わ、私みたいな女に殺されるとか、く、屈辱ですよね?た、たくさん、悔しがってください、ね?」
「ふひひ……わ、私みたいな女に殺されるとか、く、屈辱ですよね?た、たくさん、悔しがってください、ね?」
正義も、使命も、覚悟もない。
主が望む光景を実現させるべく、悪意を振り撒き徹底的に壊して殺す。
訪れる末路を否定したくば、死に物狂いで抗う他無し。
主が望む光景を実現させるべく、悪意を振り撒き徹底的に壊して殺す。
訪れる末路を否定したくば、死に物狂いで抗う他無し。
神殺しとの決戦の舞台から、役を降ろされた者達による。
もう一つの演目が、幕を開けた。
もう一つの演目が、幕を開けた。
| 221:Rの散華/ユメノオワリ | 投下順 | 222:鉄華Ⅱ:神様あなたはひねくれ者 |
| 215:超メラ決戦:終幕 その2 | 時系列順 | |
| トランクス | ||
| ニコル・アマルフィ | ||
| 亀井美嘉 | ||
| 柊シノア | ||
| 鳩野ちひろ | ||
| アストルフォ | ||
| (東ゆう) | ||
| 218:レンキスPのスカウト大作戦! | パラド | |
| 梔子ユメ | ||
| 冥黒王ギギスト | ||
| 魔獣装甲のエケラレンキス | ||
| 216:Sarracenia | ジンガ |