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  • フリューゲル・レド・ルーツ

シミュグラ2Wiki(Simulation Of Grand2)GTARP

フリューゲル・レド・ルーツ

最終更新:2025年10月23日 01:04

roots

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〜これは記憶を失った一人の男の物語〜 

プロフィール

俺はみんなに伝えないといけないことがあるんだ。

名前 フリューゲル・レド・ルーツ
愛称 ルーツ、ロストメモリー、サビ
出身地 シミュグラシティ北部
誕生日 10月1日
観測日 2025年8月31日 (0年125日)
職業 救急隊、警察、ギャング
活動者名 赤羽 るーと
告知等 X(旧Twitter)
配信場所 Twitch
動画投稿 YouTube

【ハッシュタグ】
総合 #シミュグラ2
名称 #フリューゲル・レド・ルーツ
声劇&追想 #ルーツの記憶



目次


  • プロフィール
  • 目次
  • 基本情報
  • 登場人物
    • 出会った人物と印象
    • 重要人物(1部ネタバレ注意)
  • 第1章 失うということの意味
  • 第2章 全ては過去に
  • ー記憶一覧ー
  • ルーツの姿一覧
  • 後書き的な奴

基本情報

 キャラクター
北部の海岸で目を覚ました赤髪の男。気がついた時には記憶が無く、思い出せたのは自分の名前だけ。自分は一体何者なのか。街を歩き他人と関わる度に思い出していく記憶の断片を辿りながら、彼の謎が明らかになっていく。

+ 記憶
現在解放された記憶一覧

  • ルーツは「壁」に対して強い嫌悪感を抱いている。
  • 東高速の壁付近に見覚えがあるが何があったのかは思い出せない。
  • 銃の取り扱いや車の運転、釣りに関しては握ると使い方が分かってしまう。記憶はなくても体は覚えているようだ…。
  • 自分の名前の由来について寝る前に調べたところ
「フリューゲル(翼)・レド(Redo=もう一度)・ルーツ(根源、始まり)」という意味で
訳すと「始まり(根源)へもう一度至る為の翼」という意味らしい。
  • 家に置いてあるDVDや、ネットを見ている限り、ドラマや映画が好きだったようだ。記憶を失った今でも見返して楽しんでいる。
  • 壁の破壊行為を行った人物がチャーブルで話題になっていた。何が感じるところがあるが、上手く表現できないので目を背けた。
  • たまに夢を見たり、声が聞こえる。記憶なのか、それともただの夢なのかわからない。確証のないことはあまり気に停めないようにしている。
  • 別れに強いトラウマを感じている。
  • 好きな曲は「命に○われている」「地獄に○ちる」「滲む〇色」
  • 好きなドラマは「M○U404」「プリ○ンブレイク」

ー以下発覚した事実ー
  • ルーツは南北の戦争に参加していた。建設途中の壁を破壊する部隊を筆頭していたが、何らかの事情で逃げ出し、戦犯として数年に渡り拷問を受けた。
  • 拷問を行っていた北の民は軍により処罰を受け全員死亡している。
  • 軍の監査の際に拷問などが見つかることを恐れた北の民は道具や証拠、ルーツすらも海へ流し無かったことにしようとしたが、チェインという男の証言でルーツも海へ流されている事が発覚している。
  • ルーツは南の空港での大規模なテロ事件の一件で調査が行われていたが、捜査は打ち切られた。





 基本情報
北部の海岸で目を覚ました赤髪の男。

思い出せる記憶に限りがあるが他の住人や場所、出来事などと関連して思い出して行けるようだ。

顔に無数の傷があり、かつて×××を受けていた…?

自分が何者か。そして「伝えなければならないこと」とは。

彼の記憶を取り戻し、本来の目的を達成するための物語が今…

____始まったのだ。

 外見
● 赤髪、顔に無数の傷


 性格
● 冷淡な時と激情する時の差が激しい。正義感強く、義理人情に固い。特に自分の命を軽視しており、過去に抱えた「何か」に罪悪感を感じているようだ。周囲に合わせて笑っているが、心の底から笑えないため乾いた笑いになってしまうことが多い。
● 記憶を取り戻していくごとに…?

 能力
●銃 :可能
●運転 :可能
●ヘリ :可能
●対人 :人を選ぶ

 趣味
● 映画やドラマの鑑賞。音楽。歴史。


登場人物


出会った人物と印象


+ 初対面時
キャラクター名 詳細
榛咲 みる 昔、俺のことを飼っていたと名乗る謎の女性。脳天気な口調が冗談なのは本当なのか分かりづらい。
初瀬 或翔 (はつせ あると) 初日に絡んできた瓜二つの男。俺の大切なものを傷つけるなら許さない。
夏空 ひまわり 新車購入時にバイクで突っ込んできた。その天真爛漫さに何かを感じる…
猫原 千絋 救急隊の司令を務めている女性。記憶のないルーツに良くしてくれており、街のことについて教えて貰っている。
未門 湊斗 ルーツが初めて激情した時に救急隊の在り方を説いて止めてくれた。敬意を抱いているが、彼の意見に賛同できないでいる
八夜 ゆゆ 警官。或翔に絡まれているときに助けてくれようとした。警察について教えてくれる良き上官
椿 零那 警察副所長。声音は低いが、茶目っ気がある。舐めた態度を取ると走らされる。
初瀬めい 警察署長。署長としての圧もあるが、ちゃんと女性らしいところもある。怒らせると走らされる。
華月 龍司 警察副所長。声音が怖いが、優しい。第一印象ってあてになんねぇな。
たもつ 変な人。はげ。
宇仁王 淡 警察に入る為の力添えをしてくれた。感謝してる。
ゼン・ヴァレンティーヌ 警察署ロビーでよく服装をネタにされている。
バウバウ 体験二日目に面倒を見てくれた。警察には流れで入ったらしい…
竜胆 蒼 同期。気さくでいいやつ。心持ちも良くて仲良くなれそうだ。
ノレ 一 陽気であまり深く物事を考えないタイプ。けど、対応に優しさを感じる。
ウェルター パディ ダーフィー 九十九のBoss?犯罪者ではあるものの、普通に話していれば好印象の青年だ。
ペコラ seventhのメンバー。チンチロが雑魚。なんだか見てて危なっかしい。
ジョー 何やら悩みの多いギャングのBossらしい。北での活動が主。
ラッキーガール 齧歯類のようなボイス。
ハイゼンベルク信雄 薬物担当のような見た目。ノリがいい。
セツ 傭兵をやろうとしているらしい。しかし、どこか怪しげな男。


+ 現在
キャラクター名 詳細
榛咲 みる どこにいった??
初瀬 或翔 (はつせ あると) 絶対に許さない。絶対に。許さない。
夏空 ひまわり 過去に色々あったらしいが。とにかく前を向いて欲しい。
猫原 千絋 車をプレゼントできてうれしい。俺が生きてる時は必ず守る。
未門 湊斗 危険なところに回収に来てくれる。俺が生きてる時は必ず守る。
八夜 ゆゆ たまに思い出して釣りをしている。いい人だった。
椿 零那 警察の時、1番世話になりました。だから、俺も零那さんのこと救ってみせます。
初瀬めい 最後に挨拶したかったです。俺が言うのもおかしいですけど。めいさん、零那さんのこと頼みます。
華月 龍司 九十九のBOSS。
たもつ はげ
宇仁王 淡 魂貫通キスしてごめん。
ゼン・ヴァレンティーヌ ゆゆさんが出国するけど大丈夫だろうか。
バウバウ 世話になったけどAなら俺は手は抜かない。
竜胆 蒼 相棒。だったけど。ごめんな。
ノレ 一 …なんかあったのか?最近暗く感じる。
ウェルター パディ ダーフィー やっぱ面白いし良い奴だわ。
ペコラ 親友。になれたらいいな。
ジョー 情に厚い男。これから世話になる。
ラッキーガール ずっと鼻歌を歌っている。変な子。
ハイゼンベルク信雄 奇妙な男。システムや、キレコリという言葉に執着している。
セツ 別名アッシュ。傭兵会社を営んでいる。いつか世話になるかもな。

重要人物(1部ネタバレ注意)

キャラクター名 詳細
黄色い髪の少女 夢に出てきた勝気な少女。誰なのか分からないが、心が締め付けられる。
医療従事者らしき女性 夢に出てきた謎の女性。何故か顔を思い出せない
チェイン 夢にもでてきた男。警察の情報保管庫の記録によれば既に死亡している。ルーツとは記憶を失う前に関わりがあったらしいが…
サビ 過去を捨てようとしているルーツのもうひとつの姿。


第1章 失うということの意味


+ 第1章
「失うということの意味」


Day1


+ 「Lost」
「Lost」



ルーツ「俺の名前は…フリューゲル・レド・ルーツ。」

痛む体を引摺りながら、やっとの思いで北の街「パレト」へとたどり着く。

携帯の電源を入れるが、一切の情報が初期化されており自分が何者なのか分からない…。

止む気配のない雨が体に打ち付ける度に痛みが走る。
暫くの間途方に暮れていたが、なんとか初期化されたスマホを起動し「救急隊」へと連絡を取る。

そこで自分を知っているという謎の女性「榛咲 みる」と出会う。しかし内容があやふやで信用に足るのかは不明だ。

「昔、ルーツを飼っていた」

「ドーナツ」という愛称で呼び、芸を教えていたがいつの間にか逃げてしまっていた」

ということだけ…

ルーツ「いや、俺の名前はルーツだ…」

そして謎に彼女に借金を背負わされ、奇しくも資金を得るために救急隊で働くことに…
落ち着いたところで自分を知っている人物を探そうとしている最中、自分と瓜二つの男「初瀬 或翔 (はつせ あると)」という人物に絡まれてしまう。

ルーツ「…うん。確かに、似てるな…」

こんなこともあるんだな、なんてことを考えながらも、彼のぶっきらぼうな言葉をのらりくらりと回避して、自分が何者なのかを探る為に北へと赴く。北へ向かう途中に南へ来る時にも1度見た「壁」が目に映る。

ルーツ「この「壁」…見てるとイライラするな。」

そして、この街に存在している北と南を分断する壁に興味を持ったルーツは北で出会ったバーの店員「ノア ブライス」や、救急隊の司令「猫原 千絋先生」にその事について聞いてみることに。

どうやら壁は 「差別の象徴」とされており、数年前にはそのせいで大きな戦争があったとか…。

実際に「猫原先生」に貰った車で東高速の検問へ行ってみる。
すると確かに何処となく見覚えがある。

ルーツ「昔…ここで…?」

しかし、何があったのか思い出せない。
確かにこの場所に来たことがあるのだが、しかしその記憶について深く思い出そうとすると頭が痛む…。

一先ず、壁に対して感じるこの感覚は忘れないようにしよう。と心に決めた。

そして救急隊の元へ帰ると例の俺のドッペルゲンガー。「初瀬 或翔 (はつせ あると)」が再び現れた。
なんと「初瀬 或翔 (はつせ あると)」は髪型と髪色が似ていることに腹を立て、救急にいるルーツを銃撃。更に8000番まで連れ去り、ルーツへと詰め寄る。

アルト「俺はなァ!お前が俺と同じ見た目なのが気に食わねぇんだよ…!」

ルーツ「いや、なんでそんなに見た目に拘るんだよ…。」


なんとこの男、髪型か髪色を変えないのならばお前の恩人である救急隊や最初に救ってくれたハルサキにもお前にしたことと同じことをしてやる。と脅し始めたのだ。
ルーツの中で何やら黒い感情が動き始める。

ルーツ「北の話は聞いたけど、南にもこんな奴が居んのかよ…。」

初瀬 或翔 (はつせ あると)は有無を言わさず、ルーツはなんとか開放されたものの彼の物言いに納得がいかないルーツ。
無事に救急隊へ戻ったあと事の顛末を語り、護身用に持たされていた拳銃へ手をかけるも、上官たちに

「命は平等だ。」
「こういうことに我々は耐えなければならない」

と諭されてしまう。

ルーツ「____でも、こんなこと見逃したら次に街に引っ越してきた人達も同じ目に合うかもしれないんですよ?それを俺は我慢できません。」




「ルート分岐」


①自分が正しいと思うことを選んだ結果、恩人たちが被害に遭うがそれも仕方ない。

②恩人たちを守る為、ここは引いて好機を探る

③???

ーーー

ルーツは自分のエゴを押し通すのか、または恩人に迷惑をかけないために押し殺すのか。

それとも…?

「命は…」


Day2


+ 「Value of Life」
「Value of Life」


目覚めると病院のベッドにいた。
一瞬自分が入院患者のような錯覚を覚える。

ルーツ「とりあえず出勤するか。」


ベッドから起き上がった途端、昨日の一件が頭を過ぎる。

ーーー

アルト「てめぇのせいで恩人たちが死んじまうぞ?」

ミカド「救急隊は耐えないといけないんだ。」

ニャンバラ「困った時は相談してね…」

ーーー

俺は昨日一晩考えた。
俺がすべきことは本当にここで耐え凌ぐことなのか?命の価値が平等?
今一度、俺は考えていた。
そして、髪型を変えるか否かについても、まだ思い悩んでいた。

ルーツ「いや、なんでこんな事で悩まなきゃいけないんだよ…」


記憶のことで混乱してるってのに。
更に降りかかってくる苦難。
なんという星の元に生まれてしまったのか。

そんなことを考えていると、負傷者の通知が飛んでくる。

先輩はみな出払っている。
ルーツは一先ず許可を貰い車に乗り込む。
運転はまだ2回目だが、何故が行けそうだ。記憶は無いくせに体が覚えてるんだろうな。

そして現場にたどり着くと2名の負傷者と警察がいた。
一瞬「事件」か?なんてことを考えたが、後ろで黒く焦げた車両と、破裂したガソリンスタンドを目指してそれが「事故」だと理解する。

さらにそこに居た警官は昨晩の一件の時にも話を聞いてくれていた「八夜 ゆゆ」だった。

ユユ「もー、ガソスタが2つ無くなっちゃったじゃん!」

どうやらこの負傷者2名がぶつかったようだ。
その後彼らを蘇生し、自己紹介も程々に会話をする。すると昨日の件について知っていたようで負傷者の内の1名である「ノレ 一」という男に励まされてしまった。

ルーツ「言いなりになるのは嫌だけど、恩人たちに迷惑がかかるのはなぁ…。」

ノレ一「いや、負けんな!ルーツ!」

陽気な人というか、なんというか…まぁ、言葉の真意がどうあれ俺は彼の発言を好意として受け取ることにする。

そして、なんとまたもやタイミングよくアイツが現れる。なんだ?不運にも程があるだろ。

アルト「おい、昨日約束したよな?」

そう。件の無法者。アルトである。

なんでこうも的確に…。
周囲にはいつからかオーディエンスが増えていたがお構い無しにアルトは銃を構える。

ルーツ「わかった。わかった。髪型を変えればいいんだな。だったら変えてくるからもう俺の身の周りの奴に手を出すな。」

なんとか場を収めるため、俺は仕方なく髪型を変えることに…といってもまぁ、一時的にだが。
なんとかその場は見逃してもらうことになり、アルトもその場から立ち去った。

しかしここでこの男が声を上げる。

ノレ一「なぁ、ちなみに或翔とルーツと同じ髪型の奴がもうひとり居たらどうなんのかなw」

この男は陽気だ。そしてたぶん頭が悪い。

ルーツ「むしろやってみてくれよ。」

顛末はまぁ…お察しの通りだ。
というか、アルトとかいうアイツは洞察力が高い。
顔と靴だけで俺ではなくノレ 一が同じ髪型にしていたと断定し、彼を捕まえて詰めたらしい…すまん。

その後は、病院前でチンピラ同士の撃ち合いが起きたり、客船強盗が起きたり、また街中で撃ち合いが起きたりと散々な状況だった。

ルーツ「んで、俺は。一体何をしてるんだろうな。」

白市民も警察も犯罪者も。
命は平等?いや、まぁ。命は平等なんだろう。正しいよ。それは。

みんなに命はある。
一人一つの大切な命だろう。けど。やっぱり俺はこう思う。てか、最初からそう思ってたから、苛ついてたんだな。俺は。

ルーツ「____命の価値は平等じゃない。」

ハルサキが出勤してきたので、俺の決断について伝える。そう。救急隊をやめて警察へ行くのだ。

ハルサキ「んー。もうしかたないなぁ。」

するとハルサキはどこかへ電話をし始める。
面倒見がいいな。と思ったが、やはり俺を犬扱いしているのか…?

どうやら警察の人間と話をさせてくれるようだ。人脈も何も無い今の俺にとってはありがたい。
そして現れたのは桃色の髪に黒いジャケットを羽織った男「宇仁王 淡」という男性だった。

ウニオウ「アイツにやられて悔しいのか?警察に来たいのか?ならもっと大きい声で言えよ。」

ルーツ「行きたい!!!!」

ウニオウ「ムリ。」

ルーツ「あぁ…(流れ的に迎え入れてくれる感じじゃないのか。)」

なんて冗談も交えつつ、話はトントン拍子に進んでいく。

ルーツ「世話になった。ありがとうな。」

そして俺は救急隊を抜けた。
しかし、俺をたまたまとはいえ拾ってくれて世話してくれた恩は忘れない。
そして力をつけて必ず彼らを守る。
そう誓った。

そして、俺は署長の「初瀬めい」に面談をしてもらえることに。
しかし…

メイ「私が殺せ。って言ったら貴方の大事な人を殺せる?」

その言葉に一瞬、固まる。
武力を持つ組織に入る、ということはそういうことも…警察が…?
いや、そうか。この街の警察は少々訳ありだったか。

後方で話を聞いていた「椿 零那」副所長は続ける。

レナ「具体的に言おう。後ろにいる八夜ゆゆを撃ち殺せ。と言われたらできるか?」

あまりにも具体的すぎる。

八夜ゆゆさんは俺が救急で困ってた時にも世話になった。そんな恩人を撃てと言われて撃てる奴がこの街にいるのか?

きっと俺は躊躇ってしまうだろう。きっと俺は…

しばらくの沈黙後、口を開く。

ルーツ「撃てません。」

メイ「意志弱…」

ユユ「優しいんだよ彼…」

なんかいろいろ言われたが、まぁでも俺の考えは変わらない。
俺がその命令を「正しい」と感じるのならきっと撃つだろう。

けれど、恩人に対して躊躇なく引き金を引けるほど俺は人生を諦めていない。

その後、面談を終えて俺は無事に警官になることができた。
だが、気を引き締めなければ。

そして俺はここで街について学びながら、自分の記憶を取り戻していくのだ。
そんな決意を胸に本署のロビーから出る。すると再び奴がお決まりのように現れる。たぶんもう名前を言わなくてもわかると思う。

アルト「おい、てめぇ舐めてんだろ。」

あ、そういえばオールバックで上げてた髪がいつの間にか元に戻っていた。

そして案の定、いつもの流れに…
正直見飽きた。というか、いつまで続けるんだよこの無駄な押し問答。

だが今回は武力を持った上官たちが逆にアルトへと詰め寄っていく。

アルト「ちげぇよ!こいつが舐めてるから教育してんだよ!」

さすがに俺にもこの常時上から目線に腹が立ってきた。さすがにというか、もう随分と前から思っていたことだ。
今まで守れなかった無力感。しかし今は。これからは違う。

ルーツ「好きにしろよ。けどな、俺は犯罪現場でお前を見つけたら絶対に捕まえる。」

アルト「やってみろよ。」

そういってアルトはその場を後にした。

…まぁいい。今日のところは見逃してやる。(ダウン体)
警察になった以上、俺は現場でこいつを見つけたら俺はこいつを弾く。

上官が駆け寄ってくる。「大丈夫か!」「大丈夫でした?」

ルーツ「あぁ、ちょっと夜空を眺めてるだけですよ。(ダウン体)」

__俺はここから、強くなって。守りたい物を守るし記憶もどして見せるんだ!





Day3


+ 「Law and justice」
「Law and justice」


北の自分のアパートにて起床。
未だ記憶戻らず。そりゃ寝て思い出せるなら苦労しないか。

とにかく出勤しよう…。

猫原先生に買ってもらったサルタンを走らせて、南へと向かう。

ルーツ「道は何故か覚えてるんだよなぁ…。」

ぼんやりスマホで今日の街の状況を確認しながら車を走らせていく。

本署にたどり着き着替えを済ませて出勤する。
体験2日目。今日は本格的に警察業務を遂行する。

昨日あまり会話できなかったが、今日はなんだか会話ができる気がする。
思えば、記憶を失って目覚めてからというもの、どこか居心地の悪さというか、対人に対して疑念や嫌悪感を感じてしまう所があった。
それがいつの間にかそんな気持ちを忘れてしまっていた。

ルーツ「なんか。みんな温かいな。」

ーーーー

「お前のせいだ」

「裏切り者!!」

ーーーー

昨日はゼン・ヴァレンティーヌ先輩について行って初歩を教えてもらったが、今日は誰について行くことになるんだろうな。

ヴァンジェリコ強盗という宝石店の強盗が起きるも今日はまだ先輩が居ないため留守番…いや?走っていけばいいのではないか?
というか、自分の頭で考えろ。俺。

ルーツ「ルーツ、徒歩でヴァンジェリコ向かいます!」

ウニオウ「おう!行ってこい!」
宇仁王 淡先輩の許可も出た!行くぞ!!

バウ「待って待って!ダメダメ!怒られるから…!(小声)」
しかしここで静止されてしまう。

ルーツ「?…そうなんすか?」
なぜ怒られるのかは分からないが上官には従っておこう。何やら事情があるらしい。

バウ「今日は私が見るから…!」

バウバウ先輩が今日は俺を見てくれるらしい。
ちゃんと俺の手網を握れるだろうか。
今の俺は武力を持ったことにより気分が高まっているのである。

その後、バウバウ先輩とフリーサ強盗の対応へと向かうことになった。

現場に到着して状況を確認する。
どうやら犯人は人質を取っているようだ。

犯人は黄色い服を着ている2名。
Seventhというチームらしい。

この街にはいくつかのグループがあり、それぞれ色分けされたチームカラーと名前を掲げて犯罪行為を行っているのだ。

ルーツ「人質がいるなら、まだ動けねぇな…。」

しかし、ここでSeventhの1人から思いがけない言葉を聞くことになる。


Seventhの一人「ルーツくんの噂聞いたことあるよ。」

ルーツ「俺の…?」

Seventhの1人「僕のこと捕まえられたら教えてあげるよ。」

ここで突如として俺の記憶に関する情報を持っているという人物との遭遇…
しかし、条件としてアイツを捕まえなければならない。

ルーツ「バウ先輩。今回自分に運転させてください!」

そして先輩の許可を貰い、ハンドルを握る。
犯人がアクセルを踏むのとほぼ同時にアクセルを踏み込む。

黄色い車両は昨日も追いかけたが、中々運転が上手い。予想してない道やスタントと呼ばれるかなりの技術の必要な道を選択してくる。

なんとか数分追いかけ続けて応援が来るのを待つ。

ルーツ「こいつ…下水路ばかり…!」

昨日ゼン先輩に教わった通り、加速力はこちらの車両が負けている。しかし直線を走り続ければ最高速はこちらの方が優位…!

しかし、スピードを出しすぎると相手が急停止して裏をかかれてしまう…。実にもどかしい…。

相手の車両はその後も細道や曲がり角を上手く利用してこちらと距離を空けていく。

ルーツ「ダメか…見失いました…。」

過去の俺について知っているという人物を取り逃してしまったのである。
次だ。必ずアイツはまた犯罪を犯す。次こそ捕まえて俺のことについて聞かなければ。

一先ず本署へ戻り、待機することになった。

※

その後、警察全員でアリーナへと向かうことに。
射撃訓練の一貫だそうだ。

メイ「では、これから君たちにはデスゲームを行ってもらう。」

署長がまた恐ろしいことを言っている…。
まぁ冗談で、アリーナの武器からはペイントボールが出てくるらしいので安心安全なのだ。

そしてチーム分けをしてもらい両者訓練を開始する。が、服装が同じため中々引き金を引くのが躊躇われてしまう。それに俺は銃を持つのが初めてだ。

…いや。なんか分かるな。
道といい、銃の扱いといい。こうも都合よく体は覚えているようだ。
というか、俺は昔銃火器を扱っていたってことか…?

結果から言うと程々だった。
3キル7デス。FPSゲーマーならその結果に苦しむのだろうが、俺はその感覚があまり分からないので結果は程々だった。という感想だ。
それにやはり服装が警官ということもあり、撃つことに抵抗を感じてしまう。抵抗…というか罪悪感というか…。

※

そしてまた時間を持て余してしまう。
1人行動が許可される制式採用ならば今頃きっと自分の車両で走り回っていることだろう。
そこへ何かと目を掛けてくれている 八夜 ゆゆ先輩が現れる。

ゆゆ「よし、暇なら釣りに行こう…!!」

ルーツ「釣りっすか…?」

そして俺は8000番の釣具ショップへ向かうことになり、釣りをすることに。
しかし、これが中々楽しい。それにこの魚達は中々高値で売れるらしい。

俺も記憶があった頃はこんな風に釣りを嗜んでいたのだろうか。いや、けどさっきアリーナに行った時に感じたあの銃の感触。あれは…。

※

その後、先輩と同行で客船強盗の対応へ向かったり、同時にコンテナ強盗が起きて対応後そちらへ向かったりといろいろと街が騒がしくなっていた。

※

いよいよ明日が体験最終日だ。
面談を終えれば制式採用となる。
一人で動けるように今日もしっかりと寝よう。
あと、街の住人たちとももっと話をしたいし、あの時に聞いたあの言葉

ーーーー

Seventh「ルーツくんの噂、聞いたことあるよ。」

ーーーー

絶対に俺がアイツを捕まえて情報を聞き出す。
その為にも…。



Day4


+ 「Investigation record report」
「Investigation record report」


体験最終日。
今日は最後の面談がある。それまでに活躍して正式採用して貰えるよう頑張らないとな…。

ゆゆ「私連れてくよ!」
今日はゆゆ先輩が俺を見てくれるようだ。
本人に伝えてしまうと、俺が媚びているみたいになるので絶対に言わないが、まぁ脳内なら問題ないだろう。

今日もお綺麗です。ゆゆ先輩!

そして客船強盗、コンテナ強盗の対応へ。
客船強盗では最強部屋前の通路で敗北。コンテナ強盗ではコンテナへ向かう手前の橋で敗北してしまった。

ゆゆ「ルーツくん、ちょっと車両に乗って待ってて!」

ルーツ「はい…。」

情けねぇ。いい所を見せようとしてこの始末。
ゆゆ先輩はそのままコンテナ強盗の対応を継続する為に俺を車両に乗せたまま進行していった。無念だ…。そしてでっけぇよ。先輩の背中。

サイレンの響いている現場。車両内で大人しく待っていると白髪の男性が向かってくる。
やべ、副署長だ。

レナ「あ?」

高圧的なこの平仮名1文字で、大方の人はこの人を怖い。と思うのだろう。しかし、俺は記憶もなければ失うものなんてない。つまりなんとも思ってない。

ルーツ「あっ…すみません…うっす…」

虚勢を張ってすまん、普通に怖い。

レナ「誰だこれ…ルーツか…。」

零那さんは俺を担ぎ、自分の車両へと乗せる。ふと助手席を見ると同期の竜胆が乗っていた。

リンドウ「あっ…同期が揃いましたね…」

ルーツ「そっすね…」

もちろんリンドウもダウン体だ。どうやらリンドウは助手席に乗っている間に出るまもなくやられたらしい。リンドウには俺と似た不憫なものを感じる。申し訳ないけど、こいつが同期で本当に良かった。

そして砂漠署へ運ばれた犯人の護送車の援護に向かう途中、コンテナ強盗の現場にいた犯人の車両を見つける。
そして零那さんは迷うことなくボロボロになった車両のままその車両を追う。
そして、相手もこのまま逃げ切るのは無粋と思ったのか、砂漠の中央で銃撃へ。

零那さんはおしくも敗北してしまった。

その後救急隊が駆け付け、無事に3人纏めて蘇生してもらえた。
しかし、車内へと戻ると零那さんは口を開く。

レナ「なぁ、お前らさぁ…。」
まさか説教かと身を強ばらせる竜胆と俺。
一瞬の沈黙がまるで小説の次のページを捲る時のように長く感じる。そしてもしもこれが小説なら俺は迷わず一旦本を閉じただろう。

レナ「お前らは同期同士なんだからタメ口にしろよ…。」
?
2人とも強ばっていた体が緩む。どうやら説教ではなく、同期なんだからもっとラフにやれよ。という零那さんなりの配慮のようだ。

ルーツ「いや、まぁ…タメ口…」

リンドウ「確かに。じゃあちょっと今日からタメ口でよろしく。」

ルーツ「あぁ…そうだな。」

思えば、俺とリンドウは同期だと言うのにずっとタメ口だったな。何故?と聞かれればまぁ、俺は1日遅れの新人だし…。

レナ「俺警察入った時、敬語使えなくてめちゃくちゃ怒られたんだよなぁ…。」

ルーツ「…まぁ俺も中途半端な敬語しか使えないんすけど…」

レナ「まだマシだよ…。」

なんだ。零那さんって以外に優しいんじゃないか。
やっぱ人は見かけや第一印象によらな…

ガンッ

鈍い音と共に体が宙に舞う。
次に感じるのは地面に落ちる衝撃。

ルーツ・リンドウ「痛ってぇ…!!」

レナ「…なんでお前らシートベルト閉めてねぇの…?」

閉めてなかったか!?いや、多分切れたんだろう…。零那さんは怪訝そうに俺たちを見ている。なるべく素早く車に乗り込む。
が、ここで零那さんは口を開く。

レナ「でも、他人が痛がってるのって…良いよなぁ…」

ルーツ「え?」

ガンッ

ベルトに体がめり込み、痛みを感じる。
よし。前言撤回だ。零那さんは凶悪だ。

ルーツ「副署長!?」

レナ「次、踏ん張れよー…」

リンドウ「し、しぬ…!」

レナ「もういっちょー…」

ガンッ
その後も何度か車体をぶつけて俺たちの痛がる反応を楽しむ零那さん。悪魔だ…。

そしてついにベルトの金具が緩み、俺の体が吹き飛ぶ。

ルーツ「痛ってぇ!!!」

ちょっと待て、これが警察のやることか…!?
今回はリンドウは飛び出ていないようだ…というか次飛び出てたらアイツは多分死んでた。

レナ「よし、走れー…筋トレ筋トレー…」
見上げるともう既に車を低速で走らせて居るのが見える…

ルーツ「ちょ、副署長…!!」
俺は焦って走り出すも追いつけないくらいのスピードで弄ぶように走られてしまった。

そして何故かそのままメカニックまで走らされてしまった…。

ルーツ「なんで…俺が…こんな目に…」

※

その後、対応を終えてしばらく本署で署長に頼まれ、雑務を行う。どうやら押収したピストルなどを武器屋へ販売することで警察署の金庫を潤そう大作戦!とのことだ。
棚の上にある箱を開く。物凄い量の押収物だな…。

ルーツ「なぁ、リンドウ。これ一つくらいとってもバレないよな。」

せっかくラフに話せるようになったんだ。冗談のひとつくらい言ったっていいだろう。

リンドウ「いやぁ、署長にバレたら不味いしな。」

メイ「聞こえてるぞー。」

この距離で?署長は中々の地獄耳のようだ…。
その時、突如として無線が入ってくる。
どうやら龍司副署長の声だ。

リュウジ「ちょっとゆゆの尊厳のかかった勝負があるんだが。警察署員来れるやつ全員来てくれるか。」

尊厳…?これは署長にいい所を見せるチャンスかもしれない!!

ルーツ「署長!自分これ向かいたいです!」

メイ「あー、いいよ。行こうか。リンドウくんも乗りな?」

リンドウ「はい!」

ルーツ「にしても尊厳ってなんすかね…?」

※

現場にたどり着くと物凄い姿をした女性2人組がいた。1人は黄色い髪。もう1人はピンクの髪。

???「あれ?また女性だ!おい、降りろ!」

署長は大人しく降りるが、その後チェイスの条件を聞いて絶句する。

???「てめぇも私達をロストしたら同じ服装を着な!」

よく見てみるとゆゆ先輩も物凄い服を着ている。薄手のタイツのような材質…ところどころ穴が空いており、とてもじゃないが見せられたものじゃない。

というか下乳丸見えじゃねぇか…。

メイ「やだよ。」
そりゃあ嫌だろ…。
何言ってるんだこの2人は。相手は署長だぞ。

???「ちょっと男ども来な。」
ルーツ「…はい。」
俺と竜胆は車を降りて2人組に近づく。


???「____署長の下乳みたいよな?(小声)」

…。

いや、まぁ。正直に言うなら。みたい。
いや、ダメだ。俺は警察だぞ?犯罪者に屈するわけにはいかない。あたりまえだろ。

ルーツ「見たい。」

素直だった。あまりにも。俺の脳内と体が分離するのがわかる。いや、これは魂の叫びか…?

???「お前、運転変われ。んで、やることは分かるな??」

ルーツ「…。」

つまりチェイスを妨害しろってことか。
馬鹿め。俺がお前たちの要求を呑んで真面目に進路妨害なんてするわけないだろうが。
それに俺は記憶は無いが運転には自信があるんだよ。残念だったな犯人。よし。んじゃあまぁ、ここらでいい所見せて正規採用まっしぐらだ!

ルーツ「署長。この尊厳をかけた戦い。俺に任せてください。」

メイ「え?…いいよ。わかった。」

そして始まったチェイス。
まぁ、結果は当然だ。

ルーツ「俺は署長とゆゆさんの尊厳を守らねぇと行けねぇんだ!!」

ガンッ…ガンッ

警察署員「ちょっ!!!」

いかん。ダメだとわかっているのにハンドルを握る手が震える。

ーーーー

???「署長の下乳…見たいよね?」

ーーーー

し、署長の下乳!!!

俺の運転する車両は加速し、前方の車両を吹き飛ばした。まるでコメディやアニメのように。

メイ「おい!てめぇトロールじゃねぇか!」

ルーツ「いや、この車!!スピード早くて!!あと下乳の事考えると手が震えて…!!」

次々と警察車両が俺の運転でなぎ倒されていく。後続車両も巻き込まれ、現場は騒然としていた。

そして当然のごとく警察は犯人を追えずにロスト…。くそぅ…。

ルーツ「いやぁ…仕方ないっすね…署長…」

メイ「てめぇ、誰を敵に回したかわかってんのか!」

※

その後署長が機転を効かせて犯人を金で誘き出す。

メイ「絶対捕まえる…」

その後、下乳を絶対に出したくない署長はアリーナへと誘き出し、なんやかんやあって。犯人は捕まえた。下乳衣装も解除された。俺とリンドウは犯人たちに「最後まで味方してくれたわけじゃない」とかいう理由で500万も取られた。

くそ…下乳め…(???)

500万に関しては俺たちが街に起きてきて間もないことを不憫に思ったリュウジさんが肩代わりしてくれた。必ず返そう。

そして俺はアリーナで署長に放置され、そのまま本署まで走らされた…。
なんか、俺いつも走らされてるな…

この後面談だっていうのに…というか俺本当に受かるのか…?
あんな失態を見せてしまったというのに…

※

まぁ、結果的に色々言われた。
が、最終的には採用された。

評価的には「強い」「頼りになる」ではなかったが「面白い」というなんかいろいろ含まれた感想だった。
大方、やはりあの下乳事件のせいだろうな。
くそ…ほんとにあの姉妹許せねぇ。俺の大事な日に…!

その後事件対応を終え、本署へ帰ると例の姉妹の片割れがいた。
俺を見つけると直ぐに駆け寄ってくる。そういえば聞いた話によればこの姉妹はサクラ・モチとサクラ・ンボというらしい。

モチ「ルーツくんじゃーん!ねぇねぇ、うちこない?」

ルーツ「いや何言ってんだ…。」

モチ「いやぁ、私はねこの街をもっと面白くしたいんだよ!そこで!ルーツくん!どうかな!って思って!私は君を気に入ったんだ!」

ルーツ「…。」

つまり勧誘か。まぁ、一瞬は黒落ちも考えたが。それだと救急隊のみんなに。世話になった人たちに示しがつかねぇ。
いや?けど違う視点で見れば記憶が…?
いやいや。正式採用されて早速黒落ち…?
いやいやいや。ありえない。

ルーツ「…話だけ聞かせてくれ。」
まぁでも好意で誘ってくれているのなら、話くらい聞いてやるのが人情ってもんだろう。
俺は車両にモチを乗せてその場を離れる。

モチ「ルーツくん、或翔に恨みがあるんでしょ?」

もう結構街では有名らしい。

ルーツ「あぁ。そりゃあな。」

モチ「けど実際警察で晴らせる?」

ルーツ「…。」

今思えば客船強盗やらコンテナ強盗やらで現場で出会いはしても、それはあくまで個人的な恨みを晴らすには至っていないことはモチの言う通り事実だ。

ルーツ「いや…まぁでも、だとしてもすぐには回答はだせない。」

流石にそれなら行きます。
なんて二つ返事で恩人たちを裏切るようなことはできない。それに…

ーーーー
メイ「改善点はあれど、基本はできてて私はいいと思うよ。」

レナ「お前らはとりあえず巡査部長目指せ…。」

リュウジ「欲に忠実だなぁ…面白い!」
ーーーー

上官たちに認められた。
それが例えば有り体な言葉で、あまり深い言葉でなくて、ただの冗談でも。
人に認められるっていうことを、俺は嬉しいと思ってしまった。
そして、俺はその言葉に応えたいと思ってしまったのだ。

ルーツ「今は無理だ。」

モチ「…わかった。じゃあお家送ってよ!」

ルーツ「いいぞ。そのぐらいの頼みなら聞いてやる。」

※

…なんだここ。

高架下。複数のテントが貼られている。
所謂ホームレスの溜まり場のような場所だ。
こんな所に…こいつが?

ルーツ「ここに住んでるのか?」

モチ「うん!ここにソファーあるんだ!」

こいつ、こんなに明るく振舞ってはいるが。
本当は…。

心の中で何やら黒い物が溢れていく。
俺ですらちゃんと家があった。職にもつけた。しかし、現実はこれなのかもしれない。

モチ「じゃあ、ありがとー!」

ルーツ「あぁ…。」

この気持ちはなんなんだ。けど俺は困っている奴を。こんなに明るく振舞って、努力してるこいつを見捨てていいのか。警察としてではない。もとEMSとしてではない。一人の人間として。

ルーツ「なぁ…お前らで家来るか?」

深い考えはなかった。ふとそう思ったのだ。
しかし、はっと我に帰った頃には訝しげな顔でこちらを見られていた。

モチ「え〜!?私の体狙われてる〜!?」

ルーツ「そんなわけないだろが!!」

犯罪をする理由なんてのはいくらでもある。
金を得て、好きなことがしたい。
優位を得て、他者を見下したい。
そして、気持ちよくなりたい。

けどアイツは…。

ルーツ「まぁ、気が向いたらでいい。うちならシャワーもあるし好きに使えよ。」

いや、だとしてもだ。同情はする。これは間違った感情ではないはずだ。
けど悪人は悪人だろ。これじゃあ真っ当に生きてるやつは…。

つってもまぁ…俺も同じか…。

…?

なんで同じだと思ったんだ。俺。

俺はその場を後にし、帰路へ着いた。

いつものように東高速を上っていく。
昔の記憶が無いはずなのに。なぜ俺は「俺も同じだ」なんて思ったんだ。

疑念が深まっていく。記憶が消える理由は主にふたつある。外傷的な損失。これは頭を強くうったりした場合に現れる反応だ。そして、もう1つ。精神的なストレスによって脳が記憶に蓋をしている場合だ。

俺の場合は多分後者だろう。

ということは俺は過去に何かをした…?だから記憶のほとんどをシャットアウトしてしまっているのか…?

「…なら正しいことを続ければいつか。」

なんて期待はしない。けれど、今生きている俺が胸を張って生きていけるように。やるべき事をやるだけだ。


Day5


+ 「Full of lies」
「Full of lies」


最近の俺の流行りは釣りだ。
これが中々手に馴染む。それにあまり資金のない俺にとっては数少ない収入源だ。

釣竿を握る感触。魚がかかった時のテンション。そして生きようと抗う彼らとの真っ向勝負。

堪らない…。

それに、魚や犬、猫は嘘をつかない。
ただ「生き抜く」為に「生きている」のだ。

俺のように、「悪」だとか「正義」だとか。そんな小難しいことを考える余地はない。

そんな生命の生き方と、俺は今向き合っているのだ…。

※

そして出勤…ん?本署前になにやら車が沢山止まっている。何事かと周囲を見回ろうとすると銃撃音が聞こえて一瞬体を強ばらせてしまう。

…副署長??

なんと本署前に車を並べていたのは零那さんだった。それも…市民を…殺害して。

レナ「綺麗だと思わないか…」

ルーツ「そう…ですね…」

合わせなければ制される。それはもう既に分かっている。しかしまぁ、実際車両が綺麗に並んでいるところを見るとそれは「綺麗」と表現するに値するかもしれない。

レナ「もっと綺麗なものを見せてやろう…」

そういうと零那さんは車両のガソリンタンクに向かって弾丸を放つ。

ルーツ「…。」

するとその瞬間本署前に並んでいた車両が複数台爆発していく。

ルーツ「これは…」

レナ「巡査祝いだよ。」

副署長は笑っていた。この時になってようやく気づく。
というかどこかで俺は分かっていたのかもしれない。彼は少し感性がズレているだけで本質的に悪意はないのだ。

ルーツ「綺麗…でした…」

しかし、これがこの街の警察なのか…。
いや、こうだからこその警察…。

※

その後先程のことはなるべく気にしないようにしながら警察業務を遂行していたが、それもだいぶ落ち着いてきた頃。

夏空ひまわりから連絡が入った。

ヒマワリ「ちょっと今時間ある…?」

ルーツ「…?」

その後本署前で落ち合って話を聞いてみる。
どうやら。俺が救急隊を辞めたことを今日知ったようだ。
自分のことを初めての後輩として明るく接してくれていたというのに、連絡を怠っていた。不覚。

ヒマワリ「何でやめちゃったの?」

その問いに、俺は事の顛末を語る。

ヒマワリ「そっかぁ…けど悪い人っていうのもいろいろ理由があるし」

わかる。それは散々考えていた。
けれど、それじゃあ真っ当に生きてる人達はどうなる?悪に脅え、利用され、そんなのは報われないじゃないか。

ルーツ「わかるよ…。」

今はただこれしか言えなかった。

その後は身の上話を聞いたり、語ったり、していた。
ひまわりさんはどうやら街で南と北の戦争に巻き込まれてしまい救急隊と警察に救われたらしい。

ーーーー

「俺のせいやわ。」

ーーーー

ルーツ「…?」
なにか聞こえた…いや…気のせいか…。

※

車の修理を依頼するためにサンシャインメカニックに連絡を取ると、インパウンド場へ颯爽とノレ 一が現れた。

ルーツ「おー、ルーくん。」

なんだか、彼に対して友好的な感情が溢れてしまいらしくない声音を上げてしまった。

ノレ一「おー、ルーツくんか!」

しかし、彼もまた友好的に関わってくれている。それがどうしようもなく嬉しいと思わせてくれる。

ノレ一「そうか、もう体験から巡査に上がったのか〜。」

ルーツ「あぁ、有難いことにな。」

ノレ一「じゃあ、これ。昇進祝いだ。」

携帯から100万の入金通知が表示されているのを確認し驚愕する。

ただでさえ、龍司さんから500万の仮があるのに…
申し訳なさで大丈夫だと変換しようとするもノレ一は「取っとけ!」とその場を去ってしまった。

ルーツ「マジかよ…助かる!ありがとうな!」

人と関わる…ってのはいい事だな。
いや、こうやって世話になってばかりではダメだ。いつか必ず返す。再びなり始める犯罪通知。慌ただしい街の喧騒。

俺はそう心に誓って新品同様になった車両へと乗り込み、サイレンを鳴らすのだった。


ルーツ「____ルーツ、現場へ向かいます。」


Day6


+ 「The importance of appearance」
「The importance of appearance」


さて。起床後自分の頭部を触ってみて実感する。

ルーツ「…。」

そう。禊である。
髪型をたもつさんと同じにしろという命令に従って俺は今ストレスでハゲ散らかした中年のおっさんのような髪型になっている。

今日1日この髪型で過ごさなければいけないという苦痛。しかしまぁ、ゆゆさんとバウバウさんもこんな気持ちだったのか。

ルーツ「恥ずかしい…」

もう出勤するの辞めようかな…いや、まぁそれは禊を延長することになるだけなのだが。

※

端的に結論を言おう。
犯罪者、同僚から散々弄られた。

「ルーツ??アルトみたいなイカした髪だったのに。」

「なんか頭寂しいですね…」

「いいじゃんwwずっとその髪にしとけよww」

…なぜ、正しい行いをしてこんな辱めを受けなければならないのか。

ルーツ「くそぉ…。」

リンドウが長期休暇から帰ってきたらあいつも同じことになるのか…しっかり笑ってやろう…

そう、負の感情は連鎖するのだ。

※

そういえば俺のことを警察に紹介してくれた 宇仁王先輩と話してなかったな。と思い、丁度本署にいたので話すことに。

ユユ「ルーツくんが王子先輩に話があるって言ってますよ」

ルーツ「いや、そんな大したあれじゃなくて…」

ウニオウ「気持ちは嬉しいが。そんな、すぐには答えられない。」

何だこの展開は。(魂ムズムズ)

ルーツ「いや、だから…」

ユユ「抱きしめろ抱きしめろ!(小声)」

あぁ、ダメだ。先輩すまん。俺の魂が出そうだ。

ウニオウ「すまない。ルーツくんのことは好きだが、今はその気持ちに答えられない。時間をくれ。嫌って訳じゃないんだ。」

俺は宇仁王先輩の腕を掴みあげて顔を寄せる。

ルーツ「…うるせぇ口だな。」

後方でゆゆ先輩の悲鳴が響く。

ウニオウ「…おもしれぇ男。」

ルーツ「じゃ、俺パトロール行ってきます…」

※

その後、客船強盗の訓練?が始まった。
いや、まぁなぜ訓練かというと、誰一人として「訓練」と言わないのだ。

まぁ、こういう時は乗っておこう。

客船へ乗り込む。とやっとここでネタばらしが入る。

ウニオウ「ルーツくんの想定では客船にいるんだよね?」

ルーツ「は、はい。」

そして何故かたもつ先輩の死亡通知が流れる。

ウニオウ「やばい!浜いるわ!ルーツくんやばい!」

ルーツ「了解です、自分船内なんでこのまま進行します。」

メイ「これ進行していいよ。最強居ない。今屋上ね。」

俺は最強と呼ばれる部屋へ進行していく。

屋上に白髪の男が立っている。

射線を切るために発煙筒を投げて、相手の視界を奪う。

メイ「アイツ落ちた!浜側の海!」

ルーツ「了解!」

屋上へ迅速に進行し、海の中に見えた黒い影に向かって発砲する。

どうやら当たっているようで、犯人は慌てて船尾へ泳ごうとしている。が、逃がさない。
俺はそのまま射撃を続けてやり切る。

ルーツ「犯人やりました!」

メイ「やった!?」

そして、遅れてきたたもつ先輩と宇仁王先輩が到着する。

タモツ「え、殺した?悪鬼滅殺みたいな??」

ウニオウ「ゴミ?」

ルーム「ゴミっすね。悪人は許せないんで。」

そして船尾に運ばれてきた白髪の男。
あれ?なんか…

レナ「今ゴミって言ったよね…?」

ルーツ「…え?」

目の前で倒れているのは零那副署長だった。たもつ先輩や宇仁王先輩がやたらと悪口を促してきたのはそういうことか…。

レナ「ふぅん…。」

ルーツ「い、いや…」

この後謝って許して貰えた…。よかった。

※

レナ「お前警察やめんの…?」

ルーツ「えっ、なんでですか?」

レナ「さっき無線で言ってたよね…」

さっきの魂貫通を語らされたことや、この髪を弄られたことで無線で冗談交じりに「警察やめます」って言った件か。

もろもろ説明し誤解を解消した。

レナ「ふぅん…ほんとに警察続けるならさ。」

ルーツ「はい。」

レナ「____部隊入れようかと思ってるんだよ…。」

どうやら零那副署長は特殊部隊を作ろうとしているようで、そこへ俺を勧誘してくれているらしい。ただ今のままではまだ入れないこと。そして、俺自身今の環境に悩みを持っていることは事実だ。

守りたいものを、規則や法律の面で守れない現状に俺は疑問と違和感を感じている。いや、それは最初に説明を受けているのだが。

____俺は…どうするべきなんだろうな…。


Day7


+ 「Show dawn」
「Show dawn」


目が覚めた。
今日は出勤前にサルタンを走らせて、砂漠署の上の湖へ。
そしていつもの如く釣りをしながら物思いにふけっていた。

警察業務を行って数日。分かったことがある。
この街には悪人が多い。そしてこれは南も北も関係がないということも。

悪人にも悪行をやらなきゃならない理由がある。それは知っている。いろいろ理由があるだろう。俺も、落ちることを考えていた。
けど、まだ善人でいようと思った。そして法の執行官として、今警察をしている。

けれど、法というルールの中で悪を罰する。というのは骨が折れる。俺が悪人としてルールの外側で生きていられれば…

ーーーーーーー

「許せねぇ。アイツらぶっ殺してやる。」

「おい、ルーツ…その辺にしとけ。」

ーーーーーーー

ルーツ「楽なんだけどな…。」

トランクから魚を取り出して売り捌く。
その後、少し大きな魚の売り場を数名に聞くも知らないと濁されてしまった。

どうやらこれらは違法な魚らしく、公には取引先を話してはいけないのだろう。

そして、情報を得るためにBACKSへと車を走らせる。
まだ誰も出勤していないようだ。

そしてBACKSのアイク・ポルスカへ連絡を取る。彼は北のことに詳しいだろうし、俺を信用してくれているならその位のことは教えてくれるだろう。

ポルスカ「あぁ、その魚か…それならなぁ。」

思った通り、彼は売り場を知っていた。
そして俺は教えてもらった場所で取引をして無事に金を手に入れた。

その後、出勤しいつも通り対応をしていく。
銀行強盗。コンビニ強盗。いつも通りのお決まりの…
そんな時無線が響く。

メイ「ルーツくん、ちょっとこっちきて彼に職質してくれる?」

職質?珍しいな。

現場へと急行してみるとどデカい工事車両。

メイ「んじゃ、任せたよ。」

えぇ…。

???「いや、だから工事しに行かなきゃいけなくてぇ。」

なんなんだこいつは。
俺は車を降りる。すると目の前のこいつも何事もないかのように降りてきた。

ルーツ「こういう工事車両の使用には許可がいるんだ。」

なんだ。話がちゃんとできる良い奴じゃねぇか。

と思ったのも束の間。俺は気づけば銃を構えられ、そいつに拘束されてしまった。

ルーツ「おい!!」

???「使用の許可をしようかなぁ??」

くだらないジョークを言いながら俺を拘束したまま工事車両へと乗り込む。

???「君の体の工事しちゃおうかなぁ!?」

異変を察知した警官数名がやってくるが、別件が発生したらしくすぐに去ってしまった。

この街は命が大切なのか、事件対応が大切なのかどっちなんだよ…

???「なんか可哀想だから解放してやる」

犯罪者の方が優しいじゃねぇか…なんだよそれ…

ルーツ「…解放されました。」

メイ「ダメだよ、無闇に車から降りちゃ。」

ルーツ「職質しようと思ってぇ…(涙)」

メイ「がんばったねぇ…」

レナ「…お前今泣いてた?」

ルーツ「泣いてないっす…俺が泣いたのは生まれた時だけっす」

レナ「そうだよねぇ…」

ルーツ「うぅ…(涙)」

レナ「今泣いた…?」

ルーツ「泣いてないっす…」

※

そして今日は押収物の護送の日だ。
俺は署長からライオットの運転手に任免され二号車を運転することになった。一号車はバウバウ先輩だ。

市民の中から傭兵も雇われているようだ。チンピラ集団の猛攻が容易に想定できる。

準備が整い、計画されたルートへと運転していくと予想通り大量の悪人たちから銃撃や車両へのアタックが行われる。

ルーツ「くそ…二号車後輪パンクしました…」

報告を行うが続行の指示。俺はそのまま廃棄ポイントへとアクセルを踏む。

何とか北署へと辿り着いたものの、犯罪者の猛攻は止まらない。どうやらこのまま殲滅を行うようだ。雨音とサイレン、銃撃音が響き渡る。

バンッ

そしてどこからか鈍い音が響く。
今まで聞いた事のないほど近くで。俺が乗っている車両は防弾車両のはずだ。

しかし、その車両を貫通して、俺の胴体すらも弾丸が貫通する。

ルーツ「…くそ。」

俺から抜けた弾丸を拾い上げる「Starvation」の文字。つまり「飢餓」だ。

俺の意識はそこで途絶えた。

Day8


+ 「Justice and Evil」
「Justice and Evil」


目が覚めてから8日目になる。
今日も警察勤務だ。
だいぶ警察業務にも慣れたし、それなりに犯人も検挙でき始めた。そりゃ毎日上手いこと行くわけじゃない。

寝る前に見てたドラマでもベテランの警官のセリフで「俺たちの仕事は9割が無駄だ。」なんてことを言っていたが。実際に経験してみると的を得ていることに感嘆が盛れる。

現場へ向かい、犯人と対峙し、追いかけ、探し、見失う。
証拠を取って、犯人を探し、見つからない。

そんなことの繰り返しの中の1割が検挙に繋がっている。
まぁでも、こんな記憶のない俺でも街に少しでも貢献出来て、大切な人達を守れるなら、いい仕事じゃねぇか。

そして今もその1割。チェイス中にガソスタに突っ込んでお縄についているウェルターの対応をしている。
九十九というチンピラ集団らしい。が、まぁなんというか可愛らしい声で面白いことをするやつだ。

ルーツ「そういえば、こないだ俺が前に電話で質問した時、ありがとうって言ってたけど、俺がありがとうって言う側だったのになんでそういったんだ?」

ウェルター「え?わかんない。俺一日ごとに記憶失ってるからw」

ルーツ「何言ってんだ…俺ですら記憶なくて大変なのにどんな縛りなんだよ。」

犯罪者の中にも気さくなやつはいる。
他人への迷惑を考慮するもの。もちろんその逆も。

※

対応も終わり、同期のウータへ無線を繋ぐ。

ルーツ「ウータ、さっきのチェイスかなりやりやすかった。ありがとう。」

ウータ「いや、ナイスだった。おつかれ。」

初見で見た時はちょっとヤベェやつかと思ったけど、ルビー先輩と同じでチャラいだけでいい人だ。なんというか、芯を感じる。こいつも良い奴だ。

※

その後、押収物の仕分けを上官たちがしているということで地下駐車場へと向かった。

ルーツ「まだ押収BOXの整理してますか?」

ウニオウ「やってる!(やってない)」

ウータ「なんでそんな息切れ気味なんだよw」

ルーツ「じゃあ手伝いますよ」

そして押収所へ向かおうとしていたのだが無線が入る。

レナ「悪い、ルーツ。ちょっと時間くれ。」

ルーツ「あ、いいっすよ。」

零那副署長からの呼び出しだ。
押収BOXの整理も手伝いたかったが仕方ない。

ルーツ「いやぁ、すんません、俺も手伝いたかったんすけど…」

内心は違う。あんな量の押収物見たくもない。

※

どうやら零那さんは俺に先日話していた「SPE」というSWATのような部隊の服装を俺に教えてくれた。が、これは部隊への加入証明などではない。

しかし、零那さんは俺への育成に力を入れてくれることを誓ってくれた。あまり言語化しないタイプだと思っていた人がここまで言ってくれているのだ。俺も答えねば。しかし。

ルーツ「レナさん。俺最近悩みがあって。」

そう。俺は最近悩んでいる。引き金を上手く弾けないのだ。犯罪者を前にした時に生じる疑念。彼らの思い。彼らの人生。彼らの友人。それを奪うのがこの俺でいいのか。そういう疑念だ。

レナ「…大事な事だよ。」

零那さんは続ける。

レナ「犯罪者を殺すのは簡単だ。けど、それでいいと思うか?」

ルーツ「いえ。負の連鎖を産みます。」

レナ「…それがわかってるならいい。とりあえず、お前は巡査部長になれ。」

ルーツ「…はい。」

起きた事件を全て向かう。迅速に。かつ、多く。それを零那さんは「地獄」と呼んだ。
それはきっと現場を繰り返し見てきた零那さんだからこそ思う感想だろう。

俺はまだこなした件数は多くない。それでも疲労は感じているし、犯罪者に対する警察の無力さというのも少なからず感じている。

※

気が付くと銀行の貯金も500万を越えていた。
警察業務と釣りのおかげだ。

ルーツ「龍司さんに、返しに行こう。」

俺は本署のロビーへ龍司さんを呼び出して先日借りた500万を返済しようとした。が。

リュウジ「お前にやるよ。」

ルーツ「龍司さん、それは…」

リュウジ「よく頑張ったな。」

ルーツ「龍司さん…!!ありがとうございます…!!では、有難く頂きます!!」

想定外の返答に驚き、そして喜んだ。

警察の人達は…優しいのだ。
その優しさに漬け込んでいる悪人がいる。
一時は俺も、その悪に染まるか悩んだ身だ。
正義と悪。俺達の間を阻んでいるのはなんなのか。まだ俺には分からない。

けどやはり、今は。救急隊。警察。飲食を営んでいる人たち。南、北の住人。世話になった人達に、恩を返せる人間にならなければ。


____例えいつか。俺が悪人と呼ばれたとしても。



Day9


+ 「Signpost」
「Signpost」


本日も晴天。そして、警察業務だ。
まぁ、特筆するようなことも無い。いつもの日常だ。
だが、俺の目標は定まっている。
とにかく件数を回る。苦しくても辛くてもだ。

犯人「黒歴史話せ!」

犯人「犯罪用タブレット返せ!!」

犯人「殴り合いじゃあ!!」

ルーツ「…くっ。」

死ぬ。なんでこんなに相手の要望を受け入れなきゃならんのだ。自由すぎるだろ。

警察が抵抗できるのは相手が発砲してきた時。そして静止命令に従わない場合のテーザー銃だ。が、中々に…。

ルーツ「警察やめようかな。」

悪への対抗手段があまりにも…これじゃあ警察はいつもやられ役みたいなもんじゃねぇか。

まぁ、それも当然と言えば当然だ。警察ってのは行使できる力が大きい。だからこそ、慎重に状況を見極めて行動しなければならない。
警察が横暴な街で過ごしたいと思える市民も少なくなってしまうのだ。

とは言え…犯罪者の武力を考えれば、こちらももう少し強気に出てもいいんじゃないのか?もともと、この警察ってのも話に聞く限りじゃ軍人上がりの人間の集まりなんだろう?

まぁ、文句を言っても始まらない。とにかく今は件数を多くこなして成果をあげる。それしか道は無い。

心の中に例え矛盾がいくつできようとも。誓ったことは守り抜こう。でなきゃ、俺の芯を俺が折ることになるんだ。
俺は、俺の信じた道を行くしかない。

ルーツ「次…向かいます!」

Day10


+ 「Own oath」
「Own oath」



起床。と同時に通知が飛んできた。

ルーツ「客船とコンテナ…」

くそ…起きたばっかりだぞ。

客船の方は警察の人数が足りているようだったので一人でコンテナへ。

一足遅かったようで黄色い車両が散っていくのが見える。
が、1台は俺へ目掛けて突進してきた。

ルーツ「こいつ…。」

あくまでもコイツやり合おうってのか。

無線で状況を報告しながらアタックしてくる車両を回避する。そして丘を昇ったところでベルトを外し車両から降りて銃を構える。

戒厳令が発表されているから実銃を撃つこともできる。が、奴も向かってきた戦士だ。ここで逃げるようならそれまでの奴ってことだ。

ルーツ「おい!手を挙げて降りてこい!」

なんと大人しく黄色い車両から降りてきた。

???「今歪んでて手を挙げられないんだ。」

ルーツ「…w」

何言ってんだこいつ。けどやっぱり思った通り面白そうなやつだ。

ルーツ「地面に伏せろ!!」

???「伏せろ…?w」

俺はそのままこいつを拘束した。
意外にも大人しく応じた。

こいつは「ハイゼンベルク信雄」というらしい。恐らく偽名だろうが、顔は確かに…。

その後、ハイゼンベルク信雄を牢屋にぶち込んだ。
従順に従ったのでそれ相応の対応を行って解放した。
まだまだこの街には面白い奴が多そうだ。

※

今日は久々に竜胆が出勤してきた。どうも別件で日本に行っていたらしい。

そして零那副署長に呼び出され二人で話を聞きに行く。

レナ「ということだ。竜胆。」

リンドウ「なるほど。」

零那副署長は俺がSPEへ所属するに当たって提示した条件である「竜胆と共に」という件について説明をしてくれた。

ちなみにSPEとは「Simugura・POLICE・EMS」の略らしい。今日初めて知った。
大型犯罪で最前線で動き、住民間の犯罪等への対応を行う部隊だ。

竜胆も話を聞いて零那副署長から学べるならということで了承してくれた。

リンドウ「俺も逆の立場ならルーツは外さなかったと思う。」

なんて、嬉しいことを言ってくれる。
ドラマならこういう関係のやつを「相棒」と呼ぶのだろうか。

その後、零那副署長からそれぞれ具体的な目標を与えられた。

まずお互いに巡査部長を目指すこと。これが最低条件だ。そして俺のもっと具体的な目標は「カバーの意識」だ。俺は零那さんからみると一人で突っ走りすぎている。自分の命を軽んじている。というのが問題点ということだ。

確かに、俺は自分の命を軽んじている。
それは俺が記憶が無いということ。そしてこの街に生きている人の為なら俺の命を賭けることができる。

だが、それが仇になることがあるということだ。

ルーツ「…わかりました。」

自分の命を大切にしろ。とは救急の頃から言われているが、いまいち実感が湧かない。いつもわかったようなフリをして答えているが、根の部分では何も理解していない。

俺が生きていることで助かる命がある。けど、それは別に俺が生きていなくても誰かが救うはずの命だ。

つまるところ、俺は命を賭けて何かをすることでしか自分の命の価値を証明できないのだ。

記憶もない。特異的な何か、驚異的な何かを持っている訳でもない非凡な俺ができることは…きっとそのくらいの事でしか表しようがない。

ーーーーー

「生きていると、脳に染み付いた罪悪感が。ずっと消えないんだ。だから、俺は…」

「____罪滅ぼしをしないと。」

ーーーーー

ルーツ「…っ!!」

気が付くと警察署のベンチで横になっていつの間にか寝てしまっていたようだ。

時折夢を見る。
鮮明な映像もあれば、古めかしい映画のような夢も。
しかしそのどれもが非現実的に思えてしかたがない。

もしも、あれが俺の記憶なら…?

いや、今は考えないでおこう。記憶を取り戻すよりも、今はやるべきことが別にあるのだから。

あの後零那副署長から言われた言葉。

レナ「お前が死んだら。竜胆も死ぬと思え。」

その言葉が、今俺を突き動かそうとしている。
俺は…

____誰かの為なら生きられる。


Day11


+ 「Follow you」
「Follow you」


あれ?なんで俺はノレ一とウェルターといるんだ?あぁ…夢か。俺たち3人は何故か戦艦に向かって泳いでいる。

ウェルター「あそこから登れそうなんだよな…」

ルーツ「…。」

ノレ一「やべ!!」

しかし突如として押し寄せた鯨のような大きな波に、3人は呑み込まれてしまう。
水流の中で揉みくちゃにされ、抵抗もできぬまま呼吸が苦しくなり、そのまま意識が遠のいていく。

夢…なんだよな…?

※

ルーツ「…?」

目が覚めると何故かレギオン公園にいた。
一体なんで…。

しばらくキョトンとしていると突然ウェルターとノレ一も現れた。
まだ夢でも見てんのか…?

俺は2人に夢で見た内容を伝えるも、あまりピンと来ていないようだ。2人は昨日ゆゆ先輩の家で酒飲んで寝て、目が覚めるとここに居たらしい。

この街でいう所謂「歪み」の影響なんだろうか。

ウェルター「じゃあそれ正夢にしに行こう」

ウェルターの提案に、俺は「なんでだよ」とツッコミを入れながらも気になって2人の後をついて行くことにした。

ヘリに乗ってそのまま北へと向かう。
どの辺の海だったかな。

しばらく夜の雲の間を進んでいると、やはり夢で見た戦艦が眼前に現れる。
が、夢で見たような巨大な波も鯨も現れなかった。やはり夢は所詮夢ということか。

それから流れで2人についていくと、ウェルターが指さした建物へとたどり着く。

ウェルター「ちょっと俺、あの人に用があるんだ。」

そういって小屋の付近にいたおっさんと何かを話し始めるウェルター。
どうやら交渉?しているようだ。

まぁ、普段は犯罪者でも今は俺の守るべき対象だ。何かあればすぐに俺は銃を抜く覚悟がある。

その後何事も無く交渉が終わり、振り向きざまにウェルターは嬉々とした声で言い放つ。

ウェルター「お前たち、神に背く覚悟はあるか!」

※

ウェルターの言葉の真意を分かっていないのはどうやら俺だけのようで、ウェルターはニコニコとしている。

その後ヘリに乗り、どこかへ向かう。
だいぶ陸地から離れたところで何やら大きな建造物が見える。

道中ウェルターが「これどうなるんだろう…w」とニヤニヤしていたがこれの事だろうか。

街中でも発砲が起き始めているのでこれが終わったら対応に…

バンッバンッ

ルーツ「なんだ!?」

ウェルター「やべぇ!」

突如、俺たちの乗ったヘリは銃撃を浴びせられてしまう。何処から…とは言え周囲は海。つまりはあの建造物からだ。目を凝らしてみると無の民が銃口をこちらへと向けている。

無線でゆゆ先輩へ報告をする。

ルーツ「こちら無の民から銃撃を受けています。」

するとゆゆ先輩が応答する。

ユユ「撃たれたなら撃ち返していいよ!」

よし。許可も得た。

ルーツ「反撃の許可出たぞ。」

こっちには九十九のウェルターもいる。無の民くらいならやれるはずだ。

※

しかし、俺の考えは甘かった。
俺はハシゴを登ったところにあった燃料タンクへ銃弾を当ててしまい爆散。海へと放り出されてしまった。
ウェルターも銃撃で重症のまま建物へ。
ルーもヘリポートへ上陸はできたようだが、身動きが取れないようだ。

※

その後救急隊と警察が駆けつけ、無の民を殲滅し、事態は治まった。が、どうやらここは「オイルリグ」と呼ばれる建造物で犯罪の現場らしい。
後で上官達が起きてきたら怒られるらしい…。

知らねぇよ…あそこが犯罪の現場だなんて。

※

その後もいつも通り犯罪対応を行っていた。
しかし、またもや面倒なことが起きる。

ヴァンジェリコで強盗が起きた。犯人はおにゃんこぺんという白のチンピラ集団だ。

そしてそこには例の無法者もいる。

まぁ人質がいるのでこちらも直ぐにどうということはできないのだが。
けれど、こいつは俺の中で絶対悪だ。必ず捕まえる。

そしていつものようにチェイスへと発展したのだが、白い奴らはチェイスの後半で銃を発砲したようだ。無線で報告を聞いた俺達は気を引き締める。

犯罪者から発砲が行われれば、こちらも銃の利用が許可されるのだ。
しかし…

アルト「俺は発砲なんてしてねぇよ!」

奴は何を言っているんだ。一瞬脳がフリーズする。さらに車を降りてきた。そして車両をロックしている先輩の車両を蹴り始める。

こいつ…。

しかし、ここで俺が発砲して殺すのは簡単だ。が、少しくらい話を聞くのもいいか。
俺は近づいて手錠を嵌める。

アルト「はぁ??俺話そうとしてんのに手錠マジか。おもんな。」

オモロいもクソもない。そっちはこっちの上官に発砲してんだぞ。あまりにも視点が利己的すぎるだろ。何言ってんだ。

しかし戯言を聞く暇も無く、気づけば後方から銃弾が飛んでくる。
こいつの仲間か。俺は急ぎ車両の後ろへと隠れるもこの無法者の戯言は止まらない。
聞けば聞くほど腹が立つ。

結果的に話を聞いてやろうとして抵抗もしないでいたが、結果的に俺はダウンした。そのままアイツの仲間はアイツを担いで逃走。

…なんだよこれ。意味わかんねぇ。

警察はルールの中で戦っている。
けれど、好き放題する奴らになんで配慮してやんなきゃ行けねぇんだよ。ふざけんな。

※

その後、俺は上官陣に呼び出され状況確認を行うことになった。まずはオイルリグの件。これはしっかり怒られた。
そしてヴァンジェリコの件。こちらは状況を聞いた上官からは「ルーツ」は悪くない。と擁護された。

俺が悪くない。というのはどうだっていいのだ。俺が悪かろうが、あの無法者をちゃんと裁くべきなんじゃないのか?

俺の上官、ないし警察官に対する不信感は募っていく。

※

退勤後、釣りをしながら考えていた。

俺がやるべきこと。
今すぐにでも警察をやめて黒に落ち。アイツを止められるようになりたい。
例えそれで俺が悪人と呼ばれようが、犯罪者と呼ばれようが構わない。

俺は…。

ルーツ「警察辞めるか。」

面接の時にも言われた。
守れるものと守れないものがある。
警察は法律、規則の中で戦う地獄だと。

水面に世話になった人たちの顔が浮かぶ。
救急隊。警察。飲食。メカニック。友人。

俺は、すぐにでも悪人になって…。あの無法者を。あのワガママなガキを。

ーーーーー

「気に入らんのなら殺せばいいやろが。」

「…殺すよりもっといい方法があるんだよ。」

ーーーーー

頭が痛い。釣具を仕舞い、俺は帰路へついた。
この世界はそう単純じゃない。
思い通りにいかない事ばかりだ。嫌という程そんなことは知っている。

なんとなく頬の傷に触れる。
もう治癒しているはずの跡はまだ痛みを俺に訴えてくる。
いつ付いたのかもわからない。
このキズの痛みで俺は今日もうまく寝付けないのだろう。1度記憶したことを、俺はもう二度と忘れない。この傷のように。今日のことも。ずっと。ずっと。



____俺は…アイツを絶対に許さない。


Day12


+ 「Outside the rules」
「Outside the rules」


昨日の1件もあり、今日もまた寝不足のまま俺は車を走らせていた。最近は起きて直ぐにBUCKSへ向かっている。理由?ビールとツマミが美味い。それに、あの場所はなんだか落ち着くからだ。

店でアイク ポルスカさんと話をした。昨日起きた襲撃についてとか、その時に仲間の人達に置き去りにされたとか、いろいろ。
聞けば聞くほど彼も中々不憫な立ち位置らしい。

けどこの人はなんというか、優しいんだろうな。
そして、その優しさがきっと仇になっている。

…優しい人間はこの街では淘汰されていくのだろうか。


※

そして、楽しい長話も終えてスッキリしたところで出勤。いつものように犯罪が各所で起きており、俺はその対応へ。

アイツと犯罪現場でもしも出くわしたら。
犯人がもしもアイツだったら。
俺はきっと規則や法律を無視してでもアイツを殺してしまうだろう。
いや。俺はアイツを確実に。殺す。

なんてのは…冗談。

冗談にしておかないとな。…今のところは。

しっかり今日も奴と出くわしたが、俺はグッと堪えた。
そしてその対応では零那さんが犯人を逮捕して連行していった。
やっぱこの人すげぇな。

そして当たり前のように次の犯罪通報が鳴る。

ルーツ「ルーツ、このフリーサ銀行へ向かいます。」

ルーツ、竜胆、ウータ、ルビー先輩が現場につき、中を確認すると犯人はSeventhの2人組だった。
この人確か前にチンチロ勝負をして零那さんに負けてたよな。

ジョー「じゃあチンチロしようか。」

この男。チンチロ好きすぎだろ。
毎度チンチロじゃねぇか。
今回はペコラという女性もいる。

結果的に言うとチンチロはした。
そして竜胆はほぼ破産した。
俺も参加したがまぁ割と勝った方だった。このペコラという女性もまぁ大概弱かった。

しかし、悔しかったのか、中途半端に感じたのか、その後チェイスも行うことに。
だったらチェイスだけで良かったんじゃないかって言うのは野暮か。

その後、竜胆と俺はジョーを追いかけ、中々いいチェイスになったが逃げられてしまった。
ダートに入った時に車体の制御が上手く聞かない上に、山上にもなると木々に阻まれてしまう。もっと技術をあげなければ。もっと強くならなければ。

ルビー「逮捕!」

無線でルビー先輩が犯人を逮捕したとの報告があった。さすが兄妹ってところか。俺も頑張らないと。
砂漠署へ連行するとペコラが押収の交渉をウータと必死に行っていた。ウータと交渉するとは無謀な…。

※

そういえば、驚きなのだがたもつさんとバウバウさんが明日結婚するらしい。あのハゲ頭に惹かれたとでも言うのか。
まぁ、人には人の乳酸…

とにかく、お互いが幸せならそれはきっといい事なんだろう。
明日結婚式があるらしい。ならば俺は2人を祝福しよう。
ってか、何を着ていけば良いんだ…。思えば式になんて出たことないぞ俺。

まぁ周りに合わせて服を買うとしよう…。

ルーツ「てか、あれ?なんでゆゆさん警部に昇格してるんですか?」

ユユ「死んだからだよ。」
悪い冗談にも程がある。

ルーツ「どういうことっすか…」

ユユ「私近々日本に帰るんだよ。それで、警察も退職になるからそれまで。って感じ!」

ゆゆさんが帰る…?何かあったのか?

ルーツ「なんでですか?」

ユユ「私、ずっと親のブラックカードで生活してたのよ。けど、親に厳しい環境に行ってきなさい。って言われてこの街に来たのよ。それで60日フル出勤して、頑張ってさ。それにこの街でいろんな家族とか見てきて私もそろそろ覚悟を決めて親と仲良く暮らすって事に挑戦しようと思って。」

ルーツ「じゃあ、悪い意味で出国するって訳じゃないんすね。いつか帰ってくるんですか?」

ユユ「帰ってくるつもりはない!」

ゆゆ先輩は俺が初日に無法者に絡まれていた時に対応してくれた良き警察官だ。まだ恩も返せてない。

砂漠へ呼び出された俺たちは砂漠の空港へ向かったが、道中のあまり車内の空気は良くなかった。

ルーツ「そうなん…すね…。」

あと数日でフライトのチケットをとって帰るらしい。
それまでに何か返せればいいが。

俺はきっと何も今は返せないだろうな…。

恩人が去るというのは突然なんだなと思った。
失うってのはこんな感じか。
そしてこれからもたくさんこういう別れがあるんだろうな。

俺は今後同じような話に、何度耐えられるだろうか…。

※

その後、イベントにより警察は砂漠の空港へ集結した。どうやら連携強化という名目のイベントで訓練の一環らしい。

俺は屋根上に伏せて目立たないように行動する。このまま隠れてれば多分見つかることは無いだろう。

しかし次々と警官が捕まってしまう報告が無線で共有される。

「今こっち追われてる!」

「助けて…!」

「連れてかれてる!」

無線がそこかしこから鳴り響く。
動かないままでいれば俺は安全だ。

ルーツ「…。」

けど、動かないでいられるわけが無い。それにこれは連携力の強化訓練だ。
そう思った矢先、竜胆の緊急ピンが流れる。

ルーツ「竜胆!今助けに行くぞ!!」

俺は竜胆のGPSを追いかけ、バイクの人間が竜胆を担いでいるのを見つける。
車両でその後ろを追いかける。

あと少しでアタックできる…!!
バイクなら簡単車両をぶつけて落とせる…!!

ーーーーー

でもさ、そいつの命はどうでもいいのか?

ーーーーー

しかし、俺の車両はバイクへ追突出来ず、前方で道を遮る形で妨害した。
そのままの勢いでガソリンスタンドへ車両が吹っ飛び、爆散。

俺は直ぐに駆けつけた市民に捕まった。

※
竜胆の姿が見えないまま訓練が終わり、少し休憩していたところに声をかけられる。

リンドウ「ルーツ、ありがとうな!お前のおかげで助かった!」

なんと、リンドウはどうやら俺の妨害のおかげで逃げられたらしい。

ルーツ「…お前が無事で良かったよ。」


ーーーーー

「本当にそう思ってるか?」

「自分の胸に手を当てて考えろ」

「お前の本心は?」

ーーーーー

耳鳴りがする。
頭が痛い。ここ最近モヤのかかったような声が聞こえる。
俺の記憶に関することなのか。
それとも、幻聴なのか。わからない。

とにかく、かなり不快だ。

※
(観測不可能部分)

勤務を終え、帰宅した。

部屋にあるDVDのパッケージを見つめる。
俺は、こういうドラマが好きだったのか。
記憶が無い。そんな違和感にも慣れてきたが。
それでも自分が何者なのか分からないままでいる。

俺が北の住人であること。
そして、壁への嫌悪感。
東高速の検問所付近のとある場所の既視感。
銃の取り扱いや運転。基本的なことは体が覚えている。

少しずつだが。昔のことを思い出せそうた気がする。
しかし、何故だか今は思い出したくないとも思う。

今の生活に慣れてきたからなのか。
北だとか南だとか、そんなことに巻き込まれたくないと思っているのか。
それとも思い出したくないナニカがあるのか。

ルーツ「なんだ、このドラマ…案外面白いな。」

やっと手に入れた日常。
信頼できる人たち。
安心出来る場所。

俺はそれを失いたくない。

あの場所で目が覚めてよかった。
死んでなくてよかった。
生きててよかった。

ルーツ「…。」

自分の命の価値を大したことがないと言った。
記憶もない。身よりもない。俺の命は、今必死に生きてる人達に比べれば。大したことがないといった。

だが。少しづつ。
俺も変わり始めているんだろうか。


Day13


+ 「Traitor」
「Traitor」


今日も寝れなかった。
ここ最近安心して寝れない日が続いている。
仕事にも支障が出るようなら少し休日を貰ってもいいな。

そしていつものようにBUCKSへ向かおうと思った矢先に爆発音が響いた。音はBUCKSからだ。

ルーツ「何かあったのか…?」

世話になってる飲食店だ。何事もなければいいが…。

※
現場へ着くとそこにはノーム ヴォネットさんとノア ブライスさんがいた。

どうやら無の民が時折突っ込んでくるらしく、珍しいことでは無いらしい。
とにかく何事もなくてよかった。

ルーツ「そうだ、丁度いい。いつもの貰えるか?」

ノーム&ノア「おっけい!」

仲がいいな。夫婦だったりすんのかな。
てか、そういえば今日は結婚式か。すっかり忘れていた。
カウンターで待っているとノームさんが話題を振ってくる。

ノーム「ルーツくんは今日の結婚式いくの?」

ルーツ「まぁ、一応何事もなければ。」

ノア「せっかくだから服もいいの着ていかないと!ぱぱぱぱーん♪」

そうか。たもつさんとバウ先輩も披露宴の衣装を着るんだよな。ちょっとどんな感じなのか楽しみだな。

その後救急隊の人たちも珍しくBUCKSへ入店してきた。
賑やかになってきて、俺は人があまり多いのが好きではないので早々に退店し、南へ向かった。

※

その後もいつも通りの犯罪対応。
もう慣れてきたのでこの辺は省略する。

※

そして結婚式が始まった。
何事もなく終わるかと思われたその時だった。

バウバウ「モノノケ牧師。少しよろしいですか?」

急なストップに一同は困惑する。

バウバウ「まず皆様。本日はありがとうございました。たーたん(たもつさん)もありがとう。」

しかし、その瞬間。バウバウさんは銃を取り出した。

ルーツ「…?!」

来賓した全員が困惑しているのが伝わってくる。警察陣も見れば銃に手を当て警戒している様子が見て取れる。

バウバウ「これは私の結婚詐欺です!お祝い金は全て頂きました!そして、私は警察をやめてAに入ります!」

ルーツ「…。」

A?今、エースって言ったのか?警察を止める…?エースっていえば…初瀬或翔のいる…?
なんで?今日は結婚式で…いや、嘘…?なんかのジョークか?

思考が止まる。

バウバウ「私を捕まえてみろ!」

そして式場を去るバウバウ先輩。
警察陣も席を立ち後を追いかける。

ルーツ「ふざけんな…」

ルーツ「おい!ふざけんなよ!バウバウ先輩!!」

体験2日目に俺を見てくれた先輩。
世話になった人が…犯罪者に??

ーーーーー

メイ「大切な人が犯罪者になって」

レナ「撃て。と言ったら撃てるか?」

ーーーーー

今になってあの警告が、本当になった。
俺は…撃てるのか…撃たないと…でも…。

白い車両を警察車両は追いかけていく。
俺も。もし撃ち合いになったら俺は…。

※

結果的に、Aは捕まった。もちろんバウバウ先輩も。いや、もう先輩じゃない。

警察もテーザーで応戦し、幸いにも死者はでなかった。

しかし、俺は未だに現実を受け止めきれていない。

ルーツ「…はぁ。」

俺はロビー前のベンチに横になる。
頭がクラクラとする。
式も、裏切りも、初めてのことで訳がわからない。

レナ「何してんだ…。」

ルーツ「なんか…人間って信用できねぇなって。俺…先輩のこと仲間だと思ってたのに。」

レナ「温いねぇ…。」

ルーツ「俺、2日目に面倒見てもらったんでなんか…」

レナ「…今お前がついて行くべき人間は誰だ。」

俺がついて行くべき人。
俺が今1番世話になってて。
俺が信頼すべき人。

ルーツ「レナ副署長です。」

レナ「それが分かってりゃいいよ…。」

零那さんはそう諭してからその場を去った。

零那さんの言いたいことはわかる。
でも、それでも俺にとっては先輩たちや肩を並べるみんなが…。

心に穴が空いた感覚だ。
それがバウバウ先輩の選んだ道でも。
俺は、恩を返せねぇままだし。
ゆゆ先輩だって。
もうすぐ居なくなってしまう。

こんな短期間でこんなにも喪失感を感じるものなのか。

※
(観測不可部分)

時計の針は5時を指し示している。
まだ寝付けない。
今日のことが頭を何度も過ぎる。
そしてこれからのことも。

俺が躊躇えば。竜胆や、零那さん、みんなが死ぬ。
でも、俺が躊躇うことをやめてしまったら。

恩人を手に掛ける…。

ーーーーー

そういう運命なんだよ。

血は争えないのさ。

ーーーーー

運命?最初から俺の人生は決まってた?
…そんなわけない。そう今は信じたい。

俺は守るべきものの為に。
引き金を引く覚悟を持たなきゃいけない。

これから相手にするのは。有象無象じゃない。
どこかの知らない誰かじゃない。

それは忘れないようにしないといけない。

これから先もこういうことがあるんだろうか。
そしてこれから先、俺は…耐えられるだろうか。



Day14


+ 「Distrust」
「Distrust」


昨日の一件があったものの。
みんな変わらない。いつも通りの風景が広がっていた。

俺も昨日のことを思い返すことのないように。
心の奥底にしまった。

ルーツ「ルーツ、出勤しました。」

リュウジ「じゃ、ボーナス配るから来いよ〜」

ボーナス?そういえばそんなもんがあるのか。
俺が正式に採用してから初のボーナスだ。
金には興味無いが、誰かに恩を返す時には必ず必要になるだろうし。貰っておこう。

リュウジ「うし、ルーツも出勤簿書いたか?」

ルーツ「今日初めてのボーナスなんすよね。」

リュウジ「ルーツは巡査だから〜279万だな。」

ルーツ「あっ、そんなに貰えるんすね??」

すごい額だな。この街の紙幣はどうなってんだ。
どうやら階級ごとに給料は異なり、出勤日に応じて加算されるようだ。

※

…そういえば電話来てたな。
俺はスマホを開いて連絡先からひまわりさんへ連絡をする。
話中だった。
まぁ、アイドルだし、忙しいんだろうな。

そう思っていたら直ぐに折り返し掛かってきた。

ルーツ「あ、すまない。ちょっと色々してて折り返すの遅れた。」

ヒマワリ「ルーツくん。ちょっと、話せる?」

ひまわりさん?なんか元気ないな。
俺はその後8000番で待ち合わせをして話をすることになった。

警察がいないところで話がしたいって…もしかして…犯罪か?

※

8000番について、待ってる間釣りをしていた。
なんというか、ひまわりさんと会うのは数回目になるがまだなんというか…違和感?気持ち悪さ?がある。

いや、失礼だとはわかってる。けど、感じてしまうものは仕方ない。

ルーツ「みんないろいろあるよなぁ。ほんと。」

そうこうしているとひまわりさんもやって来た。

ルーツ「お、誰かと思った。」

いつもの服と違っていて気づけなかった。

ヒマワリ「かわいいでしょ?」

ルーツ「あぁ、うん…かわいいな…」

ヒマワリ「ふっ…w」

ルーツ「ふっ、ってなんだよ…w」

※

ルーツ「で?どうした?話って。」

ヒマワリ「えっと昨日のさ…結婚式あったじゃん?」

どうやら、バウバウ先輩とたもつさんの結婚式について思うところがあるようだ。まぁそりゃあみんな騙されてたんだ。無理もない。俺だって昨日は落ち込んだ。今だって…。

ヒマワリ「それでさ…警察の人がギャングになっちゃったじゃん…?」

ルーツ「そうだな…俺が体験2日目に世話になった人だよ。先輩…だったんだよ。」

先輩…いや。もう先輩じゃない。

ヒマワリ「私もあの結婚式にいたんだけど。ひまわりの中では結構衝撃だったんだよね。」

どうやらひまわりさんは、過去にStellarlaboで起きたテロ事件で警察をあまり信用できない状態らしい。

ルーツ「…。」

ヒマワリ「現場でさ。毒ガス?を使われてさ。でもそれって警察しか出せないって聞いてさ。」

そういうことか…。

ヒマワリ「警察しか使えないはずの物を警察の人以外が持ってるってのがもう信用できないしさ。」

…信用。
そりゃあこの街の「警察」ってのは。元々は軍人の集まりで、正式な警察ではない。ってのは世界史を見た俺は知っている。

けど、警察は市民を守る為に命を懸けていることも。守りたい人達を守る為に頑張っていることも知っている。俺も、その中の一人になった。

それでも、過去に起きた出来事や。トラウマ。印象というのは色濃く残る。

ルーツ「それで昨日の一件も重なっちまったってことか。」

ヒマワリ「そう…。でもルーツくんはさ、救急隊にいた頃から真面目なの見てるし。唯一信用してるんだ。」

…そうか。
信用してくれてるのか。

ーーーーー

お前が?w

こいつに信用されてる??ww

ーーーーー

また頭が痛い。クソみたいな声が聞こえる。

ヒマワリ「…裏切りって。なんで起きちゃうのかなって思ってさ。」

ルーツ「うん…。」

ヒマワリ「なんだか、過去の事件とか。南と北が争ってた時のこととか思い出しちゃってさ。」

ヒマワリ「____みんなが幸せになっちゃダメなのかな。」

ルーツ「…。」

幸せ。人類が幸せに。
彼女の言っていることは夢物語だ。
お互いに信用する。っていうことは。
お互いに利用する。ってことと同じだから。
きっといつか、破綻する。

ルーツ「でも…」

でも俺は今彼女に「ウソ」を付かないといけない。彼女には笑顔でいて貰いたいから。

ルーツ「でも、信じることでしか。何も始まんないですよ。」

そうだ。俺だって目が覚めた時。
誰を頼っていいのかもわからないまま。死にたくないという一心でスマホから電話をかけた。
痛むからだを引きずりながら。雨の中を必死で。

助かりたいという願いに。
救急隊の人達は答えてくれたんだ。

ヒマワリ「そうだね…」

ヒマワリさんは壁を指さす。

ヒマワリ「全部、あの壁が悪いのかな。」

恐らく南と北で戦争をしていた時の話をしているのだろう。
その時の事故で一時期彼女は上手く笑えなかったのだという。

ルーツ「そうだな。あの壁についても色んな人の色んな考えがあるよな。でもさ、ヒマワリさんが大変だった時さ。ヒマワリさんのことを命を懸けて助けた人がいるんだろ?」

ヒマワリ「うん。」

ルーツ「だからさ。誰がどうだとか。誰かがこう言ってるから。じゃなくてさ。今やるべきことを。自分がしたいことを。やるべきなんじゃないかな。」

俺にだって。今すぐにでも殺してやりたい奴がいる。けど、今俺がするべきことはそれじゃない。俺がやるべきことは恩を返すことだ。

ヒマワリ「そう…だね。」

ルーツ「ヒマワリさんは?何がしたい?」

ヒマワリ「私は…みんなを幸せに…ハッピーにしたい。」

これが彼女の本音だろうか。

ルーツ「それでこそヒマワリさんだな。」

ヒマワリ「ありがとう!なんだか少し元気出たよ!」

ヒマワリさんはいつもの明るい笑顔に戻った。
少しでも力になれたかな。

ヒマワリ「ルーツくんはさ、警察やめないでね。」

ルーツ「ええ?でも警察嫌いなんだろ?」

ヒマワリ「だからだよ。ルーツくんは信用できるからさ。」

…信用。

ルーツ「そうか。まぁ、またなんかあったら俺の話も聞いてくれよ。」

そして、俺はヒマワリさんと別れた。
本署に戻り、いつもの仕事に…。

※

レナ「ルーツ、竜胆、ルビー。お前ら本署帰ってこい。」

突然の無線に俺たちは本署へと集められた。
昨日の一件についてだろうか。

本署へ戻ると、零那さんが噴水の前に立っていた。

ルーツ「用事ってなんですか?」

俺が言い終わるかどうかと言うところで後方からテスカ先輩と龍司さんが現れる。
ヤ〇ザのようなスーツ姿で…。

ルビー「なんすかそのヤ〇ザみたいな服装w」

ルビー先輩のいつもの調子に、龍司さんなら「おぉ!どうだ!似合ってるだろ!」なんて言ってくるだろうと思っていた。

しかし、龍司さんとテスカさんは俺たちを素通りして車へと乗り込んだ。

ルーツ「どういう…」

レナ「次見た時はテメェらを殺す。」

ルーツ、リンドウ、ルビー「え?」

リュウジ「お互い様だ。」

そのままリュウジさんはテスカさんの運転する車両に乗ってどこかへ…え?

ちょっと待てよ。何が起きてる?
は?

レナ「…ちょっと。1人にしてくれ。」

ルビー「了解っす…」

それからいろいろ話していたが冗談なんじゃないかとか。ドッキリじゃないかとか。いろいろ話している間に会議室へ呼び出しが掛かった。

※

レナ「短刀直入に言う。」

要約すると。
零那さんが過去に潰した組。それが実は龍司さんが所属していた組だったのだ。
その事実を知った龍司さんは零那さんと一緒に仕事はできない…と。

レナ「アイツは筋を通すやつだ。警察金庫にも手を付けず。物品も全て返却して警察を去った。」

ダメだ。吐き気が。

ルーツ「すみません。ちょっと気分が…」

俺はフラフラと席を立ち、トイレへと逃げる。

鏡を見ると傷だらけの顔には冷や汗が流れていた。

龍司さんが居ない?あんなに世話になったのに…俺はまた…。

ーーーーー

ルーツ「借りてた500万。返しに来ました。」

リュウジ「その500万は自分で使え。」

ルーツ「えっ?」

リュウジ「____よくがんばったな。」

ーーーーー

…まだなんにも。

ルーツ「まだ俺…何にも…」

フラフラと洗面台に寄りかかる。
今すぐにでも吐き出てしまいそうだ。
バウバウ先輩。龍司先輩。次はゆゆ先輩。

俺は何にもできないまま。何も返せないままで…。

強盗の通知が鳴る。

レナ「話は以上だ。いくぞ。」

…なんでそんな簡単に。いや…違うか。
簡単じゃない。零那さんだって過去の行いを少なからず…悔いているはずなのに。

俺も…行かなきゃ…。

しかし、足は動かない。

ルーツ「あぁ…くそ…ダメだ…」

ルーツ「世話になった人に恩も返せねぇ。」

何とかフラつきながら、エレベーターを降りる。しかしここで俺は限界が来た。

※

救急隊が来て、俺はフラつきながらも救護を受けてなんとか落ち着いた。
無線からは未だに対応の声が流れている。
なのに。俺は…動けないままで。

※

何が変わっても。何を失っても。
俺たちは止まれない。わかってる。
そんなことは。

俺が、ひまわりさんに言ったじゃねぇか。

ーーーーー

ルーツ「だからさ。誰がどうだとか。誰かがこう言ってるから。じゃなくてさ。今やるべきことを。自分がしたいことを。やるべきなんじゃないかな。」

ーーーーー

俺がやるべきことは?もう叶わないのに。
あとで聞いた情報によれば、龍司さんは九十九に入ったらしい。

つまり、バウバウさんも龍司さんも警察をやめてギャングになったのだ。

※

…くそが。裏切り者。嘘つき。嘘つき。
みんな。みんな嘘つきだ。誰も信用できねぇ。誰も。信用しちゃいけねぇ。みんな、どこかに行ってしまう。だったらもう。俺は。

ーーーーー

「全部諦めて、死ぬか?殺すか?」

ーーーーー

リンドウ「ルーツ、服買いにいきたいんだけど」

竜胆の声にはっと我に返る。
握っていたピストルにかけていた指が緩む。
なんでこいつはこんなに能天気なんだ。

ルーツ「いいよ。」

俺はいつもの調子で答える。
そのまま二人で服屋へ。

着替えている最中に零那さんもやって来た。

ルーツ「はぁ…。」

レナ「溜息やめろ…。」

そうは言われても。出ちまうもんは出る。

リンドウ「最初の面談で言われたろ?身内が悪に染った時撃てるかって。」

言われた。正論だ。

ルーツ「竜胆はなんて答えたんだ?」

リンドウ「俺はみんなが危険に晒されるなら躊躇しませんって言ったよ。」

ルーツ「そうか…。」

こいつは覚悟があるんだろうな。
決して考えが無いわけでは…いや、考えが無いのか?

リンドウ「他の誰か抜けるより、俺はお前とか零那先輩が警察辞めるってなったら取り乱しちまうな。」

ーーーーー

ヒマワリ「ルーツくんはさ、警察辞めないでね。」

ーーーーー

ルーツ「そうか。」

※

その後も仕事は続く。誰が居なくなろうが、誰が死のうが。世界は回るのだ。

その後メカニックにて車の修理を頼んでいる間に様子のおかしな男に声を掛けられた。

よくよく話を聞いていれば「傭兵」稼業を行おうとしているらしい。名前はアッシュ。
しかし、俺はこの男を知っている。俺が救急隊の時に出会ったセツという男だ。

セツ「君みたいにさ、『何かを守る為に』って武力を欲する人は面白いよね。」

ルーツ「ちなみにさ。個人的に力を借りることもできるのか?」

セツ「ん?」

ルーツ「俺が。法的に手を下せない人間に手を下せるのか?」

セツ「へぇ?いいねぇ?僕が提案する前にその言葉が出るのは初めてだよ。」

ルーツ「そうなのか。」

…この街の人は、よっぽど綺麗で優しいんだな。

セツ「君面白いねぇ。」

ルーツ「今まで沢山悩んだからな。」

セツ「それは見てればわかるよ。」

ルーツ「いろいろ経験したし、助けてくれる人が多ければ多いほどいいと思ってる。」

そうだ。俺一人じゃ。なんにも出来ねぇ。だから、俺は頼っても。返せなくても。生きていくしかないんだ。

セツ「それじゃ、また次の汚れ仕事で。」

ルーツ「あぁ、じゃあな。」

正しさなんて何かわからない。
この街では特にそうだ。

きっと。これからも、わからないままだ。
去っていく人に悲しむのは。これっきりにしよう。これが最後だ。

ルーツ「俺は今ある恩を返す。」

そうだ。そうだよな。竜胆も言ってた。
今俺たちができるのは。本気で向き合うことだ。俺たちが教わったことを活かして、バウバウさんや龍司さんの悪行を止める。

それが俺に出来る唯一の恩返しだろう。

俺は北へ車を走らせる。
この道ももう随分と見慣れた。
この忌々しい大きな壁も。
廃れた北部も。この空の星も。嫌な思い出も。

____もう俺は全て忘れない。


Day15


+ 「Thanks」
「Thanks」


目覚めが悪い。そりゃそうだ。なんというか。まぁ不眠が続いているせいで頭痛が酷い。昨日、恩人が敵になったのだ。

ルーツ「…行くか。」
今日はバイクで出勤だ。

※

無線には甘鬼るるうという見覚えのある。しかし見覚えのない警官がいた。

ルーツ「ルーツ出勤しました。」
地下駐車場へ向かうと 霧島 テツ(きりしま てつ)さんがいた。
テツさんは昨日居なかったから、昨日の件について話をする。
テツさんも驚いていた。が、前々から少し関わりがあることは知っていたようだ。

その後、俺が警察車両を眺めていると甘鬼るるうさんが地下へ降りてきた。

ルーツ「るるうさんって初めまして…じゃないよな?」

ルルウ「はい、覚えててくださったんですね!」

元気だが控えめ…しかしこの服はなんだ…?なんというか雑誌で見たことがあるがゴスロリと言うやつだろうか…地雷系…?

ルーツ「あぁ。俺が救急隊だった時に蘇生したよな。酔っぱらいの…」

ルルウ「あはは。」

ルーツ「体験だった…のか?」

ルルウ「はい、今日が3日目で…どうするか、考えてるんです。」

ルーツ「そうか。」

この子はこの職を続けられるだろうか。

※

その後、俺はテツさんと一緒にReneroへ向かった。ここは確か初瀬或翔のいる飲食店だって聞いていたので避けていたのだが…。

ルーツ「あそこって、或翔がオーナーなんですよね?」
テツ「ん?違うよ?」

…あれ?聞いてた話と違うな。

テツ「Reneroのオーナーはレオンだよ。」

レオン?聞いたことないな。まだ会ったことのない人か。

レオン「いらっしゃいませ。」

…似ている。赤髪。声音。
いや、口調は丁寧だが。

ルーツ「お店、オシャレですね。」
レオン「ありがとうございます。」

…いや、或翔じゃね?(大貫通)
いや、見た目でそんなこと言い始めたら終わりか。

レオン「お二人共、朝早いですね。」

テツ「俺レオンのオリジナル頼む。」

ルーツ「じゃあ俺はラビットフットで。」

レオン「請求は如何なさいますか?」

テツ「俺でいいよ。」

ルーツ「テツさん…ありがとうございます!頂きます!」

テツさんもいい人だ。

※
今日は平和だな。特に大きなこともなく。
昨日の件やら一昨日の件で疲弊していたので少しは休めそうだ。
しかし突如無線が鳴る。

Stellarlaboからの通報があったらしい。
身元不明のセクハラ男がピストルを持って店内に立てこもっているとのこと。
ってことはひまわりさんが危険な目に?

ルーツ「ルーツ向かいます。」

※

現場に着くと亀の頭…被り物…なんて表現してもなんか卑猥になっちまうのはなんでだ。とにかく変質者がいた。
新SIGNという名前の…変な男。

どうやらこの変質者は、ひまわりさんの行動が「俺を誘惑してるんだ!」と…

いや、言いがかりがすごいな。

レナ「ひまわり、それやってみてくれ。」

ヒマワリ「いいですよ。」

俺は何をし始めるのかと内心期待していた。
そりゃ、俺も男だから。気にはなる。

ヒマワリ「今日も一日〜ハッピーになれ〜っ!」

…。

アイドルって、大変なんだな…。
なんというか、まぁ想像はしてたがこう、むず痒い…
いやまぁ素直に可愛いと思う。だが俺の肌に合わないんだろうな…。

新SIGN「ほら!こいつ!誘惑してる!」
こいつの言い分が許されるなら、俺の下乳事件だって許されるべきだろ。つまり、こいつは許されない。

レナ「おい、ルーツ。こいつ持ってけ。」

ルーツ「…俺こいつ嫌っす。」

レナ「おい。ルーツビビるな。」

ルーツ「…くっ…。」

俺は竜胆と共にこの変質者を送り届けた。
今回は無罪として処理した。というのも、こいつは今街でいわゆるプレイヤー犯罪(システム犯罪ではない住民同士でのいざこざ)で誰も怒らないか。耐えられるか。を検証しているらしいのだ。
まぁ、難しいことは抜きにして話せば
つまり本当の悪意を持って何かを成しているわけではないということだ。

※

その後ヴァンジェリコ強盗が起きた。犯人は白ギャング。つまりAだ。そしてそこには恐らくバウバウさんと思われる人も居た。

ルーツ「裏切り者…。」

龍司さんはまだ零那さんとの一件があるが。

こいつはただの…いやこのギャングそのものがか?ただの快楽犯の集まりだ。だから、俺は絶対に許さない。

そしてチェイスを開始した。犯人の車両の多くは逃げ果せてしまった。さらに別件の対応も重なりこちらも残りは俺一人。
今追っているのは恐らくバウバウさんだ。
しかし、この人…直線しか走らねぇな。

ルーツ「おい、もう諦めたらどうだ。」

バウバウらしき人「諦めません!」

俺がどう言ったところで、もう気持ちは変わらないだろうが。

それでも俺はこいつを止めないと行けない。
それが俺に出来る唯一の…。

ルーツ「お前のこと助けに来た人達が犠牲になるぞ。お前のせいでな。」

返答はない。
もうそんなことは覚悟してるってことか。

ならばこちらも本気で行こう。
何度かアタックを繰り返すも中々仕留めきれない。
無線で応援を呼んでいるようだ。
ならば逆に好都合だ。

すると予想通り、彼女を守る為に1人男がチェイス現場へ戻ってきた。

運転席から見えた赤髪。
そしてAの白い車両。きっと、恐らくヤツだろう。
俺は直ぐに女から標的をこちらへ切り替える。

普通なら初めから追えている金持ちを追い続けるべきだ。
そう。普通なら。けど、生憎俺は目覚めてから正気じゃない。
特に、こいつの前では。

…俺がやるべき相手は、こっちだ。

俺は赤髪の男をターゲットに切替える。男もそれを感じとったようで、バウバウさんらしき人物から遠ざけようと逆走を始める。

西高速を南下して行くさなか、山中を通ったりと中々難しい道を通る。流石はギャングを長くやっているだけはある。
警察車両が苦手なダートコースを攻めてくる。
しかし、まだ追える。

ルーツ「お前ももう諦めろよ。」

アルトらしき人「はぁ?俺が遊んでんのわかんねぇの?」

突然のジャンプ。俺の車体は傾いてしまい、差が開いてしまう。
そしてついに視界には捉えられなくなる。自分を信じて南下し続ける。
相手はギャング。恐らくしっかりと俺を引き離した後で脇道に逸れたいはずだ。

俺は奴の車両がないか視覚を頼りに当たりを見ながら走行する。

その時、高速の脇道からしたエンジン音。

聞き覚えのあるエンジン音を頼りに、俺は脇道へと直行する。

さっきまで追い続けていた車両のエンジン音だ。
俺にはその確信があった。

そして高所から車を上手く落とすとやはり底に先程の車両がいた。

俺はその後もずっと追い続けた。
絶対に逃がさない。俺がここで死んでも。逃がしてやらない。許さない。

そして南下し続けて西高速の門まで来た。

門を越えた先で好機が訪れたのだ。
奴の車は横転しており、ドアを破って這い出てきたところだった。

次の奴の行動は目に見える。
きっと適当なことを喋って交渉する振りをするか、何も言わず銃を撃つ。

車体が銃弾が被弾し、予想は現実になる。

相手の行動を読んでわざと通り過ぎて良かった。
幸いにも俺には1発も当たっていない。

そして車体を翻してもう北上。一度門の北側へと向かう。
その際にも車体は被弾したが、またもや体には当たらなかった。

直ぐに寄せて門に体をよせ銃を構える。

門を抜けた先で逃げようとしている奴の姿をみつけた。

…殺す。

俺は何の躊躇いもなく引き金を弾いた。

※

俺はそいつを牢にぶち込んで最低限の会話だけでことを済ます。
あまり機嫌が良さそうでは無い応対だけされ、いつもの威勢の良さはなかった。

そりゃあれだけ煽った相手に捕まれば機嫌も悪くなるだろう。

※

その後俺は竜胆と釣りをした。

竜胆は初めてだったようで道具を買うところから俺が教えた。
中々上達が早く、魚が釣れ始めたころには「魚入れるために車欲しい〜」とハマってくれているようだった。

その後俺は竜胆を家に送り届けるため車に乗せた。

リンドウ「まぁ、こういうのは不謹慎だけど。明日はもっとぱーっと起きて欲しいな。早くノルマもクリアしていかないとな。」

ルーツ「まぁ忙しい方がいいか。」

考える時間も減るし。
嫌なことを考えなくて済むもんな。

リンドウ「俺さ、犯罪者として龍司さん達と出会ったら躊躇わない。面談の時にも答えたけどさ。ルーツはなんて答えた?」

ルーツ「俺は撃てない。って答えた。」

ルーツ「けど今はいろいろ考えてさ。恩を返す為にもどうしたらいいんだろうなって思ってる。」

というか、話に夢中でリンドウの家を素通りして北まで来てしまった。「悪い」と一言言えばリンドウは「いいよ、けど代わりに泊めてくれ」と返してくれる。

ルーツ「恩をどう返したらいいんだろうなって思ってる。」

龍司さん、バウバウさん、と敵対のままどうかしたらいいのだろうかって。まぁ、けど昨日思ったのは。

ルーツ「自分が教えて貰ったことをしっかりやるのが恩返し…なんだよな?」

リンドウ「そうだよ。俺の元部下だったのに何も学んでねぇじゃんか。って言われちまうよ。」

ルーツ「そうだよなぁ。」

リンドウ「だからルーツはブレるなよ。ブレそうになったら俺が生きてりゃ喝入れるよ。」

ルーツ「俺もお前になんかあったら直ぐに駆けつけるよ。」

リンドウ「まぁルーツはいつも駆けつけてくれてるから、俺がもっと頑張らないとな。」

ルーツ「まぁ、お前はポンコツだけど正しいこと言ってると思うし、力になってるよ。」

リンドウ「ポンコツ…?」

竜胆は自身への表現に疑問符を浮かべる。
こいつはポンコツだ。けどこいつにはこいつのいい所がある。俺はそれを知っているので敢えて訂正はしない。

ルーツ「いや、俺は深く考えすぎちまうから。竜胆みたいにストレートに物事を考えるって大事だと思うんだよ。」

リンドウ「まぁ、俺はまどろっこしいの嫌いだしな。」


その後も少し会話をした。
警察業務中は中々ゆっくりと話してられないことも多いのでこういう時間は大切だ。

ルーツ「ん…じゃあ竜胆、ありがとうな。」

その後、リンドウに南へ出勤する為のバイクを貸してから俺は部屋に入った。


Day16


+ 「Start Line」
「Start Line」


ルーツ「なんか外が騒がしいな…。」

俺は今日即出勤し、先輩たちや共用車両へ給油していた。こんなことが何になる訳でもないが。

まぁなんにもせずに過ごすのは嫌だし、こういう少しの努力でも誰かの為になる…よな。

そう、俺に出来る事はなんでもやろう。

…爆発音、銃声。
今日は本当に外が騒がしい。
また零那さんが何かやってるのだろうか。

案の定、零那さんからの緊急無線が流れる。

ルーツ「ちょっと様子見てきます。」

地下駐車場から出動すると出口に巨大な爆発した…ヘリ…?が落ちていた。

レナ「…ルーツ。ここに犯人が乗ってる。持ってけ。」

ルーツ「は、はい…。」

一体何があったんだよ。

俺はその後犯人を牢屋へと送り届ける。
しかし、再び無線が流れる。

レナ『ルーツ、それちょっと待て…』

ルーツ『は、はい…?』

俺は犯人へ伸ばしていた手を引っ込めて外の様子を伺いに行く。

すると無法者の声がした。
見れば、レナさんが人質に取られている…

ルーツ「畜生…。」

アルト「おい、いいのか?そいつを解放しないと…」

レナ「クソッタレが…」

一旦こいつの言うことを聞いた方が良さそうだな…。今は命が最優先だ…。

レナ「本署を出たら追いかけてやるからな…」

アルト「やってみろよ…!」

レナさんとアルトはそのまま地下駐車場から出ていった。恐らくチェイスへ発展したのだろう。

※

その後砂漠のフリーサへの対応へ向かった。
SEVENTHのジョーという男が犯人だ。
今回もチンチロか…?と思っていたが何と撃ち合いを要求してきた。

ルーツ「いいだろう。」

俺も最近は撃ち合いに自信がある。
同じく対応に来ていた六花くんと二人でジョーとの戦闘を始める。

ルーツ『砂漠フリーサ、撃ち合いになったので把握お願いします。』

こういった要求の時に使う弾は互いにゴム弾だ。非致死性なので撃っても死にはしない。当たっても少し痛い程度のペイント弾みたいなもんだ。
だから楽しみながらやろう。

※

俺は負けた。

ルーツ「くそ…」

ゴム弾、クソほど痛ぇじゃん…。

レナ『ルーツ…殺られてんじゃん…。』

何も言い返せない…。

残るは六花くんとジョーの一騎打ちとなった。
が、しかしそこに第三の刺客が現れる。

???「ワンワン…!!」

何と野生?のピットブルが乱入してきたのだ。

ジョー「犬ゥ!?」

そしてなんとジョーは犬にも発砲はできなかったようで、押し倒されてしまう。

ジョー「犬っ!!犬っ!!」

そりゃ焦るよな…。とはいえこの犬、俺がやられた直後にやってくるとは…いったいなんなんだ…?もしかして俺が記憶を失う前に飼ってたとか…?いろいろ考えたがわからない。

俺にも確殺が入り、通知が流れる。

ユユ『ルーツ何回死んでんの?w』

その後も無線で煽られる。
ゆゆ先輩は明日日本へ帰国する。
悲しみと、怒りが入り交じる。

ルーツ「六花くん、ゆゆさんに「黙れ。」って伝えてくれ。」

リッカ『ゆゆさん、ルーツさんが「黙れ」って言ってますw』

その後蘇生され追い打ちをかける。

ルーツ『ゆゆさん早く実家に帰ってください。』

そんなこと思ってない。けど、引き止められるものでも無いし。この位の方が向こうも気楽でいいだろう。

レナ『おい、ルーツ…。』

ルーツ『すみません。ゆゆさん。上官に対する言葉使いではありませんでした。』

ユユ『そうだよ!全く!』

ルーツ『ほんま腹立つな…』

レナ『ルーツ…?』

ルーツ『ごめんなさい。』

※

俺はその後救急で会話しているゆゆさんのところへ言って謝罪しに行った。

ゆゆさんは快く?許してくれた?

その後零那さんとゆゆさんが会話しているのを聞いたが、警察を退職する手続きについて話していたので明日の出国までに警察ではなくなるようだ。

ルーツ「はぁ…。」

別に。
今回の別れは後ろ向きな別れではないとわかっている。ゆゆさんは両親に会いに行く決心をして出国するのだから。俺も引きずらないで別れを受け入れるべきなのはわかっている。

とは言ってもやはり1番関わりがあって世話になった人が誰かと問われれば真っ先にゆゆさんの名前が出てくるくらいには俺もゆゆさんに思うところがある。

少しくらい悲しんだって文句言われないだろう。

※

その後バイクの修理の為にサンシャインメカニックへと向かう。
この街の南には大きなメカニックが2つある。
1つはSunshineMechanic通称サンメカだ。
もう1つはMechahoric通称メカホリ。
最近新たな試み?で共同で修理を行っているらしい。曜日ごとに開いている施設が異なる。

ルーツ「修理頼めるか。」

そして今日はサンメカが営業日というわけだ。

ノレ 一が対応しながら共同で修理をしている理由とかを話してくれるが、そもそもノレ 一はあまり乗り気では無いらしい。

ルー「そもそも俺1人の方が好きだし。」

ルーツ「え?お前が?そんなふうに見えねぇけど。」

ルー「まぁそんなふうに見えないようにしてるからね。」

ルーツ「じゃあなんで無理してんだよ。」

ルー「だってその方がウケるし。」

こいつの価値観は出会った頃からあまり理解できないが、良い奴だとは思っていた。本人はそれを「自己犠牲」と言っている。そんなに自分のやりたくないことを頑張る理由はなんなんだ?いや、俺にはこれからも理解できないのかもしれない。

…けど他人の過去や信条には例え理解が及ばなくても興味がある。
それは俺が記憶を失っているからなのだろうか。

その後、女性が入って来て「今日出張販売だから〜!」とメカニックの前に車両を止めた。

ノレ 一曰くどうやら共同販売?しているらしい。あまり飲食業界には詳しくないがいろいろな手法を取っているんだな。

という、よく見るとその女性はステララボの花陽浴みやびさんだった。前にひまわりさんに会い行った時に対応してくれたアイドルの1人だ。

ルーツ「誰かと思ったらみやびさんか。」

ルー「人の名前覚えるの苦手そう〜。記憶も無くすしな。」

ルーツ「はは…そうだな…。」

確かに人の顔を覚えるのは苦手だ。正確には、名前と顔を一致させるのが苦手だ。
まぁでも初対面とか2回目に会う人なんて、みんなそんなもんなんじゃないのか?

ルー「ってかまだ記憶戻ってねぇんだ?」

ルーツ「まぁな。けどたまに俺のこと知ってるって人とは会うことがあるけど、詳しくは教えてくれねぇんだよな。」

ハルサキ。Seventhの長髪の女。パッと思いつくのはこの2人だ。
そういえばハルサキ最近見ないな。

ルー「なんでそんな意地悪されてんの?w」

ルーツ「いや、わかんねぇけど…昔の俺が嫌な奴だったんじゃねぇの?」

昔の俺のことを、俺はさっぱりわからない。
もしかしたら北の住人な訳だし、もしかすると昔は犯罪者だったかもしれない。
あまり考えたくないが。

ルー「え?じゃあ記憶が戻った後に嫌な奴になる可能性があるってこと??」

ルーツ「わかんねぇな。いやまぁでも、記憶が戻ったとしても、今覚えてることを忘れる訳じゃないしな。」

いや脳科学というか、人間の脳について詳しくないから記憶が戻った時の衝撃で今の俺がどうなってしまうのかはわからない。
そもそもなんで記憶を失ったのかもわからないんだから。なんとも言えない。

昔の俺…か。

※

その後も割と平和だったのでヘリを修理したり、車両を修理したり。あとは全部のヘリとバイクにダクトテープを入れて置いた。何かと役に立つかもしれないし。
そして最後のヘリを再びサンメカへと向かう。

ルー「ルーツ、ヘリ運転できたんだな。」

ルーツ「あぁ。どうも体が覚えてるみたいでな。俺は一体何してたんだろうな。」

ルー「医者じゃね?」

ルーツ「医者は銃撃たないだろw」

ルー「なんで記憶取り戻したいの?」

ルーツ「んー。そりゃ自分が何者かわかんないのって違和感あるし。まぁ記憶は取り戻したい…って…思ってたけど。」

今は少し違う考えもある。

ルーツ「今は思い出さない方がいいのかもなって思いもある。」

思い出したくない。訳じゃないけど。
思い出さない方がいい事ってのも生きてればある。もし、俺がその思い出したくないことを思い出した時に耐えられるかわからないのだ。

※

今の自分のことについても、いろいろと思うところがある。

俺の職だ。理由あって現職なわけだが。
この職もいろいろと曰くがある。

警察。
この街の警察は特殊だ。
歴史について少し読み漁ったからわかるが。元々は軍隊が政府を打ち倒して統治し始めたのが始まりだ。

だから、警察を嫌っている人ってのは多い。
ひまわりさんやノレ 一もそうだ。
根付いた印象というのはそう簡単に変わりはしない。

北の市民が嫌われていたり、警察が嫌われていたり。差別や偏見というのはどこにでもある。

俺だって悪人と対面する度に初めて悪と対峙した時の記憶が巡り基本は信用がならない。

とはいえ、ウェルターのように悪人の中にも良い奴だと思える人もいるし。

つまるところ、組織や居住区への印象と一人一人に対する印象というのは別で持つべきだ。

※

パトロールを行っていると猫原先生から電話がかかってきた。

恐らく前に連絡を入れた時の折り返しだろう。

ニャンバラ「ルーツくんどしたの〜?」

ルーツ「あ、えっと…自分ちょっとお金溜まったんで車のお返ししたいなと思って。」

ニャンバラ「え〜、いいよいいよ!」

ルーツ「いやいや、ちゃんとお返ししたいので。1000万くらいの車なら買えますよ。」

ニャンバラ「えー。あれそんな高くない…。」

あれ、とは俺に買ってくれた車両のことを言っているんだろうが。俺は別に車両の値段がどうとかってことではなく、俺にしてくれたことに値を付けているのだ。

猫原先生はその後もしばらく渋っていたが、最後には「じゃあ、私も好きな選んで渡したから、ルーツくんセレクトで!!」と言って折れてくれた。

俺はディーラーへと連絡を入れて車両を見に行く。

さて…

…何を買えばいいのかさっぱり分からん。

他人にプレゼントなんて目覚めてからしたことが無い。
こういう場合って…どうしたらいいんだろうか。

相手が喜ぶものを買うべき…だよな?
けどよくよく考えてみれば俺は猫原先生のことをほとんどよく知らない。

…猫原先生のことをイメージする。
元気で、いつもあわあわしたりしっかりしたりを繰り返していて…やっぱ救急隊の上官だから色々疲れたりするだろうな…。

俺は車両と猫原先生のことを考え、車を決めて購入した。
ついでに自分が魚を積むためのジャーニーも購入した。

プレゼントの方は明日にでも渡しに行こう。
喜んで…くれるだろうか…。

※

突然の電話。竜胆からだ。

リンドウ「なぁルーツ。俺さ、南に家買おうと思ってるんだけど。一緒にシェアハウスしないか?」

シェアハウス…?
竜胆なりに俺が北からこちらへ出勤していることを知って考えてくれたのだろう。

…しかし、なんだろうな。

俺が南に住むというのをイメージできない。
別に北を愛しているわけでも、南の街並みを嫌悪している訳でもないし、もちろん逆でもない。

しかし、南に住むことを想像すると…なんだろうな。罪悪感?を感じてしまうのだ。

それこそ、北の住人というのは南の人たちの一部では卑下されているのだし。俺も自分の身元も分からないまま北を離れてしまうのはどうなのだろうか。

いろいろ思うところはあるが竜胆の言っていることもありがたくは思う。

ルーツ「たまに…泊まるくらいなら。」

リンドウ「わかった。ってやばい!なんか撃たれてる!本署!」

ルーツ「?!」

突然のことに俺も電話切り直ぐに地下駐車場から車両を取り出して本署前へ。

本署の目の前には緑の車両前に3人組の男達がいた。どうやら零那さんが人質に取られているようだ。

ルーツ「畜生。」

???「武器を仕舞え。俺らの後ろに立つなよ。」

そこに署長も現れた。

めい「あ?この人数いて人質取れるわけねぇだろ。」

???「もう人質に取った!」

そして車を出そうとした途端に零那さんは車を降りる。そして車はそのまま逃亡した。

メイ「撃つな。」

ルーツ「零那さん、人質に取られるところだったんですよ!?」

レナ「人質には取られないよ…。」

その後再び緑の車両は本署へ戻ってくるももう俺たちは車両に乗り込んでいた為そのままチェイスへと移行する。

※

その後3人組のうちの1人を確保したところ、残り2人も大人しく職質を受けることになった。

メイ「話2転3転してよぉ、だせぇんだよ。」

さすが署長…やるときはやるし、言うことは言うんだな。

メイ「手荷物検査しましょうか〜。」

レナ「手ぇあげろや。」

レナさんのその言葉にバカ1人は副署長へと殴り掛かる。

メイ「あ?テメェなに殴ってんだよ。」

???「手をあげろってそういうことじゃ」

言っている所に零那さんの拳が決まる。

メイ「おい、なんでお前警察しか持ってねぇ毒ガス持ってんだよ。」

毒ガスといえば、客船などへの対応時に上官が投げているあれか。でもなぜこんなヤツらが…?

俺が担当した奴も馬鹿みたいに武器を持っていた。

そしてやっと立場を弁えたのか。3人組は謝罪を入れながらその場を後にした。

※

今日も疲れた。
色々あったが明日車をプレゼントするのが今は1番怖い。
喜んで貰えなかったらと思うと、心が痛い。

それに明日はゆゆさんが…。いや、もうそれについては考えないでおこう。どうせ見送りにも、開催するパーティーにも行かないんだ。俺には関係がない。

…ほんとにそれでいいのか?俺。

俺はジャーニーへ魚を移動させながら今日のことを振り返っていた。そしてとあることに気付く。

ルーツ「待てよ…?毒ガス?」

ーーーーー

ヒマワリ「前に事件があって。警察しか持ってないはずの『毒ガス』が使われたの。」

ーーーーー

…警察以外が毒ガスを。持ってる?

意味がわからない。何故?

ひまわりさんに…伝えるべきか…?

いや、警察の誰かが渡した可能性も否定はできない。

…謎は深まるばかりだが。一応心に留めておこう。

※

なんの気の迷いか、俺は服屋に来ていた。

ルーツ「____まぁ、最後くらい。見よう。」


Day17


+ 「I won't say goodbye」
「I won't say goodbye」


今日はゆゆ先輩が出国する日だ。
考えただけで嫌になる。

今まで多くの人が離れていった。

別れはいつか必ず来る。
俺ができることはなんでもやるつもりだったが。俺は無力だ。
何も返せない。

だから、少し考えて今日はちゃんとゆゆさんに会おうと思った。別れを耐えて、習ったことをちゃんとこなす。それが俺に今できることだ。

※

とはいえ、まずは猫原先生に返せる恩を返しておこう。

ということで車両をプレゼントした。
喜んでもらえるか心配だったが、猫原先生は案外喜んでくれていた。まぁ、そりゃあ嬉しくなくても、猫原先生は優しいからきっと同じリアクションをするだろうな。
なんて少し冷める考えも頭に過った。

本心で、喜んでくれてればいいが。

※

そろそろパーティーの時間か。
業務に追われていた俺はゆゆさんのお見送りパーティーの開催時間を過ぎていることに気付いた。

ルーツ「少しの間、退勤します。」

無線で報告を入れ、俺は服屋へ向かう。
パーティーのコンセプトがコスプレ?だったので自分とはわからない服にした。

雑誌で見た「ペンギン」だ。
寒い地域に住む飛べない鳥。

俺はマスクを被り、会場へと向かった。

既に会場には人集りができていたが、なんというか、無音だった。

パーティーってもっと音楽とかあるもんだと思ってたけど意外と静かなんだな。
まぁ行ったことがないし、あったとしても記憶が無いので俺にはよくわからない。それにゆゆさんを少し見たら俺は帰る。長居はしない。

奥の方を見るとゆゆさんは踊っていた。
無音なのでかなりシュールだった。が、本人たちは楽しそうなので安心した。

ゆゆ「あの時助けてもらったペンギン?」

ペンギンくん「はい、昔助けて貰ったペンギンです」

ユユ「???」

まずい。
ゆゆさんに声をかけられてしまったが、とても気まずい…。

俺は急ぎその場を後にする。

ルーツ「バレてないよな…?」

俺の行動が俺もよく分からない。いったい俺は何がしたいんだ。

ただゆゆさんの姿が見たいだけだった俺は…なんというか…変質者みたいじゃないか…。

ルーツ「帰ろう…」

※

最終的に見送りも行くことになった。
というか、行かないとは言えない雰囲気だった。

まぁ、いいか。今回は耐えられそうだ。

今までとは違う。後ろ向きな別れではない。あくまで前向きな…。

ゆゆさんは泣いていた。

ユユ「最後まで。警察で居させてくれてありがとうございました。」

署長がいろいろ話をして。警察は敬礼して。
途中意味のわからないシールドを構えさせられて。
そしてゆゆさんは、飛行機に乗って飛んで行ってしまった。

…後ろ向きな別れじゃなくても。
やはり悲しいものは悲しい。
しかし、俺は今回はなんとか耐えられた。
それはゆゆさんのことを俺がどうも思っていないからではなく、ゆゆさんが両親と仲直りというか。ちゃんと対面して話そうという前向きな別れだからだ。

八夜ゆゆ。彼女は俺の良き先輩だった。
そして、いろいろと心配してくれていることもよく伝わっていた。
疑いようがなかったし、有難かった。別にあの人にしてみれば特別な人間ではなかったと思う。それでも俺はあの人を特別だと思っている。だから俺は、ゆゆさんに恩は返せなかったが、きっと俺は忘れない。

いつかまた会おう。
そして、その時は…。


Day18


+ 「Dialogue」
「Dialogue」


昨日も。寝付けなかった。
俺が寝れないのはいつもの事だ。だがそろそろ本当に倒れてしまいそうだ。

眠れないというか。寝たとしても直ぐに悪夢に魘されて目が覚めてしまうのだ。

そして目が覚めた時、夢の内容を覚えていない。

そんな毎日を過ごしている。
日に日に、悪夢の内容を朧気に思い出すことも増えてきたが非常にまずい。
というのも銃の引き金が軽くなってしまうのだ。現実なのか、夢なのか。区別がつかなくなる瞬間がある。

おそらくだが、夢の中で俺は人を殺している。

これが俺の記憶ではないことを祈る。
いや、北の人間ということは噂通りなら…追いやられて…。なんてことも考えてしまう。

※

北のインパウンド依頼が入ったので向かう。しかし、依頼主が見当たらないし車もない。

こういう状況になると少し、警戒してしまう。
北だから、という偏見的なものではなく常に警戒しておかないと突然後ろから刺されるなんてのはありうるからだ。

後方から黄色い車両が現れ、緊張度は増していく。とはいえ、依頼主だったらと思いおれは声を掛ける。

ルーツ「すまない。ここでインパウンド依頼が入ったんだが、何か知らないか?」

見ればペコラだった。
どうやら依頼はペコラだったようで水没した車を引き上げて欲しいとの事だった。

ペコラ「大変そうだったね、さっき。」

ルーツ「あぁ。2箇所でほぼ同時のコンテナ強盗だったな。バタバタしてて遅れてすまないな。」

ペコラ「相変わらずあんた北に住んでんだね。本署でいる癖に。」

そういえばseventhは南を敵対視してるんだった。

ペコラ「本署じゃなきゃいけない理由ってなんなの?なんかあまりに不自然だよね。」

ルーツ「南で働いてんだから南に家持てよとかそういうことか?」

ペコラ「いやまぁ別に。」

まぁ、そりゃそうだわな。そう思われても仕方ない。普通の人なら出勤場所はなるべく家から近い方がいいと考えるだろう。けど、まぁ記憶のない俺が今の家や痕跡からみすみす手放してしまう方が俺からすると理解できない。
俺はまだ自分の過去を取り戻すことを諦めたくないのだ。

それに、南に住むことに抵抗を感じる。
自分が南に住んじゃいけないという強迫観念のようなものがある。記憶とは別で、これは俺の体が覚えている事だ。

ペコラ「まぁ根掘り葉掘り聞くつもりはないよ。」

ルーツ「砂漠署に行けって言われたら行くけど今は本署でやるべき事があるんだよ。」

ペコラ「ふぅん。」

ルーツ「北の住人なのか?」

ペコラ「そうだよ。」

ルーツ「ここに住んでんのか?」

ペコラ「いや?たまたまここに用があってね。」

スタブシティーと呼ばれている廃れた小さな集落だ。廃品やら、ボロボロの建物が並んでいる。

ルーツ「さびれてんな。」

ペコラ「それも味ってもんよ。」

ルーツ「まぁ、雰囲気はいいよな。」

ペコラ「へぇ?珍しい。南で働いてる人間が?」

ルーツ「まぁ、古めかしいものとかさびれたもん見るのは好きだな。」

ペコラ「南の人達はこの辺は煙たがって嫌ってるよ。汚いとか臭いとか。」

ルーツ「まぁ…南の暮らしに比べればそう思う人もいるだろうな。」

ペコラ「北に住んでる人たちもさ。南の暮らしや景色に慣れると南の方がいいって言い出す人の方が多いだろうからさ。」

ルーツ「まぁそうだなぁ。」

確かに壁を自由に行き来出来るようになってから北から南へと人が流れていった事実はあるだろうし。今北に住んでいるのは余程の物好きが、犯罪者か、南を嫌っているか。

ルーツ「まぁでも南には南の良さがあるし。北にはきたの良さがある。南にはネオンやらビルの明かり。北には星空。それぞれいい所があるから俺はどっちがって思わないな。」

ペコラ「でも、南の人間はみんなそう言ってる。」

ルーツ「誰が何言ってるとか、気にしてないからな。俺は俺が思ったことが全てだから。」

ペコラ「小さい頃からこの辺で住んでたの?」

ルーツ「あぁ、いや。俺は記憶が無いんだよ。目が覚めたら1000番台の浜辺で目が覚めてな。それまでの記憶が全くなくて。で、南の救急隊に助けられたんだよ。」

ペコラ「あんたは幸せだね。」

ルーツ「…なんかあったのか?南に対して思うところがある口ぶりだけど。」

ペコラ「いや別に。あんたに多くを話すつもりは無いけど。」

…こいつは南でいろいろあったのか?それとも北を愛してるのか?なにやら過去にあったような口ぶりが続いてるな。
正直言って気になる。というのも、自分の過去がわからない分他人の昔話を聞期待という思いもあるし。単純に俺はこいつのことを知りたいと思っている。

ルーツ「いやいや、聞かせてくれよ。俺は自分の昔のこと覚えてないから、他人の昔の話聞くの好きなんだよ。」

ペコラ「あんまり人の過去を探ると後悔するよ。」

ルーツ「なんで俺が後悔するんだよ。」

ペコラ「…長生きしたいならあんまり掘り下げるのはオススメしないね。」

…無理だ。俺は今別に長生きしたいと思ってないし。ただまぁ他人の過去ってのは語れば本人にダメージが入ったりするデリケートなものであることもわかる。
きっと、こいつは自分の過去が好きじゃないんだろう。

ペコラ「人によっては…忘れたいやつもいるんだよ。」

俺がこいつの過去を探るにしても、きっと今じゃないってことだな。

ルーツ「そうか。まぁ、じゃあ時が来れば教えてくれよ。」

ペコラ「一生教えるつもりは無いよ。」

ルーツ「はは。まぁ、人は変わるもんだからな。」

そうだ。他人に迷惑をかけるくらいならば死のうと思っていた俺も今は人の為に生きようと思えている。人は変わっていく。後ろ向きにも前向きにも常に。

ルーツ「じゃ、またな。」

ペコラ「あぁ。」

※

無線「屋上いるぞ」

俺は無線の声にハッとする。しかし、もう遅かった。

ルーツ「っ!くそ。」

2名のAに深手を負わされダウンしてしまう。
しかし、その後別の屋上を取りに行っていた警官にその2名も撃たれ動けなくなった。

そして、しばらくすると現場介入に来ていた救急隊のヘリが屋上へ。

危なくないか?
まだボブキャットの室内に犯罪者がいるのに。
まぁ、警官が入口を押えているので安全と判断したのか。

ジェイソンモンキー「こいつも助ける!」

色々と考えていたが、ジェイソンは俺だけでなくなんと犯罪者であるAの1名も救助しようとしている。それも俺の目の前で。

まぁとは言っても救急隊の大義名分は「命は平等」だ。
せめて、俺と犯罪者とは別の場所で蘇生するんだろう。ならば何も言うまい。

しかし、俺の考えは安直だった。
この救急隊は俺の目の前で犯罪者も蘇生した。

ルーツ「…おい、これどうしたらいいんだよ。」

俺は対応できない。1度ダウンしたらその犯罪者になにもできないのだから。

ジェイソン「じゃあ!あとはジャンケンでうまくやって!」

しかし、目の前の救急隊はそんな無責任なことを言って去っていってしまう。
犯罪者の松葉が外れれば、俺は撃ち殺されてしまうかもしれない。

ルーツ「…俺は何も出来ねぇからさっさとどっか逃げちまえ。」

俺は犯罪者にそう言ってこの場から去ってもらうことしかできなかった。俺の中で複雑な感情が生まれる。

ルーツ『すみません、ルーツ復帰したんですが犯罪者と一緒に蘇生されてしまって…。』

メイ『はぁ?なんで??』

ルーツ『いや、わかりません。あとはジャンケンで上手いことやってって言われて放置されちゃいました。』

メイ『はぁ…1回言ったんだけどなそれ。それ後で話しにいくから。』

めいさんは少し、というかかなり怒っている。
救急隊の今回の動きは警察から見ればおかしな行動だからだ。

※

そして対話が開始された。
警察からは俺、零那副署長とめい署長
救急隊からはジェイソンモンキー、楽々裏ききさん、先導先輩、星乃宮 うららさんだ。

メイ「この話何回すればいいんだよ」

どうやら以前にも同じことがあったらしい。
そしてメイさんは状況説明を行った。

メイ「救急隊はどういう行動原理で動いてるのかわからないけど、このままだと現場介入はできないようになるけど?」

センドウ「犯罪者については介入時ピックしないようにっていう話ではありますね。」

メイ「市民であり、命が大事って言うのはわかってますけど。命を奪われかけたルーツと一緒に犯罪者を蘇生するってどういうことなの?」

センドウ「それってルーツがエスコートしてたとかではなくてですかね?」

メイ「全くバラバラでしたね。さらにいうともう一人ダウンしてたはずの犯人がその場から逃げてるんですよ。こっちがガチガチに囲んでてピックされてるはずがないのに。この状況ですから疑わざるを得ないですよ。」

センドウ「俺病院にいて状況わかんないから、ジェイソン…。」

※

要約すると、2人は救急隊の「命は平等」という言葉の元に蘇生行為を行った。
さらに俺と一緒に蘇生した犯人とは別で女性の犯人も蘇生したとのこと。
メイさんはジェイソンの行動について積める。

ジェイソンモンキー「すみません。甘く見ていました。」

メイ「甘くみすぎでしょ。私たちは行かなくてもいい場所に行って、命かけて、あなた達を守るためでもあるのに。」

それはそうだ。
この街の自警団を担っている警察。きっと命をかける必要も、助ける必要も無い人達は多い。
店舗だって、銀行だって、襲いたいなら襲わせて自分たちも私腹を肥やすことだってできる。

しかしそんなことをしたら早々に街は衰退し、破滅へ向かう。
だから命をかけて。戦っているというのに。それを全て無駄にされてしまうのだ。

その後もめいさんは思いの丈を全て話した。

救急隊の面々も事の重大さは理解しているようで口調は重くなっていた。

結局は救急隊の上官が居なければ話がつかないので改めて話をするということになった。
ジェイソンモンキーも自分の行動が現状を産んでいることは理解しているようだ。

別に俺は彼を責めたい訳ではないし、救急隊の人達を恨んでもいない。

そもそも、身元も分からない、記憶もない俺を救ってくれたのは救急隊だ。しかし、警察としての俺は彼らの行動を許してはいけないのだろう。

ただ今確かに言えるのは、誰かが死ななくてよかったということ。
そして現場に犯人と共に置き去りにされたのが俺でよかったということ。

これがもしも俺じゃない人だったなら俺もめいさんの言うことを言っていたと思うし、救急隊の見え方も変わっていたかもしれない。

____命は平等ではない。

それは俺が救急隊を抜ける前に強く思ったことだ。俺を救ってくれた救急隊を助けたい。武力も持たない彼らを救いたい。そう思ったのは確かだが、その行動指針の気持ちの悪さも俺は感じていた。

命には確実に優劣がある。善悪もなく、平等に助けるなんていうのは綺麗事だ。

メイ「零那とルーツは何か言いたいことは無い?」

レナ「我々は協力関係だよね…。」

ウララ「はい。」

レナ「実際俺の見てる部下がやられて、んで犯罪者起こされて…シャレならんよね…?なぁ、ルーツ。」

ルーツ「…はい。」

今は俺としてではなく、警察として話すべきだろう。

ルーツ「警察は規則でダウン後に犯罪者に対する対抗手段を行使できません。なのにあの場に放置されてしまったら、警官は相手の松葉杖が外れると同時に射殺されるかもしれません。アイツらは逃げるためなら何だってやります。そこでもう一度問いますが、命は平等なんですか?」

メイ「自分たちが1番命を無駄にしてんじゃんw」
あかん、なんか書いてて俺が耐えれんくなってきた。ちょっと会話内容が重いのでちょっと中和するために脳内でめいさんをメスガキに変換してみようか。by魂

メスガキメイ「命平等とか立派な事言ってる割に1番命を粗末に扱ってるじゃん♡救急隊のざぁこ♡ざぁこ♡」

よし。少しは緩和されただろう。ありがとう、メスガキVer署長。
あと観測者たちよ。もしこれを見ているのなら署長に流すのはやめてここでだけ楽しめ。頼む。じゃなきゃ領域展開されてルーツではなくて俺が詰められてしまう。ここに来る前にも印象のところに俺が署長への印象をメスガキっポイと書き込んだことについて詰められてとんでもないことになったんだ頼む。by魂

ジェイソン「…規則でそんなのがあるなんて知りませんでした。」

メスガキメイ「お猿さん何言ってんの?♡新人さんなの?♡なんでそんなことも知らないの〜?♡ざぁこ♡」

いいか。重い話とか怖い人が苦手なヤツはこうやって脳内で変換するんだ。俺もたまに耐えられない時はこうしてるBy魂

メスガキレナ「救急隊さんたち、ルーツくんは元後輩だよね?♡なんでその子を殺った犯人を起こすって、頭まで弱弱なんだね〜♡」

…うん。零那さんも似合うな。けど普段の方がいいので元に戻そう。by魂

レナ「俺からしたら意味わからんよ。『今1番可愛がってる部下』が殺られて。そいつはやったものの、逃がされて。」

えー????零那さん今ルーツのこと『1番可愛がってる部下』って言った??言ったよな??えっ?えっ?えっ?(死)by魂

あかん、ここやと楽しくてふざけちゃうからあと気になる人はライブ見てくれ…すまんw by魂

※

話し合いを終え、俺は会議室を後にする。

ジェイソン「ルーツさん。」

ルーツ「はい。」

ジェイソン「すみませんでした。警察の人たちの行為を無駄にするようなことをしてしまって。」

ルーツ「…まぁ。自分の命は軽いって救急隊にいた頃から話をしていたので。それを覚えていてあの行動を取ったなら…」

仕方がない?いや。違う。
もしあの時の言葉を目の前のこいつが覚えていてそれを行ったのだとすれば。
俺が感じているこの感情は…。

ルーツ「悲しい。って思いました。」

そうだ。俺は最近になってようやく。警察になってようやくまだ死にたくないと思えるようになった。なのに、あの行動を取られてしまったのは悲しい。まぁ、自分の発言が悪いんだが。

ルーツ「警察になってからその考えは変わりつつあるので…。とはいえ、まぁ俺は救急隊の人たちにも世話になったんで。もし今後警察が救急隊を助けないという選択をしても、俺は助けに行くと思います。」

そうだ。例え何がどうあれ、俺は受けた恩は返したい。裏切られようが、俺の行為を無駄にされようが、俺にはこの人たちを助ける義理がある。

ルーツ「…だから、気にしなくていいですよ。」

俺はそう言い残して病院を去った。

※

本署へ帰るとめいさんと零那さんが居た。
めいさんは俺を呼び止める。

メイ「ルーツ。」

ルーツ「はい。」

メイ「お前救急隊やめて良かったな。」

ルーツ「…。」

めいさんはそのままその場を後にした。

救急隊をやめてよかった。それはきっと救急隊が矛盾の多い組織で、適当なことをしている人達がいることに対する皮肉だろう。

ルーツ「そう…ですね。確かに。」

確かに、救急隊をやめてよかったのかもしれない。救急隊をやめて…

レナ「お前。言いたいことあるならはっきり言えよ…。」

ルーツ「…。」

零那さんが俺に背を向けたまま言い放つ。
俺は一瞬体が凍った。
この人は俺の事を見透かしているのだろうか。
それとも俺に言わせたいことがあるのだろうか。

ルーツ「言いたいこと…ですか?」

レナ「救急隊に対してだよ。」

ルーツ「…。」

レナ「お前悔しくねぇのか…。」

ルーツ「…まぁ自分は世話になってるんで。ただ言えるのは救急隊をやめてよかった。ではなく警察になってよかった。と思ってます。」

そうだ。俺は救急隊をやめて良かったなんてそんなことは別に思ってない。

きっと零那さんは俺が救急隊の人たちにぞんざいに扱われたことについて言っているのだと思うが。
元より俺の命は軽いと明言してた。そりゃあまぁ、そう言っていたからと言ってその扱いを受ける人がいれば俺はそいつを可哀想だと思うが対象は俺だ。好きにしたらいい。

それに、俺は救急隊の人たちが命を救う大切な仕事をしていることも理解している。それが警察にとって不利益な行為だったとしても本来であれば責められないのだ。例え自分たちの命を脅かす人間を救ってしまい、本末転倒になってしまっても。

俺はそんな矛盾だらけの人たちを守りたいと思って警察になった。

だから心から今警察になって良かったと思うのだ。

レナ「…まぁ。救急隊と今後どうなるかは正直わからん。」

しかし、俺一人がそう思っていたとしても警察という組織は別だ。
不要となれば現場介入はなくなり、もしも現場で救急隊を見つけたら撃たないといけなくなってしまう。
そういう世界になったら俺は…。


Day19


+ 「For whom?」
「For whom?」


本日も出勤。
話し合いがある分気持ちが重い。
そんなこんなしてたら東高速の壁の付近で発砲通知。

零那さんと共に向かうも犯人は居なかった。
最近壁に対する破壊行為を行う人間が増えているので、警察としてもかなり敏感になっている。

…正直に言えば俺はこの壁がどうなろうとどうでもいい。壊れたからと言って、残ってるからと言って別になんとも思わない。

だが、俺が目を覚まして初めてこの壁を見た時に感じたあの感覚。
明らかにあれば『嫌悪』だった。

零那さんとその場で検証をしつつ、会話をした。

ルーツ「俺もこの壁が何のためにあんのかわかんねぇっす。」

レナ「犯罪者を北へ追いやったんだよ…。」

ルーツ「世界史に乗ってましたね。」

レナ「記憶ないんだっけ…?で?取り戻してどうすんの。」

ルーツ「…まぁ自分は、自分が何者か知りたいんすよ。」

そうだ。俺はまだ過去に俺がどんな人間だったのか知らない。何が好きで。何が嫌いだったのか。誰と関わりがあって、誰と関わりがなかったのか。
知らないと、不安でたまらない。

レナ「…もし、ギャングの一員だったらどうする。」

…正直。過去に自分がギャングだったと言われても少しも驚かない。俺なら、やりかねない。

ーーーーー

ルーツ「悪に落ちてでも、殺してやりたいって思いました。」

ーーーーー

けど。俺には「今」がある。
沢山の人に救われて、沢山の人に出会って、それ全部守りたいと思う今が。
過去がどうだろうが。それを曲げることは無い。

レナ「ギャングに戻るか?」

ルーツ「いや。それは無いっすね。俺が今ついて行くべき人はわかってますから。」

レナ「誰だ。」

ルーツ「レナさんですよ。今は学ぶことが多いですから。」

レナ「…今は。か。裏切りの匂いがするな。」

ルーツ「警察をですか?」

レナ「警察はどうでもいい。俺だよ。」

ルーツ「いや。そんなつもりは無いっすね。」

これは本心だ。零那さんには色々と見てもらってる。だからそれに背くような行為を故意にするつもりは無い。むしろ逆で何が零那さんの為になるかを考えてるくらいだ。

…と言ってもこの人のことを俺もよく知らない。だから、これから知る必要がある。

レナ「俺はねぇ…誰も信用しない。って言うと語弊があるな。この街で信用に値する人は3人しかいない。」

ルーツ「3人…めいさんとリノさんと…あと一人は…」

レナ「サンメカのオーナーだよ。」

ルーツ「スカイウォーカーさんですか。」

フィオキーナ・スカイウォーカー。彼とは少しStella*Labの一件で話をした位のものだ。

彼と零那さんが繋がってたのは意外だな。

レナ「フィオは兄貴分だ。ガキの頃に世話になった。」

ルーツ「そうなんですね。」

そういえば零那さんって出身はどっちなんだ?
気になって聞いてみたが濁されてしまった。

ルーツ「零那さんの過去について興味があるんですよ。」

レナ「ならば信用に値することを証明しろ。」

ルーツ「…まだ信用に値しないですか。」

レナ「まだリスクが大きい。」

…そりゃそうか。まだ俺は記憶もない何処の誰かも分からない北の人間だ。警戒して当然だろう。

レナ「いいことを教えてやる。この街の住人の過去については警察内部に保管されてる。」

ルーツ「警察の内部…?」

レナ「俺のはないけどな。」

…言いぶりから察するに、意図的に消したってことか。色々とこの人も訳ありなんだな。

ルーツ「まぁ自分もいつか上に立てたらそういうのも閲覧…ってか俺の情報見てくださいよ!」

レナ「お前この街の出身か?」

ルーツ「北の出身です。」

レナ「じゃああるかもな…。」

警察の内部に俺の情報がある。
なら、俺について何かわかるかもしれない。
期待…してもいいのか?

ルーツ「とりあえず、戻りましょうか。」

レナ「あぁ…。」

※

その後薬事系列の対応を終え、本日のメインデッシュ。救急隊上官を交えた対話が行われる。
もう内容は重いし、ある程度省略する。

結果的に白鷺みことさん(副院長)が辞任することになった。俺もめいさんも止めたが彼の意思は硬いらしい。

もうこの辺はアーカイブで見てくれ。零那さんから始まった柿の種の下りで今日のタイトル回収もした。柿の種最高!!!by魂

※

…まぁ。でも、改めて思うけど複雑な街だよな。
警察は元は軍で。勝手に統治してる自警団。
救急隊は命を平等という矛盾なことをいう最強で最弱の組織。
様々な過去がある住人達。そしてギャング。

俺はいったいこの街で…この人生で…誰の為に…何の為に生きていくのだろうか。


Day20


+ 「Just a game」
「Just a game」


もう見慣れた日常。
例のごとく犯罪は起きる。

ルーツ『向かいます。』

これだけの件数を対応してくると流石に慣れてくる。しかし…。

レナ『ルビー。問題発生だよ。』

その無線に俺は聞き耳を立てながら車両を出す。

ルビー『なんすか?』

レナ『…犬がいる。』

俺は直ぐに無線への集中をやめて現場へと向かった。

※

ヴァンジェリコ。
この宝石店のセキュリティはかなり硬い。
なにやらいろいろと突破しなければいけないセキュリティが多いようで、その間人質を取られている警官は何も出来ない。

ウニオウ「…。」

犯人の動向を伺っていると、横に宇仁王先輩が現れる。あまり反応せずに待っていると謎に瓶の蓋を渡された。

ルーツ「なんすか…これ…」

ウニオウ「ルーツ今日誕生日なんです!!!」

いや、俺の誕生日は確か10月1日だ。
もう今は犯罪者にIDカードを奪われたがそこに記載があったのを覚えている。

ルーツ「いや…」

ジョー「ハッピーバースデートゥーユー♪」

勘弁してくれ…。

※

Seventh。
北を中心に暴れているギャングはそう名乗っている。

今回のヴァンジェリコの犯人はその組織のボスであるジョーと部下であるペコラだ。

そして、この組織にはかつて俺に対して「あんたの噂を知ってるよ。」と言い放った女が属している。

レナ『…犯人発砲。』

どうやらペコラを追っていたレナさんが犯人に発砲されたらしい。俺たち警官は犯人が銃を扱うことで初めて銃の発砲が許可される。

昔は有難かったその規則も、今は煩わしい。
そう思えるほどに俺の引き金は軽くなった。

俺は目の前を走るジョーを追いかけ続けた。かなり長いこと終えたのはヘリに乗っている砂漠署の安歩内優子さんのサーマルによる報告のおかげだ。

犯人も溜まったもんじゃないだろうが、1番困っているのは宝石店のオーナーだ。このくらいは過剰とは言わせない。

南から北へ、北から再び南へ。高速道路を駆け抜け追い続けた。

ジョーは山上へと逃げ込んだ。
ここで勝負を決めるつもりだろう。

俺はアクセルを強く踏み込む。
車が宙に浮いたが、その間に俺は車両の下でジョーの車両が止まっているのを目視した。思った通り、アイツは車両を降りて銃を構えようとしていた。

それを先読みして飛び越えておいて正解だった。
車両が地面に着くと同時に俺は車から飛び出して銃を構える。

俺は躊躇いなく、引き金を引いた。
ジョーも抵抗し、俺も軽傷を負ったが問題ない。

俺は草むらを活用して体を隠しながら射撃を続ける。

ジョーがついに力尽き、その場に伏したのが見えた。

ルーツ『やりました。』

痛てぇな。まったくよ。

レナ『ルーツ、それ対応しろ。』

ルーツ『了解。』

やはり、慣れやエスカレートってのは恐ろしいもんだ。犯人に対して引き金を引けなかった俺が今じゃ急所から上手く逸らしながら躊躇いなく引き金を引いているんだから。

ーーーーー

「はぁ?■■■■。お前いつから南の人間の肩を持つようになったんや。」

「そいつ…もう死んでるぞ。」

ーーーーー

最近頭痛が益々酷くなってきているのがわかる。うっすらと聞こえてくる声も段々と明瞭になってきた。

記憶の片鱗…なのだろうか。

ジョー「くそ…」

俺は犯人を警察車両へと担ぎ込み本署へと護送を開始する。

ルーツ「お前ら北で活動してんじゃねぇのか。」

ジョー「たまに出稼ぎに南に来てるんだよ。」

ルーツ「だからなんだよ。」

大方こういう犯罪者の言うことは予想が着く。だいたいが「見逃してくれ」だの。「取引してくれ」だの。誰が信じるかよ。そんな言葉。

ジョー「罰金は取らせてやる。捕まえたんだから。」

ルーツ「なんでお前が上からなんだよ。交渉下手か。優位なのはこっちだぞ。」

ジョー「だからお願いしてんだよ。」

…まぁ、でもSeventhか。

ルーツ「いやぁ〜。まぁ俺被弾してるからなぁ…?」

交渉の価値はあるか。少しくらい乗ってやろう。

ジョー「俺達も頑張ってんだよ。」

ルーツ「じゃあ犯罪もせずに真っ当に生きてる奴はどうなるんだよ。」

ジョー「だからこの金を北で真っ当に生きてるヤツらに落としてんだよ。」

ルーツ「ん〜…。」

正直信用してない。というか、もう目が覚めてから色んなことがあって。人を信用できない。というか。こいつらの言ってることは俺にとってはどうでもいい。

俺は、俺が大切な人達を守れればそれでいい。

その他のことなんてもうどうでもいい。

その後もジョーは御涙頂戴の戯言をつらつらと並べていた。
まぁそれが真実だろうが嘘だろうが、わからないが、ここまで懇願してるんだから、俺も乗ってやることにする。

ルーツ「じゃあ、お前は俺になんかがあった時助けてくれるか?」

取引と行こう。
そう俺が持ちかける。するとジョーは自ら俺の記憶を持っているメンバーのことに触れてきた。

ジョー「だから、お前の記憶を取り戻す協力してやる。」

ルーツ「ふぅん…?いいだろう。じゃあ罰金だけにしてやる。」

俺はジョーのポケットに宝石を押し込み、罰金の書類だけ手渡した。

まぁ宛にはしてない。もう信じて裏切られるのも。頼ってた奴が居なくなるのもごめんだ。
だから誰ともこれからは適切な距離感で居ようって思ったんだ。
これは俺がこれから強く生きる為の方法だ。

ルーツ「じゃあ何かあったら頼んだ。」

犯罪者だからな。
俺の言うことを真面目に聞いてくれるなんて思ってない。だから俺は約束なんてしてない。裏切られようが、無視されようがどうでもいい。

俺は、俺の噂を聞いたことがあるというあの女を脅してでも手に入れればいい。頼る必要なんてないんだ。

ルーツ「まぁ、俺が押収してないことを他の誰かに言うんじゃねぇぞ。」

ジョー「わかった。」

※

ゆゆさんが出国してから暫く釣りに興じていなかったことを思い出した。俺は何となく釣り場へ向かう。

海の香りに交じって漣の心地いい音と、懐かしい声が聞こえた気がする。

しばらく魚と命のやり取りをした後スマホが鳴った。
チャーブルになにやら不穏な投稿がされているのだ。

ルーツ「なんだこれ…。」

エリモスというアカウントから投稿されたそれ複数の住人達の名前があった。そういえば昨日も様々な店舗に謎の張り紙がされていたのを思い出して投稿を確認する。

エリモス『犯行予告。9月27日22:30より。我々エリモスはシミュグラシティにてゲームを行うことにした。プレイヤーは我々が選別した白黒関係ない住民だ。当日まで怯えて過ごすといい。楽しいものが見れるだろう。』

そして今日の投稿を確認する。

参加者
レイムネス、ジェイソン・モンキー、蛇川莉里、二階堂むぎ、ウップス・ドジー、裏切帆利、ヴィンセント、フリューゲル・レド・ルーツ、小泉和、椿零那、フィオキーナ・スカイウォーカー、麦ノ穂翠、小場タバ子、SnowKai

…俺の名前もあるし、なんなら零那さんの名前まである。なんなんだよいったい。

レナ「何してんだお前。」

気がつくと後ろに零那さんが立っていた。

ルーツ「釣りっす。」

レナ「サボりか。」

ルーツ「いや…まぁゆゆさんのこと考えて釣りしてました。」
嘘は言ってない。少しは考えてた。

レナ「居ねぇやつのこと考えでどうすんだよお前は…。」

ルーツ「俺記憶ないんで。目が覚めてから起きたこととか会った人のことなるべく覚えときたいんすよ。」

例え、去った人でも。今はもう敵対している人でも、世話になった人の事を忘れたくないのだ。

レナ「へぇ…。」

ルーツ「零那さんは逆に思い出したりしないんすか?」

レナ「…どうでもいい。」

ルーツ「なるほど。」

まぁ零那さんらしい回答ではあるな。

レナ「俺に情を期待したらダメだよ…俺に情はない。」

ルーツ「そうですかね。」

本人はそう言っているが、まぁ。確かに奇行は目立つし冷徹な言葉や態度は目で見て分かる。
けど、俺は零那さんの心までは冷めてないのが見える。

ルーツ「俺はそうは思わないですね。まぁ、特別な人たちは例外って感じですかね。零那さんは。」

レナ「…まぁ。可哀想だろ。」

ルーツ「可哀想…ですか?」

レナ「現実的に考えてみろ。お前が救える人間は何人いる?…何人助けられる?」

急な質問に俺は一瞬考える。

ルーツ「どう…なんですかね。」

レナ「俺らは神じゃない。ただ一人の人間。…救える人間は限られてるんだよ。」

ルーツ「まぁそうですね…」

レナ「二つより一つ。少ない方が達成率はあがるだろ。だから、俺は守るべき人間を決めてる。」

ルーツ「まぁ…そうですね。」

合理的な判断と言える。
二兎追うものは一兎も得ず。そんなことわざもあるくらいだ。

レナ「正直に言うとな。現場に人質がいるだろ。俺はアイツらのことはどうだっていい。俺からすればどうだっていい命だからね。」

ルーツ「…。」

そうか。零那さんらしいな。

ルーツ「じゃあ俺。零那さんが救わない人達を救えるようになります。」

レナ「…お前の技量で?」

ルーツ「それはこれからどんどん詰めて行きますよ。」

それに。

ルーツ「それに、竜胆や。ルビー先輩やKaiくん。そりゃあ1人だったら救える人数は限られてますけど。みんなでやれば…全員は無理でも『より多く』を救うことはできると思います。」

俺が目が覚めてからの信念でもある。
より多くを。もちろん全てじゃないことを理解している。だが俺は恩がある人達はもちろんだが、この街に住んでいるより多くを救いたいと思っている。

____例えそれが叶わないとしても。

…記憶を失う前の俺もそう願っていただろうか。

レナ「選んだ方がいい…。命の…優先順位。」

ルーツ「それは救急隊を辞めた時に…もう理解しています。」

まぁ俺は…救いたい。なんて綺麗なことよりも…

ーーーーー

ルーツ「許さない。絶対に。」

ーーーーー

ルーツ「救いたい、なんて綺麗なことより。殺したい、って感情の方が先に出ちゃったんですけどね。」

レナ「…お前の1番大事にしてる奴は誰だ?」

また質問。この人は質問が多い。それも突然。
まぁ俺が突然と考えている間にも、零那さんはいろいろと考え決定して次の話を振っているのだろう。

ルーツ「大事にしてる奴…まぁ今だったら竜胆ですかね。やっぱり。」

アイツはポンコツだ。けど、俺の同期であり、よき友人だ。だから、今すぐ全人類で誰を助けるか選べと言われたら少なくとも今選ぶのは竜胆だ。
まぁそんなに壮大なスケールのお話は小説や漫画の世界だけだろうが。

※

ルーツ「そういえばこの投稿見ました?22時からのやつ」

レナ「見たよ。デスゲームだろう。」

ルーツ「なんか俺の名前と零那さんの名前があるんですよね。」

レナ「俺は知らん…。」

ルーツ「まぁでも、勝手に名前使われてノコノコ行くわけないですよね。」

俺は何となく理解している。
この手の変な輩は無視するに限ると。
俺は車両を出そうと車庫へ向かう。

レナ「俺は行くぞ。」

ルーツ「な、なんでですか?」
俺は零那さんのその言葉に驚いて振り返る。

レナ「勝手に名前使われてんだよ…。」

な、なるほどな。その報復に向かうという意味か…。ってか待てよ?デスゲーム?ってことは…

ルーツ「死人が…出るかもですよね…?」

レナ「どうだろうねぇ。」

いや、行くつもりは無いと思っていたが。
もしも、この投稿を見て本当に行くやつらが現れたら…助けてやる奴が必要なはずだ。

ルーツ「俺も…向かいます。」

※

そして指定の時間に俺と零那さんは指示通りにレギオン公園前の駐車場へと向かった。するとそこには参加者と思われる人達が大勢いた。

そして…ゲームの管理をする兵士も。
仮面を深くかぶっており、パーカーを羽織っている。

ルーツ「まるで韓国のドラマですね。」

レナ「…w」

まぁ、いざとなったら体術でなんとか住人が逃げる隙を作らねぇと。持ち物は指定通り全て置いてきた。きっとこの後検査があるだろうからな。

大勢の中に 切裏 帆利を見つける。
前に傭兵のアッシュと話をしている時にいたな。

ルーツ「よぉ、裏切。」

裏切「切裏だ!!」

何度聞いてもいい叫びだ。

ルーツ「なぁ、お前協力しろよ。」

俺は何となくそう持ちかけてみる。切裏なのか裏切なのか。ハッキリさせようじゃねぇか。

裏切「あぁ?別にいいけどよぉ…裏切るなよ?」

ルーツ「お前が言うな。」

裏切「まだ裏切ったことねぇよ!!」

その後、突如としてエリモスのアルファという人物は俺たちを銃で脅し初める。

くそ。銃には体術では対抗できねぇ。それに被害者が出る可能性もある…言うことを聞くしか…

しかし、名簿に名前のなかった「グスターボ」という男が前に出る。

グスターボ「こんなの付き合ってられるかよ!俺は帰らせてもらうぜ!!」

なんというフラグ。記憶のない俺にも伝わるぞそれ。

バンッ

予定調和なので、彼にはあまり触れないでおく。

それから俺たちはエリモスが運転するバスに乗せられて廃車工場のようなフィールドへと運ばれた。

周囲に見えるのは廃車、小さな建物、コンテナ、飛行機の残骸…。
遮蔽は多そうだな。それに隠れられる場所も。

アルファ「お前たちの中で生き残り、優勝したものに賞金をやろう。」

お決まりのセリフだな。

アルファ「優勝条件は二つだ。一つはなぞなぞを解きアルファ、ガンマ、ベータへその答えを伝えることだ。回答を終え、そして最後まで生き残ったものが優勝だ。」

なぞなぞ?なんだそれ。
俺たちは一人一人呼び出された。

アルファの元へ行くと俺にもなぞなぞが提示された。

アルファ「駅は駅でもおしりに1番近い駅はなんだ。これがなぞなぞだ。」

ルーツ「わかった。」

そして俺は列に戻った。回答はすぐに分かった。
それから待っている間に面白い住人にあった。
小泉 和という男だ。こいつは謎かけがうまい。しかもポンポンとだすから待ち時間も暇しなかった。ここを生きて出たら連絡先をもらおう。

※

そしてゲームが開催された。
俺と零那さんは無線を2度押しすることで集合するという話になった。

フィールドには爆弾が設置されているらしいのであまり迂闊には動けない。が、周囲を探索しないと生存率は大幅に下がるだろう。

俺の命は軽い。
あの言葉を今はもう言えないくらいに生きたいと思えるようになった。それでもここにいるヤツらを助ける為なら…。

俺は見つけた車両の中を確認する。
そこには食べ物や飲み物、アーマーや近接戦闘で使えそうなレンチが置いてあった。

裏切とはお互いに2つ目の武器を見つけたら渡そうという話になっている。

ルーツ「もうひとつ見つけたら渡しに行くか。」

アナウンス「キラーが、解放されました。」

無線の2度押し。零那さんからの集合の合図だ。

レナ「…遅い。」

ルーツ「すみません。」

レナ「やべぇぞ、俺。」

零那さんは背中に担いでいたアサルトライフルを取り出す。

じゃあもう終わりじゃねぇか。

ルーツ「弾はありますか?」

レナ「いや…?」

なるほど。弾は別の場所に隠されているのか。
そりゃそうか。

ルーツ「弾探さないとですね。」

レナ「あぁ…。」

※

切裏と出会いお互いに武器が一つであることを確認しその場を去った。
その後も死者はでない。キラーに殺されそうな人達の声は聞こえるが市民同士での争いはまだ起きていないようだ。

このまま進んでくれれば…。

そう思ったが、理想論だった。

「×にやられた!」

「△が先にやってきた!」

だんだんと不穏な空気が流れ始める。
見てない場所で聞こえる情報、そして銃声。耐えかねたからか参加者同士の殺し合いが発生し始める。

くそ…これがエリモスの狙いか。
けど、俺は自ら向かっていくようなことはしない。他人の命を奪う奴しか、俺は奪わない。

そして俺の目の前でジェイソン・モンキーはヴィンセントを殴りつけるのを見た。

状況を把握する前に俺は走った。

ルーツ「おい!お前!」

くそ…間に合わなかった…。

俺は呻くヴィンセントを担いで安全圏へ。
あいつ…。

救急隊内部の一件もある。あいつの行動を俺はやはり許すべきではなかったのかもしれない。
俺は隠れ、ジェイソンが走ってくることを確認し通り過ぎたところをレンチで殴り付けた。

ジェイソン「っ…!!」

ジェイソンはその場で倒れた。
当然の報いだ。命を奪っていいのは、奪われる覚悟のあるやつだけって恐竜の時代から言われてんだよ。あばよ。ジェイソン。

しかし、俺もその音を聞きつけたキラーに見つかってしまった。

ルーツ「っ…!?」

これがブーメランってやつか。

バンッ

弾丸は俺の腹部を貫いた。

ルーツ「くそっ…!!」

くそ…意識が…

撃たれた箇所を抑えながら、なんとか俺は逃げた。

しかし。出血が酷い…。

スカイウォーカー「大丈夫か、ルーツ!」

突如俺へと駆け寄って来たのは零那さんの義兄さんだ。スカイウォーカーさんは俺へ包帯を巻こうとするが俺は間に合わない。と思い、スカイウォーカーさんの手を止める。

死んでしまうなら…せめて…

ルーツ「俺はもうダメです…俺の、全部…持ってってください…。」

スカイウォーカーさんは俺の伝えたいことを理解してくれたようで俺の持ち物を持っていってくれた。

そして、俺の意識はそこで途絶えた。

※

…目が覚めると、俺は砂漠にいた。
夢?いや。まだ腹部が痛いところを考えれば…現実だろう。

デスゲームは開催された。
そしてエリモスという組織は、大勢の被害者と、謎を残して消えてしまった。

俺は…彼らと、このゲームの謎をこれからも追わなければならないだろう。

ルーツ「…ヤツらの謎を俺が必ず見つけてみせる。」


Day21


+ 「Wanted」
「Wanted」


朝起きてからすぐ出勤しようと車を走らせていた。
いつもの道。いつもの風景。
いつもと違うのは、突然の着信音だった。

ルーツ「黒河…?」

黒河 羊は俺のサルタンをカスタムしてくれたRe:Hana Mechanics 通称花メカの従業員だったと思う。

けどなんで俺に電話が?

ルーツ「もしもし、メカニックの黒河さん…?」

???「あー。ごめん。今携帯借りてるんだわ。」

ルーツ「借りてる?…誰だよお前。」

???「今から10分後くらいに北のインパウンド場に来い。お前が探してるものあるだろ?」

ルーツ「記憶か?」

???「お前のこと昨日Bossから聞いてるからさ。じゃ。」

なんなんだよ。一体。
とはいえ、記憶か。

ーーーーー

レナ「過去のことは俺が調べてやる。だからお前は今できることをしろ。」

ルーツ「はい。」

ーーーーー

…とはいったものの。俺のことは、俺も知りたい。

俺は車を出勤ルートから外し、北のインパウンド場へ向かわせた。

※

ルーツ「まだ居ないみたいだな。」

砂漠のインパウンド場にはまだ人影は無かった。しばらく店内へ入り、ビリヤードに興じた。まぁ、俺はルールわからねぇけど。

しばらくそうして時間を潰していると1台の車両が駐車場に止まった。俺は店の外へ出ると、車両から出てきたのはSeventhのペコラだった。

ルーツ「なんだ、ペコラかよ。」

ペコラ「何だってなんだよ。」

ルーツ「お前黒河の携帯借りてんだよな?」

ペコラ「うん。で、ボスから聞いたよ。昨日のこと。」
借りてるならまぁ…盗んだとかじゃないならいい…ってか…ん?

ルーツ「ん?昨日…?」

ーーーーー

ジョー「お前の記憶を取り戻す協力をしてやる。」

ルーツ「ふぅん。」

ーーーーー

ペコラ「ありがとな。」

ルーツ「はぁ?アイツ言うなっていったのに…マジか。…でも、いいか。俺は別に俺に利があると思ってやっただけだから周りに言うんじゃねぇぞ。」

ペコラ「別にアンタのこと言いふらすほど暇じゃねぇから。」

ルーツ「じゃあいい。で?なんだよ。」

ペコラ「お前記憶なくて、今探してるんだろ?ってかお前他のやつにも探られてるぞ?警察内部の奴に。」

俺の記憶を探ってる奴が俺以外に?何の話だ。

ルーツ「まぁでも探ってくれる分にはありがてぇけどな。」

ペコラ「けどそいつ、お前に言えって言うなら分かるけど。俺に教えろって言ってんだよ。」

ルーツ「は?」

ペコラ「お前の上司だよ。」

ルーツ「たもつさんか…」
あのクソハゲ。

ペコラ「ちげぇよ。」
どうやら違ったようだ。

ルーツ「レナさんか?」

ペコラ「そうだよ。あの白頭が言ってたよ。」

ルーツ「なん…でだよ。」

なんでだ…?俺に伝えない為にってことか…?いや…でもなんで…。

ペコラ「知らねぇよ。でもあんま味方だと思って信用すんなよ。」

ルーツ「いや。でも少なくとも零那さんとお前なら俺は零那さんを信用するね。」

犯罪者と世話になった人なら誰だってそうする…よな?まぁ、零那さんはちゃんと考えのある人だし。一先ず信用しても…
いや。まぁでもそれは建前で。俺はもう誰も…

ペコラ「で、お前記憶はどこまでねぇの?」

ルーツ「いや、まぁ。なんにも。けど最近たまに変な夢を見るんだよ。」

ペコラ「夢…?」

ルーツ「けど、あんまり深いことは覚えてない。ただの夢だしな。お前もそういうのあるだろ?」

ペコラ「…いや。私は寝れないからね。私はお前と違って過去は消し去りたい人間だし。」

こいつもワケありか。人の過去ってのは本当に…。いや。けど俺も思い出さない方がいい事もあるかもしれないって思ってたし。変わんねぇか。

ペコラ「私はお前がそんなに過去に固執してるのかわかんねぇし。あくまで私はボスがやれって言ったからやってるだけだよ。」

ジョーがそんなことを?ってかあいつ取引の内容をよく覚えてたな。別に律儀に守らなくても持てるもんもって帰ったら後はほっときゃいいのに。
…もしかしてアイツは、ほんとは良い奴なのか?

ルーツ「そうか。」

ペコラ「1個お前に話せることがあるとすれば。今「壁」が立ってるだろ。恐らくお前はあの壁の関係者だ。」

ルーツ「壁の関係者…」

ペコラ「似たやつがいるって噂を聞いたんだよ。」

噂。鵜呑みにはしないが。
まぁ、あながち間違いじゃないのかもな。
…あの壁に対するあの感覚は、きっと無関係ではないことの現れだしな。

ルーツ「…お前に写真を渡しとく。」
俺は携帯を取りだしてペコラへと俺が目が覚めたその日に行った東高速の壁を写真を渡す。

ルーツ「俺が目が覚めてすぐに見た壁のとある場所の写真だよ。俺な。ここに物凄い…なんていうんだろうな…感情って説明が難しいよな。」

イライラするというか…悲しいというか。なんなんだろうな。未だにこの気持ちを説明する言葉が出てこない。

ペコラ「ふぅん…でもさ。その記憶って思い出したくないから無くなった。って可能性はないの?」

ルーツ「…そりゃあ。無いとは言いきれねぇけど。でも俺は生きてて不安なんだよ。記憶が無いっていう今の状況が。お前が同じ境遇ならどうだ?大事な人もわかんねぇ。誰に助け求めたら良いのかもわかんねぇって。」

ペコラ「…まぁ私にとってはこの世界は地獄みたいなもんだったからね。自分を自分として認めて貰えなかったし、大人の好きなように操られてた。」

…詳しくはわからないが。そういう理由があって、過去を消したい奴もいるんだな。俺がもしそうだったら確かに。そんな過去は消えてくれた方がいいと、そう思ってしまうかもしれない。

ペコラ「お前にも簡単に教えてやるよ。私は母さんが2人いるんだよ。私を産んだ母さんと、私を育てた母さん。まぁもう会えないけどね。」

ルーツ「なんで?」

ペコラ「産んだ母さんは私が殺して。育てた母さんは抗争で死んだ。」

ルーツ「…。」

ペコラ「だから、私からすれば過去に固執してるお前が嫌いだ。お前には私の気持ちわかんねぇだろうね。」

ルーツ「…お前の気持ちはわかんねぇけど。なんか理由があるんだろ。」

ペコラ「…ただ憎かったからだよ。」

いいや。違うね。こいつはそんな理由で人を殺めるタイプじゃない。きっともっと深い理由があるんだろう。聞くべきか?いや、過去を思い出したくないなら聞かない方が…。

ルーツ「なんで憎かったんだ?」
いいや俺は聞くね。
俺は他人の過去も知りたいからな。
だって、過去は今を作ってるもんなわけで、だから俺はそいつを知るために過去を知りたい。

俺は今、この犯罪者を。
ペコラのことを知りたいと思っている。

ペコラ「…誰にも言うんじゃねぇぞ。ボスにも言ってない。」
案外。というか、こいつは過去について語るのが嫌なタイプかと思ったがそうでも無いのか。

ペコラ「私は裕福な家庭で産まれた。けど、両親は娘じゃなくて、息子が欲しかったんだ。だから私のことを男として扱った。話し方や歩き方、何から何までな。私の全ては否定されて、両親の為にあらゆる全てを思い通りにされた。私は耐えられなかった。こんなのは私の人生ではないって。だから殺したんだよ。」

両親が悪くね…?なんてこと、今こいつに言っても仕方ないよな。

ペコラ「そして私は殺人犯として追われる身になった。そうこうしているうちに私は「アニマ」というその街のギャングボスに引き取られた。私たちが守って、生き方を教えてやるって。私はそこで「ペコラ」と名乗って生活を始めた。みんなから沢山のものを貰って生きた。だけど、ギャングである以上抗争からは逃げられない。私は別のギャングに連れ去られたんだ。それで、結果的に育ての母親の命を奪ってしまった。気がついたときには私はこの街にいた。持ってた携帯には「黒河 羊」という名前だけが入ってた。」

ルーツ「黒河…羊…?」

ペコラ「そうだよ。」

ルーツ「じゃあお前…。」

黒河 羊と、ペコラは同一人物だったのだ。

※

それで、ペコラはこの街に来てジョーと出会い再びこの街の、北での生き方を習ったと。

ペコラ「だから、私は警察も嫌いなんだよ。」

ルーツ「…警察なぁ。」

まぁ、この街の、ましてや北の住人なら。無理もないか。

ルーツ「警察が正しくて、ギャングが悪だ。なんて事ないって俺も思ってるよ。」

ペコラ「なんとなく嫌いだって訳じゃねぇ。」

ルーツ「わかるよ。…俺も立場が違ってたら警察のこと嫌いだったかもしれねぇし。」

今恩人だと思っている人を憎んでいるかもしれないし。敵対していたかもしれない。

人生とは数奇で妙味でどうしようも無いことばっかりだ。真剣に考えてる俺たちのほうが、辛くて苦しくて、馬鹿なのかもしれない。

ルーツ「立場なんてのは仮初だと思う。俺だって昔人を殺してたり。誰かに悲しい思いをさせてたかもしれねぇし。」

そうだ。俺の記憶ももしかしたらそういう暗くてジメジメとした、もしかすると思い出さない方がいいものなのかもしれない。
零那さんの言う通り、今を生きて過去は捨てた方が、俺にとってはいいのかもしれない。

それでも。俺は知りたい。どんな結末になろうと、俺がどんな人間で、何をしていて、何を大切に思っていたのか。

知りたいんだよ。

※

ルーツ「…じゃあジョーによろしくって伝えといてくれ。」

俺の記憶に関する進展はなく、俺とペコラは一先ず別れることになった。

ペコラ「あのさ、零那には壁の関係者かもしれないってことは伝えたんだけどさ。そうじゃなかったって伝えとくよ。」

ペコラはペコラなりに、俺を心配してくれているのだろう。
俺は零那さんのことを疑ってはいないが、今はペコラの考えに乗ったおく。

ルーツ「わかったよ。ありがとう。」

それに零那さんなら恐らく気付くだろう。
この話の違和感に。
ペコラに対して情はある。それでもペコラは犯罪者だ。
だから俺も警戒しなければならない。

それが、俺が今やるべきことだろう。

※

その後俺は出勤した。
出勤と同時に、俺は本署の内部を探索した。
例の情報保管庫を探すためだ。

そういえばロッカールームの横にまだ入ったことない部屋があったことを思い出し、俺は中へと入った。

そこには大きなサーバー。PC。そして監視カメラの映像と思われるもがいくつもあった。

ルーツ「ここが情報保管庫か…?」

イマイチ、セキュリティが緩いことで疑念はあるが…調べられるものは全て調べよう。
…?

俺はふと、引き出しに挟まっていた書類に目が止まった。

ルーツ「国際…指名手配…?」

image

俺が読み込んでいるとロッカールームへゼン先輩が入っていくのが見え、慌てて手配書をポケットへと押し込んで外へ出た。

やべぇ…勝手に持ち出したけど、怒られたり…するよなぁ…たぶん。

けど、この犯罪者。
もしかしてまだこの街にいるんじゃないか?

俺は頼るあても無く、ただこの書類を処分する訳にも行かず。俺は目の前にたまたま居たルビー先輩へと助けを求めた。

ルーツ「ルビー先輩。ちょっと話が…」

※

その後コリハジ課のルビー先輩から宇仁王先輩に助けを求めたらどうかという指示を貰った。

ルーツ「という…わけなんですよ。」

ウニオウ「なるほどね。」

ルビー「あれ?けどこのタトゥー…見たことある気が…」

ルーツ「本当ですか!?」

やはり、この男はまだこの街にやって来ていたのだ。

ルビー「うん。なんだっけなぁ…俺が事故った時に…救急隊が来て…結構首にもバチバチに入ってんなぁって言った記憶が…」

ルーツ「えっ、じゃあ救急隊に国際指名手配犯がいる…って事ですか!?」

※

そして俺、宇仁王先輩、ルビー先輩、途中で話に加わったぷぅくんも含め、みんなで救急隊へ事情聴取へと向かった。

ルーツ「というわけなんですよ。」

ルビー「それで、こんな感じのタトゥーが入ってる人居た気がするなぁって思って。」

ウララ「なるほど…結構タトゥー入ってる人はいるんですけどね…首と両腕…うーん。」

ヒマワリ「うーん。」

どうやら思いつかないようで、俺たちはそのまましばらく思い出せないか、手配書を見せたりして見るものの合致する人が現れない。

ルーツ「あ、よかったら先導さんも見てくださいよ。」

たまたま救助を終えて帰ってきた先導さんへも手配書を渡す。
なぜか、ルビー先輩と宇仁王先輩が後ろで微かに震えている。

ルーツ「何をモジモジしてるんですか。」

ウニオウ「いや…。」

ルビー「えっ…?」

全く。まぁでもこの2人が変なのはいつもの事か…。とはいえ、救急隊の方々も思い当たるところも無さそうだし、長居するのも失礼か。もしかして2人ともトイレ行きたいのか?

ルーツ「じゃあ、何か思い当たることがあれば連絡ください。」

ウララ「は、はい…。」

※

本署へ帰って来たものの、ずっとさっきから2人が俺に対して「視野が狭い」とか「疲れてる」とか言ってくる。後輩とはいえ俺も人だ。ここはズバッと言うべきだろう。

ルーツ「いったいなんなんですか!!はっきり言ってくださいよ!」

ウニオウ「いや…」

ルビー「だから、先導さん首と両腕にタトゥー入ってたよ。」

え?

ウニオウ「いや、俺はてっきりルーツくんが先導さんが犯人なわけないと思って聞くのも失礼かって、スルーしてるのかと…」

いや。え?

ルーツ「全然気づいてなかったです…。」

結果的にいつも俺が悪いのか。
てか、先導さんタトゥーなんて入ってたっけ?
…いや、入ってたかもしれない…。

ピロンッ

通知がなり、チャーブルに投稿がされていた。

『どうやら、この街に俺の情報が来てたみたいだな。』
という投稿と共に、先程俺達が救急隊へ渡した指名手配書が投稿されていた…。

ルーツ「えっ?」

ウニオウ「ふぅん…。」

ルビー「指名手配書持ってるの俺たちとさっきの救急隊の人達だけだよね…?」

確定した。
けど思い返してみれば、確かに。
俺が救急隊だった頃にも先導に怪しい動きが無かったかと言われればあった。車両に大量の武器を貯蔵していたのがいい例だ。

…また1人俺が世話になった人が悪人に。

※

俺たちは再び病院へと向かった。
今回は先導さんから直接話を聞く為だ。

ルビー「先導さん…確認のためにそのマスク取って貰ってもいいですか。」

センドウ「…いいけど。だったらちょっと着替えてくるから待っててよ。」

ルーツ「…。」

※

おかしい。あまりにも時間が経ちすぎている。
何をやっているのか。想像すればキリがない。
証拠隠滅、逃走、なんだってこの時間があればできる。

だが先導さんを信じて待った。

しかし…

俺の微かな期待は直ぐに目の前の現実に揉み消されてしまう。

センドウ「お前ら、手を挙げな。」

一同「…!?」

なんとそこにはうららさんを人質にとった手配書と同じ男の…先導さんの姿があった。

ルーツ「畜生…。」

ウララ「自首した方がいいよ!!」

センドウ「お前ら警察の実力を見ようか…。」

ルーツ「先導先輩…いや。もうお前は先輩じゃねぇ!先導!」

ウニオウ「先導さんだ!!」

ルビー&ルーツ「さんいらねぇよ!w」

※

その後、先導は本性を顕にしうららさんを人質にチェイスを申し込んできた。
流石は国際指名手配犯。かなりの加速力を持つ車両…それに…

ルーツ「テレポートだと…!?」

車両がいつの間にか後ろにいたり、前方にいたりとかなりおかしな挙動をしている。

横に乗っているルビー先輩は警察本部へ応援要請を求めた。警察全員で先導を追うも、追いつけない。さらに腕前も相まってアタックを寄せられてしまう。
サーマルヘリを導入し、なんとかユニオン内部へと追い込んだ。

全員で出口と思われる場所から侵入し、追い詰める。

ここならテレポートしたとしても追い詰められる…!!

無線で先導当たったという報告を受け、全員新カジノと呼ばれる道へと進む。
そこには動けなくなった先導の車両があった。

先導は動けなくなったと見て車両から降りるも対応に来ていた竜胆もほぼ同時に降りて武器を構える。

竜胆「観念しろ…!」

竜胆…やるじゃねぇか!
俺も直ぐにカバーのため降りた。しかし、意外にも先導は抵抗することはなくお縄に着いた。

みんなは国際指名手配犯を捕まえたことで大手柄ということで喜んでいた。
…しかし、俺はあまり嬉しくは思えなかった。

いったい何度こんなことを続ければ。
出会いがあれば別れもある。それは学んだよ。
けど、こんな形でいつも終わりを迎えるなら。
俺は初めから出会いたくなかったとさえ思ってしまう。

ーーーーー

「お前になんか最初から会いたくなかったわ。俺の事なんかほっとけや。」

ーーーーー

…俺もいっその事零那さんのようにもっとドライに物事を見て判断できるようになればいいのか?

ルーツ「…次の事件へ向かいます。」


Day22


+ 「Darkness of heart」
「Darkness of heart」


…ダメだな。今日も悪夢で目が覚めてしまった。最近頻度が多い。
耳鳴り、幻聴もよく聞こえる。以前よりはっきり。鮮明に。

※

最近、零那さんとのチェイス練習やら。本署前でのテーザーの撃ち合いが楽しいと思った。
上官相手にこんなことをいうのは失敬だとは思うが、友人と戯ているような。そんな気持ちだ。

友人…。記憶を失う前もこんな風に、お互いに高め合う人は俺に居たのだろうか。

ーーーーー

「なぁ、ルーツ。お前…」

ーーーーー

ルーツ「やっべ!!!」

車体が溝にハマり動かなくなる。

レナ「お先…。」

ルーツ「くっそ!!」

※

瞑想明け。
地下駐車場で戯れていたが俺の体はもう動かない。なぁ?これ本当に戯れか??

と思ったら零那さんが俺を抱えてくれた…

ドガンッ!!

…地下駐車場のガソリンタンクに何らかの衝撃が加わったことで零那さんも吹っ飛んだ。

ルーツ「え…?」

レナ「…。」

※

ルーツ「俺の体…まだ動きますかね…」

ヤマナカ「大丈夫ですよぉ〜!」

今、俺を治療してくれているのは山中団三郎さんだ。彼は最近救急隊になったらしい、気のいいおいちゃんだ。しかし腕前は確かで俺の傷口はみるみるうちに治っていく。
アンナ〇ュラルにこんな感じのおじさんがいたと思うがとてもよく似ている。

親近感が湧くし、安心感が凄い。

彼は山で住んでいて、戦争で奥さんを無くしたらしい。そして少しでも誰かの命を救えればという思いで今救急隊をやっているらしい。
この人の考えをみんなが持てたなら、きっと世界はより良くなるだろうな。

そんな現実はどこにも存在しないが。

※

ペコラ「おい、てめぇ!今どこにいんだよ!」

ルーツ「あぁ、悪い。今から向かうよ。」

俺は零那さんとの絡みもそこそこに…いや今朝からがっつりで正直疲れたが、これからペコラは俺との記憶の追走会がある。
俺は東高速を北上していく。すると後方に共同のおかしな黒い車両。

ルーツ「…零那さんじゃね?」

俺は直ぐにペコラに電話をかける。

ルーツ「いやぁ。すまん。今零那さんに追われてる。」

別に聞かれてまずいことも無いが。
…いや、まぁまずいと言えばまずいか。

ギャングと警察が密談をしているというのは。

ペコラ「おいバカ!ちゃんと巻いてからこいよ!!」

俺はペコラの静止を無視してそのまま砂漠のインパウンド場へ向かう。

ルーツ「悪ぃな。」

ペコラ「バカ!ふざけんな!」

※

なんとか零那さんを巻いてから西の海岸へ。
恐らくもう居ないだろう。たぶんな。

ペコラ「なぁ。アイツの行動おかしくないか?」

ルーツ「…。」

なんとも言えない。
零那さんの行動は確かにおかしい。
けれど考えのない人ではないからだ。
俺の情報は警察の情報保管庫にある。だからもう既に閲覧しているはずだ。
それなのに俺には伝えないし、尚且つ零那さんはペコラにルーツに情報を流さずに零那さんへ流すようにと言っている。

ペコラ「お前のことを思うなら、お前に伝えろって言うはずだろ。」

ルーツ「まぁ、本来ならそうだな。」

ペコラ「まぁ私はボスから言われたからやってるだけだからいいけどさ。」

ルーツ「あいつも、義理堅いやつだよな。ほっときゃいいのに。」

ペコラ「ボスのことなんだと思ってんだよ。」

ルーツ「…俺はジョーに記憶のことを頼んだけど、本当にやってくれるなんて信用してなかった。」

そうだ。上司陣。バウバウさんや、龍司さん。彼らが去ってから俺はずっと思ってた。慕ってようが、何をこちらが思ってようが。他人なんてのは自分の思うように生きる。だから、別にもう。どうでもいいんだよ。
まぁけど、ジョーやペコラのように言ったことを守るって確信があるやつは信じられる。
少なくとも今俺が言えるのはこれだ。

ペコラ「ってかお前、額にそんな傷あったか?」

ルーツ「あぁこれか?浜で目が覚めた時にはもうあったよ。ずっと傷んでる。」

ペコラ「それってさ…過去に関係あるんじゃねぇの?」

ペコラの言葉に息を飲む。
それはそうだ。なぜ今まで当たり前だと思ってたんだろうか。俺のこの傷は過去に関係してる。

ペコラ「家庭内の暴力…とか?」

ルーツ「親か…。生きてんのかね。」

ペコラ「けど、それなら見えるところにそんな堂々と付けないか。」

ルーツ「…そういうもんか?」

ペコラ「そりゃ、見えるところに傷なんか付けたら周りの人達に家庭内の暴力を疑われちまうだろ。だから普通は付けない。付けるなら見えないところだ。」

…ペコラの物言いは現実味がある。
それはペコラの境遇を俺が聞いてしまったからだ。

ルーツ「ふぅん…。」

あまり肩入れするのは警官としてどうかと思うが。しかし、今のこいつは犯罪者ではなくてただの俺の…

なんなんだろうな。俺はこいつのことをどう思ってるんだ。

ペコラ「拷問…とか?」

ルーツ「拷問か…。まぁ無くはない。」
今話している全ては、無くはない。という結論にしか行き着かない。俺が何かを思い出すまでは。

その後もしばらくペコラは俺の記憶について色々と考えてくれた。
過去を思い出したくないこいつが、ボスの言いつけだからとは言え、健気に過去を思い出す為に頑張っている姿を見ると少し感動してしまうな。

※

本署へ戻り、車両を出す。
いつもの通り勤務を開始するが、どうやら詳しくは知らないが九十九と零那さんの間でまた何かあったらしい。まぁ諸々終わったようだが。

サンメカで車両の修理をしてもらっていると零那さんから電話がきた。

レナ「黄色のヤツと何してた。」

ルーツ「ペコラですか?」

レナ「あぁ。」

ルーツ「デートというか…なんというか…」

レナ「…いいんだな?それで。」

誤魔化しは効かないか。

レナ「1つ言っておこう。俺は今お前を振るいにかけている。」

ルーツ「だったら問題ないっすね。別にやましい事してないですし。」

レナ「内容を話せっつってんだよ。」

ルーツ「俺の記憶についてですよ。」

その後も零那さんは会話の内容についていろいろと聞いてきた。全て持っているはずの零那さんが探りを入れてくるのは本当に謎だ。

ルーツ「まぁ、そんな感じでいろいろと探ってくれてるんすよ。」

レナ「何故そこまでアイツがやってるか教えてやろうか?」

ルーツ「はい。」

レナ「俺がアイツと取引をしたからだよ。」

ルーツ「取引…?」

レナ「まぁ…お前の情報は大体握ってる。」

情報保管庫の件か。

ルーツ「ちなみにそれって教えてもらえたり…?」

レナ「後で。」

なんで渋るんだ…?
それに取引については自ら言っておいて、俺に伝えるなって件は言わないのか。
…この人も裏切るつもりなのか?

いや、まぁだとしても俺には今ペコラがいる。
アイツは今のところ俺に嘘を着いている様子もないし、今信用すべきはあっちだな。

※

まぁその後は大したこともなかった。
特筆することと言えば、一瞬だけSEVENTHへ潜入した。が、結果的に零那さんに見つかってしまいしごかれた。

悪人へ加担したかった訳じゃない。ただ、俺の取引を律儀に守ってくれたジョーに対する礼のつもりだった。

これで貸し借りは無し。ここからの俺は過去について調べてもらうだけでいい。これ以上肩入れをすればどうなるか分かってるからな。

それに俺は闇落ちするつもりは無い。
警察としてこの街で秩序を守るためにも、そして、俺が恩を返す為にも、辞めたくないのだ。

※

ミヤムラ「ルーツ、金ちゃんにあれ教えといて、大変だと思うけど」

ルーツ「そうですね。了解です。まぁ自分もそろそろ教える側ってことっすね。」

ミヤムラ「そだよ〜!ゆゆちゃんもいないしね〜。」

…。

ゆゆさん日本で両親に会えただろうか。
もう今頃は両親と仲良く団らんでもしていてくれたらいいな。

俺の中で唯一、前向きに別れた恩人だ。
せめて幸福であって欲しい。

※
もう暗くなり始めている道を、俺はバイクで走り抜けた。

ルーツ「はぁ…疲れた。」

なんて言っていると事故の現場に出くわしてしまった。とはいえ、勤務外なので何もしてやれない。
俺はそのまま少し話を聞いてから北へ走った。

明日もペコラと話すだろう。
せめて、俺が夢で見た内容を少しくらい覚えていればいいな。

そしたら…少しは俺の過去に…


第2章 全ては過去に


+ 第2章
「全ては過去に」

Day23


+ Vague
「Vague」


今日もペコラと待ち合わせをした。
もし俺に恋人って言うのがいたら、こんな感じなのだろうか。
なんて冗談を心の中で考えると笑っちまう。

…というか、前にも思ったことがあったかもしれないが。
過去の俺にも恋人っていう存在がいたのだろうか。それに家族や。親友なんてものが。

思えば思うほどにやはり俺が過去を知る必要がある。

ルーツ「そういえば。」

俺は昨日見た夢の話をする。
ちゃんと寝起きにメモをとっていたんだ。
まぁ、あくまで夢だから宛になるかはわからないが。

ーーーーー

広い敷地、花火、筒を担いだ俺
焦燥感と吐き気。

ーーーーー

メモを撮っていたが故に、俺は夢についてある程度詳細に語ることができた。

ペコラ「花火…。」

ルーツ「まぁ、俺は見たことないけどな。」

花火、っていう存在も写真も見た事がある。
けどそれをこの目で見たことは無い。
なのに俺の夢には花火を見てた。歪な花火を。嬉しそうに。

綺麗だった。それに達成感も。
そして、微かな悲しさも。
後悔?恨み?
いや。感情で説明しようとすると余計に理解できなくなる。

ペコラ「場所とかわかんねぇの?」

ルーツ「んー…広い場所だったな。開けてて。あと…何かが飛んできて、俺はそれを待ってた。そんな感覚だけは覚えてる。けど、まぁ所詮は夢の話だよ。」

手がかりになる。なんてことはない。夢なんてのは所詮こんなものだ。
そんなことよりこのモヤのかかったような声が聞こえる幻聴と変則的な頭痛だ。
俺はこっちの方がより記憶に近しいなにかだと思う。とは言ってもまぁ、それは俺の思うように現れてくれるもんでもねぇし、今は夢の方がまだ会話の材料にもなるか。

んー。いや?てか待てよ?
俺が見たものの中には他にもあったな。
あれは…確か…

突然の電話。さっき俺が零那さんに情報保管庫の内容を聞こうとして掛けたのの折り返しだろう。

レナ「椿ですけど。」

ルーツ「あっ、レナさん。」

俺はすかさずペコラにも聞こえるようにスピーカーにする。ペコラも自分がいることがバレないように静かにしている。

レナ「なんやお前かい。先名乗れや。なんで俺がお前に敬語使わなくちゃいけないんだよ。」

相変わらず酷い言いようだな…。

ルーツ「あぁ、いや。すみません。」

落ち込みそうなメンタルを無視して会話を続ける。

ルーツ「前言ってた情報保管庫の件。今お話してもらうことってできたり…。」

レナ「…お前がまずスピーカーにしてる時点で無理じゃないか?」

…なぜバレた?
いや零那さんだからで説明が付いてしまうのが悔しい。別に出し抜こうとしたわけでも、騙そうとしたわけでもないのだが。

ルーツ「なんでバレてるんですか…」

レナ「俺のこと舐めてんじゃないよ。」

ルーツ「…わかりました。じゃあスピーカーはやめます。」

レナ「やめます。じゃねぇよ。お前にとって大事な話なんだろ。」

ルーツ「いや、まぁ。大事な話…」

レナ「どうせ横にいんのペコラだろ。」

ルーツ「なんでわかるんですか…まぁ、そうですよ。ペコラと話をしてます。」

ペコラ「はぁ??あいつ!!!」

ペコラは自分たちが監視されてると思い周辺を狂乱しながら探し回っているが零那さんの姿は見えない。
恐らく零那さんの推理力と電話口に聞こえる音から全てを把握したんだろう。
なぜなら俺は今日出勤していないし、零那さんはどうやら本署にいるようだ。

ルーツ「まぁ、でも思い出したことがあって。」
あまり俺の行動について詮索されたくないので話題を変えよう。

ルーツ「俺、昔飛行機待ってたんすよ。」

レナ「ほぉ…。」

ルーツ「あと、花火。」

レナ「ふん…。」

ルーツ「えっとなんか、俺が花火を見てるっていう夢なんすけど…」
俺はいったい何が言いたいんだ。

レナ「しょうもない夢だね。」

ルーツ「なんでそんなこというんすか…w」

レナ「なぁ、お前さ。そもそもね、大事な話なら面と向かって話すべきじゃない?」
まぁ、それもそうか。時間をちゃんと作って面と向かって聞く。または書類を渡してもらう方がいいか。

その後、俺とペコラはレナさんと待ち合わせたダムへと向かった。
都度零那さんから連絡が来て「俺待つの嫌いなんだよなぁ?」という催促が来たので俺もなるべく早く向かおうと思ったが忌々しい壁に阻まれてしまい時間を取られてしまった。

レナ「遅ぇぞ。」

ルーツ「どこにいます?」

レナ「テメェの頭上だよ。」

見上げると零那さんはダムに備え付けられた管理室上に立っていた。

ルーツ「あれ、ペコラ見ませんでした?」

ペコラ「いるよ。」

零那さんの後ろからペコラも顔を出した。
なんだよ、居たなら初めから出てこい。
呼ばれるまで隠れてるのアニメの演出みたいだからやめろ。

零那さんとペコラは降りてきて、零那さんは水辺へと歩く。
わざわざなんでそんな危ない場所に立つんだよ。ペコラが押したら終わるぞ。
それで俺の情報がおじゃんとかになったら…

ペコラの方に視線を向けるとSMGを構えていた。

ペコラ「てめぇの目的はなんなんだよ。」

ルーツ「おい、ペコラやめろよ。」

ペコラ「うっせぇ。」

こいつ…。まぁまさか撃たないだろう。なんてのは楽観的すぎるか?いや。それでも俺は信頼している。

レナ「まずペコラ。お前は自分が口にしたことも守れねぇ奴だよ。」

なんの事だ?俺が困惑しているとペコラはなんのことか理解しているようで零那さんをにらみつけながら続ける。

ペコラ「だからどうした。」

レナ「____守られる側じゃなくて守る側になりたかったんじゃねぇのか。」

ペコラ「じゃあお前は守れてんのか?」

いや、何の話だよ。まったくつかめない。ペコラは前に零那さんと交渉をした結果俺の記憶を探るように頼まれていたらしいが。
それが守るとか守られるとかと何の関係があるんだ。

レナ「人にはタイミングってもんがあるんだよ。」

ペコラ「こいつはこんなに必死こいて探してたんだぞ。」

レナ「…情報はそいつの人生を狂わせる。」

ペコラ「何が言いたい。」

レナ「それほどルーツにとっては重要だってことだよ。」

ペコラ「だったらお前がこいつを止めるべきだったな。」

レナ「それは無理な話だ。こいつの原動力はそこにあるからな。」

確かに。俺が今まで生きてきたのは過去を知りたいということと、世話になった人に恩を返したいというこの2つだけだ。零那さんは続ける。

レナ「そしてルーツ。」

ルーツ「…はい。」

レナ「情報を探るために。敵対してるこいつと仲良しごっこか?」

ルーツ「…。」
アンタもだろ。という突っ込みを入れたいが我慢する。
今俺が言っても零那さんの機嫌を損ねるだけだ。

レナ「お前はどっちだ?」

ルーツ「自分は…警察…です。」

レナ「なら何故SEVENTHのペコラと一緒にいる?」

ルーツ「まぁ…犯罪してるときは敵ですし、俺たちが撃つべき相手だと思ってますけど、そうじゃないなら俺はこの街のただの住人だと思ってます。」

レナ「温いね…。で、俺はお前に言ったよねぇ…。過去は捨ててお前に「今を生きろ」と。」

ルーツ「言いましたね。」

レナ「で?お前は今何してる。」

ルーツ「過去を…追ってます。」

レナ「お前に成長しろと、言ったよね。」

ルーツ「…言いました。」

レナ「成長できたんか?何も進んでない。お前の過去はお前の足枷になってる。仕舞いには、犯罪者とお仲間ごっこ。…何してんだ??」

ルーツ「…。」
ソレについてはぐうの音もでない。
いや、しかしひとつ否定できるとすればペコラは俺の友人だ。
ごっこなんかじゃない。

レナ「何も言えねぇか。で、ペコラ。」

ペコラ「なんだ。」

レナ「お前話しに来たんじゃねぇのか。その相手に銃向けんのか。」

ペコラ「お前が怪しいからだよ。」

レナ「怪しいねぇ…。」

ペコラ「当然だろ。」

レナ「ならお前は怪しい俺に弱みを握らせたのか?」

ペコラ「…。」

レナ「言ったよな?俺は。ルーツの情報はルーツ本人ではなく俺に流せと。」

ようやく自分の口でそれを言った。俺のいる前で。
やはり何か狙いがあるのだろう。
それが零那さんの利益の為なのか。他の何かの為なのか、わからないが。

ペコラ「…ボスが言ったんだよ。こいつの情報はこいつに流してやれってな。」

レナ「へぇ…。」

ペコラ「自分の大切な人を守ってくれた人間に。恩を仇で返すつもりはないね。」
おい。ペコラ頼むから俺の汚職について話すなよ。あとが怖いからな。
いや、今の状況も俺は正直チビりそうだが。

ペコラ「お前のことは信じたかったよ。」

レナ「俺は信じてないよ。」

ペコラ「だろうな。」

零那さんは嘘をついている。
彼のことを俺自身が知ったような口で説明するのは良くないと思うが、彼は他人を冷たくあしらう癖はあるがきっとどこかで他人を信頼しているし
皆のことを好きだと思っている。ただ、じゃあなぜ零那さんがこんな他人に冷たく接しているのかはわからないが。

レナ「ルーツ、惜しいねぇ。あと一歩だったのに。」

ルーツ「どういうことですか?」

レナ「信頼されたいんじゃないの?検問所で話したよね。」

ルーツ「そりゃそうです…けど…」

レナ「残念だよ。」

しかしまったく、この人は一々俺の感情を逆撫でしてくる。
ずっと俺はそれにも耐えた。それは別に信頼されたいからではなく、彼もまた俺の中で1人の恩人だったからだ。

ルーツ「零那さんには調べるなって言われましたけど、自分にも出来ることは続けたいと思って。だからといって今を生きてない訳でもないですし、警察業務だって厳かにはしてない…つもりですけど。」

その後も零那さんは水面を見つめている。
まぁ面を被っているので表情はわからないが。

レナ「で?ルーツ。こいつにもお前の過去に関する情報を渡していいと…?」

ルーツ「…はい。俺はペコラのことを信頼しているので。」

レナ「最後にもう一度聞くけど。本当に、いいんだね?」

ルーツ「…はい。」

遂に俺の過去について、知ることができる。
警察の情報保管庫から俺が持ち出せなかった。俺に関する警察の情報が…。
もう迷いは無い。俺はそれを聞いても何も…







レナ「____お前は元犯罪者だ。」







ルーツ「…?」
聞き間違い…だよな。
今俺に…犯罪者って言ったのか?

レナ「まだこの壁が建っていない時のお話だよ。」

ルーツ「…。」

俺が、犯罪者…?
ま、まさかな。どうせその辺の空き家でも間借りしてるのを通報されたとかそういう落ちだろ。


レナ「南の空港はわかるな。」

ルーツ「わかります。」

レナ「大規模な爆発事件があったんだよ。」

ルーツ「爆発…?」

ペコラ「ルーツ…お前それって…もしかして…」

…空港。爆発。
俺の夢で見た光景と…同じ。
じゃあ俺が夢で見たのは花火じゃなくて…爆発…?
ダメだ。脳が理解してくれない。
俺が犯罪者で。爆発事件を…。

ルーツ「それって…俺がやった。ってことですか…?」

レナ「…証拠は無い。ただ可能性が高いって話だよ。」

確証はないが、俺がやった可能性が高い。
その爆発にいったい何人が巻き込まれたんだ?
俺が考える時間もなく、零那さんは続ける。

レナ「そして、お前は南と北の戦争に参加していた。ペコラ、お前は知ってるな。」

ペコラ「…何となくな。」

レナ「その結果どっちが勝った?」

ペコラ「みなまで言わせるな、見りゃわかるだろ。」

レナ「そうだね。北は軍によって全滅。ただその戦争後に、ルーツ。お前の死体が無かったんだよ。」

ーーーーー

「てめぇ!!!なんで逃げた!!!」

ルーツ「…。」

「くそ…くそっ!!くそが!!!!」

ーーーーー

ダメだ。また頭痛が…。

レナ「チェインって知ってるか?」

ペコラ「誰だそいつ。」

ルーツ「チェイン…。」

ーーーーー

ルーツ「はぁ?チェイン。お前いつから南の人間の肩を持つようになったんや。」

チェイン「そいつ…もう死んでるぞ。」

ーーーーー

ルーツ「っ…」

レナ「知らねぇのか?」

ルーツ「いや…1度だけ…夢で男が出てきて…俺、そいつにチェインって言っ…てた…」

耳鳴りと頭痛が酷いところを見れば、恐らく零那さんの言ってることは本当なのだろう。脈拍が上がり心音が高なっているのがわかる。
これは、俺の確かな記憶だ。しかし、俺はその事実を簡単には受け入れられない。

ルーツ「ちょっと待ってください…じゃあ…僕は…犯罪者で…戦争にも参加してて…南の事件に関与してて…ってこと…ですか…。」

レナ「その通りだよ。」

ルーツ「沢山人を殺してた…ってことですよね…」

レナ「その通りだねぇ…。」

ルーツ「じゃあ…俺が今までやってきたことって。」
恩を返す?正しいことをしたい?全部。全部無意味だったってことか。俺が生きたせいで大勢が死んだ。大勢が死んで、生きられなかった。
何だったんだよ。俺の、俺の人生は。俺は…。

レナ「その男の証言があるんだよ。ルーツ。お前はね。北で戦犯として扱われた。」

ルーツ「戦犯…」

レナ「壁の建設途中。壁を破壊するための部隊として当時お前が1番活躍してたそうだ。ただ、お前は逃げた。」

ペコラ「ん?どういうことだ。」

レナ「その間にお前の所属していた部隊は壊滅。全員軍人に殺されたんだってよ。」

ーーーーー

「お前のせいだ」

「裏切り者!!」

ーーーーー

ルーツ「じゃああれ…夢じゃなかったんだ…。現実…だったんですね…」

レナ「お前…身体に傷があるだろ。」

ルーツ「…あります。」

レナ「そりゃ拷問を受けた跡だ。」

ずっと隠していたが、顔だけではない。
体にも無数に傷跡がある。
抉れている箇所や切り傷。縫われた跡。様々。
けど今までずっと誰かを助けるために生きてきたんじゃないかとか。誰かを生かすために犠牲になったんじゃないかとか。そんな風に思って…たのに…。

レナ「お前はそのまま逃げればいいものを、わざわざ北へ戻り、数年もぶっ通しで。殴られ蹴られ、刺され、撃たれ。鬱憤を晴らすために遊ばれてたんだとよ。」

レナ「死ねないように。死なないように。」

俺が北へ?自分がそういう目に合うとわかっていて?なぜ。

レナ「拷問を行った人間は、チェイン本人ではない。別の人間だ。アイツは言ってたよ。どうせなら死んだ方が楽だったと。よく正気を保っていたと。」

気付けば頬へ涙が零れていた。
視線を上に向けることが出来ない。
手足も震えて、今にも倒れてしまいそうだ。

レナ「北の海で目が覚めたと言ったね。」

ルーツ「…はい。」

レナ「壁の建設が完了し、門があるだろ?そこを開いて南の軍人は北の監査に向かった。けど、アイツらはありとあらゆる証拠を海へ流した。ルーツ。お前も一緒にね。」

ルーツ「拷問の事実を隠す為に…」

レナ「その通り。拷問の道具も。血も。お前自身も。」

ルーツ「そう…なんですね…。それが警察の情報保管庫からでてきた、僕の情報…。」

レナ「情報保管庫ではない。」

ルーツ「どういうことですか…。」

レナ「俺とめいだけが唯一見れる保管庫がある。厳密にされてんだよ。」

ルーツ「じゃあ俺が前に入った…指名手配書のあった部屋は…。」

国際指名手配犯の先導を逮捕するに至ったあの部屋。
あそこに俺の情報もあるのだと思っていたが。俺の思惑は外れていたのだ。

レナ「あそこは誰でも入れるよ。」

ルーツ「そうだったんですね…。」

レナ「なぜ厳密にされていたと思う?」

ルーツ「わかりません…。」

レナ「調査が打ち切りになったからだよ。」

ルーツ「打ち切り…?僕に関する調査がってことですか。」

レナ「そういうことかもしれないねぇ。」

ルーツ「そうですか…。今色々聞いて…夢で見た内容が幾つかあるなと思って。じゃああれは全部…現実で。じゃあ、あの花火って…。」

レナ「さぁ…なんだろうね?」

証拠は無い。南の空港での爆発事件。
けれど、きっと俺だ。俺の夢が正しいのであれば間違いなく。それに…飛行機を狙って…。ってことはそこで戦争にも関係の無い大勢が乗ってて…俺は…その人たちを…。俺が…。

ルーツ「まぁそれが真実なんですよね…。」

レナ「ここからどうするかは…お前次第だよ…。」

ルーツ「…。」

どうするって…。そんなの決まってるじゃないか。こんな。こんなのが俺なら。俺は。

ルーツ「ちょっと…考えさせてください…。」

俺はその場を去ろうとバイクへ跨る。
今はこの場から一刻も早く離れたい。そして…

レナ「おい、ルーツ。」

ルーツ「なん…ですか…。」

レナ「残り1時間で俺に答え持ってこい。」

ルーツ「…わかりました。」

俺は直ぐにアクセルを捻り、その場を後にした。
今すぐに逃げ出してしまいたい。この事実から。この現実から。この世界から。

けれど、死ぬ勇気もない。

零那さんがただ、意地悪してるだけだって。
そう思いたいけど、こんな大事な時にそんなことをするような人じゃない。
てかなんだよ。残り1時間で答えをって。

俺は今すぐにでも死にたい。
死んで何も感じないようになりたい。
この痛みから開放されたい。

そんな思いだけが俺の頭に充満していく。

ーーーーー

ルーツ「気に入らんのなら殺せばいいやろが。」

「…殺すよりもっといい方法があるんだよ。」

ーーーーー

俺は砂漠の湖に来た。

ルーツ「そっか。あれ全部夢じゃないのか。」

思えば、夢で見た内容をもう覚えていないけれど。あの時に感じた痛みも、悲しみも、喜びも、恨みも、全て…俺の記憶だったのかもしれない。

ルーツ「何やってんだよ俺…。正しく行きたいと思って警察になったのに。やってる事変わんねぇじゃん…。じゃあ俺はなんの為に生きてんだよ。」

俺…なんの為に生きればいい…?
死んだ方が…いいか。

ーーーーー

まだ、死にたくない。

俺には伝えなきゃいけないことが。

ーーーーー

頭では死んだ方がいい。って分かってるのに。
俺の心は、多分どこかで救いを求めていた。

メンヘラな奴がたまに病みツイってのをしてるのを見たことがあるが。こんな感じなんだろうな。

「俺はこれからどう生きればいい。」

これで何かが変わる。なんて思ってない。
しかし、これで何かが変わってくれって。思ってる。
俺のことを知ってる奴がいて。全部嘘だって否定してくれるなら、俺はそれを信じたい。
そんな理想は語るだけ、願うだけ、無駄だとしても。今の俺にはこれが必要だった。

俺はそれから歩いてコンビニへ向かった。コンビニへ入店する訳ではなく、コンビニ横のゴミ箱の前に寄りかかって座った。
もう頭が冷静でも、体と感情は俺のことを痛めつけたくてしょうがないようだ。

着信音がなる。ひまわりさんからだ。

ヒマワリ「もちもち〜」

ルーツ「…あぁ。」

ヒマワリ「ルーツくん、おはよう〜。いや、なんかチャーブル見てさ。何があったの?」

ルーツ「いや…俺もよくわかんね…。」

ヒマワリ「今どこにいるの…?」

ルーツ「…。」

この人に居場所を言ったら来るんだろうな。
けど、何を話すことがある…?

ヒマワリ「ルーツくん?」

ルーツ「あぁ、悪い。…砂漠のコンビニ。」

ヒマワリ「…今から行くから待ってな!!」
ひまわりさんはそういうと電話を切った。

その後さらにペコラからも連絡が来た。

ルーツ「はい、もしもし…。」

ペコラ「大丈夫か?」

ルーツ「まぁ大丈夫…なんとか…なんとか…はぁ…」
大丈夫なわけがない。本当なら助けてくれって、今なら何にでも縋りたい。


ペコラ「大丈夫じゃねぇな。」

ルーツ「お前はさ。」

ペコラ「なに?」

ルーツ「お前はさ、自分のやってる事に。犯罪行為に罪悪感感じて死にたいって思ったことあるか?」

ペコラ「んー…そうだねぇ…。まぁ無いことはない。ないことは無いけど、なんだろな。もう今更後戻りできないし。お前にも言ったでしょ?過去は変えられないから今を生きる事しかできないって。私は今信じるべき人を見つけたから。少なくともその人のそばで、私ができることをしたいだけ。死んだって何も…取り返せないよ。」

ルーツ「…。」

ペコラ「ルーツ?」

ルーツ「聞いてるよ。」

ペコラ「お前が死にたいって言うなら殺してやる。」

ルーツ「そうだなぁ…多分今の感情は…死にたいって感情だな。」

ペコラ「わかったよ。いいんだな…?」

ルーツ「もういいのかどうかもわかんねぇ。ってか残り1時間で答えだせってなんの答えだよ。」

ペコラ「…ルーツ。もし今お前が帰る場所がないって思ってんなら。うちに来たっていいんだぞ。」

ルーツ「…また俺に犯罪しろってか。また俺に人を殺せって。」

ペコラ「お前が銃を持ちたくないなら、持たなくていい。お前が犯罪をしたくないなら、しなくていい。」

俺を囲んでなんの得がこいつにあるんだよ。
…いや。違うか。ジョーもペコラも。別に損得だけで物事を考えている訳じゃないんだろう。
龍司さんと同じだ。そこには仁義がある。道理がある。薄っぺらなその辺の輩とは違うものがあって、情がある。

心配、してくれてるんだろうな。

あぁ…死にたいって思ってんのと同時に。
俺、こいつらのこと好きだ。もうダメだな。
思考がぐちゃぐちゃだ。

気が付けば目の前ではひまわりさんが踊り狂っている。

ヒマワリ「たらら〜んっ!!」

ダメだ。笑っちまう。こんな時なのに。
ひまわりさんはすげぇな。

俺は敢えてひまわりさんをシカトしてペコラと会話を続ける。

ルーツ「まぁ、誘ってくれてんのは有難いけど。今俺の選択肢としては死ぬか警察に戻るかだよ。だからありがとうな、ペコラ。」

ペコラ「黙れよ。お前に選択権なんてねぇよ。いい加減認めろよ。…どこにいるんだ。」

ルーツ「…ペコラ今渋滞してるかも。今目の前に…黄色いロングの…」

ヒーローポーズ取ってる女がいるなんて言えねぇ…。

ヒマワリ「ひまわりが来たぞ!!!えっへん!!!」

ペコラ「お前どこにいるんだよ!!!www」

ルーツ「砂漠のコンビニ…w」

ヒマワリ「誰もやってくれないから全部一人でやんなきゃなんだふぅーーーん、寂しいなー!」

俺は流石にシカトし過ぎたと後悔し電話を切る。

ルーツ「すみません…。」

ヒマワリ「おはよー、ルーツくん。ちょっと場所変えない?」

ルーツ「…いや、今からもう一人ギャングのやつ来て話さないとなんで。」

ヒマワリ「いや、ちょっとハエが嫌でさ。」

そういうとゴミ箱の前に座っていた俺をひまわりさんはズルズルと引きずって移動させた。

そこにペコラも合流。ペコラはその状況を見て慌てていたがひまわりさんが説明してなんとか場が収まる。

ペコラ「ほら、行くぞルーツ。」

ヒマワリ「えっ、ひまわりも行っていい?」

ルーツ「…。」

ペコラ「え、でもルーツ。ほら、込み入った話とかあるもんな?」

ルーツ「いや、もう俺なんか…死んだ方が…」

ペコラ「わかった。」

ペコラは恐らく俺を殺そうと車を寄せる。それに勘づいたか天然か、ひまわりさんは車両へと乗り込む。

ペコラ「あ、ならいいわ。」

なにがだよ。いや、俺を殺すために車から降りてくるところだろうが。
あとひまわりさん。あんた危機管理って言葉を覚えてくれ…。

※

ペコラ「そんなに死にたいなら殺してやろうかなって。」

ヒマワリ「ダメ!ダメだよ…!」

ペコラ「でもこいつの望みだよ?」

ヒマワリ「絶対にひまわりが許さない」

ルーツ「…。」

何を言い争ってるんだ。
正直なんか。どうでもいいと言うか。
さっさと殺すならころ…

あ、やべ。

俺はふとずっと何も食べていないことに気がついた。

ルーツ「あ、あの。なんだろうな。えっと、その。あれだ。スナイパーに狙われてる。」

ペコラ「待てお前バカ!飯食え!!」

しかし、俺はひまわりさんに手錠を掛けられているので身動きが取れない。

俺はそのままダウンしてしまった。

ペコラ「あ、こいつやったわ…!」

ひまわりさんは車をおりて手錠を外してくれるが時すでにおすし。ペコラのまるで俺がおもらししたみたいな反応に涙がでる。

ヒマワリ「じゃじゃーん!餓死でーす!めっちゃダサいでーす!」

ルーツ「なんか…俺…惨めだ…」

ヒマワリ「お腹すいてるなら言ってくれないとね!」

ルーツ「そう…そうだな…泣」

ヒマワリ「それで、なにがあったの?」

ルーツ「んー…だから。」

俺は少しだけ伝える。
伝えたところで何がどうなる訳でもないけど。

※

その後救急隊に蘇生され、俺は起き上がることができた。

一通り終わり、車両へと乗り込んだ。
もう抵抗して餓死するのは御免だ。

ペコラ「で?お前どうすんの。」

ルーツ「でも俺さっき餓死して俺思った…死にたくねぇ…」

ペコラ「いやさっきのダウンは関係ねぇから!!」

ルーツ「いやでも、死にたくねぇ…。」

ペコラ「…じゃあ黙ってこいよ。」

ルーツ「いやぁ…。」

ペコラ「るせぇだまれ!」

ヒマワリ「私にはもう今何が何だかわかんないよ!?」

ペコラ「まぁ、こいつが過去の記憶全部取り戻したんだよ。」

ヒマワリ「えっ!?」

ルーツ「まぁ…全部じゃなくて警察保管庫にまぁなんかその色々あったんだよ…。」

ダメだ。ひまわりさんに「俺、犯罪者で昔沢山人殺してました。」って言いたくねぇ…。
どんな顔するんだろ。ひまわりさん。軽蔑されるかな。
いや、けど言うか。
別にもうどう思われようとどうでもいいし。

ルーツ「だから、まぁ。俺昔いっぱい人殺してたんだって…。」

ヒマワリ「そう…なんだ…。」

やはりひまわりさんは俺の言葉に言葉を詰まらせる。

ペコラ「ここまで知っちまったからには私にも責任がある。腹立つんだよ。あの白髪にお前には責任がねぇって言われちまったのがよ。んじゃあ、やってやろうじゃねぇかよ。私は私の責任の取り方でよぉ!だから付いてこい。」

ルーツ「…。」

ヒマワリ「返事ははい!」

待て待て。あんた俺に警察で居てねって言ったよな!?ここで俺がはい=ギャングになるので警察さらば。だが!?わかってねぇな?

※

ヒマワリ「いっぱい人…殺しちゃったんだね。」

ルーツ「そう。壁を作ってた時代に戦争に参加してて。殺しちゃったんだと…。」

俺たち3人は砂漠の湖へ来た。

湖に映る、落ちていく夕日の影が綺麗だ。

ペコラ「今更警察戻ってどうすんだよ。だからうち来いよ。」

ルーツ「いやもう生きてる意味ないです…。」

ペコラ「わかったよ。じゃあ。じゃあな。」
ペコラはいつも通り銃を取り出して銃口を俺の後頭部へ押し当てた。

今撃たれれば、確実に俺は死ぬ。

悔いはないか。俺よ。
いや、悔いしかないよな。ずっと。
なんか、まぁ。なら生きてても死んでても変わんねぇか。

ヒマワリ「ダメ。待って?」

ーーーーー

黄色い髪の少女が俺に手を差し伸べてくる。顔にはモヤがかかったように見えない。多分俺がこの子の顔を見ていないからだろう。

「大丈夫?」

ーーーーー

…こんな時になんでまた。もう思い出さなくていいよ。もういいから。やめてくれよ。
どうせろくな事してない。ろくな記憶じゃねえんだから。もう思い出すなよ。

ペコラ「けどこいつ、死にたいってよ。」

ヒマワリ「けど、私が許可しない。ルーツくんには死んでほしくない。」

死んで欲しくない。か。
俺が昔殺した人たちにもそう思う人達がいただろうに。俺はそれでも自分の信念の為に人を喜んで殺めたんだろう。
それは俺が目を覚ました日に感じたあの感覚が物語っている。

けど、責任逃れな言い方だが。
俺には記憶が無い。

ヒマワリ「まぁ。ルーツ君がどうしたいのかじゃない?」

ルーツ「俺は…正しく生きたい。生きて、恩を返したい。」

しばらくの沈黙のあと、ペコラはかかってきた電話をとった。たぶん、あの速度はボスからだろう。ペコラはそのまま少しその場を離れた。

ヒマワリ「私はそれで十分だと思うけどな。何言われても貫くべきだよ。」

…しかし。俺は正しく生きたいと思っているのだろうか。じゃあ過去の。記憶を失う前の俺はなんで戦争に参加した?無理やり…なんていうことなら俺は自害しているだろうから。なにか理由があったはずなんだよ。

理由があったとして許されるか分からないけど。

ルーツ「みんなのこと守りたいって思う。」

もしも。なんらかの理由で俺が北を守るために立っていたとしたら。
いや、正当化しているだけの世迷言か?

ルーツ「はぁ…。」

なんか。もう疲れたな。

ルーツ「てか零那さんも意地悪だよな。1時間で答えだせ。って。」
普通の社会人でもこんな重苦しい話なら1日は待ってくれるぞ。たぶん。

ヒマワリ「でも、もう決まってるんじゃないの?」

…警察に戻って。また正しく生きる?
正しく生きて、罪を償う?犯罪者や、これから犯罪を起こそうとする人たちを止める?俺が?犯罪者が?

…はは。あー。もう。どうにでもなれよ。

ヒマワリ「逆に言えば。そんな中途半端な気持ちで警察をやって欲しくない。」

ルーツ「けどさ。その情報が本当で俺が人を沢山殺してるとしたらひまわりさんは俺をそれでも信用できる?」

ひまわりさんはしばらく悩んだあと、口を開く。

ひまわり「いろいろ理由があったのかもしれないし。とも思うし。私は今のルーツくんなら信じてもいいかなって思う。私は自分が一緒にいて感じて、思ったことが真実だって思っちゃう。だから、今のルーツくんを信じたいって思う。」

ルーツ「…そうか。」

※

俺は零那さんに電話を掛けた。
もう正直に言えば自分が何をしたいのか分からない。けれどひまわりさんに言われたからという単純な。

そんな単純な理由でしか俺は今動けなかった。
零那さんと待ち合わせをして高級住宅のとある場所へと向かった。

レナ「んで?話っていうのは…?」

ルーツ「結論から言うと。」

…正直もうやめてしまいたい。
過去の事をみんなが知ったら。ひまわりさんのように受け入れてくれるとは限らないからだ。
それに、警察っていうのは。俺のような犯罪者を…悪と判断したものに罰を与える執行官だ。

それでも。
それでも俺はまだ自分が悪では無いと信じていたいし。
もうこれ以上大切なものを失いたくない。
恩は返せなくてもいいし。やはり俺はいつ死んだって構わない。けれど。大切だと思うものを「守って」から死にたい。

ルーツ「____警察を続けたいと思ってます。」

レナ「ふん。」

ルーツ「俺は昔…」

レナ「待て。」

ルーツ「…はい。」

レナ「お前はそれを俺に話したいのか、義務感でやってるのかどっちだ。」

…警察の継続についてか?答えを出せと時間制限まで設けたのはあんただろ。
俺が警察でいて。
ずっと考えていたこの曖昧な感情。
犯人と対峙して、命の危険に晒す度に思ったこの感情。

警察とは本当に正義なのか。
否。正義とは何か。
俺ははっきり言えば、零那さんのその悪に情を向けるなだとか。肩を持つなだとか。そういう一面的な思考と。俺の過去を知っていても尚、俺と向き合っていたその矛盾を。

____どこかで洗脳にすら感じていた。

ルーツ「…話したいです。」

レナ「なら聞こう。」

洗脳についての本を呼んだことがある。
厳しく当たり、都合のいい部分に行き着いたら飴を与える。その繰り返し。それだけで人は簡単に洗脳されるのだそうだ。

今の俺が警察に残りたいと思ったのは
ひまわりさんがそう言ったからで。
零那さんが望んでいるからで。
街の秩序を守る側だからで。

____それは本当に俺の望みなのか?

ルーツ「昔自分が色々やってたのは事実なんでしょうけど。今の自分は、助けてくれた人や世話になった人に、恩を返したいって言う…。」

そんなのは。嘘だ。
本心を言ってしまえ。今ここで。
俺は警察なんかもうやりたくないし、今すぐにでも死んでしまいたい。それが本当の望みだろ。

人の命を奪った。
それだけでもう十分死ぬ為の動機になるだろう。

恩なんかどうでもいい。
正義なんかどうでもいい。
悪人なんかどうでもいい。
人生も、欲望も、金も、友人も、何もかもがどうでもいい。

どうでもいいって言えよ。
なんで言えないんだよ。俺は。

…それからも俺は。ベラベラと御託を並べていた。綺麗なことを。一つ一つ。丁寧に。

ルーツ「…このまま警察を続けてもいいですか。」

レナ「愚問だな。」
空を見つめ、決して俺を見ないで涼しげに零那さんは答えた。

レナ「2つ伝える。」

ルーツ「はい。」

レナ「1つ。俺はお前に今を生きろと言った。過去なんてどうでもいいんだよ。お前がどこで誰を殺してようが、どうでもいい。」

零那さんの嘘を。俺は何度も指摘しなかった。
今回もそうだ。零那さんは本気で過去をどうでもいいなんて思っていない。ただ、過去に主軸を置くことで今を生きるために不都合が出るから「そう思うことにした」だけだ。

レナ「2つ。この話を知っているのは警察内部でも俺とお前だけだ。だから墓場まで持っていけ。わざわざ、めいへ伝えることもない。」

俺からは零那さんの表情は見えない。
いつもの事だが。しかし、恐らく微笑みながらこう言った。

レナ「____お前は一度死んだ身だ。」

ルーツ「…はい。」

転生者じゃあるまいし。俺は今生きている。
死んでなんかいない。俺も言い逃れの為に「記憶がない。」なんてことを言ったが、そんなのは本当に言い逃れでしかない。過去の俺がやって。生きてきたから今の俺がいるんだ。

俺は零那さんの言葉には何も賛同できなかった。
しかし俺の口から出る言葉は全て零那さんが喜ぶような。信頼して貰えるような。無意味で、なんの感情もない音の羅列だった。

※

俺は警察署に戻った。
けれどずっと吐き気と頭痛が止まらない。
それでも今は何も考えくなくて、止まるともう二度と立ち上がれなさそうで、常に現場へ走った。それを繰り返していた。

少しの暇に、俺の携帯が鳴った。
非通知。まぁペコラだろう。

ルーツ「はい、もしもし。」

ペコラ「ん。」

声音が暗い。
まぁ、なにか良くないことがあったのは明らかだろう。

ペコラ「さっき置いてっちゃった。」
そういえば連絡して離れてから帰ってこなかったのを今更ながら思い出した。

ルーツ「あぁ。いいよ。」

そして、この回答も伝えるべきだろう。
まぁギャングっていう組織に誘って俺を救い出そうとしてくれたのだから。

ルーツ「あとさ。いろいろ考えたけど。警察に残ることにした。」

ペコラ「まぁいいんじゃないか。もう私があんたに追われることは無いだろうし…」

ペコラは悲しげな物言いで俺にそう伝えてくる。
あんまりもうもろもろ考えたくないが、友人であるペコラが苦しいなら聞かないという手段を俺は選べない。

ルーツ「それってどういう事だよ。」

ペコラ「そのまんまの意味だよ。」

ルーツ「解散ってことか。」

ペコラ「そうかもね。」

SEVENTHが解散?何故?
いや、まぁ。俺には関係ない。
けれど、その組織には俺に色々と良くしてくれたジョーがいて。ペコラがいる。それなりに流儀を持って北で活動しているギャング。それが解散?

ペコラ「私は認めたくないよ。」
ペコラは泣いていた。内心、こいつも泣くんだな。と思ったし、それくらい自分の組織が好きなんだろうなと思った。
対して俺は?零那さんに対して適当なことを言い、警察という正義の皮を被った何かに隠れているだけで以前のような志をもう持てない。きっと明日警察が解体になっても俺は何も感じないだろう。
恩義に報いようなんて考えも初めの頃に比べれば薄れた。
だってみんな、最後には去っていくのだから。

寧ろ俺はずっと他人を軸にしていたから、こんな思いをしているのかもしれない。だったら初めから自分本位な生き方で。他人を蹴落としてでも生きる生き方を覚悟出来れば。していれば。

命の価値は平等じゃないんだから。
俺が気に入らないやつは全員殺せば。
俺が警察ではなくて、初めから犯罪者として生きていれば。

今頃…過去を知った所で、後悔なんてしてなかっただろう。

もちろん。全てはタラレバだ。

ペコラ「…お前ら警官には関係ないだろ。」

あぁ。そうだよ。ペコラ。
はっきり言えばお前らが解散するなんてのはどうでもいいんだよ。
俺にしてみればもう何かが壊れるのも、失うのも今はどうだっていい。ただ俺はお前らが。ジョーとペコラが俺にしてくれたことは覚えている。

ルーツ「俺はお前らに恩がある。」

またこれだ。始まったよ。何が恩だ。何が返したいだ。

ペコラ「お前らだって、犯罪組織がひとつでもなくなった方が清々するだろ。」

ルーツ「俺は犯罪者を組織として見てないよ。」

ペコラはその後もゴタゴタとなにか言葉を並べていたが。
聞く余裕が無かった。知らねぇよ。お前らのギャングが解散するなんてどうでもいい。

ルーツ「正直に言えばギャングがどうなるとか。犯罪者がどうとか。そんなことはどうでもいい。俺はお前にありがとうって思ってるし。ジョーにもありがとうって思ってる。ただそれだけだよ。ギャングが解散するとかしねぇとかどうでもいいよ、俺は。だから俺はジョーに電話する。」

思えば、この時が初めてだったかもしれない。
本心を。ありのまま思ったことを。相手に配慮もなく言えたのは
そうだった。別に俺色々今まで言ってきたけど。やっぱり本当はどうでもいいんだ。正義とか悪とか。恩とか世話とか。そんな言葉は綺麗事だ。

俺はただ、俺がやりたいと思ったことをやって。
守りたいと思ったものを守って。
殺したいと思った奴を…。

我に返る。
まるで犯罪者の思想じゃないか。
ダメだ。やめろ。俺は今警察にいて。恩を受けたのも、世話になったのも、事実だろ。なのになんで俺はそれを全て放棄しようとしている?そんなのは…。

俺は会話を終えてジョーに電話をかける。
ありがとうだけ伝えて、終えよう。せめて今俺の狂った思考で他人にできるのはそれだけだ。

ルーツ「いろいろペコラから聞いたぞ。」

ジョー「あ、そうだお前ラブタイプ16やったか。」

んだこいつ。ペコラとのギャップに腰が抜けそうになる。
けどそういえばジョーはこういうやつだった。

ルーツ「んな事どうでもいいんだよ。俺はお前にありがとうって言いたかったんだよ。」

ジョー「ありがとう…?」

ルーツ「色々あって人なんて信用してもって思ってたけど、そんな俺にお前らは律儀に約束守って俺の過去について調べてくれてたろ。だから、まぁ…また人を信用してみてもいいなって思わせてくれたからさ。」

ジョー「お前来る?うち。」

なんで解散前に人を誘ってんだこいつ。
あぁ、そうか。解散理由は人数問題ってことか。

ルーツ「いや。それはペコラにも言われたけど行かない。」

ジョー「そうかよ。二度と電話かけてくんな!」

電話は切られてしまった。
ギャングってのはそんなにいいもんなのか。
そんなに大切なもんなのか。

…俺には関係ない。

今の俺はそう思う以外にできることは無い。

※

再び本署へ戻ると傭兵会社PLANTのアッシュと見知らぬ男が居た。

ルーツ「どうした…?」

アッシュ「やぁ、偽物くん。ちょっと君たちの上官に用があってね。」

どうやら傭兵会社関連の報告をしに来たらしい。
アッシュ。彼は幼い頃から戦争に繰り出されていたらしい。前にメカニックでいろいろと話を聞いてはいたが、彼も相当なものを削って生きているだろう。

そしてもう1人の男。名前は「キール」
始めてみる顔だと思っていると自ら「切裏」と名乗ってきた。なんだよ、小洒落た名前しやがって。確か酒にそんな名前のがあった気がする。

アッシュ「こら、そんなに簡単に素性をバラすもんじゃないよ。」

聞けばどうやらキールも犯罪者で。
元は軍人だったらしい。
俺は自分の中でこいつらと何か共通点を感じた。そしてふと疑問が湧いて、興味本位で聞いてみた。

ルーツ「なぁ、お前らはさ。人を殺す時にどう思ってる?」

アッシュ「まぁ生きるために仕方ないからね。」

ルーツ「主義主張とかはねぇのか。」

アッシュ「ないね。」

キール「俺は自分の大事なものを守りたいからかな。助ける力が欲しいと思ったし。法だなんだに縛られたくないからな。」

キールの言っていることを俺はとてもよく分かった。分かってしまった。
嫌でも最初の頃に感じたあの気持ちは。

ーーーーー

「許さねぇ。」

ーーーーー

ルーツ「…そうか。まぁ頑張れよ。」

俺はその後すぐに壁の例の場所にやってきていた。俺はおそらくこの場所で。戦争の時代に戦った。
それが何故なのかは今の俺にはわからない。
けれどそれと引き換えに多くの命を奪った。そして俺は今生きている。

ルーツ「何か大切なものを守りたかったのか…」

それとも私欲の為なのか。俺にはわからない。
それなのに。俺は途中で投げ出した。そして俺と共に戦っていたであろう人間もまた死んだ。

ルーツ「…はぁ。」

____なんか。もう疲れたな。

考えるのも。感じるのも。配慮するのも。尽くすのも。頑張るのも。生きるのも。何もかも疲れた。

過去を捨てろって言われても。
そんな簡単に捨てられるのなら、今頃俺は何も気にしないで救急隊として呑気に暮らしていただろう。
けれど、過去を知ったが故に。
もう俺の中では何かが狂い始めていた。

無気力さが。生きる意味の無さが。俺の過去への執着が。俺の中の曖昧な何かが。

俺の中の芯を大きく捻じ曲げていた。


ルーツ「…はぁ。」



Day24


+ Me now
「Me now」



寝起きで出勤した。
もう何もしないでいると考えだけが巡ってしまうから。

正直に言えば。さっさと警察をやめたい。
そのままどこかで野垂れ死んでも今の俺なら何とも思わない。

責任とか、仕事とか、めんどくせぇし。
全部何もかもが。めんどくさい。

俺は今、いつ死んでも後悔はない。

※

犯罪対応しているとまた非通知がかかってきた。
どうせペコラだ。

ペコラ「お前昨日話したか?」

ジョーに連絡をすると言った話か。

ルーツ「あぁ。」

ペコラ「なんか言ってたか…?」

こいつはまだSEVENTHが解散しない方に賭てるんだろう。
しかし、残念ながら昨日ジョーは俺に「1週間以内に解散しようと思ってる」と言っている。

ルーツ「解散するってことは言ってたな。んでギャングにも誘われたよ。」

ペコラ「大人しくくればいいのに。」

行くわけねぇだろ。
なんで俺がお前らの組織の為に動かなきゃならねぇんだよ。今そっちに行くという選択肢は無い。元犯罪者であることを悔いている俺が犯罪者になるなんてどう言う冗談だよ。

あるのはこのまま奴隷のように意味もなく警察を続けるか。やめてさっさと死ぬかだ。

まぁ、そもそも真っ当な人間なら、警察になる以外の選択肢は思いつかない。
けれど、そういえば俺は一度犯罪者になる道も考えたんだった。

だから、ジョーとペコラの提案も一概に否定できない俺がいた。

それからとペコラは俺をどうしても勧誘したいようで何度もそれらしいことを言ったが。

俺の心は動かない。
今まで通り、何とかその場を凌ぐための綺麗事を語って濁す。

本心は相変わらず「どうでもいい。」だ。
今の俺は、全てどうでもいい。
そう思っている。今まで俺が言っていた全てが綺麗事だ。

しかし、建前はこうしよう。
俺は俺が信頼して裏切った人たちと同じになりたくない。

だから警察を辞める訳には行かない。
竜胆。零那さん。他にも沢山。
大切な人がいるから。って。

…そんなことすらどうでもいいって今は思えるけどな。

これで納得するだろう。
そしてさっさと会話を終わらせてしまおう。

そして俺はこの会話中にクソダサい餓死を決め込んでから話を終えた。

※

ルーツ「はぁ…」
ため息しか出ない。

創作物の見すぎだな。俺は。
俺の過去はもっと明るくて、劇的だと思ってた。

記憶喪失なのも、主人公っぽいななんて少しはステータスに感じてた部分はあった。

けれど現実は違う。正義の為に生きようと思った。恩人の為に生きようと思っていた俺は蓋を開ければ大量殺人を犯した犯罪者。

これからの俺はただ生きて死ぬ。
それだけだ。それが俺の罰だ。

このまま警察を続けて死のう。
せめて一貫性や誠実さだけ示してこの世を去ろう。それが俺に今できる罪滅しだ。

そんなことで頭はいっぱいだった。

なんか。もう全部やだなぁ。
俺が俺であることも。
そうだな。勇気が出なくて死ねないのなら、今俺に出来ることは…。

俺は服屋に行って、顔を隠せるアイテムを探す。
死骸の頭骨があったので顔に宛てがうとピッタリとハマった。
そしてフードを深く被り、これで俺じゃない何かになったフリをした。

名前はそうだな…ラスト。終わりだ。

※

着信音。非通知。
お察しの通りだ。

ペコラ「あのさぁ、インパウンド依頼受けてくんね…w」

ルーツ「わかった。」

また勧誘ならいよいよ執拗いので殺しに行くところだった。危ない。

俺は依頼場所へ向かい、車両をインパウンドする。

ペコラ「お前その服装やめろよw警察の服着てる犯罪者にしか見えねぇよw」

ルーツ「その通りだろ。」

言い得て妙って奴か。こいつのこのイライラする言動にユーモアのある皮肉を言えたのは我ながらいい成長だ。

そのままインパウンド場へペコラを運んでやる。
その場でまだギャングがどうだとか。
旅に出るだとか。言っている。

何度も言うがもう俺には何もかも関係ねぇよ。

…関係ねぇけど。ジョーは。ペコラは。
俺の記憶探しに付き合ってくれたんだよな。

恩?いや。もうそんなもんどうだっていい。だろ?

…わかんね。

ペコラ「あの人に彼女でもいて、支えてやれる人がいたらね。」

ルーツ「お前がなればいいじゃん。」
テキトーなことを言い始めてしまった。
いや、適当か。

ペコラ「なんで?」

ルーツ「お前がジョーと。」

ペコラ「…はぁ?」

ルーツ「いやお前が支えてやればいいじゃん。知らねぇよ。俺はお前らがなんで解散に至ったかとかさ。なんでギャング抜けるとかさ。けど着いてくって言ってるばっかでさ。それが正しいって思ってんのか知らねぇけどお前が支えてやったらいいんじゃねぇの?本当ななくなって欲しくねぇんじゃねぇの?無くなって欲しいって思ってんなら今の行動でいいけど。違うならちゃんと伝えたらいいんじゃねぇの?別に俺はお前らが解散するとか街去るとか俺には関係ねぇけど。それでも世話になったからできるならちゃんと話しろよって思う。」

驚いた。
まだ俺にこんなにベラベラと喋る気力があったとは。
俺はペコラを見ていて思う。
伝えない後悔をずっと選びすぎていると。
その癖、その後悔をずっと嘆いていると。

俺もそうだった。今まで世話になった人達が去る前にもっと感謝を伝えていれば。今の心持ちも少しは晴れていただろうに。

俺は伝えなかった。
恥ずかしいと思ったし、俺からそんなことを伝えたところでって。心のどこかでそう思っていた。だから行動で感謝を伝えようと思って正しくいた。

けれど、それは伝わらないまま。
俺の恩人たちは去っていった。

生きてればどうしようも無いことなんて無数にある。

けど大切に思うなら。やらねぇと。伝えねぇと。なんにもなんねぇよ。

そんな思いを俺はペコラに向かって吐いた。それは俺に向けたものでもある。

こいつならちゃんと受け止めて行動できると思ったからだ。

その後もベラベラと話していたが零那さんの話をした途端突然携帯が鳴った。

『へぇ。』

零那さんが近くで聞いていた。

ルーツ「…いるわ。」

ペコラ「え?」

周囲を確認して零那さんを発見した俺とペコラは零那さんに撃たれた。

…なに?なんで俺まで。

※

レナ『俺の命令をお前は無視した。』

…はぁ。こいつもこいつでめんどくせぇな。
もうどうだっていいっての。
何が命令だ。何が上官だよ。

レナ『俺を裏切ったんだ。警察を辞めるってことでいいんだな。』

へぇ。そうか。
じゃあやめるか。
そんなにあんたは俺を制御したいんなら。
最後に俺はあんたに抗ってやる。

ルーツ『やめません。』

あぁ。何もかもうぜぇな。
俺が警察辞めたとしたら俺は今後食っていける自信が無い。
別に死んでもいいけどその勇気はない。
だから俺は縋るようにその一文を彼に送った。

ペコラとの会話を終え、一時砂漠署へ戻ると零那さんがいた。俺は零那さんを前に土下座してみる。

ルーツ「インパウンド依頼で話してただけです。」

レナ「その前から知ってるよ…?」

ルーツ「その前?」
何の話だ?あぁ、インパウンドの依頼前か。

レナ「いいんだね?」

ルーツ「…。」

レナ「そうかぁ。よくわかった。」

零那さんはそう言って出ていってしまった。
あー。めんどくせぇな。全部。
俺はそしてそういえばみんなが零那さんをメンヘラと呼んでいたことを思い出した。

その通りだな。全く。

※

その後、めいさんがギャングを作ろうとしてるなんてのが流れてきた。

何がどうなってんのかわかんねぇけど。
まぁつまりはこの組織も潮時って事だろ。
上の苦労なんてもの俺は知らないけど、人を導くなら苦悩が合って当然だし。そんな発言を易々とするべきじゃない。
例え、この国の警察が真っ当な警察じゃないとしてもだ。

あーもう。警察やめて、どこかで飲食店でもアルバイトで入ろう。
んで食って、寝て寿命で死のう。

俺はもうこの瞬間くらいから警察という組織には愛想を尽かしていたと思う。
明日にでも辞任しよう。

零那さんもその噂を聞いたのだろう。
無線に入らず事件対応を挑もうとして怒られていた。まぁでもこれに関しては零那さんの気持ちもわかる。
警察のトップがギャングをやろうなんて話は意味がわからない。警察という名前のギャングとして体制強化しよう。とかならわかるが。そうは聞こえなかった。

まぁ。めいさんも初瀬。つまりは同族なのだろう。
なんて冷めたくだらない考えが脳裏に過ぎる。

どこかで違うと信じたかったから。

※

もう驚きもしないが。
またまた俺が辞めるに値する理由が生まれた。

ゆゆさんが実はこの街へ帰国していて。
しかも犯罪者になっていたというのだ。

もう今回に関しては悲しくも何ともなかった。

元気があれば怒りも湧いただろうが。
もう他人に感情を向けるだけ無駄だ。

全部無駄だ。

明日辞任しよう。
こんな組織で出会い別れに一喜一憂すんのも、自分が元犯罪者だと言うのに正義のヒーローのフリを続けるなんて。真っ平御免だ。

いいよ。俺は悪人だし、何も考えねぇ。
周囲の人がそうだったようにな。

俺はその後、犯罪が起きてもほとんど対応に向かわなかった。理由?聞かなくても分かるだろ。

〜♪

着信がなる。
またペコラかと思ってスマホを見ると、着信はひまわりさんからだった。

内容は警察署を友人に紹介して欲しいと。

…まぁめんどうだけど、ひまわりさんのお願いなら聞こう。別にまったくもって彼女に非は無いしな。

この人は俺が死のうとしてんのも、ペコラに殺されそうになってんのも阻止して、過去の俺を知っても、受け入れてくれたんだ。

俺が待っているとひまわりさんと狗嵐 アルという男性が来た。

ヒマワリ「お待たせ〜!」

ルーツ「ん。なんかお前見た事あるな。」
確か数日前に病院ですれ違ったと思う。

アル「こんにちはー!」

ルーツ「はい、こんにちは。」

ヒマワリ「前に来たら警察署人いなくて、ルーツくんに紹介来て貰えたらと思って。」
もうどうせ辞めるから、ふざけてみるか。

ルーツ「それじゃあアルくん。面接しようか。」

アル「えっ…」

ヒマワリ「www」

ルーツ「あ、警察になりたいんじゃねぇの…?なんだよ。仲間が増えると思ったのに。」
まぁ自分は明日辞めますけど。
という皮肉を添えて。

ヒマワリ「警察の人って凄く早いよねw」

ひまわりさん、一応俺には面接する権限なんかないからね。冗談だからね。

ヒマワリ「アルは〜!私の幼なじみです!」
どうやらこの子はヒマワリさんと幼なじみだが、数年海外へ行っていたらしい。

ヒマワリ「あ、えっと。」
ひまわりさんは周囲を確認し他の警官が居ないことを確認すると口を開く。

ヒマワリ「ルーツくんは、私が警官の中で唯一信頼できる人です。」
わざわざ嬉しいことを言ってくれる。
けどなぁ。ごめんな。俺もう辞めるんだ。

ルーツ「で、2人はどういう出会いだったんだ?」

アル「自分今はこんな感じですけど昔「いじめ」られてて。そんな時にこの子が助けてくれたんです。」

ルーツ「虐められてて、助けて貰ったってことか?」

北出身…いじめ…

ーーーーー

この建物は、優位性表す道具。

この街頭は、警告の為の光。

ーーーーー

っ…!?
頭痛が…。

俺の脳内にとある場所の風景が浮かぶ。
いじめというワードが俺の脳内にある光景を映し出したのだ。

ルーツ「悪い…ちょっと頭痛が…見学はまた今度にしてくれるか。」

アルくんの言葉に呼応して脈を打つような痛みが押し寄せてくる。この子も北の出身だったのなら。もしかして俺を知っている?俺が犯罪者だということを。知っているのか?

ルーツ「なぁ、ちなみにお前どっかであったことあるか…?」

アル「いやぁ…無いと…思うけど。」

ルーツ「…そうか。」

俺はそのままその場を後にする。

…これが本物か確認しに行かないと。

※

ルーツ「ここだ…。俺はここで…。」

レギオン公園の端。
この場所で俺は…

「偏見」

あぁ。マジでしょうもねぇ記憶やな。

俺は南に対する怒りを思い出した。
そうだった。俺が憧れてたこの場所は、偏見や暴力が横行してたんだ。だから憧れなんてものは捨てたんだった。

俺が南に住みたくないと思っていた理由は罪悪感だけじゃなくてこれか。

その後俺は北へ向かって走った。
理由?それはペコラがずっと連絡してきてうるさいから。そしてその口を塞ぐためだ。

俺はリノ ラングフォード。リノさんへ連絡を取る。彼女ならきっと協力してくれるはずだ。
連絡をとってみるとやはり乗ってくれた。
俺はペコラとジョーをくっつけて黙らせるためだ。
いつもの場所で待ち合わせ、ペコラを拘束する。

ペコラ「おい!てめぇ!!」

ルーツ「はいはい。ちょっと静かにしろよ。」

リノ「どしたん?」

ルーツ「俺の良き友人である…いや、敢えて言わせてもらいます。俺の親友であるペコラが…ジョーのことを。」

ペコラ「おい!!ばか!!やめろ!!」

どうやら俺が普通なら言わない親友というワードは否定しないようだ。
何故か内心ホッとした。まぁ、別に今更他人がどう思おうが俺が思うことを優先するが。

リノ「知ってるよ。見りゃわかるでしょ。」

流石は零那さんのお姉さん。
話が早い。俺達はその後作戦会議をした。
題して、ペコラとジョーくっつけよう大作戦(ほとんど脅し)

※

…なんか。俺今まで頑張りすぎてたんだろうな。最近入ってきた警官も適当な奴が多いし。

別に、俺が正しさや恩義の為に頑張る必要なんかどこにも無かったんだろうな。

それでも一つだけ。

今日署長が話していた内容。
警察をやめてギャングをやるという話だ。
その後零那さんも食らったようで無線に参加してこなかった。

これは別に、明日退職する俺が気にすることでもない。どうでもいい事だと思うのに。
伝えなきゃと思った。

別に、俺が伝えたところで何がどう変わるとか期待はしないし。どうでもいいが。

伝えない後悔はしたくないからな。

電話をかけ、スマホを耳に当てる。
しばらくの呼出音の後、署長が出た。

ルーツ「もしもし。」

メイ「どうした?」

ルーツ「署長、警察やめてギャングやるみたいな話しました?」

メイ「したね。」

ルーツ「その後から零那さん無線に参加してなかったと思うんですけど。大丈夫ですか?」

メイ「大丈夫ですかって、私と零那の関係がってこと?いや、なんで零那がキレるのかわかんない。」
いや。署長。わかれよ。

メイ「私が零那のこと拾ったんだよ?」

ルーツ「知ってます。」

メイ「私の選択を否定する権利はアイツにはないんだよ。」
…そんなこと本気で思ってるのか?
本気で思ってるなら、やはり警察を辞めるという選択は間違いじゃないな。

ルーツ「…そうかもしんないすけど。まぁメイさんが大丈夫そうなら。」

メイ「まぁギャングになるより警察でいた方がやりようがあるからね。本当にギャングやるなんてのは…ねぇ。」

ルーツ「ま、2人の関係にとやかくは言えませんけど。組織は関係なく、個人個人で見た時に零那さん可哀想だなって。零那さんは周りの人はどうでもいいけど信頼してるめいさん達のことは大切に思ってるんですよ。」

メイ「それは私だってそうだよ。」

ルーツ「零那さんもそんな大切に思ってる人が離れてくのは耐えらんないんですよ。」
そうだよな。零那さんも人間だ。感情もある。
俺も同じだったように。零那さんだって。

メイ「零那は優しすぎるんだよ。」

ーーーーー

レナ「温いねぇ…」

ーーーーー

…お前もだってよ。零那さん。

メイ「この仕事しててさ、大切な人が去ってくなんてのはよくある事なんだよ。だから情を持ちすぎない方がいいんだよ。あいつはなんだかんだ情に厚いから。」

普段から内心は冷たく接さないと、傷ついてしまうというのは俺もそうだったから、何も言い返せないな。けれど、そもそもそんな状況をはいそうですかって無関心になれという方が俺にとっては無理な話だよ。

ルーツ「まぁでも特にめいさんは零那さんにとって特にそうだと思うんで。なんか一言くらい掛けてあげてくださいっていう。部下からのお願いです。それだけです、すみません。」

メイ「わかった。まぁ…またなんかあったら声掛けてきなね。」

…言うべきか。警察を辞めると。

いや、明日決めよう。

まだもしかしたら。なんて期待をまだ俺は捨てきれなかった。
それから俺は電話を切り、バイクを走らせた。

※

非通知。
お決まりの彼女だ。
内容は、やはり告白なんて出来ない、やりたくない。ってことだ。くそ、じゃあこいつの口は誰が塞ぐんだよ。

ペコラ「それに…近々…本当の意味で話さなきゃ行けないこともあるから。」

ルーツ「ボスに?」

ペコラ「ボスだけじゃない。」

ルーツ「ん?というと?」

ペコラ「今回の件だけじゃなくてさ。本気でSEVENTH抜けようかと思ってる。」

何を今更。解散する予定の組織をわざわざ抜けて何がしたいんだ?

ペコラ「お前には言ってなかったけど。昨日零那と話してさ。お前は敵だから首洗って待ってろって言われてさ。」

ルーツ「…。」

本当の意味で殺すということか。
つまり…ジ・エンドだ。

ペコラ「私と零那の喧嘩にSEVENTHを巻き込めねぇしな。」

ルーツ「は?」
こいつ今更何言ってんだ?
俺は警察で、ギャングなんて言うものが何かなんてのは正直よく分からない。
けど同じ志持って生きてる仲間じゃないのか?だったら隠すことないだろ。素直に話してみんなで取り組む。それがギャングじゃねぇのか?

ルーツ「巻き込めよ。」

ペコラ「嫌だよ。」

ルーツ「同じことメンバーが言ったらどう思うんだよお前は。自分だからいいとか舐めたこというなよ。ちょっとは頼れよ。」

あー、もうやめとけよ。俺。
こんなことにもう首を突っ込むな。
そう頭で理解しているはずが言葉は止まらない。

ペコラ「もう決めたんだよ。これで私が負けて死んでも、SEVENTHは関係ない。これは私と椿零那の問題だ。」

ルーツ「じゃあ、お前はお前の大切な育ての親と同じことすんだ。」
煽った。違うと言わせたかった。
俺はこいつが戦って死ぬのを止めたかった。

ペコラ「そうだな。」
しかし、ペコラは強情だった。

ペコラ「もし、SEVENTHがこの街に残るとしたらその威厳くらい残してやりたいだろ。」

これから消えるかもしれねぇ組織の何が威厳だよ。そう言ってやりたかった。けど、命を賭してまで守りたいと思ってるものを否定する権利は、少なくとも全てをどうでもいと思っている俺にはない。

ペコラ「ちょっと動いてるみたいだから、行ってくるわ。」

ルーツ「そうか。」

電話が切れた。

明日ペコラが、零那さんに殺されるかもしれない。なんでこうも俺の大切に思った人達は消え失せていくのか。
なんで。なんで…。

じゃあ。もう。最初から。
最初から何も要らなかった。

『失うんなら、最初から要らなかったな。』

南への理想も。記憶も。何も。何もかも。

BUCKSの屋上で、勝手に椅子に座って夜風に当たっていると アイク・ポルスカさんが上がってきた。

ポルスカ「おー、どした?」

ルーツ「いやぁ…まぁなんか自分記憶ないって言ってたんですけど。記憶取り戻したくて色んな人と話したり、協力してもらって、たくさん大切な人ができたんですけど…なんか、だんだんと得た分だけだんだん失っていってて。」

ポルスカ「うん。まぁ、記憶のない辛さってのは当人にしかわかんねぇけど。まぁ、今を大事にして昔のことは忘れちまった方がいいんじゃねぇか。」
昔のことを…。もう追い求めない方が、楽だと。そうポルスカさんは言ってくれているのだろう。昔のこと…。

そういえば、ポルスカさんって壁を何度も破壊しようとしてたよな。
壁…。壁か。

思えば。全て壁のせいだ。
俺が記憶を失ったのも。俺が今人を殺した事にこんなに嘆いているのも。全て壁の…。

ルーツ「ポルスカさん。この話は公言しないで欲しいんですけど。いいですか?」

ポルスカ「あぁ。いいぜ。」

俺は俺は昔、戦争に参加していたらしいということ。そして壁を壊す側の人間だったということなどを伝えた。

ポルスカ「…なるほどな。」

ルーツ「ポルスカさんが壁を壊そうとしてたじゃないですか、それ見て、俺…当時なんて言ったらいいんだろうな…」

何故か俺は泣きそうだった。もう意味がわからないし、ポルスカさんに何を伝えたいのかさっぱり俺も分からない。
そうしているとポルスカさんが口を開いた。

ポルスカ「そうか。じゃあ話してくれたから、俺もひとつ話をしよう。」

ルーツ「はい。」

ポルスカ「俺は…この街の住人が持っていない爆発物を手に入れたんだ。」

ルーツ「どういうことですか?」

ポルスカ「壁を破壊できるかもしれない爆弾ってことだよ。」

ルーツ「なる…ほど。」

壁。そうだ。
この壁を破壊して、全て終わらせよう。

この負の連鎖が俺が生まれてからの負の連鎖が南と北を分けていた偏見から始まったのなら。

そしてそれを体現したこの壁でこれからも続いていくのなら。俺はこの壁を…。

俺は帰路へ付いた。
ポルスカさんの言っていた爆薬が何なのかはわからない。

けれど、例えばそれが無意味でも、俺の残りの生涯全てを捧げてこのクソみたいなな壁をぶっ壊してやる。そこからだ。そこからリスタートしよう。俺の人生を。やり直そう。全てを。

※

その後帰路に着いた俺はペコラへメッセージを送った。それは別に壁がどうとか。恩人がどうとか。そんなくだらないものではない。

俺が彼女を親友だと、思ったからだ。






『死ぬなよ。』





ー以下観測不可部分ー

ルーツ「みんなどっか行っちまう。」

きっと。明日ペコラは死ぬ。
零那さんに為す術もなく殺されてしまうだろう。

なんでこんなに悲しい思いをし続けなきゃいけない。
なんで俺が、罪悪感を感じ続けなきゃいけない。
なんで俺が。

ーーーーー

ユユ「優しいんだよ…彼…」

アルト「お前の命に価値がないなら、お前の周りの人間痛ぶるしかねぇよなぁ?」

レナ「俺だけ信じればいい。」

ペコラ「お前に関係ないだろ。」

ヒマワリ「ルーツくんは警察辞めないでね。」

ーーーーー

みんな好き勝手俺に言いやがって。
あぁ。もうじゃあもういいや。
お前らが好きにして、好きに言ってんなら。
俺だって好きにしてやるさ。







____もう他人軸で生きるのやめよ。



Day25


+ Rust
「Rust」


目覚めが悪い。そりゃ親友とまで言った人間の命が今日無くなっちまうかもしれねぇなら当然のことだろ。

俺は昨日寝れなかった時間考えた。

今までの俺の何がいけなかったのか。
このモヤモヤは何か。

それを俺は昨日理解した。

直ぐにペコラから連絡があった。

ペコラ「何心配してんのお前。」

ルーツ「…お前が昨日不穏なこというからだろ。」

今日死ぬかもしれねぇのに。なんでこいつはこんなに明るく振舞ってんだよ。やっぱりこいつはバカだ。

ペコラ「私とお前は敵同士なんだから関係ないだろ?」

…。
俺が警察だから?親友が犯罪者だから?
関係ねぇだろ。
そんなのは俺からすりゃ言い訳だね。

大切なもんは助ける。例えそれが組織として敵対してようが関係ねぇよ。

ルーツ「いや、お前は俺の親友だよ。俺は別に、ギャングや警察とか分け隔てて考えてねぇよ。俺は個人個人を見てる。」

ペコラ「お前の上司にはそれ聞いてなんて言われんだろうな?」

ルーツ「もう散々言われたよ。けど、俺は犯罪者にもいろいろ理由があると思ってる。」

ペコラ「それが人を殺すことでも?」

ルーツ「俺だって昔殺してるよ。」

※

俺は電話を繋いでいたが、ペコラはやはり零那さんと戦うようだ。
文字通り命を懸けて。

だから俺は昨日悩みに悩んで、助ける人間は事前に決めてある。

思った通り零那さんが勝利した。
ペコラはやはり深手をおっており、ここで俺が見捨てればきっと終わりを迎えるだろう。

俺は飛び出して、ペコラを担いだ。
零那さんには恐らく見えているだろう。いや、見えていなかったとしてもアジトの屋上には宇仁王さんがいる。俺の汚職は明らかだ。

ペコラ「おい…なに…してんだよ。ほっとけ…よ。」

ルーツ「救急に連れてくに決まってんだろうが。」

ペコラは断固として拒否を続ける。
しかし、俺にはもう引く道理もない。

俺が助けたのはもちろん零那さんではないし。瀕死のペコラでもない。

俺が助けるのは俺だ。

ルーツ「俺はなぁ。お前に死なれたら俺の人生終わっちまうんだよ。」

だって、俺が親友と呼んだ人間だから。
今まで沢山の別れがあった。唐突で。見ていても俺は何もできなかった。

それは俺がその人のことを思った時。その人の理由を否定することになると思ったからだ。
バウバウさんも。龍司さんも。ゆゆさんも。色んな理由があって、いろんな考えがあって。色んな人生があって。だから俺は何も言えなかったし、ただ歯を食いしばって見ていることしかできなかった。

けど俺は昨日思ったんだよ。
本当にそれでいいのかって。
俺の人生はそんな失うばかりの人生でいいのかって。

俺は。嫌だ。

我儘だと思う。自分勝手だと思う。独りよがりかもしれない。

けどもう二度と大切な人が去っていくのを。見ているだけなんてのは嫌だ。だから俺はそんな俺のことを助けるために今動いている。

____後悔のない選択を俺がしたい。

動機はそれで十分だった。
零那さんに怒られるかもしれない。警察の職を失うかもしれない。ペコラにだってなんで手を出したのかと撃たれるかもしれない。

けどそんなことはどうでもいい。そんな相手の好き勝手はどうだっていい。俺はずっと。ずっと。目が覚めてからずっと。他人軸で生きてきた。

だから、もうそれを辞めることにした。
これから俺は身勝手に生きる。俺の先輩たちが。この街の住人たちが。俺にそうしたようにな。

ルーツ「みんな好き勝手言いやがって。俺の目の前から消えやがる。俺の気持ち考えたことねぇだろ。だから、お前も簡単に死ぬとか言うなよ。」

ペコラはまだ抵抗を続ける。しかし勝手にすればいい。俺は俺が今できることをやるだけだ。俺がやりたいと思ったことをやるだけだ。
そこに深い理由も、他人への配慮もねぇよ。

ルーツ「俺が記憶が無いからって何にもできねぇって思ってんだろ。」

俺が記憶がないから。俺の存在はどうでもよかったんだろう。俺の気持ちも。俺の考えも。俺の人生も。みんなは何とも思ってねぇから。
だから、俺だってやってやる。

ペコラ「うっ…」

出血が多い。きっと長く持たない。
俺はフルスロットルでバイクを走らせる。

病院に付き、俺はペコラを担いだまま叫ぶ。

ルーツ「おい!!何も言わずにこいつを蘇生してくれ!!」

ミカド「…何も聞きません。」

素直に救急隊は俺が担いできたペコラを病室へ運んでくれた。俺は急いでペコラをさらに担いでその場を後にする。まだ腕を痛がっているペコラを担ぐ。

ルーツ「早く逃げよう。警察から救急隊に連絡しちまうかもしれねぇ。」

さらにバイクを走らせながら北へ向かう。

ペコラ「なんで私を助けたんだよ…」

ルーツ「あ?俺はなぁ!!お前がまだジョーに告白するの見てねぇ!」

ペコラ「黙れ。」

もちろんただの言い訳だ。
俺は俺を助けるためにお前を助けたなんてこと言ったところでこいつはそれを呑まない。だからもうふざけてやる事にした。

その後俺はジョーへ電話する。開口一番にジョーは「あ、折り返し。」と言った。多分昨日の俺の送ったメッセージだろう。気が向いたら連絡しろって送ってたのにこいつ…。

ルーツ「今こっちで保護してるから取りに来い。」

俺がそう言うと待ち合わせの場所にジョーとラッキーガールが現れた。

ジョー「なんでアイツ隠れてんの?」

ルーツ「合わせる顔がないんだと。」

ペコラは勝負の前にSeventhを脱退するとボスであるジョーに表明した手前カッコがつかないんだろうが。いい気味だよ。全く。

あまり状況を把握していないラッキーガールにも事の顛末を伝える。ペコラとジョーに俺の記憶を探す手伝いをしてもらったこと。そしてペコラと零那さんが戦ったこと。俺が警察という立場でありながらペコラを救ったこと。俺のことをジョーとペコラが誘ったからか、分からないが、今零那さんがSeventhに対して今敵意が強いこと。

ラキガ「なるほどね!完全に理解した!」

ジョー「…で?」

ペコラ「だから、死なせてくれなかったんです。」

ルーツ「そう。」

ペコラ「要らないって言ったのに。」

ルーツ「理解したか?ラッキーセブン。」

ラキガ「理解した!」

本当かよこいつ。口調も相まってなんにも考えてねぇんじゃねぇかって不安になるな。

ラキガ「それでルーツさんはどうするんですか?警察に戻ってどうするんですか?」

急に的確なことを言いやがる。現実を俺に見せるなよ。

ルーツ「あぁ、まぁ戻っても結果は目に見えてるよ。」
良くて禊。悪くて俺がエンドだ。

ペコラ「だから手出するなって言ったのにー」

ルーツ「うるせぇよ。俺はなぁお前のこと親友だって思ってんだよ。」

ペコラ「私は思ってない。」

ルーツ「いいよ、別に。相思相愛じゃなくても。」
誰がどう思うかじゃねぇからな。
俺がどう思って、何がしたいか。
それだけが今の俺だ。

ジョー「お前もめんどくさい女に絡まれたな…」

ペコラ「めんどくさいってなんですか!」

否定できねぇだろ。お前はクソみたいにめんどくせぇよ。

ジョー「でもルーツこいつ可愛いだろ?」

ルーツ「仮面付けてるからわかんねぇよ。」

ペコラ「顔の問題…?」

ラキガ「顔で人選んでんなぁ。」

ルーツ「選んでねぇよ。でもちょっとラキガ仮面取ってもらえる?」

ラキガ「えっ、恥ずかしい、やだ。」
そうだよ。女の子の反応はこれだろ。
ペコラも見習えよ。

そんな冗談も交えつつだが。
次の俺の本題はこれだ。
警察に戻ってどうすんのか。

…戻る必要あるか?昨日あれだけ警察を辞めることを考えてた俺が?

いや…無いわけじゃない。
全部どうでもいいとは言ったが。それは本心だったとは言えない。零那さん。竜胆。他の警察のみんな。それを裏切ったままどこに行くって言うんだよ。

ルーツ「ん…どうするかな…。」

ジョー「どうすんだよ。ルーツ。事情は把握したし、ペコラ救ってくれてありがとうだけど。」

ラキガ「ルーツとペコラ仲良いんだし、Seventh入っちゃえば?」

…昨日まで。一昨日までか?
犯罪者にはならないってジョーとペコラの誘いを断ったのに?これから解散するかもしれねぇギャングに俺が加入する?

ジョー「でもな、こいつ2回も断ってんだよ。」

ラキガ「2回断ろうが、3回目は違うかもだから!!!」

いや、全然俺は断るよ?声でかくして脅してきても。

ペコラ「すげぇ声でかくなった…」

ジョー「あのねぇ、ルーツ。うちの子すごい頑固だから…。」

ルーツ「あぁ…。まぁでも、俺のさっきの行為が警察にどう取られてるかによる。」

零那さんは多分俺をのことを見限っただろう。彼はそういう人だとずっと自分で言っていた。
それが嘘だろうと、本当だろうと、彼はそれを曲げない。

ペコラ「私はこいつのこと嫌いですけど…大嫌いですけど…」

ジョー「何言ってんだ、ありがとうだワンって言えよ。」

ペコラ「やだよ!!」

ルーツ「いや、言えよ。お前の命救ったんだからありがとうだワンって言えよ!Sey!いって…。」

普通に殴られた。

ペコラ「…嫌ですけど。ボスがこいつの居場所作ってやるって言うならしょうがないですけど。仲良くならないですけど。絶対に…。」

ラキガ「メンバー欲しいしな。うち。」

…解散すんじゃねぇのか?

ルーツ「ちなみに…結局なんで解散するって話してんだよ。」

ジョー「なんでお前が知ってんだよ。」

ルーツ「いやお前が「俺の腹の中では1週間以内に解散すると思うぜっ☆でもこいよっ☆」って言ったんだろうが。」

ジョー「俺言ったっけ?言ったわwいいよ。でもこいよ。」

は???なんだよこいつら…。適当すぎだろ…。

ルーツ「だから!なんでこれから解散するところに俺が入るんだよ!!だったらせめて解散するなよ!!」

ラキガ「解散しないよ!!」

ジョー「…こう言うやつもいる。」

だからどっちなんだよ…

ルーツ「だからお前らもさ、北で筋通して生きてきたんだろ?何あったとか知らねぇけどさ。ちゃんと通し続けろよ。それがギャングじゃねぇのか。」

ラキガ「そうだよねぇ!私もそう思う!」

ルーツ「あぁだよな!お前とは気が合いそうだ。」

思ってないけど言ってみる。いや、多分この子もあんまり考えないタイプだろうからこの位の方が絡みやすいだろう。

ジョー「まぁ、その意見を言うなら。まずウチに入ってからだね。」

部外者の意見は要らねぇってか。つくづくギャングだな。

ルーツ「はぁ…。」

ラキガ「だって…!入るしかないって…!」

なんでこいつはこんなに嬉々として…。
いや、もうそうだな。
この際ペコラ救ったし。北で筋通して生きてるSeventhまで救うのも悪くない…か?

どうせ…行く宛もなくあてもなくなる訳だし。
なにより、俺は元犯罪者なんだから。これから何やろうと同じだ。

ジョー「メンバーの意見だったら多少聞いてやったっていい。」

ラキガ「え、いいの?」

ジョー「お前の意見どれだけ聞いてやってると思ってんだよぉ!」

…こんな常のようにコントしてる明るい組織なら、いいか。

ルーツ「なんか。俺。先輩たちが警察抜けてくの見て。俺まで同じことすんのかって思ってましたけど、それも、もういいかなって思っちゃったんすよ。」
そうだ。思ってもないことをペコラに言った、そう俺は昨日思いたかった。加入回避するために使った嘘だと思いたかった。
けれど、事実だった。でも、あれは全部俺が本心で思ってたことだ。

もうでも。いい。
今日ペコラを救った時。目が覚めてから初めて今生きてるって実感が持てた。

だから。もう。いいんだよ。

ラキガ「もうなんかいいかなヤバいww」

ルーツ「俺が本当にやりたいのは。規則を遵守することでも、犯罪者を捕まえる事じゃなくて。
____俺は俺がやりたいと思ったことをやって生きたい。」

そうだ。俺は、俺がやりたいと思ったことをやろう。そう決めたんだよ。ペコラを救ったあの瞬間から。

ルーツ「でも!」

俺はまだ捨てきれない情が溢れる。
そりゃそうだよ。俺が目が覚めてからずっと思ってたのはこれしか無かったんだから。

ルーツ「恩は返す。世話になった人に。ジョー。ペコラ。お前もだ。」
別にギャングだろうが。なんだろうが。生きてりゃ、恩は返す。それが望まれないことでも。俺がやりたいからだ。だから誰にも文句は言わせない。言っても俺は聞かない。


ジョー「よし、わかった。俺はね。お前とペコラはウマが合うと思ってね。俺はスタブシティにファミリーを築きたいんだよ。ファミリーを。」

ペコラ「いーやーだー!!」

…何の話だ?

ルーツ「…何言ってんだ?」

ジョー「ルーツ。お前…ペコラのこと頼むわ。」

は???なにいってんだこいつ。正気か??
いや、出会った頃から正気じゃなかったか。

ジョー「で俺が解散だろうがどうなろうが。ペコラの事を支えてやってくれ。ってことでこあよ。」

あぁ。もう一々突っ込むのも疲れちまった。最後の最後で大ボケをカマしてくれたな。ジョー。

ルーツ「わかった。」
これはギャング加入への返事だ。

ペコラ「えぇ!?」
ペコラは案の定勘違いしてるが、違うぞ。ペコラ。そんなに俺と付き合いたいのか。仕方ねぇやつだな。

ルーツ「いやいや、ペコラを頼むは記憶のない俺には荷が重い。こんな狂犬を俺が相手できるわけが無い。」

ジョー「いや、今日明日じゃない。別に恋人として頼むって事じゃなくて。1人の人間として。」

なんだよ。ファミリーとかいうから完全にそういうことだと俺も勘違いしちまったじゃねぇか。なんだよそのエ〇漫画みたいな展開って思って断ったのに。
あ、別に読んだことないよ。うん。

ルーツ「なんだ。じゃあいいよ。親友だと思ってるからな。」

ペコラ「私は思ってない。」

ジョー「それを覆す。アイツにガキを産ませ…」

一同「「「いや何言ってんだよ!!!」」」

結局それかよ。舐めんな。子供なんか…。

ーーーーー
以下存在しない未来

ペコラ「お、ルーツ。おかえり!」

息子「おかえり、父さん!」

娘「おかえり!パパ!」

ルーツ「…ただいま。」

ペコラ「えー。もー。チビ共だけじゃなくて私もぎゅってして〜!」

ルーツ「おえ…」
ーーーーー

ダメだ。想像したくない。無理無理。

※

その後、俺は本署へ戻り。正式に解雇してもらおうと思ったのだが…誰もいなかった。

仕方なく俺は零那さんへ電話をかける。

ルーツ「零那さん。今お時間ありますか?」

レナ「…要件は。」

大方察しているのだろうな。

ルーツ「____警察を辞めます。」

レナ「ほぉ…。」

きっとこれから来る罵詈雑言に俺のガラスのハートは粉々にされるだろうな。

レナ「あれだけ啖呵を切っておいて。結局黄色行きか?情けねぇ。…まぁせいぜいしょうもない人生歩むといいよ。」

好きに言えよ。俺もこれからそうするんだ。
なんと驚いたことに俺のメンタルは耐えた。
想定外に自分のことを俯瞰して見られている。

しかしまぁ。ならついでと言っては何だし。こんなことを言って何か変わる訳でもないだろうが。俺は伝えないより伝える主義だからな。一応言っておこう。

ルーツ「零那さん。竜胆のこと、頼みます。」

レナ「無責任だねぇ。」

ルーツ「無責任かも知んないっすね。」

レナ「そうかも知んないじゃねぇ、無責任だろ。なんだテメェ。」

零那さんの怒りはよくわかる。
竜胆のことは本来、俺が見るべきだった。俺が守るべきだった。しかし、俺はもうそれが出来ない。
だから、それを零那さんに伝えることは全く効力を持たないことも。期待できないことも知ってるさ。

知ってても、俺は言う。
大切に思ってるからな。
誰が俺の行動を否定しようが。
それは変わらない。

ルーツ「まぁ…零那さんが聞いてくれるかどうかなんて期待してないです。」

レナ「だろうねぇ。」

ルーツ「ただ。本当に俺のことを零那さんがどう思ってるかわかんないですけど。世話になりましたとだけ。」

レナ「何故警察に来た?」

何故って。それは面接にもいたあなたがよく知ってるじゃないですか。俺は…

ルーツ「力が欲しかったからです。力を持って大事な人達を守りたいと思ったから。」

無力な自分を。変えたかった。
救急隊が脅えて暮らさなくていいようにしたかった。なんでも思い通りになると思って横暴なことを仕出かすやつを…俺が処理したかったからだ。

レナ「で?結果は?」

ルーツ「結果的に守れたかどうかはわかんないです。でも…」

レナ「お前守る気ねぇだろ。」

ルーツ「ありますよ。ありましたよ。ずっと。」

レナ「自分の過去を知ったらそれでおさらばってか?舐めんなよ。」

零那さんだって。あれだけ警察辞めるってことでいいんだなって脅した癖に。今更俺に何を求めてるんだよ。今更…。全部今更じゃねぇか。

ルーツ「過去を知っておさらばって訳じゃ…」

レナ「周りから見たらそう見えんだよ。」

ルーツ「周りって零那さんだけじゃないですか。零那さんが言ってる周りって誰のこと言ってるんですか?」

レナ「警察全体だよ。」

ルーツ「…事実を知ってるのは零那さんだけですよ。」

レナ「俺が話したらイチコロだろうね。周りのこと考えずに自分勝手に行動するそういう奴俺大っ嫌いなんだよ。」

堂々巡り。これ以上話してもか。
もういいぜ。十分メンタルには響いたよ。

レナ「自分勝手だね。最後に殺してやるよ。夜道に気をつけろ。ペコラにも言っとけ。お前らのギャングクソしょうもねぇなっていっとけ。」

ここで追い討ち掛けてくる。っぱ零那さんだな。

ルーツ「…わかりました。」

レナ「お前を見つけ次第殺す。」

電話は切れた。

…。

※

その後のことはあまり覚えていない。
唯一覚えているのは何かを鎮火しに来た消防隊。そして全身に浴びたとてつもない水圧。
炎炎ノレンジャーという単語と。
森羅瑠津下部という謎の名前だけだ。

※

その後はあれよあれよとギャングになった。
正直脳は追いつかないが、間違ったことをしたという考えはない。

ただ…これからは犯罪者として生きる。その覚悟が上手くできなかった俺は偽名を…俺の今の思考とは何か乖離する思考の名前を付けた。

俺はそれを「サビ」と呼んだ。

由来は俺が
roots。始まりや根源を意味するのに対して。
last。終わりを意味する単語から派生し、読みのラストからとってRust。意味は錆だ。

それから色々と教えてもらった。
メンバーの名前も。

いい機会だから簡単に説明しよう。
まずボスのジョー。部下のペコラ。こいつらは説明は要らないな。

次にラッキーガール。普段は飲食店で働いているらしい。よく鼻歌を歌う呑気なやつだ。

そして彼女がよく一緒に動いているハイゼンベルク信雄。警察の頃撃ち殺さずに大型で逮捕した男だ。俺の好きなドラマに出てくる主演に似てて笑っちまう。

そしてファスト。サンメカで働いている女で、ツッコミ担当らしいが何故かメンバーから「出刃包丁」と呼ばれている。理由は知らないしどうでもいい。

こんな感じの構成らしい。
そして謎にみんなでアジトで寝るんだと。
家族…みたいだな。

俺はいいって断ったんだがな。空かしてないで来いって言われて渋々同じ床についた。

…寝ようと思ったが今日の激動から直ぐに安眠なんてできる訳もなく。俺はぐるぐると内省を始めるのだった。

Day26


+ Arcana
「Arcana」


結局、俺が眠りについたのは朝方だった。
が、その眠りも浅く。俺はベッドから起き上がった。おれが起きるより少し早くペコラは起きていた。

こいつもよっぽど寝付けない体質なのだろう。

ルーツ『おはよ。』

挨拶を済ませて、外出する。
特に何をする訳でもないが、俺が警察を辞めてギャングに加入したという事実をまだ俺自身が受け入れられなかったから。今は何かしていないと頭がずっと考えを巡らせてしまう。

ハナメカでペコラと車のカスタムについて話をしたが、まぁ俺にはそんな大金がない。
ギャング資金からどうとかって話も出たが。
借金しろなんてのはごめんだ。

ペコラ「まぁ、お前が捕まらないならいいけど。」

それか自分の車ではなくギャングには共用で使える車両があるらしいのでそれを使ってもいいとの事だった。

それからしばらくして、ペコラは俺に薬物の売り方を教えてくれたり、ATMの抜き方を教えてくれたりした。

全て、俺の嫌ってた犯罪だった。

けどこれから生きる為にはこういう悪行を俺もやらなければいけない。俺も見ず知らずの他人の金を奪って、誰かを傷つけて、生きるしかないのだ。

その事実に、ルーツという俺の人格は耐えられそうになかったが、よく考えてみれば過去に俺は今やっていることよりもずっと悪いことをしていたのだからと言う謎の言い訳をした。

とは言っても、記憶のある今の俺はこんな事にすら罪悪感を感じて生きるしかない。

だから俺は錆に肩代わりしてもらうことにした。

俺がこれからやる悪行も。殺しも。悪いことは全て俺がやることでは無い。
錆がやることだ。

そんな子供のようなワガママしか言える気力がなかったが。俺とは対照的にサビは今まで見たことのなかった世界をどこかで楽しんでいるようだった。

その後しばらくしてジョーも目を覚ました。
続々とメンバーが起きてきたので大きな稼ぎを得ようということになり、俺たちはボブキャットを襲うことにした。

他の人たちが固定の位置に着く中、俺は周囲を見回って戦うラークという立ち回りをしろと命令を受けた。

サビ「了解。」

しかしまぁ、警察の動きは俺が思ったよりも。俺が見てきたよりも洗練されていた。
警察車両が2台、ボブキャットよりも少し離れた位置にいる俺のところまで走ってきたのだ。
恐らくサーマルヘリに誘導されたか、それとも遠方から徒歩で進める為に来たのか。

撃たずにこいつらの裏に回ることも考えたが、俺はそれで撮り逃してボブキャットへ行く人員が増えてしまうことを懸念し俺に引きつけるために発砲した。

そして、警察車両は路地裏へ隠れた。
俺もその後をのこのこと追ったのが運の尽きだった。

過度に隠れていたルビー先輩…いや。ルビーにダウンさせられてしまった。

サビ「くっそ…」

ルビー「あれぇ?お前見ない顔だね??」

俺は牢屋まで運ばれ指紋を取られた。

ルビー「ふぅん?フリューゲル…」

サビ「…うるせぇ。」

そのうちみんな知るだろう。
俺が悪人になったこと。俺が悪人であったこと。それはきっと俺を嫌う理由になるだろうけど。別にどうでもいい。

ルビー「えー、でもそのうちみんな知ることになるよ?」

サビ「そうだけど。」

警察にバレるのはいいが。救急隊には…バレたくないと思った。俺のこの秘密を。

俺は刑務所へ送られ、刑務作業を終えて出る。

アジトへ戻り、何もすることが無くなった俺はアジトの裏で釣りをした。

ペコラ「サビ〜?」

サビ「なに?」

ペコラ「どっか行く時は声掛けてって言ったじゃん。」

なんで俺が一々やることなすこといわなきゃ行けねぇんだよ。
俺は別にペコラとジョーの下に着いたわけではない。
いつSEVENTHを抜けることになってもいい。

俺はただ、ジョーとペコラに恩を返したくてここに来ただけで。俺がそうしたいと思って来ただけだから。俺も行く場所が特になかった訳だし。
そしてそれはもう叶っている。

だから俺はこいつらの命令を聞く義理はもうないのだ。

…てか。よく考えたら俺ばかり人に恩がどうとか。言ってんな。
なんかそれすらもどうでもよく思えてきた。

俺はせっかく意を決して悪人になったんだから。俺の大切なものを諦めてここに来たんだから。もっと俺がやりたいと思うことを。俺が思うようにやるべきだ。

そうだよな?サビ。


Day27


+ Inherited dy the Soul
「Inherited dy the Soul」


起床して無線に入るとどうもジョーとペコラが追われているらしい。
恐らくは薬物の販売中にバカな市民が警察に通報したんだろう。

サビ「すぐ向かう。」

俺は車を走らせてポイントへ向かう。
けれど、もう既に2人とも捕まっているらしい。

サビ「おい、何やってんだよ」

俺が警察車両に向かって話すと警察車両からはペコラの声。恐らくジョー担がれているだろう。

ペコラ「サビ!!」

俺は警察車両を追いかけ回す。
しかしまぁ、速度的には追ってもらった方が都合がいいか。

警察車両は通常の車両より性能がいい。
砂漠でもそれは変わらない。
俺自身砂漠でのチェイスに自信が無い。

俺は追われる形に切り替えられるように警察車両へとアタックを決めて煽る。車両を運転しているのは恐らく零那さんだろう。

煽れば来る。この人なら。

俺はそのまま煽ると狙い通り零那さんは俺の後ろを着いてきた。

途中北署に入られそうになって焦ったが、むしろその際に何故かジョーを落としたようだ。

警察の応援でも来てしまえば面倒なことになるが…しかし今は目の前で捕まっているペコラを助ける方が先決か。

俺はそのまま加速させ、追わせる。
あとは相手のミスを誘うだけだ。

その時は案外早くに訪れた。

奴の車は砂漠の段差で横転し、そのまま起き上がらなくなる。
俺も直ぐに停車し、銃を構える。

レナ「やばい、俺死ぬわ。」

…やはり零那さんか。
引くしかないか。
急所を外しながら弾を打ち込む。

しかし零那さん…いや、零那も必死に抵抗しようと銃を取り出して構える。

しかし圧倒的優位に立っていた俺は撃ち勝った。
それでももう少し躊躇う時間が長ければどうしようも無かったが。

ペコラ「ナイス!」

俺はペコラを担いで茂みへと車を走らせる。
一先ずは大丈夫だろう。
そのままジョーを探しに行くが、見当たらずアジトへ戻ると救急隊に蘇生されたようだった。

しかしそこにはウータもいた。

ウータ「うちの署長やったんはお前か?」

…署長?
いや、零那さんは副署長だ。

ウータ「間違えた。副署長やったのはお前か?」

こいつ…

サビ「知らねぇな。てかお前どうとも思ってねぇだろ。」

ウータ「んなわけないだろ。」

どうやらウータは零那からの命令でここに来たらしい。が、バカか?のこのことアジトに来るなんて。

ウータ「酷いよなぁ…アジトにあたし一人で向かわせるとかw」

サビ「あいつは人のこと駒としか見てねぇんだよ。」

ウータ「まぁだいたいそやろな。組織って。」

サビ「ふぅん…」

まぁ組織なんてのはそうだろうな。
わかるよ。俺も警察に居たんだから。
けど、そんな組織は早々に解体されるべきだし。継続しているのが不思議なのだ。

俺が今まで味わった別れも。そんな冷徹さが産んだのだろうかと思うと反吐が出る。

まぁ、済んだことはもうどうでもいいんだが。

ウータ「たぶんこのボスも、君のこと駒としか思ってへんよ。」

ジョー「そんなことないね。俺は人情溢れるボスだから。」

…別に俺はもう他人にそんなことを期待してないから嘘をつくのも期待させるようなことを言うのもやめな。
俺はもうそんなことはどうでもいい。

その後零那が来たり、ラッキーガールが起きてきたり、紆余曲折はあったものの何とか場は収まった。

※

俺はその後アイク・ポルスカさんと会った。

ルーツ「じゃあマスター、いつもの。」

ポルスカ「3点セットかい?」

ルーツ「あぁ、頼む。」

俺は例の如くいつもの商品を買う。
だが、まぁ今日はこの件で来たのではない。

ポルスカさんは壁を破壊するという目標を持った組織で活動している。
そして壁の破壊は俺も願っていることだ。

目が覚めてからのこと全て。
この壁のせいだと思っているからだ。

俺が記憶を無くしたのも。記憶を無くす前の俺が犯罪者だったのも。全て、この壁の…。

であれば俺の願いはこの店の悲願とマッチしていると思う。だからここで働いて、組織として動けた方があの馬鹿みたいな壁を破壊することも出来るだろう。

しかしオーナーが不在ということで一旦は保留となった。

ポルスカ「家は一応あるんだろ?」

ポルスカさんは俺が今SEVENTHに入っていることを知らない。というか住民の大半は俺がSEVENTHに入ったことを知らないだろう。

ルーツ「まぁな。魚釣ってその日暮らしって感じだな。」

ポルスカ「しょうがないなぁ…」

ルーツ「なんだよ。」

ポルスカさんはおもむろに携帯を開いて俺に送金してきやがった。

ポルスカ「当面の生活費にしな。」

ルーツ「いやいや、受け取れねぇよ。」

ポルスカ「出したもん引っ込ませんなよ。」

ポルスカさん。いい人だな。ここは甘えておくべきか。彼を立てるためにも。

ルーツ「そうか、じゃあ貰ってく。じゃあな。」

俺は少し酷い言い回しでその場を去ろうとするがポルスカさんはそれでも笑ってくれた。

ルーツ、ポルスカ「www」

※

ルーツ「変装してさ、壁に対しての関心高めるのはどうだ?」

俺とポルスカさんはその後壁を破壊するために必要なことについて話し合っていた。

まずは住民の関心だろう。
昔はどうだったかわからないが、今の住民にとって見れば壁というのはもうあるのが当然の存在となっている。

だから関心を高めることはマストだろう。

ということで俺とポルスカさんは変装してレンジとイケタとして活動することに。

そしてノア・ブライスさんと会い俺達はお試しで作戦を開始する。

ポルスカ「ノアどこいる〜?」

どうやらノアさんは服屋にいるようだ。
そしてそこで俺が警察を辞めたという話をSEVENTHのメンバーから聞いたらしい。

あまり俺のことを公にするのはやめて欲しいが、まぁいずれバレるだろうからいいか。

救急隊にバレでもしたら…

いや。バレたとしてももう俺のやるべきことは決まってるんだ。関係ない。

服屋に着くとそこにはペコラ、ファスト、ノア・ブライスの3人がいた。

レンジ「悪いな!服着替えてる最中に!ちょっとアンケートいいか?」

イケタ「イケェッ!」

ポルスカさんが役に入り切っている。なんというか…凄まじいな。あまり見たくなかったかもしれない。

いやしかし、そのくらい彼は壁を壊すためになら何だってするという意思表示なのだろう。
ならば、俺もしっかりとやるべきだ。

レンジ「まずは1つ目、交友関係は広い方ですか!」

キヤマ「…狭い。」

レンジ「じゃあ赤髪のねーちゃんは狭いんだな!」

キヤマ「中々…友達ができない…。」

イケタ「イケェッ!!」

レンジ「www」

あかん、無理w

ノア「あぁ、中間。」

レンジ「中間か…。」

ノア「うざいな、イケタ。」

見ればイケタはずっと着替えているノアさんの前に立って邪魔をしている。

レンジ「んじゃあ赤髪のねーちゃんさぁ。給料ってどんくらいでてる?」

キヤマ「給料どんくらい…?見てないから…」

レンジ「働いてないの?」

キヤマ「働いてるけど、なんぼ貰ってるかわかんないや。」

レンジ「じゃあ計算するから銀行に入ってるお金とこの街で過ごした日数教えてくれ。」

キヤマ「4000万…と40日…けどもっといる…」

なんか。この人話し方がぎこちないな。
陰キャってやつか。あまり人と話すのが得意そうではないな。

レンジ「じゃあざっくり45日にしとくな。」

俺は携帯の電卓に打ち込み、計算する。
1日約88万程度。

イケタ「稼いでますねぇ!」

喋るんかい。というツッコミはどこからも聞こえてこなかった。

レンジ「あぁ、結構稼いでるな。わかった。」

これまでの質問は全てどうでもいい質問だ。そして、これが俺達の本来の目標。

レンジ「じゃあ最後の質問だ。この街にある「壁」についてどう思ってる?」

キヤマ「壁…なんか…僕方向音痴だから南に用事ある時に鬱陶しい…」

ペコラ「煩わしい。」

レンジ「鬱陶しい!煩わしい!」

俺の欲しかった回答が、やはり、北では貰える。まぁ悪魔でこれはテストだからな。なんの指標にもなんないが。

レンジ「お前ら…100点だ…。」

※

俺達が店へ戻るとそこにはジョーがいた。

レンジ「初めまして。」

ジョー「…ヘーンソウの悪魔レンジ。まぁまぁまぁ。」

イケタ「イケェッ!」

ジョー「…こいつ解像度低いな。」

言うな…w俺も思ってたけど、何とは言わないが寄せすぎは良くないだろう…w

その後、例の如くアンケート形式で質問をする。ジョーはこの街の生まれらしい。そういえば俺はこいつの組織に属してはいるが、まぁ意思の確認もできて一石二鳥だな。

レンジ「あの壁を壊したいと思ったことはあるか?」

ジョー「壊したいと思ったことはないかな…。」

レンジ「なんで?」

ジョー「北の街が好きなんだよ。俺は。だからむしろもっと強固な壁になって欲しいと思ってるね。」

…まぁそういう見え方もあるか。

壁ってのは元々は守るためにあるものだからな。その点で言うと筋は通っている。

が。俺とこいつは今相対したってわけだ。

レンジ「じゃあ最後の質問だ。俺とイケタを見てどう思った?」

ジョー「…解像度低い。」

レンジ「…w」

俺とイケタは無言でバイクに乗り、そのままその場を後にした。

まぁこのやり方で行けば、南の連中にも話を聞けるだろうとは思う。そうやってまずは関心を高めていくべきだろうな。

その過程で、被害者は最小限に抑え。
俺はこの街の壁を破壊する。

そしたら俺のような死に損ないも晴れて自由だ。

※

その後、着替え直してBUCKSに戻ると客と店員が沢山いた。
どうやらみんな腹がすいていると言うよりは遊びに来たらしい。
その後はワイワイガヤガヤとしている店内で俺も1人で思案に耽ったり、何故かバンドメンバーに加えられたり、まぁ悪くない時間だった。

リノ「あんた、警察やめてSEVENTH入ったんでしょ?」

リノさんはどうやら零那さんといろいろと話をしているらしく、俺の情報は筒抜けだった。

ルーツ「まぁ…入ったってない。」

謎の曖昧な回答を繰り出しつつ何とか交わせないかと試みる。

リノ「お姉ちゃんは知ってます。」

残念ながら無理だった。

ルーツ「はい…。」

リノ「弟が凹んでました。」

凹んでた??なんで零那さんが。凹む訳ないだろ。

リノ「いや、凹んでたは言い過ぎた。」

ルーツ「ですよね?零那さんは別に俺のことなんとも思ってないですよ。」

リノ「でも何ともなかったらたぶん私にも言わないよ。」

…そうか?まぁ零那さんのことを1番分かってるのは姉であるリノさんか。

ルーツ「まぁ…。」

リノ「まぁただ。君には君の人生があると思うから、いいと思うよ。」

ルーツ「…はい。」

リノ「ただ。あの子はあの子で警察に戻れとは言わないし敵対組織だからあの子に情を残せなんて言わない。けど、前にもちらっと言ったけど。君のことを凄く可愛がって目を掛けてたっていうことは覚えておいて?」

ルーツ「まぁ、それは俺も感じてましたよ。」

あの人は感情表現が下手なだけで。面倒なやり方でしかそれを表現できない人だというのはわかる。それに、俺が世話になったのは事実で。別に恩義が失われたわけでもない。ただし。俺の大事なヤツの命を奪おうとしたのも事実だ。

リノ「だからまぁ、別組織だとしてもルーツのことを思ってたってことは覚えてて。」

ルーツ「わかりました。」

リノ「人が黒落ちする時っていろいろ考えての末のことだと思ってるから。ルーツくんが周りに誰も居なくて1人だって思うこともあるかもしれないけどさ。けど、ルーツのことを心から大切に思ってくれてたやつも至って思えるのはこれからの人生できっと大切なことになると思うから。」

…俺のことを思ってくれている人がいた。それはわかってるよ。リノさん。
でも、今の俺には今の俺であるためにやるべき事がある。

壁の破壊。

今はこれ一点のみだ。
誰が俺に何を思おうと。俺が誰に何を思おうと。

____そんなことはどうだっていいんだよ。

俺はリノさんとの会話もそこそこに、その場を後にした。


※

まぁ今俺がやるべきことは決まっているが。
順序は大切だろうな。俺はまだ犯罪者としては浅い。だからここで学ぶ必要があるし。

壁を破壊するってなってもやはり金は必要不可欠だろう。車両も。腕前も。全て持たなければあの壁を破壊することが出来ないまま俺の人生は終わる。

だから俺は犯罪をすることにした。
どうもタブレットから受注するらしいが、これが恐らくマフィアから仕事を受けているってことか。マフィアの存在も噂には聞いているが見たことがないな。

俺が犯罪を行うために準備をしているとファストが俺に気付かなかったようで驚いていた。

ファスト「ビックリした。おはよ。」

サビ「あぁ、おはよ。」

ファストは木山 優と同一人物だ。
そして俺の過去についての噂を知っていた人物でもある。

サビ「一々変装する度に髪の色染めんだね。」

木山は元々は俺と同じ髪色の綺麗な赤色だ。
けれどファストは黄色い髪だ。変装の度に髪色を染めているのは大変だろう。

ファスト「ウィッグだよ。」

サビ「あぁ。」

随分リアルだったもんで染めていると思ったがウィッグだったか。

ファスト「慣れた?」

サビ「ん?」

ファスト「SEVENTH」

サビ「わからね。」

ファスト「いいんじゃね?変な組織だし。」

そう言ってファストは外へ。
…なんだろうな。俺は別にこの組織に情なんて湧いていない。というか。の日からどうしてか全てがどうでもよくなった。

俺の過去も。他人も。自分も。
今まで大切に思っていた何もかもがどうでもいい。というか、本当は大切なものじゃなかったのかもしれないと思っている。

ただ壁を壊す事だけが俺の生まれた意味だと思っているし。その為に生きねばならないからしかなくこの道に来た。
ペコラとジョーについても。もう恩義は十分返したと思っている。ペコラは命を落とさなかったし、SEVENTHもなんやかんや継続している。

別に俺のおかげだ。なんて思ってもないが、少なからず貢献しているとは思っている。

けれど。なんだろうな。
警察を辞めてからというもの、ここ最近こういう集まり…家族みたいなもんも悪くないなと思えてきた。いつも1人で寝付けなかったのに、誰かが寝ているのを見ると安心してしまう自分がここにいた。

※

俺達はボブキャットという武器と金が手に入る強盗を受注した。今回はナイトリフトという半グレとBACKSも傭兵に加えての作戦だった。

俺はラーク。つまりは周囲を警戒して適切な位置から金持ちを逃がす。そんな感じの役割だ。

が。待ち時間暇だな。
まだ始まらないみたいだし。
つか、あれだな。
警察が来ると、サーマルヘリが厄介だな。

…ん?けどサーマルヘリって人なら反応するよな。

俺は奇策を思いつく。

そして市民へ銃を向ける。

サビ「お前、ついてこいよ。」

ちょっとサーマルを撹乱してやろう。

そして奪った車を並べて壁を作る。
警官は基本的に肉屋の裏へと流れることが多いからそちらへ行きづらいように。

俺は中へ入る部隊の信雄とラッキーガールに声をかける。

サビ「なぁなぁ。サーマルキツイよな?」

二人「キツイ。」

サビ「打開策を思いついたんだよ。」

信雄「なんだ?」

サビ「無の民を大量に配置する。」

二人「あぁ〜。」

いい反応だ。つまりまだ「誰もやったことがない。」ってことだな。

俺はその後も市民に銃を向けて配置する。

サビ「ここに立ってろよ。」

有象無象の命だ。
前の俺ならそんなものにも経緯を払っていただろうが。今の俺にとって見ればもう踏み台にしか見えない。

作戦は実行へと移された。

が、警察より先にこのエリアを支配している九十九が先に現場に現れた。

様子を伺うように周囲を回っている。

そして遅れて警察も到着。
どうやらやはり肉屋の裏への進行が不可能だと判断した警察達はそのまま南下してくる。
サーマルはやはり撹乱できているのだろう、警察の動きがタジタジだ。

肉屋裏に進行した九十九を処理しに俺も向かう。しまったな。漁夫に来る連中のことは考えてなかった。

肉屋裏から進行しようとしている九十九に遠方から銃弾を撃ち込むとその場を離れようとしたがポルスカさんが上手く合わせて処理してくれたようだ。

サビ『ナイス。』

その後も周囲を警戒しながら進んでいると九十九の車両とすれ違った。

九十九「何してんだお前らうちらのテリトリーで!」

俺はわざとバックし叫ぶ。

サビ「悪いな!稼がせてもらってるわ!」

九十九「悪いなじゃねぇよ!!悪気ねぇだろ!!」

サビ「www」

あぁ。いいなぁ。楽しい。
今多分、アドレナリンが分泌されてハイになっているんだろう。こりゃたまんねぇわ。

サビ「もう善悪の判断つかねぇわ!悪ぃな!!」

その後はボブキャットの裏へ歩兵となって進行する。
ここも、警察がよく来る場所だからだ。

が。居たのは九十九の狐だった。

俺は躊躇いなく銃弾を撃ち込みダウンさせる。
悪いな。別に恨みはねぇが、来ちまったもんはやらないとなんでな。

サビ『九十九1人殺った。』

無線『ナイス』

あとは北側の工場地帯か。
ここもよく屋上を取られて肉屋の屋上を狙い撃ちされるからな。
思った通り警察パトカーのサイレン音が大きくなっている。こりゃ近くにいるな。

俺は再び歩兵となって周囲に注意しながら進む。警察車両を降りようとしている人影を見つけて弾を撃ち込んだ。

また1人。致命傷は外しているから救急隊が救えるだろう。

そしてアーマーを着直してもう一度。
知らせを聞いた警官は助けたくてここに来るだろうからな。

俺は周囲を見回る。すると突然銃弾がこちらへ飛んできた。まずいと思ったが逃げるには遮蔽が遠すぎる。

俺は撃たれた方向へ銃口を向ける。そこにはウータがいた。

…くそ。

俺は銃弾を浴びせ、なんとか死なずに耐えた。
ウータは銃弾を受けて倒れ込む。

…すまんな。けど、仕方ない。

※

その後もしばらく奮闘していたが。どうも中で汚職警官がラッキーガールと交渉した結果逃がして貰えたらしく作戦は成功した。

まぁ俺は捕まったがな。別にいい。
____金さえ手に入れば。

※

その後はなんだか知らないが、護送の話にSEVENTHだけ呼ばれてないだとかいう意味のわからない会話があったがそれが原因なのかペコラの機嫌が悪そうだった。

てかこいついつも寝る前機嫌悪いな。
普段あまり絡みもなかったからか、こうやって接してみて気づくことというのもあるな。

めんどくせぇからほっとこ。

というか…どうしたもんかな。

警察署で話をしている際に冗談でまだ解雇されていない警察ジョブに切り替えて本署の鍵を開けたのだが。GPSが消えない。

いや、まぁ正式に解雇してないめいさんが悪い。なんて急に抜けた俺が言える訳もないので…まぁ。とりあえず連絡しておくか。

俺はスマホからウータに電話を掛けた。
安否も若干心配だったからな。

ルーツ「…ってわけだ。」

ウータ「わかった。で、なんで辞めたの?」

…なんでって。んなもん俺の勝手だろう。

ルーツ「いや、それはお前には関係ないだろ。」

ウータ「いや、関係あるだろ。一緒に働いてたのに。」

…そうか。しばらくこいつが起きてこなかったからすっかり忘れていたが。俺と竜胆。そしてウータは同期だった。

ウータ「久しぶりに起きてルーツとまた働けると思ったのにおらんかった!!で、ダウンさせられた!」

やっぱボブキャットにいたあの警官はウータだったか。
…んー。話してなんか意味があるのか?変わんねぇことについて話して、何か得があるのか?

ーーーーー

「まだ…伝えたいことが…」

ーーーーー

ウータ「私の事ダウンさせたん誰やと思って殺意芽生えて証拠とったらルーツやって悲しい気持ちになった。」

ルーツ「いや…もうやるしかねぇんだよ。」

ウータ「なんで辞めたの??警察ずっとやるって言ってたやん。」

…言った。俺もそのつもりだった。それに警官であることに誇りを持って生活を送ってたさ。俺だって。

ウータ「もしかしてお前あれ?記憶取り戻したん?」

ルーツ「取り戻してはないけど、まぁ少し情報を得てな…。」

…話す、か。

ルーツ「わかった。じゃあ話しよう。」

俺は本署へとバイクを走らせて後ろにウータを乗っけて街中の程よいところでの地下駐車場へと走る。

もろもろ事情を説明する。

戦争に参加していたこと。
俺が元々犯罪者だったこと。
俺に良くしてくれた人を零那さんに殺されそうになり、助けたこと。

ウータ「良くしてくれた人って犯罪者?」

ルーツ「そうだよ。」

ウータは犯罪者は警察に殺されて突然だっていうが。犯罪者にもいろいろいる。必要悪だってある。ということをこいつに言っても分かってくれないだろうな。

ルーツ「けど元を辿ればこの街の警察だって、軍で。ちゃんとした警察じゃないしな。汚職だってやってるだろ。俺は知らなかったけど。司法取引?っていうんだっけ?」

ウータ「司法取引は犯罪じゃないから。」

ルーツ「じゃあ犯罪か犯罪じゃないかって誰が決めてんの?」

ウータ「警察。」

ルーム「だろ?だったら警察の都合のいいように作るよな。」

ウータ「独裁国家やからな。」

もうこの時点で俺が過去に思っていた「正義」とウータが今言っている「正義」が言葉から大きく外れていることに気付いてくれればいいが。

ルーツ「だから、警察だから正しいとか。ギャングだから悪だなんて言えないだろ?」

ウータ「じゃあなんでお前警察になったの?」

ルーツ「俺は目が覚めた時なんにも分からなかった。で、救急隊に入ったけど、そこでとある無法者に絡まれて無力だと思った。だから力が欲しかった。」

そうだ。俺は守る為の力が欲しかった。
だから警察になった。

ルーツ「けど、どっちでも良かったんだよな。別に警察でも、犯罪者でも。警察になったのは救急隊の人達を守りやすいかなとか。怖がらせないで済むかなって思ったからで。だから。別にどっちでも良かったんだよ。」

一時は考えたしな。命の価値に糸目をつけずに奪い、守る。そんな役割なのかもしれないと。
だが警察になったことを後悔はしていない。
おかげで俺は記憶の一部を取り戻したし。
情報も自分がどんな人間だったのかも知れたし。だが。今はもう警察に戻るつもりはない。世話になったとは言え、その実警察という組織については俺も前前から疑問を抱いていたからだ。それにもうあんな別れを経験したくない。という気持ちも。少しくらい?あるかもな。

ウータ「で?なに?お世話になった人が犯罪者で。戦争の時に自分も人のこと沢山殺してたの知って。自分が世話になった人のところに行くのが自分の正義やと思ったってこと?」

ルーツ「そう。ってかまぁ正義とか悪とか。どうでもいいな。って思って。」

ウータ「じゃあもういいんやない?」

…はぁ。こいつもこんなか。
警察はいつもそうだ。去るものに対して冷徹で。身内でなくなった途端にこうなる。
だから嫌いなんだよ。

ウータ「まぁウータは一緒に働きたかったけど。」

…。

ウータ「大事な人の所行って。守ったらええんやない?」

ルーツ「いや…俺だって別に警察が大切じゃ無かったなんて訳じゃないよ。竜胆だっているし。ウータだって。先輩たちも後輩も。別に大事じゃない人なんか寧ろ無いけど。」

けれどみんな居なくなっていく。
そして今、俺もウータに同じことをしている。その自覚があるからって。許して欲しいなんて思わない。

ルーツ「でも、俺がどれだけそう思っても。みんなどっか行っちまうし。挙句の果て署長もそんな感じのこと言い始めるし。」

ウータ「らしいね。」

ルーツ「だから別にもう。いいかなって。みんな適当なんだから俺だけ正しさを強要してくるのも違うだろ?」

ウータ「ウータ適当じゃないもん!」

ルーツ「…wちなみにどの辺が?w」

ウータ「適当なやつがいっぱいいてもウータは警察辞めないし、黒に落ちないもん。犯罪に手を染めてる奴を許せないからウータは警察として戦ってるし。ウチはそれブレへんよ。」

あぁ。俺の同期は。同期だったコイツは。良い奴だ。もっと。こいつと沢山話していたら。もっとこいつと一緒にいれば。未来は少し変わったかもしれない。

俺の苦悩も、多少は紛れたかもしれない。

ウータ「警察から黒に落ちる人達には理由はあるかもやけど。ずっと警察を続けるって決めてる私からしたらなんで?とはなるよ。」

…まぁそう思って当然だな。
こいつが警察を続けるというのは揺るぎないんだろうな。俺もかつてはそうだったように。
けれどじゃあその警察を続ける理由はなんだ?

ルーツ「逆にお前はなんで警察になったんだよ。」


ウータ「正義だと思ったから。」

ルーツ「正義…。」

くそどうでもいいな。
今の俺にしてみれば、だが。

ウータ「____あと兄ちゃんを守りたいから。」

…そっちが本音か。こいつも正直に言えば警察や正義なんてのはどうでもいいんだろうな。ただ安泰で安心のできる警官という職に兄と一緒にいることで守れるという確信を持っている。だから警察を辞めることは無い。ってことか。

ウータ「まぁ、血じゃない?ウータも兄ちゃんも警察続けるし。ルーツは元々犯罪者やったから犯罪者になったし。」

ルーツ「そういう運命みたいなもんか?」

ウータ「うん。環境と生きてきたものがルーツを黒にしたんじゃないの?」

ルーツ「…まぁ。そうかもな。」

思えば。犯罪者になるなんてことを数日前の俺が思っていたかと言えば全く思ってなかった訳でもなかった。ただ、運命の導きがおれを犯罪者にしたというのならそれはウータの言っていることが正しいのだろう。

ウータ「ただ。ウチはルーツの事好きやったから。一緒に働きたかったなって。ずっと。」

…好きね。

ウータ「でもルーツが幸せならいいよ。それで。」

俺だって…竜胆もウータのことも。
大切だと思ってるよ。思ってる。けど。俺にはやらなきゃいけないことがある。

俺は気づけば視界がぼやけ始めていた。

この街で目が覚めて、こんな気持ちになったのは。初めてだった。

みんなが去っていくのを見て悔しく思ったり、悲しく思ったこともある。生きていることに罪悪感を覚えて寝られない日もあった。

けど、目の前にいるこいつを抱きしめてガキみたいに泣きたいと思ったのは。今日が最初で、きっと最後だろう。

今すぐにでも、警察に戻って。
みんなに謝って。事情を聞いて貰って。また…みんなと…。

そんな有り得ない未来が脳裏を過ぎる。

ルーツ「…そうか。わかった。」

震えていたと思う。ウータに気づかれないように耐えてはいるが。しかしもうこれ以上はダメだ。これ以上話せば、俺は…おかしくなってしまう。

俺はバイクに跨り、顔を見られないように後部座席を叩く。

ルーツ「よし。乗れよ。」

ウータも何も言わないでバイクへと跨る。

俺はそのままアクセルを捻るとバイクは唸り声を上げながら進み始めた。

ウータ「でもウータはちゃんと話に来てくれて嬉しいよ。」

ルーツ「…うん。まぁ…同期だし。友人だと思ったからな。」

話して。伝えたかったことは伝えた。
肩の荷が降りたとまでは言えなくても、ウータと話せたことは、俺にとって大きなことだった。

ウータ「まぁでもウチも友達やと思ってるから。」

…それはないぜ。ウータ。

ルーツ「いや、甘く見んなよ。加減もするな。」

ウータ「加減はしないよ。」

そして俺はウータを本署へと送り、その場を後にした。

※

ルーツ「友人…か。」

竜胆は、俺のことを知って…どう思うだろうな。

今日俺はウータと話をして、改めて自分のやったことを。今までされて嫌だったことを大切な人にしたのだと実感した。

けれど俺は進まなければいけない。
もう二度と。同じことを繰り返させない為に。
全てを終わらせる為に。あの壁を…

____破壊する為に。


Day28


+ ???
「???」



ー記憶一覧ー

ここはルーツの歩んだ記憶の保管庫です。

現在編
Episode 0 「記憶」
朧げな意識の中、ルーツはただ一つだけ願うことがあった。

Episode 1 「警察」
救急隊をやめ、成すべきことを成す為に。

Episode 2 「体験」
選ぶのは尊厳か、欲望か。

Episode 3 「仁義」
警察副署長「龍司」さんとの別れ。この恩をルーツはどうやって返せばいい?

Episode 4 「訣別」
警察警部「ゆゆ」さんとの別れ。さよならは言わない。

Episode 5 「対話」
救急隊との間に亀裂…?対話にて解決を…

Episode 6 「曖昧」
自身の過去を知ったルーツ。自分の今迄の行動や今の行動に疑念が生じ、曖昧な気持ちが膨らんでいく。

Episode 7 「波乱」
ペコラを「親友」と呼び、認めたルーツ。しかしそんなペコラの所属するギャングは解散の一途を辿ろうとしていた。そして何故かペコラと零那さんが命を掛けた決闘を行うということになり、ルーツの中で複雑な感情が生まれ…

Episode 8 「反立」
迷いを捨て、俺は俺の為に生きる。そう覚悟を決めて誰の為でもなく、自分の為に親友を救いに行くことにした。もう彼に後悔はない。そも今までが間違っていたのだ。彼はこれまでの自分を否定して進むことを決意した。

Episode 9 「友人」
俺はSeventhへ移籍し、この組織を利用する。そう思っていた矢先に戦場で相対した同期。俺は本当にいい同期…いや、友人を持ったな。

Episode 10 「敬意」
警察を辞めたルーツ。署長を辞めためいさん。電話越しに語られる。それぞれの思い。

過去編
Episode -1 「大義」
ただの夢だと思っていたが、、零那さんの報告によりこの夢が事実であったことが明らかになった。

Episode -2 「偏見」
ひまわりさんとアルくんとの会話で思い出した記憶。ルーツは過去に南でいじめにあったことがある。そしてその時に…

ルーツの姿一覧



名称:フリューゲル・レド・ルーツ
ー以下備考ー
  • 記憶を失った男。過去を探すために今生きている。
  • 目覚めた時に来ていた服は今でも愛用している。

「俺は正しく生きたい。そして恩を返して、過去を取り戻す。その為に生きてるんだ。」

「お前にも、何か理由があるんだろ。」



名称:サビ(Rust)
ー以下備考ー
  • 警察の情報保管庫で見つかった自身の情報により、過去を捨てることを選んだ姿。
  • ペコラの死を受け入れられなかったが故に警察を辞めてからは以前の前向きなルーツの姿は無い。
  • 顔の傷を隠すため砂漠で拾った死骸の頭骨を使っている。
  • 自身をラスト、錆と呼びルーツという名前を隠している。

「もう全部どうでもいい。恩義も、別れも。全てどうでもいい。」

「この壁のせいで。俺の人生は…。」

「楽しく生きようぜ?人生は短い。」

名称:???
ー以下備考ー
  • 原初へ帰る為の翼
  • 全て始まりへと帰結し、運命は繰り返すのだろうか。

「俺がみんなに伝えたいことは…」

後書き的な奴

+ 「シミュグラ2の世界観について」
「シミュグラ2の世界観について」

ちょっとここで、シミュグラ2の世界観について赤羽るーとの視点でお話を。正確な情報ではなく自分のただの空想や解釈なので、気になる方だけお読みください。

まず、この世界はGTAを基盤とするRP鯖です。
GTAは犯罪行為を行いお金を稼ぐという単純ながらも爽快なゲームであり、普段はできないようなことをできてしまうというのが魅力です。
さらにそこにロールプレイ(RP)の要素を盛り込んだものがGTARP鯖です。特に多くのこういったスト鯖ではストリーマーが自分(配信者自身)とは異なるキャラクターとして街へ降り立ち(または住んでいて)それぞれが親交を深めたり、敵対をしながら始まるストーリーを楽しむという物になります。大きくな職で言えば「警察」「救急隊」「ギャング」「メカニック」「飲食」「その他職業」で構成されていることが多いです。



そして更に、この「シミュグラシティ」と呼ばれる街では過去に何らかの事情?、思惑?、差別?から「壁」が立てられ北と南で街が大きくわけられているのが大きな特徴です。

北ではアウトロー(犯罪者)が横行しており、南では経営、産業、などが盛んになっています。

住民たちそれぞれの物語。ふざけたり、真剣になったりとキャラクター達の行動や発言。そして街全体の物語。
様々な価値観や思想、それらが辿り着く行先は。

さぁ、あなたも「観測者」となって物語を存分に楽しんでください!と言った感じです!




+ 「フリューゲル・レド・ルーツの見どころ」
「フリューゲル・レド・ルーツの見どころ」

北の浜辺で目を覚ましたルーツ。素性も記憶も分からなくてさぁ大変。というところから物語が始まります。
住民たちと関わっていく中で、「偏見」や「善悪」や「記憶」など様々な事柄に葛藤をしながらも自分の進むべき道を歩む彼。
そんなルーツの見どころは少しずつ取り戻していく記憶と、記憶を失った彼自身が取る行動にあります。

関わる人、話す人、その日行く場所が少しでも変わっていたら?
そんな些細なことで未来が変わっていく。それはいつ起きるのか、また誰と起こすのか。そういった彼の今後の人生にご期待ください!



+ 「ルーツの過去(特大ネタバレ注意)」
「ルーツの過去」

これから先に記載するのはルーツの記憶を失う前のお話です。本編で描かれる予定の物語になりますのでライブ配信を楽しみたいという方は閲覧注意となります。

ルーツは2000番台の貧しい民家で生まれた普通の男の子でした。
富裕層や南での暮らしを夢見ていました。
しかし、成長したルーツが南へ向かうとそこでは「偏見の目」や「暴力」が横行していました。
彼の夢見た街というのはただの汚い世界だったのです。
それからというもの、ルーツは南の人間を敵対視しており過激な北の集団とも交流をしていました。
そして北の不満が爆発し、北と南の戦争が勃発した年。とある作戦が始まったのです。
全てが始まった「壁」を壊すことで全てを終わらせよう。そう考えた過激派グループに所属したルーツは彼らと共に壁を壊すために設計図を獲得し、壁を破壊しに向かいます。

しかし、その時かつて南で暴力を受けた時に自分を助けた少女がその作戦に巻き込まれてしまいました。

ルーツは作戦の中止を無線で伝えるも、興奮状態の彼らを止める手立てはありませんでした。

そしてルーツは作戦から離脱し、爆発や銃弾の嵐に巻き込まれた少女を救うことを決心します。

無事に少女を安全圏へと送り届けることに成功しますが、戻った頃には自分が先導していた部隊は南の軍により壊滅。ルーツは現場から逃走したとして北の過激派グループに捉えられ、拷問を受けてしまうのでした…。


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シミュグラ2 SOG2 フリューゲル・レド・ルーツ 白市民 警察 記憶喪失
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