Day23
| + | Vague |
「Vague」
今日もペコラと待ち合わせをした。
もし俺に恋人って言うのがいたら、こんな感じなのだろうか。 なんて冗談を心の中で考えると笑っちまう。
…というか、前にも思ったことがあったかもしれないが。
過去の俺にも恋人っていう存在がいたのだろうか。それに家族や。親友なんてものが。
思えば思うほどにやはり俺が過去を知る必要がある。
ルーツ「そういえば。」
俺は昨日見た夢の話をする。
ちゃんと寝起きにメモをとっていたんだ。 まぁ、あくまで夢だから宛になるかはわからないが。
ーーーーー
広い敷地、花火、筒を担いだ俺
焦燥感と吐き気。
ーーーーー
メモを撮っていたが故に、俺は夢についてある程度詳細に語ることができた。
ペコラ「花火…。」
ルーツ「まぁ、俺は見たことないけどな。」
花火、っていう存在も写真も見た事がある。
けどそれをこの目で見たことは無い。 なのに俺の夢には花火を見てた。歪な花火を。嬉しそうに。
綺麗だった。それに達成感も。
そして、微かな悲しさも。 後悔?恨み? いや。感情で説明しようとすると余計に理解できなくなる。
ペコラ「場所とかわかんねぇの?」
ルーツ「んー…広い場所だったな。開けてて。あと…何かが飛んできて、俺はそれを待ってた。そんな感覚だけは覚えてる。けど、まぁ所詮は夢の話だよ。」
手がかりになる。なんてことはない。夢なんてのは所詮こんなものだ。
そんなことよりこのモヤのかかったような声が聞こえる幻聴と変則的な頭痛だ。 俺はこっちの方がより記憶に近しいなにかだと思う。とは言ってもまぁ、それは俺の思うように現れてくれるもんでもねぇし、今は夢の方がまだ会話の材料にもなるか。
んー。いや?てか待てよ?
俺が見たものの中には他にもあったな。 あれは…確か…
突然の電話。さっき俺が零那さんに情報保管庫の内容を聞こうとして掛けたのの折り返しだろう。
レナ「椿ですけど。」
ルーツ「あっ、レナさん。」
俺はすかさずペコラにも聞こえるようにスピーカーにする。ペコラも自分がいることがバレないように静かにしている。
レナ「なんやお前かい。先名乗れや。なんで俺がお前に敬語使わなくちゃいけないんだよ。」
相変わらず酷い言いようだな…。
ルーツ「あぁ、いや。すみません。」
落ち込みそうなメンタルを無視して会話を続ける。
ルーツ「前言ってた情報保管庫の件。今お話してもらうことってできたり…。」
レナ「…お前がまずスピーカーにしてる時点で無理じゃないか?」
…なぜバレた?
いや零那さんだからで説明が付いてしまうのが悔しい。別に出し抜こうとしたわけでも、騙そうとしたわけでもないのだが。
ルーツ「なんでバレてるんですか…」
レナ「俺のこと舐めてんじゃないよ。」
ルーツ「…わかりました。じゃあスピーカーはやめます。」
レナ「やめます。じゃねぇよ。お前にとって大事な話なんだろ。」
ルーツ「いや、まぁ。大事な話…」
レナ「どうせ横にいんのペコラだろ。」
ルーツ「なんでわかるんですか…まぁ、そうですよ。ペコラと話をしてます。」
ペコラ「はぁ??あいつ!!!」
ペコラは自分たちが監視されてると思い周辺を狂乱しながら探し回っているが零那さんの姿は見えない。
恐らく零那さんの推理力と電話口に聞こえる音から全てを把握したんだろう。 なぜなら俺は今日出勤していないし、零那さんはどうやら本署にいるようだ。
ルーツ「まぁ、でも思い出したことがあって。」
あまり俺の行動について詮索されたくないので話題を変えよう。
ルーツ「俺、昔飛行機待ってたんすよ。」
レナ「ほぉ…。」
ルーツ「あと、花火。」
レナ「ふん…。」
ルーツ「えっとなんか、俺が花火を見てるっていう夢なんすけど…」
俺はいったい何が言いたいんだ。
レナ「しょうもない夢だね。」
ルーツ「なんでそんなこというんすか…w」
レナ「なぁ、お前さ。そもそもね、大事な話なら面と向かって話すべきじゃない?」
まぁ、それもそうか。時間をちゃんと作って面と向かって聞く。または書類を渡してもらう方がいいか。
その後、俺とペコラはレナさんと待ち合わせたダムへと向かった。
都度零那さんから連絡が来て「俺待つの嫌いなんだよなぁ?」という催促が来たので俺もなるべく早く向かおうと思ったが忌々しい壁に阻まれてしまい時間を取られてしまった。
レナ「遅ぇぞ。」
ルーツ「どこにいます?」
レナ「テメェの頭上だよ。」
見上げると零那さんはダムに備え付けられた管理室上に立っていた。
ルーツ「あれ、ペコラ見ませんでした?」
ペコラ「いるよ。」
零那さんの後ろからペコラも顔を出した。
なんだよ、居たなら初めから出てこい。 呼ばれるまで隠れてるのアニメの演出みたいだからやめろ。
零那さんとペコラは降りてきて、零那さんは水辺へと歩く。
わざわざなんでそんな危ない場所に立つんだよ。ペコラが押したら終わるぞ。 それで俺の情報がおじゃんとかになったら…
ペコラの方に視線を向けるとSMGを構えていた。
ペコラ「てめぇの目的はなんなんだよ。」
ルーツ「おい、ペコラやめろよ。」
ペコラ「うっせぇ。」
こいつ…。まぁまさか撃たないだろう。なんてのは楽観的すぎるか?いや。それでも俺は信頼している。
レナ「まずペコラ。お前は自分が口にしたことも守れねぇ奴だよ。」
なんの事だ?俺が困惑しているとペコラはなんのことか理解しているようで零那さんをにらみつけながら続ける。
ペコラ「だからどうした。」
レナ「____守られる側じゃなくて守る側になりたかったんじゃねぇのか。」
ペコラ「じゃあお前は守れてんのか?」
いや、何の話だよ。まったくつかめない。ペコラは前に零那さんと交渉をした結果俺の記憶を探るように頼まれていたらしいが。
それが守るとか守られるとかと何の関係があるんだ。
レナ「人にはタイミングってもんがあるんだよ。」
ペコラ「こいつはこんなに必死こいて探してたんだぞ。」
レナ「…情報はそいつの人生を狂わせる。」
ペコラ「何が言いたい。」
レナ「それほどルーツにとっては重要だってことだよ。」
ペコラ「だったらお前がこいつを止めるべきだったな。」
レナ「それは無理な話だ。こいつの原動力はそこにあるからな。」
確かに。俺が今まで生きてきたのは過去を知りたいということと、世話になった人に恩を返したいというこの2つだけだ。零那さんは続ける。
レナ「そしてルーツ。」
ルーツ「…はい。」
レナ「情報を探るために。敵対してるこいつと仲良しごっこか?」
ルーツ「…。」
アンタもだろ。という突っ込みを入れたいが我慢する。 今俺が言っても零那さんの機嫌を損ねるだけだ。
レナ「お前はどっちだ?」
ルーツ「自分は…警察…です。」
レナ「なら何故SEVENTHのペコラと一緒にいる?」
ルーツ「まぁ…犯罪してるときは敵ですし、俺たちが撃つべき相手だと思ってますけど、そうじゃないなら俺はこの街のただの住人だと思ってます。」
レナ「温いね…。で、俺はお前に言ったよねぇ…。過去は捨ててお前に「今を生きろ」と。」
ルーツ「言いましたね。」
レナ「で?お前は今何してる。」
ルーツ「過去を…追ってます。」
レナ「お前に成長しろと、言ったよね。」
ルーツ「…言いました。」
レナ「成長できたんか?何も進んでない。お前の過去はお前の足枷になってる。仕舞いには、犯罪者とお仲間ごっこ。…何してんだ??」
ルーツ「…。」
ソレについてはぐうの音もでない。 いや、しかしひとつ否定できるとすればペコラは俺の友人だ。 ごっこなんかじゃない。
レナ「何も言えねぇか。で、ペコラ。」
ペコラ「なんだ。」
レナ「お前話しに来たんじゃねぇのか。その相手に銃向けんのか。」
ペコラ「お前が怪しいからだよ。」
レナ「怪しいねぇ…。」
ペコラ「当然だろ。」
レナ「ならお前は怪しい俺に弱みを握らせたのか?」
ペコラ「…。」
レナ「言ったよな?俺は。ルーツの情報はルーツ本人ではなく俺に流せと。」
ようやく自分の口でそれを言った。俺のいる前で。
やはり何か狙いがあるのだろう。 それが零那さんの利益の為なのか。他の何かの為なのか、わからないが。
ペコラ「…ボスが言ったんだよ。こいつの情報はこいつに流してやれってな。」
レナ「へぇ…。」
ペコラ「自分の大切な人を守ってくれた人間に。恩を仇で返すつもりはないね。」
おい。ペコラ頼むから俺の汚職について話すなよ。あとが怖いからな。 いや、今の状況も俺は正直チビりそうだが。
ペコラ「お前のことは信じたかったよ。」
レナ「俺は信じてないよ。」
ペコラ「だろうな。」
零那さんは嘘をついている。
彼のことを俺自身が知ったような口で説明するのは良くないと思うが、彼は他人を冷たくあしらう癖はあるがきっとどこかで他人を信頼しているし 皆のことを好きだと思っている。ただ、じゃあなぜ零那さんがこんな他人に冷たく接しているのかはわからないが。
レナ「ルーツ、惜しいねぇ。あと一歩だったのに。」
ルーツ「どういうことですか?」
レナ「信頼されたいんじゃないの?検問所で話したよね。」
ルーツ「そりゃそうです…けど…」
レナ「残念だよ。」
しかしまったく、この人は一々俺の感情を逆撫でしてくる。
ずっと俺はそれにも耐えた。それは別に信頼されたいからではなく、彼もまた俺の中で1人の恩人だったからだ。
ルーツ「零那さんには調べるなって言われましたけど、自分にも出来ることは続けたいと思って。だからといって今を生きてない訳でもないですし、警察業務だって厳かにはしてない…つもりですけど。」
その後も零那さんは水面を見つめている。
まぁ面を被っているので表情はわからないが。
レナ「で?ルーツ。こいつにもお前の過去に関する情報を渡していいと…?」
ルーツ「…はい。俺はペコラのことを信頼しているので。」
レナ「最後にもう一度聞くけど。本当に、いいんだね?」
ルーツ「…はい。」
遂に俺の過去について、知ることができる。
警察の情報保管庫から俺が持ち出せなかった。俺に関する警察の情報が…。 もう迷いは無い。俺はそれを聞いても何も…
レナ「____お前は元犯罪者だ。」
ルーツ「…?」
聞き間違い…だよな。 今俺に…犯罪者って言ったのか?
レナ「まだこの壁が建っていない時のお話だよ。」
ルーツ「…。」
俺が、犯罪者…?
ま、まさかな。どうせその辺の空き家でも間借りしてるのを通報されたとかそういう落ちだろ。
レナ「南の空港はわかるな。」
ルーツ「わかります。」
レナ「大規模な爆発事件があったんだよ。」
ルーツ「爆発…?」
ペコラ「ルーツ…お前それって…もしかして…」
…空港。爆発。
俺の夢で見た光景と…同じ。 じゃあ俺が夢で見たのは花火じゃなくて…爆発…? ダメだ。脳が理解してくれない。 俺が犯罪者で。爆発事件を…。
ルーツ「それって…俺がやった。ってことですか…?」
レナ「…証拠は無い。ただ可能性が高いって話だよ。」
確証はないが、俺がやった可能性が高い。
その爆発にいったい何人が巻き込まれたんだ? 俺が考える時間もなく、零那さんは続ける。
レナ「そして、お前は南と北の戦争に参加していた。ペコラ、お前は知ってるな。」
ペコラ「…何となくな。」
レナ「その結果どっちが勝った?」
ペコラ「みなまで言わせるな、見りゃわかるだろ。」
レナ「そうだね。北は軍によって全滅。ただその戦争後に、ルーツ。お前の死体が無かったんだよ。」
ーーーーー
「てめぇ!!!なんで逃げた!!!」
ルーツ「…。」
「くそ…くそっ!!くそが!!!!」
ーーーーー
ダメだ。また頭痛が…。
レナ「チェインって知ってるか?」
ペコラ「誰だそいつ。」
ルーツ「チェイン…。」
ーーーーー
ルーツ「はぁ?チェイン。お前いつから南の人間の肩を持つようになったんや。」
チェイン「そいつ…もう死んでるぞ。」
ーーーーー
ルーツ「っ…」
レナ「知らねぇのか?」
ルーツ「いや…1度だけ…夢で男が出てきて…俺、そいつにチェインって言っ…てた…」
耳鳴りと頭痛が酷いところを見れば、恐らく零那さんの言ってることは本当なのだろう。脈拍が上がり心音が高なっているのがわかる。
これは、俺の確かな記憶だ。しかし、俺はその事実を簡単には受け入れられない。
ルーツ「ちょっと待ってください…じゃあ…僕は…犯罪者で…戦争にも参加してて…南の事件に関与してて…ってこと…ですか…。」
レナ「その通りだよ。」
ルーツ「沢山人を殺してた…ってことですよね…」
レナ「その通りだねぇ…。」
ルーツ「じゃあ…俺が今までやってきたことって。」
恩を返す?正しいことをしたい?全部。全部無意味だったってことか。俺が生きたせいで大勢が死んだ。大勢が死んで、生きられなかった。 何だったんだよ。俺の、俺の人生は。俺は…。
レナ「その男の証言があるんだよ。ルーツ。お前はね。北で戦犯として扱われた。」
ルーツ「戦犯…」
レナ「壁の建設途中。壁を破壊するための部隊として当時お前が1番活躍してたそうだ。ただ、お前は逃げた。」
ペコラ「ん?どういうことだ。」
レナ「その間にお前の所属していた部隊は壊滅。全員軍人に殺されたんだってよ。」
ーーーーー
「お前のせいだ」
「裏切り者!!」
ーーーーー
ルーツ「じゃああれ…夢じゃなかったんだ…。現実…だったんですね…」
レナ「お前…身体に傷があるだろ。」
ルーツ「…あります。」
レナ「そりゃ拷問を受けた跡だ。」
ずっと隠していたが、顔だけではない。
体にも無数に傷跡がある。 抉れている箇所や切り傷。縫われた跡。様々。 けど今までずっと誰かを助けるために生きてきたんじゃないかとか。誰かを生かすために犠牲になったんじゃないかとか。そんな風に思って…たのに…。
レナ「お前はそのまま逃げればいいものを、わざわざ北へ戻り、数年もぶっ通しで。殴られ蹴られ、刺され、撃たれ。鬱憤を晴らすために遊ばれてたんだとよ。」
レナ「死ねないように。死なないように。」
俺が北へ?自分がそういう目に合うとわかっていて?なぜ。
レナ「拷問を行った人間は、チェイン本人ではない。別の人間だ。アイツは言ってたよ。どうせなら死んだ方が楽だったと。よく正気を保っていたと。」
気付けば頬へ涙が零れていた。
視線を上に向けることが出来ない。 手足も震えて、今にも倒れてしまいそうだ。
レナ「北の海で目が覚めたと言ったね。」
ルーツ「…はい。」
レナ「壁の建設が完了し、門があるだろ?そこを開いて南の軍人は北の監査に向かった。けど、アイツらはありとあらゆる証拠を海へ流した。ルーツ。お前も一緒にね。」
ルーツ「拷問の事実を隠す為に…」
レナ「その通り。拷問の道具も。血も。お前自身も。」
ルーツ「そう…なんですね…。それが警察の情報保管庫からでてきた、僕の情報…。」
レナ「情報保管庫ではない。」
ルーツ「どういうことですか…。」
レナ「俺とめいだけが唯一見れる保管庫がある。厳密にされてんだよ。」
ルーツ「じゃあ俺が前に入った…指名手配書のあった部屋は…。」
国際指名手配犯の先導を逮捕するに至ったあの部屋。
あそこに俺の情報もあるのだと思っていたが。俺の思惑は外れていたのだ。
レナ「あそこは誰でも入れるよ。」
ルーツ「そうだったんですね…。」
レナ「なぜ厳密にされていたと思う?」
ルーツ「わかりません…。」
レナ「調査が打ち切りになったからだよ。」
ルーツ「打ち切り…?僕に関する調査がってことですか。」
レナ「そういうことかもしれないねぇ。」
ルーツ「そうですか…。今色々聞いて…夢で見た内容が幾つかあるなと思って。じゃああれは全部…現実で。じゃあ、あの花火って…。」
レナ「さぁ…なんだろうね?」
証拠は無い。南の空港での爆発事件。
けれど、きっと俺だ。俺の夢が正しいのであれば間違いなく。それに…飛行機を狙って…。ってことはそこで戦争にも関係の無い大勢が乗ってて…俺は…その人たちを…。俺が…。
ルーツ「まぁそれが真実なんですよね…。」
レナ「ここからどうするかは…お前次第だよ…。」
ルーツ「…。」
どうするって…。そんなの決まってるじゃないか。こんな。こんなのが俺なら。俺は。
ルーツ「ちょっと…考えさせてください…。」
俺はその場を去ろうとバイクへ跨る。
今はこの場から一刻も早く離れたい。そして…
レナ「おい、ルーツ。」
ルーツ「なん…ですか…。」
レナ「残り1時間で俺に答え持ってこい。」
ルーツ「…わかりました。」
俺は直ぐにアクセルを捻り、その場を後にした。
今すぐに逃げ出してしまいたい。この事実から。この現実から。この世界から。
けれど、死ぬ勇気もない。
零那さんがただ、意地悪してるだけだって。
そう思いたいけど、こんな大事な時にそんなことをするような人じゃない。 てかなんだよ。残り1時間で答えをって。
俺は今すぐにでも死にたい。
死んで何も感じないようになりたい。 この痛みから開放されたい。
そんな思いだけが俺の頭に充満していく。
ーーーーー
ルーツ「気に入らんのなら殺せばいいやろが。」
「…殺すよりもっといい方法があるんだよ。」
ーーーーー
俺は砂漠の湖に来た。
ルーツ「そっか。あれ全部夢じゃないのか。」
思えば、夢で見た内容をもう覚えていないけれど。あの時に感じた痛みも、悲しみも、喜びも、恨みも、全て…俺の記憶だったのかもしれない。
ルーツ「何やってんだよ俺…。正しく行きたいと思って警察になったのに。やってる事変わんねぇじゃん…。じゃあ俺はなんの為に生きてんだよ。」
俺…なんの為に生きればいい…?
死んだ方が…いいか。
ーーーーー
まだ、死にたくない。
俺には伝えなきゃいけないことが。
ーーーーー
頭では死んだ方がいい。って分かってるのに。
俺の心は、多分どこかで救いを求めていた。
メンヘラな奴がたまに病みツイってのをしてるのを見たことがあるが。こんな感じなんだろうな。
「俺はこれからどう生きればいい。」
これで何かが変わる。なんて思ってない。
しかし、これで何かが変わってくれって。思ってる。 俺のことを知ってる奴がいて。全部嘘だって否定してくれるなら、俺はそれを信じたい。 そんな理想は語るだけ、願うだけ、無駄だとしても。今の俺にはこれが必要だった。
俺はそれから歩いてコンビニへ向かった。コンビニへ入店する訳ではなく、コンビニ横のゴミ箱の前に寄りかかって座った。
もう頭が冷静でも、体と感情は俺のことを痛めつけたくてしょうがないようだ。
着信音がなる。ひまわりさんからだ。
ヒマワリ「もちもち〜」
ルーツ「…あぁ。」
ヒマワリ「ルーツくん、おはよう〜。いや、なんかチャーブル見てさ。何があったの?」
ルーツ「いや…俺もよくわかんね…。」
ヒマワリ「今どこにいるの…?」
ルーツ「…。」
この人に居場所を言ったら来るんだろうな。
けど、何を話すことがある…?
ヒマワリ「ルーツくん?」
ルーツ「あぁ、悪い。…砂漠のコンビニ。」
ヒマワリ「…今から行くから待ってな!!」
ひまわりさんはそういうと電話を切った。
その後さらにペコラからも連絡が来た。
ルーツ「はい、もしもし…。」
ペコラ「大丈夫か?」
ルーツ「まぁ大丈夫…なんとか…なんとか…はぁ…」
大丈夫なわけがない。本当なら助けてくれって、今なら何にでも縋りたい。
ペコラ「大丈夫じゃねぇな。」
ルーツ「お前はさ。」
ペコラ「なに?」
ルーツ「お前はさ、自分のやってる事に。犯罪行為に罪悪感感じて死にたいって思ったことあるか?」
ペコラ「んー…そうだねぇ…。まぁ無いことはない。ないことは無いけど、なんだろな。もう今更後戻りできないし。お前にも言ったでしょ?過去は変えられないから今を生きる事しかできないって。私は今信じるべき人を見つけたから。少なくともその人のそばで、私ができることをしたいだけ。死んだって何も…取り返せないよ。」
ルーツ「…。」
ペコラ「ルーツ?」
ルーツ「聞いてるよ。」
ペコラ「お前が死にたいって言うなら殺してやる。」
ルーツ「そうだなぁ…多分今の感情は…死にたいって感情だな。」
ペコラ「わかったよ。いいんだな…?」
ルーツ「もういいのかどうかもわかんねぇ。ってか残り1時間で答えだせってなんの答えだよ。」
ペコラ「…ルーツ。もし今お前が帰る場所がないって思ってんなら。うちに来たっていいんだぞ。」
ルーツ「…また俺に犯罪しろってか。また俺に人を殺せって。」
ペコラ「お前が銃を持ちたくないなら、持たなくていい。お前が犯罪をしたくないなら、しなくていい。」
俺を囲んでなんの得がこいつにあるんだよ。
…いや。違うか。ジョーもペコラも。別に損得だけで物事を考えている訳じゃないんだろう。 龍司さんと同じだ。そこには仁義がある。道理がある。薄っぺらなその辺の輩とは違うものがあって、情がある。
心配、してくれてるんだろうな。
あぁ…死にたいって思ってんのと同時に。
俺、こいつらのこと好きだ。もうダメだな。 思考がぐちゃぐちゃだ。
気が付けば目の前ではひまわりさんが踊り狂っている。
ヒマワリ「たらら〜んっ!!」
ダメだ。笑っちまう。こんな時なのに。
ひまわりさんはすげぇな。
俺は敢えてひまわりさんをシカトしてペコラと会話を続ける。
ルーツ「まぁ、誘ってくれてんのは有難いけど。今俺の選択肢としては死ぬか警察に戻るかだよ。だからありがとうな、ペコラ。」
ペコラ「黙れよ。お前に選択権なんてねぇよ。いい加減認めろよ。…どこにいるんだ。」
ルーツ「…ペコラ今渋滞してるかも。今目の前に…黄色いロングの…」
ヒーローポーズ取ってる女がいるなんて言えねぇ…。
ヒマワリ「ひまわりが来たぞ!!!えっへん!!!」
ペコラ「お前どこにいるんだよ!!!www」
ルーツ「砂漠のコンビニ…w」
ヒマワリ「誰もやってくれないから全部一人でやんなきゃなんだふぅーーーん、寂しいなー!」
俺は流石にシカトし過ぎたと後悔し電話を切る。
ルーツ「すみません…。」
ヒマワリ「おはよー、ルーツくん。ちょっと場所変えない?」
ルーツ「…いや、今からもう一人ギャングのやつ来て話さないとなんで。」
ヒマワリ「いや、ちょっとハエが嫌でさ。」
そういうとゴミ箱の前に座っていた俺をひまわりさんはズルズルと引きずって移動させた。
そこにペコラも合流。ペコラはその状況を見て慌てていたがひまわりさんが説明してなんとか場が収まる。
ペコラ「ほら、行くぞルーツ。」
ヒマワリ「えっ、ひまわりも行っていい?」
ルーツ「…。」
ペコラ「え、でもルーツ。ほら、込み入った話とかあるもんな?」
ルーツ「いや、もう俺なんか…死んだ方が…」
ペコラ「わかった。」
ペコラは恐らく俺を殺そうと車を寄せる。それに勘づいたか天然か、ひまわりさんは車両へと乗り込む。
ペコラ「あ、ならいいわ。」
なにがだよ。いや、俺を殺すために車から降りてくるところだろうが。
あとひまわりさん。あんた危機管理って言葉を覚えてくれ…。
※
ペコラ「そんなに死にたいなら殺してやろうかなって。」
ヒマワリ「ダメ!ダメだよ…!」
ペコラ「でもこいつの望みだよ?」
ヒマワリ「絶対にひまわりが許さない」
ルーツ「…。」
何を言い争ってるんだ。
正直なんか。どうでもいいと言うか。 さっさと殺すならころ…
あ、やべ。
俺はふとずっと何も食べていないことに気がついた。
ルーツ「あ、あの。なんだろうな。えっと、その。あれだ。スナイパーに狙われてる。」
ペコラ「待てお前バカ!飯食え!!」
しかし、俺はひまわりさんに手錠を掛けられているので身動きが取れない。
俺はそのままダウンしてしまった。
ペコラ「あ、こいつやったわ…!」
ひまわりさんは車をおりて手錠を外してくれるが時すでにおすし。ペコラのまるで俺がおもらししたみたいな反応に涙がでる。
ヒマワリ「じゃじゃーん!餓死でーす!めっちゃダサいでーす!」
ルーツ「なんか…俺…惨めだ…」
ヒマワリ「お腹すいてるなら言ってくれないとね!」
ルーツ「そう…そうだな…泣」
ヒマワリ「それで、なにがあったの?」
ルーツ「んー…だから。」
俺は少しだけ伝える。
伝えたところで何がどうなる訳でもないけど。
※
その後救急隊に蘇生され、俺は起き上がることができた。
一通り終わり、車両へと乗り込んだ。
もう抵抗して餓死するのは御免だ。
ペコラ「で?お前どうすんの。」
ルーツ「でも俺さっき餓死して俺思った…死にたくねぇ…」
ペコラ「いやさっきのダウンは関係ねぇから!!」
ルーツ「いやでも、死にたくねぇ…。」
ペコラ「…じゃあ黙ってこいよ。」
ルーツ「いやぁ…。」
ペコラ「るせぇだまれ!」
ヒマワリ「私にはもう今何が何だかわかんないよ!?」
ペコラ「まぁ、こいつが過去の記憶全部取り戻したんだよ。」
ヒマワリ「えっ!?」
ルーツ「まぁ…全部じゃなくて警察保管庫にまぁなんかその色々あったんだよ…。」
ダメだ。ひまわりさんに「俺、犯罪者で昔沢山人殺してました。」って言いたくねぇ…。
どんな顔するんだろ。ひまわりさん。軽蔑されるかな。 いや、けど言うか。 別にもうどう思われようとどうでもいいし。
ルーツ「だから、まぁ。俺昔いっぱい人殺してたんだって…。」
ヒマワリ「そう…なんだ…。」
やはりひまわりさんは俺の言葉に言葉を詰まらせる。
ペコラ「ここまで知っちまったからには私にも責任がある。腹立つんだよ。あの白髪にお前には責任がねぇって言われちまったのがよ。んじゃあ、やってやろうじゃねぇかよ。私は私の責任の取り方でよぉ!だから付いてこい。」
ルーツ「…。」
ヒマワリ「返事ははい!」
待て待て。あんた俺に警察で居てねって言ったよな!?ここで俺がはい=ギャングになるので警察さらば。だが!?わかってねぇな?
※
ヒマワリ「いっぱい人…殺しちゃったんだね。」
ルーツ「そう。壁を作ってた時代に戦争に参加してて。殺しちゃったんだと…。」
俺たち3人は砂漠の湖へ来た。
湖に映る、落ちていく夕日の影が綺麗だ。
ペコラ「今更警察戻ってどうすんだよ。だからうち来いよ。」
ルーツ「いやもう生きてる意味ないです…。」
ペコラ「わかったよ。じゃあ。じゃあな。」
ペコラはいつも通り銃を取り出して銃口を俺の後頭部へ押し当てた。
今撃たれれば、確実に俺は死ぬ。
悔いはないか。俺よ。
いや、悔いしかないよな。ずっと。 なんか、まぁ。なら生きてても死んでても変わんねぇか。
ヒマワリ「ダメ。待って?」
ーーーーー
黄色い髪の少女が俺に手を差し伸べてくる。顔にはモヤがかかったように見えない。多分俺がこの子の顔を見ていないからだろう。
「大丈夫?」
ーーーーー
…こんな時になんでまた。もう思い出さなくていいよ。もういいから。やめてくれよ。
どうせろくな事してない。ろくな記憶じゃねえんだから。もう思い出すなよ。
ペコラ「けどこいつ、死にたいってよ。」
ヒマワリ「けど、私が許可しない。ルーツくんには死んでほしくない。」
死んで欲しくない。か。
俺が昔殺した人たちにもそう思う人達がいただろうに。俺はそれでも自分の信念の為に人を喜んで殺めたんだろう。 それは俺が目を覚ました日に感じたあの感覚が物語っている。
けど、責任逃れな言い方だが。
俺には記憶が無い。
ヒマワリ「まぁ。ルーツ君がどうしたいのかじゃない?」
ルーツ「俺は…正しく生きたい。生きて、恩を返したい。」
しばらくの沈黙のあと、ペコラはかかってきた電話をとった。たぶん、あの速度はボスからだろう。ペコラはそのまま少しその場を離れた。
ヒマワリ「私はそれで十分だと思うけどな。何言われても貫くべきだよ。」
…しかし。俺は正しく生きたいと思っているのだろうか。じゃあ過去の。記憶を失う前の俺はなんで戦争に参加した?無理やり…なんていうことなら俺は自害しているだろうから。なにか理由があったはずなんだよ。
理由があったとして許されるか分からないけど。
ルーツ「みんなのこと守りたいって思う。」
もしも。なんらかの理由で俺が北を守るために立っていたとしたら。
いや、正当化しているだけの世迷言か?
ルーツ「はぁ…。」
なんか。もう疲れたな。
ルーツ「てか零那さんも意地悪だよな。1時間で答えだせ。って。」
普通の社会人でもこんな重苦しい話なら1日は待ってくれるぞ。たぶん。
ヒマワリ「でも、もう決まってるんじゃないの?」
…警察に戻って。また正しく生きる?
正しく生きて、罪を償う?犯罪者や、これから犯罪を起こそうとする人たちを止める?俺が?犯罪者が?
…はは。あー。もう。どうにでもなれよ。
ヒマワリ「逆に言えば。そんな中途半端な気持ちで警察をやって欲しくない。」
ルーツ「けどさ。その情報が本当で俺が人を沢山殺してるとしたらひまわりさんは俺をそれでも信用できる?」
ひまわりさんはしばらく悩んだあと、口を開く。
ひまわり「いろいろ理由があったのかもしれないし。とも思うし。私は今のルーツくんなら信じてもいいかなって思う。私は自分が一緒にいて感じて、思ったことが真実だって思っちゃう。だから、今のルーツくんを信じたいって思う。」
ルーツ「…そうか。」
※
俺は零那さんに電話を掛けた。
もう正直に言えば自分が何をしたいのか分からない。けれどひまわりさんに言われたからという単純な。
そんな単純な理由でしか俺は今動けなかった。
零那さんと待ち合わせをして高級住宅のとある場所へと向かった。
レナ「んで?話っていうのは…?」
ルーツ「結論から言うと。」
…正直もうやめてしまいたい。
過去の事をみんなが知ったら。ひまわりさんのように受け入れてくれるとは限らないからだ。 それに、警察っていうのは。俺のような犯罪者を…悪と判断したものに罰を与える執行官だ。
それでも。
それでも俺はまだ自分が悪では無いと信じていたいし。 もうこれ以上大切なものを失いたくない。 恩は返せなくてもいいし。やはり俺はいつ死んだって構わない。けれど。大切だと思うものを「守って」から死にたい。
ルーツ「____警察を続けたいと思ってます。」
レナ「ふん。」
ルーツ「俺は昔…」
レナ「待て。」
ルーツ「…はい。」
レナ「お前はそれを俺に話したいのか、義務感でやってるのかどっちだ。」
…警察の継続についてか?答えを出せと時間制限まで設けたのはあんただろ。
俺が警察でいて。 ずっと考えていたこの曖昧な感情。 犯人と対峙して、命の危険に晒す度に思ったこの感情。
警察とは本当に正義なのか。
否。正義とは何か。 俺ははっきり言えば、零那さんのその悪に情を向けるなだとか。肩を持つなだとか。そういう一面的な思考と。俺の過去を知っていても尚、俺と向き合っていたその矛盾を。
____どこかで洗脳にすら感じていた。
ルーツ「…話したいです。」
レナ「なら聞こう。」
洗脳についての本を呼んだことがある。
厳しく当たり、都合のいい部分に行き着いたら飴を与える。その繰り返し。それだけで人は簡単に洗脳されるのだそうだ。
今の俺が警察に残りたいと思ったのは
ひまわりさんがそう言ったからで。 零那さんが望んでいるからで。 街の秩序を守る側だからで。
____それは本当に俺の望みなのか?
ルーツ「昔自分が色々やってたのは事実なんでしょうけど。今の自分は、助けてくれた人や世話になった人に、恩を返したいって言う…。」
そんなのは。嘘だ。
本心を言ってしまえ。今ここで。 俺は警察なんかもうやりたくないし、今すぐにでも死んでしまいたい。それが本当の望みだろ。
人の命を奪った。
それだけでもう十分死ぬ為の動機になるだろう。
恩なんかどうでもいい。
正義なんかどうでもいい。 悪人なんかどうでもいい。 人生も、欲望も、金も、友人も、何もかもがどうでもいい。
どうでもいいって言えよ。
なんで言えないんだよ。俺は。
…それからも俺は。ベラベラと御託を並べていた。綺麗なことを。一つ一つ。丁寧に。
ルーツ「…このまま警察を続けてもいいですか。」
レナ「愚問だな。」
空を見つめ、決して俺を見ないで涼しげに零那さんは答えた。
レナ「2つ伝える。」
ルーツ「はい。」
レナ「1つ。俺はお前に今を生きろと言った。過去なんてどうでもいいんだよ。お前がどこで誰を殺してようが、どうでもいい。」
零那さんの嘘を。俺は何度も指摘しなかった。
今回もそうだ。零那さんは本気で過去をどうでもいいなんて思っていない。ただ、過去に主軸を置くことで今を生きるために不都合が出るから「そう思うことにした」だけだ。
レナ「2つ。この話を知っているのは警察内部でも俺とお前だけだ。だから墓場まで持っていけ。わざわざ、めいへ伝えることもない。」
俺からは零那さんの表情は見えない。
いつもの事だが。しかし、恐らく微笑みながらこう言った。
レナ「____お前は一度死んだ身だ。」
ルーツ「…はい。」
転生者じゃあるまいし。俺は今生きている。
死んでなんかいない。俺も言い逃れの為に「記憶がない。」なんてことを言ったが、そんなのは本当に言い逃れでしかない。過去の俺がやって。生きてきたから今の俺がいるんだ。
俺は零那さんの言葉には何も賛同できなかった。
しかし俺の口から出る言葉は全て零那さんが喜ぶような。信頼して貰えるような。無意味で、なんの感情もない音の羅列だった。
※
俺は警察署に戻った。
けれどずっと吐き気と頭痛が止まらない。 それでも今は何も考えくなくて、止まるともう二度と立ち上がれなさそうで、常に現場へ走った。それを繰り返していた。
少しの暇に、俺の携帯が鳴った。
非通知。まぁペコラだろう。
ルーツ「はい、もしもし。」
ペコラ「ん。」
声音が暗い。
まぁ、なにか良くないことがあったのは明らかだろう。
ペコラ「さっき置いてっちゃった。」
そういえば連絡して離れてから帰ってこなかったのを今更ながら思い出した。
ルーツ「あぁ。いいよ。」
そして、この回答も伝えるべきだろう。
まぁギャングっていう組織に誘って俺を救い出そうとしてくれたのだから。
ルーツ「あとさ。いろいろ考えたけど。警察に残ることにした。」
ペコラ「まぁいいんじゃないか。もう私があんたに追われることは無いだろうし…」
ペコラは悲しげな物言いで俺にそう伝えてくる。
あんまりもうもろもろ考えたくないが、友人であるペコラが苦しいなら聞かないという手段を俺は選べない。
ルーツ「それってどういう事だよ。」
ペコラ「そのまんまの意味だよ。」
ルーツ「解散ってことか。」
ペコラ「そうかもね。」
SEVENTHが解散?何故?
いや、まぁ。俺には関係ない。 けれど、その組織には俺に色々と良くしてくれたジョーがいて。ペコラがいる。それなりに流儀を持って北で活動しているギャング。それが解散?
ペコラ「私は認めたくないよ。」
ペコラは泣いていた。内心、こいつも泣くんだな。と思ったし、それくらい自分の組織が好きなんだろうなと思った。 対して俺は?零那さんに対して適当なことを言い、警察という正義の皮を被った何かに隠れているだけで以前のような志をもう持てない。きっと明日警察が解体になっても俺は何も感じないだろう。 恩義に報いようなんて考えも初めの頃に比べれば薄れた。 だってみんな、最後には去っていくのだから。
寧ろ俺はずっと他人を軸にしていたから、こんな思いをしているのかもしれない。だったら初めから自分本位な生き方で。他人を蹴落としてでも生きる生き方を覚悟出来れば。していれば。
命の価値は平等じゃないんだから。
俺が気に入らないやつは全員殺せば。 俺が警察ではなくて、初めから犯罪者として生きていれば。
今頃…過去を知った所で、後悔なんてしてなかっただろう。
もちろん。全てはタラレバだ。
ペコラ「…お前ら警官には関係ないだろ。」
あぁ。そうだよ。ペコラ。
はっきり言えばお前らが解散するなんてのはどうでもいいんだよ。 俺にしてみればもう何かが壊れるのも、失うのも今はどうだっていい。ただ俺はお前らが。ジョーとペコラが俺にしてくれたことは覚えている。
ルーツ「俺はお前らに恩がある。」
またこれだ。始まったよ。何が恩だ。何が返したいだ。
ペコラ「お前らだって、犯罪組織がひとつでもなくなった方が清々するだろ。」
ルーツ「俺は犯罪者を組織として見てないよ。」
ペコラはその後もゴタゴタとなにか言葉を並べていたが。
聞く余裕が無かった。知らねぇよ。お前らのギャングが解散するなんてどうでもいい。
ルーツ「正直に言えばギャングがどうなるとか。犯罪者がどうとか。そんなことはどうでもいい。俺はお前にありがとうって思ってるし。ジョーにもありがとうって思ってる。ただそれだけだよ。ギャングが解散するとかしねぇとかどうでもいいよ、俺は。だから俺はジョーに電話する。」
思えば、この時が初めてだったかもしれない。
本心を。ありのまま思ったことを。相手に配慮もなく言えたのは そうだった。別に俺色々今まで言ってきたけど。やっぱり本当はどうでもいいんだ。正義とか悪とか。恩とか世話とか。そんな言葉は綺麗事だ。
俺はただ、俺がやりたいと思ったことをやって。
守りたいと思ったものを守って。 殺したいと思った奴を…。
我に返る。
まるで犯罪者の思想じゃないか。 ダメだ。やめろ。俺は今警察にいて。恩を受けたのも、世話になったのも、事実だろ。なのになんで俺はそれを全て放棄しようとしている?そんなのは…。
俺は会話を終えてジョーに電話をかける。
ありがとうだけ伝えて、終えよう。せめて今俺の狂った思考で他人にできるのはそれだけだ。
ルーツ「いろいろペコラから聞いたぞ。」
ジョー「あ、そうだお前ラブタイプ16やったか。」
んだこいつ。ペコラとのギャップに腰が抜けそうになる。
けどそういえばジョーはこういうやつだった。
ルーツ「んな事どうでもいいんだよ。俺はお前にありがとうって言いたかったんだよ。」
ジョー「ありがとう…?」
ルーツ「色々あって人なんて信用してもって思ってたけど、そんな俺にお前らは律儀に約束守って俺の過去について調べてくれてたろ。だから、まぁ…また人を信用してみてもいいなって思わせてくれたからさ。」
ジョー「お前来る?うち。」
なんで解散前に人を誘ってんだこいつ。
あぁ、そうか。解散理由は人数問題ってことか。
ルーツ「いや。それはペコラにも言われたけど行かない。」
ジョー「そうかよ。二度と電話かけてくんな!」
電話は切られてしまった。
ギャングってのはそんなにいいもんなのか。 そんなに大切なもんなのか。
…俺には関係ない。
今の俺はそう思う以外にできることは無い。
※
再び本署へ戻ると傭兵会社PLANTのアッシュと見知らぬ男が居た。
ルーツ「どうした…?」
アッシュ「やぁ、偽物くん。ちょっと君たちの上官に用があってね。」
どうやら傭兵会社関連の報告をしに来たらしい。
アッシュ。彼は幼い頃から戦争に繰り出されていたらしい。前にメカニックでいろいろと話を聞いてはいたが、彼も相当なものを削って生きているだろう。
そしてもう1人の男。名前は「キール」
始めてみる顔だと思っていると自ら「切裏」と名乗ってきた。なんだよ、小洒落た名前しやがって。確か酒にそんな名前のがあった気がする。
アッシュ「こら、そんなに簡単に素性をバラすもんじゃないよ。」
聞けばどうやらキールも犯罪者で。
元は軍人だったらしい。 俺は自分の中でこいつらと何か共通点を感じた。そしてふと疑問が湧いて、興味本位で聞いてみた。
ルーツ「なぁ、お前らはさ。人を殺す時にどう思ってる?」
アッシュ「まぁ生きるために仕方ないからね。」
ルーツ「主義主張とかはねぇのか。」
アッシュ「ないね。」
キール「俺は自分の大事なものを守りたいからかな。助ける力が欲しいと思ったし。法だなんだに縛られたくないからな。」
キールの言っていることを俺はとてもよく分かった。分かってしまった。
嫌でも最初の頃に感じたあの気持ちは。
ーーーーー
「許さねぇ。」
ーーーーー
ルーツ「…そうか。まぁ頑張れよ。」
俺はその後すぐに壁の例の場所にやってきていた。俺はおそらくこの場所で。戦争の時代に戦った。
それが何故なのかは今の俺にはわからない。 けれどそれと引き換えに多くの命を奪った。そして俺は今生きている。
ルーツ「何か大切なものを守りたかったのか…」
それとも私欲の為なのか。俺にはわからない。
それなのに。俺は途中で投げ出した。そして俺と共に戦っていたであろう人間もまた死んだ。
ルーツ「…はぁ。」
____なんか。もう疲れたな。
考えるのも。感じるのも。配慮するのも。尽くすのも。頑張るのも。生きるのも。何もかも疲れた。
過去を捨てろって言われても。
そんな簡単に捨てられるのなら、今頃俺は何も気にしないで救急隊として呑気に暮らしていただろう。 けれど、過去を知ったが故に。 もう俺の中では何かが狂い始めていた。
無気力さが。生きる意味の無さが。俺の過去への執着が。俺の中の曖昧な何かが。
俺の中の芯を大きく捻じ曲げていた。
ルーツ「…はぁ。」
|
Day24
| + | Me now |
「Me now」
寝起きで出勤した。
もう何もしないでいると考えだけが巡ってしまうから。
正直に言えば。さっさと警察をやめたい。
そのままどこかで野垂れ死んでも今の俺なら何とも思わない。
責任とか、仕事とか、めんどくせぇし。
全部何もかもが。めんどくさい。
俺は今、いつ死んでも後悔はない。
※
犯罪対応しているとまた非通知がかかってきた。
どうせペコラだ。
ペコラ「お前昨日話したか?」
ジョーに連絡をすると言った話か。
ルーツ「あぁ。」
ペコラ「なんか言ってたか…?」
こいつはまだSEVENTHが解散しない方に賭てるんだろう。
しかし、残念ながら昨日ジョーは俺に「1週間以内に解散しようと思ってる」と言っている。
ルーツ「解散するってことは言ってたな。んでギャングにも誘われたよ。」
ペコラ「大人しくくればいいのに。」
行くわけねぇだろ。
なんで俺がお前らの組織の為に動かなきゃならねぇんだよ。今そっちに行くという選択肢は無い。元犯罪者であることを悔いている俺が犯罪者になるなんてどう言う冗談だよ。
あるのはこのまま奴隷のように意味もなく警察を続けるか。やめてさっさと死ぬかだ。
まぁ、そもそも真っ当な人間なら、警察になる以外の選択肢は思いつかない。
けれど、そういえば俺は一度犯罪者になる道も考えたんだった。
だから、ジョーとペコラの提案も一概に否定できない俺がいた。
それからとペコラは俺をどうしても勧誘したいようで何度もそれらしいことを言ったが。
俺の心は動かない。
今まで通り、何とかその場を凌ぐための綺麗事を語って濁す。
本心は相変わらず「どうでもいい。」だ。
今の俺は、全てどうでもいい。 そう思っている。今まで俺が言っていた全てが綺麗事だ。
しかし、建前はこうしよう。
俺は俺が信頼して裏切った人たちと同じになりたくない。
だから警察を辞める訳には行かない。
竜胆。零那さん。他にも沢山。 大切な人がいるから。って。
…そんなことすらどうでもいいって今は思えるけどな。
これで納得するだろう。
そしてさっさと会話を終わらせてしまおう。
そして俺はこの会話中にクソダサい餓死を決め込んでから話を終えた。
※
ルーツ「はぁ…」
ため息しか出ない。
創作物の見すぎだな。俺は。
俺の過去はもっと明るくて、劇的だと思ってた。
記憶喪失なのも、主人公っぽいななんて少しはステータスに感じてた部分はあった。
けれど現実は違う。正義の為に生きようと思った。恩人の為に生きようと思っていた俺は蓋を開ければ大量殺人を犯した犯罪者。
これからの俺はただ生きて死ぬ。
それだけだ。それが俺の罰だ。
このまま警察を続けて死のう。
せめて一貫性や誠実さだけ示してこの世を去ろう。それが俺に今できる罪滅しだ。
そんなことで頭はいっぱいだった。
なんか。もう全部やだなぁ。
俺が俺であることも。 そうだな。勇気が出なくて死ねないのなら、今俺に出来ることは…。
俺は服屋に行って、顔を隠せるアイテムを探す。
死骸の頭骨があったので顔に宛てがうとピッタリとハマった。 そしてフードを深く被り、これで俺じゃない何かになったフリをした。
名前はそうだな…ラスト。終わりだ。
※
着信音。非通知。
お察しの通りだ。
ペコラ「あのさぁ、インパウンド依頼受けてくんね…w」
ルーツ「わかった。」
また勧誘ならいよいよ執拗いので殺しに行くところだった。危ない。
俺は依頼場所へ向かい、車両をインパウンドする。
ペコラ「お前その服装やめろよw警察の服着てる犯罪者にしか見えねぇよw」
ルーツ「その通りだろ。」
言い得て妙って奴か。こいつのこのイライラする言動にユーモアのある皮肉を言えたのは我ながらいい成長だ。
そのままインパウンド場へペコラを運んでやる。
その場でまだギャングがどうだとか。 旅に出るだとか。言っている。
何度も言うがもう俺には何もかも関係ねぇよ。
…関係ねぇけど。ジョーは。ペコラは。
俺の記憶探しに付き合ってくれたんだよな。
恩?いや。もうそんなもんどうだっていい。だろ?
…わかんね。
ペコラ「あの人に彼女でもいて、支えてやれる人がいたらね。」
ルーツ「お前がなればいいじゃん。」
テキトーなことを言い始めてしまった。 いや、適当か。
ペコラ「なんで?」
ルーツ「お前がジョーと。」
ペコラ「…はぁ?」
ルーツ「いやお前が支えてやればいいじゃん。知らねぇよ。俺はお前らがなんで解散に至ったかとかさ。なんでギャング抜けるとかさ。けど着いてくって言ってるばっかでさ。それが正しいって思ってんのか知らねぇけどお前が支えてやったらいいんじゃねぇの?本当ななくなって欲しくねぇんじゃねぇの?無くなって欲しいって思ってんなら今の行動でいいけど。違うならちゃんと伝えたらいいんじゃねぇの?別に俺はお前らが解散するとか街去るとか俺には関係ねぇけど。それでも世話になったからできるならちゃんと話しろよって思う。」
驚いた。
まだ俺にこんなにベラベラと喋る気力があったとは。 俺はペコラを見ていて思う。 伝えない後悔をずっと選びすぎていると。 その癖、その後悔をずっと嘆いていると。
俺もそうだった。今まで世話になった人達が去る前にもっと感謝を伝えていれば。今の心持ちも少しは晴れていただろうに。
俺は伝えなかった。
恥ずかしいと思ったし、俺からそんなことを伝えたところでって。心のどこかでそう思っていた。だから行動で感謝を伝えようと思って正しくいた。
けれど、それは伝わらないまま。
俺の恩人たちは去っていった。
生きてればどうしようも無いことなんて無数にある。
けど大切に思うなら。やらねぇと。伝えねぇと。なんにもなんねぇよ。
そんな思いを俺はペコラに向かって吐いた。それは俺に向けたものでもある。
こいつならちゃんと受け止めて行動できると思ったからだ。
その後もベラベラと話していたが零那さんの話をした途端突然携帯が鳴った。
『へぇ。』
零那さんが近くで聞いていた。
ルーツ「…いるわ。」
ペコラ「え?」
周囲を確認して零那さんを発見した俺とペコラは零那さんに撃たれた。
…なに?なんで俺まで。
※
レナ『俺の命令をお前は無視した。』
…はぁ。こいつもこいつでめんどくせぇな。
もうどうだっていいっての。 何が命令だ。何が上官だよ。
レナ『俺を裏切ったんだ。警察を辞めるってことでいいんだな。』
へぇ。そうか。
じゃあやめるか。 そんなにあんたは俺を制御したいんなら。 最後に俺はあんたに抗ってやる。
ルーツ『やめません。』
あぁ。何もかもうぜぇな。
俺が警察辞めたとしたら俺は今後食っていける自信が無い。 別に死んでもいいけどその勇気はない。 だから俺は縋るようにその一文を彼に送った。
ペコラとの会話を終え、一時砂漠署へ戻ると零那さんがいた。俺は零那さんを前に土下座してみる。
ルーツ「インパウンド依頼で話してただけです。」
レナ「その前から知ってるよ…?」
ルーツ「その前?」
何の話だ?あぁ、インパウンドの依頼前か。
レナ「いいんだね?」
ルーツ「…。」
レナ「そうかぁ。よくわかった。」
零那さんはそう言って出ていってしまった。
あー。めんどくせぇな。全部。 俺はそしてそういえばみんなが零那さんをメンヘラと呼んでいたことを思い出した。
その通りだな。全く。
※
その後、めいさんがギャングを作ろうとしてるなんてのが流れてきた。
何がどうなってんのかわかんねぇけど。
まぁつまりはこの組織も潮時って事だろ。 上の苦労なんてもの俺は知らないけど、人を導くなら苦悩が合って当然だし。そんな発言を易々とするべきじゃない。 例え、この国の警察が真っ当な警察じゃないとしてもだ。
あーもう。警察やめて、どこかで飲食店でもアルバイトで入ろう。
んで食って、寝て寿命で死のう。
俺はもうこの瞬間くらいから警察という組織には愛想を尽かしていたと思う。
明日にでも辞任しよう。
零那さんもその噂を聞いたのだろう。
無線に入らず事件対応を挑もうとして怒られていた。まぁでもこれに関しては零那さんの気持ちもわかる。 警察のトップがギャングをやろうなんて話は意味がわからない。警察という名前のギャングとして体制強化しよう。とかならわかるが。そうは聞こえなかった。
まぁ。めいさんも初瀬。つまりは同族なのだろう。
なんて冷めたくだらない考えが脳裏に過ぎる。
どこかで違うと信じたかったから。
※
もう驚きもしないが。
またまた俺が辞めるに値する理由が生まれた。
ゆゆさんが実はこの街へ帰国していて。
しかも犯罪者になっていたというのだ。
もう今回に関しては悲しくも何ともなかった。
元気があれば怒りも湧いただろうが。
もう他人に感情を向けるだけ無駄だ。
全部無駄だ。
明日辞任しよう。
こんな組織で出会い別れに一喜一憂すんのも、自分が元犯罪者だと言うのに正義のヒーローのフリを続けるなんて。真っ平御免だ。
いいよ。俺は悪人だし、何も考えねぇ。
周囲の人がそうだったようにな。
俺はその後、犯罪が起きてもほとんど対応に向かわなかった。理由?聞かなくても分かるだろ。
〜♪
着信がなる。
またペコラかと思ってスマホを見ると、着信はひまわりさんからだった。
内容は警察署を友人に紹介して欲しいと。
…まぁめんどうだけど、ひまわりさんのお願いなら聞こう。別にまったくもって彼女に非は無いしな。
この人は俺が死のうとしてんのも、ペコラに殺されそうになってんのも阻止して、過去の俺を知っても、受け入れてくれたんだ。
俺が待っているとひまわりさんと狗嵐 アルという男性が来た。
ヒマワリ「お待たせ〜!」
ルーツ「ん。なんかお前見た事あるな。」
確か数日前に病院ですれ違ったと思う。
アル「こんにちはー!」
ルーツ「はい、こんにちは。」
ヒマワリ「前に来たら警察署人いなくて、ルーツくんに紹介来て貰えたらと思って。」
もうどうせ辞めるから、ふざけてみるか。
ルーツ「それじゃあアルくん。面接しようか。」
アル「えっ…」
ヒマワリ「www」
ルーツ「あ、警察になりたいんじゃねぇの…?なんだよ。仲間が増えると思ったのに。」
まぁ自分は明日辞めますけど。 という皮肉を添えて。
ヒマワリ「警察の人って凄く早いよねw」
ひまわりさん、一応俺には面接する権限なんかないからね。冗談だからね。
ヒマワリ「アルは〜!私の幼なじみです!」
どうやらこの子はヒマワリさんと幼なじみだが、数年海外へ行っていたらしい。
ヒマワリ「あ、えっと。」
ひまわりさんは周囲を確認し他の警官が居ないことを確認すると口を開く。
ヒマワリ「ルーツくんは、私が警官の中で唯一信頼できる人です。」
わざわざ嬉しいことを言ってくれる。 けどなぁ。ごめんな。俺もう辞めるんだ。
ルーツ「で、2人はどういう出会いだったんだ?」
アル「自分今はこんな感じですけど昔「いじめ」られてて。そんな時にこの子が助けてくれたんです。」
ルーツ「虐められてて、助けて貰ったってことか?」
北出身…いじめ…
ーーーーー
この建物は、優位性表す道具。
この街頭は、警告の為の光。
ーーーーー
っ…!?
頭痛が…。
俺の脳内にとある場所の風景が浮かぶ。
いじめというワードが俺の脳内にある光景を映し出したのだ。
ルーツ「悪い…ちょっと頭痛が…見学はまた今度にしてくれるか。」
アルくんの言葉に呼応して脈を打つような痛みが押し寄せてくる。この子も北の出身だったのなら。もしかして俺を知っている?俺が犯罪者だということを。知っているのか?
ルーツ「なぁ、ちなみにお前どっかであったことあるか…?」
アル「いやぁ…無いと…思うけど。」
ルーツ「…そうか。」
俺はそのままその場を後にする。
…これが本物か確認しに行かないと。
※
ルーツ「ここだ…。俺はここで…。」
レギオン公園の端。
この場所で俺は…
あぁ。マジでしょうもねぇ記憶やな。
俺は南に対する怒りを思い出した。
そうだった。俺が憧れてたこの場所は、偏見や暴力が横行してたんだ。だから憧れなんてものは捨てたんだった。
俺が南に住みたくないと思っていた理由は罪悪感だけじゃなくてこれか。
その後俺は北へ向かって走った。
理由?それはペコラがずっと連絡してきてうるさいから。そしてその口を塞ぐためだ。
俺はリノ ラングフォード。リノさんへ連絡を取る。彼女ならきっと協力してくれるはずだ。
連絡をとってみるとやはり乗ってくれた。 俺はペコラとジョーをくっつけて黙らせるためだ。 いつもの場所で待ち合わせ、ペコラを拘束する。
ペコラ「おい!てめぇ!!」
ルーツ「はいはい。ちょっと静かにしろよ。」
リノ「どしたん?」
ルーツ「俺の良き友人である…いや、敢えて言わせてもらいます。俺の親友であるペコラが…ジョーのことを。」
ペコラ「おい!!ばか!!やめろ!!」
どうやら俺が普通なら言わない親友というワードは否定しないようだ。
何故か内心ホッとした。まぁ、別に今更他人がどう思おうが俺が思うことを優先するが。
リノ「知ってるよ。見りゃわかるでしょ。」
流石は零那さんのお姉さん。
話が早い。俺達はその後作戦会議をした。 題して、ペコラとジョーくっつけよう大作戦(ほとんど脅し)
※
…なんか。俺今まで頑張りすぎてたんだろうな。最近入ってきた警官も適当な奴が多いし。
別に、俺が正しさや恩義の為に頑張る必要なんかどこにも無かったんだろうな。
それでも一つだけ。
今日署長が話していた内容。
警察をやめてギャングをやるという話だ。 その後零那さんも食らったようで無線に参加してこなかった。
これは別に、明日退職する俺が気にすることでもない。どうでもいい事だと思うのに。
伝えなきゃと思った。
別に、俺が伝えたところで何がどう変わるとか期待はしないし。どうでもいいが。
伝えない後悔はしたくないからな。
電話をかけ、スマホを耳に当てる。
しばらくの呼出音の後、署長が出た。
ルーツ「もしもし。」
メイ「どうした?」
ルーツ「署長、警察やめてギャングやるみたいな話しました?」
メイ「したね。」
ルーツ「その後から零那さん無線に参加してなかったと思うんですけど。大丈夫ですか?」
メイ「大丈夫ですかって、私と零那の関係がってこと?いや、なんで零那がキレるのかわかんない。」
いや。署長。わかれよ。
メイ「私が零那のこと拾ったんだよ?」
ルーツ「知ってます。」
メイ「私の選択を否定する権利はアイツにはないんだよ。」
…そんなこと本気で思ってるのか? 本気で思ってるなら、やはり警察を辞めるという選択は間違いじゃないな。
ルーツ「…そうかもしんないすけど。まぁメイさんが大丈夫そうなら。」
メイ「まぁギャングになるより警察でいた方がやりようがあるからね。本当にギャングやるなんてのは…ねぇ。」
ルーツ「ま、2人の関係にとやかくは言えませんけど。組織は関係なく、個人個人で見た時に零那さん可哀想だなって。零那さんは周りの人はどうでもいいけど信頼してるめいさん達のことは大切に思ってるんですよ。」
メイ「それは私だってそうだよ。」
ルーツ「零那さんもそんな大切に思ってる人が離れてくのは耐えらんないんですよ。」
そうだよな。零那さんも人間だ。感情もある。 俺も同じだったように。零那さんだって。
メイ「零那は優しすぎるんだよ。」
ーーーーー
レナ「温いねぇ…」
ーーーーー
…お前もだってよ。零那さん。
メイ「この仕事しててさ、大切な人が去ってくなんてのはよくある事なんだよ。だから情を持ちすぎない方がいいんだよ。あいつはなんだかんだ情に厚いから。」
普段から内心は冷たく接さないと、傷ついてしまうというのは俺もそうだったから、何も言い返せないな。けれど、そもそもそんな状況をはいそうですかって無関心になれという方が俺にとっては無理な話だよ。
ルーツ「まぁでも特にめいさんは零那さんにとって特にそうだと思うんで。なんか一言くらい掛けてあげてくださいっていう。部下からのお願いです。それだけです、すみません。」
メイ「わかった。まぁ…またなんかあったら声掛けてきなね。」
…言うべきか。警察を辞めると。
いや、明日決めよう。
まだもしかしたら。なんて期待をまだ俺は捨てきれなかった。
それから俺は電話を切り、バイクを走らせた。
※
非通知。
お決まりの彼女だ。 内容は、やはり告白なんて出来ない、やりたくない。ってことだ。くそ、じゃあこいつの口は誰が塞ぐんだよ。
ペコラ「それに…近々…本当の意味で話さなきゃ行けないこともあるから。」
ルーツ「ボスに?」
ペコラ「ボスだけじゃない。」
ルーツ「ん?というと?」
ペコラ「今回の件だけじゃなくてさ。本気でSEVENTH抜けようかと思ってる。」
何を今更。解散する予定の組織をわざわざ抜けて何がしたいんだ?
ペコラ「お前には言ってなかったけど。昨日零那と話してさ。お前は敵だから首洗って待ってろって言われてさ。」
ルーツ「…。」
本当の意味で殺すということか。
つまり…ジ・エンドだ。
ペコラ「私と零那の喧嘩にSEVENTHを巻き込めねぇしな。」
ルーツ「は?」
こいつ今更何言ってんだ? 俺は警察で、ギャングなんて言うものが何かなんてのは正直よく分からない。 けど同じ志持って生きてる仲間じゃないのか?だったら隠すことないだろ。素直に話してみんなで取り組む。それがギャングじゃねぇのか?
ルーツ「巻き込めよ。」
ペコラ「嫌だよ。」
ルーツ「同じことメンバーが言ったらどう思うんだよお前は。自分だからいいとか舐めたこというなよ。ちょっとは頼れよ。」
あー、もうやめとけよ。俺。
こんなことにもう首を突っ込むな。 そう頭で理解しているはずが言葉は止まらない。
ペコラ「もう決めたんだよ。これで私が負けて死んでも、SEVENTHは関係ない。これは私と椿零那の問題だ。」
ルーツ「じゃあ、お前はお前の大切な育ての親と同じことすんだ。」
煽った。違うと言わせたかった。 俺はこいつが戦って死ぬのを止めたかった。
ペコラ「そうだな。」
しかし、ペコラは強情だった。
ペコラ「もし、SEVENTHがこの街に残るとしたらその威厳くらい残してやりたいだろ。」
これから消えるかもしれねぇ組織の何が威厳だよ。そう言ってやりたかった。けど、命を賭してまで守りたいと思ってるものを否定する権利は、少なくとも全てをどうでもいと思っている俺にはない。
ペコラ「ちょっと動いてるみたいだから、行ってくるわ。」
ルーツ「そうか。」
電話が切れた。
明日ペコラが、零那さんに殺されるかもしれない。なんでこうも俺の大切に思った人達は消え失せていくのか。
なんで。なんで…。
じゃあ。もう。最初から。
最初から何も要らなかった。
『失うんなら、最初から要らなかったな。』
南への理想も。記憶も。何も。何もかも。
BUCKSの屋上で、勝手に椅子に座って夜風に当たっていると アイク・ポルスカさんが上がってきた。
ポルスカ「おー、どした?」
ルーツ「いやぁ…まぁなんか自分記憶ないって言ってたんですけど。記憶取り戻したくて色んな人と話したり、協力してもらって、たくさん大切な人ができたんですけど…なんか、だんだんと得た分だけだんだん失っていってて。」
ポルスカ「うん。まぁ、記憶のない辛さってのは当人にしかわかんねぇけど。まぁ、今を大事にして昔のことは忘れちまった方がいいんじゃねぇか。」
昔のことを…。もう追い求めない方が、楽だと。そうポルスカさんは言ってくれているのだろう。昔のこと…。
そういえば、ポルスカさんって壁を何度も破壊しようとしてたよな。
壁…。壁か。
思えば。全て壁のせいだ。
俺が記憶を失ったのも。俺が今人を殺した事にこんなに嘆いているのも。全て壁の…。
ルーツ「ポルスカさん。この話は公言しないで欲しいんですけど。いいですか?」
ポルスカ「あぁ。いいぜ。」
俺は俺は昔、戦争に参加していたらしいということ。そして壁を壊す側の人間だったということなどを伝えた。
ポルスカ「…なるほどな。」
ルーツ「ポルスカさんが壁を壊そうとしてたじゃないですか、それ見て、俺…当時なんて言ったらいいんだろうな…」
何故か俺は泣きそうだった。もう意味がわからないし、ポルスカさんに何を伝えたいのかさっぱり俺も分からない。
そうしているとポルスカさんが口を開いた。
ポルスカ「そうか。じゃあ話してくれたから、俺もひとつ話をしよう。」
ルーツ「はい。」
ポルスカ「俺は…この街の住人が持っていない爆発物を手に入れたんだ。」
ルーツ「どういうことですか?」
ポルスカ「壁を破壊できるかもしれない爆弾ってことだよ。」
ルーツ「なる…ほど。」
壁。そうだ。
この壁を破壊して、全て終わらせよう。
この負の連鎖が俺が生まれてからの負の連鎖が南と北を分けていた偏見から始まったのなら。
そしてそれを体現したこの壁でこれからも続いていくのなら。俺はこの壁を…。
俺は帰路へ付いた。
ポルスカさんの言っていた爆薬が何なのかはわからない。
けれど、例えばそれが無意味でも、俺の残りの生涯全てを捧げてこのクソみたいなな壁をぶっ壊してやる。そこからだ。そこからリスタートしよう。俺の人生を。やり直そう。全てを。
※
その後帰路に着いた俺はペコラへメッセージを送った。それは別に壁がどうとか。恩人がどうとか。そんなくだらないものではない。
俺が彼女を親友だと、思ったからだ。
『死ぬなよ。』
ー以下観測不可部分ー
ルーツ「みんなどっか行っちまう。」
きっと。明日ペコラは死ぬ。
零那さんに為す術もなく殺されてしまうだろう。
なんでこんなに悲しい思いをし続けなきゃいけない。
なんで俺が、罪悪感を感じ続けなきゃいけない。 なんで俺が。
ーーーーー
ユユ「優しいんだよ…彼…」
アルト「お前の命に価値がないなら、お前の周りの人間痛ぶるしかねぇよなぁ?」
レナ「俺だけ信じればいい。」
ペコラ「お前に関係ないだろ。」
ヒマワリ「ルーツくんは警察辞めないでね。」
ーーーーー
みんな好き勝手俺に言いやがって。
あぁ。もうじゃあもういいや。 お前らが好きにして、好きに言ってんなら。 俺だって好きにしてやるさ。
____もう他人軸で生きるのやめよ。
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Day25
| + | Rust |
「Rust」
目覚めが悪い。そりゃ親友とまで言った人間の命が今日無くなっちまうかもしれねぇなら当然のことだろ。
俺は昨日寝れなかった時間考えた。
今までの俺の何がいけなかったのか。
このモヤモヤは何か。
それを俺は昨日理解した。
直ぐにペコラから連絡があった。
ペコラ「何心配してんのお前。」
ルーツ「…お前が昨日不穏なこというからだろ。」
今日死ぬかもしれねぇのに。なんでこいつはこんなに明るく振舞ってんだよ。やっぱりこいつはバカだ。
ペコラ「私とお前は敵同士なんだから関係ないだろ?」
…。
俺が警察だから?親友が犯罪者だから? 関係ねぇだろ。 そんなのは俺からすりゃ言い訳だね。
大切なもんは助ける。例えそれが組織として敵対してようが関係ねぇよ。
ルーツ「いや、お前は俺の親友だよ。俺は別に、ギャングや警察とか分け隔てて考えてねぇよ。俺は個人個人を見てる。」
ペコラ「お前の上司にはそれ聞いてなんて言われんだろうな?」
ルーツ「もう散々言われたよ。けど、俺は犯罪者にもいろいろ理由があると思ってる。」
ペコラ「それが人を殺すことでも?」
ルーツ「俺だって昔殺してるよ。」
※
俺は電話を繋いでいたが、ペコラはやはり零那さんと戦うようだ。
文字通り命を懸けて。
だから俺は昨日悩みに悩んで、助ける人間は事前に決めてある。
思った通り零那さんが勝利した。
ペコラはやはり深手をおっており、ここで俺が見捨てればきっと終わりを迎えるだろう。
俺は飛び出して、ペコラを担いだ。
零那さんには恐らく見えているだろう。いや、見えていなかったとしてもアジトの屋上には宇仁王さんがいる。俺の汚職は明らかだ。
ペコラ「おい…なに…してんだよ。ほっとけ…よ。」
ルーツ「救急に連れてくに決まってんだろうが。」
ペコラは断固として拒否を続ける。
しかし、俺にはもう引く道理もない。
俺が助けたのはもちろん零那さんではないし。瀕死のペコラでもない。
俺が助けるのは俺だ。
ルーツ「俺はなぁ。お前に死なれたら俺の人生終わっちまうんだよ。」
だって、俺が親友と呼んだ人間だから。
今まで沢山の別れがあった。唐突で。見ていても俺は何もできなかった。
それは俺がその人のことを思った時。その人の理由を否定することになると思ったからだ。
バウバウさんも。龍司さんも。ゆゆさんも。色んな理由があって、いろんな考えがあって。色んな人生があって。だから俺は何も言えなかったし、ただ歯を食いしばって見ていることしかできなかった。
けど俺は昨日思ったんだよ。
本当にそれでいいのかって。 俺の人生はそんな失うばかりの人生でいいのかって。
俺は。嫌だ。
我儘だと思う。自分勝手だと思う。独りよがりかもしれない。
けどもう二度と大切な人が去っていくのを。見ているだけなんてのは嫌だ。だから俺はそんな俺のことを助けるために今動いている。
____後悔のない選択を俺がしたい。
動機はそれで十分だった。
零那さんに怒られるかもしれない。警察の職を失うかもしれない。ペコラにだってなんで手を出したのかと撃たれるかもしれない。
けどそんなことはどうでもいい。そんな相手の好き勝手はどうだっていい。俺はずっと。ずっと。目が覚めてからずっと。他人軸で生きてきた。
だから、もうそれを辞めることにした。
これから俺は身勝手に生きる。俺の先輩たちが。この街の住人たちが。俺にそうしたようにな。
ルーツ「みんな好き勝手言いやがって。俺の目の前から消えやがる。俺の気持ち考えたことねぇだろ。だから、お前も簡単に死ぬとか言うなよ。」
ペコラはまだ抵抗を続ける。しかし勝手にすればいい。俺は俺が今できることをやるだけだ。俺がやりたいと思ったことをやるだけだ。
そこに深い理由も、他人への配慮もねぇよ。
ルーツ「俺が記憶が無いからって何にもできねぇって思ってんだろ。」
俺が記憶がないから。俺の存在はどうでもよかったんだろう。俺の気持ちも。俺の考えも。俺の人生も。みんなは何とも思ってねぇから。
だから、俺だってやってやる。
ペコラ「うっ…」
出血が多い。きっと長く持たない。
俺はフルスロットルでバイクを走らせる。
病院に付き、俺はペコラを担いだまま叫ぶ。
ルーツ「おい!!何も言わずにこいつを蘇生してくれ!!」
ミカド「…何も聞きません。」
素直に救急隊は俺が担いできたペコラを病室へ運んでくれた。俺は急いでペコラをさらに担いでその場を後にする。まだ腕を痛がっているペコラを担ぐ。
ルーツ「早く逃げよう。警察から救急隊に連絡しちまうかもしれねぇ。」
さらにバイクを走らせながら北へ向かう。
ペコラ「なんで私を助けたんだよ…」
ルーツ「あ?俺はなぁ!!お前がまだジョーに告白するの見てねぇ!」
ペコラ「黙れ。」
もちろんただの言い訳だ。
俺は俺を助けるためにお前を助けたなんてこと言ったところでこいつはそれを呑まない。だからもうふざけてやる事にした。
その後俺はジョーへ電話する。開口一番にジョーは「あ、折り返し。」と言った。多分昨日の俺の送ったメッセージだろう。気が向いたら連絡しろって送ってたのにこいつ…。
ルーツ「今こっちで保護してるから取りに来い。」
俺がそう言うと待ち合わせの場所にジョーとラッキーガールが現れた。
ジョー「なんでアイツ隠れてんの?」
ルーツ「合わせる顔がないんだと。」
ペコラは勝負の前にSeventhを脱退するとボスであるジョーに表明した手前カッコがつかないんだろうが。いい気味だよ。全く。
あまり状況を把握していないラッキーガールにも事の顛末を伝える。ペコラとジョーに俺の記憶を探す手伝いをしてもらったこと。そしてペコラと零那さんが戦ったこと。俺が警察という立場でありながらペコラを救ったこと。俺のことをジョーとペコラが誘ったからか、分からないが、今零那さんがSeventhに対して今敵意が強いこと。
ラキガ「なるほどね!完全に理解した!」
ジョー「…で?」
ペコラ「だから、死なせてくれなかったんです。」
ルーツ「そう。」
ペコラ「要らないって言ったのに。」
ルーツ「理解したか?ラッキーセブン。」
ラキガ「理解した!」
本当かよこいつ。口調も相まってなんにも考えてねぇんじゃねぇかって不安になるな。
ラキガ「それでルーツさんはどうするんですか?警察に戻ってどうするんですか?」
急に的確なことを言いやがる。現実を俺に見せるなよ。
ルーツ「あぁ、まぁ戻っても結果は目に見えてるよ。」
良くて禊。悪くて俺がエンドだ。
ペコラ「だから手出するなって言ったのにー」
ルーツ「うるせぇよ。俺はなぁお前のこと親友だって思ってんだよ。」
ペコラ「私は思ってない。」
ルーツ「いいよ、別に。相思相愛じゃなくても。」
誰がどう思うかじゃねぇからな。 俺がどう思って、何がしたいか。 それだけが今の俺だ。
ジョー「お前もめんどくさい女に絡まれたな…」
ペコラ「めんどくさいってなんですか!」
否定できねぇだろ。お前はクソみたいにめんどくせぇよ。
ジョー「でもルーツこいつ可愛いだろ?」
ルーツ「仮面付けてるからわかんねぇよ。」
ペコラ「顔の問題…?」
ラキガ「顔で人選んでんなぁ。」
ルーツ「選んでねぇよ。でもちょっとラキガ仮面取ってもらえる?」
ラキガ「えっ、恥ずかしい、やだ。」
そうだよ。女の子の反応はこれだろ。 ペコラも見習えよ。
そんな冗談も交えつつだが。
次の俺の本題はこれだ。 警察に戻ってどうすんのか。
…戻る必要あるか?昨日あれだけ警察を辞めることを考えてた俺が?
いや…無いわけじゃない。
全部どうでもいいとは言ったが。それは本心だったとは言えない。零那さん。竜胆。他の警察のみんな。それを裏切ったままどこに行くって言うんだよ。
ルーツ「ん…どうするかな…。」
ジョー「どうすんだよ。ルーツ。事情は把握したし、ペコラ救ってくれてありがとうだけど。」
ラキガ「ルーツとペコラ仲良いんだし、Seventh入っちゃえば?」
…昨日まで。一昨日までか?
犯罪者にはならないってジョーとペコラの誘いを断ったのに?これから解散するかもしれねぇギャングに俺が加入する?
ジョー「でもな、こいつ2回も断ってんだよ。」
ラキガ「2回断ろうが、3回目は違うかもだから!!!」
いや、全然俺は断るよ?声でかくして脅してきても。
ペコラ「すげぇ声でかくなった…」
ジョー「あのねぇ、ルーツ。うちの子すごい頑固だから…。」
ルーツ「あぁ…。まぁでも、俺のさっきの行為が警察にどう取られてるかによる。」
零那さんは多分俺をのことを見限っただろう。彼はそういう人だとずっと自分で言っていた。
それが嘘だろうと、本当だろうと、彼はそれを曲げない。
ペコラ「私はこいつのこと嫌いですけど…大嫌いですけど…」
ジョー「何言ってんだ、ありがとうだワンって言えよ。」
ペコラ「やだよ!!」
ルーツ「いや、言えよ。お前の命救ったんだからありがとうだワンって言えよ!Sey!いって…。」
普通に殴られた。
ペコラ「…嫌ですけど。ボスがこいつの居場所作ってやるって言うならしょうがないですけど。仲良くならないですけど。絶対に…。」
ラキガ「メンバー欲しいしな。うち。」
…解散すんじゃねぇのか?
ルーツ「ちなみに…結局なんで解散するって話してんだよ。」
ジョー「なんでお前が知ってんだよ。」
ルーツ「いやお前が「俺の腹の中では1週間以内に解散すると思うぜっ☆でもこいよっ☆」って言ったんだろうが。」
ジョー「俺言ったっけ?言ったわwいいよ。でもこいよ。」
は???なんだよこいつら…。適当すぎだろ…。
ルーツ「だから!なんでこれから解散するところに俺が入るんだよ!!だったらせめて解散するなよ!!」
ラキガ「解散しないよ!!」
ジョー「…こう言うやつもいる。」
だからどっちなんだよ…
ルーツ「だからお前らもさ、北で筋通して生きてきたんだろ?何あったとか知らねぇけどさ。ちゃんと通し続けろよ。それがギャングじゃねぇのか。」
ラキガ「そうだよねぇ!私もそう思う!」
ルーツ「あぁだよな!お前とは気が合いそうだ。」
思ってないけど言ってみる。いや、多分この子もあんまり考えないタイプだろうからこの位の方が絡みやすいだろう。
ジョー「まぁ、その意見を言うなら。まずウチに入ってからだね。」
部外者の意見は要らねぇってか。つくづくギャングだな。
ルーツ「はぁ…。」
ラキガ「だって…!入るしかないって…!」
なんでこいつはこんなに嬉々として…。
いや、もうそうだな。 この際ペコラ救ったし。北で筋通して生きてるSeventhまで救うのも悪くない…か?
どうせ…行く宛もなくあてもなくなる訳だし。
なにより、俺は元犯罪者なんだから。これから何やろうと同じだ。
ジョー「メンバーの意見だったら多少聞いてやったっていい。」
ラキガ「え、いいの?」
ジョー「お前の意見どれだけ聞いてやってると思ってんだよぉ!」
…こんな常のようにコントしてる明るい組織なら、いいか。
ルーツ「なんか。俺。先輩たちが警察抜けてくの見て。俺まで同じことすんのかって思ってましたけど、それも、もういいかなって思っちゃったんすよ。」
そうだ。思ってもないことをペコラに言った、そう俺は昨日思いたかった。加入回避するために使った嘘だと思いたかった。 けれど、事実だった。でも、あれは全部俺が本心で思ってたことだ。
もうでも。いい。
今日ペコラを救った時。目が覚めてから初めて今生きてるって実感が持てた。
だから。もう。いいんだよ。
ラキガ「もうなんかいいかなヤバいww」
ルーツ「俺が本当にやりたいのは。規則を遵守することでも、犯罪者を捕まえる事じゃなくて。
____俺は俺がやりたいと思ったことをやって生きたい。」
そうだ。俺は、俺がやりたいと思ったことをやろう。そう決めたんだよ。ペコラを救ったあの瞬間から。
ルーツ「でも!」
俺はまだ捨てきれない情が溢れる。
そりゃそうだよ。俺が目が覚めてからずっと思ってたのはこれしか無かったんだから。
ルーツ「恩は返す。世話になった人に。ジョー。ペコラ。お前もだ。」
別にギャングだろうが。なんだろうが。生きてりゃ、恩は返す。それが望まれないことでも。俺がやりたいからだ。だから誰にも文句は言わせない。言っても俺は聞かない。
ジョー「よし、わかった。俺はね。お前とペコラはウマが合うと思ってね。俺はスタブシティにファミリーを築きたいんだよ。ファミリーを。」
ペコラ「いーやーだー!!」
…何の話だ?
ルーツ「…何言ってんだ?」
ジョー「ルーツ。お前…ペコラのこと頼むわ。」
は???なにいってんだこいつ。正気か??
いや、出会った頃から正気じゃなかったか。
ジョー「で俺が解散だろうがどうなろうが。ペコラの事を支えてやってくれ。ってことでこあよ。」
あぁ。もう一々突っ込むのも疲れちまった。最後の最後で大ボケをカマしてくれたな。ジョー。
ルーツ「わかった。」
これはギャング加入への返事だ。
ペコラ「えぇ!?」
ペコラは案の定勘違いしてるが、違うぞ。ペコラ。そんなに俺と付き合いたいのか。仕方ねぇやつだな。
ルーツ「いやいや、ペコラを頼むは記憶のない俺には荷が重い。こんな狂犬を俺が相手できるわけが無い。」
ジョー「いや、今日明日じゃない。別に恋人として頼むって事じゃなくて。1人の人間として。」
なんだよ。ファミリーとかいうから完全にそういうことだと俺も勘違いしちまったじゃねぇか。なんだよそのエ〇漫画みたいな展開って思って断ったのに。
あ、別に読んだことないよ。うん。
ルーツ「なんだ。じゃあいいよ。親友だと思ってるからな。」
ペコラ「私は思ってない。」
ジョー「それを覆す。アイツにガキを産ませ…」
一同「「「いや何言ってんだよ!!!」」」
結局それかよ。舐めんな。子供なんか…。
ーーーーー
以下存在しない未来
ペコラ「お、ルーツ。おかえり!」
息子「おかえり、父さん!」
娘「おかえり!パパ!」
ルーツ「…ただいま。」
ペコラ「えー。もー。チビ共だけじゃなくて私もぎゅってして〜!」
ルーツ「おえ…」
ーーーーー
ダメだ。想像したくない。無理無理。
※
その後、俺は本署へ戻り。正式に解雇してもらおうと思ったのだが…誰もいなかった。
仕方なく俺は零那さんへ電話をかける。
ルーツ「零那さん。今お時間ありますか?」
レナ「…要件は。」
大方察しているのだろうな。
ルーツ「____警察を辞めます。」
レナ「ほぉ…。」
きっとこれから来る罵詈雑言に俺のガラスのハートは粉々にされるだろうな。
レナ「あれだけ啖呵を切っておいて。結局黄色行きか?情けねぇ。…まぁせいぜいしょうもない人生歩むといいよ。」
好きに言えよ。俺もこれからそうするんだ。
なんと驚いたことに俺のメンタルは耐えた。 想定外に自分のことを俯瞰して見られている。
しかしまぁ。ならついでと言っては何だし。こんなことを言って何か変わる訳でもないだろうが。俺は伝えないより伝える主義だからな。一応言っておこう。
ルーツ「零那さん。竜胆のこと、頼みます。」
レナ「無責任だねぇ。」
ルーツ「無責任かも知んないっすね。」
レナ「そうかも知んないじゃねぇ、無責任だろ。なんだテメェ。」
零那さんの怒りはよくわかる。
竜胆のことは本来、俺が見るべきだった。俺が守るべきだった。しかし、俺はもうそれが出来ない。 だから、それを零那さんに伝えることは全く効力を持たないことも。期待できないことも知ってるさ。
知ってても、俺は言う。
大切に思ってるからな。 誰が俺の行動を否定しようが。 それは変わらない。
ルーツ「まぁ…零那さんが聞いてくれるかどうかなんて期待してないです。」
レナ「だろうねぇ。」
ルーツ「ただ。本当に俺のことを零那さんがどう思ってるかわかんないですけど。世話になりましたとだけ。」
レナ「何故警察に来た?」
何故って。それは面接にもいたあなたがよく知ってるじゃないですか。俺は…
ルーツ「力が欲しかったからです。力を持って大事な人達を守りたいと思ったから。」
無力な自分を。変えたかった。
救急隊が脅えて暮らさなくていいようにしたかった。なんでも思い通りになると思って横暴なことを仕出かすやつを…俺が処理したかったからだ。
レナ「で?結果は?」
ルーツ「結果的に守れたかどうかはわかんないです。でも…」
レナ「お前守る気ねぇだろ。」
ルーツ「ありますよ。ありましたよ。ずっと。」
レナ「自分の過去を知ったらそれでおさらばってか?舐めんなよ。」
零那さんだって。あれだけ警察辞めるってことでいいんだなって脅した癖に。今更俺に何を求めてるんだよ。今更…。全部今更じゃねぇか。
ルーツ「過去を知っておさらばって訳じゃ…」
レナ「周りから見たらそう見えんだよ。」
ルーツ「周りって零那さんだけじゃないですか。零那さんが言ってる周りって誰のこと言ってるんですか?」
レナ「警察全体だよ。」
ルーツ「…事実を知ってるのは零那さんだけですよ。」
レナ「俺が話したらイチコロだろうね。周りのこと考えずに自分勝手に行動するそういう奴俺大っ嫌いなんだよ。」
堂々巡り。これ以上話してもか。
もういいぜ。十分メンタルには響いたよ。
レナ「自分勝手だね。最後に殺してやるよ。夜道に気をつけろ。ペコラにも言っとけ。お前らのギャングクソしょうもねぇなっていっとけ。」
ここで追い討ち掛けてくる。っぱ零那さんだな。
ルーツ「…わかりました。」
レナ「お前を見つけ次第殺す。」
電話は切れた。
…。
※
その後のことはあまり覚えていない。
唯一覚えているのは何かを鎮火しに来た消防隊。そして全身に浴びたとてつもない水圧。 炎炎ノレンジャーという単語と。 森羅瑠津下部という謎の名前だけだ。
※
その後はあれよあれよとギャングになった。
正直脳は追いつかないが、間違ったことをしたという考えはない。
ただ…これからは犯罪者として生きる。その覚悟が上手くできなかった俺は偽名を…俺の今の思考とは何か乖離する思考の名前を付けた。
俺はそれを「サビ」と呼んだ。
由来は俺が
roots。始まりや根源を意味するのに対して。 last。終わりを意味する単語から派生し、読みのラストからとってRust。意味は錆だ。
それから色々と教えてもらった。
メンバーの名前も。
いい機会だから簡単に説明しよう。
まずボスのジョー。部下のペコラ。こいつらは説明は要らないな。
次にラッキーガール。普段は飲食店で働いているらしい。よく鼻歌を歌う呑気なやつだ。
そして彼女がよく一緒に動いているハイゼンベルク信雄。警察の頃撃ち殺さずに大型で逮捕した男だ。俺の好きなドラマに出てくる主演に似てて笑っちまう。
そしてファスト。サンメカで働いている女で、ツッコミ担当らしいが何故かメンバーから「出刃包丁」と呼ばれている。理由は知らないしどうでもいい。
こんな感じの構成らしい。
そして謎にみんなでアジトで寝るんだと。 家族…みたいだな。
俺はいいって断ったんだがな。空かしてないで来いって言われて渋々同じ床についた。
…寝ようと思ったが今日の激動から直ぐに安眠なんてできる訳もなく。俺はぐるぐると内省を始めるのだった。
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Day26
| + | Arcana |
「Arcana」
結局、俺が眠りについたのは朝方だった。
が、その眠りも浅く。俺はベッドから起き上がった。おれが起きるより少し早くペコラは起きていた。
こいつもよっぽど寝付けない体質なのだろう。
ルーツ『おはよ。』
挨拶を済ませて、外出する。
特に何をする訳でもないが、俺が警察を辞めてギャングに加入したという事実をまだ俺自身が受け入れられなかったから。今は何かしていないと頭がずっと考えを巡らせてしまう。
ハナメカでペコラと車のカスタムについて話をしたが、まぁ俺にはそんな大金がない。
ギャング資金からどうとかって話も出たが。 借金しろなんてのはごめんだ。
ペコラ「まぁ、お前が捕まらないならいいけど。」
それか自分の車ではなくギャングには共用で使える車両があるらしいのでそれを使ってもいいとの事だった。
それからしばらくして、ペコラは俺に薬物の売り方を教えてくれたり、ATMの抜き方を教えてくれたりした。
全て、俺の嫌ってた犯罪だった。
けどこれから生きる為にはこういう悪行を俺もやらなければいけない。俺も見ず知らずの他人の金を奪って、誰かを傷つけて、生きるしかないのだ。
その事実に、ルーツという俺の人格は耐えられそうになかったが、よく考えてみれば過去に俺は今やっていることよりもずっと悪いことをしていたのだからと言う謎の言い訳をした。
とは言っても、記憶のある今の俺はこんな事にすら罪悪感を感じて生きるしかない。
だから俺は錆に肩代わりしてもらうことにした。
俺がこれからやる悪行も。殺しも。悪いことは全て俺がやることでは無い。
錆がやることだ。
そんな子供のようなワガママしか言える気力がなかったが。俺とは対照的にサビは今まで見たことのなかった世界をどこかで楽しんでいるようだった。
その後しばらくしてジョーも目を覚ました。
続々とメンバーが起きてきたので大きな稼ぎを得ようということになり、俺たちはボブキャットを襲うことにした。
他の人たちが固定の位置に着く中、俺は周囲を見回って戦うラークという立ち回りをしろと命令を受けた。
サビ「了解。」
しかしまぁ、警察の動きは俺が思ったよりも。俺が見てきたよりも洗練されていた。
警察車両が2台、ボブキャットよりも少し離れた位置にいる俺のところまで走ってきたのだ。 恐らくサーマルヘリに誘導されたか、それとも遠方から徒歩で進める為に来たのか。
撃たずにこいつらの裏に回ることも考えたが、俺はそれで撮り逃してボブキャットへ行く人員が増えてしまうことを懸念し俺に引きつけるために発砲した。
そして、警察車両は路地裏へ隠れた。
俺もその後をのこのこと追ったのが運の尽きだった。
過度に隠れていたルビー先輩…いや。ルビーにダウンさせられてしまった。
サビ「くっそ…」
ルビー「あれぇ?お前見ない顔だね??」
俺は牢屋まで運ばれ指紋を取られた。
ルビー「ふぅん?フリューゲル…」
サビ「…うるせぇ。」
そのうちみんな知るだろう。
俺が悪人になったこと。俺が悪人であったこと。それはきっと俺を嫌う理由になるだろうけど。別にどうでもいい。
ルビー「えー、でもそのうちみんな知ることになるよ?」
サビ「そうだけど。」
警察にバレるのはいいが。救急隊には…バレたくないと思った。俺のこの秘密を。
俺は刑務所へ送られ、刑務作業を終えて出る。
アジトへ戻り、何もすることが無くなった俺はアジトの裏で釣りをした。
ペコラ「サビ〜?」
サビ「なに?」
ペコラ「どっか行く時は声掛けてって言ったじゃん。」
なんで俺が一々やることなすこといわなきゃ行けねぇんだよ。
俺は別にペコラとジョーの下に着いたわけではない。 いつSEVENTHを抜けることになってもいい。
俺はただ、ジョーとペコラに恩を返したくてここに来ただけで。俺がそうしたいと思って来ただけだから。俺も行く場所が特になかった訳だし。
そしてそれはもう叶っている。
だから俺はこいつらの命令を聞く義理はもうないのだ。
…てか。よく考えたら俺ばかり人に恩がどうとか。言ってんな。
なんかそれすらもどうでもよく思えてきた。
俺はせっかく意を決して悪人になったんだから。俺の大切なものを諦めてここに来たんだから。もっと俺がやりたいと思うことを。俺が思うようにやるべきだ。
そうだよな?サビ。
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