あっけなさすぎる。
手毬が思ったのはそんな感情だ。
初星学園のNo.2と呼ばれた雨夜燕でも、
この殺し合いにおいては哀れで無力な存在でしかないと。
いや、戦う力があっても殺されてた可能性だってあるはずだ。
どんな死に方をしてしまったのか。せめてまともな死であってほしい。
そう、願うこと以外に死んだ彼女に対して思えることがなかった。
何よりも嫌だと思ったのは、Re;IRIS三人全員いるということだ。
咲季も、ことねもいる。何の嫌がらせかユニットのメンバーが全員いる。
美鈴達にリベンジをすると決めたのに、殺し合いには三人揃ってしまった。
一人でも欠けたらリベンジできない。いや、全員死ぬことすらあり得るだろう。
そんな臆病風に吹かれてるのも相まって手毬は身体を震えさせているのを青嶋は一瞥する。
甘えるのは嫌と言ってたが、結局のところ彼女は一般人の感性を持っている普通の人間だ。
一朝一夕の時間で、戦士のような覚悟を持つことができるのは簡単なことではないのだと。
別に珍しいものではない。大戦隊に所属していても怪人の強さに恐れるものだって普通にいる。
ドラゴンキーパーでもない一般人に戦士のような心構えの言葉を投げかけるわけにもいかないだろう。
「地図も更新していると言ってたな。この地図だと知り合いの行く当てはあるのか?
先に言っておくが、俺の知り合いはいないから月村の行きたい方に行けるぞ。」
ゆえに、動きで示す。
半端者であることは分かってはいるが、
やはり彼自身にも正義感そのものは根底には存在している。
「わからない。多分、講堂なのかな……?」
地図にある講堂が初星学園のものかは分からない。
講堂なんて秤の賭場のような固有名詞もない、どこにでもあるようなものなのだから。
とは言え初星学園の講堂はライブ会場でもあるので、内容は何処にでもあるものではないが。
ただ、他に行きそうな場所も見当たらない今当てになるのはそこだけだ。
「じゃあ、そこへ行くぞ。向こうがどうするかは知らないがな。」
言葉の通り、知り合いの同行者が別の場所へ行きたがってる可能性もある。
だから空回りになる可能性は十分にありうるだろうが、動かないことには始まらない。
何もしないことが悪手なのは彼女もわかっており、小さく頷いて森を歩き出す。
全員、揃って生還することを信じながら。
森を抜ければ、大きな橋が二人を待ち受けている。
幅は広く、よほど遠く吹き飛ばされなければ落ちることはないだろう。
とはいえ、改めて空の上にいるという実感は怖いと感じるところはあるが。
本当に空の上か、と少しばかり感心する青嶋ではあったものの、
「よぉ。」
「……早速お出ましか。」
橋を歩いていると、別の参加者との遭遇。
橋の途中で待ち受けるように立っていたのは、人とは呼べないだろう。
仮に、それに人をつけるとするならばその前に『怪』の文字をつけるべきだと。
「最短距離でこっち側に来るのを考えりゃ、橋は使うよなぁ。真ん中は穴があるしな。」
氷炎魔団軍団長、フレイザード。
ミストバーンとかダイ達がいるなら別だったが、
そういった知り合いは特にいないのもあってか余り動かず待ちを選んだ。
西のエリアの方には施設が多く、人が集まるのであれば西だと踏んで、
一先ず近くで待ち構えてみてみたら、うまいこと人と当たることはできた。
相手は手練れが一名と一般人一名とダイに倒された今では見劣りするかもしれないが、
余り調子づいていると生前のような死を迎えることになるだろうことは理解している。
「名簿を見たときも思ったがよくまあ怪人を呼んでくるとはな、あのクソ野郎は。」
「怪人だぁ? おいおい、俺は魔族だぜ。」
「どっちでも同じだ。通す気がないならテメエを殺す。
月村は下がってろ。こいつはお前の手に負える相手じゃない。」
ブルーキーパーに変身できてないのもあるが、直感で感じる。並の相手ではない。
様々な怪人と戦ってきた青嶋だからこそ感じ取れるもので、手毬は愛棒を構えつつも下がる。
戦う気はちゃんとあったようではあるが、気合いどうこうで解決できるレベルの相手ではない。
無敗の紫靫草を手に肉薄し、怪人ではなく魔族へと挑む。
恰好や得物は違えどやってることはいつものことのようなものだ。
相手は見ての通りの氷と炎の半身だ。水を使えば有利になるが、
逆に不利になるともいえる体の構造をしてるのは理解できる。
あまり考えなしに真名解放をするわけにはいかない判断だ。
普段のレヴィアタンのような遠距離攻撃ではいられないのもあり、接近は必須。
「メラミ!」
火弾を手から放たれ、青嶋を火だるまにせんと迫る。
とは言えこの程度であれば、さして問題ではないかのように横へよけ回避。
地面をただ焼くだけにとどまり、薙ぎ払うように槍を振るう。
英霊フィン・マックールの槍である以上、ただの業物には非ず。
突き出したフレイザードの腕を岩石でできていようとも大きく傷をつける。
「チッ、いい得物もってんじゃねえか!」
これ以上近づかれるのは厄介と判断し、口から氷のブレスを吐き出す。
すぐに横へと転がりながら突きを繰り出し、次は左目を潰さんとするも相手も後退し距離を取る。
多少顔面が冷たさでひりつくものの、致命的な一撃に至ってはいないだろう。
ダイ程ではないにしても相手は戦いなれている。以前は氷のような冷静さを失ってしまった結果、
敗北したとも言える状況だったのもあってか冷静に状況を見極めた行動へと出ている。
(やっぱり再生するたびに疲労してやがるな。余計なことをしやがって……)
先の戦いでも思ったが、回復はしてくれるが疲労はしていくようだ。
これがベリアルの言う縛りだろう。自分だけが都合よく体が元に戻っていく、
と言うわけではないことは予想はついていたが、勝利を求める身としては邪魔な枷だ。
「再生能力か。ますます怪人の類だな。」
「魔族だって言ってんだろうがよぉ!!」
槍の間合いで戦うには不得手。
ならばと接近戦に持ち込んで攻めの姿勢に入る。
殴る、蹴る、時にはブレスを交えながらの苛烈な攻撃。
当たればただではすまない一撃を、どれも冷静に躱していく。
時に槍の側面で殴打して迎撃すれども、こちらもまた大したダメージにはならない。
(これが、戦いなの……!?)
甘い考えを持った覚えはないが、
手毬からすれば十分人間の範疇を超えた戦いだ。
武器を持っただけのアイドルに、何ができると言うのか。
それとも、それらを倒せるだけの支給品が転がってるとでも言うのか。
彼女が頭を悩ませている間に、戦況は変わっていく。
フレイザードがメラミをあえて地面に放った。当然メラミはそこで軽く爆発を起こす。
自分も巻き添えになるものの、もともと半身が炎でできているのでダメージは軽微なものだ。
一方でドラゴンキーパーとしての装備がない、生身である青嶋にとってはそうはいかない。
熱風に軽く吹き飛ばされ、距離を取ったところをヒャドの氷系呪文が迫る。
「マク・ア・ルイン!!」
今の状態での回避は困難を極める。ならば壁を作るしかない。
槍を向け真名を解放し、水を放って氷の壁を強引に作って氷漬けを防ぐ。
大量の水を一瞬にして氷漬けだ。受けていれば間違いなく氷漬けで死んでいた。
しかし、それで危機を脱したとはいいがたい。
(グ、重い!)
水が凍ったまま槍の先端を覆っているのだ。
今までとは重量も形状も違い、武器として扱うには無理がある。
振り下ろして砕こうにもワンアクションが必ず必要であり、
このままでは敵の攻撃を避けることはできない。一旦武器を捨て、
支給品の中から別の武器を使うことも視野に入れていたが、
「こ、のッ!!」
後方にいたはずの手毬が、戦場に参加する。
ザンカの愛棒を振り下ろし、氷漬けの部分を思いっきり叩く。
槍の先端から放たれた水のおかげか、少女の膂力でも攻撃力は十分だ。
何とか破壊に成功し、多少氷はくっついたままではあるものの、
重さはほぼ何ら変わることはない重量にまで戻ることになる。
確かに手毬は一般人ではある。
だからと言って、先の『甘えるだけなのは嫌』なのは本当だ。
たとえ戦力外だとしても、軽いサポートぐらいには回りたいと。
そう考えていたら、彼女の身体は動いていた。
「月村、テメエ何し……」
だからと言って、全てがうまくいくわけではない。
フレイザードの炎の拳が、彼女を焼きながら鳩尾を殴り飛ばす。
聞きたくないような骨の折れる音が青嶋にも響く程の音と共に、手毬は橋の上を転がっていく。
「月村ぁ!!」
「邪魔にならないなら後回しと思ったが、
戦場に立つってんならテメエも関係ねえぜ!!」
完全に一対一と思っていたところを、
こんな形で妨害、基サポートされるとは思わなかった。
騎士道精神と言った誇りはないにせよ、邪魔をされるのも面倒だ。
そう判断したフレイザードの、左手の指先から、五つの炎が灯される。
「五指爆炎弾(フィンガー・フレア・ボムズ)!!」
「マク・ア・ルイン!!」
メラゾーマ五発分の攻撃。
受ければ間違いなく即死なところだったが、
宝具の水をぶつけて強引ながら温度差による水蒸気爆発を起こす。
そのおかげで直撃は防げたものの、爆発によりさらに手毬は吹き飛ばされる。
「おい月村、生きてるか!?」
「ア、グッ……ゴホッ!! ゴホッ!!」
返答をしようにも、ダメージが大きすぎる。
内臓に骨が突き刺さったのか、血液が逆流して血を大きく吐き出す。
それを見れば、素人が見たとしても重傷であると判断するだろう。
そのうえで爆風で吹き飛んで全体的に良くない状態だ。
(やばいな、早く治さないとまずい……だが!”)
「使えねえ奴なんぞ庇ってる暇があるのかテメエにはよぉ!!」
(手段もなけりゃ暇もねえ!)
フレイザードを相手にしながら手毬の回復。
そんな都合のいいものも手段も彼にはなかった。
ただひたすらこの再生する怪人のような魔族を相手にしながら、
手毬の死を待つしか選ぶ権利は残されていない。
「ツインサーキュラー!!」
あくまで彼一人だけならばの話だ。
そこへ双剣と共に斬撃を青嶋に迫る右腕を切りつけ乱入する、
特異点となる存在のジータもいるのであれば。
「嘘……」
セルエル、さと。
どちらも知った名前が参加しており、そして既に亡くなったことが知らされる。
アイルストのために尽力を尽くしたセルエルも、名のある美少女忍者を目指したさとも。
ベリアルとレデュエが仕掛けたふざけた殺し合いに招かれたことで、命を落とした。
嘘だと思いたい。赤文字で塗りつぶされ、名前を呼ばれただけで死んだなんて思いたくない。
それでも、嘘ではないのだろう。ベリアルならばもう少し人数を盛ってショックを与えてくるはず。
してこないということは、こればかりはあの男でもバランスを取っている公平な行為なのだと。
だから嫌だと思うものの確信がある。セルエルとさとは、もう二度と会うことはない。
会えたとしても、それはきっと死体としての二人だと。
「……これがそっちの思惑の一つなら。私は泣かないよ。」
こうして仲間が死に、折れる様を見る。
ベリアルの趣味とは違うように感じるのと、
先の放送で参加者を玩具と言っていたのを見るに、
これを楽しんでいるのはレデュエと言う存在の可能性が高い。
もっとも、どちらであっても折れるつもりなどかけらもないが。
コルワが好きそうな、全員生還のハッピーエンドを掴んだことは何度あれども、
アルタイルの時みたいに彼女だって助けられなかった命はいくつも見てきている。
言い方は悪いが、死に対して慣れた部分も否定はできなかった。
それでも、心では強く悼みながら傑剣への憧刃(デュクスラム)を両手に走り出す。
(ベルゼバブも、早く探して説得しておきたいけど……どこまでできるかな。)
普通の殺し合いならばまず優勝を狙うベルゼバブだろうが、
主催者がベリアルと言うのであれば話は別。裏があるのは目に見えてる。
過去の時は二人で戦っていた様子から特別仲のいい相手でもないらしいので、
運が良ければ説得は可能だが、問題はそれまでどれだけの問題を起こすかにあるだろう。
ロベリアのような危険人物を仲間に引き入れることについてはさほど抵抗はないものの、
あくまで自分だけだ。ほかの人物、団員以外がそれを受け入れてくれるかが分からない。
知り合いを殺されたりした相手が、例えばベアトリクスを殺されたゼタでも納得してくれるかどうか。
(いや、するしかない。もしルシファーが復活するようなことがあったら、
一番戦力になるのは誰かと言われたら、多分私よりもベルゼバブだと思う。)
パンデモニウムのあった場所の塔では散々苦しめられたわけだ。
まず主戦力になってくれることは確約されているのだから、何とかするしかない。
向こうもある程度は理解してるはずだ。そこを何とかして突くのが一番いいはず。
長い旅路で得た経験は無駄ではない。素早い身のこなしで一先ずグランサイファーへと向かう。
団員、あるいはベルゼバブであればまず誰であっても向かう可能性は高い。そのため橋を渡っていたところを、
フレイザード達の戦闘を見かけて、状況から見て青嶋の方を援護するに至った。
(こいつも手練れか!)
斬撃の傷跡は思ったよりも深い。
青嶋の槍程ではない業物で傷をつけてくる相手だ。
技量は少なからずある類の相手だということは伺える。
「大丈夫ですか!」
「俺はいい。月村の奴が重傷だ。俺が相手をするから何とかしろ!」
何処のだれかは全く知らないが、
協力者がいるのであれば話は別だ。
形勢は変わったのは事実であり、彼女のことを頼む。
「はい!」
攻撃をしながらの反動で距離を取り、手毬の元へと後退。
そして二人にかまけてる暇を与えないように、今度は青嶋が攻めていく。
彼の攻めは、自分に対する不甲斐なさも相まって非常に苛烈なものに感じられる。
「これ、借りるね。」
ジータの方にも回復系のアイテムは支給されていない。
それに一刻を争う状況もあり、愛棒を手に取って掲げる。
「ヒールオール!」
武器を変えて、得意な分野を変えて行動を起こす。
杈である愛棒は、槍に近しい形状ともありビショップ系の魔法、
ヒールオールで回復を試みるものの、手毬の状況にあまり変化はない。
頭部から流れる血などの外傷は止まったものの、ダメージが明らかに思ってるよりも回復してなかった。
再生と言った回復能力に制限がかかってるのは何もフレイザードに限った話ではないのだ。
彼女もまた、回復系の魔法にも制限がかけられている状態にさせられている。
「やっぱり効果が薄い……重ね掛けしないと───ファランクス!」
迫る炎に手毬をかばいながら愛棒を構え、障壁を張る。
熱さでダメージは多少嵩むものの、大幅な軽減には至れた。
後方にいる手毬も、辛うじてだがほぼ無傷で済ませる。
「ホイミ系の呪文が使えるなら、やらせるかよぉ!!」
攻撃の優先順位が変更された。
回復系の類が使われてはフレイザードとしても分が悪い。
いくら基本的に戦力外と言えども先のようなサポートもある。
それを復活させられれば三対一。首輪と言う概念があるのだから、
弾岩爆花散は封印か、何かしら大きな制限がかけられてるのは予測できる。
だからここで戦力を増強されては流石のフレイザードも相手をするのは難しい。
数の利と言うものがどれほどのものかは、自分の身ですでに思い知ってるのもある。
徒手空拳とブレス、更に呪文も混ぜた猛烈な攻めで、ジータをどんどん距離を取らせていく。
かと思えば青嶋にもヒャドを放って妨害をするなど、二対一であるという状況を認識している。
(ダメ、あの子にもう一度ヒールオールをかけないと……だけどできない!)
一先ず相棒を棒高跳びのように使ってフレイザードを飛び越えながら一度捨て、傑剣への憧刃を回収。
先に倒さなければまず彼女の回復がまず見込めないと判断したことでそちらの方を優先とした。
とは言え、相手は多対一に慣れているのか二人の動きを十分に理解した立ち回りをしてくる。
特に厄介なのは時折手毬を狙ってのメラゾーマと言ったメラ系の呪文を行使するときだ。
いやでも彼女の防御に回らなければならず、その役割は基本的にはジータが防御に回る。
そのまま回復を、なんて隙を見せようものならヒャドで揃って氷漬けを狙ってくるのだから厄介極まりなかった。
強さ的には圧倒的な差はない。寧ろ数の利も合わせればこちらの方が優勢になっているものの、
どうしても数の利が有利に働くとは限らない部分も出てきてしまっていた。
(痛い……痛いよ。)
内臓に骨でも刺さったのか、また吐血してむせる手毬。
レッスンの苦しみの比なんてものではないぐらいの苦痛だ。
いっそ、楽に殺してくれとも言いたくなりそうになってしまう。
そんなの、殺そうとしている相手以外誰も望んでないというのに。
(そういえば……)
支給品の中にあったあの剣。
あれの説明が本当ならばこの場を切り抜けられるのではないか。
けれどこの痛みの中どう動けと言うのか。下手をすれば本当に死にかねない。
だから休め月村手毬。暫くしたらまたさっきの金髪の人が助けてくれる───
(嫌だ。)
何度も思い返す。
言ったはずだ。強い人に甘えるのなんて。
惨めな、足を引っ張る、役立たずでいる自分なんて嫌いだ。
さっきから戦いも自分のせいで不利になってる光景ばかりを見る。
腹が立って仕方がない。こんな自分に嫌気がさしてしまいそうだ。
だから支給品の中に手を伸ばす。痛みで限界の中、必死にその剣を取り出す。
月村手毬は。
この一瞬だけ。たったこの一瞬だけだが、
誰よりもこの状況に対し、輝く希望の道を作る一番星となる。
「エムブラスクの、剣よ! 因果を、食らえ!!」
取った剣に紫のオーラが迸っていく。
エムブラスクの剣。元々はベアトリクスの使用する封印武器。
その武器の特性は───自身の状況が逆境であればあるほどに強くなる。
威力は時と場合によるが、時には星晶獣を一撃でダウンさせるほどの威力を誇る。
死にかけの状態で、相手は明らかな格上。いくら三対一と言えども逆境であることは変わらない。
剣は紫に輝き、フレイザードからすればオーラブレードのように気を纏っている剣に近しいものだ。
「なんだそのでけえ剣は!?」
「あれはエムブラスク!?」
「月村、何してやがる!? 死ぬ気か!!」
その言葉に反応し、三者全員が驚嘆の反応をせざるを得なかった。
死に体に近い一般人が、いきなり覚醒でもしたかのように立ち上がり、剣を構える。
血を更に吐き出すことになっても。体がどれだけ悲鳴を上げても、膝を折ろうとはしない。
危機、無茶、無謀。様々な感情が入り乱れる中、彼女は一人叫ぶ。
「腐って、られないのよ……こんな場所で、私はッ!!」
エムブラスクの剣を振り上げる。
構えなんて分からない。分かっていてもまともに構えられる状態ではない。
とにかく、目の前の怪物をぶった切る。手毬はその思考だけで動いている。
「使わせねえ!!」
ここぞとばかりに出てきた武器。
ダイの使っていた剣なんて目じゃない業物だ。
止めなければ負ける、死ぬ。そんな予感すらするぐらいの気迫。
たかが小娘、しかも雑魚と思っていた奴が此処までの危機感を覚える。
むかっ腹が立つものの即座に右手のヒャド系の呪文で妨害をしようとするも、
「させるか!」
青嶋の槍による斬撃が右手を切り落とし、ヒャドはうまく放てない。
切り落とされた右手を尻目にならばとメラ系の呪文で焼き殺すことを優先、
「させない!」
ジータの持つ傑剣への憧刃の斬撃が左腕をはじき、あらぬ方向へとメラを放ってしまう。
二人の妨害により、剣を振るうべき道を開くようにちょうど真ん中ががら空きになっている。
今こそ振るえばこちらの勝利、
「まだ口が残ってんだよこっちには!」
威力は呪文程ではないにせよ、
一般人の相手を焼き殺すには十分だ。
口を広げて全員を焼き殺す勢いで炎を放つ。
「なら、風穴を追加でどうだい。」
そんな言葉と共に、彼の口元に三つの弾丸が空けられた。
普通の人間ならばこの時点で死ぬだろうが、禁呪法で作られたフレイザードはこの程度では死なない。
思わず、戦況も忘れて振り返ってしまう。振り返れば、西部劇のカウボーイのような男がそこに立つ。
ホル・ホースは戦いを終え、橋の周辺にて休憩と参加者の様子を確認していた。
生き残ることを優先する彼にとって、参加者との遭遇を避けつつ確認するなら、橋の上を見張るのがいいという判断の一つでもある。
そうして眺めみていれば戦いが始まり、そこは段々と激しさを増しはじめていて、
一度は巻き添えはごめんだと避けようと一度どこかに行こうかと思ったものの、
女性陣もいることも相まって、フレイザードにとっての敵となる道を選ぶ。
もし、フレイザードが敵になった時弾丸が炎で消される可能性もあるので、
敵対したときなおさら厄介になることを危惧しての行動でもある。
その一瞬の隙に二人が離れ、エムブラスクの剣が振り下ろされる。
ただし、同時に吐血したことで縦に真っ二つと言うよりは、袈裟斬りの要領に近しいものになるが。
瞬時に下がることをしたフレイザードだが、袈裟斬りにより両足が切断されてバランスを大きく崩す。
「クソがあああああ!! こんな、こんなところでやられてたまるかぁ!!」
身体が再生するとしても、追加でやってきた奴相手含め右手に両足なしはとてもではないが戦えない。
咄嗟にメラゾーマを苛立ちと共に手毬に向けて放つが、青嶋が水流を放つことで水蒸気爆発を再び起こす。
しかし、それが彼の狙いでもあった。体の大半を失って軽くなった彼は爆風で大きく吹き飛ばされることになる。
橋からそう遠くではないにしても、落下していったのは西のエリアなのは間違いなかった。
「あの再生力、爆発で逃げる算段だったのか……だが、
これで撃退できた。誰だか知らんが助かった。さっきみたいに月村を……」
剣を握りながら倒れる手毬と、愛棒を持ってヒールオールをかけるジータ。
自他ともに傷をいやすヒールオールに、青嶋や乱入してきたホル・ホースの傷も軽く癒える。
───だが、手毬はいっこうに起きる気配はない。呼吸する微動すら彼女にはなかった。
「おい、何してる! 早くしろ! このままだと───」
「私の魔法で怪我は治せる。でも……」
手毬は回復魔法で辛うじて動かせた身体を酷使したのだ。
いつ命を落としてもおかしくなかったのは分かっていた。
だから早く回復させたかったが、完全に手遅れだ。
月村手毬は、既に死んでいるのだと。
「ふざけるなッ! バカなこと言ってないで早く治しやがれ!!」
ジータの胸ぐらをつかみ上げる青嶋だが、
ポン、と肩に手を置くのは先の戦いで協力してくれた男、ホル・ホースだ。
「状況はそこまでわかっちゃあいないが、
少なくとも女にあたるのはみっともないぜ、旦那。」
暫くの沈黙。
元をたどれば、手毬に怪我を負わせた自分の責任だ。
それを後からやってきた相手に責める謂れはないだろう。
暫くホル・ホースを眺めた後、ジータから手を放す。
「……悪かった。」
空気は最悪と言っても過言ではない。
死人が出ているのだから当たり前だ。
どうしたものかと帽子を深く被りホル・ホースが悩んでいると、
青嶋が支給品を回収して倒れていた手毬を抱いて、何処かへと歩き出す。
方角はフレイザードと同じ、西の方角だ。
「どこへ、行くんですか?」
「こいつの埋葬だ。それと、こいつの知り合いとあの怪人を探す。
あの再生力ならあいつは恐らく生きている。必ずぶっ殺すと決めた。」
「なら、私も───」
「ついて来るな。俺は今、奴を殺すこと以外眼中にねえ。
それに、お前も西から来ていたはずだ。東に用があるなら遠回りだ。
仲間が合流しそうな場所に心当たりがあるからこの橋から移動を選んだんだろ。」
「でも───」
「やめときな。下手したら戦闘だぜ、ありゃ。」
殺気立っている。それもかなり強く。
彼女にとって手毬はどういう人物かは殆ど分からない。
ただ、少なくとも悪い人ではないということぐらいだ。
邪魔をする連中は全員敵。ホル・ホースの言うとおりに近いかもしれない。
放っておけないものの、団員やベルゼバブもまた放っておけないことには変わりなく。
彼の意思を尊重して、別れることを決める。
「分かった……じゃあ、グランサイファーに向かってるのだけ覚えて。」
その一言を聞いて頷くと、青嶋は二人と別れる。
目的はフレイザード。手毬の仇である魔族を名乗る怪人だ。
ドラゴンキーパーだからではなく、青島庄吾として。
【月村手毬@学園アイドルマスター 死亡】
【B-6 橋の上/深夜/1日目】
【青嶋庄吾@戦隊大失格】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)
[装備]:無敗の紫靫草@Fate/Grand Order
[道具]:基本支給品一式×2(自分、手毬)、不明支給品×0〜3(自分0~2、手毬0~1)、愛棒@ガチアクタ、エムブラスクの剣@グランブルーファンタジー
[思考・状況]
基本方針:半端ものでも正義の味方として動く。
1:こいつ(手毬)を弔う。それと知り合いを探しに講堂も目指しておく。
2:あいつ(フレイザード)は必ずぶっ殺す。
3:グランサイファー、覚えておくか……
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※神具はないため変身はできません。
※ジータのヒールオールで(ついでで)怪我がいくらか軽微になってます
「因みに、俺はそれについていっていいのか? お嬢ちゃん。」
とりあえず優勝するという道はホル・ホースはやめにした。
理由は単純だ。さっきの戦いが普通レベルの可能性を視野に入れたからだ。
元から承太郎がいるので乗るのはやめておいた方がいいという部分はあったものの、
あんな
化け物がホイホイいるのでは、支給品がいくつあれば足りるかわかったものではない。
右手、両足を失い口に穴が空いても生き残ってる可能性のある怪物。吸血鬼のDIOだろうと苦労するに決まっている。
そしてそんなのを相手に戦える連中。すぐに自分の強さの序列を引き下げて生存を優先する以外になかった。
もともと自分を最強とは思ってないNo.2こそホル・ホースの人生哲学ではあることに揺らぎはない。
最初はどちらについていくか決めかねたが、男よりも女優先のホル・ホースらしいシンプルな理由である。
「勿論、大丈夫ですよ。確か名簿だとホル・ホースさんでしたっけ。」
「名簿に目を通して他人の名前を憶えてるのは嬉しい限りだねぇ。」
彼女がいかほどな人物か。それを見定めるときだ。
もっとも、ベリアルの目的を聞いた時はあんぐりと口を開くことになるだろう。
【ジータ@グランブルーファンタジー】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:傑剣への憧刃(デュクスラム)@シャングリラ・フロンティア(アニメ版)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~1
[思考・状況]
基本方針:ベリアルの企みを、ルシファー復活を阻止する。
1:よし、やるぞ!
2:みんな……無事でいてほしい。
3:ベルゼバブは、危険だけど頼りになるから困る。何とか説得しないと。
4:グランサイファーに向かう。動くのかな?
[備考]
※参戦時期は少なくともApocrypha:After the Fall終了後以降。
※容姿は原作におけるファイター・オリジンのものとしてます。
※制限で素では涯てにはなれません。
【ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:顔面打撲(軽微)、鼻血(小)、全身にダメージ(中)、出血(小)、疲労(大)
[装備]:薄刃乃太刀@るろうに剣心
[道具]:基本支給品一式×3、不明支給品×1~5、ネオタチカワスペシャル@TOUGH
[思考・状況]
基本方針:とにかく生き残る。脱出最優先。優勝? 無理無理
1:ジータについていく。俺は女に世界で一番優しいんだ
2:相棒になり得る参加者を探す。No.1よりNo.2だぜ、俺は。
3:できることなら女は殺したく無い。
4:承太郎はどうする? DIO様もいねーし、ほっとくか?
[備考]
※参戦時期は少なくとも承太郎と面識がある以降
※ジータのヒールオールで(ついでで)怪我がいくらか軽微になってます
「賭けには勝てたが、雑魚相手にまさか俺が此処までやられるか……!!」
フレイザードは空の底へ落ちる不運を回避し、何とか地上に落ちることはできた。
とは言え既に身体はボロボロだ。再生して見た目は取り繕ったものの、
体力やMPはごっそり持っていかれた。一番侮っていた小娘相手に、
此処までしてやられるとは思いもせず怒りは募る。
【???/深夜/1日目】
【フレイザード@DRAGON QUEST -ダイの大冒険ー】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、再生中(見た目だけ取り繕ってる)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考・状況]
基本方針:優勝してバーン様に捧げる。
1:奴(妓夫太郎)のような連中は今はほっとくに限る。
2:あのガキ(手毬)にしてやられた。生きてたならやり返す。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
再生力は落ちています。
また、再生にも体力を消費します。
※少なくとも西のエリアのどこかに落ちました。
【傑剣への憧刃(デュクスラム)@シャングリラ・フロンティア(アニメ版)】
ジータに支給。ひたすら頑丈な両刃の片手剣。
原作では更にクリティカルを出せば耐久値減少を無視して斬ることができる。
実際はそこまでクリティカルを連続できる者は少ないのでまぁ便利だね、程度の武器。
ただしサンラクが使用したため、色々大変なことになった。
【エムブラスクの剣@グランブルーファンタジー】
手毬に支給。元々はベアトリクスが使用していた封印武器の一つ。
自身が逆境であればあるほど威力が増大する力を放つことができる。
意思があるようではあるが、基本ベアトリクスにしか伝わることはない。
気分とノリで形状も多少変化するそうだが、本ロワでは基本形状はシンプルな剣のみとなる。
最終更新:2026年03月28日 22:47