<7,共同戦線(後編)>
研究員より渡された明細な資料を読みながら、シュワルツはダルナスを見上げている。
多少の不都合はあったものの、どうやら無事に起動まで持っていけそうだ。起動条件であるエネルギーの充填率は、すでに95%を切っている。
どうやら先程までに薄々感じていた不安は杞憂の様だ。後はダルナスを起動し、今までの戯れを消し去れば良い。
シュワルツは含み笑いすると、資料を研究員に渡し、改めてダルナスを見上げる。その時だ。
多少の不都合はあったものの、どうやら無事に起動まで持っていけそうだ。起動条件であるエネルギーの充填率は、すでに95%を切っている。
どうやら先程までに薄々感じていた不安は杞憂の様だ。後はダルナスを起動し、今までの戯れを消し去れば良い。
シュワルツは含み笑いすると、資料を研究員に渡し、改めてダルナスを見上げる。その時だ。
「シュワルツ様」
研究員に呼ばれ、シュワルツはハンガーから降りる。モニターを見張る研究員の表情には陰りがある。
「先程、例の自動人形の探索で出動した黒騎士の反応ですが、全て途絶えました」
「……レフトからの連絡は?」
「こちらから何度も応答する様に呼びかけていますが、全く……」
研究員に呼ばれ、シュワルツはハンガーから降りる。モニターを見張る研究員の表情には陰りがある。
「先程、例の自動人形の探索で出動した黒騎士の反応ですが、全て途絶えました」
「……レフトからの連絡は?」
「こちらから何度も応答する様に呼びかけていますが、全く……」
一方酒場というと。険しい目つきを浮かべ、ショウイチと対峙するギーシュと、どう説明するべきかが纏まらず、視線をウロウロさせるトニー。
そして、そんな二人と違ってどこ吹く風といった感じで飄々としているショウイチの三人のせいで何とも言えない奇妙な空気感が漂っていた。
誰か一人でも口火を切れば爆発しそうな、ひりひりする様な緊張感もその空気に拍車を掛けている。
そして、そんな二人と違ってどこ吹く風といった感じで飄々としているショウイチの三人のせいで何とも言えない奇妙な空気感が漂っていた。
誰か一人でも口火を切れば爆発しそうな、ひりひりする様な緊張感もその空気に拍車を掛けている。
周囲の村人達は、とりあえず危機が去った事は分かったものの、三人の会話に耳を傾ける為に動かずにその場で留まっている。
やがて、待ちかねたようにギーシュが話を切り出した。
やがて、待ちかねたようにギーシュが話を切り出した。
「取りあえずあんたって呼び方は失礼だったな。すまない。まず聞きたい事がある。君は、俺達の敵か、味方かどっちだ?」
誰かが唾を飲み込む音がする。それほど場は静まっているのだ。ショウイチの返答を聞く為に。
ショウイチはくるくるとライフルを回しながらあくびをして、ギーシュに向き合い、答えた。
誰かが唾を飲み込む音がする。それほど場は静まっているのだ。ショウイチの返答を聞く為に。
ショウイチはくるくるとライフルを回しながらあくびをして、ギーシュに向き合い、答えた。
「はっきり言えば、僕は貴方達の敵でも味方でもない。ただ単に働き口を探す愚かな旅人です」
「……困る返答だな。はっきりしてくれないと敵と判断するぞ」
「……困る返答だな。はっきりしてくれないと敵と判断するぞ」
空気に痺れたのか、ショウイチの返答に拍子抜けしたのか、ギーシュは苦笑した。苦笑いを浮かべたまま、ギーシュは語りだす。
「この村に来てまもない君に理解しろというのも酷な話だが、この村は自動人形に何もかも支配されててな。
悪いが俺達は、自動人形に対して良いイメージは持てないのさ。むしろ……憎んでいる」
ギーシュはあくまで明るく語っているが、言葉の節々にははっきりとした怒気が滲んでいた。
ショウイチは黙ってギーシュの言葉を黙って聞いている。トニーはショウイチを庇おうとするが、上手く言葉が出てこない。
悪いが俺達は、自動人形に対して良いイメージは持てないのさ。むしろ……憎んでいる」
ギーシュはあくまで明るく語っているが、言葉の節々にははっきりとした怒気が滲んでいた。
ショウイチは黙ってギーシュの言葉を黙って聞いている。トニーはショウイチを庇おうとするが、上手く言葉が出てこない。
「だが、不思議なんだ。君の、いや、正確には君が連れてる、あの自動人形を見てると憎むというか、なんつうか……。
憎むべき対象に見えないんだ。教えてくれ。君は何なんだ? ヒーローかなんかか?」
憎むべき対象に見えないんだ。教えてくれ。君は何なんだ? ヒーローかなんかか?」
自分の緊張を解く為か、ギーシュはワザとおどけた感じで、ショウイチに問いた。
ショウイチは髪を掻きながら数秒、悩む動作を見せると明快な口調で答えた。
ショウイチは髪を掻きながら数秒、悩む動作を見せると明快な口調で答えた。
「さっきも言ったとおり、無一文の旅人ですよ。ちょっと厄介な荷物を抱えた……ね」
空気が、凍った。ショウイチの気取った言葉にか、それとも期待していた答えでは無かった事に対する村人達の失望か。
トニーは何故だが自分が猛烈に恥をかいた様な感覚に囚われる。トニー自身は何も言っていないのだが。、
ショウイチが空気を察したのか、あ、あれ? とキョロキョロと視線を漂わせた。皆、ショウイチに目が合わぬように視線を伏せる。
とはいえ、ショウイチの発言がきっかけなのか、さっきまでの滞っていた空気が不思議に緩和されていく。
トニーは何故だが自分が猛烈に恥をかいた様な感覚に囚われる。トニー自身は何も言っていないのだが。、
ショウイチが空気を察したのか、あ、あれ? とキョロキョロと視線を漂わせた。皆、ショウイチに目が合わぬように視線を伏せる。
とはいえ、ショウイチの発言がきっかけなのか、さっきまでの滞っていた空気が不思議に緩和されていく。
ショウイチの答えに、ギーシュの口元が次第に緩み、やがて大声で笑い始めた。
しばらく笑うと、ギーシュは涙目を掌で拭いてショウイチに話しかける。
しばらく笑うと、ギーシュは涙目を掌で拭いてショウイチに話しかける。
「すまない、笑うつもりはなかったんだ。ただ、予想してた答えと全く違ったからさ。
いやはや、こんな状況でそんなちゃらんぽらんな台詞を言うとは思わなかったよ」
「僕自身はいたって真面目なんですけどね……」
いやはや、こんな状況でそんなちゃらんぽらんな台詞を言うとは思わなかったよ」
「僕自身はいたって真面目なんですけどね……」
ギーシュに対して、ショウイチは納得いかないといった口調で返す。つぼに入ったのか、ギーシュはまたも笑いだした。
数秒笑うと、ギーシュは呼吸を沈めながら、言葉を続ける。
数秒笑うと、ギーシュは呼吸を沈めながら、言葉を続ける。
「なんとなく分かった。君は悪い人間じゃない。むしろちょっと抜けてるが正義の味方に見えるよ。
だが言ったよな。君に関する全てを話してもらうって。まぁ……敵じゃないと知った以上、無理にとは言わないがな」
だが言ったよな。君に関する全てを話してもらうって。まぁ……敵じゃないと知った以上、無理にとは言わないがな」
「その前に」
ライフルを回して肩に掲げると、ショウイチはおどけた表情から一転、真剣な表情になり、凛とした芯の通った声で言った。
「この村で何が起こってるのかを教えて頂けますか? さっきから悪党に聞いてるんだが教えて貰えなくてね」
ライフルを回して肩に掲げると、ショウイチはおどけた表情から一転、真剣な表情になり、凛とした芯の通った声で言った。
「この村で何が起こってるのかを教えて頂けますか? さっきから悪党に聞いてるんだが教えて貰えなくてね」
シュワルツは理解する。この村やって来た例の自動人形が、自らの想像を遥かに凌ぐ存在だという事に。
数分前、研究員の一人が青ざめながら走って来た。黒騎士の残骸から取り出した記憶装置を映像に変換したディスクを、シュワルツに見せたいという。
ダルナス起動前という事で、モチベーションを高めたいシュワルツは煙たく感じたが余興程度に見てみる事にした。
数分前、研究員の一人が青ざめながら走って来た。黒騎士の残骸から取り出した記憶装置を映像に変換したディスクを、シュワルツに見せたいという。
ダルナス起動前という事で、モチベーションを高めたいシュワルツは煙たく感じたが余興程度に見てみる事にした。
圧倒された。映像に映し出された、異邦者である緑色の自動人形は、黒騎士達を圧倒的な力でなぎ倒していく。
自動人形に仕込まれた見た事も無い内臓兵器が、屈強な黒騎士が原形も無いほどに破壊されていく様は、シュワルツにとって言いしれぬ感情を抱かせた。
レフトとライトが黒騎士を連れても勝てなかった理由が分かる。レベルが違うのだ。黒騎士と、緑色の自動人形では。
自然に、シュワルツの口元から笑みが零れる。これは私に対する運命だ。神が与えた、越えるべき試練……。
笑っているシュワルツに、研究員は鳥肌が立つのを感じた。するとシュワルツは、研究員を見、笑顔を浮かべながら言った。
自動人形に仕込まれた見た事も無い内臓兵器が、屈強な黒騎士が原形も無いほどに破壊されていく様は、シュワルツにとって言いしれぬ感情を抱かせた。
レフトとライトが黒騎士を連れても勝てなかった理由が分かる。レベルが違うのだ。黒騎士と、緑色の自動人形では。
自然に、シュワルツの口元から笑みが零れる。これは私に対する運命だ。神が与えた、越えるべき試練……。
笑っているシュワルツに、研究員は鳥肌が立つのを感じた。するとシュワルツは、研究員を見、笑顔を浮かべながら言った。
「由々しき事態ですね。予定より早めにダルナスを起動する事にしましょう」
酒場。ギーシュはショウイチに全ての事を話した。シュワルツが突如村にやってきた事、そして自動人形――――黒騎士で村人達を支配しだした事。
圧政を行い、村人達の経済状況を異常なほどに圧迫した事。村長を殺害し、この村を使って実験と称して巨大な自動人形を動かすという事を。
ショウイチはギーシュの語りに時折頷きながら、自分の中で散らばっていた考えが纏まっていくのを感じる。
農作物の不作、黒騎士、そしてライトとレフトという二人の男。シュワルツという男は……。
圧政を行い、村人達の経済状況を異常なほどに圧迫した事。村長を殺害し、この村を使って実験と称して巨大な自動人形を動かすという事を。
ショウイチはギーシュの語りに時折頷きながら、自分の中で散らばっていた考えが纏まっていくのを感じる。
農作物の不作、黒騎士、そしてライトとレフトという二人の男。シュワルツという男は……。
「俺が伝えるべき事はこれだけだ。で、トニー。お前は俺に言いたい事があるんじゃないか?」
語りを止めたギーシュが、ニヤリとしながらトニーの方を向いた。
黙ってギーシュの話を聞いていた為、トニーはハッとすると、慌てて話し始めた。
語りを止めたギーシュが、ニヤリとしながらトニーの方を向いた。
黙ってギーシュの話を聞いていた為、トニーはハッとすると、慌てて話し始めた。
「あっと、そうだった……俺がショウイチ君の事を把握したのは正確には今日の朝なんだ。
クレフがウチの前でショウイチ君が倒れてた所を助けたみたいでさ。その時には正直変な人だなぁと思ってたよ。
けど、ここに来る前に話した時と、今ので確信した。彼は信用に値する人間だ。俺が保証する」
そう言ってトニーは力強く唸って見せた。……だが、ギーシュはニヤニヤしたまま、皮肉っぽく返す。
クレフがウチの前でショウイチ君が倒れてた所を助けたみたいでさ。その時には正直変な人だなぁと思ってたよ。
けど、ここに来る前に話した時と、今ので確信した。彼は信用に値する人間だ。俺が保証する」
そう言ってトニーは力強く唸って見せた。……だが、ギーシュはニヤニヤしたまま、皮肉っぽく返す。
「何か色々言葉が足りない気がするが、親友のお前の言葉だ。俺もショウイチ……」
言いかけて、ギーシュはショウイチに視線を向けた。ショウイチも気づいたのか、視線を返す。ギーシュが視線を向けながら言った。
「そろそろ君の事も話してもらいたい……と、言いたいがここに何時までもいる訳にも行かんな」
言いかけて、ギーシュはショウイチに視線を向けた。ショウイチも気づいたのか、視線を返す。ギーシュが視線を向けながら言った。
「そろそろ君の事も話してもらいたい……と、言いたいがここに何時までもいる訳にも行かんな」
ギーシュは手でメガホンの形を作ると、村人達に向けて大声を上げた。
「今から一時間後に全員炭坑場に集合してくれ! 出来るだけ最低限必要な荷物でな! そこで避難ルートを教える!
良いか、本当に必要な物だけ持ってくんだぞ! 一時間後だ!」
「今から一時間後に全員炭坑場に集合してくれ! 出来るだけ最低限必要な荷物でな! そこで避難ルートを教える!
良いか、本当に必要な物だけ持ってくんだぞ! 一時間後だ!」
ギーシュの言葉に村人達は少しざわついたが、理解したのか一人二人と酒場から足早に出ていく。
ギーシュは自分と共にシュワルツに立ち向かう11人に対して、村人達をサポートするよう指示を出す。承諾した11人は言うが早く酒場から出て行った。
トニーがメルティに手を絡ませ、額を付けると優しい声で伝える。
ギーシュは自分と共にシュワルツに立ち向かう11人に対して、村人達をサポートするよう指示を出す。承諾した11人は言うが早く酒場から出て行った。
トニーがメルティに手を絡ませ、額を付けると優しい声で伝える。
「後で必ず合流する。指示に従って、速やかに炭坑場に向かってくれ」
「うん。あっちで待ってる」
そう言って、メルティはトニーと口づけを交わした。一方、クレフはギーシュに有無を言わさず抱きついた。
「うん。あっちで待ってる」
そう言って、メルティはトニーと口づけを交わした。一方、クレフはギーシュに有無を言わさず抱きついた。
「死んだら、絶対に許さないから」
「あぁ、約束だ」
「あぁ、約束だ」
メルティとクレフを最後に、酒場に集まった村人達は避難の為に酒場を後をした。
しんと静まった酒場には、ギーシュとショウイチ、其れにトニーだけが残っている。
しんと静まった酒場には、ギーシュとショウイチ、其れにトニーだけが残っている。
「さっきの発言、どういう真意で言ったんだ? 俺達が君を糾弾しないとも限らないんだぞ」
若干の疑念も込め、ギーシュがショウイチに問い、トニーは無言でショウイチに顔を向ける、ショウイチは首筋を指で掻きながら、あくび交じりで返答する。
「ヒーローって言われるがむず痒いんですよ。そういう人種じゃないんですよね、僕」
若干の疑念も込め、ギーシュがショウイチに問い、トニーは無言でショウイチに顔を向ける、ショウイチは首筋を指で掻きながら、あくび交じりで返答する。
「ヒーローって言われるがむず痒いんですよ。そういう人種じゃないんですよね、僕」
「それで、僕の事を知りたいって言ってましたよね。……参っちゃうな」
ライフルのカートリッジを取り出し、弾数を確認する。それほどレフトは使っていなかったのか状態がそれほど悪くなく、十分実用に耐える事ができそうだ。
ショウイチのライフルを弄る手つきは非常にこなれている。まるで日常的な習慣をこなしているように。
カートリッジを再装填し、引き金を引く。天井に開いた穴から夜空へと、ライフルの銃弾が吸い込まれていく。
ショウイチのライフルを弄る手つきは非常にこなれている。まるで日常的な習慣をこなしているように。
カートリッジを再装填し、引き金を引く。天井に開いた穴から夜空へと、ライフルの銃弾が吸い込まれていく。
「正直、僕は過去についてあまり思い出すことはしたくないんです。どう言えばいいのか……」
銃口から流れる煙が、ショウイチにまとわりつく。ショウイチは嫌がる動作はしない。
「昔、自動人形に入れ込んでいた設計者がいましてね。その設計者はただひたすら、馬鹿みたいに自動人形に入れ込んでいました」
銃口から流れる煙が、ショウイチにまとわりつく。ショウイチは嫌がる動作はしない。
「昔、自動人形に入れ込んでいた設計者がいましてね。その設計者はただひたすら、馬鹿みたいに自動人形に入れ込んでいました」
ショウイチはギーシュ達に自らの過去を語りはじめる。ある一点だけには触れない様に。
ショウイチが語る設計者――――彼は世界がこの状態になる前は、自動人形の開発に人生を懸けていた。
愚直なまでに自動人形に入れ込んでおり、彼にとって自動人形とは生きる術であり、存在意義である。
彼の能力は抜きんでており、まさに自動人形に関しては天武の才と言っても過言ではなく、周囲から羨望されていた。
愚直なまでに自動人形に入れ込んでおり、彼にとって自動人形とは生きる術であり、存在意義である。
彼の能力は抜きんでており、まさに自動人形に関しては天武の才と言っても過言ではなく、周囲から羨望されていた。
何時頃だったか――――彼の元に、軍から依頼が飛び込んできた。彼の能力の高さを耳に挟んだ為、新型自動人形の設計、開発を依頼したいと。
彼は自らの才能を最高に活かせるチャンスだと思い、勿論軍の依頼を呑みこんだ。
彼は自らの才能を最高に活かせるチャンスだと思い、勿論軍の依頼を呑みこんだ。
それが全ての終わりを告げるとは、彼は思いもしなかった。いや、知る事など出来る筈がない。何故なら軍も――――。
軍が彼に見せたのは、ブラックキューブと呼ばれる新機軸のエネルギーだ。
宇宙の隕石より採取したというそれは、いかなる実験でも傷つく事の無い非常に頑丈な資源だった。
また、汎用性に富んでおりこれが搭載された乗り物は車だろうが、飛行機だろうが、船だろうがほぼ半永久的に稼働し続ける事が出来る、夢の様なエネルギーだ。
宇宙の隕石より採取したというそれは、いかなる実験でも傷つく事の無い非常に頑丈な資源だった。
また、汎用性に富んでおりこれが搭載された乗り物は車だろうが、飛行機だろうが、船だろうがほぼ半永久的に稼働し続ける事が出来る、夢の様なエネルギーだ。
軍が依頼したのは、このブラックキューブを搭載した、軍事用の自動人形の設計、及び開発。彼はその為に、軍に呼ばれたのだ。
彼はあまりにも若すぎた。軍事用の自動人形を作らされるとは想像もしなかったのだろう、軍が出したその要求を突っぱねた。
だが、彼はある科学者である女性によって説得される。その女性に、彼は一目惚れした事もあり嫌々ながらもその要求を飲む事になる。
彼はあまりにも若すぎた。軍事用の自動人形を作らされるとは想像もしなかったのだろう、軍が出したその要求を突っぱねた。
だが、彼はある科学者である女性によって説得される。その女性に、彼は一目惚れした事もあり嫌々ながらもその要求を飲む事になる。
彼は世界中の有能な科学者や技術者と共に、若干不本意ではあるが、新型自動人形の開発を始める事になる。と……。
「……すまない、ブラックキューブって何だ? 聞いた事無いぞ、そんなの」
ギーシュがショウイチの語りを一旦止める。その顔には驚嘆とも呆然ともとれる表情が浮かんでいる。
「それはそうですよ。公には、自動人形同士の戦争で世界が衰退したと言われてますからね。この事は二人だけの秘密ですよ」
ギーシュがショウイチの語りを一旦止める。その顔には驚嘆とも呆然ともとれる表情が浮かんでいる。
「それはそうですよ。公には、自動人形同士の戦争で世界が衰退したと言われてますからね。この事は二人だけの秘密ですよ」
軍用の自動人形という事が気に食わない彼だが、それでも新型自動人形の開発に携われるというのは魅力的である事は確かだった。
彼はチームと共に、日夜真剣に、また着実に新型自動人形を作り出していく。また同時に彼は、女性に対して思いを募らしていった。
そんな日、彼は女性に対して自らの思いを告白、すると彼女も、彼に好意がある事を告げた。彼と女性はめでたく相思相愛となったのだ。
彼はチームと共に、日夜真剣に、また着実に新型自動人形を作り出していく。また同時に彼は、女性に対して思いを募らしていった。
そんな日、彼は女性に対して自らの思いを告白、すると彼女も、彼に好意がある事を告げた。彼と女性はめでたく相思相愛となったのだ。
どれほどの月日が流れただろう。長年の苦労の末、遂にブラックキューブを搭載した新型自動人形が完成する。
ブラックキューブの能力をフルに生かしたこの機体は、想像以上の能力を発揮した。如何なる兵器さえも歯が立たない、最強の武装能力。
おそらくこの機体で、世界中の軍事的なパワーバランスが一変する事になる。彼は次第に、自らの行為がどれほどの行為かに気付き、恐怖を抱いていく。
そんな彼を、女性は聖母の様に包み込んだ。精神的に沈みきっていた彼は、女性に対してこれ以上無いほどに溺れていき――――。
ブラックキューブの能力をフルに生かしたこの機体は、想像以上の能力を発揮した。如何なる兵器さえも歯が立たない、最強の武装能力。
おそらくこの機体で、世界中の軍事的なパワーバランスが一変する事になる。彼は次第に、自らの行為がどれほどの行為かに気付き、恐怖を抱いていく。
そんな彼を、女性は聖母の様に包み込んだ。精神的に沈みきっていた彼は、女性に対してこれ以上無いほどに溺れていき――――。
事件が、起こる。女性は彼を、軍を裏切り、潜伏していた一派と共に新型自動人形のデータを奪取、そしてブラックキューブの居所を他国、いや世界中にリークした。
彼女は科学者では無かった。世界に破滅をもたらす、過激で残虐なテロリストの一員だったのだ。
世界中に降り注いだブラックキューブの情報が、世界を戦争の炎に巻き込むのに時間はそう掛からなかった。
表向きは自動人形による戦争だが、本来はブラックキューブを独占する為の、あまりにも醜く凄惨な戦争は、一度世界の滅びという結末で終息する。
世界中に降り注いだブラックキューブの情報が、世界を戦争の炎に巻き込むのに時間はそう掛からなかった。
表向きは自動人形による戦争だが、本来はブラックキューブを独占する為の、あまりにも醜く凄惨な戦争は、一度世界の滅びという結末で終息する。
彼はどうしたかと言えば、その新型自動人形の設計者としての責任を取る為に、自ら新型自動人形を引き取り、彼女の所属するテロリストを――――。
全ての事が終わり、満身創痍になった彼は闇に潜み、その新型自動人形を改修し、更に言えば今度こそ人の為に自らの人生を捧げる事を誓った。
やがて彼は、自らの名前を捨て、かつて少年の頃、自分が描いていた空想小説の主人公の名前で生きていくことを決めた。それが……。
全ての事が終わり、満身創痍になった彼は闇に潜み、その新型自動人形を改修し、更に言えば今度こそ人の為に自らの人生を捧げる事を誓った。
やがて彼は、自らの名前を捨て、かつて少年の頃、自分が描いていた空想小説の主人公の名前で生きていくことを決めた。それが……。
「……あっと、すまない、どう言っていいのかが全く浮かばねえ。……ウソ、じゃないよな?」
「正直、俺も信じられないよ……君がそんな……」
各々戸惑いながら、トニーとギーシュはショウイチの過去について感想を述べた。
「正直、俺も信じられないよ……君がそんな……」
各々戸惑いながら、トニーとギーシュはショウイチの過去について感想を述べた。
「というか、ブラックキューブなんて資源があったなんてホントに聞いた事無いよ。ニュースでも新聞でも」
「新しい資源が原因で戦争なんて、市民に知られたら各国の威厳がガタ落ちしますからね。はっきり言ってしまえば……」
トニーの台詞に対して、ショウイチははっきりとした声でそう言いながらライフルを振りおろした。
「新しい資源が原因で戦争なんて、市民に知られたら各国の威厳がガタ落ちしますからね。はっきり言ってしまえば……」
トニーの台詞に対して、ショウイチははっきりとした声でそう言いながらライフルを振りおろした。
「貴方達が教えられている情報は、全てフェイクストーリー、つまり作られた情報と言ってもおかしくないですよ。それほど奴らは真実を隠したがる」
瞬間、ゾクリと空気が変わった……様な気がして、二人は体を震わせた。何故だか鳥肌が立っている。無論寒さではない。
瞬間、ゾクリと空気が変わった……様な気がして、二人は体を震わせた。何故だか鳥肌が立っている。無論寒さではない。
「何はともあれ、君の事は分かった。話してくれて本当にありがとう」
「いえ、僕こそ強引な手段で協力を煽いでしまって……本当にごめんなさい」
そう言いながら、ショウイチは二人に対して頭を下げた。
「いえ、僕こそ強引な手段で協力を煽いでしまって……本当にごめんなさい」
そう言いながら、ショウイチは二人に対して頭を下げた。
(……本当に別人みたいだ)
ショウイチの様子に、トニーは心の中でそう思った。目の前の青年の過去がこれほど凄惨だとは思いもしなかったのだ。
だが考えてみれば可笑しくないとは思う。ライトに対する戦い方にしろ、先程のレフトへの先制攻撃にしろ。
なにしろ、タウエルンという自動人形がその過去を裏付ける何よりの証拠だと思う。
ショウイチの様子に、トニーは心の中でそう思った。目の前の青年の過去がこれほど凄惨だとは思いもしなかったのだ。
だが考えてみれば可笑しくないとは思う。ライトに対する戦い方にしろ、先程のレフトへの先制攻撃にしろ。
なにしろ、タウエルンという自動人形がその過去を裏付ける何よりの証拠だと思う。
「それじゃ、俺は先に炭坑場に行くよ。それじゃあギーシュ、ショウイチ君。また後で」
互いに拳を合わせた後、トニーはそう言って、酒場を後にする。酒場にショウイチとギーシュだけが残る。
互いに拳を合わせた後、トニーはそう言って、酒場を後にする。酒場にショウイチとギーシュだけが残る。
「さっき聞けなかったんですが、兵力はどれくらいあるんですか?」
ショウイチの疑問にギーシュはすこし考える素振りを見せると、返答した。
ショウイチの疑問にギーシュはすこし考える素振りを見せると、返答した。
「俺を合わせて、元軍隊所属の12人だ。昔、この村は軍隊の駐屯地になってて僅かながら銃器が残ってる。それと」
「それと?」
「俺達は仕事柄、爆発物を扱ってるからな。ダイナマイト諸々がある」
「それと?」
「俺達は仕事柄、爆発物を扱ってるからな。ダイナマイト諸々がある」
「……間違っても特攻とかしないでくださいね」
ショウイチの言葉にギーシュはさりげなく視線を逸らした。ショウイチはため息をつく。
「ギーシュさんには申し訳ありませんが、僕の考える作戦でシュワルツに対抗したいと思います。いいですか?」
ショウイチの言葉にギーシュはさりげなく視線を逸らした。ショウイチはため息をつく。
「ギーシュさんには申し訳ありませんが、僕の考える作戦でシュワルツに対抗したいと思います。いいですか?」
「逆らえる訳無いだろ。君の方がずっと経験豊かだ。色んな意味で」
「任して下さい。僕は誰も死なす気はありませんから。……亡くなった村長さんの為にも」
「任して下さい。僕は誰も死なす気はありませんから。……亡くなった村長さんの為にも」
ショウイチはそう言って、ギーシュに右手を差し出した。ギーシュは頷くと、力強く左手でショウイチの右手を組んだ。
「取り戻しましょう。シュワルツに奪われた平穏と誇りを」
「あぁ。追い詰められた窮鼠の怒り、奴に教えてやろう」
「取り戻しましょう。シュワルツに奪われた平穏と誇りを」
「あぁ。追い詰められた窮鼠の怒り、奴に教えてやろう」
続く
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