タウエルンとショウイチが乱入する数分前の上空にて。
「もうすぐ着きそうだな。反応はどうだ、タウ」
「ちょっと待って……動体反応が一点に集中してる。多分トニーさん達がいる場所だと思う」
「自動人形はどうだ? 少数ならそれなりに対処できるが」
「んっと……6機以上、10機以下……かな? 建物に居るから明確にブラックキューブの数を捉えられない、ごめん」
「……タウ、ちょっとパネル弄るぞ。しかしいつも以上に消費量が多いな。粒子が肝心な場面で切れなきゃいいが」
「もうすぐ着きそうだな。反応はどうだ、タウ」
「ちょっと待って……動体反応が一点に集中してる。多分トニーさん達がいる場所だと思う」
「自動人形はどうだ? 少数ならそれなりに対処できるが」
「んっと……6機以上、10機以下……かな? 建物に居るから明確にブラックキューブの数を捉えられない、ごめん」
「……タウ、ちょっとパネル弄るぞ。しかしいつも以上に消費量が多いな。粒子が肝心な場面で切れなきゃいいが」
ショウイチとレフトの視線がぶつかり合う。レフトはショウイチの台詞に口元を歪ませ、冷静な口調で返す。
「何を言い出すかと思えば……お前は状況を理解しているのか?」
レフトが右腕を上げると、レフトの背後に佇む黒騎士達が一斉に槍を掲げた。その数、延べ6機。対してタウエルンは1機。
一見すると不利なのは明らかにタウエルン側だが……。レフトは悠然と大股で歩きながら、ショウイチに語る。
「何を言い出すかと思えば……お前は状況を理解しているのか?」
レフトが右腕を上げると、レフトの背後に佇む黒騎士達が一斉に槍を掲げた。その数、延べ6機。対してタウエルンは1機。
一見すると不利なのは明らかにタウエルン側だが……。レフトは悠然と大股で歩きながら、ショウイチに語る。
「のこのこと俺の前に出て来た勇気は褒めてやろう。だがな。さっき、お前は俺になんて言った?
全てを話してもらう? おいおい、逆だろ。お前が俺に全てを話すんだ。お前が連れているその……」
ショウイチの横で立ち止まり、レフトは一度語りを止める。粘着質な視線で、ショウイチを睨みながら再開。
全てを話してもらう? おいおい、逆だろ。お前が俺に全てを話すんだ。お前が連れているその……」
ショウイチの横で立ち止まり、レフトは一度語りを止める。粘着質な視線で、ショウイチを睨みながら再開。
「化け物の事をな」
同時に、レフトは思いっきりショウイチの腹筋を握り拳で全力を込めて殴打した。鈍い音が周囲に響き渡る。
同時に、レフトは思いっきりショウイチの腹筋を握り拳で全力を込めて殴打した。鈍い音が周囲に響き渡る。
「!? ショウイ……」
「おっと、動くなトニー・クロウス。もし下手にこいつを庇って見ろ。黒騎士がいる事を忘れるんじゃない」
反射的に立ち上がろうとしたトニーに気付き、レフトは鋭い声でトニーの動きを制した。
黒騎士達が掲げた槍を村人達に向ける。村人達は畏縮し、身動きが取れなくなっている。トニーはくっと歯ぎしりをした。
「おっと、動くなトニー・クロウス。もし下手にこいつを庇って見ろ。黒騎士がいる事を忘れるんじゃない」
反射的に立ち上がろうとしたトニーに気付き、レフトは鋭い声でトニーの動きを制した。
黒騎士達が掲げた槍を村人達に向ける。村人達は畏縮し、身動きが取れなくなっている。トニーはくっと歯ぎしりをした。
トニーと同じく、ギーシュも苛立ちと焦りを感じていた。理由は二つある。
レフトによって、動く事を封じられている事と、突如空から落ちてきた、得体の知れないロボットにあの男の素性だ。
屈んでいる為、あの男の顔は見えない。だが妙に聞き覚えのある声だ。どこかで聞いた様な……。まぁそれはひとまず置いておく。
最初はレフトの仲間かと思ったが、何やら様子が違う。あの男はレフトに対して、敵対している様なセリフを吐いた。
単純に考えて、レフトとあの男は味方同士ではなく、敵対しているようだ。だが安心する気は無い。あの男が、我々の味方とは限らないからだ。
レフトによって、動く事を封じられている事と、突如空から落ちてきた、得体の知れないロボットにあの男の素性だ。
屈んでいる為、あの男の顔は見えない。だが妙に聞き覚えのある声だ。どこかで聞いた様な……。まぁそれはひとまず置いておく。
最初はレフトの仲間かと思ったが、何やら様子が違う。あの男はレフトに対して、敵対している様なセリフを吐いた。
単純に考えて、レフトとあの男は味方同士ではなく、敵対しているようだ。だが安心する気は無い。あの男が、我々の味方とは限らないからだ。
ふと、レフトとトニーの会話が頭をよぎる。レフトがトニーに行った「自動人形」という言葉。
あの男とトニーが関係しているとしたら……。その時、俺はどうすればいい? 何故か軽く手が震える。
と、ギーシュはふと自分の周囲の変化に気付く。空気中にキラキラと光る粒子が散らばりながら浮遊している事に。
あの男とトニーが関係しているとしたら……。その時、俺はどうすればいい? 何故か軽く手が震える。
と、ギーシュはふと自分の周囲の変化に気付く。空気中にキラキラと光る粒子が散らばりながら浮遊している事に。
「ねぇ、お姉ちゃん……」
「し! 今は静かにしてないとまずいわよ、クレフ」
あくまで小声だが、声を発したクレフにメルティは声を出さぬように、口に人差し指を立てた。
クレフは小さく首を振ると、目線を宙に漂わせて、二言目を発した。
「あいつは気付いてないみたいだけど、さっきから変なのが浮いてるんだよね。何か埃みたいなのが……」
「埃……?でも埃にしちゃ変ね。何かキラキラしてて……」
「し! 今は静かにしてないとまずいわよ、クレフ」
あくまで小声だが、声を発したクレフにメルティは声を出さぬように、口に人差し指を立てた。
クレフは小さく首を振ると、目線を宙に漂わせて、二言目を発した。
「あいつは気付いてないみたいだけど、さっきから変なのが浮いてるんだよね。何か埃みたいなのが……」
「埃……?でも埃にしちゃ変ね。何かキラキラしてて……」
「そうそう、言い忘れていたが、お前も妙な行動を取るなよ。こいつらを死なせたくなきゃな」
トニーから向き直り、レフトが、ショウイチにそう告げた。その口調には、勝利を確信したという余裕がある。
だが、レフトはふと妙な感覚に囚われる。状況は優位なはずだ。こちらに落ち度など何もない。
自分がすぐにでも命令すれば、黒騎士達が村人達に鉄槌を加える事が出来る。奴らに選択権など無い。だが――――。
トニーから向き直り、レフトが、ショウイチにそう告げた。その口調には、勝利を確信したという余裕がある。
だが、レフトはふと妙な感覚に囚われる。状況は優位なはずだ。こちらに落ち度など何もない。
自分がすぐにでも命令すれば、黒騎士達が村人達に鉄槌を加える事が出来る。奴らに選択権など無い。だが――――。
何故お前は微動だにしないんだ? 不気味なほどに、ショウイチはレフトに対して反応を見せない。
あくまで自分本意ではあるが、完全に今の殴打、というかストレートは入ったはず。その種の人間ならともかく、普通の人間ならとっくに崩れ落ちている筈だ。
百歩譲って俺の殴打に耐えるほど屈強な人間だとしても、大勢の人間が死ぬ事に何ら戸惑いは無いのか……?
何故だ、何故お前は何の反応も見せないんだ? お前の命だけでなく、目の前の人間の命が脅かされているというのに。
あくまで自分本意ではあるが、完全に今の殴打、というかストレートは入ったはず。その種の人間ならともかく、普通の人間ならとっくに崩れ落ちている筈だ。
百歩譲って俺の殴打に耐えるほど屈強な人間だとしても、大勢の人間が死ぬ事に何ら戸惑いは無いのか……?
何故だ、何故お前は何の反応も見せないんだ? お前の命だけでなく、目の前の人間の命が脅かされているというのに。
と、レフトはふと気がつく。自分の右腕が、ショウイチに握られている事に。目線がショウイチに向く。
「……何のつもりだ?」
レフトの問いに、ショウイチは答える。
「良いライフルだ。――――軍属だっただろ、お前」
「……何のつもりだ?」
レフトの問いに、ショウイチは答える。
「良いライフルだ。――――軍属だっただろ、お前」
レフトの右腕を思いっきり捻り上げた。瞬間、レフトの体が腕の回転に巻き込まれるように宙に舞う。
「おぉぉぉぉぉっ!?」
ショウイチの予想もつかない行動に、レフトは驚嘆し叫び声を上げながら床に叩きつけられた。
背中から叩きつけられ、視界が真っ逆さまになる。背中に心地の悪い痛みが走り、呼吸が一時的に鈍くなる。
数秒意識が飛ぶが、すぐに気を取り直す。真っ逆さまになった視界で、レフトは槍を構えている黒騎士達に叫ぶ。
「おぉぉぉぉぉっ!?」
ショウイチの予想もつかない行動に、レフトは驚嘆し叫び声を上げながら床に叩きつけられた。
背中から叩きつけられ、視界が真っ逆さまになる。背中に心地の悪い痛みが走り、呼吸が一時的に鈍くなる。
数秒意識が飛ぶが、すぐに気を取り直す。真っ逆さまになった視界で、レフトは槍を構えている黒騎士達に叫ぶ。
「馬鹿野郎が! 黒騎士ぃぃぃ! 今すぐそいつらをぶち殺せぇ!」
レフトの叫びに対し、黒騎士達は従わ、ない。槍を構えたまま、動く様子が無いのだ。村人達も、次第に異常に気付いていく。
レフトの叫びに対し、黒騎士達は従わ、ない。槍を構えたまま、動く様子が無いのだ。村人達も、次第に異常に気付いていく。
ショウイチは屈むと、転倒したままのレフトが肩に下げたライフルを器用な手付きでするりと取り上げた。
そしてライフルを天井高く掲げる。すると、黒騎士達は槍を背中にマウントし、ショウイチの方へと一斉に片膝を付いた。
その様はショウイチに対して、忠誠を誓っている様だ。驚嘆し、瞳孔が開きっぱなしのレフトにショウイチは淡々と話す。
そしてライフルを天井高く掲げる。すると、黒騎士達は槍を背中にマウントし、ショウイチの方へと一斉に片膝を付いた。
その様はショウイチに対して、忠誠を誓っている様だ。驚嘆し、瞳孔が開きっぱなしのレフトにショウイチは淡々と話す。
「ナノマシンってのは便利なものでな。食物の成長を促す事も出来れば、同じ自動人形を壊す事も、操る事も出来るんだ。
ただ、そういう対外的な事は出来ても、自ら物体を作り出す事が出来ないのが不便だがな」
ただ、そういう対外的な事は出来ても、自ら物体を作り出す事が出来ないのが不便だがな」
くるりとライフルのトリガー部分を回して、ショウイチは銃口をレフトに向けた。
銃口の先はレフトの頭部だ。何時の間にかレフトの左足は、ショウイチの右足によって抑えられている。逃げようと思えば不可能ではない。
だが、レフトは何故だかショウイチから目を背ける事が出来ない。それはショウイチが醸しだつ、一種の威圧感からだ。
銃口の先はレフトの頭部だ。何時の間にかレフトの左足は、ショウイチの右足によって抑えられている。逃げようと思えば不可能ではない。
だが、レフトは何故だかショウイチから目を背ける事が出来ない。それはショウイチが醸しだつ、一種の威圧感からだ。
「……そうか、お前だったのか。ライトと黒騎士を倒した奴は……」
レフトが自嘲気味にそう呟く。自らの誤解に苦笑しているとも、目の前のターゲットの力を見誤っていた事に対する自虐ともとれる。
レフトが自嘲気味にそう呟く。自らの誤解に苦笑しているとも、目の前のターゲットの力を見誤っていた事に対する自虐ともとれる。
「……参ったよ。だが、俺は話さんぞ。どうせこのまま帰った所で、あのイカレ野郎は俺を殺すだろうしな」
あくまで悪態をつくレフトに、ショウイチはライフルを下ろし、レフトから目をそらさずに言葉を紡いだ。
「聞かせろ。お前もあの男も、なぜ下種な真似に走る? まだ軍は……」
あくまで悪態をつくレフトに、ショウイチはライフルを下ろし、レフトから目をそらさずに言葉を紡いだ。
「聞かせろ。お前もあの男も、なぜ下種な真似に走る? まだ軍は……」
「……捨てられたんだよ。俺もライトも。上層部の糞ったれにな。……まさか」
ショウイチは微動だにしない。が、レフトは何かを悟ったのか、小さく口元を歪ませた。
「あんただったのか。小耳に挟んだ事はあるが、これほどの野郎だったとはな……そりゃあ勝てんわな」
ショウイチは答えない。静かな水面の如く冷静な目をレフトに向けたままだ。レフトは一息吐くと、言葉を続けた。
ショウイチは微動だにしない。が、レフトは何かを悟ったのか、小さく口元を歪ませた。
「あんただったのか。小耳に挟んだ事はあるが、これほどの野郎だったとはな……そりゃあ勝てんわな」
ショウイチは答えない。静かな水面の如く冷静な目をレフトに向けたままだ。レフトは一息吐くと、言葉を続けた。
「……これから何時間後は知らねえが、巨大自動人形をあいつは動かす。あいつはやるぜ。お前らがいてもいなくても、な」
村人達がレフトの言葉にざわめく。無論、レフトが言っていたシュワルツの「実験」の意味が分かったギーシュと、話を聞いていたトニーも。
「大型自動人形……だと? そんな物を本気で……」
「そんな……そんなのって……」
村人達がレフトの言葉にざわめく。無論、レフトが言っていたシュワルツの「実験」の意味が分かったギーシュと、話を聞いていたトニーも。
「大型自動人形……だと? そんな物を本気で……」
「そんな……そんなのって……」
「それだけか?」
ショウイチの問いに、レフトは弱弱しく笑って答える。
「ライトから聞いてないのか? 俺達はただ、あいつから雇われただけだ。それ以上の事は教えられちゃいねえさ」
ショウイチの問いに、レフトは弱弱しく笑って答える。
「ライトから聞いてないのか? 俺達はただ、あいつから雇われただけだ。それ以上の事は教えられちゃいねえさ」
「……そうか。お前の身柄は捕らえる。どちらにしろ危険な存在だからな」
「その必要は無い」
ショウイチの言葉を否定し、レフトは奥歯の何かをかみ砕いた。その音に気付き、ショウイチはレフトの胸ぐらを掴んだ。
「その必要は無い」
ショウイチの言葉を否定し、レフトは奥歯の何かをかみ砕いた。その音に気付き、ショウイチはレフトの胸ぐらを掴んだ。
遅かった。レフトは笑みを浮かべたまま、口元から血を流した。血の量は次第に増し、白目を剥いたレフトはショウイチの手から崩れ落ちた。
「馬鹿野郎が……」
ショウイチは屈んで、レフトの首筋を触る。小さく首を振ると、立ち上がり、黒騎士達に向けてライフルを大きく仰いだ。
「馬鹿野郎が……」
ショウイチは屈んで、レフトの首筋を触る。小さく首を振ると、立ち上がり、黒騎士達に向けてライフルを大きく仰いだ。
黒騎士達は背中を向けると、続々と酒場から出ていく。同時にショウイチはタウエルンにも酒場から出ていくよう、声を掛けた。
「タウ、悪いがあいつらをまとめておいてくれ。後で使うから。それと、この男も頼む」
タウエルンは頷き、立ち上がるとレフトの亡骸を両腕で抱え、酒場を後にした。酒場から、自動人形と呼ばれる存在はいない。
「タウ、悪いがあいつらをまとめておいてくれ。後で使うから。それと、この男も頼む」
タウエルンは頷き、立ち上がるとレフトの亡骸を両腕で抱え、酒場を後にした。酒場から、自動人形と呼ばれる存在はいない。
「ふぅ……」
事が一段落ついて、ショウイチはトニーの方を向いて二ぃッと笑った。そこには先程の冷徹な表情を浮かべた青年はいない。
「ええっと……何はともあれ、ご無事で何よりです、トニーさん、メルティさん」
事が一段落ついて、ショウイチはトニーの方を向いて二ぃッと笑った。そこには先程の冷徹な表情を浮かべた青年はいない。
「ええっと……何はともあれ、ご無事で何よりです、トニーさん、メルティさん」
「ショウイチ君……」
「待て!」
トニーが何か言おうとその時、ギーシュがトニーに声を掛けた。ゆっくりとショウイチに近づいていく。
「待て!」
トニーが何か言おうとその時、ギーシュがトニーに声を掛けた。ゆっくりとショウイチに近づいていく。
「やっと思い出した。昨日、クレフの友人と名乗っていたな。……まぁそれは後で良い。さっき出て言った自動人形……あれは、あんたのだな?」
ギーシュの言う自動人形とはタウエルンの事であろう。ショウイチは無言で、ギーシュに向き合う。
「奴らから助けて貰った事には感謝する。だが、俺達はあんたを信頼してる訳じゃない。分かるよな? 俺が言ってる意味が」
ギーシュの言う自動人形とはタウエルンの事であろう。ショウイチは無言で、ギーシュに向き合う。
「奴らから助けて貰った事には感謝する。だが、俺達はあんたを信頼してる訳じゃない。分かるよな? 俺が言ってる意味が」
「あんたの素性を話してもらうぞ。そしてトニー。お前にも話してもらう。その男との関係をな」
↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます)
+ | ... |