創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

<最終話,夜明け>

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黒騎士の背中に乗り、ギーシュは攻撃する時期を見計らっている。ショウイチの声が聞こえたと同時に、仲間達が黒騎士をダルナスにぶつけた様だ。
不気味な顔の様な部分が次々と地面に落ちてくる。落ちてきた装甲の衝撃音に耳を塞ぎながら、ギーシュはひっそりと息を潜めてその機会を待つ。
顔は既に元の姿をしておらず、複雑怪奇な機械群と武骨なレーザー砲を露わにしていた。黒騎士を使い、ギーシュはレーザー砲の付近まで登る。
顔が剥がれてから、ダルナスの動きが止まった。おそらくタウエルンとショウイチがシュワルツのいる場所にたどり着いたのだろう。
なら、俺が今からやるべき事は一つ……。

<最終話,夜明け>

操縦桿の上に掌を浮かしながら、シュワルツは冷淡な笑みを浮かべて、ショウイチに語りかける。
「ふむ。感情的に私に攻撃を加えない所を見るとやはり君は馬鹿では無い様だ。まぁ、当り前か」
ショウイチはライフルを構えながら、タウエルンを気遣う。エネルギーを消費しすぎたのか、タウエルンはその場でじっと静止したままだ。

「一度君に会ってみたかったんだ。世界で最初のブラックキューブを搭載した自動人形……アルタイルの設計者がどんな頭をしているかを知りたくてね」
シュワルツが悪意と好奇心を異り交ぜた嘲笑的な口調でショウイチにそう聞く。
「俺はお前と話す事は無いんだ。悪い事は言わない。今すぐ投降すりゃ俺はお前に何もしないぞ」
シュワルツに対抗してか。ショウイチは口元に小さく笑みを作ると余裕たっぷりと言った感じで返答した。

「……君は頭がおかしいのか? 立場と言うものを理解していないと見える」
眉を吊り上げ、シュワルツがあくまで冷淡な調子で話す。だがその口調には明らかに今まで見せた事が無い怒りが滲んでいた。
「良いかい? 君は確か軍を抜けたそうだが、軍はいまだに君を探しているぞ。私はこう見えても、まだ軍に所属していてね」

「へぇ、そりゃあ参ったな。俺はもう軍には興味ないんだが。で、お前は何なんだ? 軍人ならなぜこんな事をする?」
全く遠慮せずにずけずけと質問し返すショウイチに、シュワルツは一瞬めまいに襲われるものの、あくまで自信に満ちた態度で返答した。
「君と言う人間は……まぁいいだろう。私は元軍人だ。あくまで表舞台では、な。この様な任務では軍人という肩書は色々と困るのでね。
 軍は今すぐ大型自動人形を回収したがっている。それも実践に耐えれる物だけをだ」

その瞬間、ショウイチの顔つきがはっきりと変わった。ライフルの矛先が、シュワルツの顔に向けられている。
ショウイチの変化に気付いたシュワルツが、再び冷淡な笑みを浮かべると煽る様に話す。
「そうか。君も軍人の肩書を捨てたんだったな。で、君は何故そんな事をしているんだ?」
「質問しているのは俺だ。軍は大型自動人形で何をしようとしている? 知っているなら包み隠さず話せ」

シュワルツの額にはっきりと青筋が走る。掛けていた眼鏡を取ると、地面に叩きつけ。思いっきり力を込めて踏みつぶした
「ここまで君が慇懃無礼な人間だとは思わなかった。もっとアカデミックな話が出来ると期待したのに……非常に残念だよ。
 君が私を殺した所で、もう君には大事な人間を守る事は出来ない」

そこまで言い切り、シュワルツはゆっくりと両手を操縦桿に振り下ろした。終わりだ、せいぜい悔やむがいい。
――――突如として浮かぶ疑問。それはショウイチがこの瞬間まで、一切手を出してこない事だ。
シュワルツはショウイチが何時、感情的に反撃してもいい様に考えながら動いている。もしショウイチが激怒して手を出した時点で、例え死すとも自分の勝ちになる。
それはショウイチがシュワルツに対して精神的に屈した事になるからだ。その時を待っていたが、ショウイチは殺意を向けていれど、全く引き金を引こうとしない。奇妙だ。

まぁ良い。あの二人を殺せば、この男は私に負けた事になる。この生意気な男の顔に、永遠に拭えない泥を塗りつけてやろう。
自然にこぼれる笑顔。シュワルツは操縦桿の球体に、掌を乗せた。青白く発光する球体。
下部のレーザー砲に、ブラックキューブより供給されるエネルギーが光となって集束する。
「さようなら、愚かな弱者よ」

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!! 行っけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
レーザー砲の砲口が光った瞬間、ギーシュはそう叫びながら、黒騎士をレーザー砲に向けて放った。同時に上部に向かって限界までジャンプする。
黒騎士は吸い込まれるようにレーザー砲まで飛んでいく。構えた槍が発射寸前の砲口に突き刺さると共に、点火されたダイナマイトが――――爆発する。
ほぼギリギリで、ギーシュは上部の縁にしがみ付いた。全身の力をフルに使い、必死な形相になりながらも這い上がる。
荒げる呼吸を抑え、目の前を見据える。そこに映るは、シュワルツ、デイト。

シュワルツは首を捻った。何秒経ってもレーザー砲が発射されない。まさかここにきて不調か?
いや、整備に抜かりは無いと研究者は言っていた。動力系統も武器系統も順調に作動していたが……。
その時、視界に見覚えのある男が映った。確か炭坑場で働いている男だ。それにトニーと友人関係を築いているとも聞いた。
シュワルツとその男の目が合う。その男、ギーシュはシュワルツに対し凄ましい怒気を浮かべながら歩いて来る。シュワルツは全てを悟り、ショウイチに怒号を上げた。

「……貴様、最初からこれを!」
「これでもマジで撃ちそうな5秒前だったぜ。ホント嫌な奴だな、お前」

その瞬間、耳をつんざく様な爆発音と共に、コックピット部が激しく揺れた。シュワルツとギーシュが同時にその場で屈む。
外では黒騎士の爆発によりレーザー砲が暴発し、発射するはずだったレーザーが拡散した事で背部に巨大な穴を開けたダルナスが上下にのたうち回っている。
しばらくダルナスはそのダメージの大きさゆえに暴れると、ゆっくりと動きを止めた。
ブラックキューブ自体は破壊できていないが、機体の大部分を占める装甲が破壊された事で、ほぼダルナスは機能を停止したと言ってもいい。

「くっ、まだだ! まだ動ける!」
シュウワルツは急いで立ち上がり、操縦桿でダルナスを動かす為に走りだした。目前に操縦桿が聳えている。
「おおっと。そうはいかないんだ」
いつの間にか、シュワルツより早く操縦桿の前に佇んだショウイチが一閃、操縦桿がボトッと音を立てて上下に切れた。
ショウイチの右腕には、タウエルンがもぎ取った高周波ナイフが握られている。「顔」の上部を切り刻んだその切れ味は綺麗に操縦桿を切断した。

「ば、馬鹿な……それは人間が持てる重量じゃないんだぞ。貴様……」
「そんな事はどうでもいい。さぁ、ここからが本番だ。軍が何を企んでるか、洗いざらい吐いて貰うぞ」
ナイフを投げ捨てると、ショウイチは後ずさりするシュワルツに肩に掲げたライフルを下ろし、銃口を向ける。
シュワルツは何故ショウイチが自分を即座に殺さなかったのかがようやく理解できた。自分が知りたい情報を聞き出したかった為だ。
異様に殺意だけを滾らせて直接行動に出なかった事は、ギーシュがレーザー砲を破壊するまでの……。

突如、シュワルツが堪えていたように笑いだす。ショウイチはライフルを向けたまま、眉一つ動かさない。
「いや、失礼。ようやく実感したよ。その自動人形にしてその持ち主か。素晴らしいよ、本当に」
「そうか」
そう言いながら、ショウイチはシュワルツの股間から数㎜離れた所を撃ち抜いた。黒々と穴が開く。
「次に余計な事をしゃべったら、お前の男の部分を容赦無く撃ち抜く。俺の言っている意味が脅しじゃない事は分かるよな」

するとシュワルツは懐から銀色に輝くボールペンの様な筒を取り出し先端のスイッチを押した。
ショウイチがそれに気付き、シュワルツの胸ぐらを掴んだ。ドスの利いた低い声で問いただす。
「何のスイッチを入れた」

シュワルツは笑顔で返答する。その表情には最後まで勝利を確信する傲慢な自信が浮かんでいた。
「こいつの自爆スイッチだよ。この村が軽く消滅する程度には威力がある。ブラックキューブも健在だしな」
反射的にショウイチがバックステップする。シュワルツがもう片方の手に拳銃を握り、ショウイチに向ける。

「一応聞いておく。そいつはいつ爆発する?」
「せいぜい3分程度だ。それまでその男と最後の時を迎えるがいい」
今にも食って掛かろうとするギーシュをショウイチは止めた。ふらつきながら立ち上がったシュワルツが、拳銃をこめかみに押しつける。

「最後に言っておく。世界に火種を撒いた貴様を世界は決して許しはしない。地獄で待っているよ」
振り向き、ショウイチにそう告げたシュワルツは笑顔のまま、拳銃の引き金を引いた。鈍い音が響き、シュワルツが絶命した。
モニター部分に自爆するまでタイムリミットが映し出され、コックピット部が緊急事態を知らせるアラームによって赤く点滅する。

呆然とシュワルツの亡骸を見降ろしていたギーシュが、ハッとしてショウイチに叫んだ。
「ど、どうする!? ショウイチ君! あと3分しかないって!」
「参りましたね。自爆装置まで考慮してなかったです」

ライフルをその場で落とし、ショウイチは苦笑しながら両手で髪の毛を掻いた。モニターのタイムは残り2分30秒。
と、今まで静止していたタウエルンが、のっそりと立ち上がった。今までの疲れを取るように、首の駆動系を撫でる仕草は人間臭くどこかユーモラスだ。
起き上がったタウエルンに気付き、ショウイチが右手を上げた。

「タウ! 大丈夫か?」
「すこし休んだから……ってギーシュさん、何でこんな所に」
ギーシュを見、タウエルンが軽く驚く。ショウイチは構わずタウエルンに近づいた。

「タウ、寝起き直後に本当に申し訳ないんだがアレを使うぞ。何分緊急事態だ。シュワルツが自爆装置を作動させやがった」
「自爆装……自爆装置!? ど、どうしようショウイチ!」
「お前が慌ててどうする。確かにちょいと今のお前にはしんどいが、もう時間が無い。幸運にもブラックキューブがまだ動いてるからな」
タウエルンの装甲をこつんと叩いて、ショウイチがタッチパネルを引き出した。素早い手順でパネルを弾く。

「でもアレって今からやって大丈夫なの? ギーシュさん達がまだ……」
「それなら心配すんな。俺はギーシュさんと一緒に脱出するから、お前は全力でこいつを送ってやれ」
そう言い切り、ショウイチがタッチパネルを戻した。タウエルンのデュエルアイが赤から青に変わる。背部の排気口が開き、微弱な粒子が放出される。

「頼んだぞ、タウ」
そう言って、ショウイチはギーシュに脱出する様に呼びかけた。ギーシュは無言で頷き返す。
タウエルンは何も答えず、ダルナスの原動力であるコックピット部の背後の巨大なブラックキューブに一歩、二歩と歩みよる。
厳重なシェルターを無理やりこじ開け、沢山のチューブによって接続されたブラックキューブが警戒する様に激しく光り輝く。
タウエルンは動じずに足を進め、遂にブラックキューブを両手で触れた。

「大丈夫なのか? タウエルンに任せて」
緊急脱出用のポールを降りながら、ギーシュが不安げにショウイチに聞いた。ショウイチはニッといつもの笑顔で振り向いた。
「あいつには、他の自動人形には無い、あいつだけの特技がありますから。吸収と解放っていうね」

ブラックキューブに両手を触れた瞬間、タウエルンの脚部と胸部の装甲の排気口、腕部の小型ソーラキャノン、背部のブースターが一斉に展開する。
タウエルンの内部にあるブラックキューブが共鳴する様に青く輝きだすと、触れているダルナスのブラックキューブが次第に輝きを失っていく。
ダルナスのブラックキューブの輝きが無くなっていくと、タウエルンのボディが青く発光し出す。否、違う。
展開した部分から、蒼い粒子がタウエルンを纏うが如く放出されているのだ。その粒子は腕部・脚部・胸部には鎧、背部には巨大な翼の形を成形した。

やがて、完全にダルナスのブラックキューブがその輝きを失う。ただの骸になったそれは、タウエルンの鉄拳でガラガラと音を立てて崩れ去った。
タウエルンは粒子によって成形された翼を羽ばたかせると、右腕を掲げ、ダルナスの装甲を突き抜け外部へと飛びだした。
モニターのタイムリミットは残り1分。ダルナスの象徴的な部分である、蛇の頭までタウエルンは翼を羽ばたかせて上昇する。

外ではダルナスから脱出したショウイチとギーシュが、大きく姿を変えたタウエルンを真摯な眼差しで見つめていた。
「あれがタウエルン、なのか……?」
「ええ。他の自動人形からエネルギーを得る事で、通常より数倍の能力を解放する。あくまで一時的ですが」
解説しながらショウイチは思う。すまない、タウ。その機能は、お前が「アルタイル」の頃を払拭しきれない枷、なんだ……。

蛇の頭に到達し、タウエルンは腕部と脚部の鎧を消滅させる。同時に右腕部に長く巨大な両刃の剣を作りだした。
「許してくれ」
タウエルンはそう呟き、蛇の顎を腕ごと貫いた。胸部の粒子を背部に回し、翼を一層大きくしたタウエルンはそのままダルナスを引き上げる。
タウエルンの駆動系が悲鳴を上げる。だがそれは悲鳴というより、タウエルンが発する獅子の様な咆哮に聞こえた。
今まで動かなかったダルナスが、少しずつ空中へと浮上していく。

ショウイチとタウエルンの視線が重なり合う。ショウイチが頷くと、タウエルンは空中を見上げて空中へと飛翔した。
ダルナスの装甲の一部がガタガタと揺れ、地上に落ちていく。タウエルンはダルナスを掲げながら、天へと上昇し続ける。
残り時間30秒。内部では時限装置の影響か小さな爆発が起こっている。

どれ程の時間戦っていたのだろうか、すでに朝日が昇っていた。しかし雲が空を覆っている為、地上からは見えなそうだ。
背部の翼と右腕部の剣が次第に形が削れて小さくなっていく。タウエルンは充填していた粒子を全て剣と翼に回す。
ひたすら上昇し続け、朝日を真正面に捉えた瞬間、タウエルンは振りかぶる様に朝日に向かってダルナスを放り投げた。瞬間、タウエルンを支えていた粒子が全て消滅する。
タウエルンは空中で支えを失い一回転すると、地上へと落ちていく。

残り20秒か……」
腕時計を見、ショウイチは呟く。飛んでいったタウエルンとダルナスの姿は雲に隠れて見えない。
あの量を見るにダルナスのエネルギーは相当な物だとは思う。しかしそれはあくまで上昇するまでの話。もしも太陽が出ていなかったら……
「神に祈るか……久々にな」

ダルナスから吸収したエネルギーも使い切ったのか、タウエルンの腕部も脚部も動く様子が無い。
駆動部に限界が来たのか、所々に火花が散っている。しかしタウエルンのデュアルアイは停止してはいない。
その視界には、朝日の影により奇妙なシルエットを作っているダルナスが見えた。しっかりとタウエルンはその姿をデュアルアイに焼きつける。
「ソーラーキャノン……展開」

先程展開していた部分が全て収納され、入れ替わるように胸部がスライドし、ソーラーキャノンが展開する。
その目標はもうすぐ爆発するダルナスに向けてだ。ちょうど朝日が輝ける位置に。
「還るんだ……元いた場所……に……」

ギーシュとショウイチが上空を見上げる。既にダルナスの爆発から数十秒は経っている。
すると雲の隙間から、大きなパラシュートに吊られて降りてくる物体が見えた。緑色のその物体は間違いない。タウエルンだ。
その瞬間、空に眩い閃光が走り、雲を晴らすような爆発が起きる。その爆発音にギーシュとショウイチがその場にしゃがみこんだ。
二人が起き上がると、覆っていた雲が晴れて、眩しい朝日が顔を覗かせた。清々しいほどの青空が広がっている。

フラフラと風に煽られながら、タウエルンが落ちてくる。ギーシュとショウイチが急いでタウエルンの方へと駆ける。
パラシュートが被っていて蒲団が引かれている様に見れるのがシュールだ。ショウイチがパラシュートを引き上げると、タウエルンの頭が見えた。
ショウイチは屈託のない笑顔で、タウエルンに声を掛けた。
「タウ、良くやったな。やっぱすごいぜ、お前」
「僕はショウイチに言われた事をしただけだよ。……この勝利はギーシュさんやトニーさん達が掴んだ勝利さ」

「おーい! ショウイチ君! ギーシュ!」
遠方から呼びかける声がして、二人はそちらを振り向いた。トニーとマイルがこちらに駆けてくる。
「トニー!? お前、何でここに!」

「ちょっと色々あって、な」
トニーがマイルに目配りする。マイルは泣き濡らした顔を俯かせると、ギーシュに深く頭を下げた。
「お、おい。コイツはどういう事だよ」
「まぁ色々あって、な」

ギーシュ達が互いの無事に安堵しているのを横目に、ショウイチはタウエルンに備え付けられたパラシュートを取り外す。
「たく、洗うのが大変なんだぜ、これ」
「いきなりアレを使うなんて思わなかったんだもん。ホントに危なかったんだよ?」
お互い軽口を叩きながら、ショウイチとタウエルンは口に言わずとも同じ事を考えている。

眩い朝日を見上げて、ショウイチは呟いた。
「明けない夜は無い……か」

「やはりあの男では無理だったか。まぁ、結果は見えていたよ」
しがわれた、しかし威圧感に満ちた声でその老人は呟いた。
汚れ一つ無い、白い軍服に身を包んだその老人は、深紅色が鮮やかなワインを一口つける。
ここはかつてシュワルツが搭乗し、トニー達の村の丘を占領していた飛行船だ。しかし今はトニーはおろかその彼が雇っていた用心棒もいない。
老人が真正面の6面にも及ぶ巨大なモニターに向けて手を振ると、モニター内の映像が一斉に消える。何を見ていたかは分からない。

「どうなさいますか?」
傍らで、髪の毛を束ねた鋭い眼光のスーツを着た女性が、老人に尋ねる。老人は再びワインを飲むと、静かに返答した。
「しばらく大型自動人形は放っておく。どちらにしろ計画は進むのだからな。それより……」

「アルタイルと誠人の行方はまだ明らかにならんのか?」



ショウイチとタウエルンがダルナス、およびシュワルツ一味を倒して1週間が経った。
あれから村に戻って来た村人達は、ショウイチとタウエルンの協力もあり、完全とは言わないまでもかつての生活を取り戻している。
その過程で認め合い、衝突しあい、そして協力し合う中で村人達と彼らは確かな絆を紡いでいった。
しかし、時は無情ながら別れの時を連れてきてしまう。今、村人達は総出で彼らに別れを告げる。

「……本当に行っちまうんだな。ずっとこの村に居てもいいんだぞ」
「そうそう、お前さえ良けりゃ今すぐ嫁さんでも」
トニーの後に続くギーシュの言葉を、クリフが頬を抓る事で食い止める。ショウイチは小さく首を振った。

「ありがとうございます、トニーさん、ギーシュさん。けど、僕の旅はまだ終われないんです。まだ僕達には、やらなきゃいけない事があるんです」
ショウイチの凛とした言葉に、トニーとギーシュは切ない表情を浮かべるものの、ショウイチを村に留める様な事は言わない。
ふと、メルティがショウイチに何かを差し出した。小さく切った封筒に、ふわふわとした物が入っている

「ちょっとした御守り。ショウイチ君がこれからも健康に旅を続けられますように」
ショウイチが封筒を開けると、可愛らしい小さな天使のぬいぐるみが付いたアクセサリーが入っていた。
ショウイチは目を瞑り、それを胸の前で握るとメルティに感謝した。メルティは柔らかな笑顔でどうもと返す。

「まぁ何だ、いつでもこの村に帰って来てくれ。どんな時でもな」
トニーがウインクしてそう言って拳を突き出した。ショウイチは照れ隠しか、少し俯くと、ゆっくりと拳を合わせる。
「ええ。また何時か、この場所で会いましょう。さよならではなく、また、何時か」

ふと妙な音が聞こえ、ショウイチはタウエルンに目を向けた。何故か背を向けている。
「……何してんだよ、お前」
「ごめん、涙が出てきて……」
「お前涙腺無いだろ」

ショウイチとタウエルンのやり取りに、村人達の間で笑いが起こる。トニーとギーシュも笑い合う。
その笑いには不思議な温かさが宿っていた。ショウイチとタウエルンも一緒に笑い合う。この一瞬を共有し合うように。

村人達に手を振りながら、トラクター形態に変形したショウイチはタウエルンに話しかける。
「結構苦戦したな。でもたまには良いだろ? こういうのも」
「苦戦ってレベルじゃなかったよ。本気でギーシュさん達が一緒に戦ってくれなかったら、多分僕達は負けてた」
「まぁ、それはそれ。上手くいったからハッピーエンドさ。細かいこたぁ……寝りゃ忘れる」

そう言い切り、ショウイチはタウエルンに寝そべった。心地良い風がショウイチの頬を撫でる。
「なぁ、タウ。お前……」
「ん?」
「いや、何でも無い」

ショウイチの心中には、シュワルツ達の事が浮かんでいた。
レフトもライトも軍に追われたと言っていた。そしてシュワルツ。奴は俺達の事を知っていた。
それだけじゃない。奴は軍部が何か企んでいることを示唆していた。最後まで、その何かについての情報を最後まで奴は吐かなかった。
それほどの事なのか? それを口外する事自体が死に繋がるほどの……。

ショウイチは起き上がると、片手で髪を掻いた。駄目だ、考える事が多すぎる。
ここは寝よう。一回頭の中をリセットしなきゃならない。次はどんな事が起きるのか、一寸先は真っ暗闇だ。

だからこそ、人生は面白い。

「タウ、次はどこに行く? 砂漠か、ジャングルか?」
「決まってるだろ、ショウイチ。畑を耕せる場所さ」
「そりゃあそうだ」





ダルナス編・終

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  • タウエルン格好良い、一家に一台欲しい - 名無しさん 2009-12-10 20:30:29

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