創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

幸せな結末 第一話

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
「博士」のガレージからいつもの様に菜園用の道具を出して、私はいつもと同じく、「博士」の残した花畑へと向かう
かつて「道路」と呼ばれたコンクリートの道は微妙に沈下していて歩きにくいが、それもいつものことだ
コンクリートの道の両隣には誰も整理していない雑草が生えっぱなしの野原が広がっている。入ると虫が付きそうで入りたくない                                                             
それにしても何故「博士」はこんな田舎に家を構えたのだろうか。もっと都会なら色々実験できたように

そんな他愛も無い事を考えているうちに、「博士」が生前残したお花畑に着いた
私の仕事は「博士」が生前、自らの財産を費やし育てたこのお花畑を管理する事。花を一つでも枯らさない様に
「博士」が私を作り出したのは、このお花畑を自分の代わりに管理させる為・・・と聞いた。その翌日、「博士」は死んでしまった
一応教えてもらった為、自分自身の整備は出来る。まがりなりにも人工知能は伊達じゃない。ただ、だからこそ困った事もある

自分の整備とお花畑の管理以外に、私には行動がセッティングされてない。だからそれ以外何をすれば良いのか分からないのだ
なのでこうやって管理している間、私はしばし哲学的な思考に入る。それすらも「博士」にプログラミングされた範囲でしかないが
と、言う訳で何時もの思考に入る。まずこれまた何時もの事だが、何故博士――いや、人類は全滅したかだ
「人」と言う名の生物が全滅してもう10年は経つ。無論コレは正確な数値ではなく、私の中の演算装置が弾き出した結果だけどね
「人」が全滅した理由は幾つか聞いた事があるけど、どれも正解とは言えない。正解を見つける前に全滅してしまったからだ

自負するわけではないが、私のようなアンドロイドが作り出せるほど世の中は発展した。にも関わらず何故全滅を避けられなかったのか
全滅と言うにはキレイ過ぎるくらいだった。本当に忽然と「人」だけが消えたのだ。私が作られた翌日に
それから私は永遠と変わらずに、このお花畑と「博士」のガレージを行き来した生活を送っている。毎日毎日
にしても・・・私はふとスコップで地面を掘るのを止めて空を仰いだ。気持ちの良い位澄んだ青空だ。何故こうも空は澄んでいるのか
私の暇と言う名の苦労を何も知らずに。少しは悩んでみろ。おっと、雨は止めてくれ錆びるから

と、気配を感じ私はスコップを掲げた。時折、小動物が闖入して花畑を荒らすことがあるからだ。
無論威嚇するだけで逃げて行くから良いけど
だが今日の闖入者は何時もとは違った。ガサガサと周りの雑草からのっそりとそれは私の前に姿を現した
「・・・君は作業型ロボットか? どうしてこんな所に?」
意外な闖入者の正体は、かつて私よりずっと前に作られた農作業サポートを用途としたロボット、1NE-KAだった
トラクターを思わせる無骨な外見と、黄と黒のカラー、それに両目を思わせる大きな愛らしい? ライトと・・・・・・

ずっと昔だが博士に聞いた話だが――私のようなアンドロイドが開発され、大量生産され始めた日
1NEの様な一つの用途にしか使えないロボットは次々と破棄されていった
なぜ破棄されたかは考えなくとも分かる。自慢ではないが命令されれば全てをこなせるアンドロイドに比べて・・・
1NEは農作業しか出来ないからだ
1NEだけではない。「ロボット」と呼ばれる物はアンドロイドの台頭と共に姿を消していった。おそらく人間の手によって
そして・・・その人間達も突如として姿を消した。世界中かは分からないが、少なくとも「博士」はそう言った。人類は全滅したと
だから今の日本に居るのは、人間以外の生物と、私や1NEの様に人類に作られた「メカ」だけだろう

思考が脇に逸れたが話を戻そう。私は目の前の1NEに視線を向けた。見るかぎり老朽化や故障部位は無さそうだ
・・・待て、それはおかしい。1NEは私が作られる数年前から生産停止にされていると聞いた
つまり今目の前に居る1NEは全く使用された事が無い事になる
だがそれもまたおかしい。何故なら「人」は全滅したのだから。1NEを起動させる事など無理だ。どう考えても
自然とスコップを持つ手に力が入る。私は想定外の事に柔軟に対応できるほどの思考は持ち合わせていない
取りあえず意思疎通が出来るかどうかを試そう。確か・・・私は両目を数回、1NEに向かって点滅させた

旧式と言うと失礼だが、 1NEの様に昔の世代のロボットは「人」やアンドロイドみたいに音声による通信は出来ない
光の点滅で使用者や同式と通信しあう。「人」でいうモーリス信号と例えれば分かりやすいか。では早速
私は数回に分けて両目を点滅した。内容は
「ドウヤッテ ココマデ キタ? イッタイ ドコカラ?」

数分経ち、1NEは微動だにせずライトを点滅し、私に返答した。何々・・・
「キヅケバ ココニ キテイタ ナニモ ワカラナイ」
……私はしばし思考を止めた。そんな馬鹿な。自分がどう起動したか覚えて無いなんて
私は再度、両目を点滅させて1NEに問いただした
「モウイチド キク ダレガ キミヲ キドウサセタ? ソシテ ドウヤッテ ココマデ キタ?」

その時だ、1NEの背後に、全く気づかぬ間に何者かが立っていた。が・・・太陽の逆行のせいか、よく顔が見えない
・・・目の点滅を止めればいいのか。スイッチを止め、私は1NEの背後に立つ人物に焦点を合わせた
するとその人物は、どこか爽やかな言い方で言った
「君は・・・」

第一話 終

 ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます)
+ ...

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー