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GEARS 第四話

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三笠機のブースターの推進力で得られた運動エネルギーが乗ったハルバードが守屋機の頭上に振り落とされる。

(流石に早い…ッ!!)

SCIの精密さならば兎も角、肉眼でギアの動きを完全に読み切り
カウンターを合わせる事なぞ、今の守屋にそれ程のギア操縦技量がある筈も無い。

オーバースウィング気味の振り落としはハルバードを地面にめり込ませる程の威力がある。
まともに喰らえば、MCI仕様のギアとて一撃で沈む危険性も充分にある。
だが、地面にめり込んだハルバードを容易く引き抜くだけの出力がリヴァイドには無い。

(最初で最後の勝機だな。)

加賀谷と戦う三笠の姿をふと思い出す。どれもこれもが一撃必殺の威力を持った攻撃だった。
なのにも関わらず、最後の一撃を除いて全てがフェイントだと言っていた。

(勝機なんかじゃない!)

リヴァイドの出力ではハルバードを引き抜くのは容易じゃない。だから、ピンチ。
そんな分かり易いこんな醜態を晒すような相手では無い事くらい知っている筈だ。

(妙な気配がする…)

獣じみた直感だけで距離を離そうと跳躍。それと同時に足元で埋まっていた筈のハルバードの刃が
予備動作も無しに跳ね上がり、剣圧が守屋機を撫でた。

「ッ!?」

「よく退いたな。あのまま留まるか、突っ込むかしてたら真っ二つだったぞ?」

何をした?何をされた?何故、刃が深く地に埋まっていた筈のハルバードが此方を向いている?

「考えている暇は無いぞ?」

三笠機はハルバードを両手で構え直し、守屋に目掛けて振り回す。
出力の低いリヴァイドではブースターの推力を上乗せしなければ
満足に扱えるような物では無いらしく先程と打って変わって、攻撃が鈍重だ。
威力を察するに阿部の大剣の方が余程、驚異的…にも関わらず、
あの妙な攻撃が気がかりで自分の間合いに踏み込むのが躊躇われる。

「いつまでも、間合いの外に居たんじゃ埒が明かないぞ?」

「…ッ!!」

臆病者と揶揄された気がして思わず感情的になり緩慢な突きを避け、自分の間合いに踏み込む。

(この程度の斬撃…余裕で見切れるッ!)

それが、ただの虚勢だと分かっている。
勢いだったとは言え、不用意に自分の間合いに踏み込んでしまったのだ。今更、引き下がる事も出来ない。
虚勢であっても心を奮い立たせ、前に踏み込み鋼拳を叩き込むしかない。
打撃が届くまで後半歩。また妙な剣圧が迫っている気がした。
攻撃を中断。すぐ様、右に飛び退る。見事、直感は的中。
突き出されたハルバードが有り得ないスピードで三笠機の元に戻るのを横目で確認した。

(飛び退かなければ…首を飛ばされていた…)

「遠距離武器を封じる時はギアだけじゃなく、武器もしっかり見ているようだけど
近接武器の時はギアしか見ていないみたいだな?」

三笠は見ていられないと助言をする事にした。
確かに守屋は近接武器の動きなど見ていない。
武器のリーチと、ギアの性能さえ把握出来ていれば、動きを見るだけで
武器がどのような挙動をするか予測する事は非常に容易い。
それがプログラムにより決められた動作を正確に実行するSCIならば尚更である。

「確かにスポーツギアに使える武器なんてのは攻撃力も低いし、特殊な能力を持ってるわけじゃない。
内田のスナイパーライフルだって軽装ギアのコクピットブロックの装甲を撃抜く事は出来ないし
俺のロケットランスにしたって同じだ。一見出鱈目そうな威力に見えるが競技用としてのラインを超えちゃあいない。
だがな。お前はスポーツギア用の武器に関する知識が、あまりにも無さ過ぎる。
だから、ギアの性能と搭乗者の技量だけで全てを判断しようとしてしまい、自分を不利な状況に追い込んでしまう。」

三笠機は左手一本でハルバードを無造作に振るう。また異常な速度の斬撃だ。慌てて身を屈めてやり過ごす。

「ヴェルウッズ工業社製クラン専用"ブースト"ハルバード。敵の武器を見ただけで全てを理解しろ…とは言わないが
自分が使わなくても、メジャーな武器くらいは勉強するようにな?どんな性質の武器なのか今度こそ見抜けよ?」

三笠機はハルバードの柄尻を左手だけで握り、無造作に振り落とす。
ブレード周りを飾る意匠が火を噴き、緩慢な斬撃が鋭い豪撃に切り替わる。

守屋がただの意匠と注視しなかったソレはSCIの出力不足を補う為の補助ブースターだったのである。
三笠が使う近接武器には全て補助ブースターが取り付けられており、
ランスやハルバードのような超重兵器であっても軽々と振り回す事が出来たのである。

「さて…相手の技量、ギアの性能を見極めるだけで無く、武器の性質を知る事の大切を知った所で…次は本気で行くからな?
一見、攻略の難しそうな武器ではあるんだが…守屋ならそれ程、難しい武器じゃない。しっかりやれよ?」

「まるでテストの回答を見せ付けられているみたいですよ。」

「なら、期待するとしよう。」

三笠機は一歩下がり、ハルバードを構え直す。そして、ハルバードを正体を教えた以上、姑息な攻撃をする必要も無い。
背面ブースターを最大出力で一吹かしさせ化物じみた速度で踏み込みハルバードを振りかぶり、袈裟懸に斬りかかる。
一歩引き下がり攻撃を避ける。空を切ったハルバードの勢いに逆らわず、補助ブースターを最大出力で点火。
機体を一回転させ本命の薙ぎ払いを放ち、守屋機と三笠機の間で小爆発が発生する。

「こういう回答はどうでしょう?」

「こんな非常識な回答、加賀谷でも出さんぞ…100点どころか120点だ。」

ハルバードの柄を右腕で抑え込み、左肘と左膝で刀身を補助ブースターごと挟み潰したのである。

「ま、何にせよ。武器を破壊された以上、対戦を続ける事も出来ないからな。此処でリタイアだな。」

「ロケットランスは使わないんですか?」

「冗談じゃない。唯でさえ先輩の威厳もへったくれも無いってのに、一日に手札を二つも潰されてたまるか」

不服そうな口振りの守屋に苦笑しながら、これ以上、お前と戦うのはゴメンだと三笠はリタイアを宣言し姿を消す。
シミュレーターフィールドが切り替わり、腰にソードライフルをぶら下げたリヴァイドが待ち構えていた。

「三笠も倒したか。此処まで負け無しか。大したものだ。」

「霧坂は兎も角…皆、何かしらの手心を加えてくれましたからね。」

守屋は常に全力でレギュラー陣に戦いを挑んでいたが、レギュラー陣は少しばかり違う。
其々、自らに何かしらの制約を設け、守屋のレベルアップに全力を注いでいた。
それは守屋も承知していた。心の底から感謝もしている。
だが、それ以上に皆と全力でぶつかり合いたいという思いの方が強く、あまりにも不服だった。

「そうか。だが、たった一日で此処まで上達するとはな。最初に霧坂と戦った時と比べて、動きが段違いに良い。
初めに言っておく。手心は加えるが堕としに行くからな。簡単に負けてくれるなよ?」

言い終わると同時に対戦開始のサイレンが鳴り響く。
だが、加賀谷はソードライフルを抜かないどころか、構えすら取らない。棒立ちして動く気配が全く見えない。
隙だらけの加賀谷を前に守屋は完全に戸惑っていた。加賀谷の戦いは以前、一度だけ見ている。
だが、殆ど動かずに三笠を容易く撃破しており、加賀谷が如何動くのか全く予測出来ない。
分かっている事と言えば、隙を見せると同時に一撃必殺の攻撃を繰り出して来る事くらいか。

(情け無いが…下手な鉄拳数撃ちゃ当たるってな。)

一呼吸、息を吐くと同時に地を蹴り瞬時に間合いを詰める。
加賀谷機の顎目掛けて拳を突き上げ、振り上げた腕を折り曲げ腰を落としつつ頂頭部に肘を叩き込む。
肘打ちから勢いを殺さず拳を腰元に引き戻し、すかさず中段突き。左膝蹴りから上段蹴り、踵落としの変則三段蹴り。
戻す左足の勢いに乗って胴回し蹴りを叩き込み後退し構え直す。

(これだけやって、一発も当たらないのか…)

目にも止まらぬ連続攻撃。そのいずれも加賀谷には届いて居ない。何よりも守屋の間合いから離れようとすらしない。

(そもそも、当てられないんじゃ次の攻撃に繋げられやしない。)

「どうした?もう終わりか?だったら…」

腰にマウントされたソードライフルを漸く、引き抜き構える。

「次は此方の番だな。」

ブーストダッシュと同時に斬りかかる。避けては連撃を許してしまう。銃身を掴み取り攻撃を阻止。
至近距離から加賀谷機の股関節を踏み貫くかのごとく、下段蹴りを放つ。
下段蹴りが届くよりも早く、軽業師のように守屋機の頭部を支点に一回転。
ソードライフルを奪い返し背中から守屋機に加賀谷機がぶつかる。
ぶつかったのは機体だけでは無い。ソードライフルの刀身が守屋機の背中に深々と突き刺さっていた。
加賀谷は躊躇い無くトリガー何度も引く、ゼロ距離から放たれた銃弾は容赦なく守屋機の装甲を撃ち貫く。
機体が耐え切れずに小爆発を起こし、弾かれたように距離を空ける。

「ダメージは甚大…打つ手無しか…?」

「手心は加えると言った。まだ動けるな?」

確かにかなりのダメージを受けたが、まだ動けない程では無い。
機体は動けるが、闘志が燃え上がらない。
何故、攻撃が当たらない?
何故、攻撃が当たる?
この間合いなら機体性能も、格闘戦能力も此方が上だというのに。
(此処までか…攻撃が当たらなくて、戸惑っているみたいだな。
格闘家から転向して来た者なら皆、一度はぶつかる壁だ…
出来れば自力で解決してもらいたいところだが…)

守屋が完全に戦意を喪失している事を感じ取ると、ソードライフルを守屋機に投擲。
刀身は頭部を貫き、守屋機のシステムが全てダウンし糸の切れた操り人形のように地に伏した。

「くっそおおおおお!!全勝出来ると思ったのにッ!!」

萎え抜いた心を無理矢理奮い立たせる為、守屋は大声で悔しがった。
大声の一つでも出さなければ、本気でどん底まで落ちそうだった。

「いや、流石は守屋だ。初心者だと思ってかかれないな。」

「圧勝しておきながら、そんな事を言われても全然、説得力無いですよ…」

守屋は勝ち誇った笑顔を振りまく加賀谷を前に憮然しながら苦言を漏らした。

「先輩だし、部長だからな。そもそも、守屋より長く乗っているんだから負けるわけにもいかんだろ?」

「それを言ったら、俺だって現役の軍人と同等の訓練を受けさせられて10年以上ですよ?それこそ負けるとかダメな筈なのですが…」

「身体能力や格闘戦能力が高いのは認めるよ。だけどな、自分の身体とギアの身体は別物だ。
あくまで応用が利き易いのと普通の人よりも多少、有利になるってだけだ。」

そこまで言って、加賀谷は苦い顔をする。此処は守屋自身が気付かねばならない事だ。
MCI搭載ギアは搭乗者の動きを、機体の動きに反映させる為の入力方式でしか無いという事を。

しかし、守屋は生身で戦う時と同じように身体を動かしている。
だが、戦闘用のアームドギアならいざ知らず、競技用のスポーツギアでは守屋の動きを完全に追従出来ない。
更にリヴァイド・ジョーカーの柔軟性、手足の稼動範囲が守屋と同じでは無く、動きを完全に再現する事も出来ない。

それが先の加賀谷戦で守屋の攻撃が当たらず、一方的に撃破されてしまった大きな要因である。

「それよりも、俺以外のメンバーが見事、守屋に敗北したという事実が非常に泣けてくる。」

皆、本気で戦っていなかったのがせめての救いかと、落ち込むポーズを見せつけた。

「これでパラメーターが同じだったら完全に立つ瀬無かったな?」

「パラメーター?」

「ああ。ある程度、互角になるよう守屋以外の機体は性能を落としておいたんだ。
万が一、負けた時に言い訳が出来るようにな…本当に下げておいて良かった。」

これ見よがしに溜息を吐いて見せるが、負けた言い訳の出来る戦いをしてくれたのだから文句は無い。
今回のシミュレーター戦の趣旨は守屋をギアに慣れさせる事、実戦を通して知識を付けさせる事である。
まだまだ、大会出場レベルには遠く及ばないがレベルアップ自体は大成功と言っても良い。
「三笠。どう思う?」

「自分の力と身体だけで戦う癖が無くなれば…って感じなんだがな。
ま、一番肝心な身体能力が完成しているんだ。知識や思考なんてのは俺達が教えてやるなり、自力で気付くなりすれば良い。」

三笠の意見は加賀谷と同じだった。

「しかし、守屋にアイリス・ジョーカーか…今更なんだが相性は良いんだが…
公式ルールギリギリの稼動範囲と柔軟性、守屋の成長を阻害しやしないか心配でならんよ。」

「だったら、正しいギアの守屋に教えるか?」

「自慢じゃ無いが、教えたら半年で抜かれる自信があるぞ?部長の威厳失墜だな!」

妙な自慢をする加賀谷に三笠は頭を抱えるしか無かった。
そんな事言ってちゃ部長の威厳なんて失墜、墜落、大惨事だ。

「ま…今はまだ身体能力で技術不足を補えてるし気にする事も無いか…」

「じゃあ、今度はパラメーターを一緒にしてやりましょう!」

加賀谷と三笠が守屋の教育方針について話し合っていると、
先程の戦いの内容が不服だったのか再戦を希望した。
六戦連続で戦いっ放しだと言うのに元気の良い奴だと感心するが、他の部員達が既に限界気味だ。
助け舟でも出してやろうかと声をかけようとすると歳方が、一つ提案を出す。

「守屋。次はSCIに乗れ。」

歳方の提案に阿部が乗っかる。

「皆、対等で平等だ。歳方、それ採用。」

当然の事だが守屋はSCI搭載機の操縦は未経験。
入力方式がレバー、ペダル、スイッチ、プログラムになる為、MCI搭載機とは全くの別系統の機体と言っても良い。
何を如何すれば機体が如何動くかなんて分かる筈も無く、間違いなく一方的に撃破されるのがオチである。

「SCIの起動方法すら知りませんよ…」

そんな守屋の訴えを聞いて、霧坂がこれ程に無いくらい邪悪な笑顔を振り撒く。

「へぇ~?それは良い事を聞いちゃった♪歳方先輩準備お願いしまーす!」

「勘弁してくれ…内田先輩助けて下さい!」

思わず、同類に助けを求めるが…

「うーん…先輩的指導って事で1つ」

何時もならば助け舟の一つも出す所なのだが、先程の戦いの結末…後になればなる程、納得がいかない。
とは言え、再戦する元気も無いので守屋をSCIに乗せて一方的に銃弾を叩き込んでやりたい気分なのだ。
何よりも控え目な性格のせいで勘違いされがちだが、実はこの女、非常に悪ノリ好きなお調子者なのだ。
だから、助けを求める守屋を見て思わず笑顔で首を掻っ切るジェスチャーのおまけ付きで見捨ててしまった。。

「こ、孤立無援だと!?」

結果は言うまでも無く、守屋は一方的に叩き潰され五勝一敗と華々しい戦績は五勝七敗と負け越してしまうのだった。
せめて、霧坂くらいには勝てるようにならなければと密かにSCI搭載機の操縦練習を心に誓うが
モーションパターンのプログラミングが面倒臭すぎて10分で投げ出した。

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