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第一話「その名はバイラム」

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  第一話「その名はバイラム」

 西暦2509年
 石油資源が完全に枯渇し人類が新しいエネルギー『エリュシニウム』を手に入れて早五十年。
 『エリュシニウム』とはオーガニック金属と呼ばれる特殊な金属の中に大量の電力を溜めることが可能であり、そのエネルギーは火力発電に劣るとも勝らない。また、『エリュシニウム』同士を摩擦させることで大量の電気を作り出すことが可能である。まさに夢のエネルギー資源である しかし・・・そんなエネルギーを得ても人類が行ったことと言えば飽くなきゼロサムゲーム、すなわち国家紛争、戦争という行為を辞められずにいた。
 人類は未だに一つにまとまるということが出来ずにいるのであった。

 ようやく長い冬を完全に脱し、穏やかな風が辺りを吹き付けている。緑も花と共に茂っており、まさに春爛漫と言った所だろうか。
 ここは旧フランスの南方にあるラングドック=ルシヨンである。
 そしてこの地方にある軍事基地に多くの人々がやってきている。
 その中で一人の男性がパンフレットを片手に辺りを見渡している。男性の年齢は外見からして二十代前半、白のワイシャツ、藍色のスラックスと背広、そして青のネクタイをしており顔は美形と言っても差支えがない風貌をしていた。
「ええっと…どこへ行けば良いんだ?」
 男性はパンフレットを見ながら歩いている。しかし行けども行けども変わらない通路にうんざりした顔を見せている。
「おーい! ボルス、こっちだ!」
 一人の男性が彼に向かって手を振っている。彼、ボルスは手の振った男性のほうへ足を向ける。
「すまない、ケント。道に迷ってしまって…」
 ケントと呼ばれた男性は黒を基調とした背広と白のワイシャツ、ズボンに灰色のネクタイを締めている。年はボルスよりも少し上といった所だ。そして顔には黒扶持のメガネをかけており胸には銀のロケットが付いていた。
「そろそろ会場へ行こう、例の物がついにお披露目されるようだ。」
 ケントとボルスはそのまま会場の方へと足を向けた。
 ボルスとケントが会場に着くと、すでに各国の軍、政府関係者が集まっていた。
「あれはユニオンの国防大臣、あそこにはアジア統連の外務大臣・・・」
 ボルスはそうそうたる顔ぶれに驚くばかりであった。
「今回、ユニオンはこの新型お披露目で自分達の軍事力を誇示したいんだよ」
 軍事力の誇示、それはいつの時代も国家という体面はそこから生まれ、そして時に滅びの原因にもなるものだ。ある国家はそのせいで不安をあおり紛争が絶えず行われ無政府状態に、またある者は経済制裁を喰らい、自国民の反乱を引き起こしたりした。
 だが力がなければ所詮誰も正義や秩序といった物に見向きはしないのだ。
 それゆえにケントは獣の条理と人の知性に対し少し嫌悪をしていた。

 爆音を響かせて黄色の人型機械、パンツァーモービルがゆっくりと降りてくる。
「ほう、あれが"ユニオン"の新型か・・・」
 ボルスはさきほぢ大地に降り立った黄色のパンツァーモービルを見た後、手元の資料を眺めた。

 ユニオンの新型パンツァーモービル、ビスマルク。全長二十一メートル、基本重量八十九トン。固定兵装は頭部に12.8ミリバルカン砲、腕部にロングソードを装備、装備兵装はソニックガンと長距離マイクロミサイル。そして・・・

「ほう、ついにユニオンも荷電粒子砲を装備できるようになったのか」

 荷電粒子砲、それはある特定の粒子に電気を流すことで陽子を圧縮、放射する武器である。
 しかし、この武器は扱いが非常に難しく、武器として開発が成功したのはユニオン以外にステイツやアジア統合連合のみである。
 しかし、ユニオンが持ってきた荷電粒子砲は一見した所かなりの大型で持ち運びや弾数と言った欠点が露呈している、しかし威力は折紙つきでパンフレットや開発を映したメイキングムービーで
は大型空母を破壊している所が数多く見られている

「換装システム? まさかユニオンは貧乏なのかい?」
 ケントはパンフレットに書かれた換装システムを鼻で笑った。

 換装システム、名前の通り状況に合わせ、装備を変えるシステムである。
 海なら海の、空なら空の、陸には陸の、そして宇宙には宇宙の対応をするのだ。
 しかし、このシステムは多くの技術者からこう言われている。
 『器用貧乏』と・・・
 それもそのはず、このシステムやパーツを作る費用は普通のパンツァーモービルの五割増しなのだ。
 それならいっそのとこと航空機や戦車、潜水艦などに金をかけた方がいい、というのが現在の軍事価値観である。
 ボルスはパンフレットから目を離し、黄色のパンツァーモービルをじっくりと眺める。
「どうだい? 君の目から見てあの機体の感想は。」
 ボルスは隣にいるケントに評価を求めた。
「正直に言わせて貰うとうちの"ナイツ"と比べればねぇ…」
 ケントは肩をすくめ、鼻で笑った。
「ほう、それは技術者としての自信と思っていいのだな?」
 目の前の技術者に対しボルスは悪ふざけをするような笑みを浮かべた。
「ああ、もちろんさ。それで"ステイツ"のエースとしてはどうなんだい?」
 今度は”現場の指揮官”としての意見を求めるケント。
「換装システムが面白いな、もともとパンツァーモービルは汎用兵器として生まれたものだ。そ
れを生かす為に個々の武装を換装させるというのは重要だと私は思う。」
「なるほど…でも空は普通に航空機に任せておけば良いんじゃないか?元々は支援機なんだし」
「確かにそうだ、だがパンツァーモービルは…」
「コラ!そこの人!お喋りはやめなさい!」
 ボルスとケントが新型に対する議論を交わしていると突然ビスマルクの方から注意が飛んできた。
「!? 女性?」
 ボルスは思わず仰け反った。
 最も突然声をかけられたことよりあの新型に乗っているのが女性であるほうが驚いたが…
「何だ、知らなかったのかい? ユニオンのエースは女性なのさ。ファリウェス=ミスリーア、実戦と模擬戦、両方で未だ負け知らずっていう話さ」
 ケントは驚きを隠すようにめがねを直した。
「知らなかった・・・」
 ボルスは目の前にあるビスマルクをまじまじと見た。

「こら!ミスリーア少尉!客人に喧嘩を売るな!」
 突然通信ティスプレイに基地司令の顔が広がり、ファルに向かって怒鳴りつけた。
「でも!司令!」
 しかし納得がいかないのかファルは司令に食って掛かる勢いで怒鳴リ返す。
「デモもストライキもない!文句はこのテストで見せれば良い!」
「…了解! まったくもう…」
 ファルはそういうと乱暴に通信をきった。
 ファルが乗るビスマルクが所定の位置に付くと先ほどまで騒がしかった会場が静かになっていく。
 そして轟音と共に標的であるネルソンが八機、地上へと出てくる。
「いよいよだな…」
「さて、見せてもらおうかな。ユニオンの新型の性能とやらを…」
 ボルスとケントが息を飲む
 その場にいた全員がビスマルクに視線を注ぐ。
 そして始まりの合図を知らせるシグナルが天高く飛ばそうとしたその時。
 突然三つの光が三機のネルソンを貫いた!
「うわ!?」
「な、なんだ!」
 激しい爆発音と共にネルソンはその場にひれ伏して行く。
「一体なんだ!?」
 その場にいた全員が光線が飛んできた方向を見る。
 そこには漆黒の悪魔が太陽を背にその場にいる人々を眺めているようだった。
「何なんだ…あの機体は…」
 ケントはこの演習場にやってきた黒い機体を見ながら呟いた。
 その機体は左腕部にはシールドとライフルを組み合わせた複合兵器。
 右腕には十メートルくらいありそうなロングソード。
 頭部には三角形を思わせるアンテナとカメラアイ。
 そして何より特徴的なのは胸についている星型の駆動機関と思われるものだ。
 一体誰が造ったのか分からない、しかし、あえて言えば。
「まるで・・・悪魔だ・・・」
 その場にいる全員が黒い悪魔に視線を注いだ。

「何だ、あれは!」
 基地司令が声を荒げながらやってきたアンノウンを睨みつけている。
 無理もないだろう、これから新型のお披露目というときにやってきた突然の乱入者。
 これはたまらないだろう。おまけに自身のクビも危うい。
「標的をビスマルクからあのアンノウンに変更しろ!」
「し、しかし・・・」
 あまりのことに基地のオペレーターもただ戸惑うばかりである。
「もたもたするな!」
「りょ、了解! ネルソン、標的をビスマルクからアンノウンに変更!」
 司令の一喝でオペレーターがキーボードを叩き、ネルソンのプログラムを変更する。

 5機のネルソンが黒いパンツァーモービルに銃口を向ける。
 ターゲットを照準にあわせ撃とうとする。
 しかし、誰も黒いPMを破壊することが出来なかった。
 なぜなら・・・
「ああ!?」
 黒いPMはネルソンの砲撃を全てかわしたのだ。百㎞を超える速度で打ち出された弾をゆるやかに。
 そしてそのまま右腕の剣を構えネルソンたちに向かって急接近する。
 ネルソンも再び銃を構え対応をしようとする。
「何だと!?」
 ボルスは自分の目を疑った。
 いや、ここにいる人間全てが目を疑っただろう。
 なぜなら高速で接近してきたPMが剣を振るうとまるでスイカや玉ねぎのようにあっさりとネルソンを真っ二つにしたのだ。
 そしてPMはそのまま剣を振るい続け5機も居たネルソンはそのまま単なる鉄くずと化した。
 この間に行われた時間はおおそよ2分半だったが、この基地いた人間全てには十分以上に感じられた。

「そ、そんな馬鹿な、たった一機の機体にネルソンが8機も失われるなどと・・・これは夢だ、夢
に違いない・・・」
 基地司令はそのまま力なく膝を付いた。
 そう、誰もがこれを夢だと思いたかった。そのくらいデタラメな光景が目の前に広まっていたのだから・・・

 ネルソンを倒した黒いPMは顔が確認できるほどこちらに近付いてきた。
 そしてビスマルクと対峙する形になると歩みを止める。
 P! P! P!
 突然会場にいる全員の端末という端末から凄まじい電子音がなり響く。
「いったいなんだ!?」
 ボルスは自分の携帯電話を取り出しディスプレイをみる。
「電子メール・・・だと?」
 ディスプレイにはメールが受信された事を知らせるマークが出ていた。
 ボルスは受信されたメールを見る。
 そこには短い文章が一行だけ入っていた。

「一体どういういうことなの!?」
 一方コックピットにいるファルもこの事態を飲み込めずにいた。
 突如現れた謎のパンツァーモービル。
 これから新型のお披露目というのに出された標的は全て目の前の機体に倒されてしまった。
 あれは一体何?
 いくら軍人として訓練を積んできたとはいえ、これはイレギュラー過ぎだろう。
 あまりの事に茫然自失になっている所に謎の通信が入る。
 ファルは通信機のスイッチを押すと通信ティスプレイに文字が映し出された。

 I AM BUYRAM

「バイ…ラム? あのPMの名前か?」
 ボルスは携帯電話のティスプレイから目を離し、謎のPMをもう一度じっくりと見る。
 よくよく見ると左肩には「BUY」、右肩には「RAM」と読める文字が塗装されていた。
「どうやらそのようだね、僕のパソコンにも同じ文が入っていたよ。」
 ケントは自らのパソコンをボルスに見せるとメガネを直した。
 驚異的な機動性、反撃する間も与えず右手の剣だけで五機居たネルソンを撃破した破壊力。
 まさに圧倒的だった。たとえ無人機でも勝つのは困難だろう。
「あれもユニオンの機体なのか?」
 ボルスの額から冷や汗が流れ出てくる。
 もしそうならユニオンは世界を手にできる軍事力を得たということだ。
「いや、違うだろう。駆動機関やモーター音、それにあんな武器は見たことがないよ。」
 そう、鋼をも一刀両断する武器なんて見たこともない。
 熱で斬ったのでもない、ビーム兵器でもない、では一体何で斬った?答えは簡単、右腕についている剣だ。だがいくらなんでも非常識だ。鋼を音も無く斬るだなんて・・・
 もし鋼を切れる金属があるとすれば漫画やアニメの世界に出てくる伝説の剣、斬鉄剣ぐらいだ。
 そしてあの盾、いや銃か? あれもあれでデタラメだ。あんな小さな銃で三体のネルソンを一撃で破壊するなんてばかげている。
 ケントもまたボルスと同じように目の前にいるPM、バイラムに恐怖を抱いていた。
 事の成り行きを見守っていたボルスたちに突然冷や水を浴びるような声が響く。
 ファルの乗るビスマルクが謎のPM『バイラム』に銃を向けたのだ。
「どこの誰だか知らないけど、喧嘩売って只で帰られるとは大間違いよ!」
「な! 彼女はここで戦闘をするつもりか!?」
 ここには民間人や政府高官たちがいるんだぞ!
 下手をしたら国際問題にも繋がりかねん!
 あまりの非常識さに驚くボルス。
 そんなボルスとは対照的にケントは冷静な思考を張り巡らせていた。
 そう、今時分たちが何をすべきなのか。
 ケントは答えが決まると立ち上がりボルスの肩を掴んだ。
「ボルス、ここは逃げたほうが良いだろう。たとえ彼女が数分しか持たなくてもここから逃げるのには十分だ。」
「しかし…」
 ボルスは苦虫を噛み潰したような顔でバイラムを、そしてビスマルクを見る。
「君が言いたいことは分かる、だが…」
 ケントは眼鏡をかけ直すとボルスを見つめて諭すように言った。
「この状況下で僕たちが出来るのは逃げることだけだ。」
「……分かった。」
 ボルスとケントは立ち上がり大声で叫んだ。
「皆さん!ここは危険です!避難して下さい!」
 ボルスの声に全員立ち上がり一斉に出口へ向かっていく。
「そこの君! 時間稼ぎを頼む!間違ってもこちらにアレを近づけさせるな!」
 ケントはファルに声をかけると自身もまた他の人間と共に避難していった。
「言われなくたって! 行くわよ、ビスマルク!」
 ファルは思いっきりペダルを踏み込み、バイラムへと向かって行く。
 ビスマルクとバイラム、この二機の戦いは後にこう呼ばれることになる。『ファーストコンタクト』と・・・


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