「廻るセカイ-Die andere Zukunft-」
朝、窓から入る光の眩しさで目が覚める。カーテンを閉めるのを忘れていて、日差しが直接当たっていたみたいだ。
おかげで、目覚ましよりも早く起きてしまった。
私、シュタムファータァはソファから重い体を起こした。彼からベッドの使用許可はもらっているのだが、利用する気にはなれなかった。
着替えもせず、そのまま冷蔵庫を開ける。流れる冷気が私の寝ぼけた意識を覚醒させてくれる。
入っていた残り物の牛乳を取り出し、コップに移しもせずそのまま飲む。
昨日は、彼の家に着いた瞬間風呂にも入らずソファに直行してしまったから、髪の毛が荒れ放題となっていた。
おかげで、目覚ましよりも早く起きてしまった。
私、シュタムファータァはソファから重い体を起こした。彼からベッドの使用許可はもらっているのだが、利用する気にはなれなかった。
着替えもせず、そのまま冷蔵庫を開ける。流れる冷気が私の寝ぼけた意識を覚醒させてくれる。
入っていた残り物の牛乳を取り出し、コップに移しもせずそのまま飲む。
昨日は、彼の家に着いた瞬間風呂にも入らずソファに直行してしまったから、髪の毛が荒れ放題となっていた。
「とりあえず、お風呂借りますよ…」
ここには居ない彼に意味の無い報告をし、脱衣所に入る。
昨日から着っ放しだった服を洗濯機に放り込み、そのまま風呂場に入る。
頭っから冷たいシャワーを浴びる。肌寒さは感じるが、朝風呂の気持ち良さの方が勝っている。
ふと鏡に映る自分の姿を見つめる。凹凸の無い白い肌に、空色の長い髪。そして…真紅の瞳。
外見に年齢はあまり比例しない体質とはいえ、もう少し凹凸が欲しい…と思ってしまう女心が、自分でおかしくて思わず笑ってしまう。
昨日から着っ放しだった服を洗濯機に放り込み、そのまま風呂場に入る。
頭っから冷たいシャワーを浴びる。肌寒さは感じるが、朝風呂の気持ち良さの方が勝っている。
ふと鏡に映る自分の姿を見つめる。凹凸の無い白い肌に、空色の長い髪。そして…真紅の瞳。
外見に年齢はあまり比例しない体質とはいえ、もう少し凹凸が欲しい…と思ってしまう女心が、自分でおかしくて思わず笑ってしまう。
「へっきしっ」
情けないくしゃみをしてしまう。…少し水に当たり過ぎたか。
シャワーを止め、風呂場を出る。しまった、着替えを忘れていた。
タオルで体を拭き、彼の寝室に入る。そして適当にYシャツを引っ張り出す。彼の服なのでサイズが合わないが、まぁ誰も居ないので何が見えていたとしても気に止めはしない。
ちなみに自分の服はきちんと持っている。が、バッグの中から引っ張り出すのが面倒なのだ。
脱衣所に戻り、ドライヤーで髪を渇かす。
置いてあったくしで髪を梳き、長い髪を後ろで束ねヘアゴムで止める。
うん、いつもの私の髪型。俗に言うポニーテールという髪型が、動き易くて私は好きだった。
シャワーを止め、風呂場を出る。しまった、着替えを忘れていた。
タオルで体を拭き、彼の寝室に入る。そして適当にYシャツを引っ張り出す。彼の服なのでサイズが合わないが、まぁ誰も居ないので何が見えていたとしても気に止めはしない。
ちなみに自分の服はきちんと持っている。が、バッグの中から引っ張り出すのが面倒なのだ。
脱衣所に戻り、ドライヤーで髪を渇かす。
置いてあったくしで髪を梳き、長い髪を後ろで束ねヘアゴムで止める。
うん、いつもの私の髪型。俗に言うポニーテールという髪型が、動き易くて私は好きだった。
……明日は、私が所属する組織“セカイの意思”の議会がある日だ。
“セカイの意思”。構成員の大半が特異な巨人になれる種族、“リーゼンゲシュレヒト”で構成されている組織。活動目的は世界の安寧…。だが、やっていることはそんな生易しくない。
セカイを汚し、貶めるヒトが密集する都市を、“世界から抹消する”。それが、“セカイの意思”のやっている行いだ。
それが良い行いであるかは私にはわからない。無論道徳的に言えば正しいことではないのかもしれない。だが、全体的に…、世界にとっては良いことなのかもしれない。
事実、戦争や内乱は格段に減ってきているのは結果として出ている。…誰も消されたくなんかない。抑止力というのも案外馬鹿には出来ない。
私の担当する地域は“揺籃市”。この都市の内情を監視し、“セカイの意思”による“抹消”が必要かどうか監視するのが私の役目だ。
だが、まず揺籃市が消されることはないだろう。無論、低俗な人間がいない筈はないが、それも“普通の都市”の範囲内だ。内乱や紛争もなく、穏やかな都市だと思う。
と、まぁそんな都市でも一応監視し、報告するのが私の仕事だ。明日の議会で提出するレポートはあと少し、今日一日あれば終わる。
議会に出席するのは正直嫌だが、これが初めてというわけでもない。前と同じ通りにやればいいだけだ。
そう自分に言い聞かせ、私はレポート作業に取り掛かった。
“セカイの意思”。構成員の大半が特異な巨人になれる種族、“リーゼンゲシュレヒト”で構成されている組織。活動目的は世界の安寧…。だが、やっていることはそんな生易しくない。
セカイを汚し、貶めるヒトが密集する都市を、“世界から抹消する”。それが、“セカイの意思”のやっている行いだ。
それが良い行いであるかは私にはわからない。無論道徳的に言えば正しいことではないのかもしれない。だが、全体的に…、世界にとっては良いことなのかもしれない。
事実、戦争や内乱は格段に減ってきているのは結果として出ている。…誰も消されたくなんかない。抑止力というのも案外馬鹿には出来ない。
私の担当する地域は“揺籃市”。この都市の内情を監視し、“セカイの意思”による“抹消”が必要かどうか監視するのが私の役目だ。
だが、まず揺籃市が消されることはないだろう。無論、低俗な人間がいない筈はないが、それも“普通の都市”の範囲内だ。内乱や紛争もなく、穏やかな都市だと思う。
と、まぁそんな都市でも一応監視し、報告するのが私の仕事だ。明日の議会で提出するレポートはあと少し、今日一日あれば終わる。
議会に出席するのは正直嫌だが、これが初めてというわけでもない。前と同じ通りにやればいいだけだ。
そう自分に言い聞かせ、私はレポート作業に取り掛かった。
午後七時を告げる鐘が鳴り終えたと同時に、私はレポートを書き終えた。
こんなレポートなんて所詮流し読みされる結果にあるから、そうそう真面目に書く必要はないんだが…、だからといってやることもないので真面目にやってしまった。
こんなレポートなんて所詮流し読みされる結果にあるから、そうそう真面目に書く必要はないんだが…、だからといってやることもないので真面目にやってしまった。
「……む」
強い空腹感に今さら気付く。当然といえば当然だった。なにしろ朝の牛乳以外何も口にしてないのだから。
冷蔵庫を開ける。朝の牛乳の残り以外……何も、入っていなかった。
お金は持っていない。……仕方ない、彼に連絡するしかないだろう。
携帯を開く。少ないアドレス帳の中から彼の名を探し当てるのは容易だった。
何回かのコール音の後に、聞き慣れた声が聞こえる。…彼の声に、無意識に安堵を感じてしまうことが、彼に頼りきっていることの証明のような気がして自分に嫌気が差した。
冷蔵庫を開ける。朝の牛乳の残り以外……何も、入っていなかった。
お金は持っていない。……仕方ない、彼に連絡するしかないだろう。
携帯を開く。少ないアドレス帳の中から彼の名を探し当てるのは容易だった。
何回かのコール音の後に、聞き慣れた声が聞こえる。…彼の声に、無意識に安堵を感じてしまうことが、彼に頼りきっていることの証明のような気がして自分に嫌気が差した。
『どうしたシュタムファータァ?なにかあったのか?』
「御飯がないです」
いきなりの私の返答に少し呆気に取られているのが、電話越しでもわかってしまった。…仕方ないではないか。食欲は人間の三大欲求の1つなのだから。
『お前なぁ…、……まぁいいか、金を置いておかなかった俺が悪いか。俺の部屋の右にあるタンスの上から2番目の引き出しに金が入った封筒が入ってるからそっから勝手に取っていってくれ』
「感謝です、久遠」
「感謝です、久遠」
そう言い、電話を切る。
言われた通り彼の部屋から資金を調達する。
サイズの合わないYシャツ一枚だったので、私の上着をバッグから引っ張り出し、Gパンを穿いて部屋を出る。
204号室。彼が生活の拠点として購入したマンションの一室に、私は寝泊まりしていた。
恥ずかしながら、私に家はない。両親は…いない、が、これは別にリーゼンゲシュレヒトとしては珍しいことではないから気にしたことはない。
幼馴染みである久遠。真名はエーヴィヒカイト。久遠は…所謂あだ名だ。彼がそう呼ぶのを望んでいる。まぁ別に私はどっちでもいいのだが。
というか、エーヴィヒカイトの方が昔から呼んでるから呼びやすいのだが……まぁ、無駄に機嫌を損ねるのもよろしくないので久遠と一応呼んでいる。
閑話休題、家がない私は、久遠の厚意で部屋を自由に使っていいことになっている。
揺藍市や遠方に宿泊する際には、お金を用意してくれているし。本当、久遠には頭が上がらない。
言われた通り彼の部屋から資金を調達する。
サイズの合わないYシャツ一枚だったので、私の上着をバッグから引っ張り出し、Gパンを穿いて部屋を出る。
204号室。彼が生活の拠点として購入したマンションの一室に、私は寝泊まりしていた。
恥ずかしながら、私に家はない。両親は…いない、が、これは別にリーゼンゲシュレヒトとしては珍しいことではないから気にしたことはない。
幼馴染みである久遠。真名はエーヴィヒカイト。久遠は…所謂あだ名だ。彼がそう呼ぶのを望んでいる。まぁ別に私はどっちでもいいのだが。
というか、エーヴィヒカイトの方が昔から呼んでるから呼びやすいのだが……まぁ、無駄に機嫌を損ねるのもよろしくないので久遠と一応呼んでいる。
閑話休題、家がない私は、久遠の厚意で部屋を自由に使っていいことになっている。
揺藍市や遠方に宿泊する際には、お金を用意してくれているし。本当、久遠には頭が上がらない。
マンションを出て、近くのコンビニで弁当と飲料を購入し、部屋に戻る。
一人だけで取る食事。…寂しくないと言えば嘘になるかもしれないが、寂しくて耐えられないような年齢でもないし、一人の食事は慣れている。
それに、リーゼンゲシュレヒトは基本は単独行動が主となる。私だけが特別というわけでもない。
暇潰しにテレビを点ける。大して面白くもないバラエティをBGMにしながら、近くに置いてあった週刊誌を読む。
一人だけで取る食事。…寂しくないと言えば嘘になるかもしれないが、寂しくて耐えられないような年齢でもないし、一人の食事は慣れている。
それに、リーゼンゲシュレヒトは基本は単独行動が主となる。私だけが特別というわけでもない。
暇潰しにテレビを点ける。大して面白くもないバラエティをBGMにしながら、近くに置いてあった週刊誌を読む。
「そういえば、明日は新刊の発売日でしたか…」
私が毎週楽しみ読んでる週刊誌の今週号の発売日は明日。
だが、明日は議会の日。…始まるのは午後からだし、そこのコンビニで読めばいいか、と一人納得する。
…担当地域があるといっても、別に毎日四六時中監視していなければならないというわけではない。
私は一週間に3日くらいだが、リーゼンゲシュレヒトによっては、一週間に一日や毎日行っていたり、一ヵ月に一回とかそういう事例があるため、雑誌の発売日以外は揺籃に出掛けている。
ちなみに今日は行く予定だったが、レポートを終わらせなくてはならないためパスした。
そして、週刊誌を読んだり風呂に入ったりしている内に時刻は11時になっていた。
だが、明日は議会の日。…始まるのは午後からだし、そこのコンビニで読めばいいか、と一人納得する。
…担当地域があるといっても、別に毎日四六時中監視していなければならないというわけではない。
私は一週間に3日くらいだが、リーゼンゲシュレヒトによっては、一週間に一日や毎日行っていたり、一ヵ月に一回とかそういう事例があるため、雑誌の発売日以外は揺籃に出掛けている。
ちなみに今日は行く予定だったが、レポートを終わらせなくてはならないためパスした。
そして、週刊誌を読んだり風呂に入ったりしている内に時刻は11時になっていた。
「明日は議会ですし、もう寝ておきますか……」
電気を消し、ソファに横になり、毛布を被る。身長の低い私にとっては、ソファもベッドも大した変わりはなかった。
瞼を閉じ、自意識を“0の意識”にシフトする。
“0(ゼロ)の意識”。セカイを意識出来なくなる状態…簡単に言えば意識不明の状態だ。
この状態だと全く身動きは出来ないが、シフトするだけで一瞬で眠りにつけるし、自分で決めた時刻に正確に起きることが出来る。
無論疲労は回復するが、寝た気があまりしないので私は議会や大事な約束があるとき以外はあまり使用しない。
0の意識にシフトし、一瞬で意識が落ちる。
……目覚めるのは、10時00分。
瞼を閉じ、自意識を“0の意識”にシフトする。
“0(ゼロ)の意識”。セカイを意識出来なくなる状態…簡単に言えば意識不明の状態だ。
この状態だと全く身動きは出来ないが、シフトするだけで一瞬で眠りにつけるし、自分で決めた時刻に正確に起きることが出来る。
無論疲労は回復するが、寝た気があまりしないので私は議会や大事な約束があるとき以外はあまり使用しない。
0の意識にシフトし、一瞬で意識が落ちる。
……目覚めるのは、10時00分。
0の意識から覚醒する感覚が私を襲う。
「あうう……」
思わず呻いてしまう。意識が一瞬にして完全覚醒するこの感覚は、やはり慣れるものではない。私は苦手だった。
時刻は10時00分ジャスト。毛布を撥ね除け、ソファから起きる。
洗濯しておいた私の私服を着る。動き易いショートパンツに黒い長袖のTシャツ。そしてその上に少し大きめの白いパーカー。これがいつもの私の格好だった。
無論、この服で議会は行けない。議会には“セカイの意思”の制服着用が義務付けられているためだ。
“セカイの意思”の制服には簡易的な認識疎外が備わっているから私服でも使えるのだが、あんな暑苦しいローブを私服では使いたくない。ただでさえ私は動き易い服の方が好きだというのに。
「あうう……」
思わず呻いてしまう。意識が一瞬にして完全覚醒するこの感覚は、やはり慣れるものではない。私は苦手だった。
時刻は10時00分ジャスト。毛布を撥ね除け、ソファから起きる。
洗濯しておいた私の私服を着る。動き易いショートパンツに黒い長袖のTシャツ。そしてその上に少し大きめの白いパーカー。これがいつもの私の格好だった。
無論、この服で議会は行けない。議会には“セカイの意思”の制服着用が義務付けられているためだ。
“セカイの意思”の制服には簡易的な認識疎外が備わっているから私服でも使えるのだが、あんな暑苦しいローブを私服では使いたくない。ただでさえ私は動き易い服の方が好きだというのに。
とりあえず朝飯の確保と週刊誌の新刊を見るためにコンビニに向かう。
部屋を出ると、まるで夏のような日差しが私を襲う。雲一つ無い晴天だった。
まだ春とはいえ、今日の気温は夏そのものだった。…セカイに害のある人間を消す前に、先に地球温暖化をなんとかするべきではないだろうか…?
そんなことを考えながらコンビニに着く。冷房を点けてくれていた店員の判断が嬉しかった。
汗が一瞬にして冷える感覚。まさか春にこの感覚を味わうことになるとは思わなかった。
楽しみにしていた週刊誌を手に取る。まず目次を開き、目的のページを開く。
部屋を出ると、まるで夏のような日差しが私を襲う。雲一つ無い晴天だった。
まだ春とはいえ、今日の気温は夏そのものだった。…セカイに害のある人間を消す前に、先に地球温暖化をなんとかするべきではないだろうか…?
そんなことを考えながらコンビニに着く。冷房を点けてくれていた店員の判断が嬉しかった。
汗が一瞬にして冷える感覚。まさか春にこの感覚を味わうことになるとは思わなかった。
楽しみにしていた週刊誌を手に取る。まず目次を開き、目的のページを開く。
「うわぁ…」
興奮で思わず声を上げてしまう。子供っぽいとはわかっていても仕方ない。最近の漫画はすごいと思う。必殺技など、すごく格好良いと思う。
「わー……」
店員や客からの視線が痛い。寒い。だが興奮を押さえることはできない。唯一の自分の趣味なのだからこのくらいは見逃して欲しいものだ。
「ふわーお…」
こう漫画を見てると、自分にも必殺技があればと憧れてしまう。
「(こう…ババーッ!とかシュビビーッ!みたいなの)」
空色の髪をガシガシと掻き、雑誌を棚に置き、次の雑誌を手に取る。
…手に、取りたかった。
…手に、取りたかった。
「よっ、ほっ、ふっ」
取り敢えず飛んでみる。無論、届くわけはなかった。
釈然としない気持ちを抱えながらも、雑誌をあきらめる。
別に、本来の目的とは違かったため気にする程のことじゃないさ、と自分に言い聞かせながら朝食を買い、コンビニを出る。
相変わらずの日差し。青く、透き通った水のような空。
週刊誌を楽しみにして、読んで、飯食って。さして変わることのない日常を、いつ終わるかわからない日常を、
私は、続けたい。終わらせたくない。
そんな気持ちを胸に抱きながら、私は部屋へと戻った。
釈然としない気持ちを抱えながらも、雑誌をあきらめる。
別に、本来の目的とは違かったため気にする程のことじゃないさ、と自分に言い聞かせながら朝食を買い、コンビニを出る。
相変わらずの日差し。青く、透き通った水のような空。
週刊誌を楽しみにして、読んで、飯食って。さして変わることのない日常を、いつ終わるかわからない日常を、
私は、続けたい。終わらせたくない。
そんな気持ちを胸に抱きながら、私は部屋へと戻った。
議会まで…、あと2時間といったところか。
“セカイの意思”の第三支部。一応そこが私の所属となっている。
そこまでは電車で四駅と、近い場所にある。いや、久遠がわざと近い場所のマンションを借りたんだろうが。
私の服は先程までとは打って変わり、白を基調としたローブで覆われている。…“セカイの意思”の、制服。
“セカイの意思”の第三支部。一応そこが私の所属となっている。
そこまでは電車で四駅と、近い場所にある。いや、久遠がわざと近い場所のマンションを借りたんだろうが。
私の服は先程までとは打って変わり、白を基調としたローブで覆われている。…“セカイの意思”の、制服。
「(本当、あまり好きじゃないんだけどな…)」
電車が停止し、目的の駅に到着したことを告げるアナウンスが鳴る。
ここから徒歩で十分くらいの所に、“セカイの意思”の施設が存在する。
心なしか重い足取りで、支部までの道のりを歩く。
セカイの意思の支部の外観は、大きめの…市役所、といった所か。
自動ドアを潜り、中に入る。クーラーが効いているのか、中は涼しかった。
中は同じローブを着ている同族が何人も忙しなく働いている。
正直これが“正常に見えていたならば”なにかの危ない宗教団体と絶対に勘違いするだろう。…いやまぁ、似たような団体ではあるのだが。
とりあえず受け付けに向かい、会議室の番号を教えてもらう。
会議室に向かうまでの道。奇異の視線が幾つも感じられる。
まぁ、慣れている。リーゼンゲシュレヒトの中でも弱い方である自分に与えられているエクスツェントリシュの称号。奇異の対象に見られない方が不思議だった。
視線を無視しながら、会議室の前に到着する。
一呼吸し、中に入る。中には数人しかいなかった。まぁ時間前だから不思議ではない。
バッグからレポートを取り出す。
ここから徒歩で十分くらいの所に、“セカイの意思”の施設が存在する。
心なしか重い足取りで、支部までの道のりを歩く。
セカイの意思の支部の外観は、大きめの…市役所、といった所か。
自動ドアを潜り、中に入る。クーラーが効いているのか、中は涼しかった。
中は同じローブを着ている同族が何人も忙しなく働いている。
正直これが“正常に見えていたならば”なにかの危ない宗教団体と絶対に勘違いするだろう。…いやまぁ、似たような団体ではあるのだが。
とりあえず受け付けに向かい、会議室の番号を教えてもらう。
会議室に向かうまでの道。奇異の視線が幾つも感じられる。
まぁ、慣れている。リーゼンゲシュレヒトの中でも弱い方である自分に与えられているエクスツェントリシュの称号。奇異の対象に見られない方が不思議だった。
視線を無視しながら、会議室の前に到着する。
一呼吸し、中に入る。中には数人しかいなかった。まぁ時間前だから不思議ではない。
バッグからレポートを取り出す。
「……ディス、レポートです」
“漆黒の堕天使”…ディス。私の数少ない友人の一人であった。
「シュタムファータァか。たしかに、受け取った」
彼はそれだけ言うと、私から受け取ったレポートに目を通し始めた。
特に友人らしい会話はない。だが、いつも彼はこんな感じだ。気にする程のことじゃない。
そのまま自分の席に座り、今日の議題書に目を通し始める。
―――今回の議題は、いつも通りの定例報告に……抹消国の選定。
私たちは、“セカイの意思”の派閥の中で、“革命派”の部類に入る。国々を抹消に積極的な派閥のことだ。
一番悪い噂が絶えない派閥であるが、人数は派閥の中で最大だ。そしてそのリーダーが、“漆黒の堕天使”ディス。【冥王の心臓】とも呼ばれ、最強クラスのリーゼンゲシュレヒトであり、“稀少者”のエクスツェントリシュのさらに上。
今までに6人しか誕生してないと言われる“秘匿者”、アーブストゥークの一柱だ。
アーブストゥークはその能力の特異性から、存在が公表されると様々な危険性がある。“セカイの意思”内部からの強い圧迫や嫉妬、暗殺…。それゆえに、アーブストゥークは自らの存在を隠す。
普通のリーゼンゲシュレヒトはアーブストゥークについてまったく知らないだろう。能力も人数も知らないはずだ。私が知っているのも、ディスから個人的に教えてもらったからだ。無論他言無用と釘も刺されている。
だが、ディスは違う。自らがアーブストゥークであることと、自らの能力を積極的に公表している。
圧倒的なカリスマ性で反発勢力の介入を遮断し、自分の勢力を拡大していき、統制する。
それが革命派のリーダー…【冥王の心臓】ディスだ。
だが、私は革命派に所属しているが、国々を抹消するのに反対だ。ヒトという生き物はセカイに有害…なんて、私は思わない。思いたくない。
だから、本心では“革新派”なのだろう。だが…革命派に属しているからには、その気持ちは、隠さなければ…いけない、の、だろうか。
特に友人らしい会話はない。だが、いつも彼はこんな感じだ。気にする程のことじゃない。
そのまま自分の席に座り、今日の議題書に目を通し始める。
―――今回の議題は、いつも通りの定例報告に……抹消国の選定。
私たちは、“セカイの意思”の派閥の中で、“革命派”の部類に入る。国々を抹消に積極的な派閥のことだ。
一番悪い噂が絶えない派閥であるが、人数は派閥の中で最大だ。そしてそのリーダーが、“漆黒の堕天使”ディス。【冥王の心臓】とも呼ばれ、最強クラスのリーゼンゲシュレヒトであり、“稀少者”のエクスツェントリシュのさらに上。
今までに6人しか誕生してないと言われる“秘匿者”、アーブストゥークの一柱だ。
アーブストゥークはその能力の特異性から、存在が公表されると様々な危険性がある。“セカイの意思”内部からの強い圧迫や嫉妬、暗殺…。それゆえに、アーブストゥークは自らの存在を隠す。
普通のリーゼンゲシュレヒトはアーブストゥークについてまったく知らないだろう。能力も人数も知らないはずだ。私が知っているのも、ディスから個人的に教えてもらったからだ。無論他言無用と釘も刺されている。
だが、ディスは違う。自らがアーブストゥークであることと、自らの能力を積極的に公表している。
圧倒的なカリスマ性で反発勢力の介入を遮断し、自分の勢力を拡大していき、統制する。
それが革命派のリーダー…【冥王の心臓】ディスだ。
だが、私は革命派に所属しているが、国々を抹消するのに反対だ。ヒトという生き物はセカイに有害…なんて、私は思わない。思いたくない。
だから、本心では“革新派”なのだろう。だが…革命派に属しているからには、その気持ちは、隠さなければ…いけない、の、だろうか。
「全員揃ったな…。では、定例議会を始める」
ディスが全体に聞こえるようにそう言うと、空気が一気に変わる。
考え事をしてた私も、一気に思考を現実に戻される。
…議会は、予定通り、つつがなく進行されていった。
各自監視地域の状態等を担当者が報告していく。…いつも通りの、定例議会。
考え事をしてた私も、一気に思考を現実に戻される。
…議会は、予定通り、つつがなく進行されていった。
各自監視地域の状態等を担当者が報告していく。…いつも通りの、定例議会。
「いい加減、本格的に我々も行動を起こすべきではありませんか」
ナハトが口を開く。“漆黒の堕天使”ディスの懐刀と言われる、“漆黒の闇”ナハト。
ディスと同じ“漆黒”を司るリーゼンゲシュレヒトであり、優秀なエクスツェントリシュでもある。
そして、革命派の中でもより国々の抹消に積極的である。…私は、苦手なタイプだった。
ディスと同じ“漆黒”を司るリーゼンゲシュレヒトであり、優秀なエクスツェントリシュでもある。
そして、革命派の中でもより国々の抹消に積極的である。…私は、苦手なタイプだった。
「どういう意味だ?ナハト」
「セカイを汚すだけの存在であるヒトを消すのに、慎重過ぎるのではないかと」
嘘だ。ヒトを世界を汚すだけの存在?そんなことはない。それに慎重?今月に入って小さな国も含めてどれだけの国々を抹消したというのか。どれだけの人が悲しんだと言うのか、消えたというのか。
「どこが、慎重すぎるって言うんですか…ナハト」
思わず口から出てしまった言葉に、自分自身が驚いていた。
それ以上に、自分がこんな怒りを覚えていることが一番驚きだった。
それ以上に、自分がこんな怒りを覚えていることが一番驚きだった。
「慎重すぎるだろう?度重なる戦乱、動乱…このままでは、星が死んでしまう」
「そうしているのは一部のヒトのみです。実際、他のヒトはセカイに害を与えていない」
「その一部が問題だと言っているのだ。だいたい、その一部とやらはセカイにどのくらいの規模でいるのか貴様はわかっていない」
「そうしているのは一部のヒトのみです。実際、他のヒトはセカイに害を与えていない」
「その一部が問題だと言っているのだ。だいたい、その一部とやらはセカイにどのくらいの規模でいるのか貴様はわかっていない」
ナハトの言うその一部は、あまりにも多すぎる。
「では、その一部はどれだけの数なんですか!?」
「それを見定めるために監査がある」
「監査でどの国も問題がない、それが貴方には不満なのでしょう?ナハト」
「不満などと、そんな利己的な感情で言ってはいない」
「それを見定めるために監査がある」
「監査でどの国も問題がない、それが貴方には不満なのでしょう?ナハト」
「不満などと、そんな利己的な感情で言ってはいない」
「ならその一部のみをセカイから遮断すればいいでしょう!ナハト、何故貴方はそうまでヒトを…」
憎むのですか――――
「静粛に。……そこまでだ。ナハト、シュタムファータァ」
売り言葉に買い言葉。口論となっていた私たちを静かにさせる、鶴のような一声がディスから発される。
「しかし、ディス…!」
「黙れ。いかなエクスツェントリシュと言えど権力は知れている。それにお前達を止めることなど私一人でも造作もない」
「黙れ。いかなエクスツェントリシュと言えど権力は知れている。それにお前達を止めることなど私一人でも造作もない」
ディスから放たれる殺気。私はどうとして、あのナハトを黙らせる程の殺気は、アーブストゥークの威厳を表していると言えた。
「…そうだな、次の抹消対象地域は、シュタムファータァ、お前の担当都市…揺籃だ」
「そんな…!?」
私の担当地域、揺籃は平和で、温かい都市だ。そんな都市が何故抹消担当になるのだろうか。ディスは何故…揺籃を担当都市にしたのだろうか。
「これは“世界の意志”。わかるな?シュタムファータァ」
「………はい」
「………はい」
担当地区の抹消は、そこの担当者が実行することになっている。
つまり…今回の抹消は、私が直接行わなければならないということだ。
私が、直接、…消す。
それは、あまりにも突然で。覚悟も、理由もなかった私を…意気消沈させるには充分に足る出来事だった。
つまり…今回の抹消は、私が直接行わなければならないということだ。
私が、直接、…消す。
それは、あまりにも突然で。覚悟も、理由もなかった私を…意気消沈させるには充分に足る出来事だった。
「これにて議会を終了する。シュタムファータァは後で書類を受けとりに来るように」
そうディスが言い、今回の議会が終了する。
ぞろぞろと全員会議室を出ていく。残っているのは、私一人。
ぞろぞろと全員会議室を出ていく。残っているのは、私一人。
「……っ」
涙が出そうになるが、堪える。これはセカイの意思。わかっていたことだ。いつか私がやらなければいけないときが来ることは。
だが、それは揺籃がセカイに害を為すときだと思っていた。何故、何故揺籃が。
だが、それは揺籃がセカイに害を為すときだと思っていた。何故、何故揺籃が。
「エーヴィヒカイト…私は、…」
親友の名を呼ぶが、勿論返事は返ってこない。当たり前だ。それに彼が居たとして私はまた頼るのか。まだ頼るのか。
「私一人で、やるしかないことなんだ」
そう自分に言い聞かせて、足腰に力を入れる。
正直倒れそうだし、今すぐベッドに倒れ込みたい気分ではある。
だが、これは私の役割だ。なら、やらなければ。
正直倒れそうだし、今すぐベッドに倒れ込みたい気分ではある。
だが、これは私の役割だ。なら、やらなければ。
会議室を出て、受け付けで書類を受領する。書類の中身は世界の抹消についての概要やら何やら。正直見るだけで気が滅入る。
書類を片手に支部を出る。自動ドアが開くと同時に襲い来る熱気。
書類を片手に支部を出る。自動ドアが開くと同時に襲い来る熱気。
「(クーラーって、素晴らしい)」
とりあえずこんな暑くては気が滅入りすぎてぶっ倒れてしまう。
適当なファミレスに入り、クーラーの効いた空間で一休みする。
注文はパンケーキとドリンクバー。だがドリンクバーを取りに行く気になれず、お冷やをチビチビと飲む。
パンケーキが届く、が、やはり口を付ける気にはならない。
きっと今の自分は死んだ魚のような目をしているのだろう。
適当なファミレスに入り、クーラーの効いた空間で一休みする。
注文はパンケーキとドリンクバー。だがドリンクバーを取りに行く気になれず、お冷やをチビチビと飲む。
パンケーキが届く、が、やはり口を付ける気にはならない。
きっと今の自分は死んだ魚のような目をしているのだろう。
「いつまでもヘコんでるのも、よくないか」
気合いで精神を持ち直し、パンケーキにかぶりつく。メイプルシロップの甘さが、さっきまでの憂鬱な気持ちを忘れさせてくれる。
あっという間に平らげ、勘定を済ませる。
また熱気が充満する空間に出てしまう。数分で汗が出てきてしまう程、外は暑い。
とりあえず、揺籃に向かおう。消すにしろ消さないにしろ現地に着かなければ話にならない。
駅に向かい、切符を買う。この時間に出れば午後には着くだろう。
あっという間に平らげ、勘定を済ませる。
また熱気が充満する空間に出てしまう。数分で汗が出てきてしまう程、外は暑い。
とりあえず、揺籃に向かおう。消すにしろ消さないにしろ現地に着かなければ話にならない。
駅に向かい、切符を買う。この時間に出れば午後には着くだろう。
電車を乗り継ぎ、フェリーに揺られること二時間。揺籃の港に到着する。
現地の人たちが笑い、楽しんで生活している様を見ていると今すぐ引き返したくなる。
彼等はどう思うのだろうか。自分が彼等から笑顔や、家族や、幸せを奪う存在と知ったら。
笑いあっている人たちを見てるとどうにもいたたまれなくなってくる。
二町目の公園。あそこなら、誰も来ないだろう。雰囲気が尋常じゃなく悪いから普段は誰もよりつかない。
私は周囲の雑踏から逃げるように公園を目指した。
公園には、もう午後になると言うのに誰もいなかった。それがこの2町目の公園である。
ベンチに座り、顔を抱え込む。気分を変えるために此所に来たというのに、気落ちした気分は変わることがなかった。
現地の人たちが笑い、楽しんで生活している様を見ていると今すぐ引き返したくなる。
彼等はどう思うのだろうか。自分が彼等から笑顔や、家族や、幸せを奪う存在と知ったら。
笑いあっている人たちを見てるとどうにもいたたまれなくなってくる。
二町目の公園。あそこなら、誰も来ないだろう。雰囲気が尋常じゃなく悪いから普段は誰もよりつかない。
私は周囲の雑踏から逃げるように公園を目指した。
公園には、もう午後になると言うのに誰もいなかった。それがこの2町目の公園である。
ベンチに座り、顔を抱え込む。気分を変えるために此所に来たというのに、気落ちした気分は変わることがなかった。
「エーヴィヒカイト……」
耐え切れなくなり、携帯電話にある彼の番号をプッシュする。
冷たい、電子音が鳴り続け…出たのは彼の声ではなく、不在を告げる携帯アナウンス。
冷たい、電子音が鳴り続け…出たのは彼の声ではなく、不在を告げる携帯アナウンス。
「ダメだなぁ…私は…」
もう、泣きたい。誰かに甘えたい。誰かにこの気持ちを吐露したい。わかってもらいたい。
そんな気持ちが雫となって、目から零れ出る。
そんな気持ちが雫となって、目から零れ出る。
「…っ、うぇええ…、っ…」
「どうしたんだ?」
私の影を覆う、新しい影と、男の声。
「え…?」
見上げた景色に映る、朱色の空と、目付きの悪い、一人の少年のこちらを心配するような表情。
「いや、泣いてたからさ。それも“こんな場所”で」
何かあったのか、と…言葉を紡ぐ少年の顔には、僅かな照れが見えた。
「私は、…泣いて…」
「泣いてるって。ハンカチ、いるか?」
「泣いてるって。ハンカチ、いるか?」
手渡された水色の無地のハンカチ。私はそれで目を拭うと、ハンカチは濡れていた。
「な、だろ?」
「…ありがとう、ございます」
「…ありがとう、ございます」
見ず知らずの人間に心配される程私は深刻そうな雰囲気を醸し出していたのだろうか。
「おーいヤスっちー!どうしたんだーい?」
遠くからこちらに近付いてくる女の人の声。
「うぇ…コイツ等がいることを思わず忘れてた…」
こちらに近付いてくる複数の気配。
…もし、このとき私と彼が出会わなければ、…なんて、この頃は、欠片も思わなかった。
「もう少しでセカイが滅びる」
世界中にそんな噂が飛び交った。
実際、一部の都市が地図から名前を消していた。
それは日を追う毎に増えてゆく。
原因は全くわからない。
ヒトは滅びを待つだけだった。
世界中にそんな噂が飛び交った。
実際、一部の都市が地図から名前を消していた。
それは日を追う毎に増えてゆく。
原因は全くわからない。
ヒトは滅びを待つだけだった。
舞台は日本、新興都市“揺籃”
描かれるのはそこに住む彼らが繰り広げる他愛もない日常と、非日常。
描かれるのはそこに住む彼らが繰り広げる他愛もない日常と、非日常。
「なら、護ればいい」
『廻るセカイ-Die andere Zukunft-』
「絶えなく廻るセカイの下に、我ら誓いを立てん」
「ーーーーーー我が名を唱えよ、我が名は“罪深き始祖”」