統合歴329年10月10日
「…どうしてこうなった?」
沈む夕日、茜色に染まる空の下、愛機アイリス・ジョーカーの足元で、学校指定のジャージで身を包んだ守屋一刀は
ブロンドアッシュの長い髪をなびかせながら足早に去っていくクラスメイトを見送り、ぽつりと呟いた。
ブロンドアッシュの長い髪をなびかせながら足早に去っていくクラスメイトを見送り、ぽつりと呟いた。
―事の始まりは今から2時間程前に遡る。
霧坂茜華の尽力で守屋一刀はクラスメイトと遅まきながらの邂逅を果たしてから物事はあれよあれよと言うままに進み
恙無く、体育祭を迎える事となり、守屋一刀はクラスメイトの期待に応えるべく獅子奮迅の活躍を見せ付けた。
恙無く、体育祭を迎える事となり、守屋一刀はクラスメイトの期待に応えるべく獅子奮迅の活躍を見せ付けた。
「どーよ?」
「流石!!って言うか、宣言通りぶっちぎりとは恐れ入るわ。」
何故か、八坂高校の体育祭の種目に俵競争というドマイナーな倭国特有の種目が当然のように存在している。
米俵60kgを両の手で持ち上げ、50mの距離を走り抜けるという種目だが、不慣れな高校生が走り抜けるには少々酷な競技である。
基本的には紅眼のような異能力者やラグビー部員等の重量級の生徒の独壇場になる種目で普通の生徒の出る幕ではない。
米俵60kgを両の手で持ち上げ、50mの距離を走り抜けるという種目だが、不慣れな高校生が走り抜けるには少々酷な競技である。
基本的には紅眼のような異能力者やラグビー部員等の重量級の生徒の独壇場になる種目で普通の生徒の出る幕ではない。
だが、常日頃から60kg以上の装備を抱えて山道を走り抜いている守屋にとって、慣れた加重と取るに足らない短距離でしか無く
悪ふざけで全力疾走してしまい、紅眼を持ってしても塗り替えるのが少しばかり困難な記録を樹立してしまったのだ。
悪ふざけで全力疾走してしまい、紅眼を持ってしても塗り替えるのが少しばかり困難な記録を樹立してしまったのだ。
「騎馬戦じゃ薙ぎ倒すどころか、華麗にいったしね。」
「生身同士だからな…本気を出せばざっとこんなモンさ。」
クラスメイトに敵全員、殴り倒して来いなどと無茶苦茶なことを言われもしたが、ただの力任せでは面白くない。
一度も身体に触れさせずの大立ち回り。終わる頃には奪い取ったハチマキが多過ぎて分厚いマフラーのようになり暑苦しい事この上無い。
お陰で一人、途轍もない量の汗を馬役の生徒にぶっかけた上に無茶な指示も出してしまい幾許か申し訳無い気分になる。
一度も身体に触れさせずの大立ち回り。終わる頃には奪い取ったハチマキが多過ぎて分厚いマフラーのようになり暑苦しい事この上無い。
お陰で一人、途轍もない量の汗を馬役の生徒にぶっかけた上に無茶な指示も出してしまい幾許か申し訳無い気分になる。
だが、相手が西行だったので気にせず、皆で指を差して笑ってやった。
「それにしても、最近、良い顔で笑うようになったよね?」
「だとしたら、霧坂のお陰なんだろうな。」
お前の目論見通り楽しい高校生活を過ごす事が出来るようになったぞと目で語るが伝わるわけが無い。
以前、霧坂が守屋の事でクラスメイトを糾弾した事は霧坂から緘口令が敷かれているのだが、既に手遅れだ。
霧坂が守屋に一番聞かれたくない事は全て、守屋の耳に入っている。バラしたのは誰かと言われたら、お前だとしか言い様が無い。
以前、霧坂が守屋の事でクラスメイトを糾弾した事は霧坂から緘口令が敷かれているのだが、既に手遅れだ。
霧坂が守屋に一番聞かれたくない事は全て、守屋の耳に入っている。バラしたのは誰かと言われたら、お前だとしか言い様が無い。
―寧ろ、扉一枚を隔てた向こう側に居たのだから。
漸く、此処に来て霧坂をからかうネタが出来たのだ。このネタを今すぐ使うのは些か勿体無い。だから、今はまだ伝わらなくて良い。
(今までの仕返しだ。これでもかって程、からかい倒してやる。)
「うえ?」
守屋の意味ありげな言葉と、悪ガキのような笑顔を向けられ、流石の霧坂も意味が分からないというような表情で変な声を出す。
「何でも無い。ほら。整列整列。」
「あー、うん。」
今すぐにでも、からかい倒してやりたいという衝動を押し殺しながら、納得のいかなそうな表情の霧坂を集合地点に促して場を濁す。
体育祭の種目は全て完了し表彰式へと移り、守屋が非常識な記録を残した事もあり1年3組がMVPに選ばれる事になった。
体育祭の種目は全て完了し表彰式へと移り、守屋が非常識な記録を残した事もあり1年3組がMVPに選ばれる事になった。
「1年3組代表は前へ!」
霧坂はしてやったりという顔をして、意気揚々と壇上に歩み出た。
クラスメイト達も抱き合ったり、飛び跳ねたりと、その喜びを全身で表現している中で…守屋一刀だけは硬い表情で固唾を呑んでいた。
クラスメイト達も抱き合ったり、飛び跳ねたりと、その喜びを全身で表現している中で…守屋一刀だけは硬い表情で固唾を呑んでいた。
生徒達の大歓声の中に甲高い音が、過去に数度程聞いた音が、本来であればこんな所で聞ける筈の無い音が混ざっていたからだ。
音はじわりじわりと八坂高校に近付き、いよいよ生徒の大歓声を甲高い轟音で飲み込み尚、迫り来る人影。
音はじわりじわりと八坂高校に近付き、いよいよ生徒の大歓声を甲高い轟音で飲み込み尚、迫り来る人影。
(演習でも無ければ通りすがりでも無い…)
ジェネレーターの駆動音、ブースターから吐き出される排気音。―スポーツギアに使用されている競技用のそれでは無く…
不審は確信に変わり、守屋はわき目も振らず霧坂の元に駆け出した。
不審は確信に変わり、守屋はわき目も振らず霧坂の元に駆け出した。
「逃げろ、霧坂!」
守屋は必死の形相で大声を張り上げるが、轟音を撒き散らしながら急降下するギアに掻き消されてしまう。
確信するのが、行動を起こすのが遅すぎた。来るはずが無いと決め付けてしまった結果がこの様だ。
そもそも、アレが動いている事自体が異常なのだ。
確信するのが、行動を起こすのが遅すぎた。来るはずが無いと決め付けてしまった結果がこの様だ。
そもそも、アレが動いている事自体が異常なのだ。
「守屋君…?」
何気無く振り向くと、必死な顔で此方に走って来る守屋が一瞬だけ目に映り、霧坂の視野がモスグリーンの迷彩模様の壁で一杯になった。
激しい地響きにと巻き上がる砂埃に霧坂はむせ返りながら地にへたり込み、涙目で迷彩模様の壁を見上げると、それは壁では無く―
激しい地響きにと巻き上がる砂埃に霧坂はむせ返りながら地にへたり込み、涙目で迷彩模様の壁を見上げると、それは壁では無く―
「矢張り、バリエントか!」
スポーツギア部に所属していながら、ギアの知識に疎い守屋が一般人よりも詳しい知識を持つ数少ない機体。
それが、元地球統合軍主力アームドギア、バリエントである。
それが、元地球統合軍主力アームドギア、バリエントである。
「って、コラ!離せ!!つーか、臭ッ!!」
バリエントは足元で腰を抜かす霧坂に、洗浄された形跡の無い猛獣捕縛用のワイヤーネットで捕らえると外部音声をオープンにする。
「調べは付いてんだ!守屋一刀、出て来い!テメェに受けた借り、まとめて返してやらぁ!!」
「心当たりが多過ぎて、どれの事やら…」
八坂州に移住して半年足らず。違法ギアと関わった回数は三回…同じグループなのか別のグループかさえも分からない。
「どうしたぁ!?守屋一刀!出て来い!!でねーと皆殺しだぞ!!」
「あの野郎ッ…!!」
バリエントの恫喝にぼやいている場合では無いと、再び歩みを再開しようと一歩踏み込むとクラスメイトに両脇を固められる。
「守屋、行くな!!」
「霧坂を助けなきゃだろうが!!」
「皆、守屋を止めろ!!」
「守屋君、落ち着いて!!」
「離せ、お前等!!俺が行かないと霧坂が!それに皆殺しにするって言ってんだぞ!?」
だが、一人、また一人と守屋の身を案じて守屋の歩みを阻む。その行いに守屋は心から感謝すると同時に疎ましくも思った。
いっその事、また手の平返して、怯えて不干渉の体でいてくれて構わないとさえも―何故、ここぞとばかりに邪魔をするのだと。
いっその事、また手の平返して、怯えて不干渉の体でいてくれて構わないとさえも―何故、ここぞとばかりに邪魔をするのだと。
誰からも怯えられ避けられても、霧坂だけは常に傍に居て笑いかけていた。霧坂だけは守屋を一人にさせようとはしなかった。
霧坂が常に傍に居たからこそ気の休まる暇も無く、寂しいなどと思う余裕など無かった。
クラスメイトと笑っていられるのも、クラスメイトがこうして身を案じてくれるのも霧坂のお陰だ。
霧坂が常に傍に居たからこそ気の休まる暇も無く、寂しいなどと思う余裕など無かった。
クラスメイトと笑っていられるのも、クラスメイトがこうして身を案じてくれるのも霧坂のお陰だ。
866 :GEARS 第13話 3/9 ◆B21/XLSjhE :2010/02/26(金) 01:58:32 ID:pq+rr/SJ
霧坂には、まだ返し切れない程の借りと恩義があるのだ。―ついでに霧坂の作る飯も食らい足りていない。
霧坂には、まだ返し切れない程の借りと恩義があるのだ。―ついでに霧坂の作る飯も食らい足りていない。
「守屋、待て!!」
守屋はクラスメイトを強引に振り解き、背中に投げかけられた声を無視してバリエントの足元に駆け寄った。
「守屋だな?TVでテメェの面覚えたぞ!!」
丸眼鏡のような黄色のアイカメラが鈍く光る。ターゲットを守屋に合わせてロックしたのだろう。
此の侭、踏み潰されるたり、殴り潰されたりしないだろうなと若干の恐怖心に押し留め、守屋は叫ぶ。
此の侭、踏み潰されるたり、殴り潰されたりしないだろうなと若干の恐怖心に押し留め、守屋は叫ぶ。
「そうだ。俺が守屋一刀だ。人質を離せ!!」
「良いだろう。恨みがあんのはテメェだ。」
意外にもバリエントは姿勢を下げ、素直に霧坂を解放。だが、その間にもアイカメラは常に守屋を凝視している。
標的はあくまで守屋一刀だけで他は如何でも良いらしい。それなら誰も巻き込まず済むし、好都合だ。
標的はあくまで守屋一刀だけで他は如何でも良いらしい。それなら誰も巻き込まず済むし、好都合だ。
(いや…割と本気で怖いんだけどな。)
「守屋君!」
「霧坂、下がってろ。で、俺を如何するつもりだ?」
守屋は縋り付く霧坂を後手に庇い、バリエントを睨み付ける。勝ち目は全く無いが、今更、怖気づいてもいられない。
(兎に角、ジョーカーの到着まで時間を稼いで…)
守屋はモバイルシステムをポケットの中で操作しながら、アイリス・ジョーカーを呼び出す準備を行い、戦う算段を組み立てる。
「俺と一対一で勝負しろ!勝負だ!タイマンだ!!」
何とかギアに乗り込める事が出来れば…と思っていると、謎の申し出に守屋と霧坂の表情が凍りつき二つ心が一つになった。
『突然、何をほざいてんだ。このバカは?』
何はともあれ、いつまでも固まってはいられない。
「あー…すまん。全然、意味が分からん。心底、意味が分からん。」
「ふざけるなッ!!お前のせいで、ギアを何十機破壊されたと思っていやがるっ!?」
「まさか、お前…」
「交換用のパーツが足りないから、ギア部のある高校を襲ってパーツを頂いて行こうとすれば7機もギアを破壊され仲間も逮捕される!
仕方が無いから銀行を襲えば警察にギアを4機破壊され!そして、仲間はお前に半殺しにされて逮捕される!!
仕舞いには夏のバカンスから戻ってみれば、50機あったギアが全部テメェに破壊されてやがる!!ふざけんのもいい加減にしろっ!!」
仕方が無いから銀行を襲えば警察にギアを4機破壊され!そして、仲間はお前に半殺しにされて逮捕される!!
仕舞いには夏のバカンスから戻ってみれば、50機あったギアが全部テメェに破壊されてやがる!!ふざけんのもいい加減にしろっ!!」
「全部、俺が撃破したわけじゃないんだがな…って、俺が関わった違法ギア事件全部じゃないか…全部、貴様が関わっていたのか!?」
「テメェ!!今更、気付いてんじゃねぇ!!」
驚きに目を見開く守屋に、バリエントは地団駄を踏みながら子供が駄々を捏ねるように怒鳴り散らかす。
「気付くわけが無いだろ…報復の為に俺を殺しに来たってわけか?」
「そんな恐ろしい真似が出来るか!!どう考えても死刑確定だろうが!!」
スポーツギアはスポーツ用品だが、アームドギアはれっきとした軍事兵器である。
一般人が軍事兵器を持ち出して、はっちゃけている時点で重犯罪なのだ。重犯罪なのだが、今一つ悪党になり切れていない。
一般人が軍事兵器を持ち出して、はっちゃけている時点で重犯罪なのだ。重犯罪なのだが、今一つ悪党になり切れていない。
(自分のやっている事の大きさに気が付いていないんだろうな…)
「で、何で勝負に?」
「意地とプライド以外に何があるってんだあああッ!!」
こうして、体育祭の閉会式に突如乱入して来たアームドギア、バリエントの搭乗者は守屋一刀との対決を熱望し地団駄を踏む。
頭の痛くなる思いではあったが理事長の弥栄栄治はバリエントの搭乗者自体の危険度は極めて低いと判断し両者をギアスタジアムで
決闘させ、八坂高校主催のサプライズイベントとして騒動を有耶無耶にする事に決めた。
大きな催しで保護者の目がある以上、犯罪に巻き込まれてしまいましたというような事態は何が何でも揉み消さなければならない。
しかし、問題が一つ。相手がスポーツギアでは無く、アームドギアであるという事だ。
頭の痛くなる思いではあったが理事長の弥栄栄治はバリエントの搭乗者自体の危険度は極めて低いと判断し両者をギアスタジアムで
決闘させ、八坂高校主催のサプライズイベントとして騒動を有耶無耶にする事に決めた。
大きな催しで保護者の目がある以上、犯罪に巻き込まれてしまいましたというような事態は何が何でも揉み消さなければならない。
しかし、問題が一つ。相手がスポーツギアでは無く、アームドギアであるという事だ。
バリエント―統合歴280年代初頭に地球統合軍で正式採用された最初期のアームドギアで現行の主力機であるストライカーと比較すると
3世代も前のロートル機である。装甲の端々には50年の年季を感じさせる錆がこべり付いており動く度に装甲板がボロボロと剥がれ落ち
その上、両肩の長距離レールキャノンは欠落しており、長距離砲撃戦仕様の体を成していない。
3世代も前のロートル機である。装甲の端々には50年の年季を感じさせる錆がこべり付いており動く度に装甲板がボロボロと剥がれ落ち
その上、両肩の長距離レールキャノンは欠落しており、長距離砲撃戦仕様の体を成していない。
本来の武装すら持たないロートル機では満足な戦いが出来る筈も無く、誰もが守屋一刀の勝利を信じて疑わなかった。
ただ一人、守屋一刀を除いて。だから、守屋が加賀谷と小野寺に「万が一の時は任せます」と、まるで自分が敗北するかのような口振りに
二人は意味が分からないと首を傾げ、顔を見合わせたのだった。何はともあれ、観客は八坂高校のヤラセだと結論を出した。
ただ一人、守屋一刀を除いて。だから、守屋が加賀谷と小野寺に「万が一の時は任せます」と、まるで自分が敗北するかのような口振りに
二人は意味が分からないと首を傾げ、顔を見合わせたのだった。何はともあれ、観客は八坂高校のヤラセだと結論を出した。
ヤラセとは言え、スポーツギアは最も勢いのあるモータースポーツだ。突然のサプライズイベントに観客は歓喜した。
試合開始のサイレンがスタジアムに鳴り響き、観客の歓声が湧き上がり、前代未聞のスポーツギアvsアームドギアの試合が始まった。
試合開始のサイレンがスタジアムに鳴り響き、観客の歓声が湧き上がり、前代未聞のスポーツギアvsアームドギアの試合が始まった。
守屋は右腕のバックラーブレードの刀身を引き伸ばし、砂埃を巻き上げながら大地を蹴り、油断無くバリエントに肉迫し横一文字に一閃。
バリエントの搭乗者は満足に反応する事も出来ず、棒立ちのままアイリス・ジョーカーの斬撃が脇腹に直撃。
バリエントの搭乗者は満足に反応する事も出来ず、棒立ちのままアイリス・ジョーカーの斬撃が脇腹に直撃。
鋼と鋼がぶつかり合う轟音が鳴り響き、誰もが上半身と下半身が泣き別れになったバリエントの姿を想像した。
「…腐っても、錆付いていても流石は強化セラミック合金装甲と言うわけか。」
新型スポーツギア、アイリス・ジョーカーが放った渾身の斬撃は旧式アームドギア、バリエントの錆付き劣化した装甲に阻まれていた。
「流石、アームドギアだ!!勝てる!これなら勝てるぞ!!」
バリエントの搭乗者は喜色混じりに叫んだ。スポーツギアの出力ではバリエントの装甲を貫く事は出来ず回避も防御も不要なのだから。
そして、バリエントは無造作にバックラーブレードの刀身を掴み、そのまま握り潰し刀身を半ば程で圧し折る。
そして、バリエントは無造作にバックラーブレードの刀身を掴み、そのまま握り潰し刀身を半ば程で圧し折る。
出力偏重型のスポーツギアですら不可能な芸当を、ロートル機はいとも容易くやってのけてみせた。
無茶な改造が施されているわけでは無い。そもそも、アームドギアの出力値が桁違いに高いのだ。
無茶な改造が施されているわけでは無い。そもそも、アームドギアの出力値が桁違いに高いのだ。
アイリス・ジョーカーの定格出力値150。フルドライブ時で出力値190。自滅覚悟でセーフティを外して漸く出力値240に対して
バリエントの出力値780と悪ふざけとしか言い様の無い圧倒的なパワーに、そのパワーから繰り出される攻撃の反動に耐えうる頑強な構造。
半世紀前の機体ですら、この性能だ。守屋一刀の父、守屋剣がスポーツギアの事を出来の良い玩具と評したのも頷ける。
バリエントの出力値780と悪ふざけとしか言い様の無い圧倒的なパワーに、そのパワーから繰り出される攻撃の反動に耐えうる頑強な構造。
半世紀前の機体ですら、この性能だ。守屋一刀の父、守屋剣がスポーツギアの事を出来の良い玩具と評したのも頷ける。
「パイロットの操縦技術がお粗末なのがせめての救いだな…ッ!!」
バリエントの右腕が引き絞られ紫電を纏うのを確認して、守屋は慌てて機体を大きなバックステップで離脱させる。
それと同時にバリエントの右腕が閃光と共に剛拳を振り落とし、アイリス・ジョーカーが居た地点に大きなクレーターを作る。
機体にダメージは無いが放たれた閃光でアイリス・ジョーカーのアイカメラがホワイトアウトする。
それと同時にバリエントの右腕が閃光と共に剛拳を振り落とし、アイリス・ジョーカーが居た地点に大きなクレーターを作る。
機体にダメージは無いが放たれた閃光でアイリス・ジョーカーのアイカメラがホワイトアウトする。
サブモニタが異常事態を警告。警告メッセージなど出さずとも、スポーツギアでアームドギアに対抗する事自体が異常だ。
「システムリカバリスタート!警戒システムオフ!セーフティカット―アイリス・ジョーカーフルドライブスタンバイ!」
868 :GEARS 第13話 5/9 ◆B21/XLSjhE :2010/02/26(金) 02:01:29 ID:pq+rr/SJ
相手が相手なだけに通常の試合では有り得ない損傷を受ける可能性は非常に高い。過保護な警戒システムなど邪魔になるだけだ。
最悪の場合、フルドライブで戦う状況に陥る事もあるだろう。そして、フルドライブが必要な状況に陥った時点で
確実にセーフティを外す以上の危機が迫っている事だろう。使わないのがベストだが切り札を常に切れる状態にしておくに越した事は無い。
相手が相手なだけに通常の試合では有り得ない損傷を受ける可能性は非常に高い。過保護な警戒システムなど邪魔になるだけだ。
最悪の場合、フルドライブで戦う状況に陥る事もあるだろう。そして、フルドライブが必要な状況に陥った時点で
確実にセーフティを外す以上の危機が迫っている事だろう。使わないのがベストだが切り札を常に切れる状態にしておくに越した事は無い。
この馬鹿げた騒動をただのエンターテイメント。ただの寸劇で終わらせる為に守屋はコクピットの中で一人戦う。
程無くしてアイリス・ジョーカーのアイカメラが回復。10m程離れた位置で拳を振り抜いたままのバリエントが守屋機を睨んでいた。
程無くしてアイリス・ジョーカーのアイカメラが回復。10m程離れた位置で拳を振り抜いたままのバリエントが守屋機を睨んでいた。
リニアレールナックル―機体の各関節に接続されている加速器により圧縮されたプラズマエネルギーを拳に収束し打ち出す打撃機構。
本来は遮蔽物を破壊する為の補助システムで格闘戦を想定した機能では無いが、スポーツギア相手であれば充分過ぎる破壊力だ。
本来は遮蔽物を破壊する為の補助システムで格闘戦を想定した機能では無いが、スポーツギア相手であれば充分過ぎる破壊力だ。
「バリエントのパワーなら一撃で破壊出来る!防御も攻撃も全部、こっちの方が上だ!!」
スポーツギアを圧倒的に越えるパワーに、バリエントの搭乗者が興奮気味に叫ぶ。
(機体の性能差は歴然…)
守屋の出した結論は何を如何足掻いても手も足も出ない相手…と言うよりも、手も足も出しても無意味な相手だという事である。
そして、実際にぶつかってみて知識と事実の差異を測った上で、無効化する為の手段を頭の中で再構築する。
そして、実際にぶつかってみて知識と事実の差異を測った上で、無効化する為の手段を頭の中で再構築する。
結論―
「…微塵にも負ける気がせんな!!」
「負け惜しみを!!」
バリエントが両の手が再び紫電を纏い、不敵に叫ぶ守屋に…アイリス・ジョーカーに肉迫する。
「付き合い切れんな。」
守屋は迫り来るバリエントに向けて、恐れる事無く真正面から突き進む。
「カウンター狙いのつもりかァッ!?」
二機の間合いが一瞬で零になり、バリエントのリニアレールナックルが左右から襲い掛かる。
「お前如きが思いつくような事をやるとでも思ったか?莫伽が」
閃光を放つ二つの拳が大地を抉り取るが、既にアイリス・ジョーカーは真上に跳躍。
後部カメラが焼け付きホワイトアウトを起こすが、知った事では無い。圧倒的な性能差があるとは言え、敵の操縦技術はお粗末でしかない。
背後を警戒しながら戦う必要の無い相手だ。そして、守屋はリカバリ中の白く焼け付いたモニタを横目で見て、満足気に口角を吊り上げた。
後部カメラが焼け付きホワイトアウトを起こすが、知った事では無い。圧倒的な性能差があるとは言え、敵の操縦技術はお粗末でしかない。
背後を警戒しながら戦う必要の無い相手だ。そして、守屋はリカバリ中の白く焼け付いたモニタを横目で見て、満足気に口角を吊り上げた。
「…莫伽が。」
一言呟いて、機体を反転。30tのアイリス・ジョーカーが急降下しながらバリエントの頭部目掛けて強烈な飛び蹴りを放つ。
バリエントは僅かに揺らぎ、至る所から時間経過により劣化した装甲が落ちるが、蹴りによるダメージは全くと言って良い。
バリエントは僅かに揺らぎ、至る所から時間経過により劣化した装甲が落ちるが、蹴りによるダメージは全くと言って良い。
「無様だな。バリエントのパイロット!!」
「糞餓鬼がァァァァッ!!」
圧倒的な性能差。一撃でも掠らせる事が出来れば、バリエントの勝ちが確定するというのにも関わらず、その一撃が決まらない上に
守屋の小馬鹿にしたような攻撃と挑発にバリエントの搭乗者は苛立ち混じりに怒鳴り、両腕に一際強い紫電を纏わせ守屋機に向き直る。
守屋の小馬鹿にしたような攻撃と挑発にバリエントの搭乗者は苛立ち混じりに怒鳴り、両腕に一際強い紫電を纏わせ守屋機に向き直る。
バリエントがリニアレールナックルを打ち出す度に強い閃光が放たれているが元々、そんな機能は存在していない。ただの整備不良である。
初撃でアイカメラが機能不全に陥った際、守屋はバリエントの奇襲を警戒していた。だが、奇襲どころかバリエントも動きを止めていた。
整備不良の旧型加速器にありがちな強烈な発光現象により、バリエントもまた自らのカメラアイを焼いていたのである。
致命的な障害だが、出力と装甲だけをアテにしていたバリエントの搭乗者は些細な事だと気にも止めていなかったのだ。
初撃でアイカメラが機能不全に陥った際、守屋はバリエントの奇襲を警戒していた。だが、奇襲どころかバリエントも動きを止めていた。
整備不良の旧型加速器にありがちな強烈な発光現象により、バリエントもまた自らのカメラアイを焼いていたのである。
致命的な障害だが、出力と装甲だけをアテにしていたバリエントの搭乗者は些細な事だと気にも止めていなかったのだ。
そして、その発光現象を知識として理解していた守屋は初撃で満足に整備されていない事に気付き、勝利を確信したのだ。
(そろそろ頃合か…?)
紫電を纏い、迫り来る鋼拳―
守屋は左腕のシールドで機体を庇いつつ後退。拳が唸る度に強い光を放つ鋼拳。そして、閃光の中から鋼が砕け散る破砕音が鳴り響く。
守屋は左腕のシールドで機体を庇いつつ後退。拳が唸る度に強い光を放つ鋼拳。そして、閃光の中から鋼が砕け散る破砕音が鳴り響く。
「な…にぃ…っ!?」
「後先考えず、整備不良の機体で大暴れするからだ。」
閃光が収まると、シールドで頭部を庇うアイリス・ジョーカーと、右腕の肘から先が消失したバリエントが対峙していた。
守屋がバリエントの右腕を切り落としたわけでも無ければ、蹴り飛ばしたわけでも無い。
ただ自らの攻撃の反動に耐え切れず、肘から先が弾丸よろしく地面に向かって撃ち飛ばされたというだけの間抜けな話である。
間抜けだが、地面に巨大なクレーターを作り上げただけでは飽き足らず、守屋機のレーダー範囲外にまで地中奥深くまで潜り込んでいた。
守屋がバリエントの右腕を切り落としたわけでも無ければ、蹴り飛ばしたわけでも無い。
ただ自らの攻撃の反動に耐え切れず、肘から先が弾丸よろしく地面に向かって撃ち飛ばされたというだけの間抜けな話である。
間抜けだが、地面に巨大なクレーターを作り上げただけでは飽き足らず、守屋機のレーダー範囲外にまで地中奥深くまで潜り込んでいた。
確かにバリエントは50年前の旧型アームドギアだが、自らの攻撃の反動で自滅する程、柔な機体では無い。
今でこそ現役を退いてはいるものの、当時は小型機でありながら安価で信頼性と整備性の高い機体で
アームドギアが地球統合軍の次期主力兵器として切替を促進させた立役者ともいうべき機体だ。
今でこそ現役を退いてはいるものの、当時は小型機でありながら安価で信頼性と整備性の高い機体で
アームドギアが地球統合軍の次期主力兵器として切替を促進させた立役者ともいうべき機体だ。
その上、力量差を容易に埋められるだけの性能を持ち、守屋とアイリス・ジョーカー程度であれば自動操縦でも容易く撃破出来るのだ。
だが、どんな名機でも数十年もの間、簡易整備の一つもされず最悪な環境に放置されていては、その力を満足に発揮出来る筈も無い。
だが、どんな名機でも数十年もの間、簡易整備の一つもされず最悪な環境に放置されていては、その力を満足に発揮出来る筈も無い。
「さあ、どうする?尻尾を巻いて逃げ帰るか?」
守屋は勝ち誇った声色でバリエントを手招きし、首を掻っ切るポーズを取る。
「今更、引き下がれるかああああッ!!」
残った左腕が紫電を纏い唸りをあげるのを見て、守屋は何時でも動けるように足の筋肉を撓ませバリエントを待ち受ける。
「舐めるなあああッ!!」
バリエントの巨体が宙に浮き、ブースターの残光を背後に咆哮と共に、アイリス・ジョーカーへと急接近する。
「……ッ!?」
低空を飛翔するバリエントの左腕に異常が起きる。加速器より放出される筈の紫電が止み、代わりに紅蓮の炎を纏う。
必殺技だとか隠された兵器だというような燃える展開では無い。これまた間抜けな話だが、整備不良から来る事故である。
必殺技だとか隠された兵器だというような燃える展開では無い。これまた間抜けな話だが、整備不良から来る事故である。
整備不良による暴走と自壊は守屋の想定する所であったが、飛行中に…それも肘から先が千切れかけプロペラの様に旋回を起こしたのは
流石に想定外の出来事である。そして、千切れかかった左腕が何処へ飛んで行くのか等、想定出来る筈も無い。
流石に想定外の出来事である。そして、千切れかかった左腕が何処へ飛んで行くのか等、想定出来る筈も無い。
「加速器は沈黙している…だったら、強烈な閃光も無いし目視で抑えられる………と良いな。」
些か意気を消沈させ、冷や汗を流しながら炎上しながら飛来するバリエントを迎え撃つ。
(もげるならもげるで、地面に向けて飛ばせよ…いや、誰も巻き込まずに死ねよ…頼むから…)
守屋の悲痛で割と必死な願いも空しく、バリエントの左腕は炎を吹きながら―よりによってアイリス・ジョーカーに向かって吹き飛んだ。
状況が状況なら元祖特機の攻撃と同じだなと興奮も出来るのだが、易々と地盤を貫くだけの威力があり、守屋の後には多くの観客が居る。
状況が状況なら元祖特機の攻撃と同じだなと興奮も出来るのだが、易々と地盤を貫くだけの威力があり、守屋の後には多くの観客が居る。
「回避は不可能……だが、準備をさせていたのは正解だったな…やるぞ、ジョーカーッ!!」
出番はまだか、主の認証はまだかと待ち受けていたシステムは安全装置を外した状態でフルドライブを実行。
スポーツギアとしては破格のパワーを得る事の出来る諸刃の刃。アイリス・ジョーカーと守屋の最後の切り札である。
守屋は大地に突っ込んだバリエントを捨て置き、飛来するバリエントの左腕に全神経を集中する。
スポーツギアとしては破格のパワーを得る事の出来る諸刃の刃。アイリス・ジョーカーと守屋の最後の切り札である。
守屋は大地に突っ込んだバリエントを捨て置き、飛来するバリエントの左腕に全神経を集中する。
(さて、リミッターを外したのは良いが…どうやって止めたら良いものやら…)
ブレードで打ち返すか?
否―不発な上に暴発したエセロケットパンチとは言え、アームドギアから撃ち出された事には変わりないのだ。
握り潰されて半分になった刀身では、打ち返すどころか満足に勢いを殺す事さえ出来ずに砕け散っても何ら不思議では無い。
否―不発な上に暴発したエセロケットパンチとは言え、アームドギアから撃ち出された事には変わりないのだ。
握り潰されて半分になった刀身では、打ち返すどころか満足に勢いを殺す事さえ出来ずに砕け散っても何ら不思議では無い。
ならば、アイリス・ジョーカーの拳で叩き壊すか?
否―ブレードよりも質量が大きい分、幾分かマシになるかも知れないが、アームドギアの装甲よりも柔なスポーツギアに打撃を加えた結果
相手を粉々に砕く代償に此方の拳も砕け散る程で、アテに出来る程の信頼性は無い。
否―ブレードよりも質量が大きい分、幾分かマシになるかも知れないが、アームドギアの装甲よりも柔なスポーツギアに打撃を加えた結果
相手を粉々に砕く代償に此方の拳も砕け散る程で、アテに出来る程の信頼性は無い。
だったら、両腕のシールドを展開し真正面から受け止めるか?
否―高速飛来する鋼拳。構造物としての強度はギアの方が低くシールドの上から機体を貫通させたとしても不思議では無い。
目の前で人死にを見過ごすわけにはいかないがそれが原因で自分が死ぬのはバカバカしい。兎にも角にも自分が死なない事が大前提だ。
否―高速飛来する鋼拳。構造物としての強度はギアの方が低くシールドの上から機体を貫通させたとしても不思議では無い。
目の前で人死にを見過ごすわけにはいかないがそれが原因で自分が死ぬのはバカバカしい。兎にも角にも自分が死なない事が大前提だ。
「やれるだけの事をやるしか無いな…ブレェェェドッ!!」
満足に考えも纏まらないまま、飛来するバリエントの鋼拳にバックラーブレードを一閃。予想通り、刀身は粉々に砕け散る。
「まだ…まだぁッ!!」
ブレードを振り抜いた勢いに乗って、機体を独楽の様に一回転させ再び、バリエントの鋼拳に再び正面から対峙。
「沈めぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
バリエントの鋼拳に咆哮と共にアイリス・ジョーカーの鋼拳を叩き付ける。衝撃緩和剤は吹かせない。どちらにせよ耐え切れる筈が無い。
寧ろ、粉々に破壊された方が好都合…いや、粉々に破壊させる事こそが守屋の狙いだ。
寧ろ、粉々に破壊された方が好都合…いや、粉々に破壊させる事こそが守屋の狙いだ。
ブレードを一振り、左腕を一本犠牲にした甲斐あって、エセロケットパンチの勢いが弱くなる。だが、まだ不十分だ。
交差する拳と巨人。だが、二つの影が離れる事は無かった。飛び退ろうとする拳をアイリス・ジョーカーが背を向けたまま
後ろから追い縋る形になった。当然ながら、アイリス・ジョーカーはMCI搭載機という性質上、ブースターやスラスター等の推進システムや
制御システムは装備されていないし、ローラーダッシュだって無い。整備班が悪ふざけで取り付けたという事も無い。
交差する拳と巨人。だが、二つの影が離れる事は無かった。飛び退ろうとする拳をアイリス・ジョーカーが背を向けたまま
後ろから追い縋る形になった。当然ながら、アイリス・ジョーカーはMCI搭載機という性質上、ブースターやスラスター等の推進システムや
制御システムは装備されていないし、ローラーダッシュだって無い。整備班が悪ふざけで取り付けたという事も無い。
「これだけやって、まだこの調子か…流石はアームドギアだな…ッ!!」
先程の拳を叩きつけ合った際、左腕は粉砕され守屋の目論見通り、格納されていた有線チャクラムのワイヤーが飛び散り
バリエントの左腕に絡まり、すかさず右腕で捕らえたというわけだ。
そして、バリエントの鋼拳は勢いを弱めつつアイリス・ジョーカーを引きずり回し、守屋は必死に勢いを押し殺そうと踏ん張る。
アイリス・ジョーカーは全身から白煙を吹き上げながらも、器用に片腕でワイヤーを手繰り寄せバリエントの鋼拳を小脇に抱え…
バリエントの左腕に絡まり、すかさず右腕で捕らえたというわけだ。
そして、バリエントの鋼拳は勢いを弱めつつアイリス・ジョーカーを引きずり回し、守屋は必死に勢いを押し殺そうと踏ん張る。
アイリス・ジョーカーは全身から白煙を吹き上げながらも、器用に片腕でワイヤーを手繰り寄せバリエントの鋼拳を小脇に抱え…
「…だがなァッ!!」
軸足に破砕音を鳴り響かせながら無理矢理身を翻し、にわかロケットパンチの進行方向を修正。
「これで終わりだぁぁぁッ!!」
そして、30tの重量から解き放たれた偽造ロケットパンチはギアスタジアムのバトルフィールド向けて一直線に突き進む。
暴発ロケットパンチモドキが目指す先は当然―
暴発ロケットパンチモドキが目指す先は当然―
「な、な、な、何じゃこりゃあああああっ!!?」
ロケットパンチのバッタモンの持ち主バリエントである。鋼拳は胸部に埋まり、漸くその暴走を停止する。
「さて…これで周りを巻き込む憂いも無くなった。」
「ま、待てよ…もう俺は…」
守屋はバリエントの搭乗者の言葉を無視して全身から気炎を吹き上げ、両腕を失ったバリエントに向き直り、残った右腕の拳を握り直す。
標的を見据え地を蹴り、両の足から白煙と化した衝撃緩和剤を噴出しながら、撃ち放たれた弾丸の如くバリエントに肉迫。
自身の拳で破損し、内部骨格が剥き出しになった胸部にアイリス・ジョーカーの鋼拳を突き刺し、ジェネレーターごと打ち貫く。
ジェネレーターが駆動を停止すると同時に、バリエントのアイカメラが光を失い膝から崩れ落ちる。
そして、この戦いをエンターテイメントとして終わらせるために、守屋は残った右腕を天に突き上げ咆哮した。
こうして、守屋の高らかな勝利宣言でアームドギアによるテロはただの寸劇として無事に幕を下ろした。
普通のスポーツギアの試合とは違う戦いに大凡の観客は満足して帰路に経った。
標的を見据え地を蹴り、両の足から白煙と化した衝撃緩和剤を噴出しながら、撃ち放たれた弾丸の如くバリエントに肉迫。
自身の拳で破損し、内部骨格が剥き出しになった胸部にアイリス・ジョーカーの鋼拳を突き刺し、ジェネレーターごと打ち貫く。
ジェネレーターが駆動を停止すると同時に、バリエントのアイカメラが光を失い膝から崩れ落ちる。
そして、この戦いをエンターテイメントとして終わらせるために、守屋は残った右腕を天に突き上げ咆哮した。
こうして、守屋の高らかな勝利宣言でアームドギアによるテロはただの寸劇として無事に幕を下ろした。
普通のスポーツギアの試合とは違う戦いに大凡の観客は満足して帰路に経った。
だが、まだ終わったわけでは無い。バリエントから吐き出された脱出装置から満身創痍の体で、搭乗者が這い出て来るの見るや否や守屋は
アイリス・ジョーカーのコクピットブロックを開放、バリエントの搭乗者に駆け寄り、肩口を蹴り飛ばす。
アイリス・ジョーカーのコクピットブロックを開放、バリエントの搭乗者に駆け寄り、肩口を蹴り飛ばす。
「ぐっ…このガキ!!」
「貴様はギアに乗って大暴れして終わりのつもりかも知れんが、此方はそれで済ませる気は無い。」
バリエントの搭乗者は無様に地べたを転がり悪態を吐くが、守屋の異様な威圧感を前に萎縮する。
お前に屈してたまるかと大声を張り上げようとするが声が上ずり、却って自分が怯えている事を示し、それを自覚する羽目になる。
お前に屈してたまるかと大声を張り上げようとするが声が上ずり、却って自分が怯えている事を示し、それを自覚する羽目になる。
「な、なんだってんだよ!?」
「答えろ。ビームコートダガーと、このギアを何処で手に入れた?貴様の様な輩が容易く手に入れる事の出来る代物じゃない筈だ。」
「さーて…どうだったかな…ぎっ!?」
バリエントの搭乗者はおどけてみせようとするが、守屋に指を踏み砕かれ声を詰まらせる。
「一度、死んでみるか?」
守屋は口角の端を吊り上げ、楽しげに嘲い涙目で指を庇うバリエントのパイロットを見下した。
「知っているか?人間の身体って頑丈な様で脆いって。そして…人間の心って簡単に壊れるんだ。」
守屋が暗い笑みで試してみるか?と呟くとバリエントのパイロットは後ずさりしながら守屋から逃げ出そうとする。
だが、守屋が逃す筈も無く、パイロットの足を踏み付け、そのまま踏み砕くが如く徐々に力を加えていく。
だが、守屋が逃す筈も無く、パイロットの足を踏み付け、そのまま踏み砕くが如く徐々に力を加えていく。
「逃げても良いが、その時は追いかけて後ろから蹴り倒し、嬲り殺す。」
「わ、分かった!話す!話すから!こ、殺さないでくれぇ!!」
守屋は意外に落ちるのが早かったなと拍子抜けしながら、足を退かす。
芝居とは言え、やり過ぎかとも思ったが将来、軍人になるというのにも関わらずこの男のせいでビーム兵器恐怖症になってしまったのだ。
例え、トラウマになったとしても、それはお互い様だ。よって気に病む必要は無い。もう少し虐めてやっても良いくらいだ。
芝居とは言え、やり過ぎかとも思ったが将来、軍人になるというのにも関わらずこの男のせいでビーム兵器恐怖症になってしまったのだ。
例え、トラウマになったとしても、それはお互い様だ。よって気に病む必要は無い。もう少し虐めてやっても良いくらいだ。
「さ、砕牙州のブラックマーケットだ!俺みたいな違法ギアを専門に商売をしている商人が居るんだ!
普段なら市場に並ぶのは盗難ギアや競技用の武器ばかりだったんだが、今年の春口から急に質量兵器やビーム兵器が並ぶようになって…
それで先週、アームドギアが出品され出したんだ。だから、手持ちのギアや武器と交換で調達したんだ。それだけだ!」
普段なら市場に並ぶのは盗難ギアや競技用の武器ばかりだったんだが、今年の春口から急に質量兵器やビーム兵器が並ぶようになって…
それで先週、アームドギアが出品され出したんだ。だから、手持ちのギアや武器と交換で調達したんだ。それだけだ!」
あまりにも身近だった地名に思わず、守屋は目を見開く。そもそも、砕牙には守屋の父である守屋剣の率いる特務部隊が居る筈だ。
治安維持の為、警察では対応の出来ない重犯罪者専門の対応部隊である以上、守屋剣が動く道理はあれど、動かない道理は無い。
守屋は妙だなと思いつつ、内心に押し留め再び、尋問を再開する。
治安維持の為、警察では対応の出来ない重犯罪者専門の対応部隊である以上、守屋剣が動く道理はあれど、動かない道理は無い。
守屋は妙だなと思いつつ、内心に押し留め再び、尋問を再開する。
「そのブラックマーケットは砕牙州の何処にある?」
「何時、何処でやるかは決まってねぇよ。サツにパクられるからな。どうしても知りたければ、お前がギアで暴れるしかねーぜ?」
「どういう事だ?」
「ブラックマーケットを利用するには違法ギアとしての実績が必要になるのさ。
俺の場合だとギアを奪って大暴れしていたら、行き成りブラックマーケットの奴等から市に誘われたんだ。
市は必ず砕牙州で開かれるんだけどよ…場所も時間も区々だしよ、他の顧客と顔を合わせる事もねぇ。足取りを掴む事は出来ねぇ。」
俺の場合だとギアを奪って大暴れしていたら、行き成りブラックマーケットの奴等から市に誘われたんだ。
市は必ず砕牙州で開かれるんだけどよ…場所も時間も区々だしよ、他の顧客と顔を合わせる事もねぇ。足取りを掴む事は出来ねぇ。」
確かに顧客と売人の一対一で実際にギアを使った犯罪を起こした者にしかコンタクトを取らないとなれば、足取りを掴むのは中々に難しい。
だが、大半の違法ギアは一度きりの犯行で終わるか、行動を起こした当日に現行犯で逮捕されるのが常で、意外にも再犯率の低い犯罪だ。
更に未遂で終わるケースが多く、世間からは大きなお友達の悪戯程度にしか思われていない事もあって通報率も極めて低い。
そういった経緯もあり、警察ですら違法ギア自体の足取りを掴む事が思いの他難しい。ついでに掴む気も、あんまり無い。
だが、大半の違法ギアは一度きりの犯行で終わるか、行動を起こした当日に現行犯で逮捕されるのが常で、意外にも再犯率の低い犯罪だ。
更に未遂で終わるケースが多く、世間からは大きなお友達の悪戯程度にしか思われていない事もあって通報率も極めて低い。
そういった経緯もあり、警察ですら違法ギア自体の足取りを掴む事が思いの他難しい。ついでに掴む気も、あんまり無い。
(ブラックマーケットの連中は何故、違法ギアの居所が分かるんだ…?)
何はともあれ、商人連中が違法ギアを自覚の無いテロリストに育てあげてしまったのが現状なのではと守屋は考えた。
とは言え、此処最近で逮捕された違法ギアの中にはビーム兵器を持ち出している者も少なからず居る。
そして、ビーム兵器をライセンスの無い個人が所有しているとなると、それは警察の管轄では無く、軍の管轄だ。
更に軍が出張るとなると、統合管理システムによる行動記録を遡り、誰がビーム兵器をもたらしたかを調べる事が出来る筈。
だと言うのにも関わらず、未だにビーム兵器が出回るだけでは無く、アームドギアまで出回る始末だ。
とは言え、此処最近で逮捕された違法ギアの中にはビーム兵器を持ち出している者も少なからず居る。
そして、ビーム兵器をライセンスの無い個人が所有しているとなると、それは警察の管轄では無く、軍の管轄だ。
更に軍が出張るとなると、統合管理システムによる行動記録を遡り、誰がビーム兵器をもたらしたかを調べる事が出来る筈。
だと言うのにも関わらず、未だにビーム兵器が出回るだけでは無く、アームドギアまで出回る始末だ。
(それを地球統合軍が気付いていないというのは絶対に有り得ない筈だ。何故、事態を収束させようとしない?何故、のさばらせる?)
「も、もう話は終わりだな?じゃ、じゃあ、俺はこれで…ぶへっ!!」
守屋が長考に入ると、もう懲り懲りだとバリエントの搭乗者は立ち上がり駆け出そうとするが、まだまだ逃がすわけにはいかない。
守屋は一旦、思考を中断しバリエントの搭乗者の足を踏み付け転倒させる。
守屋は一旦、思考を中断しバリエントの搭乗者の足を踏み付け転倒させる。
「馬鹿が。俺の用事は終わったが、お前に用事がある連中が其処まで来ているんでな。」
「こ、今度は何だって…なああああっ!?」
守屋が指を差す方向へ首を動かすと、通報を受けてすっ飛んで来た警察に両脇を固められていた。
「ギアで公共施設を襲撃し、俺のギアを潰してくれたんだ。警察の世話になって来い。」
「ち…畜生~…」
「それと…自分の事を違法ギアって言ったけど、アームドギアを持ち出したんだからテロリスト扱いだぞ?懲役で済めば良いな?」
見た目は似ているが、法律上ではエアガンとマシンガンくらいの差がある。若気の至りでやっちまったぜ☆では済まないレベルだ。
「な、何だとぉぉッ!?」
守屋は意地底悪く哂いながら肩を竦め、警察に連行されるバリエントのパイロットの断末魔の声を背中で受け流した。
肩膝を付いた侭の姿勢で佇む、アイリス・ジョーカーの足元に霧坂が此方に視線を向けていた。
肩膝を付いた侭の姿勢で佇む、アイリス・ジョーカーの足元に霧坂が此方に視線を向けていた。
「守屋君…」
「霧坂…無事で良かった。」
守屋は普段の調子で霧坂の元に駆け寄ると。霧坂の右腕が閃き、日が沈む夕暮れに乾いた音が鳴り響いた。
「簡単に命を投げ出すような真似するな!!この馬鹿野郎ッ!!」
「あ、ああ…その軽率だった。すまん…って、人をカタパルトで敵目掛けてぶっ放しておいて何を言っていやがるッ!!」
ご尤もな話だ。危険度で言えば、5月の襲撃事件で仕出かした霧坂の悪ふざけの方が余程、死亡率が高い。
それを棚上げされて怒鳴られた上に引っ叩かれて、納得出来る筈も無い。
それを棚上げされて怒鳴られた上に引っ叩かれて、納得出来る筈も無い。
「あ、あの時はその…えーと…うっさい!!バーカ!バーカ!!」
何故か、霧坂はしどろもどろになりながら子供の様な罵声を浴びせ左腕を閃かせ…茜色に染まる空に乾いた音が鳴り響いた。
多分、大事な事なので二度鳴り響いた。守屋は真っ赤に腫れ上がった両の頬を押さえ涙目でしゃがみ込む。
多分、大事な事なので二度鳴り響いた。守屋は真っ赤に腫れ上がった両の頬を押さえ涙目でしゃがみ込む。
「…どうしてこうなった?」
「うっさい…バカ…」
そして、霧坂は何かをぼそりと呟き、足早に去っていった。
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