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廻るセカイ-Die andere Zukunft- Episode6

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ParaBellum

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『ヘーシェン・アイン、ヘーシェン・ツヴァイに続き3、4、5、6にデータリンク。照準同期、補正完了』

データリンクによる同期により互いが誤射することはない。6体のオートマタから発射された散弾がイェーガーを襲う。

「おいおい、それショットガンだったのかよッ!? 明らかにウサギの武器じゃねぇなぁオイ!」

そう言いながらイェーガーはその身に似合わず軽やかに建物を盾にしながら回避する。
建物の影に入ったスピードは、先ほどの戦闘のそれを軽く凌駕していた。ほぼ発射音と同時に回避行動に入っていたのだから。

「イタリアのVartro社から特注してもらったオートマタ用の「PM5」だ。外見はライフルっぽいが一応ポンプアクションだぞ?」

ハーゼが自慢気に話す。黒光するその銃は、ポンプアクションの部分に注目しなければライフルのように見える。
おそらく長い銃身にショットガンには珍しいボックスマガジンというのが、そう見せるのだろう。

次弾を装填したヘーシェンたちがイェーガーを追尾する。進行方向を潰し、段々と距離を詰めていく。

「さて少年。まずは君の傷を治療しようか」
そう言ったハーゼはイェーガーの戦闘をそっちのけでオレの上着を脱がす。

「痛い痛い痛い痛い!本当痛い!」
上着が腹部に摺れるだけでも激痛が走る。それほどの傷だ。現に出血もまだ治まっていない。

「男なのに喚くな少年。治療ができるリーゼンゲシュレヒトというのも非常に珍しいんだぞ?感謝してくれ」

ハーゼの右手に白い光が現れる。そしてその手を、オレの腹部に勢いよく突っ込んだ。

「ちょっ、お前っ……、って、痛く、ない?」
「……物理的に入れてるわけじゃないからな。少し集中する。話しかけないでくれ」

ハーゼがいつもの飄々とした雰囲気から一転し、真面目な張りつめた雰囲気へと変わる。

その間にも、熾烈な狩人と兎たちの戦いは続いている。

「クソッ、案外相手にしてみると厄介だな、オートマタってヤツは!」
そうイェーガーが愚痴る。廃墟を盾にしながら逃げ続けているが、これではジリ貧に過ぎない。
一対一なら相手にもならないが、相手は6体。さらにデータリンクしているために相乗して性能が上がっている。
さらにハーゼの開発したという完全自律行動型オートマタ。概念実証型程度の性能ですら量産するとこの性能か。

「少年、オートマタというのは知っているか?」

ハーゼがオレの腹部に手を入れながらいきなりオレに話しかけてくる。

「人間が搭乗する人型ロボット。所謂人型戦車ってヤツ……じゃないのか?」
「そうだ、一般ではそれが正しい。だが、開発コンセプトは違ったものなんだよ……っと、終了だ」

ハーゼがオレの腹部から手を引きぬく。すると、オレの腹部の傷はその影も形もなく完治していた。

「なッ……、リーゼってのは、こんなこともできるのか……?」
これでは医者いらずだ。なんの用具もなく重傷の傷を完治させることができるのだから。
「安心しろ。できるのは私も含めた一握りだよ」
そう言いながらハーゼは手に着いた血を布巾で拭う。オレも傍に置いてあった上着を着込む。

「イェーガーも言った通り、オートマタというのはリーゼンゲシュレヒトを模して造られた。では、リーゼンゲシュレヒトと人間の違いはなんだ?」

「巨大ロボになれるか、なれないか……、じゃないのか?」

「違う。リーゼンゲシュレヒトとヒトの違いは、この世を構成する"セカイ"を操れるか否か……その一点だけだ」

ハーゼは、そのままゆっくりと話を続けていった。間近の戦いをガン無視して。

「セカイとは古代ギリシアからその存在は確認されていた。原子論というヤツでな。リーゼンゲシュレヒトにとっては当たり前のことだが、
普通の人間にはセカイがわかるはずもない。だから、説は提唱されても証拠がない、等で一蹴されるのが関の山だった」

たしかに、普通の人間にできないものを学会が認められるはずもないだろう。その光景は予想に難くなかった。

「つまりセカイとは素粒子だ。クォークやレプトン、重力子……それすらも、全てセカイという素粒子で出来ている。
 だが、認められるはずもなかったよ。狂人扱いされる。だから、リーゼンゲシュレヒトは皆その存在を裏へと隠していった」

「そしてそんな奴等が集まったのが、"セカイの意志"ってわけか」

「そうだ。そして我々リーゼンゲシュレヒトは自分たちを構成する"セカイ"を操り、様々なことができる。
だが、勿論そこに個体差はあった。共通して言えるのは年齢を……成長を止めることができること。
 それと、自分の名称を生まれた時点で知っていること。それくらいだな」

それだけ聞くとたいしたことはないように聞こえるが、あのイェーガーを見るとそうも思えない。

「ロボットになれるのはあくまで副産物。自衛手段の一つとしてできるようになった……というのが一説だが、
 何故できるのかは我々にはわからないんだよ。そして、ここまで説明してやっと最初の話に戻る」

その言葉をハーゼが言った瞬間、こちらにイェーガーの巨体が吹き飛んできた。

「っと、おーいイェーガー!随分苦戦してるじゃないかー?大丈夫かー?」
「うるせぇ!黙ってろクソウサギ!」

イェーガーの赤銅色の装甲は所々弾丸によって欠けていた。それほど、完全に統制された集団というのは力を持つのだろう。
そう、それは狩られるはずの"兎"が、狩人を狩ることができるように。

「見てろ、クソウサギ。狩人ってのがどんなものか教えてやるよ」

トンファーを再び握りしめ、6体のヘーシェンに向かって突進する。

イェーガーは、弾丸が発射されると同時に、ヘーシェンたちの中心へと着地した。

「互いが互いを誤射しねぇならよ……」

そして、トンファーの先端部分の赤い光が段々と強くなっていく。

「誤射してしまうコースにいりゃあ、撃ってこないってことだろうがっ!」

誤射してしまうコースからしないコースへと修正される発砲が止んだ一瞬の隙。その隙を狩人は見逃すことはなかった。

ヘーシェンの頭部に放たれるトンファーの先端。衝撃音と赤い光と共に、頭部は爆発して四散した。

一体のヘーシェンが地面へと倒れ伏す。元々の実力は段違いなのだ。数が減ってはどんどん不利になる。

「そうだぞイェーガー。それがプログラミングの限界だよ。よく気づいた」

イェーガーはそれを無視して残りのヘーシェンに向かう。頭部に、心臓部に。急所である部分にトンファーの打撃を次々に叩き込んでいく。

そして射撃戦を諦めたのか、次々とヘーシェンは銃を投棄していった。

「おお、徒手空拳でやろってのか?かかってこいよ」

同じくイェーガーもトンファーを投棄する。2体葬られ、残りのヘーシェンは4機。

4機のヘーシェンがイェーガーを取り囲むように襲いかかる。頭部を狙った回し蹴りと、腹部を狙った掌打。

それを体を捻って拳を回避し、足を掴んで蹴りを止める。

そしてそのまま足を掴んだままヘーシェンを片腕で投げ飛ばし、迫ってきていたもう一機のヘーシェン目掛けて投げ飛ばす。

もう片方の腕で後ろに肘打ちを放つ。その一撃は後ろから迫っていたヘーシェンを軽々と吹き飛ばした。

「イェーガーって、あんな、強いのかよ……」

「あういうリーゼンゲシュレヒトにも対抗できるように、私はオートマタを作っている。そう。どんな状況にも自己で考え、対処する。
完全自律行動型オートマタ。つまり、自己意思のあるオートマタが私の目指す完成形さ」

「つまり、人と同じ知性を持つロボットって……ことか?」

「そう。つまり今存在するオートマタは全て未完成。まだ誰一人として"オートマタ"というものに至ってすらいないんだよ」

そして、そのオートマタ、ヘーシェンは全て地面に倒れた。

最初の優勢が嘘の様に。たった一つ突破口を見つけられただけでこうも状況が変わるのか。

それほどに、この狩人は強力なのだろうか。そんな相手に、オレたちは戦いを挑んだのだろうか。

「まだ私は完全に意志を持ったのは完成できていない。だが、いつかは完成させてみせるさ」

「完成させるのは結構だが、もう全機破壊しちまったぞ」

イェーガーがオレたちの前に悠然と君臨する。

「そうだな。ま、どうだイェーガー。せっかく暴れ終わったのだから帰ってみるのはどうだ?」

ハーゼがそう言うとイェーガーは嘲笑うかのようにそれを一蹴した。

「おいおい冗談だろハーゼ。次はメインディッシュじゃねぇのかい?」

「ふむ。フルコースをお望みか。よし、イデアール行ってこい!」

今まで後ろで静かに見守っていたイデアールに話しが振られ、困惑したような、呆れたような表情を浮かべる。

「私ですか……?まぁ、いいですけど……」

ハーゼの突発的な脈絡のない発想にはもう慣れきっているのだろう。諦めたかのような声色だった。

「ああちょっと待てイデアール。イェーガーは手負いだ。ハンデとして能力の使用は一度限りだ。いいな?」

「私の能力って、何度も使ってナンボですよね?それでも一回なんですか?」

「ええい五月蝿いっ。さっさと行けっ」

ハーゼがイデアールの背中をグングンと押しながら強制的にイェーガーの真ん前まで出させる。

「はぁ…わかりましたよ、仕方ないなぁ」

疲れたような溜め息を吐いた瞬間、イデアールに膨大なセカイが密集していくのがわかった。

「我は造る者、具現の化身。"利殖の賢者"イデアール」

詠唱と共に、イデアールの体が真紅の光に包まれる。イェーガーの濁ったような赤銅色とは違う、純粋なる真紅の光。

そして現れたのはイェーガーと比べて大柄な真紅の巨人。元の人間が細身の男だっただけにその違いに驚かさられる。

分厚い装甲に身を包み、顔面はまるで能面のような深紅の仮面に包まれている。

「はっ、兄ちゃん、強いんだろうな?」

「まぁ、一応はボディーガートも務めてますからそこそこには」

そう言いながらイデアールは隣り建っていたビルに手を当てると、そこから深紅の光が発生し、山刀状の二振りの剣が現れる。

「双剣使いか。面白ぇじゃねぇのォ!」

イェーガーの弾丸のような拳が放たれるが、イデアールはそれを山刀の腹で弾きもう片方の山刀で斬りかかる。

だがイェーガーはそれを空いていた方の手の鉄甲部分で受け止めてみせた。

「ふー、いや、はや、意外とお早い」

「余裕だねぇ兄ちゃん。格好いいぜぇ、そういうの」

もう目にも止まらない拳と刀の応酬が目の前では繰り広げられていた。鉄と鉄がぶつかり合う衝撃音が耳に痛い。

「ふんッ!」

イェーガーの全身の力を込めた渾身のストレート。くらえばただでは済まないだろう。

イデアールはそれを刀の腹で受け止めるのではなく、同じく山刀を真っすぐに構え放った、ただの突きで受け止めた。

耳を思わず塞いでしまう程の金属音。それと同時に、イデアールの山刀が粉々に砕け散った。

「あー……やっぱり貴方の突きには耐えられませんでしたか。仕方ない、一本でやりましょう」

「随分と脆いなぁ、アンタの剣。普通固有兵装ならそんな簡単に壊れないだろう」

聞きなれない単語があったのでハーゼに聞いてみることにした。

「なぁ、固有兵装ってなんだ?」

「読んで字の如くリーゼンゲシュレヒトがそれぞれ持っている武装のことさ。リーゼンゲシュレヒトはそれを任意に出したりしまったりできる。
 まぁ、それもだいたい一種類だけだがね。複数の武装召喚なんて"召喚"の能力持ちでもない限りは無理だ」

「つまり、それはシュタムファータァにもその固有なんたらはあるってことか?」

もしあるならば、イェーガーに対しての突破口になり得るかもしれない。徒手空拳であの男に敵うはずがないのだから。

「一慨にあるとは言えないな。固有兵装がないリーゼも存在するのだから。そもそも固有兵装というのは各々リーゼが自分自身のセカイを
 削って出現させるんだ。消費じゃない、文字通り削るんだ。自分自身のセカイの上限を削ってな。だからそれこそリーゼは固有兵装を
 生み出すときは数日、長ければ一週間以上セカイを研ぎ澄まして同じセカイ量でも壊れにくい武装を出現させるのだよ」

「そんな大事なモノなのか、ならイデアールは……」

するとハーゼは意味あり気な微笑みを浮かべこちらを見据えた。

「覚えておけ少年。戦いを左右するのは情報だ。情報を駆使すれば力が上の相手も倒せる」

その言葉に込められた意味を、今は漠然としか理解することができなかった。

わかったのは、イェーガーはオレたちが倒さなければならないという遠回しな事実の突き付け。

アイツは、逃げることができない相手なのだと。ここまで関わった以上、それはならないと。

そう、忠告された気がしたのだった。

「いや、しっかし兄ちゃんマジ早いなオイ。それがもっと鋭い刃物だったら瞬殺されてたぜ」

「ご謙遜を、狩人」

眼にも止まらぬ赤と紅のコントラスト。拳と剣の舞。それは、あまりにも現実からかけ離れていて。

正直、魅了されていた。こんな目にあったというのに。この動きに。

ゲームじゃあ絶対に見ることができない、生の高速戦闘。

「ッ……!」

イデアールの短い呻きと共に、ついにもう片方の山刀もイェーガーの拳によって砕かれてしまった。

「しっかしアンタの武器ホントに脆いな。それ、マジで固有兵装か?」

「貴方の拳撃の威力が高いですよ。私なんてまだまだです」

イデーアルが観念したように空いた両腕を降参とばかりに上に上げる。

「よし、終わったな。じゃあイェーガー帰れ。今すぐ帰れ」

ハーゼが二機の合間に入り、イェーガーに対して指を突き出してそう言った。

「おいおいおい、そりゃねぇでしょ。また決着はついてねぇよ」

「これ以上戦ったら貴様も深手を負うぞイェーガー。シュタムファータァを狩るんだろ?いいのか?」

するとイェーガーは黙りこみ、しばらく考える素振りを見せた後、リーゼから人の姿へと戻った。

「そうだぞイェーガー。物分かりのいい男は好きだよ私は」

「うるせぇクソウサギ。一つ確認しておくが、次にオレが罪深き始祖を狩るときにはてめぇ等は関与しねぇんだな?」

「ああ、それは保証しよう。私も暇じゃないからな」

「なら、いいさ」

ハーゼの言葉にイェーガーは納得したのか、一人廃墟の街へと姿を消していった。

イデアールもそれを確認し、人の姿に戻る。

「しっかしイェーガーはなんで市街地じゃなくて廃墟の街へ帰って行ったんだ?アイツ野宿 なのか?ホテルに泊まる金もないのか?」

「さぁ。私は興味ないです」

ハーゼはイェーガーが消えた方向を見ながら、呆れたようにそう呟いたのだった。


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