創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

eXar-Xen――セカイの果てより来るモノ―― Act.5

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
「いやぁー、しっかしよくもまぁここまで派手にやってくれたもんだねぇ~……感心するよ、ったく。」

 周囲の建物は悉く崩落し、瓦礫の山と化した大型商店前……だった場所。
 夕闇迫る中、後片付けに追われる住人達と自警団の隊員達。その内の1人が地面に横たわる異形の機械の骸を見上げてそう言った。

「副隊長殿ぉー!やっぱりこれ軍の自走ポッドみたいですよぉー!」
「おー!そーかー!って事はやっぱ横流し品か……けどポッドに腕なんて生えるのかいー!」
「知りませんよそんな事ー!だけど自走ポッドだった事は内装から見て間違いないようです!」

 丁度横倒しになった上部ハッチから顔を覗かせ、声を上げる部下に返す副隊長と呼ばれた男。
 辺りを見渡せば腕を構成していたマシンダムだったパーツは周囲に四散し、ポッド自体も元の鈍い青色に戻っていた。
 ちなみに賊が盗み出した内部の荷物は既に撤去されており、店主は使えるものは再利用するつもりらしい。

「どうだー!動かせそうかー!」
「駄目です!完全にぶち壊れてますねこれー!」

 まぁそりゃそうだよなと副隊長。
 例えエンジンが動いたところで移動の要の脚部は転んだ拍子に折れたのか前の2本は根元からポッキリいっているし、そもそもエンジンや脚部周りは夥しい弾痕によって穿たれている。

「……やれやれ。この木偶の坊撤去するのにクレーンも引っ張って来ないといけないかぁ。このデカさだ、ただのマシンダムじゃ無理だよなぁ……」

 まぁーた通す書類が増えるなぁ、と頭を掻きつつ面倒臭そうに1人ごちる副隊長。
 ただこんな物いつまでも転がしておくわけにはいかない。道路の真ん中を占拠しているこれをさっさと片付けないと、復旧作業は遅れる一方だ。

「副隊長殿ぉー!」
「んだ?どうしたー!」
「ちょっと見て欲しいモノがー!」

 そんな事を考えていると上部ハッチの内よりそう言い手招きする部下。
 呼ばれるままにハッチまで立てかけた金属性の梯子を上り、内部を覗き込む副隊長。
 そこにはどうやったのか床の一部が円形に綺麗にくり貫かれた指令席付きのコクピットと、その奥でとあるモノを指差す部下がいた。

「ん?なんだこれ?」

 壁――元々は床――に垂直に張り付いた銀色をした箱。
 ボルトで四方を固定されており、その上部には鋭利な刃物で貫かれたような跡がある。
 覗いてみると中身は空っぽ。ただどこか周囲の雰囲気とはそぐわない、妙な違和感のある物体だった。

「このポッドのパーツではないようですね。何処とも接続されてませんし……」
「ふーむ、ちょっとばかり気になるな……とりあえずポッドごと押収しとくか。詳しく調べるのはその後だ。」
「了解です。」

 それだけ交わしてから外へ出る2人。
 目の前に広がる崩れた建物の群れが見てて痛ましい。これだけの物的被害を被ったと言うのに、死者が出なかったというのは奇跡としか言いようがないだろう。

「……昨日の78番区画の件と言い、今日のと言い、この街なんか呪われてんのかね?」
「さぁ……どちらも人的被害がほとんど無かったのは不幸中の幸いでしたが……」

 そんなやり取りをしつつ梯子を下る副隊長とその部下。
 そんな彼らの前に向こうの方からゆっくりと大きな何かが向かってきていた。

「ん?キャリアー?」

 彼の言う通り、それは黒色をした超大型のキャリアーだった。後部に兵器搭載用のコンテナを持ち、更には銃座も複数設けられている。

「変ですね。あれ、軍属の奴ですよ。」
「んむ、ペンタピアの奴だな。しかし何でこんなところに……?」
 彼らの目の前で停車するキャリアー。
 後部からはキャリアーと同じく黒く塗装された4体の作業用マシンダムが次々と降車し、同時に機体前部の側面に設けられた乗員用のハッチが開くと
 数人の部下を引き連れたいかにもな黒服の男が降り立った。

「J-012第11治安維持部隊所属ジン・ハーマン君だね?」

 物々しい雰囲気を纏い、彼らにそう言いつつ歩み寄る金髪の角刈りに丸渕眼鏡の男。
 その奥に見える蒼い瞳は冷たく、爬虫類を連想させる。

「ああ、そうだが。あんたは?……どうも軍人さんのようだが。」
「お察しの通り。私はペンタギア軍のレェン・マジェノだ。所属はわけあって言えんが、それなりの者と思っておいてくれ。」
「ふぅーん……で、その軍人さんが遠路遥々このスチームヒルに何の用だ?俺はあんた達が来るなんて聞いてないぞ。」

 ペンタピアと言えばこの周辺地域で唯一「軍」を保有しているジャンクヤード。
 規模も非常に大きく、ドの付く程の田舎であるスチームヒルにて暮らす者達――特に若者にとっては、まさに憧れの的である。
 そんなところの軍人が前触れも無くわざわざここまでやって来るというのは、どう考えてもただ事ではない。

「?……君の上司から聞いていなかったのかね?」

 故に首を傾げ、いぶかしむジン。
 彼に向けてレェンはそう言うと懐から一枚の紙を取り出し、一面を開け見せ付けた。
 そこに記載されていたのは自走ポッドの移動の承諾、ギガライン特殊線使用許可、キャリアーや特装マシンダムのジャンクヤード内への進入の承諾などなど……要約すると自走ポッドの引き上げ許可証だった。

「元々これは我々のものでね。諸行により行方不明になっていた機体がこちらで見つかったと聞いたのでな。急いて許可を取ってきたというわけだ。君達もこんなもの早く無くなった方がいいだろう?」
「そ、そりゃあそうだけど……だけどそんな話聞いてないし、そもそもこいつは今回の事件の重要な証拠だ!本当に許可が通ったのか!?」

 ジンが困惑するのも無理は無い。
 軍の横流し品と目されるこの自走ポッドは、うまくすればそれを行っている犯罪組織への手掛かりとなりうる代物。易々と手放すわけにはいかない。だが――

「彼の言う事は本当だ。」

 彼らの背後より聞こえた声。見れば背後に通信用アンテナが増設された部隊長仕様のギアズガードが佇んでいた。噴出す蒸気と共に開放される保護用シェル。
 その内よりがっしりとした体格の黒髪の男が降り立った。

「た、隊長!どういう事ですそりゃ!」
「あまりに急な事でな、連絡が遅れた。本来は私が対応するつもりだったのだが……」
「では、ご連絡の通り引き取らせて頂きます。」
「了解した。」
「……作業を始めろ。」

 その声を号令としてキャリアーの上部より射出された何者か。
 キャリアーと同じく黒ずくめのボディーに、両肩には1機ずつ大型のローターを装備し旋風を巻き起こしながら悠々と飛行している。
 ただ下半身に当たる部位は無く、地上での運用は一切考えられていない事が一目で分かった。

(最新型の特装マシンダム……やっぱいいもん持ってるなぁ軍人さんは……)

 空を飛べる機械というのは決まって高価なモノ。
 慢性的な財政難に陥っているスチームヒルの自警団には、このような代物を買う余裕は無い。

 ジンによるある種の羨望の眼差しを受けながら4機の特装マシンダムはバラバラとローターの回転する音を響かせながら所定の位置へと飛行していく。
 それを確認すると4機の作業用マシンダムはそれぞれ四方に別れポッドにフックを打ち込んだ。
 浮遊する特装マシンダムはそれぞれの作業用マシンダムの頭上にてホバリングするとワイヤーを垂らし、地上の機体がそれらをフックに取り付け連結が完了すると共に
 パラパラと積もった瓦礫を落としつつ自走ポッドの巨体は4機の特装マシンダムに吊り下げられて浮かび上がり、ゆっくりと移動を始めた。
「おいおい何だアレ……ポッドが空を飛んでるぜ?」
「ペンタピアの軍じゃねーか!かっけぇなぁ……」
「でもなんであいつらがこんな所にいるのよ?」

いつしか周りには一部始終を見ていた人々により人だかりが出来、何事かと目を見張る彼らによって周囲は一時騒然となっていた。

そんな彼らの視線を他所に、そのままキャリアーの上まで運ばれ慎重に荷台に下ろされる自走ポッド。
 作業が終了すると2種類のマシンダムは元のように格納され、レェンは1つ礼をすると部下と共にキャリアーに乗り込み去っていった。

「………………」
「………………」

ギャラリーも去り、何事も無かったかのように静まり返る大通り。
ジンと隊長、部下の3人は一列に並んでしばし遠ざかっていく大型キャリアーをただただ眺めていた。

「あいつら、一体……」
「……曲がりなりにも正規の手続きは通っているのだ。手出しは出来んよ。
 ……もっとも、それを言われるがままに通した上の連中もどうかとは思うが――相手が相手だ。穏便に済ましたいというのが本望なのだろう。
 その考え自体は分からんでもないから一概に非難は出来ん。」
「そりゃそうですが……」

 表情には出さないが悔しそうな隊長。
 まさかこんなに早く手を打たれるとは思っても見なかったのだろう。
 そんな隣でジンは空を見る。分厚い雲の内にて薄っすらと赤が残るが、それもいずれ消える事だろう。
 各所に配置された野外照明に灯が灯り、瓦礫の撤収作業は急ピッチで行われていく。

「……また、何か起きそうな気がするな。」

 2日連続で起こった怪事件。
 大ジャンクヤード「ペンタピア」の影。
 そして姿は違えど、どちらの現場でも目撃された黒い怪異と謎の銀色のロボット……胸騒ぎを覚えずにはいられないジンであった。






「穴」の淵に沿って伸びる舗装されていない一本道。そこを土煙上げてひた走る1台の青いキャリアーの姿があった。
 後部の荷台には1台の黒いマシンダムを載せ、更に後ろには黒く焦げたものや複数の弾痕が生々しく残る色とりどりの小型コンテナを3つほど積み上げてある。

「~♪」

 自分のキャリアーを亡きものにされたというのに上機嫌なベル。
 そんな隣でハンドルを握るディー。カーラジオより流行りの曲が流れる中、後部座席には窓を開け、長い髪を棚引かせつつ外の景色をぼうと眺めるアリスの姿があった。
 その目に映るは鉛色の空の元、地平線の彼方まで何処までも続く荒涼とし赤錆びた鉄の荒野。周囲に人影は無く、このキャリアー以外に動くものも無い。
 一見この世の終わりのような光景だが、ここで暮らす者にとっては見慣れた風景。なので運転席と助手席に座る彼らは特に注意も向けはしない。

「コンテナは減っちゃったけどまぁ大丈夫ね。アリスちゃんの為にも、今日は張り切っちゃうわよ~!」

 満面の笑みでそんな事を言うベル。

「へぇ、そいつは楽しみだな……けど、ホント昨日俺が行っといて正解だったな。感謝しとけよ?」
「あたしが頼んだから買いに行ったんでしょーに。あんたが自分から行くわけないでしょ?」
「そもそも今回はお前の番だっただろうが……」

 割って入ったディーの一言からあーだこーだ言い合う2人を後ろから見つめるアリス。
 その視線の更に向こうには、暗闇の中にてぽつりぽつりと揺れる小さな灯りが見えてきていた。


 ジャンクヤードの「外」。
 「穴」の淵に沿って所々に集落があり、そこで暮らす人々のほとんどがスカベンジャーを営んでいる。
 「穴」によってある程度守られている「内」とは違い、外界と直接繋がっている「外」というのはバリードや盗賊と言った脅威に日夜晒されており、ジャンクヤードによっては「外」がない所もあったりする。
 ただ周囲の安全が確保されると「外」の規模は段々と膨れ上がり、中には「内」よりも「外」で暮らしている人が多いところもあるとか無いとか……

 まぁこのスチームヒルはジャンクヤードとしては歴史が古い割に周辺の環境があまり良くないので、そこまでなってはいないが。
 ちなみにここの「外」で暮らす住人は「内」の住人の10分の1ほど。そのほとんどが定期的な整備が必要なマシンダムを用いて
スカベンジャー業を営んでいるのだから、おのずとそれらをバックアップする商いも生じる事になる。

 そしてその内の1つが機械整備工。俺達の親代わりであるバールが営む「リングダム・メカニズム」もそれを商いとしている。
 母屋のすぐ隣にある円柱を真っ二つに裂いたような形をした工場が目印の我が家はかなり遠目でもよく分かる目立ちっぷり。周囲にも建物は点在するが、ここまで目立っているのは早々無い。

「コンテナ積み込んどいてよー」
「あいよー……っと。」

 家の前で停車したキャリアー。
 そこよりテツワンオーを繰り、コンテナを片手で1つずつ持ち上げ倉庫へと運んでいく。
かなりボロボロになっていたので底が抜けないか少し不安だったが、どうも杞憂だったらしい。

「………………」

 背後から視線を感じる……と思えばアリスがじぃとこちらを見つめていた。
 興味がありそうで無さそうな、なんとも言えないその表情。

「運べばいいのか?」

 脇に置かれた焼け焦げた1m四方ぐらいのコンテナを眺め、そんな事を言うアリス。
 小型と言えど鉄製だ。ガワだけでも500キロぐらいは軽くあるんだが……

「いや、持つには少し重すぎ――」

 ――るから家の中で待っといてくれと言う前に絶句。
 アリスはそれを片手で軽々と持ち上げ、涼しい顔でこちらを向き

「どこへ持っていけばいい?」

 なんて淡々と聞いてくれる。

「……イグザゼンパワーすげぇなぁ。」
「?……何か言ったか?」
「いや、何でもない。じゃ、こっちついてきてくれ。」
「分かった。」

 ……突込みどころは満載だが、それを突っ込んだところで余計深みにはまりそうなのでやめておく。


「いやはや何とも。2度も、3度も助けてもらうとは、君には感謝してもしきれんなぁ……」

 いつもよりちょっと豪華な夕食の席。
 そこでディー達はバールやウェルに今日の出来事を説明していた。
 ベルが危うく賊に浚われるところだったとか、また黒いバケモノが出てきたとか、そこにアリスが華麗に(テツワンオーも)駆けつけたとか、話は尽きる事無く、止まる事無く。

「いや、私は出来うる限りでやれる事をやっただけだ。面を上げてくれ。」

 まるで神か仏を拝むようなバールに少々困惑気味なアリス。
 俺との態度の違いは何だと冗談交じりに笑いつつ言うディー。

「ま、何も無かったんだからもういいじゃない。キャリアーは吹っ飛んじゃったけどそれは何とでもなるし……」
「そうそう。モンドさんとこもすぐに復帰するだろうしな。手伝える事があれば手伝うつもりだけど。」
「ねーちゃんがそんな危ない目に遭ったというのはびっくりだけど見たかったなぁ、イグザゼンの活躍~」

(……仮にも家の者が命の危機に直面したと言うのになんとも暢気な。)

 はぁ、と少し呆れて1つ溜め息をつくアリス。
 古くより様々な外敵の脅威により揉まれ強くなったジャンクヤードの住人達は多少の事でへこたれはしない。むしろどんな事でも楽しもうと言う姿勢が強いのだ。
 終わり良ければ全て良し、人生万事塞翁が馬……外部の人間から見れば奇妙に見えるのも無理は無い。

「……しかし、本当によかったのか?」

 そんな所でアリスの一声。
 先ほどはああ言ったが、未だに少し引っかかっているのもまた事実。
 セカイ外の存在である彼女の周囲にいる事は、それだけ励起獣との遭遇率が高くなると言うこと。自分の都合で他の者に危害を加える事を彼女は意地でも是とはしたくなかった。

「私の近くにいればいるほどあの怪物――「励起獣」との距離もまた近くなる。決して迷惑をかけるつもりは無いが、
 今回のような万が一の事もある。そんな時、私は貴方達を守り切れると断言は出来ん……それでもいいのか?」

 ここまで言って首を縦に振る人間はいないだろう。
 あの怪異や「彼ら」との立ち回りは決して生ぬるいモノではない。やるかやられるか、それ以外に介入するものなどありはしないのだ。

「……さっき、言わなかったか?」
「?」
「恩ぐらい返させてくれって。それにどうせ寝泊りするとこなんてねぇんだろ?ハナから突っぱねてないで人の厚意はきちんと受けとくもんだぜ?」

 予想とは大きく異なるディーの答え。ニッと笑みを浮かべてさも当たり前の事のようにそう言ってくれる。
 周囲に目を向けても他の者達も同じ心境なのが見て取れる。

「だが……」
「あーもう!さっきから聞いてると辛気臭い辛気臭い!あたしらがいいって言ったらいいの!ちょっとぐらい危ないほうが楽しいもんだしね!
 ――っとそうだ。よく見るとあなた身体も髪も結構汚れてるわね……ついてきなさい!まるっと洗ったげる!!」
「っ!?な、一体何を……!?」

 ベルに手を引っ張られ、ずるずると連れて行かれるアリス。
 それを苦笑いで見送る男性陣。

「風呂は命の洗濯とはよく言うもんじゃ。ゆっくり漬かってくるとええ。」

 いつも通りふぉっふぉっふぉっと笑いながらバール。
 確かに彼女がここまでどんな道のりを歩んできたか彼等は知らない。

「お風呂、早めに沸かしといて正解だったね。」

 ただ、アリスもアリスで彼らの事を知らない。

「さっぱりすりゃー頭もさっぱりするかもなぁー」

 誰のお陰でか、稀代のお人良しにしてタフさ溢れるリングダム一家の事を。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー