「私です。計画の進行はいかがですかな、ミスターシュワルツ」
「特に不調は無い。だが聞きたい事がある」
「何です? 私で良ければお答えしますよ。無論答えられる範 疇でね」
「ダルナスの起動を早めたい。村人達は既に立ち去ったと思うのでね。まぁ……立ち去ろうが残ろうが構わないのだが」
「ん? あぁ、構いませんよ。ただ、絶対に傷を付けないでくださいね。もしもの場合……御存知かと思いますが」
「分かっている。事が済み次第連絡する。切るぞ」
「それではより良い返事を期待しております。世界に美しき花を……」
「特に不調は無い。だが聞きたい事がある」
「何です? 私で良ければお答えしますよ。無論答えられる範 疇でね」
「ダルナスの起動を早めたい。村人達は既に立ち去ったと思うのでね。まぁ……立ち去ろうが残ろうが構わないのだが」
「ん? あぁ、構いませんよ。ただ、絶対に傷を付けないでくださいね。もしもの場合……御存知かと思いますが」
「分かっている。事が済み次第連絡する。切るぞ」
「それではより良い返事を期待しております。世界に美しき花を……」
「下衆が……」
シュワルツは受話器を叩きつける様に戻し、手を組みなおした。しばし熟考すると、ゆっくりと顔を上げた。眼鏡の奥の目が鈍く不気味に光る。
受話器に手を伸ばし、ボタンを押す。
シュワルツは受話器を叩きつける様に戻し、手を組みなおした。しばし熟考すると、ゆっくりと顔を上げた。眼鏡の奥の目が鈍く不気味に光る。
受話器に手を伸ばし、ボタンを押す。
「レフト、お前に任務を課す。好きなだけ黒騎士を使っても構わん。その自動人形とやらを捕らえてこい。
どんな手を、使ってでもな」
この空気は一言でいえば、悲痛だ。大声を上げて泣く者、声を潜めすすり泣く者、ただただ呆然とする者etc。皆に共通しているのは一つ。
例え微力だったとしても、村人達の心の支えとなっていた村長、ロッファが無残な死体となって帰ってきた事に対して、各々が感情を爆発させているのだ。
昨日、トニーがシュワルツ達と一悶着を起こした酒場に、村人達が集まっていた。召集を掛けたのは怪我を負い、頭に包帯を巻いたギーシュだ。
ギーシュが呼んだ村人達の中には、家族を持つ者や、妻帯者もいる。皆、ギーシュからの連絡に戸惑った。こんな夜に全員酒場に集まれとは何事かと。
例え微力だったとしても、村人達の心の支えとなっていた村長、ロッファが無残な死体となって帰ってきた事に対して、各々が感情を爆発させているのだ。
昨日、トニーがシュワルツ達と一悶着を起こした酒場に、村人達が集まっていた。召集を掛けたのは怪我を負い、頭に包帯を巻いたギーシュだ。
ギーシュが呼んだ村人達の中には、家族を持つ者や、妻帯者もいる。皆、ギーシュからの連絡に戸惑った。こんな夜に全員酒場に集まれとは何事かと。
ギーシュは伝えた。ロッファが殺されたと。証拠はという者には、丁重に包んだロッファの遺体を見せて。
そして、村人達の中にはトニーもいる。未だに泣きやまぬクレフと、事態を察し気を落としたメルティを連れて。ショウイチはというと。
そして、村人達の中にはトニーもいる。未だに泣きやまぬクレフと、事態を察し気を落としたメルティを連れて。ショウイチはというと。
「……僕は行かない方がいいですよね」
落ち着いたクレフから事情を聴いたトニーに、ショウイチは怪訝な表情でそう聞いた。トニーは悩んだ。
もしもショウイチを連れていけば、恐らく槍玉に上げられる事だろう。部外者を村の事情に巻き込むなと。
しかしそれ以上に危惧すべき事がある。それはだ。
落ち着いたクレフから事情を聴いたトニーに、ショウイチは怪訝な表情でそう聞いた。トニーは悩んだ。
もしもショウイチを連れていけば、恐らく槍玉に上げられる事だろう。部外者を村の事情に巻き込むなと。
しかしそれ以上に危惧すべき事がある。それはだ。
ショウイチはタウエルンという名の自動人形を連れている事だ。これがトニーの頭を悩ましている理由である。
トニー自身は完全に払拭してはいないものの、タウエルン、および自動人形に嫌悪感を抱く事は少なくなった。だが、今の村人達はどうだ。
ロッファを殺された事によって、自動人形に対していつも以上に憎悪を滾らせている筈だ。もしもショウイチが自動人形を所持してると知ったら……。
トニー自身は完全に払拭してはいないものの、タウエルン、および自動人形に嫌悪感を抱く事は少なくなった。だが、今の村人達はどうだ。
ロッファを殺された事によって、自動人形に対していつも以上に憎悪を滾らせている筈だ。もしもショウイチが自動人形を所持してると知ったら……。
「……すまないね、ショウイチ君。多分すぐ戻るから、自由にくつろいでてくれ」
トニーはショウイチにそう伝え、起床したメルティとクレフを連れて、酒場へと向かった。ショウイチはひらひらと手を振って見送った。
ドアが閉まり、ショウイチは一呼吸置くと、踵を返して窓の方へと近づいた。
トニーはショウイチにそう伝え、起床したメルティとクレフを連れて、酒場へと向かった。ショウイチはひらひらと手を振って見送った。
ドアが閉まり、ショウイチは一呼吸置くと、踵を返して窓の方へと近づいた。
「どう思う、タウ。想像以上に根が深そうだぞ」
何処からともなく、人型状態のタウエルンが空中で一回転して地上に降りた。戦闘時に見せたバッファローモードは解除されている。
「どうするもこうするも……一番悪い奴を倒すんだろう。ショウイチが何時もやってる事じゃないか」
呆れたような口調でそう言うタウエルンに、ショウイチはワザとらしくため息を吐いた。
何処からともなく、人型状態のタウエルンが空中で一回転して地上に降りた。戦闘時に見せたバッファローモードは解除されている。
「どうするもこうするも……一番悪い奴を倒すんだろう。ショウイチが何時もやってる事じゃないか」
呆れたような口調でそう言うタウエルンに、ショウイチはワザとらしくため息を吐いた。
「そうじゃないよ。その一番悪い奴がトンデモないド外道でな。村の人達の神経をこれ以上無いほど逆撫でしたみたいなんだ。
おそらく……黒騎士、いや、自動人形をこれ以上無いほどに憎んでると思う。つまりだ、皆まで言わなくても分かるよな。
俺だって早く行動したいのは山々なんだけどな、もし下手に動いてトニーさんやメルティさんが責められでもしたら、やり切れないだろ?」
「……ごめん、無神経だった。確かに僕達を迎え入れてくれたトニーさん達に迷惑は掛けられないね……」
おそらく……黒騎士、いや、自動人形をこれ以上無いほどに憎んでると思う。つまりだ、皆まで言わなくても分かるよな。
俺だって早く行動したいのは山々なんだけどな、もし下手に動いてトニーさんやメルティさんが責められでもしたら、やり切れないだろ?」
「……ごめん、無神経だった。確かに僕達を迎え入れてくれたトニーさん達に迷惑は掛けられないね……」
しょんぼりとヘッドパーツを項垂れるタウエルンに、ショウイチは髪を掻きあげるとニコッと笑った。
「お前は優しいな、タウ。しかし困った。いつもみたいに俺達だけなら直に終わるだがなぁ」
その時だ。タウエルンが突如、素早い動きで空に体を向けた。ショウイチがその動きに合わせるように、目線を空に向ける。
「お前は優しいな、タウ。しかし困った。いつもみたいに俺達だけなら直に終わるだがなぁ」
その時だ。タウエルンが突如、素早い動きで空に体を向けた。ショウイチがその動きに合わせるように、目線を空に向ける。
「ショウイチ……」
「タウ、俺に考えがある。上手くいけば村人達と協力できるかもしれない。その前に」
「タウ、俺に考えがある。上手くいけば村人達と協力できるかもしれない。その前に」
瞬間、ショウイチの頬を斬る様に巨大な槍が、窓の隣の壁を貫いた。綺麗に開いた穴にミシミシ亀裂が走り、数秒後にはあっという間に壁が崩れ去る。
ショウイチの目前には、すでに武器を構え戦闘態勢を取った黒騎士達が待ち構えている。それもかなりの数だ。
良く良く観察するが、さっきの大男(ライト)の様に黒騎士に対し命令を行う人間はいない。まずい事が起きそうだ。それも厄介な。
まぁ、後々それは何とかするとして、今は目の前の敵、だ。
ショウイチの目前には、すでに武器を構え戦闘態勢を取った黒騎士達が待ち構えている。それもかなりの数だ。
良く良く観察するが、さっきの大男(ライト)の様に黒騎士に対し命令を行う人間はいない。まずい事が起きそうだ。それも厄介な。
まぁ、後々それは何とかするとして、今は目の前の敵、だ。
「タウ、のんびりは戦ってられんぞ。ナノマシンを使う」
背後を向いたまま、タウエルンはバッファローモードへと移行し、ショウイチに返答した。
「分かった。すぐに終わらせよう」
背後を向いたまま、タウエルンはバッファローモードへと移行し、ショウイチに返答した。
「分かった。すぐに終わらせよう」
一通り時間が経ち、ギーシュが村人達を座らせる。ギーシュは皆に話が行き届くように、中央に座る。皆、不安な表情を浮かべている。
張り詰めた空気の中、ギーシュが静かに口火を切った。
「突然召集を掛けてすまなかった。今回皆を呼んだのは他でもない」
張り詰めた空気の中、ギーシュが静かに口火を切った。
「突然召集を掛けてすまなかった。今回皆を呼んだのは他でもない」
「今見て貰ったように、俺達の支えとなってくれた村長が亡くなった。何故か? 遂にシュワルツが本性を露わにしたからだ。
俺は今日、村長の伝言で奥さんと共に、村長の帰りを待った。だが村長は帰ってこなかった。代わりに奴らが……黒騎士が今の村長を連れてきた。
奴らは村長を殺した事で、完全に俺達の村を掌握したと言ったよ。そして俺もこのざまだ。奥さんは村長が死んだ事で完全に寝込んじまった」
俺は今日、村長の伝言で奥さんと共に、村長の帰りを待った。だが村長は帰ってこなかった。代わりに奴らが……黒騎士が今の村長を連れてきた。
奴らは村長を殺した事で、完全に俺達の村を掌握したと言ったよ。そして俺もこのざまだ。奥さんは村長が死んだ事で完全に寝込んじまった」
一気にまくし立てた為言葉が詰まる。慌ててトニーがギーシュに水を差しだした。ギーシュはそれをグイッと飲み干すと、言葉を続けた。
「すまない、上手く話が纏まらなくて、今でも少し混乱してるんだ。……でだ。奴らは村長の遺体を届けに来ただけじゃない。もう一つ。
明日、この村で得体の知れない実験をするらしい。その実験の為に、俺達にこの村から出ていけと言った」
明日、この村で得体の知れない実験をするらしい。その実験の為に、俺達にこの村から出ていけと言った」
ギーシュの言葉にザワザワと、村人達が反応を示す。無論トニー達もだ。
「出ていけってそんな……まるで俺達が邪魔みたいじゃないか」
トニーの憮然とした言葉に、泣きすぎて呼吸が整わないクレフの背中を擦りながら、メルティが答える。
「邪魔みたいじゃなくて邪魔なんでしょ。すっごく悔しいけど……」
「出ていけってそんな……まるで俺達が邪魔みたいじゃないか」
トニーの憮然とした言葉に、泣きすぎて呼吸が整わないクレフの背中を擦りながら、メルティが答える。
「邪魔みたいじゃなくて邪魔なんでしょ。すっごく悔しいけど……」
ギーシュがゴホンと咳払いをして、村人達を静かにさせる。再び話しを続ける。
「信じられないだろ? だがこれだけ非道な行為をされたんだ。奴らは冗談でも何でも無く、本気で俺達を追い出そうと考えていると、俺は確信している。
正直悔しいって感情じゃ収まらないぜ。突然この村を乗っ取られた揚句、俺達が出ていく事になるとはな。……ここから本題だ」
「信じられないだろ? だがこれだけ非道な行為をされたんだ。奴らは冗談でも何でも無く、本気で俺達を追い出そうと考えていると、俺は確信している。
正直悔しいって感情じゃ収まらないぜ。突然この村を乗っ取られた揚句、俺達が出ていく事になるとはな。……ここから本題だ」
一方、黒騎士達の襲来により、修羅場と化したトニー宅。
黒騎士達はタウエルンにジリジリと近寄る。タウエルンはというと、背中を向けたまま動く気配が無い。
ショウイチがタウエルンに触れると、収納された半透明のタッチパネルが、ショウイチの前に出てきた。
パネルを見、ショウイチは素早い動作でタッチパネルを弾き、ENTERと刻まれたボタンを押す。
黒騎士達はタウエルンにジリジリと近寄る。タウエルンはというと、背中を向けたまま動く気配が無い。
ショウイチがタウエルンに触れると、収納された半透明のタッチパネルが、ショウイチの前に出てきた。
パネルを見、ショウイチは素早い動作でタッチパネルを弾き、ENTERと刻まれたボタンを押す。
パネルが閉じ、タウエルンのデュアルアイが赤く発光する。背後で、黒騎士達が意を決し、一斉に飛びかかってきた。
次の瞬間、タウエルンの排気口から白い煙が放出される。
その煙は襲いかかってきた黒騎士達と、その後ろで待ち構える黒騎士を巻き込んで膨大に膨れ上がった。
次の瞬間、タウエルンの排気口から白い煙が放出される。
その煙は襲いかかってきた黒騎士達と、その後ろで待ち構える黒騎士を巻き込んで膨大に膨れ上がった。
「悪いが時間が無いのでな……苦痛は無い」
ショウイチが周囲の黒騎士達に、憐みを込める口調でそう言った。
その煙に巻かれた黒騎士達の動きが次第に硬直し始める。すると、黒騎士達の外部装甲が少しずつ剥がされていく。
ショウイチが周囲の黒騎士達に、憐みを込める口調でそう言った。
その煙に巻かれた黒騎士達の動きが次第に硬直し始める。すると、黒騎士達の外部装甲が少しずつ剥がされていく。
剥がされるというより、溶けていく様だ。その内、その攻撃――――ナノマシンによる浸食はは黒騎士達の内部まで達する。
黒騎士達のヘッドパーツが地面に落ち、そのまま水たまりが地面に吸収されるように消えていく。
他の機体も続く様に崩れ落ちていく。やがて、白い煙が収まっていき、曇っている周囲が晴れていく。
黒騎士達のヘッドパーツが地面に落ち、そのまま水たまりが地面に吸収されるように消えていく。
他の機体も続く様に崩れ落ちていく。やがて、白い煙が収まっていき、曇っている周囲が晴れていく。
そこには、群がっていた黒騎士達の姿は既に無かった。奇妙な静寂が漂う。
タウエルンがバッファローモードから通常の状態に移行する。ショウイチはタウエルンの背中に飛び乗った。
タウエルンがバッファローモードから通常の状態に移行する。ショウイチはタウエルンの背中に飛び乗った。
「タウ、黒騎士達が何処に行ったか分かるか?」
「何となく! しっかり掴まっててよ、ショウイチ!」
「何となく! しっかり掴まっててよ、ショウイチ!」
ブースターを吹かし、タウエルンが飛翔する。ふと、ショウイチはタウエルンに声を掛ける。
「タウ、粒子残量は大丈夫か?」
「たぶんまだ持つと思う……。けど、太陽熱のエネルギーが少し危ないかもしれない」
「……まぁ、何とかなるか」
「タウ、粒子残量は大丈夫か?」
「たぶんまだ持つと思う……。けど、太陽熱のエネルギーが少し危ないかもしれない」
「……まぁ、何とかなるか」
続く
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