夢を見ていた。
理想を掲げ仲間と共に世界を変えようとした者の夢を。
その男は平民というだけで貴族達に家畜のように扱われ、平気で命を奪われる
そんな世界に疑問を持っていた。
そんな状況を変えようと男は一縷の希望を託して、長く続いていた戦乱に
自ら兵を率いる事で貴族達に自分達を認めてもらおうとした。
だが、戦乱が終結し命を懸けて戦った自分達に待っていたものは裏切りだった。
だから男は一緒に死地を乗り越えてきた仲間と共に貴族達に反旗を翻した。
結論から言えば男の反乱は全くもって無意味だった、その先に待っていたものは
一緒に戦ってきた者の相次ぐ裏切り、そして愛する肉親の死だった。
理想を掲げ世界を変えようとしたその男は結局は一人だけ生き残ってしまった。
愛する者の名すら刻まれていない墓標の前で一人絶望を抱え、
男の理想はそこで死んだ。
そして絶望を抱え一人立ちずさむ男の前にそいつは現れた…
懐かしく、そして決して忘れる事はできない昔の夢を見ていたようだ。
「どうやら
ヴォルマルフの発動したあの時魔法により飛ばされた衝撃で一時的に
気を失っていたようだな。」
ウィーグラフは神殿騎士の中では一番の新参者である、だが自分の所属する
騎士団の団長を他人と見間違えるような事はしない、
だから余計にこの状況が飲み込めなかった。
(ヴォルマルフは私達に殺しあえと言っていた。それにあの少年、
ミルウーダの仇である
ラムザは彼の事を何か知っている様だった。)
彼の記憶が確かならラムザはヴォルマルフと接触したことは無い筈である
「一体、何が起こっているというのだ?」
一人またつぶやき、そこで彼は気づき口を閉ざす。
すでにゲームは開始されているのだ、不用意に声を出す事は相手に
自分の居場所を知らせることになってしまう。
すぐに周囲を確認して辺りに人の気配が無い事を確認する。
(ここは…どうやら森の中のようだな。)
とりあえず身を隠せそうな場所を探し、そこに腰を落ち着け
次に自分が今すべき事、自分の命を守るための装備を確認する。
「ふむ、幾分か細身だが切れ味は良さそうだな。」
周囲に人が居ない事を確認したための余裕か軽く呟きながら
自分に支給された剣、キルソードを試し振りする。
「正直、支給されたのが剣で助かった。やはり使い慣れている
武器の方が良いし、何よりこれなら私の技も使えるだろう。」
素振りを数回したあと更に自分の荷物を確認しようとした時、不意に
それは聞こえてきた。
「ハァーーーハッハッハッ!!!」
そう、明らかに場違いな高笑いである。
「何者だっ!」
(周囲に人はいないと油断していた、いつの間にか接近されていたか!)
警戒態勢をとり、周囲を探り一際高い木の上に人影を確認する。
(しまった、頭上を取られた!)
相手が弓矢といった飛び道具を持っていたらお終いである。
それは幾つもの戦場を越えてきたウィーグラフにとっては当然の事、
だからウィーグラフは油断していた自分に腹を立て、同時に死をも覚悟する。
だが、その人影は自分の想像とは違う行動を取った。
「とぉう!!!」
目の前に飛び降りてきたのである。
地の利を捨てるその行為に呆気にとられるウィーグラフの前で
その男は更にウィーグラフにとって理解できない行動をとる。
「シュタッ!フ、決まりましたね…良くぞ聞いてくれました!
わたくしはビュ-ティー男爵「…不動無明剣」」
「ウゲフゥ!」
無謀にも構えもせず大声でしゃべり始めたその男を彼の得意技で黙らせる。
「安心しろ、手加減はしてある。今はせいぜい身動きがとれない程度だ。
口は動かせるはずだ、私の質問に答えてもらおうか。
…お前はこの争いに乗っているのか?」
喉元に剣を突きつけ絶対的に優位な立場を確保し、ウィーグラフは
その男に今の自分にとって最大の質問をする。
「うぅむ……本当に動く事はできなさそうですね、いいでしょう
あなたの技に敬意を評し質問にお答えしようじゃありませんか。
私はこんな美しさの欠片も無いような無粋な争いに参加する気はありません!
ですから、あなたの事も襲いませんでした。」
「そうか、そういう事なら……」
「お前は私の敵ではないな。」
剣を収め、その場に腰を下ろしウィーグラフは語り始めた。
彼にというより自分に確認するように。
「私は昔、ある理想を抱えて戦っていた。その戦いで自分が死んだとしても、
その思いは引き継がれてきっと世界を変える筈だと信じて……
だが結果は違った、信じた仲間は私の元を離れ、愛する者は私の所為で
皆死んでいった。そして、私だけがおめおめと生き延びてしまった。
私は悟った、力を持たない者は何をやっても夢を叶えられない、
だからどんなに蔑まれようと私は力を手に入れようと!!
…だが、私は信じたものにまた裏切られたようだ。
奴はヴォルマルフは私達に殺し合いをさせようとしている、こんな首輪を
付けて無理やりにだ!これではまるであの貴族共とまるで変わりはない!
だから私は決めた!私はヴォルマルフを倒しこのくだらない争いを止める!
私達をいい様に利用しようとする奴の鼻を明かしてやる!」
語気を荒め、先ほどまで周りを警戒していたのを忘れたかのように彼は叫ぶ。
それは“持たざる者”として生まれ、貴族に、仲間に、そして
今は手に入れようとしたその“力”にすら裏切られ
利用されてきた彼だからこその憤りゆえ。
そんな彼を今までのふざけた印象とは打って変わった優しい眼差しで
見つめながら、それまで黙ってウィーグラフの独白を聞いていた男は
穏やかな口調で話し始めた。
「本当に良かった、もしあなたがこの争いに乗るようならわたくしは
わたくしの為ではなく守る者のために命を賭けて
あなたを止めようと思っていました。ですが、あなたに深い悲しみを感じ
もしやと思い、こうして話す事ができるようにしましたが。
わたくしの判断は間違っていなかったようですね。
如何です、わたくしと一緒にこの美しくない争いを止めようじゃありませんか!!」
「……私に共に戦えとお前は言うのか。私は三度裏切られてきた男、
そんな男が簡単に人を信じると思うのか?」
「思いますとも!あなたは奪われるものの苦しみを知っています、それだけでも
わたくしがあなたを信じるに足ります!それにあなたはいつでもわたくしを
殺す事ができたのにしなかった、それどころかわたくしに多分あなたにとって
一番心苦しい話をしてくれた。それは戦わないといった私を信じてくれたからです!
ですからわたくしもあなたを信じるのです!!」
「!!!」
現れてからずっとウィーグラフの想像を超えてきた男の今までとは違う
真摯な言葉にウィーグラフは絶句する。
そんな男を見て、彼は昔、自分を信じて共に戦った仲間のことを思い出す、
そしてただ愚直だっただけの自分を信じて命を落とした愛する妹の事を。
(……ミルウーダ、私は信じていいのだろうか目の前の男の事を?
…いや、最早迷うまい。私は“持たざる者”として、利用しようと
する者を倒すだけだ!その為には私一人では力が足りない、だから私もこの男を信じよう!)
決意を胸に秘め、覚悟を新たにしたウィーグラフは男に告げる。
「いいだろう、私もお前の事を信じるとしよう。私は神殿・・・いや、
骸騎士団団長ウィーグラフ・フォルズだ。」
「フフフ……信じてくれてありがとうございます。ではわたくしも
あらためて自己紹介させていただきましょう!
わたくしはビューティー男爵バ「
中ボス」」
「………へっ?」
「ム、すまない何故かお前の事はこう呼ばなくてはいけないような気がしたのだ。
この首輪の所為なのだろうか?」
そう言いながらウィーグラフは首輪を指でなぞる。
「ち、違います!わたくしの名は決して中ボスなどではありません!
わたくしはビューティー男爵「中ボス」」
「ふむ、どうやらビューティー男爵までは許せるようだな。すまない、
これはお前にかけられた呪いの一種なのかも知れん。
お前には悪いが中ボスと呼ばせてもらう。」
「納得できませ~~~~~~~ん!!!」
こうして、出会う事になった失っていた理想を取り戻した騎士と
謎の中ボスは同じ目標を掲げ共に行く事になる。
だが、彼らは知らない、二人は偶然出会ったのではない事を
彼らは必然的に出会う事になったのである。
理想を取り戻したウィーグラフにとっては皮肉なモノ“アリエス”によって・・・
【B-3・森の中/朝】
【ウィーグラフ@FFT】
[状態]:健康、ヴォルマルフに対する怒り
[装備]:キルソード@紋章の謎
[道具]:いただきハンド@魔界戦記ディスガイア、支給品一式
[思考]:1:ゲームの打破(ヴォルマルフを倒す)
2:仲間を集める
3:ラムザと協力?(できるのか?)
[備考]:原作でのchapter3 地下書庫 地下1階での戦闘少し前からの参戦。
彼はヴォルマルフがルカヴィであると知りませんし、
聖石を民衆の支持を集めるための道具程度に思っています。
当然、魔人ベリアスに変身する事もできません。
妹の仇であるラムザに対してはわだかまりがあります。
【中ボス】
[状態]:かすり傷、実はまだストップ(格好悪いのでいえません!)
[装備]:にぎりがくさい剣@タクティクスオウガ
[道具]:ゾディアックストーン・アリエス、支給品一式
[思考]:1:ゲームの打破
2:???
[備考]:よく分からない力により彼は必ず「中ボス」と呼ばれます、
ビューティー男爵までは許容範囲。
最終更新:2009年04月17日 01:30