「さて、お互いの自己紹介が終わった事ですし、
今度は情報交換といきましょうじゃありませんか。」

自己紹介が終わったと言いつつ、とても不満そうな(主に中ボス発言の所為で)
顔をしている中ボスが話を続ける。

「それもそうだな…現状で私が知っている事といっても高が知れているが。」

それに応えてウィーグラフも自分の知っている情報を中ボスに伝える。

「ふむ、あの男はヴォルマルフというのですか…でも、おかしいですね?
あなたの話から察するにその男は唯の人間の筈ですが…」

「それは私も気になっている。そもそも私は新参者だったから、あの男については
深くは知らないのだが、あの男の息子と娘は確実に唯の人間だ。それは断言できる。」

ここに来る直前まで一緒に行動していた青年の事を思い出しながらウィーグラフは話す。
少し血気盛んなところはあるが実直な青年だった。

「理解に苦しむ話ですね、唯の人間があの『超魔王』バールを手玉に取り、あまつさえ命まで
奪ってしまったのですから。」

中ボスは少し眉間に皺を寄せながら考え込んでいる。

「分からない事が多すぎるな…やはり、私はあの少年に会うべきなのかもしれない。」

それまで何事かを考え込んでいた中ボスはウィーグラフの言葉を聞き顔を上げる。

「少年?お知り合いですか?」

それまでの様子とは違い険しい表情になっていたウィーグラフは少し語気を弱めてその質問に答える。

「あぁ…さっきは気持ちの整理がまだついていなかったので、すまないが外させてもらっていた。
その少年の名前はラムザ・ベオルブ…妹の仇だ…」


「では第一目標はその少年、ラムザ君。でしたっけ?に会う事という事で宜しいんですね?」

ウィーグラフからその少年との因縁を一通り聞いた後、念を押すように質問する中ボス。

「何か知っているようだったからな、ヴォルマルフを倒す為には会わなくてはいけないだろう。
どっちにせよ、今のままでは奴は謎が多すぎる。」

言葉とは裏腹にウィーグラフの表情は硬い。

「…迷ってらっしゃるんですか?」

気持ちを察したのか中ボスが控えめに語りかける。

「ふっ、もう迷わないと決めたつもりだったのだがな。
妹が死んだのも彼一人の責任では無いという事を今は理解できる…
少し前までは復讐に取りつかれ過ぎてそんな事は考えたこともなかったがな。
だが実際に手を下したのは彼だ。
それを考えると素直なところ、彼に会った時に私はどんな感情を抱くかは分からない。
…お前には悪いがもしかしたら私は彼と剣を交えるかも知れん。」

真剣な表情で最悪の結果をも含めて己の心境を伝える。
自己の矛盾には気づいているがその気持ちの処理の仕方が分からないのだろう。
同じく真剣な表情で話を聞いていた中ボスはウィーグラフが話を終えると少しだけ息を吐いた。

「はぁ、その時は私はあなたを止めなくてはいけませんね…
あなたはここで最初に出会い協力する事になった、云わば友!いえ相棒!
出来ればそれは避けたい事です。」

「友…か。ついさっき会ったばかりの男に対しておかしなことを言う奴だな。」

彼なりの励ましだったのだろうが、その表現の仕方に思わず笑みがこぼれる。

「へっ?あ、あの私は結構本気で言っているのですが…」

「くくく、いやすまない。お前の励ましはしっかりと届いている。
少年に会う前に心はきちんと決めておく。」

未だ迷いはあるのだろうが、あえて口に出しておく事で更に決意を固めるウィーグラフ。
それを見て安心したのだろうか中ボスが提案する。

「それでは早速移動しようじゃありませんか!私達の現在地は北に目立つ塔が見えますし
多分、B-2かB-3といったところでしょう。それならば私に考えがあります、着いて来て下さい!」

1時間ほど経ったとき彼らはC-3にある小高い山を越える真っ最中だった。

「なぁ、中ボス。」

「ツーーーーーーーン!!」

「…ビューティー男爵。」

「はい!なんでしょうか?」

「疑問だったんだが何故、南なんだ?北は行き止まりだから分かる。
だが東に行っても良かったのではないか村もあるようだし…」

かねてからの疑問を口に出すウィーグラフ。
その質問を待ってましたとばかりに目を輝かせ始めて中ボスは語りだす。

「フフフ…やはり分かってはいませんねウィーグラフさん。いいですか?
ヒーローとは常に高いところから現れると相場が決まっているんです!
何故なら、その方が格・好・良いから!!」

「格・好・良いから!!」という声が山彦になって辺りに響き渡る。
山彦が止んだ時、其処は静寂な空間となっていた。

「…………………………」

「…………………………」

大の大人が無言で見つめあう奇妙な時間。
先に切り出したのはウィーグラフだった。

「…もしや今、我々がこの山を登っているのは。」

「はい、高いからです!次はこのまま南下して丘稜に行きましょう!」

中ボスは気がついていないがウィーグラフの周りからは微かな殺気が漂い始めている。
ウィーグラフは質問を続ける。

「…では、なぜあの塔には行かなかったのだ?」

「それはあそこが行き止まりだった事と…あそこは高すぎます!
飛び降りるのには向いてないじゃないですか!」

その言葉に初めて会った時の事を思い出す。

「そういえばあの時も飛び降りていたな…」

「エェ、格好良かったでしょう?」

まるで誇るように胸を張る中ボス。
浮かれている彼はまだ気がついていないがウィーグラフの殺気は一般人だったら
立っていることすらできないほどのものになっている。

「そうか、言い残す事はそれだけだな?」

「へっ!?アッーーーーーーーーー!!」

暫くして、其処には顔面が変形するほど殴られた中ボスと少し晴れやかな顔になったウィーグラフがいた。

「まぁ、これくらいでいいだろう。今更、東に向かうのも何だからな。
とりあえずはこのまま南に向かうとするか。」

「ふぁ、ふぁい…ふぉうでしゅね。ふぉうしゅまひょう。(はい、そうですね。そうしましょう)」

取り合えずはそのまま南に向かうことにした彼ら。

だが彼らは知らない。
中ボスの奇行により彼らの目標の一つであった『仲間を集める』という事の芽を悉く潰してしまった事を。
中ボスは知らない、それを知ったらウィーグラフに更に制裁を受ける事になってしまうかもしれない事を。


【C-3・小山/1日目・昼】

【ウィーグラフ@FFT】
[状態]:健康
[装備]:キルソード@紋章の謎
[道具]:いただきハンド@魔界戦記ディスガイア、支給品一式
[思考]:1:ゲームの打破(ヴォルマルフを倒す)
    2:仲間を集める
    3:ラムザの捜索
    4:…ちょっと疲れた

【中ボス】
[状態]:軽症(顔面を腫れるほど殴られました)
[装備]:にぎりがくさい剣@タクティクスオウガ
[道具]:ゾディアックストーン・アリエス、支給品一式
[思考]:1:ゲームの打破
    2:???
    3:冗談の通じない人ですね!(本気だったけど…)

045 言えぬ事、言いたい事 投下順 047 気付く者気付かない者
044 公開密談 時系列順 054 希望を着た悪魔
016 “持たざる者”として ウィーグラフ 061 拳で語る
016 “持たざる者”として 中ボス 061 拳で語る
最終更新:2009年04月17日 09:47