2009/10/26にWiki直接投稿
教団本部に入ってすぐ、生粋の魔界の悪魔である「アサルト」と悪魔をベースにアグナスが造り出した「天使」である
「アルトアンジェロ」「ビアンコアンジェロ」が戦うムービーが挿入され、両者が敵対している事がわかる。
本部内の渡り廊下。跳ね橋を下ろそうと装置を操作するがこれも魔の力の影響か、
橋自体に巨大な樹木が絡みついていて役をなさない。
仕方なく他の道を探して後戻ったネロは、はびこった大木により壁が大きく崩れ落ちた、とある一室にやってきた。
焦りに呼吸を弾ませながらぐるりを見渡し、ふと頭上の「それ」に気付いて息を呑む。
鳥籠にも似た奇妙な装置。目を閉じたキリエが揺らぐ赤い光に捉えられるようにして浮いている。駆け寄ろうとしたネロの前に、耳障りな羽音と共にアグナスが現れた。
その進路を猛スピードで飛ぶ何者かに遮られ、慌てて急ブレーキをかける。
「何者か」……いや、「何者かたち」……それは一群の「天使」だった。
彼らはしばらく辺りを目まぐるしく飛び回っていたが、ほどなく一斉にネロに向かって殺到してくる。
四方八方から次々と飛び掛ってくるのを或いは剣で弾き飛ばし、或いは槍を捕まえて投げ飛ばすが、
数と機動力の差のせいで防戦一方に追い込まれてしまう。
幾つもの翼が風を切る音と、剣戟の音が響く中、アグナスは傍らに生まれた光、その中から現れた鎧姿に恭しく頭を垂れた。
援護の為か、更にも増して激しくなった「天使」たちの攻撃を片っ端から捌きとめ、突進してきた二体の槍を両腋に挟んで投げ飛ばし、駆け出した所で剣を弾き飛ばされるがかえりみもしないで跳躍する。
目を閉じたままのキリエが無意識の下から、囁くようないらえを返した。
しかし、彼がその存在を呪いながらも同時に少なからず頼みにもしていたであろう悪魔の腕は、
先刻のようにやはり肝心なところで彼を裏切った。
彼に出来たのは、辛うじて、その胸に下がっていたペンダントを掴み取る事だけ。次の瞬間には、急降下してきた一体の「天使」によって地上に叩き落され、床に磔にされてしまう。
荒い息をつきながら、左手の中に残されたものを見下ろす。
がっくりと膝を突き、何度も拳を床に叩きつけるネロの獣のような叫びは、やがてかすかなすすり泣きへとかわっていった。
教団本部内の一室、つい先刻教皇が「蘇った」部屋を横切ろうとしたネロは、はっと息を飲んで足を止める。
「遅かったな」
あの赤いコートの男が寄りかかっていた柱から身を起こし、床に突きたてていた大剣を背負うところだった。
「今さら……何の用だ?」ネロは歯軋りせんばかりの剣幕で「こっちは急いでるんだ」と男を乱暴につきのけ先へ進もうとしたが、その肩を「そろそろ―――」と背後から男がつかんだ。
途端、ぎろりと相手を睨みつけ、つかんだ手を払いのけざまにネロは男に殴りかかったが、男はそれを難なくかわし、今度はネロの腕をつかんで「鬼ごっこはヤメだ」上から覗き込むようにしつつ言う。
と、戒められたネロの右腕がこめられた力で輝きだすのを見て取るや、男はぱっと手を放し、独り相撲を取らされたネロは、自分の力のあおりを食らって背中から壁に突っ込んでしまった。
「その刀を返せ」壁に開いた大穴に、のしのし歩み寄りながら男が言う。
「何の話だ……」という言葉とは裏腹に、ネロの体から光の波動が湧き出して、次いで放たれた一陣の衝撃が崩壊で立ち込めた土埃を吹き払った。
「俺の兄貴の物でね。返すなら―――」ひょいと背中に手をやり、大剣を抜き放つ。
「なら、持ってけ」
「お前もな」
「……行かせていいの?」
「今助ける。信じてくれ」
息をつき、首を振ると出し抜けに駆け出した彼は、飛来する卵の着地点まで駆けつけると、それを次々と蹴り返す。
叫んだエキドナが龍に身を変えて襲いかかったが、ダンテは手にした剣をひょいと背中に掲げただけ、次の瞬間その姿はエキドナの大きく開いた口の中に飲み込まれてしまった。口の間からはみ出した片足が力なくぶらりと揺れる、と見えたのも束の間、「そういう誘いなら……パスだな」易々と龍の大顎をこじ開けてダンテが再び姿を見せる。
呟くと、光が一層強くなり、それが収まったとき……ダンテの両手と両足、それに下顎は奇妙な「鎧」に覆われていた。紫の光の帯が脈打つ両の拳を握り締めると、軽い金属音がして更に刺状の肘当てが現れる。それらを眺めやった後、ダンテは門へと向き直った。しなやかな足捌きで石畳を踏みしめ、ゆるゆると両腕を泳がせて、指先を揃えた右の手をぴたりと巨大な石壁に突きつけた。
掲げた拳から炎を吹き上げ、門の欠片を砕きつつぎゅりぎゅりと上昇し、途中からは身を反転させて幾つもの石塊を蹴り割って、頂点に到達したところで手刀を閃かせ、一際巨大な門の天頂部に当たる岩塊を叩き割り、着地する。
「サイコーだ!」雪の上を滑り、近づいた彼を、待ってましたとばかりに宙から降りてきた女の一人が抱きしめようとするが、ひょいとかわしたダンテは仰向けのままバックスケーティングして、もう一人の女のお尻を下から覗き込んだ。エロ親父そのものの行動に、慌てたように彼女は距離をとり、しかしまたお互いに近づいてはかわし、かわされる。
ネロを辟易とさせたのと同じ、汚らしい色の消化液を口から飛び散らせながら怒鳴る、バエルそっくりのこの化物の名は「ダゴン」。
「体は隠れてたが、そのニオイがな……」と、いかにもわざとらしく顔の前で手を振って見せる。「ヒドイもんだ」
「ふざけた人間が!丸呑みにして消化したるわい!」
挑発に怒り狂ったダゴンは足を踏み鳴らし、雄叫びを上げた。悪臭を孕んだ颶風が吹きつけて、ダンテのコートが吹き上げられて裏返しになり、頭の上に被さってしまう。間抜けな空気をコートと共に払いのけ、「消化できるならな」不敵にダンテは笑うのだった。
「これほどの力とは―――無念なり……!」
ぜいぜいと苦しげに肩を上下させるべリアルに、息一つ切らしていないダンテが指を突きつける。
「汚いケツ見せておうちに帰りな。許してやる」
しかしべリアルが勝者の情けを受け入れることはなかった。
「一度退いた身、二度は退かぬ!」
叫ぶなり、全身に炎を纏わせ、残された力を振り絞り突進してくる。
が、それもダンテの放った銃弾の前に火の粉となってあえなく散った。
べリアルの起こした最期の風に、朱の蛍が断末魔のように舞い、消えるのを眺めて
「ショボイな……ハデな花火を期待したんだが」
呟いたダンテは銃をしまい、巨大なモノリスの前へ歩を進めた。
台座の上に浮かぶ光球に手を伸ばすとその輝きは一際増し……それが収束した時、ダンテの背には奇妙な物体が納まっていた。
肩だけの鎧のような、金属で出来た外格だけの翼のような……「翼」にはそれぞれ幾本かの細剣が仕込まれているようだ。
ちらりと背を振り返ったダンテはふふんと笑い、いきなり天高くジャンプした。
「コイツを!」その両手には「翼」から抜き放った剣が赤く輝いている。
「突き刺す!」叫ぶと同時に剣は幾本にも分裂し、投げ放たれてモノリスに幾つもの穴を穿つ。
「力をこめて!角度を変え!刺す!」
不思議なことに、叫びつつ次々と剣を投げていのに、その背の剣が尽きることはない。
「さらに……もっと強く!ブチこんでやる!」
何故かフラメンコ調になったBGMに乗り、気取ったポーズをキメながら放っている剣の軌跡は、どうやら何かの図形を描いているらしい。気合いと共に放った締めの一撃がその中心に突き立ち、長いジャンプを終えて地面に着地したダンテは、フラメンコダンサーよろしく赤いバラを咥えている。
「最後に……」
パンパン、と両手を打ち鳴らすと、石板に刺さっていた全ての剣が破裂して、モノリスはハートの形になった。
「絶頂を迎えた後―――」
振り向きざまに投げたバラが、ハートの中央に残っていた剣の柄を叩いて
「君は自由だ」ハートは見事に真っ二つになった。
その間に遠く浮かぶ「神」の姿が覗く。
「意外と小さく見えるな」
相変わらず異様な後光を背負った巨体をそう評すと、右手を伸ばしてそれを握り潰す仕草をしてみせる。
「残るはあんただ、Mr.カミサマ」
宣言して、ダンテはぽんと手のひらの埃を払った。
次の半瞬、ネロは反した腕で閻魔刀をかっさらってそれを囚われのキリエに向かって閃かせ、くるりと体を反転させた。その背に教皇が落ちてきて、逆手に握ったネロの閻魔刀に貫かれ、赤黒い血を吐き出す。
キリエを降ろしながら相変わらず可愛いげのない言葉を反すのに
事も無げに応えた背後で、その時俄に獰猛な唸り声が上がった。
「感謝してる」少し居心地悪そうにネロが声をかけた。
「反抗の方がお似合いだ」
どちらからともなくそのまぶたが閉じられて、ネロはキリエに頬を寄せ、その唇を奪……う直前、やおらブルーローズを真横に向けてブッ放した。
「キスはお預けだ」
陽気に両手を広げ、さっきのトリッシュみたいに節回しをつけながら歌ってその脇を戸口へと向かう。