オメガ・ストレインの続編。サイフォン・フィルター事件は前作を以て完結したため、題名とはもはや関連しない話に。
エージェンシーことIPCAがマーラ・アラモフとエルザ・ヴァイゼンガーを暗殺したことで、サイフォン・フィルター・ウイルスを巡るこれ以上の陰謀は永久に絶たれたが、レッド・セクションと呼ばれる謎の組織に属する武装グループがケムシンス・ペトロリアム社の石油精製所を襲撃したことを発端に、新たな事件を解決しなければならなくなった。 ワシントンが非通常戦力によるプレシジョン・ストライク(精密攻撃)を要請し、ゲイブたちはアラスカに赴く。
不可解な状況だがいつものごとく上層部から詳しい説明はなされない。エージェンシーが呼び出されるということは要するに"そういうこと"だからだ。
レッド・セクションはここ2年程の間に頭角を現しはじめた正体不明の新興組織だ。互いにコードネームで呼び合い、素人に毛が生えた犯罪者からプロの傭兵まで雑多なパラミリタリーを擁している。
ブラック・キングと呼ばれる兵士が作戦の指揮を執り、制圧下に置いた施設内で何かを捜し回っていた。
ゲイブはレッド・セクションに殺されたNSA諜報員の死体を目撃し、ここでNSAがスパイ活動をしていた事について疑問が生じる。
ゲイブは製油所の"現場監督"(国防総省から重要人物指定されている)マルコム・フリーマンの行方を追って製油所を探索し、やがてここで行われていたダークミラーと呼ばれる極秘プロジェクトの存在を知る。
セキュリティー区画Dに答えが隠されていることを期待して探すうち、ゲイブは遺伝子工学者のウィリアム・クライスラーを助ける。
石油施設には到底似つかわしくないクライスラーの管理する植物園に急行し、敵に盗まれる前に光ディスクを確保する。レッド・セクションはこのクライスラーの研究成果を探していた。
任務遂行中、ゲイブはクライスラーの署名入りの水耕栽培機器の請求書を見つけ、石油精製工場がなぜそのような機器を必要とするのか疑問に思った。 ゲイブはクライスラーにプロジェクトについて質問しようとしたが、口を閉ざした科学者は熱帯の花を使って服毒自殺した。 ゲイブは同じような花を施設の奥深くで栽培されているのを見つけた。
リアンとテレサは、パイプラインを破壊するブラック・キングのテロ計画を彼に知らせ、ゲイブはブラック・キングを排除してレッド・セクションを撃退するが、マルコム・フリーマンもまたダークミラーの機密を守り、尋問を受けるのを拒否して自殺する。
エージェンシーは光ディスクの解読を試み、またアラスカでの状況証拠からもダークミラーには植物が関係していることを知る。 ケムシンス・ボタニカルズ社はペルーのイキトスでその植物を栽培しているが、レッド・セクションは傘下にあるペルー革命評議会PRWCを使ってプラントを攻撃させた。
ゲイブは過去、公私ともにパートナーだったアディソン・ハーグローブが今はケムシンス・ボタニカル社に勤務し、ダークミラーに関わっていることを知り、ゲイブは自分の気持ちを隠しつつ彼女を助けなければならなくなる。
ペルーではアディソンが人質に取られているのを発見した。ゲリラを一掃して彼女を解放し、プラントを取り戻した後、リアンからプロジェクト・ダークミラーとは何なのか、なぜレッド・セクションはそれを欲しがっているのか矢継ぎ早に質問されたアディソンは、自分がケムシンス社の警備主任だから書類にサインしたまでで自分は研究職には関わっていない。この会社の事業は希少植物を見つけて栽培し、商業的価値のために分析することだと説明。
そして彼女は、ケムシンスが新しいDDT、つまり世界の飢餓をなくす奇跡の農薬開発に取り組んでいるらしいと主張した。
なぜテロ組織が "殺虫剤 "を欲しがるのか、リアンが探りを入れると、アディソンは彼女を無視して立ち去った。
エージェンシーが入手した銀行取引明細には、イキトス襲撃前にPRWCが管理する口座に多額の活動資金が送金されていたことを示している。その一部はPRWCの指導者で革命詐欺師のカルロス・バレラに直接振り込まれていた。
判ったことはレッド・セクションは資金が非常に豊富であるということが1つ、2つ目はアディソンの殺された部下もNSAの諜報員だったことで、NSAはケムシンス社をモニターしていたが、レッド・セクションはアラスカの時も同様に真っ先に敵対者を見つけて排除に掛かっている。つまりレッド・セクションが内部情報を把握しているということだ。
ペルーでのミッション後、セルビア人分離主義派のゴラン・ジヴモヴィッチが核燃料を盗もうとしているボスニアへと向かう。彼とその同志たちZPはレッド・セクションと提携関係にあり、彼らが知っていることを暴かなければならない。
ZPはユーゴスラビア崩壊をもたらした西側諸国、アメリカへの強い憎悪に基づくイデオロギーで結集され、ジヴモヴィッチは規律と忠誠心で部下を統制し、全員に青酸カリの錠剤を配り、生け捕りにされる危険がある場合は、尋問されるよりも自殺するように厳命していた。
途中、ゲイブはヤンゼンという二等兵を救い、ジヴモヴィッチと戦っている国連平和維持軍にたどり着く。やがて、PKFの医療将校リチャード・クレスがレッド・ファクションの二重スパイであることを突き止めるが、クレスがヤンゼンたち負傷兵を殺害するのを止めることはできなかった。怒りに燃えるゲイブはクレスを追い詰めて復讐する。ジヴモヴィッチが乗っ取ったM1エイブラムス戦車と戦ってこれも撃破する。
ゲイブはその後、イギリスMI6がロシアン・マフィアのヤヴリンスキーの監視活動を行っていたカリーニングラード(リトアニアのロシア領飛び地)へ向かった。 彼はマギー・パワーズが設置した記録デバイスを入手し、そのデータをリアンにアップロードした。ゲイブはヤヴリンスキーが隠し持っていた花を見つけ、レッド・セクションとの関係性を証明した。
ゲイブがヤヴリンスキーの調査を終えた後、アディソンが突然現れ、彼に助けを求めてきた。 ポーランドのワルシャワでアディソンと接触したゲイブは、娘のブレイクがレッド・セクションに拉致されたことを伝える。彼女は、傷つけられた娘がこの人達の要求を聞いてと懇願させられる悲痛な音声テープを再生する。
彼女はケムシンスが社員たちに新しいDDTだと信じさせたがっていたこと、アラスカの厳重な警備と隠された施設には前々から疑念を抱いていたと話す。ゲイブはアディソンの娘を助けることを決意する。また、アディソンは娘を産むためにエージェンシーを辞めたと言いゲイブに黙って別れた経緯を明かす。
彼女の10歳になる娘ブレイクはレッド・セクションの副司令官タッチストーンの捕虜で、彼らはダークミラーの光ディスク情報と人質の交換を要求している。ゲイブとかつての恋人はランデブーポイントに向かうが、そこで予期せぬ悲劇が起こる。アディソンがタッチストーンに掴み掛かるや、タッチストーンはアディソンを振り払い、蹴り飛ばして崖から転落させた。激怒したゲイブは猛然と敵部隊を全滅させ、タッチストーンを奈落の底に落とす。
エージェンシーはヤヴリンスキー情報からレッド・セクションの首魁、シンギュラリティと名乗る人物の正体がグラント・モリル、インターポール(国際刑事警察機構ICPO)の会計士であること、彼が経営するフィンランドのヘルシンキにある航空宇宙ベンチャー企業、AIT社がレッド・セクションの本拠地であることを突き止めた。
モリルはICPOで秘密作戦の予算を監査する傍ら、何十億ドルもの横領資金を複数のオフショア口座で洗浄し、立場上目を通すことができる諜報機関の機密データをすべて私的にコピーし、そのリソースを使ってレッド・セクションを創設した。
情報の解読を終えエージェンシーに戻ったローレンス・ムジャリが報告する。なんの驚きもない。ダークミラーは大統領が言うところの大量破壊兵器(Weapons Mass Destruction)だ。より正確には大量死と言うべきか。
その花、コクレンテス・アマゾニカはトキソデンドロン科の植物と遺伝子結合すると、非常に危険で有害な神経ガスを合成できるエキスを分泌する。
ダークミラーとは新型の化学兵器だった。
しかし、これは今までの神経ガスとは一味も二味も違う。たいていは空気中ですぐに霧散し散逸してしまうため致死率には限界がある。エアロゾル状では神経ガスは酸素分子と結合し空気中で長時間滞留することができる。だから効力は低下せず、それどころかそこに留まる間、濃縮されてより致命的になっていくのだ。
光ディスクの情報こそ入手できなかったが、レッド・セクションの科学者グループはアラスカで採取した植物から一定のリバースエンジニアリングに成功し、すでにダークミラーの製造工程に漕ぎ着けていた。
ダークミラーを抹消するため、アディソンの仇を討つため、ゲイブは敵の本拠地AIT社に突撃し、囚われのブレイクを救出する。
ラスボスのシンギュラリティことモリルは、ゲイブがマーキンソンの下で働いていた頃の大聖堂での被験者の殺害からジェイソン・チャンスの裏切り、ミハイ・ニクレスク、マーラ・アラモフに至るまで、一連のサイフォン・フィルター騒動にまつわる極秘資料を自分が読んで知っていると明かし、ゲイブの後ろ暗い過去の記憶を蒸し返して嘲笑する。
憤慨したゲイブは、モリルが着用していた電磁装甲を破壊し、彼を対向列車の線路に突き飛ばして轢き殺す。
モリルはAITのロケットに搭載してダークミラーを大気中に放出しようとしていたことが判明。例えるならスペースXのイーロン・マスクやブルーオリジンのジェフ・ベゾスが自社のロケットで突然地球を攻撃するようなものか。
製造されたダークミラーは少量とは言え最低でもヨーロッパで数百万人が死ぬ可能性があったが、脅威は去った。
ゲイブはアーリントン国立墓地のアディソンの墓碑を訪れ、彼女の想い出を振り返る。そのとき、彼女は突然彼の背後に現れる。落下から助かるためにハーネスを用意していたこと、転落は予定通りの行動だったことを示唆する。ゲイブはまた、ブレイクの言葉からアディソンが子供の年齢について嘘をついていたことを知る。 10歳どころか12歳だ。
…ゲイブはブレイクが自分の娘だと気づくが、何も言えない。公的に死亡したアディソンは、娘にエージェンシーのような欺瞞と暴力の世界から離れた平穏な暮らしをさせてほしいと願い、別れを告げ、車を走らせる。ゲイブは二人が消えていくのをただ見送るのだった。