Part74-46-47
- 46 :注文しようぜ!俺たちの世界:2023/09/22(金) 14:30:45.66 ID:a0s2BZdV0.net
- 俺はイカロス・マルコニーニだ。
皆は『イカ丸』って呼んでる。
ある時この国にいきなり王室からのおふれが出て、市民の要望するアイテムを(主に魔物から)入手する『クエスト』っていう職分ができた。
それを取り仕切る役所で職業を戦士に登録した俺は、小うるさい役人のオッサンからこう言われた。
「ほら、アドベンチャーサービスってあるでしょ。冒険旅行の訓練施設。ああいう所で本物の魔物相手に腕を研かなきゃ…」
そこで俺は思い付いたんだ。
わざわざ遠い地の果てに赴かなくても、アドベンチャーサービスってのを利用して魔物を呼び出せばクエストに必要なアイテムは手に入る。
街の外まで直に冒険に行くのと違ってすげえ利用料がかかるが、先立つ資金は偶然に大儲けした親父に投資してもらった。
さあ、アドベンチャーサービス(以降AS)を使ってクエストでどんどん儲けてやるぞ……!
そうやって擬似の冒険を繰り返していた頃、俺はASの運営から『ヒロインサービス』を受けられる『ヒロインチケット』を渡された。
冒険に女の子が出てくるというそれを俺は内心ウキウキしながら使ったんだが、出てきた女が魔女みたいなんで最初は敵かと思っちまったよ。
「『こいつあ金持ってるに違いないぜ。よっしゃ、いっちょ稼ぐかあ!』なんて言う奴が盗賊以外の何者だって言うの?!」
俺がチケットを使ったせいだと言って誤解は解いたが、実態が他の女客と引き合わせるお見合いサービスだなんて聞いてなかったぞ?!
でもいずみって名乗るこの女は俺より魔法が使えて便利だから、仲間にしてASで一緒に金儲けすることにしたんだぜ。
ある日いつものようにASで金儲けに励んでいた俺の前に、奇妙な妖精のような奴が現れた。
「おいらの名は、スライガッシュノベルノギニーニ!おいらは、この作られた冒険世界の住人なのさ。しかし、金はあるのに食い物屋がない!」
俺が妹に弁当を作ってもらって次の日スライギー(略)に渡したら、町のことなんか知らないあいつは相場の10倍で買い取りやがった。
俺はその後もあいつが望む色々な物を持って行っては売ったんだが、どうやらスライギーはASが配置した『イベントキャラ』らしい。
いつもフィールドで草花の世話をしたり地面をならしたり、石碑を磨いたりといった世話をするのが仕事なんだと言っていたな。
あまりにも望んだ物が(俺によって)手に入るから自分は神様かもなんてことも言ってたが、『恋人』だけは俺にもどうにもならなかった。
そうして俺の金儲けが順調に軌道に乗った頃、ASに魔界の宝箱を直接召還する『宝箱サービス』なる機能が追加されたんだ。
俺はもちろんそれを最大限に利用したが、元は人間が造った物が入っているとはいえ宝箱を盗まれた魔界の側は黙ってはいなかった。
「また私の城から宝箱が消えた。どこのどいつが私の宝箱を盗んでいる?!いかに魔人と悪魔の社会とはいえ泥棒はいかん、泥棒は!
他人の物に手を付ける無法者はどこにいる?!規律を守れぬ愚か者はどこだ!ひっとらえてこの悪魔ディシプリンの前に連れてくるのだ。
魔界の法をおかす輩、例え同じ悪魔でも許しはせぬ。それが人間ごときだったらなおさらだあ!」
悪魔に魔法で警告されても、人間の代表を自認するASのオーナーだって止める気はなかった。
「魔物は言うなれば、悪魔の手勢みたいなものだよ。悪魔の軍隊を減らすことができるのだ、魔物召還をやめるつもりはない。
魔界の宝というと悪魔の持ち物のようだが、実際は人間が作った武器防具や宝石だ。
もともと人間の物だったのを、 魔界の連中が奪っていって自分の宝にしているだけさ」
すると堪忍袋の緒が切れた悪魔たちは、刺客を人間界に送り込んで……こなかった。
用意しておけばAS(というか俺達)の方で召還するから……という訳で、俺の発注した冒険は度々悪魔の妨害を受けるようになったのさ。
そうやって魔物を倒しては宝箱を召還し続ける俺に、悪魔の王自身が接触してきた。
「魔界の規律と正義を守る悪魔、ディシプリンと呼んでもらおう。他人の物に手を付ける恥知らずな人間ども、正義の鉄槌で叩きのめしてあげよう!」
悪魔のくせに大義名分を掲げるこのプリンちゃんの怒りの矛先は、もはや宝箱を召還し続けるASや俺達だけに留まらなくなっていた。
「私は、君が盗んだなどとは一度も言ってない。人間が盗んだ、と言っているのだよ。だから人間を滅ぼすと言っているのだ」
その後、プリンちゃんは先ずAS一の戦士である俺を亡き者にするために様々な刺客をフィールドに送ってきたんだ。
- 47 :注文しようぜ!俺たちの世界:2023/09/22(金) 14:32:00.83 ID:a0s2BZdV0.net
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そんなことが起きている頃、俺はある時スライギーから手に入れたヒロインチケットを使ってみたんだが……
「あなた、この世界に住んでいるの?イヤな魔物が多くて大変ね。でもお掃除もされているし木や草花の手入れもちゃんとしてあって、
気持ちのいい世界だわ。あたしもここに住もうかしら。あたしはミネリフォスナザリーラントバルべリー(略してミネリ)」
俺がもらったのはスライギー用のヒロインチケットだったから、スライギーに合わせた妖精のヒロインが出て来てしまったんだな。
スライギーにそのことを教えてやったらやがて二人は仲睦まじくなって、一緒にフィールドの手入れなんかするようになったんだ。
やがて悪魔の最強の刺客をも撃退した俺達を倒せないと見たプリンちゃんは、その標的を俺の周囲へと変えてきた。
姿は見えず声も聞こえなくなり触れることもできない『孤独の呪い』を、俺の妹や教授にかけたんだ。
元凶の魔導士を召還して倒して呪いを解いたけど、戻ってきたASは無人でフィールドは乗っ取られ焼け野原になっていた。。
ASに狙いを絞った悪魔が魔界と人間界を繋げるため、ASのオーナーを捕えての直接攻撃が始まったんだ。
そして焼け野原になったフィールドで、俺は死にかけになったスライギーを発見した。
「フィールドをめちゃくちゃにするんだ、あいつ。やめさせなきゃって、勇気を出して向かって行ったんだけど。
おいらはここの神様だって言ってやったんだ。おいらの許しもなくこんな真似、許さないぞって。
そしたら、じゃあ悪魔と神の戦争だって言って…内臓、ひとつかみ、持っていかれた。もう生きてられないさ。
なあ、ミネリが心配だ…はやく、ミネリを探して…守って…あげて…」
だがはぐれたスライギーを必死に探すミネリを見付けても、俺は本当の事が言えなかった……
「…スライギーはな。孤独の呪いをかけられちまったんだ!誰からも見えなくなってしまう呪いなんだ。
俺達に姿は見えないが、ちゃあんとここにいる。な、そうだろ、スライギー!
大丈夫さ、見えなくても、声は聞こえなくても、スライギーはミネリとずっと一緒さ。
一緒にいてミネリを守ってくれているのさ…さあ、分かったら、スライギーと一緒に逃げろ。
スライギー、ちゃんとミネリを守ってやるんだぞ!二人とも仲良くな…」
やがて俺達は乗っ取られたフィールドの最深部に突入して、実はいつも姿を消して近くにいたディシプリンの実体を暴いた。
そして奴を討伐し、俺と周囲の人間―それにスライギー―に対しての落とし前を付けさせてやったぜ。
外に戻ると年老いて身寄りのないオーナーが莫大な遺産を俺に譲ると言っていたが、それは受けられなかったな。
「…やだね。俺は金が好きなんじゃなくって、金儲けが好きなんだ。自分の命もかけずに金だけもらって嬉しいもんかい。
俺にくれようなんて金があるなら、それで新しい迷宮でも作りなよ。俺は一生ビンボーでいいのさ、そうでなきゃ金儲けの楽しさ、味わえねえ」
他の皆も同じ気持ちだったからな、俺は今日もASで金儲けに勤しんでいるのさ。
- 48 :ゲーム好き名無しさん:2023/09/22(金) 15:09:45.44 ID:aP/P0gWW0.net
- 乙。
思考はしょうもないが言動はカッコいい主人公だな。