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その執事、疲弊

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その執事、疲弊














「なんて事だ……」


惚けたようにそう呟いて、ラウはレインを抱きしめた。


「見る度に美しくなるなんて、こんな罪な女性は君以外いない」

「……申し訳ございません、主人のお使いがありますので、そろそろ離していただけませんか?」


ラウの腕の中で呆れたようにため息を吐いてレインが言うと、ラウはすりすりと頬擦りをした。


「久しぶりに会ったというのに、レインは冷たいねえ。もう少し再会の喜びにひたらせてくれてもいいだろう?」

「この間屋敷にマダムレッドといらした時、お会いしたじゃありませんか」

「この間はこの間、一日でも日が空けば久しぶりなのだよ、レイン」


予想通りの展開にうんざりしていると、セバスチャンがラウとレインを引きはがした。


「レイン、いつまで遊んでいるのです? すぐにデザートの材料の買い出しに行ってきて下さい」

「はい」


そしてレインはセバスチャンに文句を言うラウと、そのラウをからかうマダムレッド。そして椅子に座って眉間にシワを寄せているシエルのいる賑やかな部屋を後にした。





今日は最近ロンドンで頻発しているジャック・ザ・リッパー事件を調査するため、ファントムハイヴ家当主であるシエル・ファントムハイヴと、執事であるセバスチャン、そしてレインの3人はロンドンのアパルトメントに来ていた。

しばらくの間滞在する予定の屋敷に到着し、先にやって来ていたマダムレッドとラウに顔を合わせたところが、冒頭の出来事だった。

廊下に出て階段に足をかけた所で、階下から上って来る男にレインは足を止めた。


「グレルさん、こんにちは」

「ああ、レインさん。今お茶をお持ちしようとしていたんですが、紅茶の茶葉が切れそうなので買いに行こうと思って……」


相変わらずおどおどと言うグレルに、レインは微笑んだ。


「私が今から買い物に行きますので、大丈夫ですよ」

「そ、そうですか。それではお願いします」


深々と頭を下げるグレルの横を小さくはいと返事をしながら通り過ぎた。


階段を下り屋敷のドアを開けるまでの間、レインはずっと視線を感じていた。

ゾクリとする粘着質の重苦しい視線。

屋敷の外に出てもなお、その視線に監視されているような気分だった。


初めて会ったグレルの印象は、セバスチャンに似ていた。

いや、セバスチャンよりも嫌な黒さを感じた。


人成らざるモノ


なんと吸い付くようにはまる表現だろう。

グレルのように重苦しいロンドンの街を歩きながら、レインは曇天の空を見上げた。











買い物から戻りケーキをセバスチャンと焼いて主人たちにお茶を楽しんでもらった後、事件のあった現場へ出向くという彼らを見送り、レインは一人残った。

片付けをして夕食の準備に取りかかる。

皆が出て行ってどれほどの時間が経った頃だろうか。

鴨肉をスライスしていると、背中に悪寒が走った。

誰もいないはずのキッチン。


見られているーーー


それはグレルに向けられる視線の感じに似ている。

振り返るか悩んだその一瞬の間に、悪寒は消えた。

気の所為かもしれない。しかし、気の所為ではないかもしれない。

いずれにしろ、レインの体に痺れたような疲れが一段溜まった事に違いなかった。


「レイン」


今度は突然現れた気配と共に自分の名が呼ばれる。


「セバスチャン」


振り向くとキッチンの入り口にセバスチャンが立っていて、何本もの紙の束を持っていた。


「坊ちゃんに言われて、犯人である可能性のある人物を調べてきました」

「一緒に出かけなかったんですか?」

「出かけましたよ。途中で別行動をとったんです。で、一応あなたにもこれに目を通しておいてもらいたくて」


そう言ってレインの前に二本の紙束を差し出した。


「これは……」


二人分の調査書を見て、レインはセバスチャンを見上げた。

にっこりと笑うセバスチャンから視線を外し、レインは紙を巻き取って返した。


「今夜はドルイット子爵のお屋敷で夜会が催されます。坊ちゃんが忍び込みやすいよう、坊ちゃんに似合うドレスを用意しておいて下さい」

「ーーー分かりました」

「残念ですが、あなたが準備して下さった夕食は無駄になってしまいましたね」

「ジュレにして明日のランチにでもお出ししましょう」


女王の番犬は、今夜舞う。




                          END
















=あとがき=

どもー。ここまでお読みくださって、ありがとうございました!
しばらく放置してました、黒執事(笑)
途中から見れてなかったんで、この間久々に見たらびっくり展開になってて笑ったw
でもまあ、自分が考えてるレインの役割にはまってくれる感じで行けそうなので、自分の二次小説の終わりも見えてきました。
よかった。
でもこれから途中のアニメ見てないお話が困る。。
なんとかして見て、続き書きたいと思います。
あまりアニメ本編で出て来るような話しは書かないつもりですが。。
それでは、またお会いしましょう!!
ってか、登場人物の名前あってんのかな? いまいち不安(笑)




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