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土屋3日目・No.2

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私のやんごとなき王子様












 土屋君から5メートル以上遅れて懸命に後を追う私。

 手ぶらの土屋君は優雅に空なんて見上げながら歩いている。


「今日の空の色彩は実に良いね」


 なんて言いながら。

 私は空なんて見る余裕も無い。この荷物、一体何kgあるっていうの?!


「君ってさ」


 ふいに土屋君が前方から私に声をかけてきた。


「な……なに?」


 ピタリと歩みを止め、こちらを振り向いた土屋君にこの機に追いつこうと私は必死だ。


「いや、君って何色が一番好きなのかな? って思って」


 ハァ? そんな事より今のこの現状をどうお思いですか? と小一時間問い詰めたい。けれどああ、土屋君って顔立ちだけは本当に綺麗なんだもの。思わず私もバカ正直に答えてしまう。


「ピンク……だけど」

「ピンク! そうか! あはは!」


 土屋君は何がそんなにおかしいのか、ケラケラと笑いだした。もー、なんなのよー。


「うん、白鳥達の住まう湖はピンク色にしよう!」

「えぇ?! ちょっ、ちょっと待って!」

「ん?」


 土屋君は何か? っていう顔。いやいやいや。


「そんなピンクの湖なんて聞いたことが無いよ!」

「でも君はピンクが好きなんだろう?」

「そうだけど……って、それと何の関係があるの?! と、とにかく湖っていったら、綺麗なブルーって決まってるじゃない!」

「君は青い湖が好きなの?」

「そりゃあ、ピンクの湖なんていう奇抜なものよりかは」

「そう、じゃあ青にしよう」


 言って、土屋君はくるりと踵を返して学園へとまた歩みを進める。

 一体何を考えていらっしゃるのだろうか、この孤高の芸術家様は……。全く考えが読めない。まだ合宿すら始まっていないというのに、こんなんで本当に大丈夫なのかな? ひたすら不安だーっ。















 学園に戻ると土屋君は私に美術室まで荷物持ちを命じた。もーこうなったらどこまでも! と妙な意気込みを見せながら、なんとか美術室まで無事に画材を運ぶ事が出来た。お、重たかった~。


「御苦労さま。あとは家の者に取りに来させるから、君はもう帰っていいよ」


 美術室に着くなりかけられたその声に「だったら最初からそうしてよ!」と喉元まで出かかった言葉をグッと飲み込む。まだ合宿が始まってすらいないのに、早くも空気を悪くするわけにはいかないもの。あーあ、それにしても何で私って大道具を選んじゃったのよー。あんなにたくさん悩んで悩んで悩み抜いて、よりにもよって……一番? いや鬼頭先生に比べたら二番かな? とにかくワーストの方を選択してしまった。


「そう! それじゃあ私、帰るね」


 少しだけ棘のある言い方になってしまったけど、これ位は赦して欲しい。


「………」


 土屋君からの返事は無い。気を悪くされたかな? と少しだけドキドキしながら視線を向ければ、買ってきたばかりの画材を見ながら完全に自分の世界に入っていた。

 あー、なんだか虚しくなってきちゃう。他の所を選んでいたら、今頃もっと……。


 って、何も楽しむ為だけに参加してるわけじゃないんだ! そうだよ、一番――私なんかが一番みんなの役に立てる場所かもしれないって思ったから選んだんじゃない。土屋君の気まぐれになんか負けてたまるもんですかっ!




 落ち込みそうな気持ちを入れ替えて、私は一人帰路についた。













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