チェンジ・ザ・ワールド☆
風名9日目・No.1
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私のやんごとなき王子様
9日目
昨日、亜里沙様の告白を聞いてから、私はずっと風名君の事を考えていた。
どうして風名君を好きになってしまったのか、彼のどこが好きなのか。彼は日本中のファンに必要とされている人なのに。
それよりも、亜里沙様と風名君は誰が見てもお似合いで、私が二人の間に入る隙間なんて少しもないという絶望感が凄まじかった。
練習に身が入らない位に……
「駄目駄目駄目!!」
練習室に演出担当者の声が甲高く響く。
「小日向さん、そんなんじゃ全然駄目だ! いいか? この場面はジークフリード王子がオデットにそっくりなオディールを見て心を奪われるという大事な所だ。君は王子を騙して手に口づけをもらうんだ! 騙しているんだぞ!? それをそんな申し訳なさそうな顔をしていたらおかしいだろう?!」
「ごめんなさい……」
オディールの代役となった事は、すなわち風名君と絡む事が多くなってしまう。しっかりやらなければ皆に迷惑がかかる。自分の想いを気付かれてはいけないって思えば思う程、亜里沙様のあの真剣な告白が鮮明に思い出されて台詞が詰まるのだ。
「いいか? 王子を騙した後のオディールは勝ち誇ったように笑うんだ!」
「はい」
「じゃあもう一度、王子がオディールを見つける所から!」
昼の休憩時間、食堂でぼんやりと料理を前に手をつけずにいた私に気付いたさなぎが不思議そうに尋ねて来た。
「どうしたの、美羽? 全然食べてないけど」
「えっ? あ、ううん。なんでもない」
「まさかあんたまでダイエットとか言うんじゃないでしょうね? 体力がないと舞台なんて務まんないでしょ!? 倒れても知らないからね、しっかり食べなよー」
「あはは。食べるよ」
たぶんさなぎは私の様子に気付いている。昨日亜里沙様の告白を聞いて部屋に戻った時からずっと気持ちが沈んでいたし、さなぎは何度も私に話し掛けようとしてやめてたから。
それでも何も言わないのは、きっと切り出すタイミングを計っているからだと思う。
これ以上さなぎに心配かける訳にはいかない。合宿に来てからの私は、本当にさなぎに頼りっぱなしだもん。
そう、これは私自身の問題。考えた所で亜里沙様が風名君の事を好きで告白したという事実は変わらないし、私が風名君の事を好きだという事も変わらない。それならば劇でミスをして風名君や皆に迷惑をかけるより、代役だったけど何とか形になって成功したなって喜んでもらえた方が全然いい。
「……うん、そうだよ」
一人頷いて、私は目の前の料理に手をつけた。
「お、急に食欲大魔王になったな」
「だって食べないと、体力使うもんね」
さなぎも笑ってる。良かった。
午後からは気持ちを入れ替える事に成功したおかげで、何とか演出からも駄目出しをされずにスムーズに演じる事が出来た。
ちょっぴり切ないのは最後にオデットとの愛を確かめ合って波間に消えて行く風名君の演技を見る事だ。……まあ、劇だから仕方ないんだけどね。
もう部屋にはほとんど人が残っていない時間になり、私は荷物を持って部屋を出ようと歩き出した。
「小日向」
ふいに名前を呼ばれ、私は振り返る。
ドキ……
風名君が額の汗をタオルで拭いながらこちらへやって来た。
「ちょっと時間、いい?」
「え?」
戸惑う私に、風名君が窓の外を指差した。
「ちょっと気分転換に行かないか?」
「あ……うん。別にいいけど……」
思わず頷いてしまったけど、風名君の顔をまともに見られ無い。練習の時は平気だったのに、終わった途端駄目だなんておかしい。
風名君は、昨日告白されている所を私が聞いていたなんて思いもしないんだろうな。相変わらず爽やかに笑っている。
胸が痛い。
「じゃあさ、汗かいたし風呂入ってから1階のロビーに集合な」
「分かった」
集合っていうことは、他にも誰か誘うのかな?
取りあえず少しほっとして、私は微妙な笑顔で風名君と別れて部屋へ戻った。
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