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真壁9日目・No.2

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streetpoint

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私のやんごとなき王子様














 夕食後、私と真壁先生は二人で浜辺へと降りて来た。

 ゆっくりと打ち寄せては返して行く波を見ながら、宿舎から少し離れた所に腰を下ろす。


「夜の海ってのも、なかなかいいもんだな」


 そう言って両手を後ろに着いて星空を仰いだ先生に、私は同意する。


「はい。とっても静かですね」

「なんかさ、俺ってやっぱり教師向いてないのかなあ……」

「えっ? どうしたんですか、急に?」


 驚いて先生を見ると、そのままパタリと砂の上に大の字になってしまった。


「先生、砂が付いちゃいますよ?」

「風呂入るから別にいーよ……なあ、小日向」


 ずっと空を見上げたままそう言う先生は、夕方見かけた時と同じ辛そうな表情をしている。


「はい」

「お前はどう思う? 正直に答えてくれ」

「どうって、真壁先生はとっても良い先生ですよ。生徒の事をいつも考えてくれて、親身に相談に乗ってくれるし。皆の人気者じゃないですか」

「―――違う……」

「え?」


 先生はぼそりと私の言葉を否定すると、ぎゅっと唇を噛み締めた。

 違う? 何が違うっていうの?

 訳が分からないでいると、先生は体を起こして私の顔を真っ直ぐに見据えた。その辛そうな眼差しにドキリとする。


「俺は駄目な人間だ……何をやっても中途半端で、親や兄貴達の期待にも答えてやれない……その上こうやってお前に愚痴なんて、最低だ……それなのに―――」

「そっ、そんなことっ!」

「最低なんだよ!」

「――先生……」


 その大きな両手で顔を覆うと、先生は苦しそうに体を震わせた。

 きっとそれなのに、という言葉の後には、俺を好きだと言ってくれる子がいるなんて。って続くはずだったのだと思う。知らなかったな。先生がこんなに自分を嫌っていたなんて……。


「……悪い、小日向。怒鳴っちまって」


 しばらくして顔を上げた先生がぽつりと言った。

 私は無言で首を振る。


 平気です。だって先生がどんな事を考えているのか、何をそんなに苦しんでいるのか知りたいから。水原さんの事だけじゃなくて、もっとたくさんの何かを抱えているんだって、先生はやっぱり大人なんだって分かって嬉しい。


「俺の家さ、父親は大学教授で母親は医者なんだ。二人兄貴がいるんだけど、医者と弁護士やってる」

「そうなんですか、皆さんすごいんですね」


 思ったまま素直な感想を述べると、真壁先生は苦笑した。もうすっかり落ち着いたみたい。


「周りの人達は皆そう言うよ。真壁さんの家はエリート家族ってな……それなのに俺一人が落ちこぼれなんだ」


 吐き捨てるように言った先生の言葉に、私は目を丸くした。

 落ちこぼれ? 先生が? どうして? 


「親戚には将来は医者か弁護士になるようにってガキの頃から言われ続けてた。別に親に直接言われた訳じゃないのに、そうなるのが当然の道だって思ってたんだな。兄貴も二人とも一流の大学に現役で合格して良い仕事に就いてさ……でも、俺は見事受験に失敗。浪人するような落ちこぼれは、受かる程度の大学に行って適当にやれって親戚に言われてさ。あーもう、俺は駄目なんだなってその時に思った」

「そんな……」

「選ばれた人間と選ばれなかった人間、そのどちらかしかこの世にはいないって思って、大学に入った頃は相当ヤサグレててさ。その頃に出会ったのが鬼頭と倉持さんだった」


 そう言えば前に理事長とは大学時代に知り合ったって言っていたっけ。辛い時期に支えてもらったんだな。


「あの二人は俺なんかよりよっぽど辛い思いをして来てるのに、すごく前向きだった。羨ましかったよ。俺には無いものを持ってるってな……そんな中、倉持さんの勧めでこの学園の教師になって、また別のヤツにも驚かされた」

「風名君と亜里沙様ですか?」


 私が尋ねると先生は笑った。












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