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倉持13日目・No.1

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私のやんごとなき王子様












13日目






「おっはよー!」


 校門を過ぎた所で後ろから元気に声をかけられた。


「おはよ、さなぎ」


 声の主は勿論さなぎ。その表情はにこにこしていて、何だかとても楽しそうだ。


「ついについについに~! 演劇祭本っ番っ! だねぇ~」


 大げさに手を振り上げながら言うさなぎを見て、思わず私の顔も綻ぶ。


「うん、今日で高校生活最後の演劇祭がついに終わっちゃうんだもんね。気合い入れて頑張らないと!」

「うんうん! 美羽なんて、あんなに悩んで悩んで悩み抜いて決めた担当だもんね! 10日間お疲れ様!」

「あはは! まだ終わってないよ。でも有難う、さなぎ」


 今から10日前――どこの担当に入るかを悩みに悩んでいた、あの感情が蘇ってくる。

 あの頃は自分がこんな風に人を恋するだなんて、思いもしなかった――


「さーて、それじゃ後数時間後には本番! 気合い入れていきますか~」

「うん! さなぎも頑張ってね!」

「了解です!」


 元気にお互いを励まし合って、私達はそれぞれの担当場所へと向かった。
















「小日向さん」


 ふいに呼び止められ、私は足を止めた。


「あ……理事長」


 高鳴る鼓動に、私はしなやかな身のこなしでこちらへやって来る理事長の姿に頬を緩めた。


「おはよう」

「おはようございます!」

「昨日のリハーサルは見に来られなかったけど、どうかな?」

「はい! きっと最高の演劇祭になると思います!」


 目の前で微笑む理事長に、私は元気よく返事をした。私の言葉を聞いて理事長は頷く。


「そう、それは楽しみだな……ところで小日向さん」

「はい?」

「僕は2階席で観劇する予定なのだけど、君も一緒にどうかな?」

「えっ? でも……」


 2階は来賓客やマスコミ用の席で、一般の生徒は入れない。それにやるべき仕事はたくさんあって、私は本番中は舞台袖で待機していなければいけないのだ。


「もしかして、仕事があるのかな?」

「す、すみません。お誘いは大変嬉しいんですけど」


 頭を下げると理事長はそれを制して


「謝る事はないよ。それじゃあ……今日、全部終わったら僕に少し時間をくれないか? 君と行きたい所があるんだ」


 と、優しく言った。


「私と?」


 目を丸くして自分を指差すと、理事長は無言で頷く。私はまた胸が鳴るのを感じた。


「は、はい。喜んで」

「良かった。それじゃあまた後で。仕事、頑張ってね」

「はい!」


 手を振る理事長に別れを告げ、私は急いで自分の持ち場へと向かった。












 ブーーーーーーーッ


 開演を知らせるブザーが辺りに響き渡った。









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