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日輪と笠原・No.2

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 早朝緊張したまま目を覚ましたともえは、軽い朝食を頂いて片付けを手伝うと、一人道場へと向かった。

 どれくらいの時間が経ったか一人精神統一をしていると、誰かが射的場に入って来る気配がしてそちらを伺う。

 あ……

 やってきたのは道真だった。

 チラリと一瞬ともえに視線をやり、すぐに呼吸を整えて構える。その所作はまるで流れるようで、つがえた矢の先は空気をも切り裂きそうに鋭く見えた。

 ごくり。と、ともえが息を飲んだ次の瞬間、大きな音を放ち矢は的に命中した。


「お見事」


 自然と口に出たともえの台詞に、道真はふとともえを見てすぐにまた視線を逸らした。

 なによ、感じ悪いわね……

 相変わらずの愛想の無さに少し頬を膨らませていると、次に道場に入って来たのは真弓と美弦だった。


「おや、ともえちゃんおはよう。随分早いんだね」

「おはようございます、真弓さん、美弦君。なんだか目が覚めてしまって、少し射ろうかと思って」


 笑顔の真弓の後ろで、とても不機嫌そうな顔の美弦がともえを睨んでいた。

(なんだよ、真弓兄さまと親し気に話してさ。何様のつもり?)

 二人の打ち解けた様子を気安いと感じた美弦の眉間には、みるみる皺がよっていく。


「あれ? 美弦君、気分でも悪いの?」

「そうなのか?」


 そんな美弦の様子に気付いたともえが尋ねると、すぐに真弓が後ろを振り返る。


「い、いいえ。大丈夫です!」


 美弦は笑顔で答えると、さっさと道真の隣りに並んだ。


「大丈夫みたいだね」

「はい、さっき顔をしかめていたみたいだったので……」 


 少し心配そうな顔をした後、ともえも真弓に続いて美弦の隣へと進んだ。

 何本か矢を射った後、後ろを振り返れば随分と人が増えていた。順に練習をするためにともえは下がり、一人ずつの動きをゆっくりと観察して行った。

 さすがに天下に名を知らしめた日輪道場の門下生だけあって、皆かなりの腕前である。

 全員が一通り練習し終えた頃、幸之助が道場へとやって来た。


 ――――いよいよ始まるのだ。


 って、あれ? そう言えば女の人が一人もいないような……。















 ともえはピリピリと緊張感の走る的場の隅に座し、じっと目の前で繰り広げられている様子を見守っていた。

 日輪道場の門下生には女性が少ないと昨夜幸之助が言っていた通り、月乃を除けばともえを含んでもたった四名しかいなかった。ともえ以外は元々武家の子女で、日輪道場と昔から懇意にしている家柄という事で通っているらしい。

 おまけにともえ以外は全員既婚者で、結婚した後も習慣で道場に来ているだけだという。月乃の話しでは笠原道場には若い女性の門下生が多く、日輪道場にはほとんどいない事を知った上で試合の条件を男女一名ずつにしたのだろう、という事だった。

 良くは知らないが、こちらが不利になるような状況で試合を申し込んで来る笠原道場のやり方に腹が立った。

 と、そう言う訳で半ば強制的にともえが女子の代表に決定したのだが、男子の代表はまだ決まっていない。


「どうかね、ともえさん」


 座っているともえの隣りにやって来た幸之助を見上げ、ともえは四名が並んで矢を射る姿をしっかりと目に焼き付けながら答える。


「はい、真弓さん、道真君、颯太君、美弦君、全員素晴らしいです」

「ふむ。まあ、あいつらは他の門下生よりも練習出来る時間が多いからな。本来なら垂司の奴が適任なんだが……」


 言葉の最後に出た垂司は、昨夜自ら関わらないと宣言している。


「垂司さんはお強いんですか?」

「腹立たしいが、あいつの弓の腕前は私以上だ」

「えっ? 師範以上……?」


 ともえは驚いた。この日輪幸之助をも凌ぐ弓の腕を持っているのに、何故垂司は弓道をやらないのだろう。


「あいつの事は今はいい。それよりともえさん、私が見てもこの四人は甲乙付け難い。女子の代表はともえさんだから、誰か組んでみたい奴がいれば遠慮なく言ってくれないか?」


 垂司の事を考えていると、突然相手を選ぶように言われてさらに驚く。


「えっ!? わ、私が選ぶんですか!?」


 ど、どうしよう……

 もう一度並んで矢を射る四人を見る。

 真弓は足腰がしっかりとしていて、身長もある。そして安定した矢を放っている。道真は真弓程の安定感はないが、その放つ矢には力強さがあり、遠的も得意そうだ。颯太は多少ムラっ気があるが、スイッチが入ったときの集中力は凄まじい。それこそ的の中心に次々と当てていた。最後の美弦は線が細いが真弓に似た安定感があり、的中数もかなり多い。




 一.優しくて安定感のある真弓さんとなら、練習も上手くこなしていけそう。
   → 真弓編へ行く

 二.道真君なら力もありそうだし、私に無い部分を補って貰えるかも。……もっとも性格は合いそうにないんだけど。
   → 道真編へ行く

 三.こっちまで元気にしてくれそうな颯太君と組んだら、今よりもっと上達出来そう。
   → 颯太編へ行く

 四.可愛いだけじゃなくて的中率も高く、まだまだ伸びていきそうな美弦君と組んでみるのもいいかも。
   → 美弦編へ行く

 五.垂司さんの事も気になるけど…… 
   → 垂司編へ行く







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