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休息の時(垂司)No.3

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streetpoint

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 「はぁ……」


 橘も氷江もすっかり見えなくなり席に着くと、ともえが思わずため息をついた。


「また嫌な思いをさせてしまったね。すまない」


 垂司は隣からともえを真っ直ぐに見つめ、小さく謝罪した。

 こんな風に優しくされると、垂司のどこからどこまでが本当で、どこからどこまでが嘘なのかが本当に分からなくなってくる。

 さっき垂司は「ともえの王子になりたいと思っている」と言った。でもそんな言葉は橘にも言っていたのかもしれない。橘の「お遊びですか?」 という言葉が耳の奥で何度もよみがえる。

 間もなく寄席が始まったが、ともえの頭には何一つとして入ってこなかった。


「ともえちゃん」


 舞台に目をやったままの垂司が小さくともえの名前を呼んだ。


「試合までは残り一週間、足もまだ本調子じゃないし焦る気持ちは分かる。でもね、焦ったってしょうがない。それにあと一週間しかじゃなくて、まだ一週間もあるんだ」

「垂司さん……」

「弓道は心で射るもの。人の心なんて誰かと比べるようなものじゃないけど、少なくとも私は君の心が美しい事を知っているつもりだよ。だから自分を信じればいい」

「……はい」

「さ、次の演目が始まる。今度は面白いかもしれないよ」


 そう言うと垂司はそっとともえの手を握った。

 一瞬ともえは身を強張らせたが、すぐにそれは安堵へと変わった。

 垂司の手が自分の手に触れている。その温かさだけで心が満たされたような気分になる。垂司が自分を気遣ってくれている。その優しさだけで胸は締め付けられるように喜びの声をあげる。

 ともえは自分の気持ちから目を背けるのを、もうやめようと思った。

 今のこの安らぎこそがともえの心の求めるものならば、垂司がどう思おうとはっきりと拒絶されるまでは、側に居たいと―――橘の前でもひけを取らないような人間になって、胸を張って垂司の隣に在りたいとそう強く思った。










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