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終結(美弦)

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はなもあらしも














 美弦がともえの婿となると宣言してから、早一週間が過ぎた。


 幸之助の口から美弦とともえの事を聞かされると、日輪家の誰もが二人を祝福した。

 そして今もなお、ともえは日輪道場で修行をしている。

 やはりともえは弓が好きで、急に許婿が出来た所で浮かれてばかりもいられなかったのだ。


 タンッ! という気持ちいい音が早朝の道場に響く。


「ともえ、今日も早いね」


 自分以外誰もいないはずの道場に、耳慣れた声が響き渡る。


「美弦。どうしたの?」

「どうしたも何も。試合は終わったんだしさ、少しは休めばいいのに」

「ふふっ、それは無理。だってもう癖になってるもの」

「僕を起こしに来る事を癖にして欲しいな」

「えっ?」


 さらりと美弦からはかれた言葉に、ともえは目をぱちくりとさせた。


「朝、目が覚めて一番最初に見るものは天井よりともえの方がいい」

「えっ、でも、えぇっ!?」

「僕達夫婦になるんだから、何をそんなに焦る事があるの?」


 ともえは驚きに言葉を失ってしまう。そんなともえの様子を見て、美弦はさも可笑しそうに笑った。


「あはは! ともえは本当に素直だなぁ!」

「か、からかったのね!」


 美弦に一杯食わされたと気付き、ともえは自分の頬が熱くなっていくのを感じると、両手で頬を押さえた。


「……からかってなんかいないよ」


 ふいに美弦の声がわずかに低くなる。

 真っ直ぐにともえの顔を見据えるその表情は、真剣そのものだった。


「見ててよ、ともえ。あと三年もしたら僕は、誰よりも格好良くて誰よりも背が高くて誰よりも強くなるから。ともえが自慢できる男になる」

「美弦?」

「だから……そしたらその褒美に、朝目が覚めて一番最初にともえの顔を見る権利を僕にちょうだい」


 真面目な顔でそう言った美弦に、今度はともえが微笑んだ。とても、優しく————


「美弦。美弦は今だって私にとって誰よりも強くて格好いいよ」

「……ぶーっ、背が高いのが入ってない」

「えぇ!? だってそれは……真弓さんとか道真君とか」

「気に入らない! 僕は全部全部ともえの一番じゃなきゃ嫌だ!」

「あのねぇ……」


 ぷいとそっぽを向いてしまった美弦に、ともえはやれやれと言った風で小さくため息をつく。けれどそれはとても幸せなため息だった。


「美弦」


 そっと名前を呼ぶ。意地を張ってやるつもりだった美弦だが、愛しい声には逆らえない。


「っ」


 美弦が振り向くとともえの顔がすっと近付き、そうと知覚する間もなく唇に温かい感触が触れた。


「と、も……」

「誰よりも何よりも美弦が好き。大好き。それじゃダメなの?」

「……ダメじゃない」


 美弦がそっとともえの背中に手を回すと、ともえもそれに応えるように美弦をぎゅっと抱きしめた。


「ともえ」

「なに?」

「もう一回」







 はなもあらしも   美弦編 完



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