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act.22(春日)

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就職難民 黙って俺についてこい!










 とうとう新作発表会当日がやってきた。

 たくさんの人人人! テレビカメラやカメラマンなんかの報道陣もたくさんいて、今にも緊張で倒れそう……そう言えば白波瀬さん、今日来るって言ってたよな。どこにいるのかなー。会いたいな。


「ちょっと、何キョロキョロしてんの? もうすぐ始まるから、もう少ししっかりしてよね」

「あ、すみません……」


 今日の春日さんは一段と可愛い。いつもよりちょっとお洒落なスーツを着てて、胸には受付で無理やりねじ込まれた花が刺さってる。それがまた春日さんの可愛さを引き立てて、さっきから周りの女の人たちの視線が痛い。

 突然、わあっ! という歓声にも似た声が辺りに響いて、私は思わずそちらへ顔を向けた。


「あっ!」

「ん?」


 なんと! そこにいたのはあの白波瀬さんだった! たくさんの人に囲まれて、取材の人達からマイクを向けられて少し困った様な顔をしている。

 なんで? どうして白波瀬さんがあんなに注目されてるの!?


「来た来た」


 とっても嫌そうに春日さんが呟くと、白波瀬さんがこちらに近づいてきた。


「やあ、葉月さん。こんにちは」

「えっ、あっ、こんにちは……」

「ちょっと待った!!」


 差し出された手を握ろうとした所を、春日さんが割り込んで血相を変えて叫ぶ。


「やあ、キミは確か営業部の……」

「春日雅です! それよりも、どうして秀麗の社長であるあなたが、うちの研修生を知っているんですか?」

「友達だから。ね? 葉月さん」

「え? いや、その」

「あんた! 自分が何をやったか分かってる!? うちの商品の情報が漏れてたの、あんたの責任だよ!」

「えっ?」


 一瞬頭が真っ白になった。

 だって、情報が漏れてるって、え? 私の責任なの?

 いや、春日さんの言う通りだ。もし、本当に白波瀬さんが秀麗の社長であるなら、私はグロスの話しをぺらぺらとしゃべってしまった。


「―――そん、な……」

「とっても簡単にしゃべってくれて、こちらとしては助かったよ。本当にありがとう、葉月さん」

「嘘……今までの事、全部、私を騙す為の嘘だったんですか……?」


 一瞬、白波瀬さんが悲しそうな目をした。


「そうだよ。君が御影山と出てきたバー、あそこは僕も良く行くって言ったよね? ちょうど君達がバーから出て来るのを、一緒に食事をしたレストランから目撃したんだ。御影山とは昔から色々あってね、君のことが気になって調べさせてもらった。美成堂に研修生として入ったと分かって、あの日、本屋に入る君の後をつけた……その後の事は君も知っている通りだよ」

「ふざけるな!! あんた、確かに御影山社長とは仲が悪いし、僕もあまり好きじゃない! だけど、こんな卑怯な事をする人だなんて思わなかった!」

「卑怯? 戦略的商戦術と言ってもらいたいな。春日君、僕達の業界は情報戦、そんな事は君だって十分理解しているだろう? さ、ギャラリーも困惑している事だし、そろそろこの話しはやめようか―――それじゃあ、またね。葉月さん」


 いつものあの優しい笑顔で、白波瀬さんは人ごみの向こうへ消えてしまった。


 ポロリ―――


 涙がこぼれた。

 あんなに優しく励ましてくれていた言葉や態度の全てが偽りだったなんて。


「泣くな」


 !?


「絶対に秀麗なんかには負けない。僕がついていて負けるはずがないんだから、さっさと涙をふきなよ。堂々として、前を向いて」

「は、はい」


 そうだ、こんな時に裏切られたなんて一人で落ち込んでる場合じゃない。私はここに、仕事をしに来ているんだ。





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